今後とも六來を宜しくお願いいたします!
「や、、め、て。来ない、で」
痛む腹を抑えて三玖は言う。先程まで首を絞められていたせいか声が掠れて上手く出ない。
やがて、男子生徒が三玖に触れようとしたときだった。
「汚い手で触れないでもらえるかな」
そう言う声とともに響くシャッター音。ボヤける三玖の視界に写る白髪で杖を持った青年。
「てめぇ。痛い目見たくねぇんならその画像消して今すぐ帰るんだな。今、お前が言った言葉は無かったしてやるよ」
「それは出来ないよ。だってその子、僕の大事な人だから」
「ろ、、く、、」
そう言いながらもう一枚。笑っているのは口元だけで、眼は完全に本気だ。貼り付けたような笑顔が六來の怒りを代弁していた。
「ハッ!イカれ野郎が!やるぞ」
四人が一気に殴りかかる。
六來は無言で相手を見据える。真っ先に飛び込んできた男子生徒の腕と胸ぐらを掴み、膝を支店にして倒す。そして頭を思い切り踏みつける。
普段なら痛みで動かない脚はやけに機敏に動いた。
同時に殴りかかってきた二人目、三人目は片手ずつで防ぎ、一人は腹に正拳を入れて、もう一人は自分の前に手繰り寄せて、腕で首を絞めて肉の盾にする。最後の四人目の本気の拳は肉の盾の腹に丁度良くあたった。
「チッ!クソが!」
四人目は腰から黒い棒を引き抜いて振ると、それは音を立てて伸びた。
「警棒、、、」
六來は杖を構えた。警棒を振りかぶる隙だらけの腹に一突き、腹を押さえた瞬間に膝を殴り、最後に倒れかけた顎を一突き。顎に強い衝撃を与えて気絶させると、直ぐに三玖に駆け寄った。
「大丈夫、じゃないか。ごめん。遅くなった」
どう見ても大丈夫ではない。六來は三玖を抱えた。向かうは保健室。沸々と六來の隻眼は怒りに染まっていった。後ろ、屋上の壁の陰からの視線を感じながら。
家に帰ってきたのは既に10時を回ったころだった。四人の男子生徒の写真を先生に突きだして、何があったのか説明をし、更に警察の所にも行き、やっと家に帰ってきた。
六來は家に帰るなり、先ず三玖の所に向かった。
病院で診断は受けたようで、腹を殴られて内蔵損傷。六來は横に成って此方を向く三玖の前で頭を下げた。
「三玖。御免なさい」
「六來が悪い訳じゃない。だから頭を上げて、ね?」
「お風呂、まだ入ってないでしょ。入ったらまた部屋に来てよ」
三玖にそう言われ、六來は湯船に浸かっていた。どうしてやろうか。今はそれしか考えられない。取り敢えず、新谷達の履歴書に前科一犯という文字を付け足すことは出来るだろう。
六來を屋上へ行くように言ったのは川海だ。息を切らして走ってきて、新谷が三玖を殴る動画を見せた。後から、動画は送ってもらった。つまり証拠は充分に出揃っている。社会的な地位は確定で殺せる。しかし、三玖が受けた苦痛を倍にして返してやりたい。そう考えるとこうするのは適切なのだろうか。
考えすぎて頭が朦朧とする。六來は自分が今居る場所は風呂場だということを忘れていたらしい。
脳裏に浮かぶ気持ちの悪い女。その女のせいで逆上せるというのもまた変な話だし、何だか癪に触る。六來は風呂場から出て、着替えると言われていたように三玖の部屋へと向かった。
部屋では三玖が痛そうに腹を抱えて座っていた。それでも六來が来たら心配をさせないように笑顔を浮かべる。三玖が浮かべる辛そうな笑顔は六來を酷く傷めた。
「六來、近くに来て」
言われた通りに近くに行き、三玖のベッドに腰掛けた。
「ねぇ今日は我儘言っていい、、よね」
顔は六來に向けずに言う。
「良いよ」
「一緒に寝て。ちょっと怖い」
「、、、良いよ」
三玖は六來が入れる分のスペースを空けると、六來はそこに横になった。
「僕で良かったの?二乃とかじゃなくて」
「六來じゃなきゃ、、意味がない」
そう言い三玖は六來の胸に頭を押し当てた。
「怖かった」
「、、、。」
六來は無言で三玖の背中に手を回す。
「っ!!」
赤くなり、声にならない声をだした三玖に驚き、六來は慌てて聞いた。
「ごめん!嫌だった!?」
「ううん!全然!寧ろ、、、ちょっと良いかも」
安堵しつつ六來は再び三玖を抱き寄せる。
傷付いているのを本気で心配できて、傷付けたことに本気で怒れる。ただの姉では抱けなかった本気。
「もう怖い思いもさせない。絶対に手を出させない。三玖は絶対に守り抜く」
肌の温もり、甘い匂い、規則正しい心音、耳元に聞こえた優しい声。
三玖は姉としてでなく、三玖として六來を想う。六來の胸の中にいると不思議と腹の痛さも、男子に囲まれた怖さも無くなっていくような気がした。
気付けば三玖は寝息を立てていた。そして六來は誰も見たことないような獰猛な顔で呟く。
「絶対に許さない。あの気色の悪い女。その高慢な態度へし折ってやる」
次回。新谷、死す!