六來はいつも通りの時間に目を醒ました。ただ身体の上に四葉が乗っていたり、三玖が寝る前と同じく腕を抱いていたり、一花が脱いでいたり、、、。様々な状況のせいで抜け出せない。そして遂に六來は起きる上がることを諦めた。
思えば口を満たす血の味は無い。口周りにも血は付いていなかった。病は気からという言葉が有るが割と正論なのではないかと考える。そして気持ちを落ち着かせて父親のことについてを考え始める。こうしている内にテストは近付いているわけで余り時間はないというのに厄介な話だ。三玖や五月は家庭学習を付き合っているから心配は無いが、他の姉達が心配だ。
そっぽを向きかけた思考をもとに戻す。第一にあの家に戻る気などは有るわけがない。多分、弟が後を継ぐにしては学力が足りないなどの問題が有ったのだろう。この間の全国模試の総合順位には記載すらされていないかった。受けていないわけは無いとおもう。あの父親が受けさせないわけがない。自慢ではないが自分は例年の全国模試のトップだ。自分の住所を知っているということは自分の今の名前も知っているということだろう。それなら合点がいく。
多分、今日もちょっかいを掛けられるのだろう。そしてこれは前の新谷の時のように子供だけで何とかなる話ではない。もしかしたら父の力を借りることにもなるかもしれない。身体のことを知っていても見逃してもらったり、姉達に黙っていてもらったり何かと世話になっている分、さらに手を掛けされると考えると心が痛む。
そんなことを考えていると隣に寝ている三玖が動いた。
「ん。六來。おはよ」
「うん。おはよう」
起きた三玖は不安げに六來を見た。それに気付いた六來はどこか疲れたような笑みを浮かべて頭を撫でる。
「六來はどこにも行かない?」
「行かないよ。僕はずっとここ」
「、、、。今ならみんな起きていない」
三玖は一度全員の顔を見回したが自分達以外はぐっすりと眠っている。
「正直に言って欲しいことがある。六來は病気?」
六來は目を見開いた。どうやら三玖は気付いていたらしい。他の姉はどうだろうか。いや気付いていないだろう。思えば数日前から三玖が身体を案じてきたり等心配しているような素振りを見せていた。
六來は諦めて三玖だけの秘密だと言って話始めた。
「うん。病気だよ。それも一つじゃなくて色んな病気」
「それは、、治るの?どうしてなったの?」
「治るのかは僕には分からないし、どうすれば良いのかは僕には分からないや。ちょっと無理しすぎちゃったみたい。ずっと前の無茶のツケが回って来たのかな」
寂しそうに笑う六來の頬に三玖は手を置いた。身体を触られるのは嫌いだった。また自分は殴られるのだろうか、傷つけられるのだろうかと怖がるから。でもこの手は違った。
「なんで気付いたの?」
「この間一緒に寝たときに夜に血を吐いてるのを見たから」
三玖に隠し事は出来ないみたいだ。
この身体は治るのだろうか。父親からは逃れられるのだろうか。僕は三玖と、、、。沢山の不安が脳を占めた。だけど今は頬を触れる手が落ち着かせていた。六來は自分の脳内ですべきことをを整理し出した。第一に元父親のことを父
に話して早急に措置する。そして勉強を姉達に教える。そして病気を治す。全てが終わったら三玖に。
整理を終えた六來の顔は引き締まっていた。緊張とは違う顔をみた三玖は微笑んだ。
「うん。いい顔になったね」
朝のチャイムが鳴り、六來は三玖の席を離れて自分の席に座った。そして何時も通りの担任の声は告げた。
「今日からこのクラスのメンバーが一人増えるぞ。ほら、入ってきなさい」
そう言われて廊下から男子が一人入ってきた。良くも悪くもない普通の顔立ちで低身長。六來と正反対にうねる黒い髪は不規則に伸びている。六來とは何もかもが反対だがその雰囲気はどこか六來を感じさせる。そしてその男子は言った。
「どうも。七條
そして参の眼は窓際に座る六來へと向かう。六來を見つめたその眼はまるで蕩けたように弛み、誰にも聞こえない声で彼は言うのだった。
「ああ、、兄さん。ずっと会いたかった」
六來と参の眼は合う。そして六來は気付き内心驚くが表情には出さずに眼を逸らした。
極普通の男子。特に何の反応も起こらない。全員がいつも通りを繰り返そうとしているなか六來はいつも通りではない日常を感じていた。手を打つのを速めた方がよさそうだ。
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