ゴブリンスレイヤー ―灰の剣士―   作:カズヨシ0509

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 ドーモです。
冷たい風がビュンビュン!寒いです…冗談抜きで…。布団から出たくない…。
せっかくの休みも寝て過ごすという、貴重な時間を無駄に浪費すると言う悪循環を繰り返しては後悔する日々を送っています。( ̄ω ̄;)

まぁ、どーでもいい前書きはさておき、投稿致します。

ではドゾ。( ゚ ω ゚ )


第82話―ダークゴブリン軍VS剣の乙女軍5・狩人の狂気

 

 

 

 

 

投げ分銅《ボーラ》

 

両端に2個ないし3個の(おもり)を、ロープで括りつけた投擲武器。

ロープの中心を持ち、頭上で振り回して十分に加速が付いたところでロープを放し

標的に投げ付ける。

投擲されたボーラは錘の重量と遠心力で広がった状態で回転しながら飛び

標的の脚などに絡み付き、歩行あるいは飛行を妨げ拘束する。

また、錘の重量とロープの回転が生み出す遠心力を活かせば十分な衝撃力を誇り

打撃武器としても機能する。

 

扱いには多少の修練と必要とするが

何時の時代どの様な道具に於いても必ず運用法は存在するものだ。

それ等を怠り実戦で生かすのは、暗愚の想定、唯の幻影に過ぎない。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 ホブともチャンピオンとも異なる上位種――。

大型種の小鬼。

ホブよりも幾分細身ではあるが、決して膂力が劣る訳ではない。

無駄のない贅肉は削ぎ落され、均衡のとれた肉体は運動性や柔軟性にも優れている。

その上、通常シャーマン以上の知性と類を見ない思慮深さを併せ持ち、小鬼の中でも極めて希有な進化形態であった。

そんな大型種は、ダークゴブリンなる異端の小鬼よりソウルの恩恵を賜る。

その影響で、更なる知性と身体強化の獲得に成功し長寿を得るに至った。

ソウルの恩恵を授かった大型種の小鬼は4体存在し、ダークゴブリンの側近を務めていた。

側近の一体、頭部にバンダナを巻き軽防具と多数のナイフで武装した小鬼――通称バンダナゴブリンが、4人の冒険者と対峙していた。

(因みに残弾の無くなった、抱え大筒は投棄している)

バンダナゴブリンに対するは、4人の女性冒険者――小鬼を片付ける者(ゴブリンスイーパー)の渾名を持つ一党だ。

 

「嬉しいねぇ、選り取り見取りって――うぉッ!?」

 

(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― 先制攻撃 )

 

 全身防具で素顔すら覆われたスイーパー達だが、特有の体臭が()である事を証明していた。

彼女達の芳しい香りは小鬼が特に好む匂いで、バンダナゴブリンは歓喜に打ち震える。

しかし無駄口の途中を狙ったかのように、投げナイフ、手投げ矢(ダート)、石弾が飛来し、バンダナゴブリンは咄嗟に身を躱す。

 

「――おいおい…!あちきは、これでも文化的にお話し合い(物理)でって――またっ!?」

 

 いきなりの奇襲に愚痴を垂れるバンダナゴブリンだが、更なる奇襲が迫る。

一党の頭目を務める少女――女鎧戦士の投分銅(ボーラ)による振り回し攻撃だ。

投分銅(ボーラ)とは、両端に(おもり)を結び付けた紐で構成されている投擲用の武器で、敵を絡め取り動きを制限させるのが本来の使い方だ。

今回彼女が振り回しているのは、紐部分を長く頑丈に加工し錘をより大型にする事で、より打撃力を高めた改造品である。

彼女が何度も振り回す度に、分銅が敵の頭上を通り過ぎる。

上体を逸らし、柔軟な身体を捻り、大投分銅を何度も避けるバンダナゴブリン。

だが単調な反復攻撃は、何れは対処されてしまうものだ。

それは彼女自身も認知しており、小鬼の足下目掛けて大投分銅を投射する。

 

「――おっとアブねぇ!」

 

 武器の構造から拘束用だと判断し、バンダナゴブリンは軽く跳躍し回避。

そこから生じる僅かな隙を突き、彼女は攻めの律動(リズム)を継続。

途切れる事の無い小剣の連撃を容赦なく繰り出し、バンダナゴブリンを責め立てる。

横薙ぎから回し蹴りへと繋ぎ、身体に回転を加えつつ小剣と蹴打の連携を繰り出す。

小気味好い連携攻撃を避けながら、お返しとばかりに投擲用の小型ナイフを2本投げ付けるバンダナゴブリン。

彼女は小剣で全て弾き返し、その合間を縫った他の小鬼が数体襲い掛かった。

 

『――gove!?』

『――geva!?』

『――goua!?』

 

 だが彼女の仲間達が飛び道具で援護。

また彼女自身も小鬼を切り裂きながら、更なる連撃を繰り出していた。

バンダナゴブリンは集団の中でも、トップレベルで身軽で最も敏捷度に優れていた。

大型種とは思えない俊敏さと軽快な動きで、踊る様に彼女の攻撃を全て躱す。

そして彼女の攻撃の隙間に生じる確かな間隙――。

其処に付け込み、緩急を付けた時間差でナイフを3本連続で投射――。

 

「――ッ!?」

 

 1本を小剣で弾き、次の1本をトゲ付き小盾(スパイクシールド)で防いだが、3本目のナイフを胸部に受けてしまった。

 

「――うッ!」

 

 1,2本目をほぼ同時に投げ、3本目だけをわざと遅らせて投射した時間差攻撃――。

バンダナゴブリンの目論見通り、彼女の胸部にナイフが突き刺さっていた。

その光景にニヤリとするバンダナゴブリンだが、彼女は即座に小剣を投げ付けた。

彼女の鎧は殆どが革製だが、重要部は金属板で補強され裏面はゴムといった緩衝材を備えた特別製だ。

ナイフ攻撃を食らったものの、その傷は浅く出血も微量なものであった。

彼女の投げた小剣は、バンダナゴブリンの顔面を目掛けていたが、彼は頭部をズラし難なく回避。

敵に主導権(イニシアティブ)を握らせまいと彼女は突き刺さったナイフを抜き取り、それを武器としながら切り掛かった。

しかしバンダナゴブリンは自慢の身軽さで回避と同時に、跳び込む様に彼女の後ろへと回り込む。

 

「――ゥぐッ!?」

 

 その瞬間、彼女の両上腕部と両大腿部から紅い鮮血が噴出した。

回避と同時に行った、擦れ違いざまによる切り抜け攻撃。

二タリと口元を吊り上げるバンダナゴブリンは、間髪入れずに彼女の足甲にナイフを突き立て地面に縫い付けた。

これで彼女は地面と同化し、真面な回避もままならない。

 

「――ッ!?」

 

 脚元に奔る激痛と束縛に、彼女の表情は歪む。

無理に動こうとすれば、足に突き刺さったナイフを引き抜くしかない。

バンダナゴブリンが、ゆっくりと迫る。

後はジワリと嬲るだけ――の筈だった。

彼女の仲間も危機を察し駆け寄ろうとするが、その前に彼女自身が素早く動く。

ニタつくバンダナゴブリンに、スパイクシールドの裏拳を繰り出し牽制――。

優位を確信していたバンダナゴブリンは、意外そうな表情で咄嗟に上体を逸らし回避。

その僅かな時間の空白を利用し、彼女は爪先に力を込めナイフごと脚を振り上げた。

鋭い痛みが彼女を襲うが、気にも留めない。

更に、足裏を貫通していたナイフの先を敵の喉元目掛けて飛び回し蹴りで反撃――。

意表を突かれたバンダナゴブリンだったが、自慢の柔軟さで上半身を逸らしたスウェーで回避する。

だが彼女は、さらに勢いを付けたまま身体を一回転させ、逆脚の飛び回し蹴りをヒットさせた。

その踵はバンダナゴブリンを捕らえたが、彼女は敢えて蹴り貫く事なく踵を基点に乗り上げる。

バンダナゴブリンの胸部へと乗り上げる形となった彼女は、足裏を貫通したナイフで何度も踏み付けた。

踏み付ける度に、踵のナイフがバンダナゴブリンの胸部を抉り血が噴出する。

止めとばかりに最後に強く踏み付け、足裏のナイフはバンダナゴブリンの胸に残る事となった。

最後の踏み付けと同時に彼女は、大きく後方へと宙返りし先程投げた小剣の下へと着地。

一方、バンダナゴブリンは胸のナイフを抜き取りニタつきながら構え直す。

小剣を再び手にした彼女は、宙へと武器を放り投げ自身も高く跳躍。

単調な太刀筋では真面に捕らえる事が出来ないと判断し、擬態(フェイント)を織り交ぜた変則的な攻撃に切り替えた。

空中で小剣を掴み、そのまま身体を捻った錐揉み回転切りの連続攻撃を敵に繰り出す。

当然バンダナゴブリンも無抵抗で食らうほど愚かではなく、軽快な体裁きで回避と防御で凌ぎ切る。

だが彼女の攻めは終わらない。

更なる変則自在な斬撃と蹴撃を織り交ぜ、対するバンダナゴブリンも回避と反撃の投射(ナイフ投げ)で応戦した。

両者とも激しい攻防を繰り広げるが、バンダナゴブリンの投げナイフが彼女を捉える。

それは防具に阻まれ、大した痛痒ではなかったが僅かな隙を生み出してしまった。

敏捷力に優れるバンダナゴブリンにとって、その隙は絶好の好機。

瞬時に体勢を変え鋭い足払いで、彼女の両脚を刈り取った。

 

「――しまッ…!」

 

 意匠を突かれた彼女は体勢を崩し転倒してしまう。

そんな彼女に圧し掛かり、何度も両足で踏み付け攻撃を繰り返す。

 

「――うぅッ!…うぐぅッ…!」

 

 小鬼の体重が彼女の肺から酸素を押し出し、兜の奥から唾液交じりの吐息が強制排出された。

 

「まだまだイキやすぜぇ!」

 

 それだけでは終わらない、踏み付けながら全身を捻りドリルの様に両足を捩じり込ませ抉りゆく。

 

「――ぐぼッ…げヴぁ…ごぼぁッ…!?」

 

 身体にねじ込まれる大型種小鬼の体重――。

バンダナゴブリンが回転する度に、彼女は胃液と唾液を兜の中で吐き出していた。

そして止めを刺そうとしていた矢先、仲間からの援護が彼女を救った。

女の呪文使いを始めとする彼女の仲間達が、火矢(ファイアボルト)や火炎壺で小鬼を引き剥がす。

 

「――ぐぅうッ!!!」

 

 息を整える時間も惜しいとばかりにスイーパーは、ローリングを混ぜながら飛び退く敵へと接近。

突進しながらの小剣で渾身の刺突攻撃を繰り出した。

 

――へッ、甘いですぜ!

 

その程度の速度なら容易く見切れる。

そう踏んだバンダナゴブリンは、上体のみを僅かに反らし隙の無い回避を試みようとした。

だが彼は知らない。

彼女の持つ小剣は唯の武器ではなく、柄が伸び手槍としても機能する仕掛け武器であるという事を――。

刺突と同時に彼女は柄のスイッチを握り込み仕掛けを作動させた。

本来ならギリギリの間合いで、小剣の切っ先を躱すバンダナゴブリンであった。

しかし小剣は瞬時に手槍の長さへと変形し、穂先は見事敵の胴体を捕らえた。

 

「――GEVAAA!?」

 

 手槍と化した彼女の武器はバンダナゴブリンの胴体を抉り、鮮血を吹き出しながら絶叫を上げ後退る。

 

「フゥ…ハァ…ハ…」

「GEU…GOU…GOA…」

 

 互いに睨み合い息を乱しながらも、対峙するスイーパーとバンダナゴブリン。

彼女の傍には仲間達が集い、相手側には部下の小鬼が集結。

お互い消耗しつつも戦いは続いた。

 

……

 

(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― 戦慄の時 )

 

 不謹慎だと誰が決めたのか?

愉悦を覚えて何が悪い?

こうするのが楽しいのだ。

そう――。

仕方がなかったってヤツだ。

どう欺き。

どう掻き乱し。

どう殺せばいいのか。

それだけを考えれば良い。

今迄そうしてきたのだ。

そしてこれからも――。

 

俺はゴブリンを殺し続ける。

 

小鬼を殺す者――ゴブリンスレイヤー。

 

眼前に在るのは、鎧兜と剣で武装した鎧ゴブリン(アーマードゴブリン)――。

その顔には傷跡が残っていた。

嘗てゴブリンスレイヤーの故郷を襲撃し、唯一の肉親である姉を凌辱し弄び嬲り殺した、憎悪すべき怨敵。

一度交戦し、あの時は痛み分けのような結果だったが、こうして再開する事が出来た。

彼は信仰というものに深く傾倒している訳ではない。

寧ろ無神論に近いといった方が良いだろう。

だがこの時ばかりは感謝の念を禁じ得なかった。

憎むべき仇が目の前に居るのだから。

 

姉から貰った鷲柄の短刀――。

鋭い刃は、鎧ゴブリンの(くび)を深く抉り込んでいた。

 

「――GOEABVOV…!?」

「旨いだろう?()()()の味は…!」

 

 スイーパーが戦っている頃、彼も鎧ゴブリンと激しい戦闘を繰り広げていた。

この鎧ゴブリン、頭も回るのか様々な道具や投擲武器で彼を牽制しながら剣を振るう。

まるで彼自身の戦い方を模倣したかのような戦術を駆使するのだ。

その戦術に当初は翻弄されていたが、彼自身も徐々に慣れが生じ敵の裏をかく事に成功。

こうして小鬼の懐に潜り込み、急所に短刀を刺し込む事が叶った。

間違い無く致命傷だ。

過去に多くの小鬼を屠り、その生態は飽きる程に熟知している。

小鬼の知識だけに絞れば、学士や講師にも比肩するだろう。

確かな手応えを感じ、首元の刃を一気に掻っ捌く――。

 

「――GOEVAAA!!!」

 

 首から大量の血を流し同時に溺れる鎧ゴブリン。

赤黒く濁る血は、まるで亡者の如し色だ。

だが彼にとっては些細な小事でしかない。

小鬼を殺したのか否か――。

それが肝要なのだ。

倒れ込んだ鎧ゴブリンは、のた打ち回りながら、やがては動きを停める。

本来なら即座に止めを刺し絶命させるのがゴブリンスレイヤーだ。

だが敢えてそうせず、鎧ゴブリンの苦しむ様を見届ける。

 

足りないのだ。

 

この程度では。

 

まだまだ足りない。

 

もっとだ。

 

もっと苦しめねば。

 

ナマヌルイ。

 

姉さんの受けた苦しみに比べれば――。

 

コイツだけは何度殺しても飽き足らない。

 

「…これが不死の小鬼か」

 

 生命活動を終えたのだろう。

悶え苦しんだ鎧ゴブリンは、小刻みな痙攣すら止み絶命に至る。

だが死体は塵灰となり弱々しい風が、それ等を吹き飛ばし後には何も残らない。

 

ロンドール黒教会が生み出し、不死人と化した鎧ゴブリン――。

本来なら新たな脅威として観るべきだろう。

今の処一体だけだが、見知らぬ地で大量発生している可能性も否定できないのだ。

だが、彼は寧ろ歓迎さえしていた。

 

――好きなだけ殺せるのか、()()()()…!

 

兜の奥底で灯る赤く暗い瞳は、彼の心そのものだろうか?

歪な笑みさえ浮かべている。

 

暗い殺意を心に住まわせ、彼は次の行動に移った。

 

……

 

(推奨BGM ライザのアトリエ ―― 啓蟄(けいちつ)嬰の足(えいのあし) )

 

 大振りだが、彼女の振るう一撃は思いのほか速く重い――。

 

『――GYB!』

『――BYE!』

『――GEV!』

 

 通常の小鬼に比べ、遥かに戦闘力に優れる小鬼兵士(ゴブリンソルジャー)――。

だが彼女は的確に小鬼を捕らえ、並み居る敵を吹き飛ばしていた。

 

「ああもうッ、ゴブリン嫌い!こっち来んなッ!」

 

 茶髪の錬金術士――ライザリン=シュタウトである。

彼女は他国の出身(ロテスヴァッサ王国)だが、此処の小鬼は凶暴で狡猾だった。

そんな事実もいざ知らず、この国の見知らぬ洞穴で危うく人生を終えかけたのだ。

道具も衣服も滅茶苦茶にされ、灰の剣士達が来なければ()()()()()いたのか。

故郷の島(クーケン島)に住んでいた頃の彼女なら、それほど小鬼に対して危機感も敵意も抱いてはいなかった。

だが今は違う。

下卑た笑みを浮かべ醜悪極まりない表情の小鬼――。

対するライザの表情は、怒りと敵意に満ちていた。

この国へ来て、彼女の認識は一変していたのだ。

 

『――伏せてライザ!』

 

 思わぬ声を掛けられ、咄嗟に反応し身を屈めるライザ。

 

『――ルルア・キーック!』

 

 長い銀髪が(なび)かせた少女が、一体の小鬼を飛び蹴りと杖のコンボで吹き飛ばした。

 

『大丈夫、ライザ!?』

「――ル、ルルア!」

 

 彼女の名は、エルメルリア=フリクセル――通称ルルア。

ライザとは別の(アーランド共和国)からやって来た錬金術士の少女である。

彼女達の使う杖は意外にも鈍器としての性能も高く、小鬼に有効打を与えていた。

だが絶命には至っておらず、再び起き上がり体勢を立て直しつつも彼女達を取り囲む。

 

「意外としぶといわね、どうするルルア!?」

 

 背中合わせのルルアに声を掛けるライザ。

 

「決まってるでしょ、私たちの錬金術を試すのは今ッ!」

 

 彼女達の本業は錬金術士。

様々な素材を組み合わせ、薬品を始め各種道具を造り出す職業だ。

当然戦闘に適した道具の作成にも長け、その真価が試されようとしている。

二人は懐の道具を取り出し、小鬼に対し狙いを定める。

ルルアは”クラフト”、ライザは”フラム”。

名称や効果に違いは見られるが、どちらも投擲用の歴とした武器である。

 

「――じゃあ行くわよ!合わせてルルアッ!」

「――オッケーィ!」

 

「「――せーのッ!!」」

 

 タイミングを合わせ二人は同時に爆弾を放り投げた。

手から離れた爆弾は放物線を描き、小鬼の集団へと吸い込まれ激しい爆発を引き起こす。

品質にもよるが爆弾の威力は黒火炎壺と同等で、複数の小鬼を爆発に巻き込み吹き飛ばした。

彼女らの付近には、多くの冒険者や味方が戦いを繰り広げている。

爆弾のお陰で包囲に穴が生じ、二人は味方の下へと合流を試みた。

戦っているのはライザやルルアだけではない。

他の錬金術士たちや冒険者が一丸となって、敵勢力に抗していたのであった。

 

(推奨BGM ダークソウル3 ―― 深みの主教たち )

 

ステルク、ジーノ、ミミ、ライアス、オーレルは、ロンドールの白い影達と戦っている。

彼等の実力は熟練冒険者の域に達していたが、白い影の実力も決して見劣りする訳ではなく、拮抗状態が続き決着が付かない状態だ。

 

「――ちっくしょうが!奴ら妙な術を使いやがって!」

 

 ジーノの振るう剣が受け止められ、その隙を突き、深みの術が彼を襲う。

彼等の得意とするソウルの魔術の中でも、特に禁忌とされた闇系統の術だ。

白い影達は皆が卓越した剣士だが、単純な剣術ではジーノに分があった。

だが白い影達の使う闇系統のソウル魔術に、彼は苦戦を強いられていたのだ。

”深みのソウル”と呼ばれ、人間性の闇を放つその術は鈍い弾速と高い追尾性を有す。

彼等は術と剣技の時間差を以て、ジーノを翻弄し苦しめていた。

だが苦しめられていたのは、彼以外の面々も同様であった。。

他の面々も、亡者と老人の国『ロンドール』という得体の知れない彼等の特性の前では勝手が違い、予想以上に追い詰められていた。

 

「――飛び道具に近接武器!いつの間に切り替えてる!?」

 

 敏捷性と杭打ち機(パイルバンカー)を搭載した特殊な手甲で戦う彼だが、白い影達は不死人であり体内のソウルを瞬時に物質化させ、それを武器へと変化させる事が出来る。

基本彼等には携行品の限界というものが無く、一見丸腰の形態でも瞬時に武装化させる事が可能だ。

その特性を利用した彼等は、クロスボウによる射撃、剣や鉤爪による近接攻撃と巧みに戦術を切り替え優位性を保っていた。

最強の剣士を目指すオーレルも東国性の刀で奮戦していたが、ヨエルの魔術による横槍で思うような戦果を挙げられない。

槍を使う女性冒険者ミミ。

何とかヨエルの援護を崩そうと試みるが、彼の扱うソウルの魔術はミミにとって未知の領域だ。

近付く事さえままならず、戦況は不利と言わざるを得ない。

その中でも唯一ステルクのみは、一人の白い影を切り伏せる。

彼の大剣を受けた白い影は即座にエスト瓶での回復を図ったものの、更なる追撃が炸裂。

実力が抜きんでているのだろう。

エストの回復効果すらものともせず、一気に白い影の一人を両断する。

 

不死人(ダークリング)…、どうにも勝手が違うな…!」

 

 彼も多くの戦いを経験し、時には人を相手取る事もあった。

その中には幾度か不死(アンデッド)を討伐した経験もあったが、今回の相手には奇妙な違和感と確かな手応えが混在し彼の胸中を掻き乱していた。

 

「ロロナ君たちは…無事だな」

 

 突如勃発した戦闘で本陣は混乱の極みだが、彼はロロナたちの方に視線を寄せる。

彼女はメルルやトトリと共に小鬼集団を牽制しており、傍らには獣人魔術師や男神官を含め銀等級戦士が前衛を担っていた。

在野第3位である銀等級の戦士が居てくれるのは、非常に心強く頼もしい事この上ない。

彼の腕前は確かで、小鬼の接近を許してはいなかった。

ロロナたちの事は一旦彼等に委ねる事にし、ステルクは他方の援護へと向かった。

 

……

 

(推奨BGM  Antti Martikainen ―― Valor )

 

 切り結び交わる金属の白刃――。

切っ先鋭い互いの剣は火花を散らし、キチキチと音を立てながら小刻みに震えていた。

外套を纏う冒険者――灰の剣士、白い聖衣の聖職者――教会の狩人。

東国式の刀、教会式の銀剣は何度も刃をぶつけ合い僅かに剥離した金属粉は、摩擦熱によって燃焼し宙に霧散する。

激しくも流れる様な剣筋は変幻自在の軌道で、教会の狩人を容赦なく責め立てた。

 

「ほぉ…、カーサスと東国を融合させた我流剣術か。筋は悪くない…!」

 

 苛烈にして流麗な剣術を、全て銀剣で捌き切る教会の狩人。

息一つ乱す事なく悠然と口を開く。

斬撃を後方へと受け流し、瞬時に体勢を入れ替えた教会の狩人は反撃とばかりに銀剣で何度も斬り付けた。

彼の剣技も優美且つ鋭さに溢れ、灰の剣士に襲い掛かるが、彼も負けじと全ていなし再び鍔迫り合いへと(もつ)れ込む。

 

「――だが。貴公の剣には、()()が足りん…!」

「――!?」

 

 研究者としての”癖”だろうか?

検分するかの様に、灰の剣士の剣術を値踏みする。

まるで内面を見透かしたかのような振る舞い。

半ば反射的に連撃を繰り出す灰の剣士。

 

「読めた、貴公の剣は快楽を恐れている!生者を斬りたくて仕方がない!だが理性では、それを否定している!」

「――!!」

 

 告げられた言葉に目を見開く。

それに伴い、思考と動きが停まり動揺が奔る。

ほんの一瞬だが生じる無防備な隙。

好機と見たのか、教会の狩人は腰の短銃を抜き発砲した。

 

「――ぐッ!?」

 

 敵から漏れ出るソウルの流れと身のこなしで、銃撃を紙一重で躱す事に成功。

だが攻めの流れは敵側に渡り、教会の狩人は身を翻し銀剣を背中へと仕舞い込んだ――かと思えば、背より現れる巨大な刃。

教会の狩人は桁外れの脚力と腕力で、大剣と化した武器を大上段から振り下ろす。

 

「――ぐぁあッ!?」

 

 無理な体勢で慣れない銃撃を躱した事による、不安定な姿勢が祟った。

相手の重い強撃に合わせる事もままならず、拙い刀の防御で吹き飛ばされる灰の剣士。

受けた腕の骨が軋み悲鳴を上げながらも、宙返る事で辛うじて転倒だけは免れた。

 

「違うッ…!私の剣は、使命を果たす為、そして弱者の為にある!!」

 

 急ぎ体勢を立て直し再び構えるものの、その語尾は何処となく震えが滲み出ていた。

確かに、火継ぎの時代を幾度も繰り返す過程で、多くの存在を殺し道を切り開いてきた。

その事自体を否定し、弁解しようなどとは思わない。

もしそれが罪だというのなら、咎を甘んじて受ける覚悟も出来ている。

だが殺戮に愉悦を覚え、それを満たす為に剣を振るうなど唯の狂人に他ならない。

況してや自分には果たさねばならぬ使命がある。

その様な快楽殺人に心を委ねるなど、絶望に甘んじ心折れた亡者と何が違おうか。

かの時代で幾人もみてきた狂いし(ともがら)――。

立ちはだかる彼等を斬り屠ってきたが、そこに愉悦を覚えた事など一度も無かった筈だ。

ただの一度も――。

 

「チッ…!ああァぁあアァあぁァアあぁアアァ――ふんっ!!」

 

 彼の反応が気に入らないのだろう。

教会の狩人は心底嫌悪に満ちた表情を浮かべ、端正な顔は苦虫を噛み潰したかの様に歪む。

そして膂力に任せた一撃を灰の剣士へと見舞った。

単純な上段からの一撃だ。

本来の彼なら難なく躱し、反撃の一閃を繰り出せた筈だ。

しかし、どういう訳か灰の剣士は敵の一撃を真面に受け止め威力を相殺できずに、またもや吹き飛ばされてしまった。

 

「…ぐッ…おのれ…!」

 

 防御には成功したものの強烈な衝撃を受け流せず、彼は着実に痛痒を負っていた。

 

「活人剣だとでも言いたいのか?偽善は止せ、出来損ない!」

 

 大剣を手に、ゆっくりと迫る教会の狩人。

彼の武器は仕掛け武器と呼ばれる代物で、普段は直剣形態だが刃付きの鞘に納める事で大剣としても機能する。

彼の属する医療教会の工房にて生み出され、古来より伝わる仕掛け武器だ。

外傷は無かったものの、灰の剣士は思わぬ打撲傷を負い歯軋りする。

 

(推奨BGM  ブラッドボーン ―― 失敗作たち )

 

『――ヒュウっ…!アブねぇアブねぇ…!』

 

 突然、何処からともなく現れた長身の異形、バンダナゴブリンが教会の狩人の傍へと着地する。

そのバンダナゴブリンに追い縋る、ゴブリンスイーパーの一党。

 

「大型種の貴公ともあろう者が、手こずっている様だな」

 

「いやぁ、参りましたぜ。血の気の多い嬢ちゃん達で、取り付く島もありゃしねぇって」

 

 それは異様極まる光景だった。

小鬼と只人が、世間話をするかのような会話――。

 

「なにこれ…!ふざけてるの!?」

 

 意思の疎通が成り立っていたのだ。

小鬼と只人の間で――。

その異質な光景に、スイーパーは怒りと呆れの混在させた感情を向ける。

 

「ゴブ…リンが…喋ってる…?」

 

 スイーパーだけではない。

大司教――剣の乙女も呆気に取られ、異様な光景に目を奪われていた。

彼女は神官戦士たちに守られていたが、下級の教会狩人に犠牲者が続出していた。

剣の腕だけなら、神官戦士達が上だ。

しかし狩人たちは銃を所持している。

その銃撃を駆使した特殊な戦術に、神官戦士たちは動きが停滞してしまう。

彼等の銃弾は、水銀と自らの血液を混ぜ合わせた特殊な構造をしており、通称”水銀弾”と呼ばれていた。

本来は人相手に撃つ弾丸ではないが、その威力は通常の鉛弾に比べ遥かに高い殺傷力を誇る。

水銀弾の一撃をカウンターで食らった神官戦士たちは当然、無事で済む筈も無い。

それだけでも充分な致命傷に足るが、狩人たちは更なる凶行に奔る。

動きが怯みがら空きとなった神官戦士の胴体部に、腕を直接突き入れ内臓を根こそぎ抜き取ってしまったのだ。

犠牲となった神官戦士は悲鳴を上げる事も叶わず、釣り上げた魚の様にパクパクと口を動かすのみ。

引き裂かれ無理矢理引き抜かれた内臓は夥しい生き血に塗れ、狩人たちの手の上で弱々しく脈動を繰り返す。

そして程無くして脈動も止まり、同時に神官戦士も絶命に至る。

狩人たちの行う狂気染みた奇行。

銃を『能動的な盾』に見立て、相手の攻撃に合わせカウンターを見舞い怯んだ隙目掛けて、手を体内に()()突き入れるのだ。

それは『内臓攻撃』と呼ばれ、半数の神官戦士が犠牲となっていた。

剣の乙女を護衛する神官戦士は12名居たが、既に6名が失われていたのだ。

立て続けに起きる冒涜的な死の凶行――。

小鬼と只人の会話といい、狩人たちの内臓攻撃といい、それ等の前に剣の乙女も神官戦士たちも精神を擦り減らしていた。

そして度肝を抜く事態が更に加わる。

教会の狩人によって。

 

「丁度いい。大型種は希少価値が高いのでな、おあつらえ向きだな」

「…どうしたんですかい?狩人のダン――ナアアァぁぁぁッ…!!?」

 

 突如の奇行――。

 

事もあろうに教会の狩人は、バンダナゴブリンの頚部に注射器の様な物を打ち込んだ。

容器の色は鈍い紅に満たされ、中身は血液に属する物だと推察できる。

先程手に入れた、剣の乙女の血とは違う代物のようだ。

恐らく予め隠し持っていたのだろう。

容器の中身は、みるみるとバンダナゴブリンへと流れ込み程無くして空になる。

 

「――狩り…うど…おた…く…何…を…!?」

 

 首元を抑えよろめくバンダナゴブリン。

驚愕の表情を浮かべ、怒りと非難を込めた視線を向ける。

 

「――ッ!貴公っ!まさかッ!!」

 

 狩人の乱心とも言える奇行を前に、灰の剣士は慄き声を荒げる。

 

「――あの男、また繰り返す気かッ!?」

 

 焦る彼の下にゴブリンスレイヤーも駆け付けた。

 

「――危惧すべきでした!此処に居るという事は、この様な事態を招く危険性も孕んでいたという事をッ!」

 

 更に獣人魔術師までもが駆け付ける。

 

『何だ?何が起こった?』

『あのデカい小鬼、苦しんでるぜ?』

『でも様子が、なんか変よ?』

 

 彼等だけでなく数々の冒険者も周囲に集う。

教会の一団とバンダナゴブリン以外の小鬼は姿が見当たらない。

冒険者たちが軒並み仕留め、残りは逃亡したらしい。

 

「――灰君!大丈夫なのっ!?」

「――私たちは怪我人を見てくるわね!」

 

 ライザも彼の傍へと駆け寄り、ルルア達は負傷者の下へと向かった。

 

「――コイツ等…急に…!?」

「どういう事なの!?」

 

 ロンドール白い影と戦っていたステルク一行――。

彼等の攻撃が急に止み、ライアスやミミは訝しむ。

再びヨエルの下へと引き返す白い影たち。

それは下級の教会狩人も同様で、軽快な身のこなしで主の下へと跳び去った。

冒険者側と教会側――。

両者は再び睨み合う状態へと移り、緊迫した空気が周囲を支配する。

 

「狩人様、何もこのような時に実験など行わずとも」

 

 傍らで静観していた死灰信徒の少女は、些か呆れ顔で抗議にも似た声を上げた。

 

「そう避難してくれるな。転機とは何時も唐突なのだよ」

 

 対照的に狩人の表情は何処か嬉し気だ。

 

「自然条件下の大型種は、軒並み成果(データー)が揃っている。だがソウルの恩恵を受けた大型種は、どの様な結末を辿るのだろうな?興味が尽きん」

 

「――よりによって、この(タイミング)小鬼獣(ゴブリン・ビースト)を生み出すか!狩人とやらッ!」

「小鬼獣?神殿の地下水脈で遭遇したというアレか?」

「――全員、気を付けろ!並の小鬼とは訳が違うぞッ!」

 

 小鬼獣(ゴブリン・ビースト)は過去に何度も生み出し運用してきた実績と結果が出ている。

ただでさえ希少な進化系統を辿った大型種。

その通常の大型種とは違い、ダークゴブリンによるソウルの恩恵を受けた大型種は、レア中のレアといっても差し支えない程に珍しい存在だ。

暗い満面な笑みに包まれる教会の狩人。

獣化した小鬼の出現に警鐘を鳴らす灰の剣士に、神官戦士長は地下水脈での出来事を思い返す。

そしてロスリック不死街の亡者の穴倉で、交戦経験のあるゴブリンスレイヤーは周囲に警戒を投げ掛けた。

 

(推奨BGM  ブラッドボーン ―― 血に渇いた獣 )

 

『――GYOUVOAAAッ…!?』

 

 戸惑う冒険者側を余所に絶叫を上げる、バンダナゴブリン。

首元を抑え地面に倒れ込んだかと思えば、全身から濃い体毛を生やし始める。

それだけではなく全身の筋肉が徐々に膨張を始め、元々長身の身体は更なる巨大化へと変貌。

両眼は深紅に染まり、指先の爪は更なる鋭さを増した。

 

「――一体何なのよ、アイツ…!?」

「――灰君、何が起こったの!?教えてよ、ねぇってばッ!?」

 

 当然事情を知らない、スイーパーとライザは眼前の変化に面食らうばかり。

しつこい程にライザから質問攻めにされるが、灰の剣士は応えず彼女を退がらせようとする。

尤も彼女にしがみ付かれ振り解く事に苦慮していたのだが。

 

『――GRUUUOOOOOOッ!!!』

 

 一頻り藻掻き苦しみ膨張と変貌を遂げたバンダナゴブリンは、雄叫びを上げながら悠然と立ち上がった。

獣化を終えたバンダナゴブリン。

言うなれば『バンダナビースト』と呼称すれば良いだろうか。

全身に体毛が生え揃い不気味な唸り声をあげ牙を剥き出す。

 

『な、何だよアレ!?』

『ゴブリンなのか!?』

『もう獣人じゃねぇかッ!』

『あんなの別のナニカよッ!』

 

 冒険者たちの反応は必然とも言える。

混沌最底辺の最弱種が小鬼(ゴブリン)である。

その常識が破綻しているのだ。

見るも異様な怪物。

小鬼の特徴を孕みながらも、異質極まりない眼前の異形。

その姿に恐怖すら抱き脚が竦む者さえ現れていた。

 

「どうなってんだよ、()()()()()()()()はッ!?」

 

 ジーノは汗を滲ませ、剣を握る手に力が自然と籠もっていた。

 

「さぁ、新たな獣よ!憎悪と衝動を存分に撒き散らせ!」

 

 教会の狩人は高らかに叫び、バンダナビーストに或る武器を投げて寄越した。

 

「――GORU?」

 

 それは手に嵌める形状をしており、引っ掻き状の鋭い切っ先が備わっている。

外観上、骨組み製の手甲爪らしき武器であった。

獣化したとはいえ知性は残っているのだろう。

バンダナビーストは、一対の爪を手に嵌め装着を完了する。

その武器は『獣の爪』と呼称される武器で、装着者に獣の如き破壊衝動と膂力を齎す効果を秘めていた。

獣と化した小鬼に、獣性を齎す武器――。

 

「GORURURULULULULUL……」

 

 装着したのち、そう時間も経つ事なく痙攣と唸り声繰り返す。

 

「――来るぞッ!全員構えろッ!!」

 

 しがみ付くライザを突き飛ばし、周囲に臨戦態勢を促す灰の剣士。

尤も彼が警告するまでもなく、皆が皆、身の危険を感じていたらしく各自が即応状態へと移っていた。

 

「そこら中に獲物が居る、好きなだけ暴れろ!」

「GOVLUUU…」

 

 嗾ける教会の狩人と唸り声で威嚇するバンダナビースト。

だが、事態は思わぬ方向へと走り出す。

 

「RULULU……イイデスゼ、先ずは()()()からやっちまいますかッ!」

「――ぬッ!!?」

 

 突如バンダナビーストは人語を発し、深紅の双瞳を狩人の方へと向けた。

 

「――許さねぇッ!!」

 

 その刹那、強化された脚力で踏み込み爪の一撃を叩き込んだ。

奇襲による意表を突かれた狩人たち――。

寸での所で回避は間に合ったが、一人の下級狩人は巻き添えを食らい肉塊に至る。

 

『『『『『……!?』』』』』

 

 何を思ったのか、バンダナビーストは味方である狩人側に攻撃を仕掛けたのだ。

呆気に取られたのは周囲の冒険者側だ。

此方へ仕掛けて来ると踏んでいただけに、この状況に思考が追い付いていない。

 

「えっ…仲間…割れ?」

「一応、味方同士…よね?あの狩人と小鬼?」

 

 ロロナやメルルも呆気に取られ、救護の手が止まっている。

 

「まさか…」

「理性を保っている…とでも?」

 

 少なからず小鬼獣(ゴブリンビースト)との交戦経験のある、ゴブリンスレイヤーと灰の剣士。

今迄の経験上、獣と化した小鬼は桁外れの耐久性と膂力を得る代わりに理性が崩壊するという特徴を有していた。

だが、眼前のバンダナビーストは獣化していたにも拘らず、事もあろうか同じ陣営の狩人に敵意を向けていたのである。

 

「よくも、あちきを欺いてくれやしたねぇ…、覚悟は出来ているんでしょうや?」

 

 ゆっくりと歩みより距離を詰めるバンダナビースト。

しかし彼の憎悪は教会の狩人たちに向けられ、冒険者の事など眼中に無かった。

 

「――狩人様!?」

「――主!?」

 

「ほう、これはこれは?」

 

 狩人の傍に駆け寄る部下達。

ロンドールのヨエルも今の状況に思案を巡らせる。

 

「ふっふっふっふ、フハッハッハッハ……!」

 

 だが意外な事に狩人は高笑いを上げ天を仰いでいた。

 

「流石にこれは想定外だ!獣化して尚、理性を保っていられるとはっ…!こんな被検体を、この戦闘で失う訳にはいかぬよなぁ…!ハァッハッハッハ……!」

「――うるせぇッ!くたばんなぁッ!!」

 

 歓喜に溺れる狩人に対し、激昂するバンダナビーストは怒りに任せた一撃を繰り出す。

だが、それを高速ステップで躱す狩人は未だに笑みを零し続けている。

その後、杖らしき武器を瞬時に手元へと発現させたかと思えば、鎖状の武器へと変形させた。

杖に仕込まれた刃が幾つもに分かれ、ジャラリと音を立て地面へと垂れる鎖状の武器。

これも仕掛け武器の一種で『仕込み杖』と呼ばれている。

杖と鞭の変形が可能だ。

 

「大人しくしろ、獣よ」

 

 軽快なステップでバンダナビーストの側面へと一瞬で回り込み、蛇腹状に変形した鞭を脚へと巻き付けた。

そしてそれを引き寄せ、脚を取られたバンダナビーストは見事に転倒。

その光景に満足げな教会の狩人。

そんな彼の傍に魔法陣が浮かび上がり、新たな黒装束の男が一人姿を現す。

見た目は下級教会の狩人と同じ出で立ちだ。

彼の部下に違いない。

黒装束の男は静かに告げる。

 

『滞りなく』――と。

 

「宜しい。頃合いだな」

 

 その短いやり取りの後、狩人は冒険者側へと向き直る。

 

『――冒険者諸君!もう少し戯れたい処だが、そろそろお暇させて頂く。今日は、非常に意義ある収穫だったよ。それでは、ごきげんよう…引き続き戦に奮励してくれ給え』

 

 皮肉を込めた言葉と優雅な一礼を向ける教会の狩人。

唖然と呆ける冒険者側を余所に、彼等の周囲は魔法陣が出現する。

そして瞬時に、その場から消え去ってしまった。

転移に類する術でも使ったのだろう。

次の瞬間には、何処にも彼等の姿は見当たらない。

降り掛かる状況の変化に、未だに理解が追い付いてない者が多数居た。

 

「暴れるだけ暴れて消えちまいやがった…!」

「クッソ…!どこ行きやがったんだアイツら!」

 

 悔し気な表情で憤る、銀等級戦士とジーノ。

 

「怪我人がこんなに…」

「酷い…、早く手当てしないと…!」

「でも天幕が…!」

 

 バンダナゴブリン率いる小鬼集団の奇襲により、天幕は完全に破壊されていた。

抱え大筒の一斉砲撃を真面に受けたのだ。

中の錬金釜や治療道具も粉々に吹き飛び、被害を免れた僅かな物資のみが回収に留まる。

明らかに物資が不足していた。

生き残った者達が手分けして負傷者を一ヶ所に集めるが、立て直しの目処は立たずじまいだ。

 

『これは…何という事だ…、本陣が壊滅している……』

 

 声の主は太陽の騎士ソラール。

彼を始めとした冒険者達が、やっとの思いで本陣へと辿り着いたのだ。

皆が一様に満身創痍の状態だ。

この中で真面に動ける者は極僅か。

 

「ソラール、ジークバルド、無事だったか」

「…貴公もな――と言いたい処だが、何があったのだ。灰剣士殿?」

 

 二人の姿を確認し、安堵を浮かべる灰の剣士。

だがジークバルドの表情は厳かに硬い。

彼は説明を要求する。

 

本陣で何が起こったのか?

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

クラフト

 

錬金術にて生み出される投擲爆弾の一種。

フラムと同じく、衝撃を加える事で起爆する。

しかし、戦闘中の激しい衝撃で思わぬ事故を招く恐れもあり、扱いには細心の注意が必要。

 

通常の爆弾とは違い、発する衝撃や風圧を以て対象物に痛痒を負わせる効果に特化。

それ故、効果範囲が広く敵集団に投げ付ける事で高い戦果が見込めよう。

 

比較的作成難度も低く、駆け出し錬金術士が練度向上に向けて造られる事も多い。

入手素材に若干の隔たりがあり、採取するには幾許かの知識と土地勘が必要となるだろう。

南方の王国なら、それ等の素材に事欠く事はなく容易に入手が可能。

その国出身の錬金術士に協力を仰げば、採取の際に然したる苦労は無い筈だ。

 

 

 

 

 

 




 明るく優しい世界で住む、アトリエシリーズの住人達。
そんな彼等を、ダクソやブラボの混在するゴブスレの世界観に放り込む。
我ながら、とんだ暴挙をやったものです。
対極の世界に位置する彼等。正直合わな過ぎると、私自身も感じております。
でも、いざやってみると思いの外楽しいんだなぁ、コレがぁッ!(ゲス顔)
ブラボの内臓攻撃を、アトリエヒロインたちが目撃したら、どんな反応を示すのやら?
ちょっと不健全な妄想を膨らませてみたりもしてます。( ゚ ω ゚ )

いかがだったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

デハマタ。( ゚∀゚)/
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