時が経つのが早い…。
路面凍結でのスリップには気を付けないと…。
投稿致します。ではドゾ。( ゚ ω ゚ )
分解《ディスインテグレータ》真言魔法
オムニス《万物》…ノドゥス《結束》…リベロ《解放》。
物質を分解ないし崩壊させる、魔力の光線を照射する高位の真言魔法。
高位に位置する故に、修得には当然、困難が伴う。
元の破壊力に優れ、魔力に長けた術者が放てば、強敵すら易々と屠るだろう。
真に力ある言葉――世界の改変を成すと言われる言の葉。
哀しいかな、己が私欲に溺れ深みに潜る。
その様な輩は後を絶たず、故に、世に冒険の種は尽きまじ。
其処に息吹き芽吹くのだろう…世界は――。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― 悪の所業 )
士気は旺盛だ。
人族を蹴散らし、蹂躙し、勝利する。
それを成し遂げた時、我等の地位は更なる高みに至るだろう。
混沌勢の異形、
「GROOV!」
(勝利は目前だ!全軍、進めぇッ!)
『『『『『『――GYEVO』』』』』』
黒き異端の小鬼ダークゴブリンの号令を受け、小鬼軍は振るい立ち冒険者側へと殺到する。
本来なら、軍勢を立て直さずとも即座に本陣へと攻め込む事も出来た。
何せ、黒教会や医療教会を名乗る組織が、敵中枢へと奇襲してくれたお陰で勝利はより確実なものとなっていたからだ。
だが小鬼側も些かに消耗しており、各部隊の合流と共に幾許かの休養を必要としていた。
小鬼軍の進軍に停滞が生じたのは、そういった理由に起因していたのだ。
幸い、休息の為の物資には事欠かなかった。
斃した冒険者の遺体が其処彼処に転がり、未だ手付かずの糧食も同時に散乱していた。
態々物資を持ち込まずとも、遺体と化した冒険者の所持品を奪えば良いだけだ。
日持ちを優先した携帯食が主であったが、中には酒などの嗜好品も含まれ、小鬼達はそれ等の物資を味わい大いに士気を回復させていたのである。
景気づけだと言うのだろうか。
それは一種の宴の様でもあった。
総数400以上――。
対する人族は150前後――。
中でも戦える者は100名に及ぶかどうかの数だ。
このまま数と力で押し切れば良いだけだ。
小鬼の誰もが、そう信じ勝利を疑う事は無かった。
―― ダークゴブリン以外は ――
彼のみは進軍しつつも険しい表情のままだ。
――許さんぞ…!教会の者共ッ…!
意外な事にダークゴブリンの怒りは、黒教会や医療教会に向けられていたのである。
冒険者側ではなく――。
それもその筈――。
彼はソウル感知で、人族側の本陣で何が行われていたのかを漠然とだが把握していた。
ロンドール黒教会による、不死人と化した
取り引きの際、被検体となる大量の小鬼を要求した教会の狩人。
しかも数々の実験だけでは飽き足らず、事に乗じバンダナゴブリンを獣へと変貌させた。
度重なる同胞への仕打ち――。
物資と技術を目的に取引へと応じたが、目に余る所業の数々――。
自身の欲と身勝手さに特化した精神構造を持つのが、小鬼という種族だ。
だがダークゴブリンは無論、此処に属する小鬼は仲間意識が取り分け強い傾向にある。
数多の同胞を犠牲にしたであろう教会に、ダークゴブリンは憤怒を湧き立たせる。
――待っていろ!この戦を平らげた後、次は貴様らだ!……特にあの狩人とやらは、絶対に許さぬ…!
一応協力関係ではあったが彼にとっては形骸に等しく、取り分け医療教会の狩人には更なる憎悪を募らせていた。
そう――。
ダークゴブリンにとって、灰の剣士やゴブリンスレイヤーなど最早どうでもよくなっていたのだ。
――!?このソウルの流れ…何だ…!?
怒りに湧き立つ彼ではあったが、突如前方から異常なソウルを感知する。
そのソウルは急激に勢いを増し強大化の一途を辿っていた。
ソウルが強大になるにつれ、徐々にだが周囲に不自然な風が吹き荒んでいく。
――いかんッ!
『――GUUV、GUUV!!』
(――総員散開っ!総員散開っ!急げぇっ!!)
理屈ではない。
本能で危険を察知し、咄嗟の判断で周囲に檄を飛ばす。
それは、あまりに唐突だった。
世にも珍しいダークゴブリンの焦燥――。
それが彼等の退避に遅延を生み出す。
その頃には暴風が咲き乱れ、流石に前衛も危惧したのだろう。
身の危険を察知した最前列のホブゴブリン隊――。
手にしたタワーシールドを構え、絶対防御体勢で凌ごうと試みる。
その様子は瞬く間に知れ渡り、他の小鬼も防御に専念せざるを得なかった。
瞬間――。
前方より突き抜ける、不可視の衝撃波――。
暴れ狂う風の暴力――。
嵐を思わせる暴風の荒波は、彼等を突き抜け奔り抜ける。
そしてやや遅れ、襲い来る暴虐の如し爆風は無秩序に暴れ回り、並み居る小鬼を巻き込んだ。
(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― 戦慄の時 )
『GUUB』
『GOA』
『GROOV』
『GUB』
『GOV』
形容に難い叫び声を上げ、荒れ狂う暴風に身を委ねるしかなかった。
螺旋を描き突き抜ける嵐を纏いし弾丸の乱気流。
カタリナのジークバルドが放った、戦技『嵐の螺旋撃』に巻き込まれた小鬼の群れは、宙に巻き上げられ成す術も無く吞まれ行く。
暴風の潮汐力に引き千切られる者――。
地に叩き付けられ絶命する者――。
衝撃を真面に浴び圧死する者――。
突き抜けた嵐の弾丸は、多数の小鬼を巻き込み吹き飛ばした。
――おのれ人族め、まだこれ程の抵抗をッ…!
流石のダークゴブリンも例外ではなく、嵐の乱流を耐え忍ぶのが精々だ。
真・ストームルーラーから放たれた戦技は、100近くの小鬼を絶命ないし行動不能に至らしめ、400以上居た小鬼軍は300前後へと数を減らす。
その後、幾許かの時間を得て暴虐の如し嵐は漸く鳴りを潜める。
――ぬぅ…、過ぎ去ったか…。
落ち着きをみせた戦場を確認し、ダークゴブリンは防御態勢を解く。
――先程のソウルの流れ、そう幾度も行使出来んはずだ。
ジークバルドの人物像を熟知している訳ではない。
だが嵐の螺旋撃を
衝撃に呑まれながらもダークゴブリンは、ジークバルドの消耗を看破し連続使用は不可能である事を見抜く。
『――GYEVO!!』
(――全軍怯むなぁッ!先程のは一発が限度、恐れる事は無いッ!!)
二度目の襲来は無いと確信し、ダークゴブリンは再び進軍を命ず。
命を受けた小鬼は隊列の立て直しを図るが、彼等の悲劇はこれで終わりではなかった。
それは突然と言うべきだろう。
いきなり爆発が巻き起こり、幾多もの小鬼が四散し爆散する。
――ちッ!今度は何だッ!?
不意の爆発に、落ち着きつつあった小鬼軍は再び混乱の渦中に巻き込まれる。
それは砲撃によるものだった。
ジークバルドの戦技を皮切りに、冒険者側からの野戦砲が火を噴いたのである。
3門一発ずつ計3発の砲弾だが、混乱の極みにあった小鬼の群れを巻き込み吹き飛ばしたのだ。
嵐の螺旋撃による影響は大気の流れをも変え、冒険者側には追い風、小鬼側へと向かい風を
追い風に乗った砲弾は、悠々と小鬼陣営に届き彼等に更なる出血を強いる。
彼等の災厄は続く。
砲撃の後、立て続けに降り注ぐ
彼等は歓迎されているのだ。
追風の影響は冒険者に多大な恩恵を与え、弓隊の放つ矢の飛距離と威力増大を促す。
頭部を射抜かれ、急所を貫かれ、またもや数を減らす小鬼軍。
時折混じる爆発を伴う矢――爆裂矢。
そして、小型ながらの砲弾――抱え大筒の霰。
それは妖精弓手の放った矢と、エーファたちの砲撃だった。
僅か3発の爆裂矢だが、膂力や耐久力に長けたホブの頭部や脚部を正確に撃ち抜き爆散させる。
そしてエーファを始め冒険者たちが放った、抱え大筒による砲撃。
それ等も合わさり、防壁を担うホブゴブリン達は、ほぼ全滅の憂き目に遭った。
『GROOV』
『GOA』
『GOV』
『GROOV』
『GOV』
其処彼処に木霊する小鬼の絶叫――。
吹き飛び、爆散し、貫かれ、命を落とす数多の小鬼達。
この災厄で彼等の数は更に減少し、生き残ったのは250程――。
だが問題は数ではない。
寧ろ士気にこそあった。
半ば一方的な反撃に遭い、彼等は戦意を挫かれつつあったのだ。
今日まで、彼等は勝利に勝利を重ね、その恩恵と美酒に
食欲、性欲、征服欲、虚栄心、凡そ彼等の望む願望が満たされ、彼等は間違い無く絶頂期だった。
だがそれが、今こうして瓦解しようとしている。
ダークゴブリンという異端の小鬼に率いられた彼等には、敗北という概念は無かったのだ。
思えば魔神軍の主敵であった”ファランの不死隊”に対しても、こうはならなかった。
しかし今はどうだ――。
彼等の勝利という願望は消え失せ、次第に恐怖と危機感が満たされつつあった。
『――GRUUBO!!』
(――全軍射線を開けよッ!俺が反撃を試みるッ!!)
だが唯で転ぶ小鬼軍ではない。
被害が増大する小鬼軍ではあったが、誰一人戦いを投げ出す者は居なかったのだ。
それに加え長であるダークゴブリンの怒号――。
組織の要である彼の声に我を取り戻す小鬼達――。
彼の”反撃”という言葉に冷静さを取り戻し、混乱しながらも射線を開けるべく移動を開始する。
――目に物を見せてくれる!人族共ッ…!
射線が開かれ前列中央へと躍り出るダークゴブリン。
両の掌を前方に翳し、詠唱を開始した。
「――
……
(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― 心の渇きを )
両肩をダラリと脱力させ大きく息を乱すのは、カタリナの騎士ジークバルド。
『す…スゲェ…』
『何だよ…今のは魔法…?』
『何言ってんだ技だよ技…、良く分かんねぇけど…』
周囲の冒険者は目を白黒させ、驚きの表情を隠せない。
「有難うジークバルド。一旦下がってくれ」
「…ズぅ…ハァ……うむ、そうさせて貰おう……」
かなりの消耗だ。
剣を支えにし今にも倒れそうな状態だ。
灰の剣士に促され、彼は後方へと退避する。
歩む脚も覚束ないほどに消耗を強いられていた。
「このステルク、感服いたしましたぞ!」
「騎士さん、大丈夫かい!?」
「アンタすげぇなぁ!」
「唯もんじゃないって分かってたけど、たまげたぜ!」
ステルク、女部族、槍使い、重戦士が彼に駆け寄り喝采の言葉を投げ掛ける。
『わたし、あんな騎士様に見初められたい』
『どんなお顔なのか気になるわ!』
『変な格好だけど、アタシを貰ってっ!』
彼の放った戦技は、尋常ならざる威力を遺憾なく発揮し小鬼軍を蹴散らした。
その雄姿に女性陣も虜にし、彼に尊敬と情景の念を込めた拍手で出迎える。
「……」
拍手を受けながらもヨロヨロと歩く彼に、一人の男が出迎える。
「……」
「……」
バケツに似た兜に太陽を彩った鎧の騎士、アストラのソラールだ。
「……酒が飲みたい、ソラール殿…」
「…フッ…、フハハハっ…!何とも貴公らしい、これが終われば盛大に飲み明かそうではないかッ!」
弱々しい口調ながらも本音を漏らす彼に、ソラールは高笑いを上げた。
「――貴公に太陽あれッ!」
そしていつもの『太陽賛美』でジークバルドを称賛した。
その瞬間、周囲にドッと笑い声が満ち溢れる。
殺伐としたこの戦場に、束の間の安らぎが其処には在った。
だが、そんな和やかな時間も長くは続く筈も無い。
『――皆さん警戒をッ!
(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― 危機との遭遇 )
空気感を一変させたのは剣の乙女である。
不意に彼女の叫び声が木霊し、周囲は一斉に気を張り詰めた。
彼女もソウルの感知が可能で、遥か前方より呪文攻撃の襲来を予期していたのだ。
『――
一人の女性冒険者が叫ぶ。
この真言魔法は、あらゆる対象物を崩壊させ文字通り分解させる、高位の攻撃呪文だ。
術者の魔力と対象物の抵抗力にも左右されるが、直撃を受けて無事で済ませるのは極めて困難である。
彼女の声を受け、俄かに騒ぐ冒険者たち。
整いつつあった士気は、再び混乱の兆しを見せつつあった。
『――総員伏せよ!私が出るッ!』
混乱の
ジークバルドに代わり、今度は彼が更に前へと歩み出た。
「手は有るのか、灰よ?」
「無茶すんなよ!?」
「今お前を失う訳にはいかねぇんだからよ!」
ゴブリンスレイヤーを始めとした面々が、彼の身を案じる。
「――手を貸そうか?」
「――無用だ、任せよ!」
ソラールも助成を提示したが、灰の剣士は短くも確かな言葉で遮る。
彼の手には魔法の杖”孤電の杖”が握られていた。
『今はコイツを信じるしかねぇ!全員伏せるぞ!』
状況を察した重戦士が周囲に警戒を呼び掛け、冒険者たちは一斉に身を屈める。
『『『『『『……』』』』』』
固唾を飲み彼を見守る冒険者たち――。
その後、瞬時に一変する空気感に、皆は一層身を強張らせた。
『――
一方、小鬼の陣営ではダークゴブリンが詠唱を終え、両の掌から輝く光線が照射された。
通常の術者が行使しても莫大な威力を誇る高位の攻撃呪文だ。
桁外れの魔力を有すダークゴブリンから放たれたソレは、規格外の威力を誇り周囲に衝撃と振動が直走る。
視認した者の目を焼かんばかりの眩い光を発し、極太の光線は冒険者――灰の剣士目掛けて直進した。
光線の通った後には、焼け焦げた草木が舞い散り、その熱量と衝撃を物語っている。
直撃は言うに及ばず、触れただけで物質の構造そのものを崩壊させんばかりの破壊力だ。
その様な呪文を真面に受ければ、灰の剣士は跡形もなく消滅するだろう。
だが彼は、その場から動く気配はない。
それどころか、杖を地面に突き刺し宝玉部分に手を翳し意識を集中させた。
「――あたしを助けた、あの時と同じです!」
伏せながらも眼前の光景を目にする銀髪武闘家。
誰に語り掛けるでもなく彼女は思い出していた。
ロスリック不死街の最奥、亡者の穴倉での戦いを――。
自分の不運で犠牲になる運命だった処を、彼だけが踏み止まり命を救ってくれた。
その時使用していたのが、あの不思議な魔法の杖だ。
(本編前夜編――第63話参照)
それ故、彼女に悲壮感は無く寧ろ一種の安堵感さえ抱いていたのだ。
そうこうしている内に分解の呪文が彼へと迫る。
膨大な光線の波が彼を呑み込もうとした刹那――。
「――
灰の剣士は叫ぶ。
同時に、極太の光線は杖に吸い込まれた。
膨大な光の雪崩は瞬く間に消失し、流れ込んだであろう杖先は光を帯び
「…じ、呪文が消えたっ…!?」
彼等の後列で固唾を飲んでいたルルアは、その現象に目を白黒させる。
それは周囲も同様の反応で、息を呑み現状が把握し切れていなかった。
一体何が起こったと言うのか。
そんな疑問を誰かが問い詰めようとする暇もなく、灰の剣士は更なる言葉を紡ぐ。
「――返すぞ、
叫ぶと同時に、杖先から再び莫大な光渦が解き放たれた。
光の向かう先は――。
―― ダークゴブリン ――
『『『『『『――!!?』』』』』』
その光景にまたもや目を見開き声もなく驚愕する冒険者たち。
だがそれ以上に度肝を抜かれたのは、呪文を放ったダークゴブリン本人であろう。
「――GUUV!?」
(――な、なにッ!?)
事の理解を脳幹で処理する前に、次なる動作へと即座に移る。
手にダークハンドを展開させ極限にまで圧縮させた。
「――GOOV!!」
迫り来る光渦に雄叫びを上げるダークゴブリン。
自らの放った光波の着弾する瞬間を見極め、ダークハンドで呪文を弾き飛ばした。
輝く光の弾道は無理やり捻じ曲げられ、明後日の方向へと飛ばされる。
行き場を失った光の弾道は、何かに触れたのだろう。
程無くして大爆発が起こり、戦場にまで衝撃がヒシヒシと伝わった。
遥か遠方にも拘らずに、だ――。
これには冒険者も小鬼も目を奪われ、ごく短い時間ではあったが戦意を置き忘れる程だ。
「な…なんちゅう威力じゃ…!」
「あんなの直撃してたらと思うと――」
「ゾッとしませんね……
鉱人斧戦士を始めとし同期戦士も
半森人の軽戦士も呪文の威力に舌を巻いていたが、それ以上に呪文を跳ね返した灰の剣士にも、ある種の複雑な感情を抱いていた。
今なら分かる。
同じ一党に所属する、圃人の少女巫術士――。
過去に彼女は灰の剣士に仄かな好意を抱いていたが、今では彼に畏怖を覚え極力接触を避けていた。
――近い内に彼は……いや、やめておきましょう。不謹慎だ、我ながら。
灰の剣士に得体の知れない不吉感を抱くが、軽く被りを振り意識を戦場へと戻した。
遠方での爆発が止み、周囲には幾許かの静寂が舞い戻る。
「その杖、あの
「ああ。一日一回だが、こういう使い方もある」
語り掛けるゴブリンスレイヤーに、灰の剣士は相槌を打った。
彼の言う
様々な困難を乗り越え、悲願を果たしたアークメイジ――孤電の術士。
その報酬として彼女から賜った、魔法の杖だ。
彼女の依頼を完遂し、灰の剣士は彼女との再会を果たした。
四方世界とは次元の異なる異界、”魔術士の世界”にて――。
(イヤーワン編――第48話参照)
そこで彼女から杖の使い方を教わり、現在に至るのであった。
思えばこの杖のお陰で、呪腹の大樹との戦いにおいても、危機に瀕した銀髪武闘家の命を救う事が出来た。
更に今こうして、ダークゴブリンの放った高位の呪文攻撃を凌ぐ事も叶った次第である。
「またお前さんに助けられたな!」
「全く借りを作りまくってくれるぜ…!」
唖然とする周囲を余所に、同期戦士と槍使いが声を投げ掛ける。
「ならば今の借りは直ぐに返して頂こう。…来るぞ――!」
二人の軽口に自分なりの軽口で返し、前方へと意識を向けさせた。
否が応にでも流れ込むダークゴブリンのソウルと感情――。
起死回生の反撃を返され怒り心頭だ。
『――呆けている暇は無いぞッ!総員、構えろぉッ!!』
灰の剣士の一喝に、呆けていた冒険者たちは我に返り一斉に身を引き締める。
盾持ちは最前衛に陣取り、各々の盾を使い防御陣で待ち構えた。
……
(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― 戦闘開始 )
――味な真似をしてくれる、灰の剣士ぃッ!!
奥の手でもあった高位の真言魔法『
それが見事に潰され、怒りと闘志を漲らせるダークゴブリン。
高位の呪文ゆえ、消耗が激しく連射は不可能だ。
二発目を放とうと思えば可能だが、経戦能力が著しく喪失してしまう。
意を決した彼は、どよめく小鬼軍に一喝する。
『GROBEOV!!』
(きけぇッ、これより小細工は一切不要だ!純粋な力を以て、我等の意地をいま見せる
―― 全軍、我に続けぇッ!! ――
ダークゴブリンの号令で小鬼軍は勢いを取り戻し、怒涛の突撃で冒険者陣営へと殺到する。
距離が狭まる両陣営――。
頃合いと見計らい投射を行う冒険者の陣営――。
『――来たわよッ…せ~のッ!!』
彼女らを指揮するのは、錬金術士でもあり元王族でもある、メルルリンス・レーデ・アールズ。
通称メルル。
彼女の指示の下、非力な後衛職の冒険者たちは、スリングスタッフの用いて”フラム”や”黒火炎壺”といった爆弾を投射。
前衛部隊の頭上を通り抜け、放物線を描きながら小鬼軍へと着弾した。
「こんのぉ~ッ!」
「とんでけぇ~っ!」
ルルアとライザも負けじと投射を繰り返す。
彼女らの放った爆弾は次々と炸裂し、方々で小規模の爆発が巻き起こる。
爆発が生まれる度に小鬼は吹き飛ばされ、またもや数を減らしていた。
その頃には前衛の要であったホブゴブリンは大半が消え失せ、真正面からの衝突に対する懸念は取り払われたと言っていいだろう。
両陣営の距離が肉薄し、この距離では支援部隊の援護も期待できない。
『――来るぞぉッ!!』
灰の剣士が叫ぶと同時に、両軍は衝突する。
最前衛の彼等は、各々の盾で小鬼の突撃を食い止め踏み止まった。
大半のホブゴブリンが消失したとはいえ、ダークゴブリンに鍛えられた彼等の膂力は思いのほか強力で、冒険者側は必死に耐え忍ぶ。
ジークバルドと支援部隊の援護で、大きく数減らしていた小鬼軍。
それでもまだ総数では小鬼側が倍以上を誇り、徐々にだが冒険者が押され始めていた。
―― このままの状態では ――
「至高神様…今を戦う彼等に御加護を――」
彼等の後方に居た剣の乙女。
神官戦士たちとの共同で張り巡らせた
即席ではあったが、金等級冒険者でもある彼女が行使すれば絶大な効果を及ぼす。
彼女の祈りと共に聖域が力を発し、混沌勢の小鬼達は聖域の影響を直に受けた。
彼女程の強力な結界すら侵入するダークゴブリン軍だが、多大な代償を支払う羽目になる。
彼等に作用した結界の影響で、小鬼達は莫大な負荷を強いられ身体能力に大きな悪影響を及ぼしていた。
『――総員、踏み止まれぇッ!!』
それを察知したのだろう。
灰の剣士が檄を飛ばし、皆は呼応するかの様に足を大地に踏み締めた。
そして到来する一時の静寂――。
「と、止まった…!」
何者でもない一人の冒険者の呟き、彼の目には踏み止まる冒険者たちの姿が映っていた。
完全に小鬼の進撃は遮断され、盾持ちの冒険者たちは一歩も微動だにする事は無かった。
驚愕していたのは、どちら側か?
小鬼か?
冒険者か?
両陣営は一言も発さず、無言の戦意が互いを睨み合う。
端を発する誰かの声――。
『――3…2…1…押し返せぇッ!!』
灰の剣士だ。
タイミングを合わせ易い様、対処されるリスクを背負ってまで、わざわざカウントダウンで皆に呼び掛けた。
むろん彼等も素人ではなく、反撃の糸口を窺っていた。
灰の剣士の意図を汲み取り応える。
完璧なタイミングで一斉に押し返しを敢行――。
ほんの一瞬だが、小鬼軍は勢いを削がれ後方へと後退った。
だが、その一瞬は間合いを生み反撃の発端となる。
最初の一撃を放ったのは矢張り灰の剣士だ。
支給品ではあったが、彼の鉄槍は小鬼を貫き一撃で絶命に至らしめる。
そして後に続かの如く、ゴブリンスレイヤーも鉄槍で小鬼を貫いた。
それが皮切りとなったのだろう。
冒険者の反撃が激流となり小鬼を襲う。
ソラールの剣が小鬼を斬り飛ばし――。
ジークバルドの大剣が唸りを上げる――。
彼等だけではない。
重戦士や槍使いといった西方辺境の精鋭たちのよる猛反撃――。
他方の辺境から馳せ参じた数多の冒険者たち――。
そして
彼等の勢いに乗った反撃の前に、小鬼は多くの出血を強いられた。
しかし小鬼とて甘んじて受け入れる気はない。
味方を犠牲としながらも班ごとに協力し合い、彼等の反撃を凌ぎながらも攻撃を繰り出した。
『――ぐぇッ…!』
冒険者の盾を乗り越え投射した小鬼の手槍――。
それを胸元に受け、一人の冒険者が犠牲となる。
『――GOA…!』
何処かの冒険者の振るう剣が小鬼を切り裂き、お返しとばかりに仇を討つ。
小鬼の猛攻――。
冒険者の反撃――。
血と命を削り合う激戦が再び到来したのだ。
これが正念場となろう。
戦場の誰もが理屈抜きで理解していた。
小鬼も冒険者も皆等しく――。
「――皆殺しにしろぉッ!」
珍しく大声で猛るゴブリンスレイヤー。
彼の槍が更に一体の小鬼を貫く。
「――奴等に死をッ!」
そこへ銀等級戦士も続き、愛用のロングソードで小鬼を両断した。
彼もまた小鬼を憎む者の一人だ。
次第に両陣営は要れ乱れ、乱戦の様相を見せ始める。
こうなれば陣形など何の意味も成さず、後は殺し殺されの削り合い――。
『――総員、自由戦闘!――自由戦闘ッ!!各自の判断で戦えぇッ!!』
武器を振るいながらも、灰の剣士は目一杯に叫ぶ。
とても返事どころではなかった筈だ。
しかし意に反し、周囲は彼の声に応え各々の判断で戦闘を継続する。
本当の意味で
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
荷馬車
貨物を運ぶのに適した馬車。
凡そ人力では限界があり、人々は創意工夫の末、多用な文明を育んできた。
馬と人類の結びつきは強く、生活に欠かせない存在だ。
世界に住まうは、人のみに非ず。
多様な生命に支えられ、今日まで生き生かされてきた。
そんな彼等に今一度、感謝と敬愛を――。
一話ごとに、アイテムのフレーバーテキストを書いてきましたが、フロム特有の表現には到底及ばない。
アレって、個人で考えてるんでしょうかね?
独特のセンスを感じます。
如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
デハマタ。( ゚∀゚)/