閑話みたいなものですので気軽な気持ちで読んで下さい!
「それでは診察を始めよう」
六來達が住んでいる家の近くにある総合病院で、六來は見慣れた人物を前に動かない片脚を見せていた。
「はい。宜しく御願いします」
畏まってみるがそう言うのは良いと言われた。目の前にいるのは父親で、彼は医者だ。
「また脚の状態が悪化している。何か激しく動かすようなことはしたかい?」
思い出すのは先日の新谷の件で、取り巻き共を倒した時だ。
「そう言えば、三玖の件で、、、」
「ああ。三玖くんの件は五月君から聞いている。君が尽力してくれたのも聞いているよ」
「いえいえ。僕は何も」
何もしていないのなら脚がこうなる訳も無い。目覚めた一週間辺りではリハビリをすれば脚も動くようになると言われていたが、無理らしい。今の状態をキープ出来ても、良く成ることは無いと父からは告げられていた。
「謙虚なのは君の良い所だがね」
「、、、はい」
一見、キツそうな外見で、子供のことを見ているように見えないが、本当は色んなことが見えている。今回の新谷と三玖の件だって覚えているということは何か思うところが有るのだろう。
「それと家庭教師の方はどうだい?」
「上杉くんと分担してやっています。僕は理系科目を教えることが多くて、上杉くんは文系科目を教えることが多いです」
「家庭教師に滅多に参加しない二乃お姉さんは分かりませんが、姉達は着々と力を付けていると思います」
「それなら良かった。君が思うに一番の成長株は誰だい」
六來は頭に五人の顔を浮かべた。先ず二乃お姉さんは抜く。次に四葉お姉ちゃんも抜く。一花姉もやれば出来るのだろうけれど、やらないから抜く。そうして残ったのは三玖だ。
「三玖だと思います。今の所は」
「そうか。分かった。精々励みたまえ」
今の所はと言った部分を汲み取ってくれただろうか。珍しく笑みを浮かべる父に六來は笑い返した。
そして診察が終わったようで父は医者として言う。
「君の脚は段々と悪く成っていっている。理由は、、、分かるね。忠告しておくが、これ以上は激しく動かさないことだ。最悪、切除して義足を装着することになる」
もともとは車で飛ばされて、離れた脚だ。今こうしてくっついているだけで有難い。
六來は大腿を輪切りにしたような傷跡を見つめる。
「次に、これは父親として言おう。もう少し自分の身体を大事にしなさい。君は無茶をし過ぎている。幼少期に他の人の何培もの無茶をした君は既に対価を負っている。現に君は胃潰瘍を引き起こて、昨日も吐血している。もう一段階ステージが上がると薬では治せなくなるよ」
六來は未だに痛む胃を撫でた。全然平気だと思い込んでいる身体が本当はとてつもなく不味いのは分かっていた。
「善処します」
それだけを言うと六來は立ち上がって礼をした。進んで無茶をしに行きたい訳ではない。寧ろ無茶をしなくて済むのならそれに越したことはない。でも、姉達に何かが起こり、それはこの壊れかけの身体を更に壊さないと避けられないものなら、幾らでも使ってやろうというのが、六來が彼女達に心を開いた夜からずっと離していない決心だった。
六來が居なくなり、一人だけ部屋に残った父は呟く。
「本当は入院させて今すぐにでも治療して欲しいのだがね」