リアルが色々忙しくここしばらく音信不通でしたが、一応生きてます。
更新を待ってくれている方からのメッセージもあったので、少しづつ再開していきたいと思います。(出来たらいいなぁ
「ふぅ、眩しいな」
《ゲート》の黒い渦、次元路に身を投じ体感で数秒の浮遊感を味わった後、俺達はアジトから一転太陽が降り注ぐ丘の上に立っていた。普段ならいい景色という感想も出るのだろうが、今の俺は徹夜明けのような疲労感があるので、この日差しの強さは正直に言ってきついものがある。
《Unverständlich(不可解です)》
「どうしたんだエファンゲーリウム?」
いきなりのエファンゲーリウムの言葉に俺の方が不可解な表情を浮かべることになった。
《Dies ist zu weit vom Versteck entfernt(ここはアジトから遠すぎます)》
「ああ、そういうことか」
エファンゲーリウムが何を気にしているかが分かった。
現在いる世界は先ほどまでいた俺たちのアジトがある世界からかなり離れた世界だ。普通ここまで離れている場合は次元航行艦やそれに類する物、または専用の転移施設が必要になる。なのに一瞬でそれらを使用することなく移動したことが不思議なのだろう。
「まあ、《ゲート》と他の
《Großartig(素晴らしいです)》
デバイスのAIとはいえ素直に褒められるのはむず痒い。
「……ここは?」
エファンゲーリウムの質問に答えると次はラヴィエはここがどこかを訪ねてくる。
「ここは聖王教会が管理してる世界の一つだ」
「……聖王教会?」
ラヴィエが首を傾げて不思議そうにしている。
「あれ?
まさか《M》のインストール時に不具合でも起きて見逃していたのかと冷や汗が流れる。ただでさえ微妙な調整が必要だったのにミスを見逃していたとしたら大問題だ。
「んーん、ある」
「そ、そうか。 それじゃあどうしたんだ?」
ミスしていないことに安堵しながら、それならどうしてラヴィエが首を傾げているのかわからない。
「……ん、聖王は私のオリジナルで人間。でも宗教は神様を崇めるってある。……不思議」
「あぁ、そういうことか」
ラヴィエの中では宗教=神様となっているのに、人間である聖王オリヴィエを崇めているのが不思議に感じている様だ。
普通の人間なら過去の偉人が成した偉業など普通は出来ないことを成した人を、聖人などの神に類する存在として崇めることに疑問を持たない。ただラヴィエにインストールされた知識は本当に必要最低限のため齟齬が生じてしまった様だ。
「まあそういうわけで、人間っていうのは成した偉業によっては人を崇める事もあるってわけだ。特に聖王オリヴィエは、戦乱の古代ベルカを自身を犠牲にしてまで戦争を終結させたってことで信仰されている。まあ、どこまで真実かは謎だがな」
どうせ宗教の事だから、何処かで自分たちの都合のいいようにねじ曲がっているだろうと俺は考えている。
「……ん、私のオリジナルは凄い」
「それでいいと思うぞ。オリジナルっていうより遠い祖先くらいの考えでいいんじゃないか?」
俺自身が造られた存在なのでイマイチ上手く伝えられないので、ラヴィエが納得したのなら訂正も修正もしない。
「さてと大分楽になったし、そろそろ移動するか。ここからなら遺跡までそう遠くないしな。ただラヴィエは《
「……ん、エファンゲーリウム」
《Jawohl(了解です)》
ラヴォエがエファンゲーリウムを手に取って掲げると白い光に包まれる。光はラヴィエを中心に渦を無し、その光景はさながら光の繭といったところだ。そして光の繭が砕け散ると白い装束を纏ったラヴォエがの姿がそこにある。
「……ん、完了」
「よしそれじゃあ出発だ。見つからない様に注意して行くぞ」
俺が先導する形で遺跡の方へと進み始めた。
────―
しばらく進んでいくと森の中に遺跡の入り口が見えた。
「(ラヴィエ止まれ)」
俺は念話でラヴィエに指示を出す。それと同時に森の草木に隠れながら遺跡の入り口近くに設置されている監視システムに目を向ける。
(型としては4世代前か。確かあのタイプは魔力感知を重視して、顔や網膜認証なんかはなかったはず)
事前の得た情報通りの古いシステムだ。あれなら魔力的な偽装を施すか、高位のステルスがあれば問題なく進める。
「(ラヴィエはステルス状態を最大にして、念のため魔力的にも視覚的にも見えなくなって付いてきてくれ)」
「(……物質透過はダメ?)」
「(あれは調べてみたら透過してる間、魔力が出てるから今回はダメだ)」
「(……ん、分かった)」
返事をした直後にラヴォエが魔力感知だけでなく視界からも姿を消した。ラヴィエが指示通りの動いたことを確認し、俺の方は腕に嵌めている腕輪に魔力を流して起動する。
「(《偽りの腕輪》起動。偽装認識を開始)」
普段他人の認識を誤魔化して俺の姿などを自動で認識できなくしている
「(よし、行くぞ。ラヴィエは2mくらい離れて付いてきてくれ)」
「(……ん、了解)」
姿は見えないがラヴィエからの返事が返ってくる。
準備を整えた俺は物陰から堂々と姿を晒して遺跡の入り口へと進んでいく。
『警告。警告。許可の無い者は即刻退去して下さい。繰り返します。許可の無い者は即刻退去して下さい』
ある程度近くに行くと警告音と共に監視システムの音声が流れ始めた。
「魔力パターンの測定申請」
『申請を受諾。これより魔力パターンの測定を開始します。……測定完了。該当者1名。聖王教会からの許可を確認しました。警報を解除します。ようこそグラウ司祭』
警告の音声が切り替わり、遺跡の入り口ゲートが開く。どうやら問題なく成功したようだ。
「それじゃあお邪魔しますっと」
俺は開いたゲートから遺跡内部へと入ると無言のまましばらく進んでいく。進みながら監視システムの空白地帯を探していると、
「ラヴィエ、もういいぞ」
そう言うとラヴィエが俺の背後2mの場所に姿を現した。
「……もういいの?」
「ああ、どうやら聖王教会は遺跡内部にまでは手を出してないみたいだ。地面を見る限り長期間人が出入りした跡もない」
そう言って俺が足を持ち上げると地面には足跡だけがクッキリと残っている状態になった。もしも定期的にでも人の出入りがあれば、薄れていても他の足跡が残っているはずだ。
おそらく聖王教会はこの遺跡については保存を優先させているのだろう。
「……飛べば?」
ラヴィエは浮いている自分の足下を指してそう言った。ラヴィエとしては飛んでいれば足跡が残らないから、足跡だけでは人の出入りが無い証明にならないと言いたいらしい。
俺は苦笑を浮かべながらラヴィエの考えを否定した。
「確かにラヴィエくらい魔力が多ければそれも手だが、普通はどんな仕掛けがあるか判断出来ない遺跡で魔力のロスは致命傷になる可能性が高いからまず無いな。それにこういった古い遺跡は魔力に反応するトラップも多い。だからラヴィエみたいに常時飛んでるヤツはまずいない」
……本当に居ないよな。
ここのところ機動六課の
「いやいやいや。あんなのがゴロゴロ居るわけないか」
これ以上この件に関して考えていると、本当にここで遭遇しそうな気がしてきた俺は頭を振って変な妄想を思考の外に追いやる。
「……行くの?」
「ああ、行こう」
頭を切り替えた俺はラヴィエにそう答えて遺跡の奥にすすみはじめた。