魔法少女リリカルなのはで盗掘中   作:ムロヤ

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前話で管理局は空と陸で仲が悪いとしましたが、なのはを見直してたら空のことを通称「海」と呼んでいたので空を海に修正しました。




機動六課のついて

「さて少し本腰を入れて調べるか」

 

 色々な出来事があって濃密な一日となった昨日は流石に疲れて寝てしまったが、俺は昨日気が付いた情報の整理と調査に本腰をいれる事にした。

 寝て頭がスッキリした状態で改めて考えると、今回の件は異常過ぎて無視するにはリスクが大きすぎる。そんなわけで俺は今、機動六課の設立に件で直接的或いは間接的な関係が有る組織や人物に加え、機動六課に所属しているメンバーが個人的に関わっている人物や組織に至るまでデータを並べていた。

 

「うぇ……、分かってはいたけど多すぎだ」

 

 予想していたとはいえ膨大なデータ量を見て思わず呻き声が出てしまった。

 

「とりあえず今回の組織編成の主要人物をピックアップして……それから関係がありそうなとこを片っ端から調べるか」

 

 絶対に外せない人物をピックアップする事にした。

 まずは3人の後見人の一人であるリンディ・ハラオウン。

 

「データベースだと現役時代は魔導師ランクは総合AA+で最後衛の補助型。多分結界魔導師かな? 夫が闇の書事件で故人。管理局内ではかなり顔が広いのか」

 

 軽く人間関係を洗っていくつもりが、そこに表示されているのは錚々(そうそう)たる面子だ。

 かの伝説の三提督を筆頭に、友人としてレティ・ロウラン提督など管理局でも人望と能力が高い人物の名前がどんどん出てくる。

 才能があって人柄が良くて人望も厚い。おまけに美人。はたから見たら完璧な上司だ。

 

「この人……孫までいるのに全然歳とってねぇなー」

 

 思わず現実逃避してしまいたくなる。

 

 既に一人目で反則級でお腹いっぱい状態だが、ここで辞めたら昨日と同じなので俺は次の人物の情報を開く。

 

「次はクロノ・ハラオウンか」

 

 名前の通りリンディ・ハラオウンの息子で、14歳で執務官になっている。この時点で既におかしい気がする。

 魔導師ランクは総合AAA+で、25歳の現在は次元航行艦クラウディアの艦長を務めている。

 機動六課設立にあたり色々動いているいるようで、八神はやてのリミッター解除権限を持っているようだ。

 ……どれだけ優秀なんだよ。

 

「なんというか、この親にしてこの子ありだな。なんだよこのエリート親子は。ここまで凄いと人体実験で強化された俺たちの立場が悲しくなるなぁ」

 

 今の俺はきっと遠い目をしている。

 情報を整理しているだけで精神ダメージを負うなんて初めての経験だ。

 

「ヤバイな。これ最後まで俺の心は保つか?」

 

 最初の二人で折れかかってしまった俺の心。頑張ってくれ。

 

「次がカリム・グラシア。管理局少将。……んん? なんだこれ? 情報が殆ど無い?」

 

 管理局の情報に階級は少将と表示されているが、殆ど最低限のデータしか無い。それなのに機動六課なんていう異常な部隊の後見人を務めている。

 俺は首を傾げながらカリム・グラシアについて情報を集め始めた。しばらくしてようやく納得できる理由を見つける事ができた。

 

「あぁ、この人聖王教会上層部の騎士か。あそこって結構秘密主義だから情報あんまり無いんだよなぁ。えっと、確かこっちの少しあったはず」

 

 今整理している情報のベースが管理局のものなので、聖王教会所属のカリム・グラシアの情報が殆どなかったのだ。おまけに少し詳しく調査して分かったが、どうにも彼女は名目状少将の地位を与えられているだけで、厳密には管理局の職員とは言い難い扱いとなっている。

 

「……何で?」

 

 俺は当たり前の疑問を口にした。

 別段他の組織から出向という形で人材が動くのは珍しいことじゃない。ただそういう状況で動く場合は何らかの専門家が殆どだ。この場合考えられるのは聖王関連の何かが見つかり、管理局が聖王教会に協力要請した場合などが考えられるが、それだと態々機動六課の後見人になる必要も無い。

 それにカリム・グラシアのデータの秘匿具合を見るに、何らかのレアスキル保持者の可能性が高い。それを聖王教会が異動させるとは考え難い。

 

「流石に分からないな」

 

 情報が少な過ぎて考察も推測も出来ない。

 機動六課設立のタイミングから見てカリム・グラシアが何らかの鍵であると考えられるだけにもどかしい。

 

「……この際聖王教会に潜入してみるか? 俺一人だと厳しいが、ラヴィエがいれば可能だろうし……ん? げっ」

 

 聖王教会への潜入を視野に入れて頭で今後をシミュレーションしていると、思わず声が出てしまう嫌な情報が目に入った。

 

「ヴェロッサ・アコースの義姉!? うっわ、最悪だ」

 

 ヴェロッサ・アコース。

 俺が管理局員で嫌いな奴トップ3に入る。レアスキル《無限の猟犬(ウンエントリヒ・ヤークト)》が兎に角厄介で俺との相性が悪い。

 猟犬は数が多い上に探査能力が高い。魔力で生成されるから低コストでその癖普通に硬くて俺の魔法じゃなかなか破壊できないときている。

 おまけに猟犬が得た情報を術者に送信出来るらしく、過去に遺跡で猟犬と出会した時など近くの管理局員が集結し始めて転移する羽目になった。かといって数が少ない時に通信妨害した上で破壊してみたら、それでも管理局員が集まり始めた。

 推測だが術者と繋がりがあって破壊すると術者にロストした位置が伝わるんだろう。その時も消費型の古代遺物(ロストロギア)を使わされる羽目になった。

 

 ヴェロッサ・アコースと関わると必ず赤字になる。最悪だ。

 

「ラヴェエがいるならそれでも……いや、やっぱりやめよう。そうなると一番いいのは、聖王(ゆかり)古代遺物(ロストロギア)を見つけて、聖王教会の上層部に対価として情報もらう方が安全だな」

 

 次のプランを考えながらとりあえずはカリム・グラシアについてはここまでとした。

 

「さて後は実働部隊か。この辺は今更だな」

 

 八神はやて筆頭に守護騎士プログラムのヴォルケンリッター。そしてエースオブエースこと高町なのはに、執行官のフェイト・T・ハラオウン。

 

「まあ、この隊長、副隊長に関しては何もないな。会った逃げの一択。基本詰みだ。この間みたいな不意を突くのも次は厳しいだろうしなぁ」

 

 正直に言って過剰戦力もいいところだ。大概の犯罪者なら捕まえるのにお釣りが来る戦力だ。

 

 あとは新人で学生時代からコンビ扱いとなっているティアナ・ランスターとスバル・ナカジマ。

 

「ティアナ・ランスターに関しては……平凡だな。なんか凄い親近感が湧く。相方のスバル・ナカジマは……へぇ、詳細は不明だけど何らかの実験体。しかも姉妹揃ってか。何かこのコンビは親近感湧くなぁ」

 

 向こうとしては犯罪者から親近感を覚えられても迷惑だろうが、境遇や才能といった点からどうしても親近感を覚えてしまう。

 

「次がキャロ・ル・ルシエとエリオ・モンディエルか」

 

 竜召喚で有名なアルザス地方少数民族「ル・ルシエ」の名前に少し驚いた。

 そしてエリオ・モンディエルに添付されているプロジェクトFの文字に何とも言えない表情になる。

 

「あの民族がアルザスから出てくるなんて随分珍しいな。あとはエリオ・モンディエルか。なんていうか、隊長格は過剰戦力で下は訳有り多数って感じだな。上にしろ下にしろどう見ても集まり方が異常だな」

 

 この情報だけで初見で感想を述べるなら、問題児や訳有りを安全に教導するためととれなくもない。

 

「いや、やっぱり無理があるか。バックヤードも顔見知りで固めてる。どう見ても何か大きな事件なんかに素早く対応するために信頼とかを一番に考えてる布石だ」

 

 でもその大きな事件が全く見えてこない。

 

「なんだよこの部隊編成。方向性が全く見えない」

 

 改めて情報を整理しても余計に分からない。

 

 専門家を集めた何らかの対策チームでもない。かと言って試験部隊にしては私設と言っていいくらい身内が固まり過ぎてる。

 戦力集中を目指しているならリミッターの意味がわからない。

 総合して考えると「何が起きても何とか出来そうな布陣」という曖昧なものになってしまった。

 

「自分で言っててアホらしくなってくるな」

 

 やはり考えるにしても鍵が足りない。

 

「仕方ない。ラヴィエが起きたら聖王縁の遺跡を探索しに行くか」

 

 俺は結局昨日と同じ結論。

 この部隊が異常という答えまでしかたどり着けず、

 コーヒーを入れてラヴィエが起きてくるのを待つことにした。

 

 




イオリ側から見た機動六課の異常性になりました。
原作でもカリム・グラシアのレアスキルで「いずれ起こりうる陸士部隊の全滅と管理局システムの崩壊」という曖昧な情報への対処なので、事情を知らないで分析するとこんな風に訳の分からない部隊に見えるだろうなと考えてます。

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