ゴブリンスレイヤー ―灰の剣士―   作:カズヨシ0509

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 かなり寒いです。

作業する指先から、どんどん冷えてくる。

暖房が追いつかん・・・・・・。( ̄ー ̄)

小分けした分を投稿します。

もう少し速く投稿したかったのですが、少し手直ししてました。




第10話―貴公、装備を整え給えよ―

装備を整える為に、ゴブリンスレイヤーと共に武器工房に移動した灰。

 

工房からは、小気味良い金属音と先客が居た。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 併設された階段を下り、その入り口を潜るとそこには多くの武器防具が立て掛けられていた。

 

武具を扱う施設で、大半の冒険者は此処で装備を整える。

 

工房の奥からは、小気味良い金属を打ち付ける音が聞こえて来る。

 

灰と鎧戦士が中に入ると先客が数名居た。

 

その内の四人は灰にも見覚えがある。

 

「よぉ、アンタか」

 

 鎧戦士に軽い挨拶を交わして来た、若い戦士が一人。

 

どうやら鎧戦士と同日に冒険者登録をしたらしい。

 

彼を同期戦士と呼称しよう。

 

彼等は、灰の墓所の出口付近で出会った冒険者達だった。

 

「ん?アンタは確か、例の遺跡で出会った旅人さんかい?」

 

 同期戦士は、灰に気付いた様だ。

 

「今日付けで冒険者になった。よろしく頼む」

 

 一礼で応える灰。

 

「あの墓所で、何か目ぼしい物を見つけられたか?」

 

 灰は尋ねてみた、恐らく何も無い筈だったからだ。

 

「いや、全くの無駄足だったぜ。有るのはゴブリン共の死体に、ゾンビの死体と墓ばっかりだ」

 

 ――だろうな、あんな所に何も有る訳が無い。

 

「手ぶらも味気無かったからな、ゴブリンの装備を回収して売っぱらったよ。精々金貨三枚程の儲けだったがね」

 

 それでも収穫が欲しかったのだろう、ゴブリンの使っていた辛うじて売れそうな装備を回収して、何とか収入源にした様子だ。

 

 

 

「おいおい、物乞い根性丸出しだな。そんなんじゃ俺に追いつけねぇぜ?」

 

 近くに居た槍を装備した青年が、ふと声を掛けてきた。

 

後の辺境最強と呼ばれる、槍使いの青年である。

 

傍らには、体の凹凸が激しい肉感的な妙齢の女魔術師も居た。

 

「うるせぇ、俺達には資金が必要なんだよ!それにお前だって、俺と同じ白磁じゃねぇか!」

 

 同期戦士が反応し、他愛無い口論が繰り広げられた。

 

「止めんか!みっともない」

 

「そうですよ、他のお客さんも居るんですから!」

 

 同期戦士の一党の、鉱人の斧戦士と禿頭の僧侶が止めに入ってくる。

 

「ほら、あなたも、大人げ、ない」

 

 女魔術師も仲裁に入る。

 

 

 

そんな口論を余所に店の主が此方を睨み付けてきた。

 

強面の逞しい体格の良い老人だ。

 

この店主を見ていると、どうしてもある人物と重ねてしまう。

 

 

 

鍛冶屋アンドレイ。

 

 

 

違うといえば、彼は豪快に笑い掛けていたが、此方は強面で威圧してくる感じか。

 

「…で、用があるのはどっちだ?」

 

 武器工房の老爺が、鎧戦士と灰を交互に睨み付けた。

 

「私です、店主」

 

 灰が一歩踏み出し、装備を整えに来たのだと伝えた。

 

老爺は、無言で灰をじっくりと観察した。

 

「悪いがフードを外せ、新人」

 

 低い声で灰にフードを取るように命じた。

 

神殿ではないので、此処でなら問題は無いだろう。

 

灰は、おもむろにフードを外した。

 

 

 

「ぅわ~~お!」

 

 

 

「あ、ら、まぁ!」

 

 

 

 同期青年の一党の半森人の少女と、槍使いの青年の一党の女魔術師は、顔を赤らめ声を上げた。

 

その様子を窺い、少し面白く無さそうな槍使いの青年。

 

 

 

「細いな色男」

 

 老爺は、そう言いつつも灰の観察を止めない。

 

――一見細身だが、全ての筋肉が均等に無駄なく圧縮されておる。

 

例えるなら、隣に居る鎧戦士に近いタイプか。

 

「色男、先ずは予算を言え!金が無いと話にならん!」

 

 灰は、手持ちの金貨をカウンターに並べた。

 

「ひぃ、ふぅ、みぃ……、十二枚か。一式揃えるとなるとあまり上質の装備は買えんぞ」

 

 老爺は、金貨を数え忠告した。

 

「それで何が欲しい?何ならワシが見繕ってやってもいいが?」

 

 素人なら何から買えば、見当すら付ける事もままならない。

 

数多くの冒険者を視て来た、老爺なりの親切心であった。

 

――この男素人には見えんがな?

 

筋肉の付き具合や佇まい一つ取っても、只の一般人ではあるまい。

 

さて、どう切り出して来るか、お手並み拝見と行こうか?

 

灰とのやり取りを少しばかり愉しんでやろうと、口元を若干吊り上げた。

 

「先ずは、足回りをしっかり整えたい。丈夫で長持ちするブーツが欲しい」

 

 老爺は、「ふむ」と声を漏らす。

 

――足回りと来たか。大抵の奴は、武器か鎧を注文するのだがな。

 

自分の目的意識をはっきりと伝える新人はそう多くない。

 

大抵の新人は此方の忠告を聞かず、見た目重視の装備や扱いきれるとも思えぬ、大振りの武器を買って行く。

 

英雄譚の栄光だけに目が眩み自分も英雄候補の一員なのだと錯覚し、身の丈に合わない装備を購入していく新人が何と多い事か。

 

この男、隣の鎧戦士と共通する何かが視られるな。

 

老爺は棚の奥から、足防具を取り出しカウンターに置く。

 

硬い皮をベースに、駆動部は丈夫で長持ち、耐久性に富んだ厚手の布と柔らかい皮であつらえた代物だ。

 

「少々見栄えは悪いが、耐久性に防具の強度、重量バランスも高い水準を確保してある」

 

 灰は、その足防具に見覚えがあった。

 

 

 

――ハードレザーブーツだ。

 

 

 

火継ぎの旅をするのに、序盤はお世話になった記憶がある。

 

デザインも前の世界と同じだった。

 

「おいおい、いきなりボッタクる気か?ハードレザーは、手間が掛かって高いんだろ!」

 

 傍に居た、同期戦士がニヤついた笑みを浮かべ冷やかす。

 

「…馬鹿言うな。これはある冒険者が遺跡から持ち帰った品だ。少し古いし誰も買わんからな、在庫処分だ」

 

 老爺は、同期戦士を睨み付け反論した。

 

「値段は、金貨二枚にしてやる。買うか?」

 

 灰は馴れた手つきで素早く、ハードレザーブーツを装着し動きを試す。

 

若干サイズがゆったりしていたが、ベルトで調整が効き勝手が良かった。

 

自作の粗末なサンダルと違い、激しい動きにも難なく対応出来、頑丈に作られている。

 

灰にとって機動力は武器であり、重要な回避手段でもある。

 

だからこそ敢えて、足防具を優先したのだ。

 

このブーツ、実に良い品だ。

 

「申し分ない、買おう」

 

 灰は、購入を決めた。

 

金貨二枚を支払い、残り金貨十枚。

 

 

 

「毎度!次はどうする?」

 

 老爺が次の品物の購入を尋ねた。

 

「次は、腕防具を。丈夫な厚手の腕帯かマンシェットが欲しい」

 

 灰は腕防具を要求する。

 

なるべく動きの阻害しない、軽めの品を。

 

連続で剣を振るう灰には、ガチガチの重装備よりも軽防具が必要だった。

 

尤も前の最終決戦では、全身鎧装備であったが。

 

「……お前さん、軽さを重視するのは重要だが、防御は期待出来んぞ?」

 

 老爺は、眉を潜めた。

 

まさか、防御を完全無視する様な大馬鹿者は見えんが、何か意図があるのか?

 

「武器を連続で繰り出す事が多くてな、軽さと動きやすさを重視したい。防御は盾を使う事にする」

 

 灰は、判断基準を老爺に伝えた。

 

「ほう、承知の上か。自らの判断基準があるならそれで良い」

 

 老爺は手袋状の腕帯を取り出した。

 

指出し式の厚めの布手袋に、重要部分に薄めの皮が貼り付けられており、二の腕を厚めの布で覆う事が出来、範囲を任意に調整する事が出来る。

 

申し訳程度の防御効果しかないが、即席のぼろ布で作ったバンテージよりは、遥かにマシな防具だ。

 

「金貨一枚だ」

 

「無論買う」

 

 短いやり取りで取引が成立した。

 

残り金貨九枚。

 

 

 

厚手の腕帯を装備した灰は、体防具を要求した。

 

「やっぱ鎧は、必須だよなぁ。どんなヤツにすんだ?金属鎧か?」

 

 今度は、槍使いの青年が声を掛けて来た。

 

「鎧は、いい。動きやすい丈夫な戦闘服を頼む」

 

 灰は、鎧ですらない戦闘用の服を要求した。

 

「良いのか?本来は、鎧の下に着込むような代物だ、この服単体では大した効果は得られんぞ?」

 

 老爺は忠告しつつも、厚めで丈夫な絹や糸を用いた伸縮性にも優れ破れ難い衣服である、それを用意した。

 

「本当に大丈夫かよ?俺でも鎧は購入したぞ」

 

 槍使い也に灰を気遣ってくれている様だ。

 

「大丈夫とは言い切れないが、優れた装備は金が掛かる、先ずは一式揃える事を優先したい」

 

 灰には灰の判断基準がある、周りから理解を得るのは難しいかも知れないが。

 

厚布の戦闘服に着替えた灰は購入を決め、金貨を支払った。

 

「おめぇさんの現状は、理解しているつもりだ。丈夫で安いブツを選んでおいた」

 

「気遣い感謝する」

 

 老爺の細やかな配慮に、感謝の意を示す灰。

 

――そう思うなら生き残ってもらわんとな。

 

老爺は、金貨を受け取り次の要求を待つ。

 

厚布の戦闘服の値段は、金貨三枚。

 

残り金貨六枚。

 

 

 

「次は頭防具を……、出来ればフード付きマントとセットになっている物を頼みたい」

 

 灰は頭防具、つまり兜を要求した。

 

「…げっ!あんた兜を着けるタイプか!」

 

 若干引いているのは、同期の戦士だった。

 

そう言えば槍使いも同期戦士も兜を装備していない、単に非戦闘状態だからか。

 

「ん?君達は、何故兜を着けない?」

 

 理解出来ないといった具合で灰は尋ねた。

 

隣の鎧戦士も鉄兜を装備しているというのに。

 

「だってよ、顔が見えなくなっちゃうじゃんか」

 

「顔を売るのも冒険者の仕事だぜ?」

 

 槍使いと同期戦士は各々考えを主張する。

 

「…顔を売る必然性が見出せないのだが?」

 

 珍しく、鎧戦士が話し掛けた。

 

「バッカ、お前。顔が売れねぇと英雄や有名に成れねぇだろが?」

 

 分かんねぇのかよ!と、槍使いが鎧戦士に食って掛かる。

 

「成る程、解らん」

 

 心底どうでも良いと言う風に返す鎧戦士。

 

「グァッハッハッハッ!お前ら二人も少しはこいつ等を見習え!お前等より、よっぽど現実を理解しとるわ!」

 

 老爺が豪快に笑い飛ばしながら、カウンターの上に防具が置かれていた。

 

「そこな新人と同じヤツは残念ながら在庫切れでな、コイツにしておけ!」

 

 置かれた防具は、灰にも見覚えがあった。

 

火継ぎの世界にも在った、アイアンヘルムだ。

 

「顔全体は防御出来んがその分、視界が広く重量も軽い」

 

 これは良い。

 

灰自身もアイアンヘルムの装備経験があるため、何の違和感も無く装備する事が出来た。

 

更に裏地も考慮されている。

 

頭に受けた衝撃を可能な限り吸収する造りになっていた。

 

「それとフード付きマントだ。防水性の素材で外側を覆い、綿を多めに使い中身を詰めてある。その分少々重く、見栄えも悪いがの」

 

 因みに二つとも見栄えの悪さのせいで人気が無く、誰も買わず在庫処分したいとの事だ。

 

買ってくれるなら、安くしてくれるらしい。

 

灰は、即答で購入の意思を伝える。

 

断る方が難しい位だった。

 

「あらら折角の顔隠しちゃうんだ?勿体無い」

 

 残念そうに呟いたのは、同期戦士の一党の半森人の少女だった。

 

「容姿を売る役目は君等に任せる、私には不要だ」

 

 同期戦士も、槍使いも平均以上の容姿を誇っていたので、顔を売るのは彼等に任せるのが最適だろう。

 

灰はそう言い捨て、頭防具を装備する。

 

「何だ、分かってるじゃねぇか、アンタ!」

 

 槍使いは、上機嫌で灰の肩に手を懸ける。

 

――装備しにくいのだが……。

 

 

 

「金貨二枚だが、負けた分を差し引き、一枚で良い」

 

 金貨を一枚支払い、残り金貨は五枚。

 

 

 

「お次は盾かの?」

 

 老爺の予見どおり灰は、棚に立て掛けてある盾を吟味する。

 

――さて、どれにしたものか?

 

「閉所で戦う。小振りにしておけ」

 

 ふと鎧戦士が声を掛けた。

 

よく見れば鎧戦士の盾も、小型の盾だった。

 

確かに盾は大型になれば、その分防御効果に優れるが、取り回しが悪化し重量も増す。

 

余程の理由が無い限り鎧戦士の貴重な忠告は、受け入れるべきだろう。

 

「忠告痛み入る」

 

 短く返事し、紅の円盾を注文した。

 

丸型の木製のフレームに、薄い皮を張り補強した木製の赤塗りされた小盾である。

 

小型は取り回しが良く重量も軽めで、木製の為呪文攻撃にも、そこそこの抵抗力を発揮する。

 

「盾は、手に持つより腕に括り付けた方が良い。開いた手で松明を持つ事が出来る」

 

 更に鎧戦士が助言をくれた。

 

灰は、盾のストラップを調整して腕に括り付ける事にした。

 

――確かに動きに不自由はしないな。

 

具合を確かめ何度か小盾を振ってみた。

 

金貨を一枚支払い残り四枚。

 

 

 

「残りは武器か」

 

 老爺が灰を見やる。

 

「やっぱ、伝説の剣とか置いてねぇかなぁ?」

 

 同期戦士は、目を輝かせながら武器に視線を泳がせた。

 

「ブレんな、お前」

 

 老爺は、無表情だ。

 

「何を使う、やはり剣か?」

 

 灰は無言で頷く。

 

「出来るだけ小降りにしておけ。ロングソードは言うに及ばず、ブロードソードも不利だ」

 

 鎧戦士が剣についても言及する。

 

灰は鎧戦士の帯びている剣に視線を送り。

 

「彼と同じ長さの剣は無いか?」

 

 老爺に聞いてみた。

 

「残念だが置いとらんよ、そいつの剣は自ら数打ちを擦り上げた物じゃ」

 

 どうやら、自分で改良したらしい。

 

道理で中途半端な長さだった訳だ。

 

「ならショートソードを一振り、それから丈夫なダガーを」

 

 灰は短めの剣と頑丈なナイフを頼んだ。

 

尤も、ナイフは作業限定にするつもりだが。

 

「いいだろう、なるべく刃毀れのしにくいヤツを選んでやる。」

 

 そう言うとカウンターに、何の変哲の無いショートソードとダガーが、一振りづつ並べられた。

 

灰は武器を手に取り、何度が握り具合を確認した後、素振りを幾度か試す。

 

――良し!手に馴染む、これで良い。

 

 

 

ふと棚に掛けてある小型の曲剣シミターを見つけた。

 

灰個人としては、シミターを使いたかったが、現時点では僅かに技量が足りず購入は断念した。

 

金貨を一枚支払い残り三枚。

 

 

 

「さて、後は何が必要だろうか?」

 

 灰は身の回り確認しながら、他に揃える物は無いかを探り始めた。

 

「冒険者用の基本セットは買っておけ。」

 

 ――基本セット?

 

聞くに、薬草各種、ロープ、水筒、火起こし道具、松明、包帯にも使える布束等、冒険に必須となる小道具各種を揃えたポーチ付きのセット用品の事だ。

 

「確かに必要だな、基本セットを頼む。…それとあれも」

 

 灰は基本セットと共に棚の隅に置いてある、一つの筒状の物体を指差す。

 

 

 

それは、遠眼鏡だった。

 

即ち望遠鏡とも言い、遠くを見渡せるだけの代物だが、未知の領域に足を踏み入れる灰にとって、生死を分かつ必順品とも言えた。

 

灰は金貨三枚を支払い、全ての金を使い果たした。

 

「色男、お前さん全ての金を使い切った様だが、水薬は持っているのか?」

 

 過去に鎧戦士にも忠告した事がある老爺は、灰にも声を掛けた。

 

既に所持しているので問題ない、と言い水薬の購入は断った。

 

今まで作った即席装備の処分を老爺に頼み、身支度を素早く整えていく。

 

小道具をまともなポーチに詰め替え、剣を腰に吊るし、フード付きマントを羽織る、兜に留め具が付いていたため、フードがずり落ちないように工夫されていた。

 

――よし!準備は整った!

 

装備を一新した灰は、準備完了が済み何時でも出立できる旨を鎧戦士に伝えた。

 

「よし、行くぞ」

 

 鎧戦士は、出口に振り返り歩を進めた。

 

 

 

「おう!簡単にくたばるんじゃねぇぞ!色男」

 

 背後から老爺が声を掛けて来た。

 

彼なりに、気遣ってくれているのだろう。

 

「ゴブリン退治に飽きたら何時でも来いよ、歓迎するぜ!」

 

 同期戦士が言い。

 

「くれぐれもそいつに感化されねぇようにな!」

 

 槍使いも声を掛けてくれた。

 

 

 

――悪くないな、こういうのも。

 

 

 

灰は心に込み上げて来るものを感じながら、彼らに礼の言葉を述べ、一礼を返した。

 

そして鎧戦士に続き灰も武器屋を出た。

 

 

 

「……それでお前らは何しに此処へ来たんだ?」

 

 老爺が腕を組み仁王立ちで、工房に残った冒険者達に尋ねた。

 

「え、え~と…。冷やかし?」

 

 同期戦士が、にこやかに完成された作り笑いで、愛想笑いを浮かべた。

 

「けぇ~れ!!」

 

 老爺の怒号が工房全体に響き渡り、残りの冒険者達は一目散に退散した。

 

工房は、シンと静まり返り、工房の更に地下に存在するリズム良い金鉄音が聞こえるのみだ。

 

だが程無くその金鉄音も聞こえなくなり、カウンター奥の下り階段から一人の男が顔を出して来た。

 

「おぅおぅ、大分賑やかだったじゃねぇか。お客さんはどうしたい?店主」

 

 出て来たのは、大柄な体躯の筋骨隆々とした白髪と髭を蓄えた逞しい老人だった。

 

上半身裸で、鍛冶用の槌を肌身離さず担いでいる。

 

店主の老爺とは、対照的にいつも豪快に笑い飛ばしているが、工房から滅多に出てこないので、彼の存在を知るものは極僅かだ。

 

「おめぇか、もう鍛え終わったのか?」

 

「おぅ、寧ろ足りねぇ位だ。他に鍛えるヤツはねぇか?」

 

 白髭の老人は、老爺に催促した。

 

その言葉を聞いた老爺は眉間を押さえ。

 

「……俺の分は、残しとけ!それとお前は少し休んでろ、今度店番も覚えて貰うからな」

 

「俺ぁ、接客向きじゃねぇと思うがなぁ?」

 

 白髭の老人は、頭をボリボリと掻き槌を担いだまま、鍛冶場へと降りて行った。

 

それを見ていた、老爺は腕組みをしながら深く溜息を吐く。

 

「エライもん雇っちまった……。どこで身に着けたんだ?あんな技術」

 

 つい最近住み込み働きで雇った、素性の知れぬ鍛冶職人。

 

優秀なお陰で、此方の負担が大幅に減り、弟子の一人である丁稚の教育や経営に専念する事が出来るので、随分楽をさせて貰っているのだが。

 

――優秀過ぎんだろ?アイツ。

 

今度は、擦り上げる金属音が聞こえて来た、砥石で武器を研ぎ始めたのだろう。

 

 

 

 

 

 今日も今日とてギルドは賑わい、路行く人々は尚多い。

 

その中を二人の冒険者が歩いていたところで、どれほど目立つだろうか?

 

一人は、薄汚れた皮鎧に同じく小盾を括りつけ、中途半端な長さの剣を帯び、顔全体を覆い片方の角が折れた鉄兜を被った冒険者。

 

もう一人は、深緑のフード付きマントを被り、隠れたマントで装備の全容が窺いきれない、同じく顔がフードで隠れた冒険者。

 

 

 

――目立ち過ぎである。

 

――悪い意味で。

 

 

 

どこからどう見ても怪しい格好をした不審者二人が、白昼堂々と街の往来を闊歩している様にしか見えない。

 

待ち行く人々から、あからさまな不振の眼差しが向けられる。

 

これでよく通報されないものだ。

 

それでも極力関りたくないのだろう、人々は見て見ぬふりをしてやり過ごした。

 

 

 

 

 

街の出口を潜り二人の冒険者達は、前に進む。

 

人々を脅かす怪物を狩る為に。

 

 

 

二人の冒険者達は、足を前に運ぶ。

 

祈らぬ者共を倒す為に。

 

 

 

二人の冒険者達は、兜越しに目を光らせる。

 

悪辣極まりない小鬼共を討つ為に。

 

 

 

…そう、ゴブリン退治に向かうのだ。

 

 

 

―― ゴブリン共は、皆殺しだ!! ――

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

火の無い灰

 

 装備品

 

  頭:アイアンヘルム(改)

 

     火継ぎの世界と同じ造りの金属兜。

 

     更に防水加工済みのフード付きマントが付属になっている。      

 

     ある冒険者が古い遺跡から持ち帰った物。

 

     堅実な防御効果と重量バランスが良く、顔半分を覆う事が出来る。

 

     工房の老爺が裏地を改良し、耐衝撃性も向上している。

 

     兜に留め金を施し、戦闘中フードがずり落ちない様に工夫が成されているが、

 

     見栄えが悪く他の冒険者は買おうともしなかった。

 

 

 

  体:厚布の戦闘服

 

     厚めの布に丈夫な綿や糸、麻の繊維を丁寧に編み込んだ戦闘用の衣服。

 

     本来は鎧の下に着込む事で防御の相乗効果が期待できる。

 

     此方は、見た目を無視した実用性重視の代物で値段も安い。

 

     因みに、値段が高めの見栄え重視の戦闘服も存在する。     

 

     名誉や見た目を気にする冒険者は多いが、戦場を駆け抜ける

 

     戦士にとってはどうでもいい事だ。

 

     別名クロースアーマー。

 

 

 

  腕:厚手の腕帯

 

     丈夫で破れ難い上質の布を使い、要所を薄い皮で補強した腕防具。

 

     作業性等を考慮し、防御効果必要最低限である。

 

     だが動きを殆ど阻害せず軽いので、野伏や斥候なども好んで使用する。

 

 

 

  足:ハードレザーブーツ

 

     火継ぎの世界で造られた物と同じ足防具。     

 

     厚手の革をベースに、裏地や補強部分を改良してある。

 

     古い戦士たちの用いたものだが、堅実な防御効果を期待できる。

 

 

 

  武器:ショートソード

 

      短めの取り回しの良い剣。

 

      直剣の武器種としては軽く、必要能力値も低いため、扱いやすい。

 

      閉所での戦闘にも有効である。

 

      長物を振り回し壁に引っ掛け、命を落としたくはないものだ。

 

 

 

  盾:紅の盾

 

     標準的な円い木の盾、紅い塗装は戦士の血を表すという。

 

     実際、血を塗った訳ではない。

 

     丸型の木製の盾をベースに、薄い皮を張り強化してある。

 

     木の盾は軽くて扱いやすく、魔法カット率が高めになる。

 

 

 

  所持品:エスト瓶

 

      エストの灰瓶

 

      螺旋剣の破片

 

      遠眼鏡

 

      基本セット

 

 

 

 

 

 

 




 如何だったでしょうか?

あの人を登場させてみました。

出そうか出すまいか物凄く迷っていたのですが、思い切って出すことにしました。

彼には、裏方で活躍させたいです。



本編やイヤーワンでは槍使いと、同期戦士の交流が殆ど無かった為この話を機に導入させてみました。

キャラ崩壊しまくってるかも知れませんが、愉しんで頂ければ幸いです。

これからも頑張って執筆していきます。

デハマタ。( ゚∀゚)/

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