魔法少女リリカルなのはで盗掘中   作:ムロヤ

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さらに運悪く

「フェイトさん、すみませんでした!私がもっと早く気がついていれば……」

 

 シャーリーはそう言ってフェイトに頭を下げた。

 

「シャーリーのせいじゃないよ。デバイスを捨てたときに油断した私が悪いんだよ。」

 

 そう言ってフェイトはシャーリーの肩に手を置いた。

 

「でも……。」

 

「今回に限っては情報不足だ。二人とも気にすることはないさ。」

 

 二人がお互いに謝りあっていると、そこに一人の青年がやってきた。

 

「お義兄ちゃん。」「クロノ提督。」

 

 二人は声の主の方を振り向くと、そこにはクロノ・ハラオウンが資料の束を持って立っていた。

 

「フェイト。局内(ここ)では義兄ちゃんはやめてくれ。」

 

「あ、ごめんね。クロノ。それよりその資料は?」

 

 フェイトはクロノの持っている資料の束に目をやった。

 一番上の資料のタイトルから古代遺物(ロストロギア)に関する資料であることが分かったが、すべてが古代遺物(ロストロギア)関連だとしたら、とんでもない量である。

 

「ああ、これか。」

 

 クロノはかなり疲れた表情で両手で抱えている資料に目をやった。

 

「ユーノに頼んで至急探してもらった。今までイオリが盗掘した遺跡に関係がありそうな古代遺物(ロストロギア)の資料さ。」

 

 それを聞いたフェイトとシャーリーは目を丸くして驚いた。

 

「こ、これが全部ですか!?」

 

「クロノ……。」

 

「……残念だがこれはほんの一部だ。よく今まで見つからずにいたものだよ。」

 

 クロノは苦虫を噛み潰したような表情でそう言った。

 そしてクロノは資料を持ったまま歩き出した。

 

「詳しいことは執務室(へや)で話そう。」

 

 そう言ってクロノは二人を伴って、執務室(へや)へと向かった。

 部屋につくとクロノは机の上に資料を置き、椅子に座った。

 

「あ、私お茶入れてきます。」

 

 シャーリーはそう言って奥に入っていった。

 

「ありがとう。……さて、今回の件だがフェイトたちが接触した犯人の資料だ。」

 

 クロノがそう言うとフェイトの前に先ほどの犯罪者のデータが表示された。

 だがそのデータは資料と言うにはあまりにも穴だらけであった。

 

「お茶をどうぞ。……これって。」

 

 お茶を入れて戻ってきたシャーリーもその資料を見て愕然としていた。

 データが穴だらけなうえに、本人の画像データすらない。

 そこにあるのは容疑と名前だけで、とても資料とは呼べない物だった。

 

「クロノ。これって……。」

 

 フェイトは資料からクロノに視線を移した。

 その視線を受けたクロノは眉間に皺を寄せて、困った表情で話し始めた。

 

「この前捕まえた男が持っていた資料から得た情報だ。……とはいえ何もわからないと同じだな。名前もおそらくは偽名だろう。」

 

 フェイトとシャーリーは再び視線を資料に戻し、付属のもう一つの資料に目をやった。

 そこには前に逮捕された男が持っていた情報が記載されていた。

 

古代遺物(ロストロギア)収集家(コレクター)……。かなり昔から盗掘や密売を繰り返してる。ほかにも古代遺物(ロストロギア)の不法所持も。それもかなりの数を所有していると思われる。そしてDr.スカリエッティとも交友があるらしい。」

 

 シャーリーが声に出して資料を読み始めた。

 

「でもクロノ。どうして今まで名前も聞かなかったの?それに本人の映像がないのはどうして?」

 

「まず名前だが、どうやらかなりしたたかな奴らしい。基本的に管理外世界でのみ活動している。密売も足がつかないように何重にも策を凝らしているようだ。……そして映像だが、君たちは奴の姿を見たときどう見えた?」

 

 クロノの質問の意図が分からず、フェイトとシャーリーはお互いの顔を見ながら同時に答えた。

 

「黒髪短髪の青年……え?」

「白髪長髪の少女……え?」

 

 二人はもう一度お互いの顔を見ながら声を上げた。

 

「そういうことだ。どうやら認識阻害の古代遺物(ロストロギア)を使用しているらしい。肉眼だけでなく機械の映像までばらばらだ。二人が見た転移にしても、こちらで把握していない古代遺物(ロストロギア)だろう。」

 

 二人は何度目かになる驚きを感じていた。

 だがそこでフェイトが何かに気がついたようで考え始めた。

 

「でもクロノ。古代遺物(ロストロギア)は制御が困難なものが多いよね。なのに転移の時の映像もダメなの?」

 

 フェイトは過去の記憶で、制御が簡単な古代遺物(ロストロギア)など見たことがなかった。

 

「そうですよ!フェイトさんのバルディッシュになら……。」

 

「残念だがそれはもう調べた。そして管理局(こちら)の見解はイオリが複数の古代遺物(ロストロギア)を同時に使用できるとなった。」

 

 クロノの話しを聞き二人は息を飲んだ。

 

「とはいえ、今のままでは情報が少なすぎる。あくまでも仮説だ。……だが今回の件でこちらにも人を回してもらえることになった。」

 

 クロノはそう言ってわずかに口元に笑いを浮かべながら新しい資料を表示した。

 そこにはフェイトのよく知る人物が映し出されていた。

 

「あ、シグナムとヴィータが来てくれるの。」

 

「それなら心強いです!」

 

 フェイトとシャーリーは嬉しそうに表示されている人物を見つめた。

 

「ああ、だが相手はどんな古代遺物(ロストロギア)を所持しているのか全く分からない。」

 

 クロノは真剣な表情で二人を見ながら油断しないように釘を刺した。

 

「「はい!」」

 

 こうしてイオリの知らないところで面倒事は大きくなっていった。


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