大きな病院の手術室でそれは産声を上げた。双子の兄弟で、息子が欲しかった父親は大層喜んだらしい。
二人はすくすくと育った。弟の方は顔立ちも、能力も何もかもが平均的で普通だった。しかし兄の方は、男の子らしくない顔立ちであったが、愛嬌があり、三歳ながら流暢に喋り、中学生の計算問題を解けるほどの頭脳と、他の三歳児と比べても群を抜いた運動能力を持っていた。
しかし父親は兄のことが気に食わなくて仕方がなかった。これだけ完璧に育ってくれたのに何故一つだけ悪い所が有るのかと。
兄は先天性の障害を持っていた。身体の色素が全て抜け落ちて産まれてくるという障害。父親はこれが堪らなく気に入らなかった。
資産家である父親が欲しいのは息子ではなく後継ぎだ。そして優秀だけど外見に難が有るような兄と、至って普通の少年。
それなら安全な弟を選ぼう。そうして父親は優しい顔をして兄を連れ出し、施設に入れられた。
愛されていないと分かっているけど、父親に愛される為に色んなことを身に付けたが結局は捨てられたという事実に兄は怒り狂った。
施設には沢山の人が居た。部屋はまるで檻のような所で一人で眠る。それが何よりも怖かった。特に夜中に響く見回りの足音等はまるで自分を襲いに来るようで何度か夜泣きした。そうすれば睡眠薬を飲まされ、気付けばもっと深い所に行くだけだが。
朝は3時起床で起きたら直ぐに仕度をして勉強。12時になると昼食をとって、それからは武道を徹底的に仕込まれる。
施設で名前は与えられない。1111等の番号で管理され、優秀な順番で番号は若くなっていく。兄は最初は1333番だったが、過ごしていく内に0001番か0002番に成っていた。
毎回トップを争う高校生はもの凄く優しい人だと思っていた。面倒見が良くて、他の高校生見たいに、年下を殴ったり、年下を襲ったりしない。だから油断していたのだと思う。
ある日、施設のボイラー室に呼ばれて、行ってみれば優しい高校生がそこにいた。彼は笑顔で手を振りながら兄に近付いていき、カッターで眼を刺した。甲高い声で笑って、そのまま刃を上下させたり、グルグルかき混ぜるように回したり、、、。
声は出なかった。結局はボイラーの点検にきた業者が光景を目撃して通報した。
もう何も信じられなくなって、0001のままで居続けた。言われたらハイと言ってやる、機械のように。
そうして二年間が過ぎていったある日、兄は施設の一室で先生に説明を受けていた。
「貴方を引き取る人が決まりました。この人です」
経歴等が書かれた紙を渡されて眼を通す。
「見たら拇印を押しなさい。拒否権は有りません」
「はい」
インクを親指に付けて書類に押し当てる。
「それでは明後日に里親が来ますので」
こうして0001は六來になり、人へと変わるのだった。