今回は少し短いですが、灰の剣士とダクゴブの一騎打ちです。
最近無性にシューティングゲームが、やりたくなってきた。
ひと昔前のレトロな奴。(縦スクや横スクの、2D系)
では投稿致しますドゾ。( ゚ ω ゚ )
強化法陣
強化を齎す魔法陣。
影響下にある対象物の性能を著しく強化させる。
元は武器や盾の
地面に描き、儀式を行う事で発動。
主に味方戦力の強化に用いられた。
また無機物にも作用する。
何者でもない、ただの邪教徒――。
彼の遺した崇高なる功績は死した後、初めて称えられた。
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(推奨BGM Antti Martikainen ―― Battleworn )
意を決す灰の剣士とダークゴブリン。
互いに斬り結ぶ両者の剣――。
1合、2合、3合と打ち合い、両者は鍔迫り合いの形に
二人の膂力は互角だろうか。
一歩も引く事なく拮抗するが、突如ダークゴブリンが拳で殴り付けた。
そのパンチを顔面に受けた灰の剣士。
吹き飛ばされるも、宙返りで体勢を立て直し再度突撃。
間合いに入ると同時に、袈裟斬りを仕掛ける。
だが難なく躱され、一瞬で後方へと回り込まれた。
ダークゴブリンは、無防備な背を晒す彼を斬り付ける。
「――ぐッ!」
背に一撃を受けた。
だが鎧下である”ミラのベスト”、胴鎧の”無名騎士の胸当て”の防御効果で掠り傷程度で済んだ。
背に斬撃を受けた衝撃で僅かに前のめりとなるが、彼はその体制を利用し身体を回転させ反撃を見舞う。
「――GROV!?」
彼の反撃を許し、ダークゴブリンも胴部を斬り裂かれた。
両者とも軽傷ながらも出血状態となる。
しかしお互い気に留める事も無く、怒涛の連撃が交差した。
激しく鋭い斬撃――。
重く速い猛撃――。
斬り、突き、払い、薙ぎ、叩き、蹴り、打ち、また斬る。
息を吐かせぬ連撃の嵐――。
徐々に切り裂かれる身体――。
通った刃の溝跡――。
其処から噴き出す鮮血――。
その様は、灰の剣士、ダークゴブリン双方に当て嵌まった。
次第に痛痒を負いながら尚、留まる気配も見せず二人は剣をぶつけ合う。
合わされる刃――。
削られる刀身――。
赤熱化する金属粉――。
刃が合わさり、その度に反響する金属音――。
皮膚が裂け――。
血管が破れ――。
肉が抉れ――。
神経が摩耗する――。
しかし止む事は無い、剣戟の乱舞。
両者の間には血と火花が飛び散り、苛烈な戦いを物語っていた。
何度も切り結び、刃が合わさり、徐々に削れ行く刀身と己が命――。
更に切り裂かれる灰の剣士。
またもや出血を強いられるダークゴブリン。
紅く染まり行く二人の身体。
それでも止まる事の無い、剣の交差――。
次第に二人の斬撃は、周囲の草木や地面をも抉り始めた。
刃が触れずとも剣圧の衝撃波が、物体を斬り刻んでいたのだ。
灰の剣士が繰り出す一撃が躱され、切っ先の真空波が草木を破断させる。
対するダークゴブリンの剣撃も空を切り、かまいたちが発生し大気を引き裂いた。
距離は離れていたが、見守る周囲の冒険者や小鬼にも影響は及び始めている。
もはや呑気に観戦している場合ではない。
周囲も安全では無くなりつつあるのだ。
だが終わる事の無い両者の剣舞――。
寧ろ激しさは更に増し、より速く、より苛烈な連撃を繰り出し命を削り合った。
「な、なんと凄まじい…!」
「見た事ねぇよ、こんな戦い…!」
両者の死闘を見守る冒険者たち――。
かなりの経験を誇る銅等級冒険者に重戦士は、その光景に唯々見入っていた。
否、彼等だけでなく、幾多の冒険者は息を呑み言葉も浮かばず釘付けとなるのみ。
それは小鬼側も同じで、唖然と口を開く事しか出来ていない。
それ程迄までに、灰の剣士とダークゴブリンは激闘を繰り広げていた。
次第に斬撃だけでなく四肢を用いた格闘術まで織り交ぜ、互いの身体を打ち合い斬り合う。
頬を殴られる灰の剣士。
腹部を蹴り飛ばされるダークゴブリン。
刃が、拳が、脚が――。
持てる戦闘技術を総動員し、二人は尚も死闘を継続する。
しかし永遠に続く事は決してない。
彼等とて、無限の体力と集中力を誇る訳ではないのだ。
最後の一太刀を合わせ、互いに後方へと跳躍する。
両者は幾許かの距離を取り、ほんの
『『『『『『ふぃ~……』』』』』』
何故か周囲の観戦者達が大きく息を吐き出し、硬く握り締めていた拳を解く。
「は…灰君…あんなに…血を……」
悲痛な表情ながらも彼から目を離す事は無いライザ。
彼女とて故郷の島で、命に関わる冒険を乗り越えた身だ。
だが、これ程までに苛烈を極めた死闘など、今日まで目の当たりにした事は無かった。
荒事には慣れた。
ライザは、そう自負していた。
そんな認識が崩壊した瞬間でもあった。
身体中、あらゆる箇所から血を流す灰の剣士。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
呼吸を乱しながらも敵を見据えている。
「何とか助けてあげたい…けど――」
ライザだけではない。
灰の剣士の身を案じていたのはトトリも同じだ。
短い期間とはいえ彼に錬金術を指導した間柄。
加勢したい気持ちは山々だが、安直な助成は出来ない。
何故なら、空中を飛翔している翼竜と、それに跨る長弓小鬼――。
彼の弓撃に阻止される可能性が極めて高いからだ。
魔法にせよ、錬金術で拵えた道具にせよ、少しでも怪しい素振りを見せれば正確無比な矢が飛来して来るのだ。
無謀な試みを見せ、無念にも矢の餌食となった幾多の冒険者たちの末路が、それを物語っている。
歯痒い気持ちだけが膨れ上がり、彼女も見る事しか出来ないでいた。
「なら遠くからこっそりと……」
「――駄目だよルルアちゃんッ!!」
スリングスタッフで、彼の助けとなるアイテムを投射できないだろうか?
そんな事を思案するルルアに、ロロナからの鋭い叱責が飛ぶ。
普段温厚なロロナの怒声に、思わず彼女も”うっ…”と退くしかない。
ロロナは理解していた。
見た目や肉体年齢は若々しいが、彼女も長年冒険を繰り返した経験を持つ。
ルルアの安易な試みで打破できる程、生易しい存在でないのだ。
ダークゴブリンと彼の部下達は――。
養子とはいえ愛娘を怒鳴ってしまった事に、心を幾分痛めてしまうが娘を命を守る為には仕方がない。
下手な手出しは容易く看破され、報復とばかりに長弓ゴブリンの狙撃を受けてしまうだろう。
残念だが今の
傷付く灰の剣士には申し訳ないが、此処は大人しく成り行きを見守るしかない。
しかし諦観に徹する気もない。
周囲をよく観察すれば、ソラールやジークバルドは無論、ステルクや剣の乙女までもが介入する機を窺っている。
絶望するのはまだ早いと言えよう。
「ほぅ、流石にやるな。我が宿敵と見なすだけの事はある!」
警戒しながらも構えを解き、ダークゴブリンは語り掛ける。
傷付いた防具と身体――。
やはり紅い血を流し、軽鎧は損傷だらけだ。
だが得体の知れぬ不気味な笑みを浮かべている。
まるで余力を残しているかの様な振る舞いだ。
「しかし、これからが本当の地獄だ!その地獄を味わい、お前がどんなに泣き叫び命乞いしようとも、俺は一切容赦はしない。お前を八つ裂きにするまではな!」
「……」
その台詞と共にダークゴブリンは懐から一枚のスクロールを取り出した。
『――むっ!?』
『お、おいアレってっ!?』
『魔法のスクロールッ!?』
ゴブリンスレイヤーを始め、周囲は驚愕の反応を見せる。
異端とはいえ混沌最弱のゴブリンが、まさかのスクロールを取り出したのだ。
魔法が封じられ、一度封印を解けば赤子でも術を発現させる魔法のスクロール。
どの様な呪文が封じられているかは定かではない。
当然、冒険者側は警戒を強め各々が身構えた。
「なにもスクロールは、貴様ら人族だけの専売特許ではない。此方にも有ると言う事だ」
ほくそ笑みゆっくりと紐を解く。
「金鉱山での戦い。あの時は不覚を取ったが、良い教訓でもあった!」
以前の戦いでは終始優勢を誇っていたダークゴブリン。
だがゴブリンスレイヤーを筆頭とした冒険者の策で、手傷を負う羽目になった。
それ以来スクロールの特性と有用性を認識し、魔神軍へと支援を要請――。
今こうして手元に収まっていた。
「然る邪教徒が開発せし外法――”強化法陣ッ”!!」
「――!!」
遂に封は解かれ、スクロールから魔法陣が浮かび上がる。
最も距離の近い灰の剣士は一層警戒感を強め、防御態勢で備えた。
「きょうか、ほうじ、ん…!」
槍使いの相方を務める魔女には覚えがあった。
槍使いと魔女はの二人は過去、臨時で灰の剣士と組んだ事がある。
(イヤーワン編、 第38.5話B参照)
それは、邪教徒の討伐と拉致された村人達の救出が主な目的だ。
山深くにひっそりと鎮座していた古い遺跡――。
其処に住まう邪教徒は動く魔法生物――ゴーレムを駆使し彼等に挑んできた。
灰の剣士を含め、腕の立つ槍使いと魔女だ。
本来なら、ウッドゴーレムやストーンゴーレム如きに不覚を取る事は無い。
だが思いの外ゴーレムは強大な戦闘力を誇り、彼等は苦戦を強いられたのだ。
それには大きな仕掛けが存在し、邪教徒は自ら編み出した術法――”強化法陣”でゴーレムの戦闘力を増大させていたのだ。
とは言え、結局は灰の剣士の機転で討伐には成功した。
あの邪教徒自体は、そう大物染みた人物ではない。――が、彼の遺した強化法陣。
よもや今頃になって巡りに巡り、再び此処で目にしようとは何たる因果の流れか――。
――あの時の…!
時を同じくして、灰の剣士も過去の記憶を掘り返していた。
(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― 危機との遭遇 )
「――GROVO!」
封を解かれたスクロールは呪文を発動させ、ダークゴブリンに作用する。
浮上した魔法陣から迸る魔力の波は、ダークゴブリンの身体へと無遠慮に雪崩れ込んだ。
歯を剥き出し食いしばりながら、白目を剥き苦悶に喘いでいる。
呻き混じりの咆哮を上げ、ガクガクと全身を打ち振るわせていた。
同時に身体中の骨格と体組織が膨張を始め、まるで奇形児を思わせる変容を繰り返す。
先ず上半身のみが異様に膨れ上がり、且つ頭部と下半身はそのまま――。
――かと思えば、今度は下半身も釣られる様に連動し異様な膨れ上がりを見せる。
その間も目を閉じ歯を喰いしばるダークゴブリン。
同時に身体の周りには膨大な魔力が暴走し荒れ狂う。
狂わんばかりの魔力はやがて行き場を失い、周囲の冒険者や小鬼にも波及した。
それは地面を伝い振動へと変換され、戦場全体に渡り地震と強風を引き起こす。
「むぅ…何たるソウルっ!」
自前の円盾で強風を防ぎ揺れを凌ぐソラール。
「この膨れ上がり…まさに尋常ならざるッ!」
それはジークバルドも同様で、異様なソウルの膨張を察知し耐え忍ぶのがやっとである。
『『『『『ぐわあぁぁ……!』』』』』
『『『『『キャアァァ……!』』』』』
他大勢の冒険者たち。
強風に煽られ碌に目を開ける事も出来ない状態だ。
そんな半ばパニックとも言える状況にも臆せず、駆け出す冒険者が一人――。
『――今の内だ、飲め!』
ゴブリンスレイヤーだ。
負傷し消耗している灰の剣士へと駆け寄り、彼から預かったエスト瓶を手渡す。
強風の影響が幸いして、長弓小鬼の放った矢は全て逸れていた。
「――すまん!」
揺れの所為で覚束ない足元の中エスト瓶を受け取り、ふた口ほど口に含む。
激しい振動と強風。
しかし、ダークゴブリンは苦痛に苛まれているのか動く気配が無い。
今の内に攻撃できないものか、と提案するゴブリンスレイヤー。
「生半可な攻撃が通用するとは思えない、無駄だろうな」
「そうか」
却って消耗するだけだと、灰の剣士は一蹴する。
そしてゴブリンスレイヤーに続くかの様に、仲間が次々と傍へと駆け付けて来た。
「もはや一騎打ちなどと言っている場合ではない、このステルク、加勢させて貰うぞッ!」
「もう何と戦っているのかすら分からなくなってきたな!手ぇ貸すぜ、灰の!」
ステルク、重戦士が――。
「ありゃ小鬼に似たバケモンだな!」
「貴方一人に背負わせはしないわ!」
槍使い、スイーパーが――。
「剣士さん…手伝わせて!」
「偶にはアタシにも頼ってよ、灰君っ!」
銀髪武闘家、ライザが――。
――彼の知る親しき仲間が続々と集結する。
共に戦わんが為に――。
「まだまだ戦えるのでな、俺も!」
「助成させて頂こう、このジークバルドもな!」
当然ソラールやジークバルドといった猛者も含まれていた。
揃い踏みする仲間たち――。
そんな彼等の姿に一種の安堵を覚え、灰の剣士は再びダークゴブリンへと向き直る。
やがて荒れ狂っていた魔力は、嘘の様な静けさを取り戻した。
だがそれとは引き換えに異様な物体が佇む――。
「な、何だぁ、ありゃぁッ!?」
ジーノが目を見開く。
「ダーク…ゴブリン…だよな…あれ…?」
ライアスも唖然とし硬直するばかりだ。
大型種の小鬼に並ぶ身長。
それに比例するかのような巨躯。
頭部には2本の角が生え揃い。
豊な金髪は更に嵩を上げ。
闇人に似た端正な顔立ちは、小鬼特有の醜悪で凶悪な風貌へと変化。
「もう小鬼じゃないですよ
余りに変容した黒き小鬼。
その姿に冷や汗を滲ませる銀髪武闘家。
元々小鬼らしからぬ容姿ではあったダークゴブリン。
しかし更なる変貌を遂げた彼の姿は、もはや小鬼とは呼べないものだった。
例えるなら――。
―― 鬼 ――
そう。
”鬼”そのものである。
強化法陣により変身を終えたダークゴブリンは、正に鬼そのものへと変貌したのだ。
「へっへっへっ…ヘッヘッヘッへ…!気を付けろよ!?こうなってしまっては前ほど優しくは無いぞッ!?」
地の底から冷え渡る声音を響かせダークゴブリンは語り掛ける。
体躯と言い容姿と言い凶悪な姿を以て、意図せずとも冒険者たちを威嚇した。
「…なんて強大なソウル…!魔神将をも凌ぐ…嘘ではなかった……!」
外見だけではない。
真の恐ろしさは、その内面にこそある。
内に秘めるソウルを察知し、剣の乙女は小刻みに震えながらダークゴブリンに意識を向けていた。
『『『『『『……』』』』』』
冒険者たちに言葉など浮かぼう筈も無い。
例える言葉すら思い浮かばず、唯々見入るしか出来ないのだ。
だがそれは小鬼側も同様で、固唾を飲み立ち尽くすのみであった。
「有象無象の輩が集結した様だが無駄だ。戦域ごと消せば済む話――」
変身の最中を見計らい、灰の剣士へと駆け付けた仲間達。
数の上では圧倒的優位に立った筈だ。
しかしダークゴブリンは余裕の態度を崩す事はない。
しかもあろう事か”戦域ごと消し飛ばす”などと口走る始末。
「フンッ!出来るものならやってみなさいよ!ゴブリンの癖にッ!」
所詮ハッタリだ。
そう高を括るミミ。
彼女は決して自意識過剰ではない。
相手の力量と自身の実力を加味し分析した上で牽制したのである。
彼女も長く冒険者として活動し、多くの魔物を討伐してきた経緯がある。
長年の経験は確実に彼女を鍛え上げ、また多くの鑑識と観察眼を育て上げたのも事実だ。
――同時に彼女もまた震え上がっていた。無自覚ながら。
相手は一人。
此方は複数。
明らかに有利。
だと言うのに、この不安は何処から湧き上がってくる?
仲間に視線を向ければ、誰一人として余裕の表所を浮かべている者は居ない。
寧ろ皆一様に険しい顔つきで敵を見据えている。
加えてダークゴブリンは不敵な笑いすら浮かべ、此方を悠然と見下していた。
「――嘘だと思うか?」
ミミの啖呵を返すダークゴブリン。
自らの腕を振り上げ拳を握り締めた。
(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― 戦慄の時 )
『――ばッ!!』
そして拳を開くと同時に、凄まじい衝撃波が彼等を襲う。
『『『『『――ウオァアアァァァッ!!!』』』』』
衝撃の風圧は灰の剣士だけを切り離し、他を吹き飛ばす。
またもや灰の剣士は孤立し、彼以外の仲間は遥か遠方へと追いやられたのである。
「う…うう…なんだよ…竜巻でも引き起こしたのか…?」
衝撃の波に吹き飛ばされながらも、オーレルは何とか身体を引き起こす。
「あ…あたし知ってます…、気の解放ってやつですよ…!」
地面に叩き付けられ全身を強打した銀髪武闘家――。
痛みに耐えながらも身を引き起こす。
彼女の扱う武術――。
父より基礎的な手解きを受け、旅の格闘家に師事する事で更なる研鑽を高めていた。
その師より聞き及んだ『気』の概念。
人間誰もが宿す生命力そのものと言われている。
当然、学にも疎く技量も未熟な彼女には理解に至っていないのだが。
気――即ちソウルと同一視されている。
東方の文化圏では、ソウルを気と呼ばれていた。
「…闘気の解放だけでなく、あの剣士君と我々を器用に引き剥がすとは…!」
「強化法陣…いや、ダークゴブリンの潜在能力ゆえ…か…!」
ステルクとジークバルドも剣を支えに立ち上がる。
二人とも幾許かの痛痒を負っていた。
「だ、大丈夫?ライザ!?」
「うぅ…折角助けに来たと思ったのに、また…!」
ルルアがライザを抱き起す。
防具にも耐久力にも戦士職には劣る彼女達だ。
決して軽くはない傷を負い、ライザに至っては苦痛と悔し気な表情を浮かべていた。
彼女の言う通り、再び灰の剣士と切り離されてしまったのだ。
「クックック…。今のは、ほんの挨拶代わりだ。尤もこの程度、人族にでも出来るがな!」
「――み、皆…!」
ほくそ笑むダークゴブリン。
後方を振り向き仲間の身を案じる灰の剣士。
「強化法陣は本来、設置して魔法陣を描くものだ。だが技術は進歩し、携行と任意の発動が可能となった。その分、効果時間と強度は犠牲となったがな」
開発者である邪教徒自身は、何者でもない末端に過ぎない人物。
しかし彼の遺した功績は、魔神軍にとって非常に有用なものであった。
灰の剣士達に討たれた後、深みの主教の一人が遺跡に侵入し残した資料と技術を回収した。
その強化法陣は更なる研究が進められ、こうしてスクロールに封じる事も可能となった訳だ。
だが未だ試作段階の域を出ず、実験とデータ収拾の意味合いもあったのだろう。
試作品として出来上がった強化法陣のスクロールは、サリヴァーンの命でダークゴブリンへと譲渡され現在に至る。
「説明は終わりだ。制限時間は約一時間。先ずは貴様を仕留め、後は残りを纏めて屠ろう」
仁王立ちではあったが、闘志を漲らせるダークゴブリン。
「もう、コレを使うまでも無いか」
用済みとばかりに、愛用していたダークソードをも投げ捨てた。
――覚悟を決めねばな…!
再び戦闘の気配を感じ取り、灰の剣士は打ち刀を両手に持ち替える。
「――さぁ…!始めようかッ!!」
ダークゴブリンは巨体にも拘わらず軽々と跳躍し、灰の剣士に襲い掛かった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
強化法陣のスクロール
然る邪教徒の開発せし外法――。
彼が討たれた後、深みの主教が回収。
魔神軍へと持ち帰った。
後に更なる研究開発が進められ、スクロールへの付与と任意の発動効果を得る。
強化度合と制限時間という制約が課せられたが、汎用性は高まった。
異端の黒き小鬼が、初めてこれを使用。
親和性が高かったのだろうか。
小鬼と呼ぶのも憚れる、別種のナニカへと変貌した。
この歪な遺産は、更なる進化を辿るに違いない。
何かノリが、戦闘民族の活躍する某バトル漫画みたいになってしまった。
『――さぁ、始めようか!』ジャキン!(マスクはありません・笑)
如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
デハマタ。( ゚∀゚)/