一龍妖魔學園紀   作:影鴉

25 / 41
月に1~3話は投稿したい今日この頃。
無理しない様頑張ります。

サブタイトル元
『彼女の恋人』 歌:槇原 敬之


 彼女の恋人

過ぎ去る時間とは失われた時間であり、

怠惰と無気力の時間であり、

いくたびも誓いを立てても守らない時間であり、

しばしば引っ越しをし、

絶えず”金”の工面に奔走する時間である。

 

───サルトル「ボードレール」

 

 

____________________________________________

 

 

4月16日

 

1限目

 

『IS学園(ISがくえん)』1年1組

 

 

(さっきの女子、一龍は鈴と呼んでいたな…)

 

 

 千冬が授業を進める中、私は朝のSHR前に起きた出来事を思い返していた。1組へ宣戦布告してきた鈴と呼ばれた娘。デートの時に一龍が教えてくれた幼馴染が彼女と云う訳か。

 

 

(猫みたいな、人懐っこそうな娘だったな)

 

 

 千冬さんが来たから一龍に確認する事が出来なかった。休み時間に詳しく聞けば良いのだろうが、どうも気になってしまう。

 

 

(彼女が一龍に告白した娘。一龍自身は当時、その意味を理解できずにいて、今理解した上で私を選んでくれた…)

 

 

 一龍が私を愛している事を改めて実感し、嬉しくなる。

 

 

(そうだとも、一龍は私の恋人だ)

 

 

 同じく一龍を好いている彼女には悪いが、一龍と私は既に付き合っており、愛し合っている仲なのだ。

 

 

(まぁ、あの夜は遣り過ぎな気がしたが…)

 

 

:::::

 

 

ある日の夜

 

 

 夕食と風呂を終え、私と一龍はその日に習った授業の内容を復讐していた。一般高校の授業内容に加え、ISに関する歴史から法律、機体の構造や性能、また扱っている部品の会社まで幅広い情報を習う為、予習・復習は欠かせないのだ。

 

 

「ふぅ、一段落着いたかな? 箒はどうだ?」

「私も大体終わったな」

「それじゃあ、一息入れるか?」

「そうだな」

 

 

 茶を沸かし、部屋の中央に置いたテーブルで一服入れる私達。

 ふと甘えたくなり、一龍の腕に抱き着く。すると、一龍はそれに苦笑しながら私の頭を撫でてくれた。因みに今は髪を下ろしている為、一龍は撫でながら流れる様に私の髪を梳く。それがまた心地良い。

 暫く私の頭を撫でていた一龍だったが、抱き着いていた私の腕を解くと後ろに回り込む。

 

 

「一龍?」

 

 

 一龍は何も言わずに私を膝に乗せ、更にお腹に手を回して抱きしめる。

 

 

そして…

 

 

「ひゃん!?」

 

 

 私の首筋に優しく唇を這わせ、ハムハムとし始めた。突然の事に驚きながらも首筋を這っていく唇が擽ったく、そして恥ずかしい。

 

 

「い、行き成り何をするのだ、いちろ……ふぁあん!!?」

 

 

 一龍の唇が首筋から肩へと移動し、更に腹部に当てられている手も優しく摩り始めた。擽ったいが心地良い。

 

 

「い、一龍! 『男女7歳にして同衾せず』と云う…ふぁ…言葉があってだな…」

「箒…」

 

 

 私の耳元で一龍が囁く。

 

 

「俺だって男だ。そして箒は俺と付き合っている」

「う、うん……」

「好きな女の子と一緒に居てじっとしていられる訳じゃあ無い」

「だ、だが流石にこれはっ………」

「大丈夫、今日はこれ以上の事はしないから」

「(これ以上の事を何時かはするのか!!?)ひぃん!?」

 

 

 今度は項を這って行く。

 その後15分間程、一龍に攻め弄られてしまった。

 

 

:::::

 

 

(まったく……、大胆過ぎだったぞアレは…)

 

 

 夜の事を思い出してしまい、箒は顔が真っ赤になりそうになる。

 

 

「――2025年に米国が打ち上げたヘーリオスだが、太陽光を太陽電池を用いて直接的に電力に変換し、地上にある大規模太陽光発電所にエネルギーを照射する発電方法なのは諸君も知っていると思う。2031年では主要国の殆どがこれ使用している」

 

 

 千冬が授業の話を続けているが耳に入ってこない。

 

 

「日本はアメリカの物を使わせてもらっているが、竜胆グループがこれに代わる物を現在製作しているものがある。その名称は...篠ノ之答えてみろ」

「はいっ!?」

 

 

 話を聞いていなかった箒は突然の千冬の指名に慌てる。聞いていなかったのだから当然答える事が出来ない。

 

 

「どうした? 中学の社会でも少しだが出ている内容だぞ?」

「す、済みません。聞き逃してしまいました!」

 

 

 箒は素早く立ち上がって千冬に謝る。出席簿で叩かれるだろうかとハラハラするが…

 

 

「…真面目なお前が珍しいな。次から気を付けろ?」

「……はい」

 

 

 叩かれずに済んだが注意され、箒は恥ずかしそうに教科書を捲るのであった。

 

 

:::::

 

4限目後 昼休み

 

『マミーズ IS学園店(マミーズ ISがくえんてん)』

 

 

「お、来た来た。待ってたわよ一龍!」

 

 

 箒、真次郎、セシリアの4人で食堂へ赴くと、食堂入り口のど真ん中で鈴は立っていた。

 後ろにはルカとニコラスもいる。

 

 

「そないなトコに立っとったら通る人の邪魔になるやろが」

 

 

 ニコラスが呆れ顔で鈴の襟首を掴んで持ち上げた。

 

 

「んにゃー! 放してよニコラス!!」

 

 

 床に届かない足をバタバタさせながら鈴は抗議の声を上げる。その姿は首を掴み上げられて暴れる猫の様だった。

 

 

「ニコラス達も一緒なのか?」

「いや、ワイは嬢ちゃんに誘われたルカ坊に付いて来ただけやで?」

「一龍達も来たし座ろう?」

 

 

 ルカに促され、席に着く。一龍と箒、真次郎、セシリアの1組とルカ、ニコラス、鈴の2組で計7人であったが運よく大人数用の席があった。横を通りかかるウェイトレスにそれぞれ料理を注文する。

 

 

「ラーメン一つ、味は豚骨ね?」

「鈴はラーメンか?」

「良いでしょ? 好きなんだもん」

「なら俺も便乗して、カレーラーメンを一つ」

「私もラーメンを、ええと…月の草と書いてソーマラーメン?」

「僕はチーズラーメンで」

「ワイは角煮ラーメンや」

「五目ラーメンだ」

「わ、わたくしも同じ五目ラーメンを」

 

 

 なんだかんだで全員がラーメンを注文する事になり、ラーメンが来るまで鈴と初対面となる1組メンバーと自己紹介をする事となった。

 

 

「それじゃ、改めて紹介するわ。2組に入った中国国家代表候補の鳳 鈴音よ。気軽に鈴って呼んで♪」

「篠ノ之 箒だ。宜しく頼む」

「…荒垣 真次郎だ。好きに呼べ」

「イギリス国家代表候補のセシリア オルコットですわ」

 

 

 鈴と箒、真次郎、セシリアが互いに名前を名乗る。

 

 

「一龍から聞いたが、小学高学年からの付き合いだそうだな?」

「そうよ。一龍とは幼馴染になるわね、ええと?」

「箒と呼んでくれ。私も一龍と幼馴染で鈴が転校してくる前に引っ越した身だ」

「じゃあアタシは2番目の幼馴染かぁ。ま、宜しくね」

「うむ」

 

 

 一龍の幼馴染同士、笑顔で握手するが目は笑っていない。互いに一龍へ思いを寄せているのだから当然であるが、笑っていない理由は異なっていた。

 共に一龍が好きなのであろうが譲って堪るかと敵対心を燃やす鈴に対し、既に一龍と恋人の関係であり、鈴にどう対応していけば良いか悩む箒。

 

 

「元気でやってたか?」

「まぁね、しかし驚いたわ。何ISなんて起動させているのよ?」

「俺の方は色々あったからな」

「その名前と関係有る訳?」

「……まぁな」

「千冬さんと喧嘩でもしたの? 早く仲直りしなさいよね」

「ああ、そうだな…」

 

 

 事情を知らない鈴からの指摘に一龍は小さく答える。近い内に事情を箒達に話すべきかと悩む彼であるが、後で考える事にし話題を変える事にした。

 

 

「それで、クラス代表は譲って貰えたのか?」

「……………」

 

 

 聞きたかった事を尋ねるが、鈴は不機嫌な顔になって黙り込む。

 

 

「駄目だったと?」

「僕が説明するよ」

 

 

 ルカが代わりに事の顛末を語り出した。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

1限目休み時間

 

『IS学園(ISがくえん)』1年2組

 

 

「ルカ、お願いがあるんだけど」

「何?」

「クラス代表の座を譲ってくれない?」

 

 

 休み時間に入り、鈴はルカに早速頼み込んで来た。

 瞬間、騒がしかった教室がシィンと静まり返り女子達の視線がルカと鈴の2人に集中する。先程までルカと話していたニコラスはやっちまった~と云う様な顔で額に手を当てていた。

 

 

「ええと、リン? それはどういった理由でなのかな?」

 

 

 若干の冷や汗を掻きながらルカは鈴に尋ねる。

 

 

「アタシは代表候補生だし、ルカより経験があるでしょ?」

「いや、まぁ、そうなんだけど………クラスの皆が決めた事だから」

「どうせ男だから珍しいって理由でしょ?」

「えぇと……まあそうなんだけど…」

「ちゃんとアタシが優勝してあげるから、ね? 良いでしょ?」

「あうあう…」

 

 

 強気でグイグイ来る鈴にルカは押され気味。

 

 

「こら、いきなり何言い迫ってんねん?」

「にゃ!?」

 

 

 そこへニコラスが現れ、片手で襟首を掴まれ吊るし上げられる。驚いた鈴はジタバタ暴れるが足が床に届いていない為、ブラブラ揺れるだけであった。

 

 

「ちょっと何するのよ!? あんた誰?」

「そこのルカ坊と同じ2組のモンや、突然グイグイ来られとるからルカ坊が困っとるやないか」

「わ、分かったわよ。…ルカ、御免ね?」

「ううん、気にしないで? それより代表の事だけど僕だけじゃなくてクラスの皆にも聞いてくれないかな?」

「うう、分かったわ」

 

 

 ルカの言葉に降ろされた鈴は頷くとクラスの女子達の方へ向いて尋ねた。

 

 

「と言う事でアタシがクラス代表で良いわよね?」

《ふっざけんな―――――――――――――――――――――っ!!!》

「にゃあ!!?」

「おうおう、盛大に地雷を踏み抜きおったで」

「…………やっぱり」

 

 

 鈴の質問に、怒号が教室に響き渡った。

 

 

「寝ぼけた事ぶっこいてんじゃねぇぞゴルァ!!」

「ルカきゅんの活躍を邪魔すんじゃねぇぞ、この猫娘がぁ!!」

「2組の代表はルカちゃま一択なんだよぉ!!!」

「おととい来やがれこのチャイニーズ!!」

「な、何なのコレ!?」

「2組の女子はな、皆がルカ坊のファンクラブに属しとるんや」

「ファンクラブ!? ルカってアイドルだったの?」

「ち、違うよ! アイドルじゃ無いからね!?」

「あの嬢ちゃん達がそう見とるだけやで?」

 

 

 鈴は驚いた表情でルカを見るが、ルカは首をブンブン振って否定する。

 

 

「我らが2組のアイドルことルカきゅん」

「そのルカ君の活躍を邪魔する者は!」

《『ルカちゃまを愛でる会』が許さない!!!!》

「る、『ルカちゃまを愛でる会』!?」

 

 

 バァーン!! と効果音が出そうな雰囲気の中、2組の女子達が集まってポーズを決める。その光景に鈴は唖然、ルカは苦笑し、ニコラスは「よう訓練しとるわ」と拍手をしていた。

 

 

「な、なら担任にもお願いして……」

「あ、嬢ちゃん。担任も会員やで?」

「担任まで!?」

「つーか、学園の7~8割が会員になっとる(※ブリュンヒルデのファンは約6割です)」

「何よそれ!? 完全に学園アイドルじゃない!!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「なんていうか……ファンクラブっつうより、一種の狂気信仰になってねぇか?」

「ルカさんの人気は凄いですわね…」

 

 

 ルカから2組で起きた出来事を聞き、真次郎とセシリアは呆れ顔になる。

 

 

「大ブーイングの嵐よ? 担任も頼もうとしたら怖い顔になるから誤魔化しちゃったし」

「それじゃあ諦めるしか無いな」

「いいえ、まだ交渉してみるつもりよ?」

「僕から頼む方が良いのだろうけど、後でリンが何て言われるか分からないから…御免ね?」

「ルカは気にしないで良いわ。アタシが遣りたいだけなんだし」

 

 

 ルカが申し訳なさそうな顔をする。ルカがクラスの皆を説得するのが一番手っ取り早いのだが、ルカが鈴に脅された等と勝手に勘違いされて袋叩きに合う可能性がある為に迂闊に動けないでいた。真次郎が言った狂気信仰と云うのも強ち間違いで無かったりする。

 尚、一龍達の様にISバトルで代表を決める事も考えられたのだが、クラス対抗戦まで残り1週間を切っている為、アリーナを使用出来るのは授業以外では対抗戦に備えての練習のみに限られてしまい出来ないでいた。

 

 

「話は変わるけど、1組は一龍が代表なんでしょ? ISの操縦、見てあげよっか?」

 

 

 鈴は親切心から一龍に提案をしてくる。

 

 

「それは嬉しいけど、クラス代表はどうするんだ? 早く譲って貰える様に頼まないと時間が無いぞ?」

「うぐ、確かに…」

 

 

 結局、クラス代表を諦め切れない鈴は昼休み以降も交渉に時間を当てる事にし、食事を終えた一龍達はそれぞれ解散となった。

 

 

::::::::

:::::

::

 

 

放課後

 

『IS学園(ISがくえん)』第7アリーナ

 

 

「そこでスラスターを使えば斬撃の威力が上がるぞ」

「ううむ、解っていたがやはりISだと勝手が違うな」

「ISだと空中戦がメインだから地面や床を蹴る事が基本無いしな」

 

 

 箒がISを借りる事が出来た為に皆で近接訓練をする事になった。一龍は箒と、真次郎はセシリアと組み、練習を行っている。

 

 

「移動の際に動きに無駄がありますわ。もう少し自然体で制御してみて下さいまし」

「こうか?」

「そうそう、お上手ですわ」

 

 

 一龍は箒に近接攻撃を、セシリアは真次郎に移動のアドバイスをする。1時間程訓練をした後、2on2でのタッグマッチを行った。

 一龍がオールレンジの武装で変幻自在のサポートを行うが、前衛である真次郎がポリデュークス騎乗で高軌道戦闘による攪乱をし、そこへ後衛であるセシリアがビットによる狙撃をする事で見事なコンビネーションを発揮し、4人の中では実戦・搭乗経験が少ない箒が先に撃破されてしまい、一龍は1人で奮闘するものの、結果は一龍&箒ペアの敗北で終わってしまった。

 

 

「やりましたわ、シンジさん!」

「おう、サポート有難うな。セシリア」

「シンジさんが一龍さん達を抑えてくれたおかげですわ♪」

 

 

 勝利することが出来たセシリアは嬉しそうに真次郎へ駆け寄る。

 

 

「済まない一龍、私が不甲斐無いばかりに…」

「【燃】箒は頑張ったさ。俺の方こそサポートが足りなかったし、反省して次に生かせば良い訳だし。次は勝とうぜ?」

「…そうだな、次は勝とう!」

 

 

 敗北した一龍達は次こそ勝とうと心に決めるのだった。

 

 

「一龍~」

 

 

 そろそろ片づけに入ろうとしたところに鈴がやって来た。何か、凄く疲れた表情をしている。その手にはスポーツドリンクとタオルが入った袋を掲げている。

 

 

「おう、鈴。交渉は上手くいったか?」

「全然駄目。もう諦めた方が良いかしら?」

 

 

 そうぼやきながら一龍達にドリンクとタオルを手渡す。他の人に聞いたのであろう、4人分用意してくれていた。

 

 

「ルカは入試試験の模擬戦で教官に勝つ実力者だし、もう良いんじゃないか?」

「うぅ~、アタシだって勝ったのよ?」

 

 

 うがーと可愛らしく吠える鈴、その姿に一龍は苦笑する。

 鈴がクラス代表に拘る理由を一龍は知っている。両親が離婚をし、母親と共に中国の母方の実家へ帰って行った鈴であったが、母親の仕事が上手くいかず厳しい生活を一時機送っていた。其の為、鈴はIS適性の高さから国家代表候補に応募し見事当選。国からの支援金で家族の負担を和らげていたのだ。

 しかし、国家代表候補となった以上成績を残さなければならなく、クラス代表候補となって白星を挙げていく事は正に打って付けであったのだ。

 

 

「ま、俺からは頑張れとしか言えないな。それじゃあ箒、俺は一龍(イーロン)の整備で少し遅くなるだろうから遅い時は先に夕食とか済ませといてくれ」

「うむ、分かった。一龍が遅いなら今日は部屋のシャワーで済ませるかな?」

「それじゃあ、お先に」

「シンジさん、セシリア、鈴また明日」

 

 

 そう言って一龍と箒はアリーナから出て行く。

 

 

「ねぇ、今のってどういう事?」

「あら、聞いておりませんでしたの? 一龍さんと箒さんはルームメイトですわ」

「えぇ!? 何で?」

「男性操縦者が7名で1人余りますから、ちょうど知り合いである2人が一緒になったそうですわ」

「男女2人っきりって……、ずるいわ!」

 

 

 そう叫ぶと鈴は駆けだしてアリーナから出て行った。

 

 

「ありゃまた揉めるな」

「ですわね、鈴さんも一龍さんの事が…」

「だろうな。だが一龍はもう箒と付き合っている」

「ですが鈴さんが簡単に納得するでしょうか?」

「…さぁな」

 

 

 朝から何かと騒がしい日であったが、夜もまた一波乱起きそうである事に2人は溜息を吐くのであった。

 

 

::::::::

:::::

::

 

 

 

『IS学園(ISがくえん)』 学生寮

 

 

「という訳で部屋を代わって欲しいんだけど?」

「何がという訳だ、単に一龍と一緒の部屋になりたいだけなのだろう?」

 

 

 1025号室にやって来た鈴に箒は呆れ顔で答える。

 

 

「そもそも部屋の割り当ては寮監である千冬さんが行ったものだぞ? 代わりたいなら千冬さんを通してからでないと困る」

「そ、それは……」

 

 

 勝手に部屋を変える事は出来ないと言う箒の正論に鈴は反論出来ない。そこへ専用機の整備を終えた一龍が帰って来た。

 

 

「ただいま、って…2人でどうしたんだ?」

「おかえり、一龍。いやな、鈴が部屋を代わって欲しいと頼んできてな」

「一龍はどうなの?」

「どうって……、同じ幼馴染だしな。それに、織斑先生が決めた事だから生徒でしかない俺が決める事は出来ないぞ?」

「…一龍までそう言うの?」

 

 

 一龍の言葉に鈴は拗ねる。

 

 

「それに、一龍。約束覚えてるでしょ?」

「約束か…(やっぱり来たか)」

 

 

 頭を掻きながら一龍は難しい顔になる。鈴が来たその日に答えを言わないといけない事になってしまった。

 

 

「空港で言った事、覚えている?」

「ああ、”料理の腕が上がったら私の酢豚を毎日食べてくれる?”だったな」

「覚えてくれてたんだ」

 

 

 パァッと華の様な笑顔を咲かせる鈴。しかし、一龍はその表所を見て苦しくなる。自分はこれから彼女に酷い事を言うのだから。

 

 

「【悲】………悪いが鈴、その想いに応える事は出来ない」

「……え?」

 

 

 一瞬、鈴は一龍の言葉を理解出来無いでいた。今、一龍は何て言ったの……?

 

 

「あの頃の俺は鈴の言っていた事の意味を解っていなかった。本当の意味を理解できたのはつい最近だ、嬉しかったよ。俺を好きでいてくれるのだから……」

 

 

 何も言わない鈴を前に一龍は言葉を続ける。

 

 

「鈴が俺を好いてくれているのは嬉しいよ。だが、俺が好きな人は箒なんだ」

 

 

 嬉しそうで、赤かった表情が徐々に暗くなっていくのが分かる。それでも、一龍は言うべき言葉を告げた。

 

 

「【謝】だから済まない。俺は鈴と付き合えない」

「そう……なんだ…」

 

 

 震える声で言葉を漏らす鈴。

 

 

 そして、

 

 

「一龍の馬鹿ぁ! アンタなんて大っ嫌い!!」

 

 

 鈴が一龍の頬を叩き、パァン! という乾いた音が響く。

 その瞳から涙をポロポロと零しながら、鈴は踵を返して去って行った。

 

 

「【悲】………酷いな、俺は…」

 

 

 走り去っていく鈴の姿を見詰めながら一龍はポツリと呟く。そんな彼を箒は後ろから優しく抱きしめた。

 

 

「……一龍は悪くないさ。誰も…悪く無い……、誰もな」

 

 

TO BE CONTINUE

 




『ルカちゃまを愛でる会』とは…
ひたすら2組のアイドル、ルカ ミルダの可愛らしさを語る集まりです。貴方もルカちゃまの愛らしさを語り合いませんか? ルカちゃまが好きならどなたでも会員になる事が出来ます。会費は毎月、500円也


感想コメント、意見・質問お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。