魔法少女リリカルなのはで盗掘中   作:ムロヤ

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久々の投稿です。
二次創作は難しく、書いているうちに「あれ?このキャラってこんなんだっけ?」に何度も陥ってしまいました。
やはり元々設定のあるキャラを動かすのは、すごく難しいです。


予感的中

「さてと、目的の場所にようやく到着か。」

 

 俺はアジトを後にした後、いつも通り足がつかないよういくつもの管理世界と管理外世界に転移し、わざと足跡(ログ)を残したり、残さないようにしたりと念には念を入れてようやく目的の管理外世界に到着した。

 

「さてと周囲には何の反応もないな。……さすがに心配しすぎだったか?」

 

 今回必要以上にいろいろな世界を移動してきたのは、先ほどの管理局の情報のためだ。

 別段なんの確証もないがどうにも嫌な予感がした俺は、途中で捕捉される危険を冒してまで移動に時間を掛けた。

 

「まあ管理局のフェイト・T・ハラオウンともなれば、慎重になりすぎて悪いなんてことはないだろう。……あれの母親も頭が切れる上に執念深かったしな~。」

 

 そういって少し昔に苦い思いをしたことを思い出したが、気持ちを切り替えた俺はさっそく遺跡に向かった。

 

 

「ヴィータ副隊長!対象が例の管理外世界へ侵入しました。現在遺跡に向かっています。」

 

「おう。そのまま追跡してろ。ばれんじゃねえぞ。」

 

「了解!」

 

 ヴィータはそう言って画面に映し出されているイオリに目を向けた。

 とはいえイオリ(こいつ)は見る人によって姿が変わるらしく、今現在画面に映っている人物がイオリ《本人》なのかはわからない。

 だが状況から見ておそらくは間違いないだろうと、ヴィータたちは考えていた。

 

「ヴィータ。そちらの様子はどうだ?」

 

「シグナム。いまのところは問題ねーよ。ただやたら警戒してやがるんだよこいつ。」

 

 二人がモニターを見ると少し進んでは周囲を警戒しているイオリの姿が映し出されていた。

 その様子は異常と言えるほど警戒心が強く、犯罪を重ね何度も成功してきた者にありがちな油断や慢心が一切見られない。

 

「……厄介だな。こういった手合いはかなりの切れ者か、臆病者が多い。」

 

「だな。」

 

 シグナムの答えにヴィータも苦い顔をしていた。

 今回こうやって一方的に姿を捉えることができたのは、クロノと騎士カリムたちが裏から手を回したおかげで小型だが次元航行艦を一時的に与えられ、ユーノの協力で事前情報が得られたためだ。

 本来であれば一犯罪者のために次元航行艦が一隻貸し出されるなど異例なことだ。

 それにより宇宙()からイオリを捕捉し、こちらは気づかれることなく待ち伏せができている。

 

「シグナム。ヴィータ。監視の方はどうですか?」

 

 シグナムたちが難しい顔をしていると、フェイトが指令室にやってきた。

 

「あまりいい状況ではないな。……かなり警戒されているようだ。」

 

「だな。あいつ、何かあればすぐに逃げそうだな。」

 

 シグナムとヴィータはそれぞれの感想を口にした。

 それを聞いたフェイトは先日の戦闘でまんまと逃げられたことを思い出した。

 

「ユーノの話しだと、あれはたぶん古代遺物(ロストロギア)によるものだから、何度も同じ手は使えないって言っていました。」

 

 それを聞いてもシグナムたちは難しい顔のままだった。

 

「戦場でもああいった手合いはいたが、ああいった手合いほど奥の手をいくつも持っている。油断はできないな。」

 

「おう。戦場では見つけたら真っ先にぶっ潰してたな。」

 

 古い戦でも思い出しているのか、その顔には悲しみともつかない複雑な感情が浮かんでいた。

 

「隊長!対象が遺跡に接触しました。」

 

 その報告により指令室の空気が変わった。

 

「考えていても仕方がありません。元より対象は複数の古代遺物(ロストロギア)を所持しています。最大限に警戒していきましょう。」

 

「ふっ。たしかに。」

 

「だな。とりあえずはぶっ潰せばいいだけだしな。」

 

 二人は獰猛な笑みを浮かべて自らの相棒を手にした。

 

 

「おかしい。なんか知らんがおかしい。」

 

 俺は現在急速に膨らんできた違和感の正体を探していた。

 

「……罠か?いや、それならこの周辺に何の反応もないのはおかしい。……俺の勘も鈍ったか?」

 

 いくら管理局の連中が気配を消していても、俺の手には古代遺物(ロストロギア)の一つで半径100㎞に存在する生命体と熱源、魔力を探索するものがある。これは魔力消費が多いが、今回は警戒してそれを複数回使用しているが人間は一度も引っかからない。

 いくら魔力を隠したところで、生きているものは、この探索から逃れることはできない。そして俺はステルス系の古代遺物(ロストロギア)も所持しているので、俺を見つけるなら常に俺が来る遺跡が視界に収めなければならないので、周辺に管理局がいないのは確実だ。

 

「……なのにこの嫌な予感はなんだよ。」

 

 そうこうしているうちに遺跡に到着してしまった。

 

「なんか釈然としないが、まあいいか。」

 

 納得できないがアジトの維持費などにかかる金を考えると、ここで古代遺物(ロストロギア)を回収しないは無理なため俺は意を決して遺跡に侵入した。

 

 

「対象が遺跡に侵入しました。」

 

 報告を受けたフェイトはシグナムとヴィータに視線を向けた。

 二人は頷き他の隊員にも指示を出し始めた。

 

「結界班は拘束用の閉鎖結界の維持を!相手は未知の古代遺物(ロストロギア)を所持している隙を見せるな。」

 

「戦闘は基本的にあたしとシグナム、フェイトの三人だ。それ以外は結界に専念しな。」

 

 指示を受けた隊員たちはそれぞれの役割につき始めた。

 

「それでは転送を開始します。ご武運を!」

 

 

「こいつか。」

 

 俺は遺跡の奥にあった隠し部屋でそれを見つけた。

 それが何なのかはわからないが、スカリエッティ(変態)が探しているモノらしい。他にもいくつか売れそうなものがあり、なかなかの大量だった。

 

「にしてもなんだこれ?……何かのパーツみたいだな。」

 

 見た感じでは古代ベルカで使われていた建造物の制御用コアユニットに似ているが、今手の中にあるこれは少し違うようだ。

 

「なにか特注の巨大建造物の制御ユニットか?……なんでこんなものをスカリエッティ(あいつ)は欲しがるんだ?あいつの専門は生体系だったはずだけど……。まあいいか。余計な詮索はしないに限る。」

 

 納得した俺は回収したそれらをしまうと来た道戻り始めた。

 

「!?」

 

 その時、周囲に突然転移反応が現れた。

 それと同時に遺跡を中心に閉鎖型の捕獲結界が展開された。

 

「くそっ!やっぱり罠か!けどどうして反応が今までないんだ?……考えてても仕方ない。ここに入ってこられると袋小路だ。外で隙を窺うか。」

 

 俺は管理局の連中が遺跡に入ってくる前に、外へと出た。

 そこにはかなり絶体絶命の状況が展開されていた。

 

「おいおい。勘弁してくれよ。」

 

「管理局です。今度は逃がしません。」

 

 俺の視線の先には、先日も現れたフェイト執務官に加え管理局でも有名な八神ファミリーの二人、烈火の将と鉄槌の騎士がいた。

 

「随分と物騒だな。フェイト・T・ハラオウン執務官殿。俺みたいな小物に管理局の有名どころがさらに追加なんて。」

(ぎゃー!どうすんだよこれ!詰んだ!?)

 

 俺は内心かなり焦りながら話しかけた。

 

(たしかあっちの二人は闇の書の守護騎士だったな。なんで主から離れてんだー!くっついとけよ!くんじゃねーよ!)

 

 あまりのオーバーキルぶりに俺は泣いて良いなら泣きたい気分だった。

 

「おとなしく投降してください。指示に従わない場合は……」

 

「テスタロッサ。その手合いに時間を与えるな。逃げられるぞ。」

 

 フェイト・T・ハラオウンが発していた降伏勧告を遮り、シグナムは剣を構えた。

 

「そうだな。ぶっ叩いて捕まえればいいだけだな。」

 

 ヴィータも自らの相棒を手に構えた。

 

「はっ!さすがは闇の書のプログラム!物騒極まりないな!今代の所有者もやることは他人を害することだけだな!」

(会話で時間稼ぎは無理か。なら怒らせて隙を作るか。)

 

 俺は頭に入っている情報から、二人が怒りそうな言葉を選んだ。

 

「……てめぇ!」

 

「落ち着けヴィータ。安い挑発だ。主はやてに謝罪させるのも逃がしてしまっては、元も子もない。」

 

 一瞬ヴィータが食いついたと思ったが、どうやら将と呼ばれるだけあってシグナムの方は冷静だった。だがその目には静かな怒りが浮かんでいた。

 

(ああーー!!冷静に怒ってる!逆にヤバイ!?)

 

 どうやら目論見は失敗しただけでなく、事態を悪い方に進展させてしまったようだ。

 

「テスタロッサ。交渉は決裂だ。……行くぞ!」

 

 それだけ言って二人がこちらに突っ込んできた。

 

「あー!くそっっ!《氷柱(つらら)》」

 

 俺は牽制のために二人に向けて、人の腕ほどある氷の杭を数本打ち込んだ。

 

「甘い!」

 

 ゴウという音とともにシグナムから炎が燃え上がり、俺の出した氷の杭は全て溶けていった。

 

(がー!!わかってたけど炎熱変換(シグナム)凍結変換()は相性が悪すぎる!)

 

「……テスタロッサ。ヴィータ。気をつけろ。どうやらイオリ(あいつ)は凍結の変換資質があるようだ。特にテスタロッサは気をつけろ。奴の攻撃は質量兵器と変わらない。当たれば魔導師の防御では厳しい。」

 

 氷の杭の出現速度から、フェイトたちは俺が凍結変換を持っていると悟ったらしい。

 

「私は当たりません。」

 

 フェイトはそう言ってシグナムに微笑みかけた。

 それを見たシグナムも無用な心配だったかと、笑みで返した。

 

「ふぅー。久々に本気でやらないとまずいか。《氷鏡(ひょうきょう)》」

 

 俺は本気で戦うことを決意し、自分の周りに4枚の氷でできた鏡を出した。

 鏡は俺の周りをクルクルと回りながら浮いていた。

 

「そんな氷まとめて叩き割ってやる!アイゼン!」

〈Ja Raketenform!(ラケーテンフォルム)〉

 

 ヴィータの声に応えアイゼンがフォームチェンジし、回転しながら突撃してきた。

 

(ちぃ!いきなりかよ!)

 

 俺は突っ込んでくるヴィータに対して氷鏡を一枚防御に向かわせながら、他の二人にも意識を向けた。

 

〈Arc Saber〉

「はぁぁぁ!」

 

「!こっちもかよ!?《凍弾》!」

 

 俺がヴィータに意識を取られたほんのわずかな隙を見逃すことなく、フェイトがすぐそばまで接近していた。

 俺は眼前にまで接近してきたフェイトに向けて魔力弾を撃ち込んだ。

 

〈Sonic Move〉

 

 打ち込んだ魔力弾はあっさりと躱されてしまった。

 

「そうだよな!当然避けるよな!」

 

 もとより俺は今の魔力弾が当たるとは思っていない。

 何せフェイトと言えば管理局でも速さがトップクラス魔導師という情報だ。そんな奴に正面から攻撃して当たるとは思ってはいない。

 

「なっ!?」

 

 フェイトが避けて空いた空間に、いつの間にか一枚の氷鏡が移動していた。魔力弾は氷鏡に当たると鏡の中に吸い込まれていった。

 そして氷鏡を割ろうとしてデバイスで攻撃を加えていたヴィータの目の前の鏡から、突然魔力弾が現れた。

 

「「ヴィータ!?」」

 

 フェイトとシグナムは驚きの声を上げた。

 シグナムが急いで近寄ると、ヴィータは右腕が肩のあたりまで氷漬けにされていた。

 

「くっ。問題ねーよ。」

 

 ヴィータは苦しそうな呼吸をしながらも、寄ってきたシグナムにそう言った。

 

「強がりはよした方がいいぞ。その凍結は徐々に進行していく。ほっといたり無理に動かすと腕が砕け散るぞ。」

(え~、今の不意打ちもギリギリで回避するのかよ!普通は間に合わなくて完全に氷漬けなのに。)

 

 俺の魔力弾は普通とは異なり、凍結変換によりぶつかった対象を凍らせていく。

 今言ったように放っておくと徐々に凍結が進行し砕け散る。ただし凍結の進行は俺の周囲半径100mの中でのみで、そこから出られてしまえば進行は止まる。

 とはいえ進行が止まるだけで凍ったものがもとに戻るわけではないので、適切な処置をしなければ壊死していく。

 

(とはいえこいつらはもともと闇の書のプログラムだっけか?生きてないなら壊死とかないのか?)

 

「シグナム。炎で溶かせねーか?」

 

「やめた方がよさそうだ。ヴィータお前は下がれ。」

 

 シグナムがヴィータに撤退するように言った。

 

(おうおう、減ってくれるなら大歓迎だ。……それより下がれ(・・・)か。気軽に言えるってことは近くに拠点ないし、それに類するものがある。だが反応はなかった。)

 

 俺はシグナムとフェイトを警戒しながらも、今の言葉から今回の不可解な点の分析を始めた。

 

(なら結論は100㎞以上離れながら、ピンポイントでここを監視できる場所。もしくは設備。あるいは両方か。……まさか!?)

 

 俺はそこまで考えて一つの結論が出た。

 

「は!どうにも動きが素早いと思ったら、(ふね)ごとお出ましかよ!」

 

 俺の言葉を聞き三人は息を飲んだ。

 それだけで俺の推測が当たっていたことが証明された。

 

(マジか!どんだけ本気なんだよ!?)

 

 当たったからと言って、今さらどうしようもない俺はどうやって現状を脱するか悩むことは変わりなかった。

 

 

 


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