異血の姉は幻影と共に   作:エンゼ

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一年以上何やってたんですかねこいつは?

というわけで一年以上経ってしまいましたが投稿します。なので初投稿ですね。

待っててくださった方、ありがとうございました。これから頑張っていきます。




 最近、お父様が何か色々と忙しいようだ。戦闘訓練とか、ご飯のときとかですぐにどこかへと行ってしまう。お父様と全く会えなかったりした日なんかもあったりした。

 

 そんな中、お母様は一緒にいてくれたけど...最近は体調を崩してるみたいで、中々会えない。これによって更にお父様が忙しくなってしまったみたいだ。

 

 なんだろう...少し、寂しさを感じる。私に飽きてしまったんじゃないか、なんて考えが過る。

 

 ...大丈夫...だよね。心配、しなくていいよね。私を家族にしてくれたんだから...

 

「...ふぅ」

 

 私は一息をつく。気を紛らわすため、半日ぐらいずっと魔力コントロールや幻術の鍛練をしてきたんだけど...あんまり集中出来なかった。

 

 寝不足も原因の一つなのだろう。最近は悩みすぎてて、よく寝れていないからだ。

 

 ...成果が上げられないし、今日はもういいや。

 

「お疲れ様です。エレナお嬢様」

 

「あ、ありがとうございますっ」

 

 鍛練が終わったベストのタイミングで、いつものメイドさんがタオルを持ってきてくれた。ふかふかだ...かなり心地がいい。

 

「...エレナお嬢様。先ほどの鍛練ですが...」

 

「...なんでしょう」

 

「いえ、あの...なんといいますか、何か考え事でもしていらっしゃったのかと思いまして...」

 

「...いえ、ちょっと調子が悪かっただけです」

 

 心配はあんまりかけたくないからね。無理矢理笑顔を作ってやり過ごす。

 

「明日からはきちんとやります。娘として、頑張らないとですから」

 

「...無理はなさらないでくださいね? 倒れてしまうなんてことがあれば、旦那様も奥様も心配しますから」

 

「そう...ですね」

 

 ズキッと、胸が痛む。お父様やお母様と話したのはもう何日前だろう。仕方がないのは分かってる。お父様はお仕事、お母様は療養中だ。お父様がどんなお仕事をしてて、お母様がどんな病気を患っているのかは聞いてないけど...

 

 ...話してくれても、いいのにな。

 

「じゃあ、私は部屋に戻りますね」

 

「お部屋までお供します。エレナお嬢様」

 

「...ありがとうございます」

 

 私が歩き、その三歩ほど後ろをメイドさんがついてくる。なんか、これはいつまでも慣れないなぁ...自分が偉くなったみたいで小恥ずかしい。

 

 でもここで自分は偉くなったんだと勘違いしてはいけない。私は拾って貰った身。飽きられていつ捨てられてもおかしくはない...んだから。

 

 ...いつ、捨てられても...

 

「......」

 

「...あ、そういえばっ!」

 

「...何ですか?」

 

 メイドさんがいつも以上に元気に私に話題を振ってくる。内面だけのつもりだったけど、もしや表情に感情が出てるのかな。気を使わせちゃったかも...

 

 

 

「──もうすぐ、妹様がお生まれになりますね!」

 

 

 

「...え?」

 

 思わず私はメイドさんのほうを振り向く。何それ...聞いてないよ...?

 

「早ければ今月でしょうか。エレナお嬢様はお姉さんになるんですね!」

 

「あ、はい...そうですね...」

 

 妹...ってことは、お父様とお母様の本当の子ども...かぁ。それなら、ますます私...いらない子になるんじゃ...

 

 そりゃそうだよね...養子なんかより、実の娘のほうが可愛いもんね...やっぱり、私に飽きちゃったんだ...

 

「...ごめんなさいメイドさん。しばらく一人にさせてくださいっ」

 

「あ、エレナお嬢様!?」

 

 走って走って走り続ける。自分の部屋まで顔を隠しながら。今は多分情けない顔をしてる。誰にも見られたくなかった。

 

 バタンと扉を開いて中に入ってベッドに潜り込む。もうすぐ私は用済み...実の娘の教育に専念するから捨てられるだろう。

 

 そこら辺に放置されて、お腹が空きすぎて、そして野垂れ死んでいくんだろう。

 

 心のどこかでこんな日が来ることは分かってたんだと思う。あの日、あそこから追い出された化け物の私が...幸せになれるわけがないんだ。

 

 それでも...でもっ!!

 

「...もう、やだぁ...!」

 

 もっとお父様やお母様と一緒にいたい。お話したい。笑って皆でご飯を食べたい。メイドさんと一緒に勉強したい。誉められたい。喜んでもらいたい...

 

 挙げればキリがないほどあふれでてくる私の欲望。終わりが来ると分かったからこそ感じる今までの幸せ。

 

「...うわぁぁぁん!」

 

 気持ちが落ちていくと同時に止まらなくなっていく涙。でも、泣いちゃいけない...どうせ捨てられると分かってても私はあの人たちの娘。せめて最後まで、あの人たちの娘でいたいから...!

 

「ぐすっ...ひっく...」

 

「...エレナお嬢様?」

 

「っ!!」

 

 メ、メイドさん...! 一人にしてって言ったのに...!!

 

「こ、こないでっ!」

 

「...はぁ」

 

「疲れてるから! 休憩させて! ね?!」

 

「入りますよっ!」

 

 強引に扉を開けてくるメイドさん。私はとっさに、幻術で自身の顔を普通の表情のものへと変換させた。

 

「な、なんで入ってきたんですか?」

 

「......幻術、バレバレですよ」

 

「え、嘘っ!?」

 

「はぁ...エレナお嬢様っ!」

 

 メイドさんは私の両肩をガシッと両手で掴み、私の目をじっと見てくる。なんだが、怒ってるような心配してるような、そんな顔で。

 

「何かあるんでしたら言ってください! 私はそのためにいるんですから!」

 

「だ、だって迷惑になるといやだし...」

 

「私はエレナお嬢様にお仕えするのが使命です! 迷惑だなんてこれっぽっちも思っていません!」

 

 凄い熱量で一言一言を発してくる。嬉しいって気持ちで心がポカポカしてくる。でも...

 

「私、捨てられちゃうし...」

 

「...はぁぁぁぁ!!?? それ本気で言ってるんですかぁ!?」

 

「え、あ、うん...」

 

「はぁぁぁぁ......旦那様から少し言われていましたが、ここまでとは...」

 

 今度はため息をつくメイドさん。え、何か私間違ってる...のかな...?

 

「エレナお嬢様。今から旦那様と奥様の所へ行きましょう」

 

「...え」

 

「いいからいきますよっ!! エレナお嬢様はどれだけ愛されているのか自覚なさってください!」

 

「あ、ちょ───」

 

 言われるがままにメイドさんに手を引かれ、ある一室の扉の前まできた。そこはお母様の部屋。療養なさっていると聞いてから敢えてあんまり近づかないようにしてた部屋だ。私が行って悪化したら嫌だったし...

 

「あ、あのメイドさん。ここ...」

 

「旦那様、奥様。失礼します」

 

 私の言うことを無視してメイドさんはノックをして扉を開ける。

 

 そこにはお父様と、ベッドで横になっているお腹の膨れたお母様がいた。

 

「──エレナ」

 

「あらあらあら。エレナじゃない! ごめんね、今こんな状況だから...」

 

「あ、いえ...」

 

 療養中じゃなかったの...?

 あ、そりゃそっか、妊娠してるんだからある意味合ってる...のかな。私が病気だって勘違いしてただけみたいだね。

 

「旦那様、奥様。エレナお嬢様は先ほど捨てられると申していたのですが」

 

「ちょ!?」

 

「...ん?」

 

「あらあら...?」

 

 何言いづらいこと直球で言ってくれてるのことメイドさん!? この話になったら私を捨てるって直接言われちゃうじゃん!

 

 ...それは、やだなぁ...

 

 

 

 

「...何を言ってるんだ? 私たちは、そんなつもり一切ないが...」

 

「エレナは私たちの娘です。捨てたりなんて...するわけがないでしょう?」

 

 

 

 

「...え?」

 

「ほら! エレナお嬢様はやっぱり愛されてますよ!」

 

 ...うそ。

 

「...ホント?」

 

「本当だとも。なんでそういう風に思ったんだい?」

 

「だってだって、最近構ってくれなくって...」

 

「あー......そう、だったな」

 

「あっ......」

 

 ギュっと、心地のよい強さでお父様が抱き締めてきた。お父様を強く感じる。

 

「ふふっ、私も...」

 

「んっ......」

 

 続けてお母様からのハグ。お父様とはまた違った心地よさがあり、満たされていく。気持ちがいい...

 

「すまないな...レミリアのことはサプライズにしようと思っていたんだ」

 

「レミ、リア?」

 

「あなたの妹よ。エレナ...私たちの新しい家族」

 

 私たち...ということは...

 

 

「私はここにいていいの...?」

 

 

 そんな私の問いに、二人は同時に答えてくれた。

 

 

「「当然っ!」」

 

 

 ...いいんだ。ここにいても。私の、私だけの居場所...いていいんだっ!

 

 すると、また涙があふれでてきた。さっきのは悲しかったけど...今度は別の感情。

 

「あっ、あれ...おかしい...なぁ...」

 

「...大丈夫だ。エレナ」

 

「私たちはずっとあなたの味方。ずっと一緒にいるわ。ね?」

 

「う、うんっ!」

 

 暖かい...なぁ...気持ちがいい。

 

 私はそのまま──眠りについた。今までの睡眠を取り戻すように、ぐっすりと──


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