「作戦会議を始めよう」
六來はリビングで五人を前に言う。何時もは気分で柄を変えている眼帯だが、今回は機能性重視な本革で黒色無地にしている。
「先ずは、二乃お姉さん。新谷と縁を切ってくれないかな。関わると不味いよ」
「それについては心配要らないわよ。家に来た日の後から一切話してこないのよね」
「きっと六來くん目的だね~」
六來は一花に首を傾げた。自分目的とは何のことだ、と。
「ん?」
「気付いてないの?六來くん、かなり人気だよ。私の友達も六來くん好きな人、二人居るけど」
だとすれば、もし自分が目的なら、自分が存在しなければ何も起こりはしなかった。三玖が痛くて怖い思いをすることも。
そんな考えをしていると震える六來の手の上に三玖が手を重ねた。
「六來は何も悪くない。私を助けてくれた」
三玖は六來のことなら何でも分かるとでも言うように笑った。現に今だって、一言も自分が存在しなければなんて口にはしていないのに、三玖はそれを耳で聞いたのかにように言っている。
「それ、なら、良かった」
泣いているように見えたのだろうか。全員が心配そうな顔で六來を見ている。慌てて何時もの笑顔を取り繕うと六來は話始めた。
「少し昨日調べてみたの。新谷のこと。その結果がこれ」
六來はノートパソコンを開いて、全員が見れるようにディスプレイを前に向けた。
ディスプレイに映っているのは某大型掲示板。そこには新谷の画像と、恨み言が溢れかえっていた。
「確か新谷さんって編入してきた人ですよね」
「そうそう。あんなに派手な見た目なのにスッゴい無口でさ。でもこの間私に話しかけてきたんだよね。そのまま家にあげちゃって、、、」
五月と二乃が話す。気丈に振る舞っている二乃も本当はむしゃくしゃして仕方が無いのだろう。
「はい。この恨み言を言っている人達に連絡を取って話を聞いてみました。それがこれ」
「六來くん。それどうするつもり?」
「まぁ待ってよ」
そう言って次に六來は一枚の紙を取り出した。
「今日、僕の靴箱に入ってた」
全員が近づいて紙を読む。先程まで寝ていた四葉もこれを見るために起きていた。
「六來くんへ、伝えたいことが有るので明日の放課後、屋上に来てください。何時でも良いです。ずっと待っていますので。新谷より」
反吐が出る。しかし良いチャンスだ。六來が何をするのか、未だ解っていない姉と上杉に向かって話し始めた。
「先ず、新谷さんは17歳という年齢ながら各地で好みの男を見つけてはくっついて、飽きたら良いように使って捨てる、という行動を繰り返してきたとんでもない悪女です。そして、今回連絡を取ったのは捨てられた方の中で、今でも殺したい程憎んでいる人です。探した結果、18人の人が集まりました。そしてこの町にも憎んでいる人は8人居ます。全員大学生で、今回7人が呼び掛けに応じてくれました」
「三玖。一度部屋に戻っててくれない?ここからは少し聞かれたくない」
勿論、優しい三玖は六來がこれからするような行動を望んではいないだろう。六來がここからやることはかなりえげつない。だから嫌われたくない。六來は三玖が部屋に入ったのを確認すると続けた。
「この際ですし、他の方の憂さ晴らしも兼ねて全員であの女を囲みます。大学生の一人が車の手配をしてくれるので必要なら人気が無いところに連れていきましょう。そしてこっちには証拠があるので向こうは下手なことは出来ません。必ずしも襲ったりするわけでは有りません。土下座をしてくれれば後はしてきたこと全てを警察に報告で良いんです。しかし、土下座もしないようなら、暴力だっていとわない」
「これ、見て」
六來のスマホに写る、新谷の裸の画像。紅くなる四人の姉たちと上杉。
「あんた!どうしたのよ!これ」
「六來くんにはないと思ったけどあったかー。性欲」
「仮に欲が有ってもこの女を使わないよ。直接いけないけど憎んでいる人達から貰った。対価はあの女の土下座した画像と鬱憤が晴れそうな画像。これもゆする為の材料」
直ぐに穴のない作戦を立てる智力。人と物を集める行動力。本気の六來程怖いものは無いと、改めて実感する五人だった。
「最後にこの作戦に参加しますか?」
六來が聞く。一応一人で出来ないことは無い。しかし人は沢山居た方が良いのは確かだ
「やるわ!三玖の仇は私がとる」
「二乃お姉さん。真っ先に来ると思ってたよ」
「私もやります。出来れば安全にお願いします!」
「五月姉さん。分かってる」
「俺も手伝うぞ。生徒を傷付けた奴は許さない」
「ありがと風太郎くん。それより居たっけ?」
「私も手伝います。困っている人は放って置けません。三玖なら尚更」
「四葉姉ちゃん。変わらないね」
「こんなに行くなら皆をまとめあげるお姉さんが必要じゃない?私も行くよ」
「一花姉。やっぱ部屋は汚いけど頼りに成るね」
全員が行くと言った。これ以上に頼もしいことはない。そう思っていると、足音が響いた。
「私も行く!!六來、私の怒りは私が晴らす。それに、、、。仲間外れは嫌だよ」
六來は三玖に近付いた。この作戦で一番大切なこと。それは三玖が報われること。
「そうだよね。三玖。ごめん。一緒に行こう」
放課後。万全を期して六來は屋上へ向かう。
大学生達に作戦を説明する為に上杉。
絶対に人を屋上に近付けない為に一花が待機。
マニュアルを基に行動を指令する為に二乃が待機
もし逃げようものなら取り押さえる為に四葉が待機。
職員室前で教師の出入りを探るために五月が待機。
最後に六來の彼女役をする為に三玖が六來の後ろで待機。
全員が役割を与えられ、それを全うする。つくづく五つ子というものは良いものだと思う。そして六來は屋上の扉を開けた。
「あっ!六來くん!おっそーい!」
気持ち悪い。吐きたい思いを堪えて六來は作った笑顔を浮かべる。
「ごめんごめん。で、話って何かな?」
「あのね、私、六來くんのことが好きに成っちゃったみたい!ねぇ私と付き合って!」
「悪いね。彼女はもう居るんだ」
「えっ」
「ねっ。三玖」
「て、言うか彼女が居ないとしても君見たいな悪女とは付き合わないから」
「えっ何?自分もう六來くんに好かれてるなんて思ってた?だとしたら残念でしたー」
「あ、、くじょ」
呆然として六來を見つめる新谷。抑揚のない声で六來は淡々と続けた。
「先ずはさ謝ることが有るんじゃないの?僕じゃなくて三玖に。内臓損傷。君のせいだよ?」
「ごめん、、なさい」
「土下座。しよ?」
それだけは新谷のプライドが許さなかったらしい。黙っている新谷の耳元で囁く。
「早くしよ。まだ君がその頭を地面に擦り付けないといけない相手が居るんだから」
それでも黙っている新谷の目の前でスマホを取りだし、動画を見せつけた。
「証拠は有るの。警察に突き出そっか?」
「それだけはっ!」
「じゃあ土下座しようか」
新谷はゆっくり膝を折って、手を地面に着いた。
「ごめん、、なさい」
「謝る相手は僕じゃない。そして頭をつけて申し訳ありませんでした。やり直し」
「申し訳、有りませんでした!」
「良くできました。それじゃ出てきて下さい」
屋上にぞろぞろと入ってくる大学生達。
「今のいい様だったよな」
「あー。早く殴りてぇ」
「六來くんには感謝だな」
様々な事を言いながら入ってくる大学生達。
「新谷さん。君がたぶらかしてきた方達だよ。折角だからこの機会にこの方達にも土下座して。今ならその安い頭で許してくれそうだよ?」
「おら早く頭下げろ糞女」
「許すとは言い切っていない当たり流石ー」
「おい、ビデオカメラで撮っとけ」
「なんで、なんで私がこんなことしなきゃなんないのよ!」
遂に堪忍袋の緒が切れたようで新谷は先頭にいた男の顔面を殴った。
「おい、撮れてるか?」
「あ、ハイ。バッチリですね。警察に突き出しましょう」
「やっ、止めなさいよ!」
焦る新谷。六來は新谷の写真を新谷に見せる。
「こう言うのも有るよ。大人しく頭を下げた方が賢明なんじゃないかな?」
「sstqgdlhdgdkはがczヴぁrしゃっkdjsm!!!!!!!」
なんて言っているのかがまるで聞こえない。そして散々叫び散らしてから頭をゆっくりと下げた。新谷の頭を踏む大学生達。
「これで私のことは、警察には言わないでよ!」
息を切らしながら言う新谷。六來と大学生達は冷ややかな笑みを浮かべる。
「貴方達はこの女を許せますか?」
全員が顔を合わせてニヤリと微笑む。
「いや。足りないな」
「そうですね」
「でももう、肉体的に虐めるのは飽きたので警察に突き出して社会的地位を剥奪してあげましょうか」
「う、、、、、、、そ、、、、。」
「くづdjんsmqっlwjwjっksksっjdっjsjsっじゃshqmksjmjdj!!!!!!」
また発狂。六來は新谷の近くに行って言う。
「君がしてきたのはこう言うこと」
「それではは撤収しましょうか!」
大学生達に言うと、彼らは清々しい顔で頷いた。今日、行けなかった人も六來が送った土下座の画像と、発狂動画で喜んでくれているだろう。
帰る際、完全に光の消えた目で俯く新谷に六來は言い放った。
「またね、新谷さん。ってまたは無いか」
後日、六來は新谷が精神鑑定の結果、精神病院の隔離病棟に入れられたことを知った。絶対に出ることが出来ない隔離病棟に入れられるということは願っても無かった。あの時の高校生といい、自分の周りからは精神病院に行く人が多いきがするのはなぜだろうか
新谷がそうなるに至った理由は六來達が突き出した動画と、あのあと新谷を恨んでいる人が個別に新谷を訪ねた時に新谷が刺したことだ。心臓を刺されて即死だったらしい。
新谷が捕まってからの日常に変わりはなかった。ただ一つ変わったことは、六來の中で三玖という存在が、三玖の中で六來という存在が一気に大きくなったと言うことだった。
これで第一の悲劇は終了ですよ!
しかしまだまだ終わりません