新年から早くも一週間が経過しました。
暖かくなるまで、もう少し期間が掛かりそうですね。
早く春が来て欲しいものです。
投稿致します。
ではドゾ。( ゚ ω ゚ )
鉄槍
長い棒状の柄の先に鋭い鉄の刃を付けたもの。
広く普及した槍で盾を構えたまま攻撃できる。
槍の攻撃は敵を突くものが主体となり
振り終わりの隙をついて大ダメージを与えられる。
戦技は「貫通突き」
狙い澄まし、大きく踏み込む突きの一撃は
敵の盾を貫通してダメージを与えられる。
強力な割には比較的安価で、手に入り易く高い普及率も必然といえる。
嘘か真か、只人が最も力を発揮するのは剣ではなく槍や投擲と言われている。
円盾
木板に革を張った円形の盾。ポピュラーなだけあって、悩むならこの盾といった風潮が強い。
革張りの木盾が一般的だが、金属製や樹脂製といった代物までバリエーションは多い。
この戦で支給されたのは、木板に鉄鋲で補強された物だ。
若干重いが、それだけ高い防御効果を誇る。
盾の価値は千差万別。
使い手によれば、これを武器と言い張る者も居る位だ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(推奨BGM ダークソウル3 ―― 深淵の監視者 REMIX )
片方の腕や足が欠損している者。
呼吸すら事欠く者。
火傷に喘ぐ者。
故郷に残した母の名を呟く者。
そんな彼等の共通点――。
―― 冒険者 ――
混沌最底辺と認識されている筈の異形――
そんな彼等が起こした自然現象――
その被害を真面に受けた多くの冒険者達。
やっとの思いで味方本陣へと辿り着き、一息つけると期待していた。
だがそんな淡い安堵は、見事に裏切られる。
野戦病院を兼ねた天幕は破壊され、物資は軒並み焼失し、味方本陣は見るも堪えない惨状へと変貌していたのだ。
不幸中の幸いと言えば良いのだろうか。
輸送用の荷馬車は、辛くも難を逃れている。
経戦能力を喪失し戦意を削がれた者達は皆、荷馬車へと移っていた。
水の都へと帰還する為に――。
「この戦…我等の敗北です。無念ですがッ…!」
目を閉じ静かに宣言する神官戦士長――。
拳を握り締め歯を喰いしばり、彼もまた屈辱に耐えていた。
『――うおぉォあぁぁぁッ……!』
『――チッくしょうがぁぁああッ!』
『――小鬼なんかに…小鬼なんかにぃぃっ!!』
『――みんな…皆死んじゃったよおぉぉッ…!』
『――ごめんなさいっ、アタシだけ生き残ってごめんなさいッ…!』
彼の宣言を皮切りに、慟哭が溢れ返り場を支配した。
拳を地に叩き付け、感情のままに泣き叫び、頭を地に擦りつけ、悲痛な絶叫が嫌という程に皆の耳を打つ。
―― 勝てる ――
誰もが、そう確信していた。
300人を超す冒険者。
勝利の為の作戦。
統率された部隊。
豊富な資金を費やし揃えた兵器の数々。
優秀な指揮官。
そして六英雄であり、金等級の冒険者にして大司教でもある、剣の乙女。
対するは混沌最弱と言われ、新人冒険者が担当する筈の
敗ける要素など何処にあろうか。
剣の乙女の旗の下、士気旺盛な冒険者が集い小鬼を殲滅する作戦。
信じて疑わなかった。
勝利への確信。
心躍らせていた。
名声を糧に歩む英雄への道を。
だが、淡い夢は泡沫に失せ、儚い希望は深淵へと沈む。
―― 敗けたのだ、我々は ――
神官戦士長より告げられた敗北宣言に従い、冒険者達は次々と撤退準備を始める。
その表情は一様に暗い。
……
「そうだったのか…。
玉葱に似た兜に覆われた表情を、窺い知る事は出来ない。
しかし流れ出るソウルが彼の心情を伝えてくれる。
彼も教会の狩人には面識がある。
亡者の穴倉で遅まきながらに加勢し、その男のソウルは充分過ぎる程に強烈だったのだ。
灰の剣士より事情を聞き、カタリナのジークバルドは何度も深く頷いた。
「ロンドール黒教会なら俺も交戦したが、医療教会なる組織は全く縁がないな」
アストラのソラールもロンドールと一戦を交えた過去がある。
あの不思議な少女が住まう村で。
(イヤーワン編 第53話参照)
「私も医療教会など初耳だ。ロスリック血の営みすら未知の領域に等しいと言うのに…」
幾度と火継ぎの使命を繰り返した灰の剣士だが、医療教会なる言葉も組織にも関わった覚えはない。
ロスリック血の営みという言葉は断片的に耳にした程度で、それ以上の知識を持ち合わせてはいなかった。
「ソラール殿、ジークバルド殿、申し訳ない。私も付いていながら、敵に踏み躙られ醜態を晒す羽目にッ…!」
「そう自身を攻めるものではない。ステルケンブルク=クラナッハ…いや、ステルク殿」
「そうとも、我らも前線に居ながら救えたのは僅かな命だけ…とても胸など張れぬ…!」
そこにはステルクも加わっており、ソラールとジークバルドに励みの言葉を受けていた。
――さて、どうする…?。
周囲は既に撤退準備に取り掛かり、大半の負傷者は荷馬車への収容が完了していた。
そんな折である――。
『アンタは一体何をしていたんだッ!剣の乙女ぇッ!!』
若い男の声、声音からしてまだ少年…新人冒険者だろうか。
突如、周囲に響く怒号――。
『そうだッ!仮にも英雄だろうがよッ!』
またもや放たれた別の声。
『魔神王を討った金等級ってのは嘘だったのかよッ!』
『それとも金で買ったのか?金等級はよッ!』
一人の新人冒険者の声、それが呼び水となり次々と流れ込む罵声の数々。
『大司教の称号授かってんだろ!?奇跡の一つでも使って援護してくれや!』
『一人安全地帯でふんぞり返りやがってッ!』
『残ったのはアタシ一人だけっ!みんな死んだわッ!皆よぉッ!!』
『おいッ!ちゃんと報酬は出るんだろうなッ!?』
『危険手当もだ!!』
『俺は裏切られた気分だぜ!そのドスケベボディで癒してくれや!』
『アンタ何もしないで逃げるつもり?殿ぐらいやってみなさいよ!一人でさぁ!』
『『『『『そうだそうだ!何とかしろぉ!』』』』』
次第に周囲は騒がしくなり、冒険者たちの罵詈雑言が飛び交う。
それは一人の女性、剣の乙女に向けられていた。
否、言葉だけではない。
彼等の憤慨と憎悪、あらゆる負の感情が堰を切って雪崩れ込んで来るのだ。
彼女一人に。
「……」
彼女に言葉はない。
眼帯に覆われた目には、何が映っているのだろう。
俯き加減に顔を伏せ、返す言葉が見当たらない。
これは冒険だ。
冒険者とはギルドから紹介された依頼を請け、熟し、成功報酬を受け取る。
その際、怪我を負い命を落とし帰らぬ人となる事も、決して珍しい事ではない。
それは冒険者としての領分で、生きるも死ぬも自身の実力に委ねられる。
いわば、自己責任なのだ。
故に犠牲となった者達は、どの様な形であれ自己の実力に起因し他者に責を押し付けるなど言語道断であった。
況してや剣の乙女は
寧ろ此処に居る事自体、極めて異例といえる。
そう告げれば、どれほど楽だったか。
しかし彼女の口から出た言葉は――。
「ごめんなさい」
謝罪の意と言葉だった。
殺気立つ冒険者達の前に出た剣の乙女。
頭を下げ、それ以上何も口にする事は無かった。
だがしかし――。
『――謝って済む問題かよッ!』
『――だったら誠意を見せな!』
『――金だ!話はそっからだ!』
彼等の怒りが収まる事は無く、逆に拍車が掛かっていた。
そして――。
『――ウぜぇんだよテメェら!』
『――アンタらが弱かったから、こうなったんでしょう!』
『――大の男が女性一人に!情けないわねっ!』
『――そんな性根だから、小鬼にやられたんだろうがッ!』
一身に責め苦を受ける剣の乙女に、庇い立てする者達が声を上げ始める。
身勝手な暴言を吐く彼等に、いても立っても居られなくなったのだろう。
『なんだぁ、やる気かぁ!?』
『上等だ、かかって来いやぁッ!』
次第に場は荒れ始め、今度は冒険者同士で諍いを起こしかねない状況へと流れ込む。
これには良識のある冒険者達も黙って見ていられる筈もなく、何とか場を納めようとするが一色触発の空気感が増大しつつあった。
『――貴君ら好い加減にせんかぁッ!!』
見るに見かねた神官戦士長が、声を張り上げ荒れる冒険者たちを一喝――。
そして場は静まり返る――なら、苦労など無い。
『――うるせぇ、お花畑!!』
『――老害はスッコンでろッ!!』
彼等が静まり返る事は無かった。
「いかんな、このままでは」
「手段を強行するしかあるまいよ」
一部始終を静観していたソラールとジークバルド。
今諍いを起こせば、負傷者と更なる混乱を招くのみだ。
敗北したとはいえ戦いは続いており、作戦自体が終わった訳ではない。
対するダークゴブリン軍は健在で、直ぐ其処まで迫っているのだ。
どういう訳か、現在進軍は停滞している様だが。
もし今の状況で冒険者同士で争うものなら、忽ち小鬼の群れに蹂躙され再起も絶望となるは必至。
多少手荒ではあるが、此処は力づくで事態収拾を図る必要があるだろう。
意を決した二人が一歩踏み出そうとした時、一人の男が動きを見せる。
その男は一人、剣の乙女を庇うかのように陣取り、殺気立つ冒険者の前へと対峙した。
「…貴公」
「旅人よ」
「灰の剣士…君…」
そう、灰の剣士だ。
彼を見守るソラール達を余所に、灰の剣士は大盾と鉄槍を回収し装備している。
それ等は支給品の武具だ。
『……な、何だよ、コイツ…!?』
『確か、灰の剣士とか言ったな…!』
『や、やる気か!?』
何の前触れもなく武器を展開し剣の乙女に立ちはだかったのだ。
それを目にし対峙する冒険者たちは否が応にも警戒するというもの。
個人の思惑は兎も角、本能的に身構えてしまう。
「……灰の…方…」
「……」
暫しの沈黙。
流れる静寂。
そして徐に口を開く灰の剣士。
(推奨BGM Antti Martikainen ―― Lords of Iron )
「彼女に咎は無い。全ての元凶は
彼は声を大に叫ぶする。
全ては自らが招いた結果なのだと。
「――は、灰君ッ!?」
「――け、剣士さぁんッ!?」
彼は乱心でもしたのだろうか?
ライザや銀髪武闘家は、真意が読めず詰め掛かろうとする。
彼女らは決して学問に聡い方ではない。
だがこの状況は理解出来る。
彼の眼前には、殺気立った冒険者たち。
下手な刺激を与えようものなら、その矛先は灰の剣士に向けられる事を。
最悪殺到され、そのまま殺し合いに発展する可能性さえあるのだ。
「行ってはなりません!彼の事です、何か考えがあるのでしょう」
彼女等は獣人魔術師に制止され、渋々従う事にした。
ダークゴブリン討伐作戦――。
元々は、灰の剣士の進言によるものだった。
銀等級戦士の一党が討伐した個体は真っ赤な偽者であり、本来のダークゴブリンは健在であった事。
そのダークゴブリンは極めて強大であり、自ら法の神殿へと赴き討伐作戦の検討を請願していた事。
最終的には剣の乙女自身も承諾し、長期に渡る調査の後、物資と人員を募ってはいた。
しかし、それは彼の進言あっての事で彼女はただ手を貸したに過ぎないという事を、彼は語る。
従って、全ての元凶は自分にあるのだと彼は主張した。
その報を聞いた周囲の冒険者たち――。
幾許かの静寂が流れたが、やがて誰かが声を上げる。
『もしそれが本当だったらよ!どうやって責任とるつもりだ、ああんッ!?』
『俺達の為に命でも差し出してくれんのかよッ!?』
『少しでも償う気があるんならよ、先ず土下座して、そっから俺様の靴でも舐めて貰おうか!?』
『だったら、可哀想な俺等の為に殿でもやれや!?』
『その間、俺達は逃げさせて貰うからよぉッ!』
『どうせそんな力もない癖に!』
『剣の乙女に惚れ込んで、点数稼ぎとはアザトイねぇ!ギャヒャヒャヒャッ……!』
この際、怒りの向ける先など然して問題ではないのだろう。
要は、やり場の無い
案の定、理不尽な暴言と悪意は灰の剣士に集中。
罵声に怒声、道理にかなわぬ心無き言の葉が容赦なく突き刺さる。
「この野郎…!言わせておけば――!」
そんな状況を黙って見過ごせよう筈も無い。
幾度も彼と運命を共にしてきたのだ。
当然の如く、憤怒の形相で湧き立ったのは同期戦士だ。
何の感情も抱いていない剣の乙女が責められたところで、彼の心が動く事は無い。
しかし、彼――灰の剣士が一方的に責め苦を受けるのは我慢がならない。
たとえ全ての元凶が、灰の剣士あったとしても――。
何故、大した実力もない白磁や黒曜の駆け出し程度に、いい様に言われなければならないのか。
一体彼等が戦況に、どれ程の貢献を果たしたのか。
随分上から目線で被害者面をしているが、責めるだけの資格があるのかも疑わしい限りだ。
同期戦士は無意識の内に
「――やめろっ!お前のやるべき事は、そんな事ではない筈だ!」
「――せ、先輩…!くッ…!」
並の相手なら制止を振り切ってでも、彼等に飛び掛かっただろう。
だが敬愛する銀等級戦士が相手では、彼も思い留まるしかなかった。
『おら!誠意をみせろよぉ!』
『それとも口だけかぁ!?』
『カッコ付けやがって、どクズがよぉ!』
尚も彼等の悪意が止む事は無かった。
「……」
そんな彼等に、灰の剣士は無言で近付く。
『――な、何だよ…!や…やや、やる気かッ…!』
『――お…俺等は、味方だぞ!?』
『――うぅ…裏切り者めッ……!』
一歩一歩、踏みしめる脚。
その度に、言いようのない迫力が彼等に伝達したのだろうか。
徐々に迫る灰の剣士に、慄き怯えながらも何とか虚勢を張る事で自身を保とうとした。
『『『『『――ひぃッ…!?』』』』』
やがて互いの手が届く距離に差し掛かった時、なけなしの虚勢も吹き飛び彼等の本性が露わとなる。
「……」
『……!?』
だが怯え恐怖に慄く彼等とは裏腹に灰の剣士は、そのまま素通りする。
『『『『『…へ…?』』』』』
余りに意外な結果に、間の抜けた声を漏らす彼等。
通り過ぎ数歩離れた所で、灰の剣士は漸く其処で振り向いた。
「貴公等に言われるまでもない。元よりその積りだ」
『『『『『――!?』』』』』
外套に隠れた彼の素顔を窺い知る事は出来ない。
だが隠れた双瞳から言い様の無い迫力が備わっていた。
尚も言葉を続ける。
「だが殿を担う気もない。最早負け戦だというのなら、これより先は冒険者としてではなく”火の無い灰”一個人として、小鬼共を斬滅してくれよう!」
そう告げ、彼は再び戦場の方へと向き直った。
「そしてダークゴブリンを討ち、使命の一つを果たす!一人でもやるさ……!」
彼はゆっくりと独り歩き出す。
その先は小鬼の軍勢が待ち構える戦場だ。
既に彼の意識は小鬼――ダークゴブリンに向けられていた。
そんな彼に続く者が、もう一人――。
安っぽい鎧兜に、小盾と中途半端な長さの剣と
小鬼を殺す者――ゴブリンスレイヤー。
「俺は小鬼を殺すだけだ…他に言う事は無い…!」
淡々とそれだけを告げ、灰の剣士を追うようにその場を後にする。
彼の手にも支給品の大盾と鉄の槍が握られていた。
混乱の
それが発端だというのか。
更に3人の武人が戦列に加わった。
「貴公だけに背負わせる訳にはいかんな」
「騎士として、一武人として手を貸そう」
「事情が変わった以上、私も一人の戦士として参戦させて頂く」
ソラール、ジークバルド、ステルクが揃い踏みし灰の剣士の傍らにつく。
ステルクの主任務。
本来はロロナを始めとした女性陣の護衛が役割だ。
一見役割を放棄している様だが、此処で小鬼の軍勢を迎え撃つ事が結果的に任を果たす事に繋がるのだ。
愛用の大剣を手に彼は勇んだ。
「まだアイツをぶった切ってねぇ!」
「漸く俺達の本領を発揮出来るってもんだ!」
「荷馬車に乗ってばかりだったからな、やっと戦えるぜ!」
「在野最上位の銀等級が、此処で尻込みしちゃあよ。格好がつかねぇよな!」
更に続く賛同者たち。
重戦士、槍使い、同期戦士、そして銀等級戦士。
此方の指揮系統は実質崩壊し、もはや機能不全に陥っている。
統率された集団戦法など執れよう筈も無いのだ。
しかしそれでいい。
冒険者である彼等は信頼できる者同士で一党を組み、そのグループ内で背中を預け仲間を頼り各々が役割を果たしてきた。
個人と自由意思、結ばれた強固な仲間意識で繋がっている。
故に本領を発揮するのは、
「剣士さんや頭目さんが行くんなら、あたしもやりますッ!」
銀髪武闘家が。
「聖騎士志望の身として、逃げる選択肢など無い!」
女騎士が。
「じゅ、も、んだって、いるで、しょ?」
魔女が。
「さっきのお返しじゃあ!」
鉱人の斧戦士が。
「私にも、まだ出来る事は残っているか」
銅等級冒険者が。
『『『『『――俺もっ!』』』』』
『『『『『――私もッ!』』』』』
彼等に釣られ参戦の意を示す者達が続出し始めていた。
足りない装備は、支給品や散乱している物を拾い代用し戦う準備を進める者達。
『残り3門の大砲、まだ使えますよ!弾数は、それぞれ一発きりですが』
稼働可能な大砲を持ち込み、小鬼軍へと砲門を向ける冒険者も居た。
「貴方が造った変な矢――爆裂矢だっけ?まだ3発ほど残ってたわ!使わせて貰うわよ!」
灰の剣士が造り上げた爆裂矢を手にする妖精弓手。
小鬼軍が持ち込んだ抱え大筒の砲撃で天幕は爆破され、物資の殆ども巻き添えを食った。
だが3発分だけ誘爆から免れ、残り僅かだが爆裂矢は健在だった。
『弓の援護も必要だろ?俺達もやれるぞ!』
生き残りの弓使い達も援護射撃の為、参加を表明する。
「大司教様。勝手な行動を取る事、どうかお許しください。これより私は前線へと出ます!」
「スイーパーさん…」
剣の乙女の直衛を頼まれていたゴブリンスイーパー。
謝罪の意を示し、彼女も参戦の決意を固めた。
「どうしよう…、アタシの肩じゃ爆弾は届かないし、多少攻撃魔法は使えるけど…真正面からの殴り合いも違う気がするし…」
錬金術士であるライザリン=シュタウト。
未だ複数の投擲武器を所持していたが、彼女の肩力では遠投もたかが知れている。――かと言って正面切って小鬼軍に殴り掛かる位なら、最初から戦士職も兼任していた筈だ。
正義感の強いライザ。
彼女も皆の助けになりたかった。
思い悩む彼女に、メルルが助言を授ける。
「こういう時はね、コレを使うの」
彼女が差し出したのは”スリングスタッフ”である。
二股状の先に布束や投石用の紐を取り付け遠投に適した武器だ。
更に彼女が差し出したのは、持ち手が長めに調整されており更なる遠投が期待できる。
メルルも元は錬金術士としての経歴があったが、現在は戦士職の冒険者として活動している。
故に、この様な武具の知識や技術にも精通していたのだ。
既にルルアもスリングスタッフを持ち出し、やる気満々の表情を浮かべている。
「有難うメルルさん!よぉ~し、これならアタシも――!」
――灰君、今助けてあげるからね。
ライザは活き込む。
メルルの勧めで何度か試射を重ねた後、彼女も戦列に加わった。
「この
意外なのはルルアの幼馴染、エーファ=アルムスターである。
明らかに戦闘向きの装束ではない。
驚きを隠せない周囲に構わず、彼女は小鬼が使っていた抱え大筒を拾い上げていた。
先程の戦闘で、バンダナゴブリンの残存部隊は武器を捨て逃走していた。
殆どが弾丸を使い果たしていたが、中には射撃に足る物も残されていたのである。
元々彼女は銃器や砲兵装に造士が深く、高い知性と身体能力を併せ持つ。
入国の際、愛用の兵装は持ち込む事が叶わなかった。
余りの高火力を誇る為、兵器として認定されたのが大きな要因だ。
(フリントロック式の拳銃は、護身用として認められ所持が許された)
その為、補佐役に徹していた彼女ではあったが、今此処でその才能が発揮されんとしていた。
『女の子一人に任せておけないわね!』
『他国出身の娘に負けてられないわ!』
エーファに触発されたのだろう。
幾人かの女性冒険者が立ち上がり、装填済みの抱え大筒を拾い上げた。
抱え大筒に対しては素人同然だが、引き金を引く事位は理解している。
各々が陣形を組み、迫り来る敵に備えた。
『――裁きの司なる我が神よ、此れなる領域に法の守りをお与えください!』
突如として美しい声音が周囲に鳴り響いた。
若々しく美声を放つ声の主――。
『――
剣の乙女だ。
触媒となる聖水と聖灰を駆使し、奇跡を発現させたのである。
この奇跡は、聖なる領域を一定範囲内に展開し、悪しき者や不浄なる者への侵入を阻む効果がある。
彼女は、生き残った神官戦士との共同で奇跡を発現させていた。
『『『『剣の乙女…』』』』
『『『『大司教様…』』』』
『今更弁明など致しません。ですが、この
ざわつく冒険者に対し、唐突なる彼女の行動。
発現させた奇跡に、どれ程の効果が見込めようか。
小鬼に蹂躙された忌まわしき過去。
その記憶は今も彼女を蝕み続けている。
だが彼女は意を決し動いたのだ。
なけなしの勇気を振り絞り、恐怖に駆られながら――。
「今は、これが精一杯……」
か細い声を漏らす剣の乙女。
『『『『『『――ウゥォオオおアアァァッ!!!!!』』』』』』
だが相反するかの様に、喝采を上げる冒険者たち――。
『――祝福だっ!』
『――大司教様が動いたぞッ!』
『――これで恐いもの無しだっ!』
『――俺達は勝てるぞッ!』
俄かに湧き立つ冒険者の陣営。
傾き折れかけていた士気が再び息を吹き返す。
「…ケっ!付き合ってられっかよ!さっさとズラがろうぜ!」
勇気を奮い立たせる冒険者も居れば、その逆もまた然り。
今更命を賭けるなど馬鹿馬鹿しい。
そう言わんばかりに、荷馬車へ乗り込む者達も存在する。
態々危険を冒し、生き死にの戦い身を投じるなど大馬鹿がする事だ。
それもまた、ある意味で正しい選択肢と言える。
生きているからこそ意味がある。
死んでから次など存在しない。
戦意が失せ戦いに見切りを付けた彼等を、一概に軽蔑する事など出来ようもない。
「おいっ!トットと馬を走らせろや!」
ガラの悪い一人の荒くれ冒険者。
御者に、怒鳴りつけ急かす。
「……」
「おい聞いてんのか、ああ!?」
返事も馬が走る気配も一向に見られない事に、荒くれは苛立ち更に怒鳴り付ける。
すると御者を務めていた男は、馬車を降り戦場へと向かって行くではないか。
「お、おい!?どう言うつもりだ!?俺等の言う事が聞けねぇのか!?」
「聞いてんのか、殺すぞテメェっ!」
「俺等に逆らうと、後が怖いぜぇッ!?」
複数の荒くれが声を荒げ、戦場へと去り行く御者に対し脅迫紛いに怒号を発す。
その声に反応を示したのだろうか。
御者の男は荒くれたちに向き直るが、その眼光は手練れの
「ゴロツキ風情がッ!俺は翠玉等級だ!貴様ら白磁や黒曜の言う事を聞く道理はない!」
御者の男――。
翠玉の等級を持つ彼は、それなりの実績と実力を備えた冒険者だった。
負け戦と宣言され、規約に則り粛々と撤退準備に映っていたが、灰の剣士を始めとした大勢の冒険者が未だに心折れず戦い抜こうとしている。
非難合業を浴びた剣の乙女すら、戦場に残り一冒険者として動きを見せているのだ。
金等級――況してや法の神殿を預かる大司教に位置する御仁だ。
依頼人である彼女でさえ戦おうとしている。
それより遥か下の等級である自分は、戦場を後にしようしていたのだ。
そもそも、剣の乙女に無礼千万な暴言を吐き掛けていたのは、荷馬車に籠もる荒くれたち。
前線に居る者達に比べれば、何とも頼もしいまでに綺麗な出で立ちをしているではないか。
随分とまぁ軽傷だ。
さぞ必死に戦ってくれたのだろう。
武器も大して損耗しておらず新品に近い。
修理の必要もない位に。
余程、勝利に寄与してくれたに違いない。
「逃げたきゃ、勝手にやれッ!馬ぐらい貴様らで動かしな、年食った新人の坊やッ!!」
翠玉の男は、本心を露に荒くれ達を睨み付ける。
『『『ぐッ…!?』』』
翠玉等級とはいえ中堅冒険者――。
修羅場を潜り抜けた男の眼光は本物だ。
見てくれや威嚇で成り上がったゴロツキとは年季が違う。
男の迫力に気圧される荒くれ達を置き去りに、翠玉の男は戦場へと立ち去った。
総勢100名超えるか超えないか。
対する小鬼は未だ400以上――。
彼我との戦力差は歴然だ。
真面にぶつかり合った処で、結果など明らかだというのに。
それでも彼等の
「こんな形で、ロスリック生き残り組が揃うとはな!」
「奴等に目にもの見せてやろうぜ!」
迫り来る小鬼軍を見据える灰の剣士。
そんな彼に語り掛ける、槍使いと同期戦士。
二人とも支給品の大盾を装備していた。
「――とは言え、数の上では圧倒的不利。使い処は今を於いて他にはあるまいよ!」
「ジークバルド…」
彼等の前へと勇むのは、カタリナのジークバルド。
彼に握られし、真・ストームルーラーには風が纏わり付いている。
「
「左様。此処で一度牽制し、出鼻を挫くと共に流れを此方に引き寄せる!」
灰の剣士に、ジークバルドは振り向きもせずに答えた。
小鬼の巣で見せた、例の戦技『嵐の螺旋撃』――。
消耗が激しい故、多用は禁物だが上手く使えば戦局をも逆転させる事すら可能だ。
今まで温存しておいたが、此処で使うべきと判断したのだろう。
体内のソウルを増幅させ独特の構えを取る。
「――ジークバルドが動いた後、支援班は一斉に射撃を開始してくれッ!」
単純明快だが、灰の剣士は後方部隊に声を投げ掛けた。
小鬼の群れが土煙を上げ徐々に迫り来る。
未だ多くのホブゴブリンが生き残っており、頑丈な盾を前面に押し出し重厚な壁を形成しつつ進撃しているのだ。
『――各位、奮起せよッ!ここで奴等を殲滅するぞッ!!』
『『『『『『――おぉうッ!!!』』』』』』
灰の剣士を筆頭に、各々は闘志を
「――ぬんッ!!」
それに呼応するかの如く、ソウルを高めるジークバルド。
――物凄い
戦技の構えを見せるジークバルドの気を察知し、ステルクの視線は彼に集約されている。
――ときは今ッ!
「――ぬぅうおおぉぉぁああッッ!!」
充分に練られしソウルは、体内から肩を伝い両腕を経由して剣へと伝達される。
ジークバルドのソウルとストームルーラーの宿す嵐の力が反応し、刀身から激しい暴風が巻き起こった。
「――受けよッ!嵐の螺旋撃ッ!!」
渾身の突きと共に繰り出される、爆風の如き弾丸――!
剣の切っ先から解き放たれし嵐の雪崩は圧倒的暴力を伴い、小鬼の群れへと吹き荒んだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
聖域《サンチュクアリ》(奇跡)
触媒となる、聖水や聖灰などを用いて結界を張り巡らせる奇跡。
敵意を持つ者や邪悪な存在の侵入を拒む為に用いられる。
万が一侵入した者は、多大な代償を支払う羽目になり著しい負担を強いられる。
不浄で邪悪な存在ほど結界は強く作用し、侵入すれば消滅に至る事もあり得るのだ。
寺院や神殿は神聖な場とされ、強度の差こそあれ大抵は結界が貼られているものだ。
今回は少し短めだったかもしれません。
しかしアトリエキャラクターたちの必殺技をそのまま再現してしまえば、魔王なんて簡単に倒してしまいそうですね。ステルクさんなんて、星を切ったりしてますし…。
ライザやルルアは普通に高度な魔法使ってるしで、とんでもないバランスだ…。
( ̄ω ̄;)
如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
エルデンリングが楽しみです、手に入るかな?
デハマタ。( ゚∀゚)/