魔法少女リリカルなのはで盗掘中   作:ムロヤ

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接敵

 あれから数日、俺は今日のために準備を怠ることはなかった。

 

 まずはラヴィエの訓練。

 実戦を経験するということもあり、トーレとラヴィエに事情を説明しより格闘訓練に力を入れるように言っておいた。

 そして少しでも実戦でのリスクを下げるため、仮想装置を使っての俺やトーレとの戦闘訓練だ。

 俺が搦め手を主体にしての対処法を教え、トーレが正攻法での正面からのぶつかり合いを教えた。途中から何故か訓練にノーヴェが混じり、俺&ラヴィエVSトーレ&ノーヴェの2対2のチーム戦も行ったが、これにより俺とラヴィエも連携を訓練することができたのは僥倖だ。

 

 それとは別に俺は襲撃を掛ける場所の地理を入念に調べ上げ、スカリエッティからもたらされる情報から聖王教会と管理局からどれだけの人員が駆けつけるのかをウーノやクアットロにも手伝ってもらい考察した。

 

 結論から言えば、おそらく今回の襲撃で駆けつけるのは管理局では守護騎士プログラムかフェイト・T・ハラオウンの可能性が高いとなった。

 ただフェイト・T・ハラオウンに関しては執務官として各地を調査しているため、その時の状況によっては距離的に来ない可能性も高くなる。そうなると最も警戒すべきは守護騎士プログラム、八神シグナムと八神ヴィータだ。

 

 それと聖王協会に関しては何とも言えないという結論に至った。

 あそこはいろいろなところに強い影響力を持ってはいるが、組織の規模が大きすぎるために正直今回のような一遺跡の襲撃に動くかと言われれば首を傾げるしかない。ただ機動六課の設立にカリム・グラシアが関与しているとのことなので、その近辺が個人的に動くことは考えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――そんなことをああだこうだと考えている間に、あっと言う間に計画遂行の日になってしまった。

 

「はあ、やっぱり面倒になってきたな」

 

 俺はため息を吐きながらガックリと頭を垂れた。

 あれこれ考えて準備をしてきたは良いが、それでもやはり機動六課の化け物が出てくる可能性を考えると気が進まない。

 それに今回は戦闘ありきで作戦を考えているため、いつも以上にコレクションの古代遺物(ロストロギア)を所持しているため、魔力の消費が大きく疲れる。

 

「……頑張る」

 

 ただそんな俺とは対照的に、今回の件を初めてのお仕事だと教えられたラヴィエは、妙にやる気に満ちている。無表情は相変わらずであるが、言葉と共に両手を胸の前で握り拳にしていることからも、そのやる気が伺える。

 

「そうだな、ここまできてウダウダ言ってもしょうがないな。頑張るか」

 

 ラヴィエがやる気を示しているのに俺がいつまでもダレているわけにもいかない。

 俺は気を引き締めた。

 

「さて、っと……聞こえてるか? スカリエッティ」

 

 やると決めた俺はさっそくスカリエッティへと通信を入れる。

 

『聞こえているよ』

 

 返事はすぐに返ってきた。

 

「こっちは準備完了だ。そっちはどうだ?」

 

『こちらも問題ないよ』

 

「なら同時に襲撃を掛けて派手に行く。こっちはこっちで勝手にやるから、お前も好きに動け」

 

『ああ、もとよりそのつもりさ。それでは頑張ってくれたまえ』

 

 スカリエッティとの通信を終えた俺は、ラヴィエと今後の動きと万が一はぐれた場合の集合場所を確認した。

 

「いいか? 無理はするなよ。それと、俺はこれから遺跡の最下層に最短で突っ込む。ラヴィエは適当に外の連中と遊んでろ。ただし昨日見せた人物の誰かが来たらすぐに教えろよ」

 

「……」(こくり)

 

 ラヴィエが頷いたのを確認した俺は、ラヴィエの頭をポンポンと撫でながら目標の遺跡に視線を向けた。

 

「なら―――行くぞ」

 

 

 と、気合を入れて来てはみたものの、遺跡の最深部までは驚くほどスムーズに到達した。おまけに最深部の宝物庫には未だに手つかずの古代遺物(お宝)がたんまりと残っているという、少し信じられない状況だ。

 

「……いや違うな」

 

 だが俺はそこで強い違和感を覚えた。

 

 この手の遺跡でこんなにお宝が残っているわけがない。例えこの遺跡の管理が聖王教会であったとしても、完全に手つかずと言うのはあり得ない。ならば考えられる可能性は、手つかずなのではなく手が付けられないということだ。

 

「っ! あぶね!?」

 

 左目の古代遺物(ロストロギア)が警告を発した瞬間、俺は危険予測線から全力で飛び退いた。

 

 次の瞬間、先ほどまで俺の頭があった場所を何か鋭い物が通り過ぎるのがうっすらと見えた。俺は左目の古代遺物をフル稼働され、たった今通り過ぎた存在を確認する。

 

「あ?」

 

 そこにはスカリエッティから買い受けたガジェット・ドローンとは違うガジェット・ドローンがこちらに武器を向けていた。

 

「なんだこいつ? ガジェット? いや、でも違うな。良く視ると古いうえに、スカリエッティの造ったやつより高出力だ。おまけにさっきのはステルスか? 俺の左目のフル稼働でようやく見えるってことは、かなりの高性能だな」

 

 内部を透視してみると古代ベルカに造られた兵器に良くみられる形式のパーツが視えた。

 おそらくは古代ベルカの時代に造られ、この遺跡を守るガーディアンとして配置されたのだろう。それなら先ほどの高性能なステルス機能にも納得がいく。

 

「スカリエッティのヤツ……知ってたな」

 

 俺は目の前のガジェット・ドローン?を見ながら変態科学者の顔を思い浮かべた。

 

「あいつのガジェット・ドローンに似ている……いや、逆か。あいつの造ったのがこれに似てるのか」

 

 おそらくスカリエッティのヤツが聖王ゆかりの遺跡を調査しているときに同じものを見つけ、それを参考にこのガジャット・ドローンを造ったのだろう。なら聖王ゆかりのこの遺跡にこのガーディアンがいることくらい予想は付いているはずだ。

 

「……後で文句言ってやる」

 

 おそらく本人は悪戯くらいの感覚で情報を隠したのだろうが、危うく首と胴体がお別れをするところだったのだ。

 ……文句くらい言わないとやってられない。

 

「それにしても、いままでも聖王ゆかりの遺跡は結構見たことあるけど……こいつは初めて見たな。配置されている場所とされてない場所があるのか? まあ、いい。今は仕事優先だ。破壊させてもらうぞ」

 

 俺が魔法を使おうとすると、目の前の敵は強力なAMFを発生させてきた。とはいえ、俺のスキルはAMFの影響を大して受けないため、問題なく目の前の敵を破壊可能な大きさの氷柱を造ることができた。

 

「潰れろ」

 

 生み出した氷柱は目の前の敵に深々と突き刺さり、あっけなく敵は沈黙してしまった。

 

「……え~」

 

 あまりにも呆気なく片が付いたため肩透かしを食らっていると、遺跡の奥から何かが大量に動いてくる気配を捉えた。

 そちらを覗き見てみると、先ほどと同じ機体がゾロゾロとやってきたのが見えた。

 

「まあ、あの程度ならこの遺跡なんかすぐ荒らされるよな」

 

 この遺跡が手つかずの理由が何なのか、俺は今現在身を持ってそれを知ることになってしまった。

 

 強力なAMFを常時発動させ、ほとんど音を立てずに動き、高性能なステルス機能を持つ機体が大量発生する。

 これでは魔法を主体とする魔導師では確かにどうにもならない。

 遺跡に入ったが最後、大量の敵に囲まれ魔法も碌に使えずに排除されてしまうだろう。

 

「……仕方ない。響け《鎮魂の鐘》」

 

 どれだけいるのか分からない敵をいちいち全部相手にしていては魔力などすぐに底を突いてしまう。それはこれから起こる予定の戦闘に響いてしまうため、俺はコレクションの一つである古代遺物を取り出し、その鐘を鳴らした。

 

 カラーンカラーンカラーン

 

 遺跡の内部に澄んだ鐘の音が響き渡る。するとある変化が起きた。

 普段は問題なく見えている俺の左目の義眼は何も移さなくなり、それと同時に遺跡内部の魔力などのエネルギーで動いていた仕掛けが全て停止した。

 当然こちらに迫ってきていた敵の動きも停止している。

 

 今俺が鳴らした鐘は《鎮魂の鐘》と呼ばれる古代遺物(ロストロギア)で、あらゆるエネルギーを鎮静化させる効果を持つ。

 効果範囲が音の響く範囲なので、こういった音が響く場所ではかなり強力な古代遺物だ。

 

「とはいえ、これ使うと俺の装備も動かなくなるから困るな。さって、効果が続いているうちにお宝を盗掘(ちょうだい)するか」

 

 持続時間があまり長くないのが難点だが、贅沢も言ってられない。俺はさっそく盗掘を始めた。

 

「ん~? レリックがやけに多いな。まあ、スカリエッティが買うからいいか。お、これは見たことないな。後で解析しとくか。あと、これと、こっちも……なんだろこれ? あ、これもついでに……」

 

 しばらく俺は盗掘に専念した。

 

 さすがに聖王教会が直接管理している聖王ゆかりの遺跡といったところか、古代ベルカ時代の貴重な古代遺物がザクザクと出てきた。

 めぼしい物を盗れるだけ盗ったころ、ちょうど《鎮魂の鐘》の効果が切れた。

 

「やべ、動き出した」

 

 もはや目ぼしい物は盗れるだけ盗った俺は、長居は無用と遺跡から急いで出た。だが俺は古代遺物を回収するのに夢中で、一つ重要なことを失念していた。

 

 《鎮魂の鐘》はあらゆるエネルギーを鎮静化させる。それはつまり、通信に使用されるエネルギーも鎮静化しているということだ。

 

 

「……」

 

 ラヴィエは変化した自分の身体を眺めながら、慣らすように身体を動かしていた。

 

 イオリと共にこの遺跡に来ると決まったあの日、ラヴィエはイオリからある古代遺物を渡されていた。それは現在、彼女の顔を覆い隠すように着けられた仮面だ。

 

「……ん」

 

 名前が何だったのかラヴィエは忘れてしまったが、効果の方は覚えている。使用者の肉体を設定した条件に一番適した状態に変化させるという物だ。

 今回この仮面に設定した条件は戦闘。そしてその条件に設定した仮面を被ると、彼女の肉体は急激な成長を遂げ、普段のお子様体型から18歳ほどの成長した女性の肉体に変化したのだ。

 

 最初は戸惑ったがラヴィエだが、仮面の効果なのか少し動いただけでしっくりときた。それからしばらくは仮面を着用したままでトーレやノーヴェと訓練をした。

 

「……んん」

 

 さすがは古代遺物(ロストロギア)といったところか、戦闘に最も適した状態というだけあったここ数日の訓練でラヴィエの格闘能力は凄まじい成長を遂げることとなった。

 今の彼女はその力を存分に振るいたいという、初めての衝動というものを感じ、どことなく落ち着かない雰囲気だ。だからこうして早く敵が来ればいいと思い、イオリの帰りを待ちながら遺跡の前に陣取っている。

 

「……来た」

 

 そうしていると、遠くから高速でこちらに向かって飛翔してくる団体を察知した。

 大きな魔力が3に、そこそこの魔力が12。

 

 ようやく待ちに待った来客がやってきた。

 

「……イオリ、お客様。……イオリ?」

 

 ラヴィエはイオリの言いつけ通り、敵が来たことを通信で伝えようとした。だが、そのころ丁度《鎮魂の鐘》を使用していたイオリとは通信が繋がることがなかった。

 

「……ん」

 

 どうしようかとラヴィエは首を傾げた。

 

 おそらく遺跡の内部で何かあったのだろうということはわかるが、それが何なのかは遺跡探索などしたこともない彼女には想像すらつかない。

 

「…………戦う」

 

 しばらく悩んだ彼女の出した答えは、当初の予定と同じ敵との戦闘だった。

 

 イオリのことを迎えに行こうかとも考えたラヴィエだが、彼の逃げ足や回避能力はよく知っているため特に問題はないだろうと判断した。

 トーレやノーヴェとの模擬戦を行えば彼女たちに攻撃を当てることも、勝つことも可能なラヴィエだが、どういう訳かいまだにイオリと模擬戦をすると彼に勝つことができないのだ。というか、攻撃が当たらないのだ。

 そんなイオリのことだ。遺跡で怪我を負うことなどないだろうとラヴィエは信じている。

 むしろ、彼が常々口にしている化け物との戦闘を自分が引き受けた方が、彼のためになると判断した。

 

「……エファンゲーリウム」

 

《Jawohl》(はい)

 

 ラヴィエが自らの愛機に語りかける。

 

「セットアップ」

 

《Anfang》(起動)

 

 その言葉と同時にラヴィエの両腕は光に包まれ、そしてその腕には鉄腕が装着された。

 

「……白の誇り(ヴァイスシュトルツ)

 

 ラヴィエは自らの両腕の鉄腕を確認すると、次に《白の誇り》を発動しその身に純白の防護服を身に纏った。

 

《Vollendung》(完了です)

 

「……ん、いつでも行ける」

 

 ガキン

 

 気合十分と自らの愛機に訴えかけるように拳をぶつけて鳴らしたラヴィエは、魔力の近づいてくる方角を見つめた。

 

 

 ラヴィエが気合十分になった少し前、機動六課の作戦司令室にアラーとが鳴り響く。

 

「グリフィス君、どないしたん!」

 

 はやては指令室に入るとすぐに自分の席へと向かい状況の報告を促した。

 

「八神部隊長、襲撃です! それも同時に2か所です。シャーリー、映像を」

 

「わかってる! 今出します」

 

 グリフィスの言葉を聞く前から作業を開始していたシャーリーは、すぐに映像を表示した。

 

 そこにはガジェット・ドローンによって襲撃されている輸送列車ととある遺跡が映し出された。

 

「列車はレリックを輸送していたものです。もう一つ、遺跡の方は聖王教会が管理している遺跡です」

 

「狙いはどっちも古代遺物(ロストロギア)やな。……それにしてもかなり離れとるな」

 

 はやては苦い顔で二つの世界の距離を見つめた。

 自分たちのいる場所からどちらかには行けるが、二つの世界同士では移動できないという何とも微妙な距離だ。これが偶然ではなく計画的に起こされた犯行であることは言うまでもない。

 

(つまりは輸送列車の情報が漏れとるいうことやな。この間で内通しとるんは逮捕したのに、まだおるんか)

 

 はやて自身もこの間摘発したのはほんの一部だということはわかってはいたが、こうも早く内通者が再び行動を起こすとは思ってもなかった。少なくとも、しばらくはおとなしくしていると考えていたのだ。だが実際は、舌の根も乾かぬうちに内通者は動き出している。

 

(私が考えとるよりも、もっと上の方におるんやな)

 

 今回の件でそのことを痛いほど思い知らされた。

 

「はやてちゃん……」

 

 そんなはやての様子を見て、リインフォースⅡは心配そうに自らの主を見つめる。その視線に気が付いたのか、はやてはリインフォースⅡを安心させるように笑って見せた。

 

「大丈夫やよ、リイン。……よし! グリフィス君、なのは隊長とフェイト隊長に連絡を! それとシグナムとヴィータにも連絡や。すぐにブリーフィング開始や」

 

 気合を入れ直したはやてはグリフィスにそう指示を飛ばす。

 

「はい、八神部隊長」

 

 そしてグリフィスは指示通りなのはとフェイトの二人に連絡を取った。

 なのはの方は訓練を切り上げてすぐに全員を連れて作戦司令室へとやって来た。だがフェイトの方は運悪く、現在外へと出ているためこちらに来るのは無理だった。

 

「はやて隊長、高町なのは、並びにスターズ分隊、ライトニング分隊集合しました」

 

「現在2か所がドローンによって襲撃されとる。レリックの輸送列車の方がドローンの数が多いうえに、飛行方もおる。なのは隊長とフェイト隊長にはスターズとライトニングの全員を連れて、そっちに回ってもらうことになるわ」

 

「了解しました」

 

 はやての指示になのはは敬礼で答えた。

 

「それとや、フェイト隊長は外におるから現地で合流や。無理だけはせんといてな」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

 なのはの性格上、しっかりと釘をさすのを忘れないはやて。そのことをなのは自身も分かっているのか、困ったような照れくさい様な表情でそう答えた。

 

「八神部隊長。シグナム副隊長とヴィータ副隊長と通信が繋がりました」

 

「了解や! シグナム、ヴィータ、聞こえとるか?」

 

『こちらシグナム。八神部隊長、問題ありません』

 

『こちらヴィータ。こっちも問題ない』

 

 通信の向こうから聞きなれた二人の守護騎士の声が聞こえる。

 

「状況はデータで送った通りや。二人には遺跡の方に行ってもらうことになる。ドローンの数は少ないようやけど、油断しい―――」

 

「な! なにこれ!?」

 

 そのときシャーリーの驚愕の声が指令室に響いた。

 

「シャーリー? どうしたんだ?」

 

 グリフィスがただ事ではないと察し、シャーリーに声を掛ける。

 

「こ、これを見てください!」

 

 そう言ってシャーリーはデータを表示した。

 そこには全員が驚愕する情報があった。

 

 推定魔力測定不能。

 シャーリーが遺跡周辺のデータをスキャンしていたところ、遺跡の入口付近にそう表示される存在がいることが分かった。

 機動六課で最も膨大な魔力を持っているはやてでさえ、測定そのものはできる。それなのにこの場所に居る相手は測定不能と出るほどの魔力を有している。

 魔力が多ければ強いという訳ではないが、それでも脅威が大きいのもまた事実。

 機動六課の中に緊張が走った。

 

「……はやてちゃん」

 

 なのはが視線でどうするかとはやてに問いかける。

 状況的にはなのはを始めフェイト、シグナム、ヴィータを急行させたいところだが、それをしてしまうと今度は輸送列車に行けるメンバーが新人のみになってしまう。

 通常のドローンだけならば問題はないが、飛行型がいるという報告があるため安全を考慮するなら空戦魔導師二人は確実に派遣したいというのがはやての本音だった。

 

「……なのはちゃんとフェイトちゃんは当初の予定通りでお願いや。シグナム、ヴィータ、きついかもしれんけど……」

 

『主はやて、私もヴィータも魔力で負けているからといって、戦いで負けるとは思っていません』

 

『心配ねぇよ、はやて。すぐに片づけて帰ってくるから。それよりも、なのは! おめぇこそ無理すんじゃねぇぞ!』

 

「にゃはは、大丈夫だよ」

 

 いつものやりとりであるが、それが今はとても頼もしく感じられた機動六課の面々は、決意を込めてはやてに視線を送る。

 

「せやな、私の守護騎士が負けるわけないな! それなら作戦開始や!」

 

「「了解!」」

 

 はやての号令を合図に全員が一斉に動き出した。

 

 

「という訳で、私が空戦部隊を引き連れて、シグナムとヴィータちゃんの応援にかけつけました!」

 

 そう言ってリインフォースⅡはシグナムとヴィータに敬礼しながら並走して飛行していた。

 

「あんま無茶すんじゃねぇぞ、リイン」

 

「応援感謝する、作戦については先ほど述べた通り、私とヴィータでアンノウンを攻撃、空戦部隊の諸君らにはドローンの始末を頼む」

 

 さすがに二人だけでは心配だったはやてが送り込んだのは、余所の部隊から借りてきた空戦部隊と、それを率いるリインフォースⅡだった。

 最初は本当に二人で向かうつもりだったシグナムとヴィータだったが、ドローンの数と測定不能という魔力を警戒しすぐに部隊と合流した。

 そして移動しながらのブリーフィングを行っていた。

 

《Zielerkennung》(目標発見しました)

 

「本当か? アイゼン」

 

「レヴァンティン」

 

《Bestätigung》(確認しました)

 

 二人は愛機からの報告を受けて空戦部隊に周囲に散会するように指示をだした。

 

「行くぞ、リイン!」

 

「はい! ヴィータちゃん、ユニゾンイン!」

 

 ヴィータの声に答えてリインフォースⅡは融合機としての己の役割を果たすため、ヴィータと融合した。

 

「てめぇが、遺跡襲撃の犯人だな?」

 

「こちらは管理局だ。抵抗しなければ手荒な真似はしない」

 

 二人はそう言って遺跡の入口に佇む真っ白な少女へと声を掛けた。

 

「……」

 

 そんな二人を仮面越しに眺めるラヴィエ。

 

「おい、てめぇ! 聞こえてんのか」

 

「……」(こくり)

 

「聞こえているのに反応しないのは、投降の意志がないと判断していいのだな?」

 

「……」(こくり)

 

 そのやり取りを最後に、両者は構えた。

 

「一応、名を聞こう」

 

 シグナムが騎士としてそう尋ねると、ラヴィエは少し首を捻り口を開きかけた。

 

「……ラ……」(ふるふる)

 

 だがそこで何かを思い出したのか、ほんの少し声を出したかと思うとすぐに口を閉じてしまい、首を横に振り始めた。

 

「なんだ、てめぇ? 名前がないのかよ」

 

「……ある」

 

 ラヴィエが喋ったことに驚いたヴィータだが、それでもラヴィエは名前を告げることはなかった。ラヴィエはイオリに名前がばれたら次から動きにくいから、あまり名乗らない様にと言われたことを思い出したのだ。

 ラヴィエとしては、名前で呼ばれないのはとても不愉快ではあったが、イオリとの約束なのでそこは我慢することにした。

 

「シグナム、これ以上は無駄だ」

 

「そのようだな。ならば、力ずくで捕まえさせてもらう」

 

 シグナムとヴィータの二人は目の前の少女を無力化するために。

 

「……ん。いく」

 

 ラヴィエはイオリを守るために。

 

 両者の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだこりゃ」

 

 そんな激闘の気配に気が付かず、マイペースにできてきたイオリが視た光景は、管理局の連中相手に楽しそうに戦闘を行っているラヴィエと、そのラヴィエの攻撃を防ぎながら互角の戦いを繰り広げるシグナムとヴィータによって破壊されつくされて地形が変わってしまった光景だった。

 

 

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