これから連載再開したいと思います。待ってて下さった方には本当に感謝しています。そして連載ストップ中も読んでくださって方にも感謝しています。
改めましてありがとうございました!そしてただいま!
暫くぶりにこの小説を書いたので変になっているかもしれません。そこは勘弁。
あとで修正入れるかも。
カーテンの掛かっていない窓から朝日が降り注ぐ。
窓の近くにあるベッドに眠っていた六來は朝を感じ、ゆっくりと瞼を開けた。
時刻は四時。夏は朝日が昇るのも速いから六來の目覚めも尚更速い。上体を起こした六來はグッと身体を伸ばして、気持ち良さそうに眼を細めた。
そして舌に残る鉄のような味と、塗れているように感じる頬を触り、いつもの顔からは想像出来ない程暗い顔で溜め息を吐く。指を濡らす赤い液体。幸い六來と背中合わせで眠っていた三玖には血は着いていない。しかし、六來の口元の枕は赤黒く塗れていた。
身体を焼くような胃痛にはもう慣れた。しかしそれが問題なのだ。慣れるほど長く痛み続けているのにずっと放置していることが。
六來はすやすやと眠る三玖を見つめた。
まだ死ねない。
手に残った血を握りしめて決心した。
六來は街に来て、姉達を探していた。
何時もより騒がしく、人が多い街では浴衣を着た人達が右往左往している。
人混みが苦手な六來は目を回しそうな光景だが、頑張って高い身長を活かして見回すと見慣れた顔を六つ見つけた。
「あれ、六來だ」
近寄ってくる六來に一番最初に三來が気付いた。
そして気付いた六來も手を振る。
「聞いたよ。上杉兄妹も一緒に来るんだよね?」
六來がそう言うと上杉とその妹が六來を見た。
「おお。これが風太郎くんの妹?」
六來は上杉の隣にいる女の子に目線を合わせた。
「兄がいつもお世話になっています。妹のらいはです」
目線を合わせた女の子は綺麗なお辞儀をする。六來は笑って風太郎とらいはを交互に見た。
「良く出来た妹だね。うん。風太郎にはない可愛さ」
「なにか買ってあげたくなる」
六來はらいはの頭を撫でた。その瞬間に三玖から向けられる嫉妬の視線には気づかないまま六來は立ち上がり全員揃って歩き出した。
六來は三玖を誘って一緒に祭りを楽しみ始めた。
花火の時間まではあと一時間。今日給料が払われて財布は潤っているかららいはの他に三玖にも何か奢れそうだ。
そう考え、六來は何故だか少し拗ねている三玖に話し掛けた。
「なんで拗ねてるの。何か食べる」
「拗ねてないし物で釣ろうとしてもだめ。人形焼き、食べる」
「食べはするんだね」
六來は苦笑しながら屋台で二人分の人形焼きを買う。そして三玖に手渡す。
「で、なんで拗ねてるの」
無言でそっぽを向いた三玖の頭を撫でる。
「ッ!いきなりなに」
「折角浴衣着てるなら、そんな浮かない顔しないで笑っていた方が可愛いと思うよ」
六來の言葉に三玖は顔を赤くする。撫で終わった六來は手を降ろした。三玖は手が降ろされた頭に寂しさを覚える。
「ねぇ六來は、私のこと好き?」
「うん。好きだよ」
いつも笑っている六來には珍しい真面目な顔に三玖はハッとした。
「それは、姉さんとして?それとも、、、、?」
「どうだろうね」
六來は杖を使ってゆっくりと立ち上がる。三玖も一緒に立ち上がったその時、三玖の耳元に六來の声が聞こえた。
「三玖。大好きだよ。これは僕として」
そう言った六來は恥ずかしさを笑って誤魔化した。
二人で会場を歩く。そして次の瞬間夜空に轟音が響き花が咲いた。
「不味い。三玖。急ごうか」
「う、うん。でもちょっと待って。今、足踏まれちゃった」
良く見ると三玖の脚は真っ赤に腫れていた。
「これは酷いな。一回人混みから抜けよう」
六來は三玖を労りながら歩いて、人混みを抜けると三玖を座らして脚の様子を見た。
「取り敢えず応急処置はしとくよ」
六來はそう言って、まだ飲んでいないペットボトルの水で三玖の脚を洗い、浴衣の裾を破いた。
「ごめんね。僕の浴衣で」
「ううん。大丈夫」
そして三玖の脚に布を巻いた。
「これで大丈夫かな」
三玖の応急処置は終わった。後は全員で集合するだけだ、そう思った六來だが重大なことに気付いた。
「ねぇ待ち合わせってどこだっけ?」
「現地集合だったと思うけど」
「その現地って?」
「あ。」
六來は携帯電話を取りだし、全員に電話を掛けてみる。しかし、人混みの喧騒のせいか電話に出る人は誰一人と居ない。
「仕方ないか。歩いて皆を探そう」
「うん。でも歩けるかな」
六來は不安そうな三玖の手を引いて起こした。そして使っていた杖は浴衣の帯に挟んで落ちないようにしたあとしゃがんで三玖に背を向けた
「ほら、乗って!」
「え、でも脚は」
「いいから」
三玖を乗せると六來は力強く立ち上がった。
「歩ける?」
「歩こうと思えば歩けるよ」
三玖をおんぶしたまま人に溢れた通りを歩く。父にも激しく動かすなと言われたばかりだ。だけど三玖のためなら何でも出来ると痛みを必死に堪えて、それを表に出さないように歩く。すると上に乗っていた三玖が言った。
「あれ、フータローじゃない?」
三玖が指す指の先には忙しく動き回る上杉がいた。
「ほんとだね。やっと一人発見だよ」
安堵しながら六來は上杉に近づく。
「風太郎くん!」
六來達を見つけた上杉は焦った様子で寄ってきた。きっと風太郎も自分達と関わってこの花火大会が大事な行事であることを分かってくれたのだろう。そして近くに来た上杉は焦った様子を変えずに言う。
「一花は居ないか!?」
六來に乗った三玖が辺りを見回すが一花は居ない。首を振った三玖を上杉は確認して三人で人混みを抜けて座った。
「一花とは会えたの?」
六來は上杉に訪ねると、上杉は難しい顔をしたまま答えた。
そしてそのまま話続けていると、三玖が居なくなっていることに気付いた。
「三玖が居ない!」
真っ先に気がついた六來は上杉と探し始めた。脚のことなどには構わず、全速力で走って探した末に三玖を発見した。三玖は上杉との話に出てきた髭のおじさんにまさに連れていかれようとしていた。
「その手を離して下さい」
六來は三玖を抱き寄せて連れていく。そして六來に変わって出てきた上杉を見た髭のおじさんは声をあらげた。
「君は、君はこの子のなんなんだ!」
「パートナーだ。返してもらいたい」
上杉と姉達の関係。先程街頭アンケートで聞かれたらしく、その答えを上杉はずっと迷っていたが答えが出たらしい。
六來は三玖を隣に座らせて笑ってその光景を見ていた。そしてその顔を三玖は見ていた。綺麗な笑顔。しかしその笑顔に曇りが有ることを三玖は的確に見抜いていた。
上杉と姉達はパートナーと割りきれた。自分と姉達の関係は間違いなく姉弟。それでいいはずなのだが自分と姉達との血は繋がっていない。そこが少し不思議だ。
「ねぇ。六來は私達と出会えて良かった?」
不意に投げ掛けられた質問に六來は自信満々で答えた。
「勿論!でも最初から一緒に居たかったな」
本当の姉弟になってしまえばこう悩むことも無かったのに。そう考える六來に三玖は自分の意見をぶつけた。
「そうかな。でも最初から一緒だったら、こうやって姉弟愛とは違う好きを感じることはなかったよ?」
三玖の言葉に六來は顔を上げた。思えばそうだ。そしてそれを知ってしまうと何でこんなことを考えていたんだろうと馬鹿らしなってきた。
気付けば上杉と一花と髭のおじさんの件、そして花火大会は終わっていた。一花の件に関しては一件落着で本人からの話も有ったからどうでも良くなっていた。しかし、花火大会はやっぱり無くてはならない。それは姉達と母親の思い出、また六來と母親の思い出を繋ぐ大切なものだからだ。
六來は姉達が手持ち花火で遊ぶ姿を遠くから見守る。これも花火大会だ。それに手持ち花火も風情があって悪くない。今日一番動いてくれたのは上杉だろう。六來はそう思って自販機でコーヒーを買って上杉に届けた。
「風太郎くん。お疲れ様」
「おう。六來」
上杉の隣に六來は座り、二人でコーヒーを飲み始める。
「今日は頑張ってくれてありがとね。風太郎くんが居ないとこうして平和に解決していなかったよ」
「どういたしまして」
「風太郎くんの存在もだんだん大きくなってきたね」
「そうかよ」
「そうだよ」
そこまで話した所で六來は三玖に呼ばれた。挨拶をした六來は三玖のもとへと向かっていく。
六來と入れ替わりに一花が来たあとに何があったかは六來達は知らない。
そして花火大会は無事に終わった。明日からは普通に学校だ。
六來達はもう暗い道を笑い合いながら歩く。
この時はまだ知らなかった。直ぐ近くに悲劇が有ることに。
そして六來は悲劇に段々と近付いて行く。
六來達が家の前に着いた瞬間、声が響いた。
「やっと見つけた!」
夜道に響く忘れもしなかった声に、六來は振り返った。そして静かに憤怒の炎を灯した。
「ずっと会いたかった!覚えているかい?いや、忘れているわけがないよなぁ。パパだよ!四季!」
火薬の種が打ち上げられて、夜空に花を咲かす。それは希望のようにも思えるけども案外違うのかもしれない。
一つの種が咲かすのは必ずしも希望だと決まっているわけではなく悲劇かもしれないのだから。