ゴブリンスレイヤー ―灰の剣士―   作:カズヨシ0509

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 ドーモです。
連休も終わりに差し掛かり、渋滞ラッシュが続いてます。
物凄く車も多く殆どの飲食店は、お客さんで溢れていました。

今回は、敵側の視点で少し短いです。

では投稿致しますドゾ。( ゚ ω ゚ )


第92話―狂い竜の庭園―

 

 

 

モーニングスター

 

殴打用合成棍棒であるメイスの一種で、名称の由来となった星球の柄頭を特徴としている。

メイスは古代から使用される普遍的な武器で、頭部をスパイクで強化する手法もまたよく使われる

柄頭と柄を鎖で連結し、遠心力と棘付き鉄球で殺傷力を増したのも強化法の一種であろう。

 

打撃武器は、刃物の所持を禁ずる聖職でも扱う事が許されている。

しかしこの武器は、聖職者の武器の中でも残酷なイメージが強い

その鋭いトゲの効果により

打撃属性でありながら出血効果を有す。

 

比較的重量があり、か弱い女性よりも屈強な僧兵が用いる事が多い。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 陽光刺さぬ瘴気に塗れた庭園。

栄華の面影を僅かに遺す、荒れ、朽ちし、憩いの場。

見るも悍ましい異形が其処彼処に跋扈する空間は、騙るに値せぬ程に冒涜に彩られていた。

 

   デエェェ ―― 妖王の庭 ―― ェェェエン

 

(推奨BGM ダークソウル3 ―― 妖王オスロエス )

 

ロスリック城下層に位置する、毒沼に覆われた庭園。

その庭園深くには、更なる下層に続く通路が設けられている。

最奥に存在する広い空間。

それは得体の知れぬ木の根に、半ば呑まれかけている。

其処に彼等は居た――。

 

「――剣の乙女、彼女の血とソウルの奪取に成功いたしました」

 

 恭しく頭を垂れる一人の男。

男に対峙するは、人とも竜とも判別の付かぬ異形。

齢は重ねているのだろう。

口元には豊かに蓄えた髭が、老齢さを醸し出していた。

 

「ご苦労。貴奴めの研究に一先ずの進展が見られようぞ」

 

 冷厳な光に満たされし空間に響き渡る、老いた男の声音。

なれど彼の声には何処となく威厳と気品に満ちていた。

頭を垂れる男から幾つかの資料と報告書を受け取り、一頻り目を通す。

男の方は真っ当な人の体を成している。

いや、()なのだろう。

鈍い紺色の防具を身に纏い、色彩鮮やかな金属盾と棘付き鉄球の鈍器を所持している。

また腰には、赤茶けた布造りのタリスマンを括り付けていた。

その出で立ちから察するに、聖職者なのだろう。

やや肥満気味な体形をしているが、礼節や恭しい態度には教養の高さが滲み出ていた。

しかし態度とは裏腹に、男の表情は些かに硬い。

 

「宜しいのですか?あの御仁…少々自由に泳がせ過ぎでは?」

 

 男の指す”あの御仁”――。

剣の乙女より奪った血とソウル――。

そう――。

医療教会に属する、高位の聖職者にして研究員――。

 

   ―― 教会の狩人 ――

 

件の人物に、男は懸念を表明する。

教会の狩人が並外れた才覚を以て計画に深く寄与している事は、男も認めていた。

しかし狩人自身も使われるべき存在で、断じて指導者などではないのだ。

本来の主は眼前に座す、竜擬きの似姿をした異形の人物――。

ロスリック血の営みを標榜し、悲願達成の為に計画を推し進める彼――。

実際、彼はロスリック城を納めるべき存在――。

太古に存在し、神々と共に古竜との戦に貢献したウロコ無き白竜の研究に傾倒した、異形の王――。

 

   ―― 妖王オスロエス ――

 

現在の計画も、元々が彼の発案だ。

故に、医療教会は元より教会の狩人たちも”妖王”の下で動かねばならない筈なのだ。

しかし、最近の狩人の行動は些かに自由が過ぎるのではないか?

 

「狩人の優秀さは、この私めも羨望致すところ。しかし――」

 

 男は面を上げ語尾を強める。

その表情に羨望など微塵も無く、寧ろ嫉妬や憎悪の感情が露わとなっている。

聖職者にしては、嫉妬深い人格なのだろう。

男は狩人の動きについて言葉を続けた。

 

剣の乙女の血とソウルを奪うまでは此方の計画内だ。

しかし狩人はそれだけに留まらず、次々と他の教会と関係を深めていた。

亡者と老人の国ロンドール――その指導機関であるロンドール黒教会。

更には、四方世界にて誕生した異端の宗派――死灰神の教会群。

現在はこれ等の教会と同盟関係を結び、次々と勢力拡大を図っている。

これは明確に、狩人の独断専行によるものだ。

 

「あの狩人には野心が見られます!このままでは何れ――」

 

「良いではないか」

 

「――なっ…!?」

 

 男には看過できなかった。

過ぎたる狩人の独断専行――。

まるで組織を私物化するかの如き所業――。

このまま放置すれば、何時の日か反旗を翻し敵対するのではないか?

しかし当の妖王は、アッサリと黙認するかのような言動。

呆気無い程の妖王の反応に、男は絶句する。

 

「何を焦っているのかね、ペトルス君?」

「嫉妬による…何時もの癇癪…?」

「憂慮しているなら貴公も才覚を発揮し、のし上がれば良いのではないのか?」

「此処では、その位の自由は認められているのだぞ?」

 

 そして妖王に続き、畳み掛ける様に言葉を投げ掛ける怪し気な男と女たち――。

ペトルスと呼ばれた男が謁見する以前から、彼《彼女》等は控えていた。

数える程だが、全員で10人ほど居る。

皆黒い外套を纏い、その下には動き易い戦闘装束を着込んでいた。

中には、只人だけでなく魔神に属する人物も混じっている。

しかし彼等は何ら感情を出す事なく、ペトルスの報告を記録したり、書物を読み耽っている者ばかりだ。

 

「な、何を言っておるのですか!?これは我が組織の存亡に関わる事案なのですぞ!?」

 

 言動とは裏腹に、ペトルスには動揺の色が見られる。

 

「良いのだ。思惑はどうであれ、貴奴は良く貢献し、成果を出し続けている」

 

 流石の妖王も、狩人の真意までは測りかねた。

しかし狩人が、成果を示し暗躍してきた事に間違いはない。

その甲斐あり、より完全な竜体に近付く為の足掛かりも確保しつつあった。

火の陰りし時代、ロスリックの血の営みと称した計画――。

一人の不死人――火の無い灰が”最初の火”を消し、世界が暗闇に包まれた。

そして幾許かの時が経ち、突如としてロスリックは時空を超越し四方世界へと流れ着いた。

その当時は彼等も、勝手の違う四方世界に幾許かの動揺を見せたものだ。

それ故、計画に大幅の修正を強いられる羽目になった。

だが火の陰りし時代とは違い、生命溢れる世界へと打ち上げられたのだ。

寧ろ計画の進行難度は、大きく緩和されたと言っていい。

これは大きな転換期とも言える。

命溢れる四方世界なら、躍動に満ちたソウルと血も容易に入手できる筈だ。

更に世界が変わった事による、未知なる知見に触れる機にも恵まれよう。

そこで妖王は医療教会に命じ、新たな研究と技術開拓に邁進させた。

妖王の思惑通りとはいかずとも、彼等は貢献を重ね続けている。

 

「案ずるに値せず。狩人めに翻意あろうとも、此方の計画に何ら支障は無し。しかし念の為だ、ペトルスよ…そなたは任を継続し監視と報告に専念せよ」

 

「ははぁ…!」

 

 狩人の専横を黙殺しつつも念には念を入れ、ペトルスに任務継続を命じ下がらせた。

 

「……」

 

 ペトルスが妖王の間を去り、空間は静寂に包まれる。

其処へ漆黒の外套を纏った一人の男が言葉を発した。

 

「妖王様。実は私めも、あの戦場を視察しておりました。そこで気なる点が御座います」

 

 高い立場と権限を有しているのだろう。

その男は一人だけ、装飾入りの外套と素顔を覆う仮面を身に付け、設置された釜をかき混ぜていた。

釜の中には、妖しく発光する液体と”魔力入りの結晶”で満たされている。

その様子から彼が行使しているのは、錬金術であろう事は想像に難くはない。

 

彼を『仮面の錬金術師』と呼称する事にしよう。

仮面に隠れた瞳をオスロエスに向ける仮面の錬金術師。

遠間からではあるが、彼もダークゴブリン戦を目にしていたのである。

自作の薬…『魔力増強の秘薬』の効果を確かめる為に。

ダークゴブリンが切り札として使っていた秘薬は、実は彼から授かった物なのだ。

これ自体は、オスロエスからの命を授かってはいない。

彼個人の判断によるものである。

 

「例の黒き小鬼か?そなた程の男が拘る存在だとは、思えぬが?」

 

「いえ。私めが着目しているのは、ダークゴブリンに非ず。あの男――火の無き灰に御座います」

 

「…聞こう」

 

 彼等自身、自覚しているかどうかは怪しいものだ。

しかし公的に観れば、彼等も歴とした混沌側の陣営だ。

オスロエスは、てっきりダークゴブリンに関心を寄せていたとばかり踏んでいた。

だが仮面の錬金術師は、以外にも敵側である火の無い灰――あの灰の剣士に着目していたのだ。

オスロエスに促され、彼は己の見解を述べた。

 

あれはダークゴブリン戦終盤での出来事だ。

強化方陣の恩恵により、飛躍的なパワーアップを遂げたダークゴブリン。

その圧倒的な戦闘力を以て、灰の剣士を含めた冒険者陣営を徹底的に蹂躙する。

しかし、突如として灰の剣士が復活――。

殆ど死に体だった彼に、戦う力は残されていない筈だ。

だが彼は再び立ち上がり、ダークゴブリンを終始圧倒――。

何故なら彼は、体内に宿る”残り火”を呼び起こし、不完全ながらも嘗ての力を取り戻していたからだ。

その結果ダークゴブリンは討たれ、あの戦は剣の乙女率いる冒険者側の勝利で幕を閉じた。

 

「残り火…か。しかし、そう珍しい事象でもない。そなたが気に留めているのは別の要項であろう?」

 

「流石は我等が主」

 

 数多の火の無い灰達が、求めて止まない内なる火――残り火。

英雄のみが宿すと言われている、最初の火の欠片とも伝達されている。

確かに彼等にとっては、暗闇に灯る篝火に等しい存在だ。

さりとて嘗ての時代で残り火を宿した不死人は、決して希少存在という程でもなかった。

かの時代、オスロエス自身も過去に残り火を宿した火の無い灰――即ち灰の剣士に討ち取られた過去が存在するからだ。

その当時の彼も残り火を解放しオスロエスを圧倒。

無縁墓地への侵入を許してしまう結果となった。

尤も彼自身は周回の記憶を引き継いではいない為、何度も討たれ続けたという記憶は所持していない。

このオスロエスも、最終周回(ファイナル・ループ)での彼なのだ。

では何故、仮面の錬金術師は例の男…灰の剣士に拘りを見せるのか。

彼は語る。

灰の剣士が呼び起こした残り火――それに釣られ纏わり付いた例のソウルの事を。

 

「あの男のソウル――アレは間違い無く”王のソウル”に御座います」

「――それは…真かッ!?」

 

   ―― 王のソウル ――

 

その名を口にした刹那、青白い皮膚のオスロエスは血相を変え驚愕の声を上げ、思わず玉座から立ち上がった。

 

(推奨BGM Dark Souls 3 ―― Soul of Cinder Remix - E.S. Cinder )

 

「正確に言えば、王のソウル…その一欠片に過ぎませんが、間違いありません。私めは(しか)と感知いたしました」

 

「ぬぅ……!」

 

 灰の剣士に討たれた後、思念のみの存在となったオスロエスは彼の行く末をずっと見届けていた。

やがて彼が最後の使命を果たす為、ロンドールに属する”闇の王”をも討ち破り自ら”最初の火”を消し、火の時代を完全に終わらせた事も記憶している。

その後、程無くして彼が本当の亡者と成り果て消滅した事も含めてだ。

その結果、彼に宿っていた幾多のソウルは宙に霧散し、あの無限の可能性を秘めた”王のソウル”さえも消滅に帰結した。

最初の火が熾り、灰色の世界に生命が宿り、火の時代が生命が誕生した。

嘗て人であったであろうオスロエス。

彼も例外なく、最初の火の恩恵で生まれ出でた存在なのだ。

 

「完全に消滅した筈の”王のソウル”…。未だ潰えぬ…か…!」

 

 今にして思えば、火の時代を築き上げたロードランの主神――大王グウィン。

強大な力を誇った彼でさえ、最初の火が熾った当初は何者でもない矮小な存在に過ぎなかった。

そんな矮小の彼等が”最初の火”に見出したもの――。

それが”王のソウル”だ。

王のソウルが秘めた潜在能力は、筆舌にし尽くし難い水準だった。

矮小で人以下の存在であった筈の彼等はソウルの力を以て、『神』と呼ばれるに等しい存在へと昇華したのである。

そんな彼等は時代を築くため、嘗ての世界の支配種”古竜”へと挑み見事勝利を収めた。

そして長きに渡る栄華を極めた時代を創り上げるに至る。

これは僥倖か。

妖王は、竜に似た異形の口部から咆哮に等しい奇声を噴き上げた。

 

「王のソウルッ!それさえ手元に渡れば、永劫に渡る計画など一瞬で完遂出来ようぞ!」

 

 矮小な存在でさえ一度手にすれば、神と称されるに相応しい力を納める事が出来るのだ。

今の自分が手にする事が叶えば、どれ程の存在へと進化できようか。

嘗てない程の声量で奇声を発し続けるオスロエス。

周囲の鼓膜を破砕せんばかりの声が、振動を伴い空間に響き渡った。

 

「――とは言え、現状では一欠片に過ぎんのであろう?」

 

「その通りに御座います」

 

「ならば今動き手にした処で、何の恩恵も授かる事は叶わぬ」

 

 いかに無限の可能性を秘めた王のソウルとて、一欠片ほどでは然したる意味を成す事はない。

下手に動きを見せ危険を冒してまで手にする必然性はなかった。

 

「敢えて動く必要はない。動くとなれば、貴奴のソウルの成長に誘えばよい」

 

 今や生者となり衰えたソウルしか持ち合わせていないのが、灰の剣士だ。

だが欠片ほどにせよ、王のソウルを持ちわせている事には変わりない。

このまま戦いの道へと引きずり込み、ソウルそのものの成長を促し繰り返す事で、何れは王のソウルを取り戻す事も不可能ではない。

しかし過度に成長し切ってしまえば、再び脅威の存在へと変貌する危険性も秘めている。

 

「成程、ある程度の成長へと至った処で確保に動くという事ですか」

 

「その通り。一定の水準にまで成長さえすれば、後は我等の技術でどうとでもなる」

 

 捕らえる機を見誤れば、手の付けられない存在へと変貌する恐れもあるのが灰の剣士という男だ。

しかし性急に事を急いだとて、いと小さき王のソウルでは利用価値がない。

ある程度の成長を見極め、その上で彼を捕らえるなり引き込むなり暗躍し、王のソウルを手に入れる。

適度に成長した王のソウルなら、新たに編み出した錬金術とソウル錬成を駆使する事で、悲願達成の起爆剤にもなり得る事が可能なのだ。

 

「薪の王…いえ、灰の剣士。あの男、どうやらサリヴァーンの討伐を目論んでいるようです」

 

「ほぅ、それは却って好都合。あの忌々しい為政者をぶつける事で、状況構築には事欠かぬという事か。宜しい、部隊編成は其方に一任する。見事達成してみせよ!」

 

「仰せのままにッ…!その任、有り難く拝命いたします!」

 

 灰の剣士は、魔神軍の長である嘗ての法王サリヴァーン討伐も視野に入れている。

仮面の錬金師からの報を受けたオスロエスは、部隊編成と指揮官役を彼へと任命する。

その下知を授かった仮面の錬金術師は、深く跪き謹んでそれを承った。

 

――こ奴の故国…確か『クリント王国』と称したか?中々に良く働いてくれる。

 

今思い返せば、仮面の錬金術師が参入したのは、四方世界に流れ着いてからだ。

彼の所有する知識と技術は此方側のとは一線を画し、未知なる領域にも足を踏み入れていた。

彼の働きもまた目覚ましく、特に錬金術という分野には類まれなる才能を見せ付けてくれた。

仮面の錬金術師――。

その貢献度は、教会の狩人と何ら遜色ない水準で今の地位を確立していたのである。

 

――少々野心深き男だが、こ奴の働きにも期待させて貰おう。

 

仮面の錬金術師は、既に悲願を表明していた。

何れはロスリックの一部を拝領し、嘗ての故国(クリント王国)を復興させるという野心を抱いていたのである。

しかしオスロエスにとっては些事に過ぎず、彼の野心を受け入れている。

 

――そしてこの生物、確か『フィルフィサ』と言ったか?中々に良い駒だ、何れ使わせて貰おうぞ。

 

壁際には、白色の怪物が結晶に封じ込められている。

この怪物は、こことは違う異界に存在した異形で、仮面の錬金術師が捕らえ持ち込んだ物だ。

オスロエスは、その怪物を一瞥しほくそ笑んだ。

 

王のソウル――。

世界を想像する程の力を秘めたソウルだ。

消滅したと思い込んでいたが、未だ存続している事に愉悦を覚えるオスロエス。

これほど意識が高揚し満たされたのは、何時以来であろうか。

しかしそんな彼に水差すかのように、別の部下から新たな報が届く。

 

その報とは、虜囚として捕えてある()の身柄を引き渡せというものだ。

 

「ふん!サリヴァーンめ、あの()()だけでは飽き足らず更なる贄を求めるか!」

 

 現在は魔神軍を束ねる長として君臨する、魔神皇サリヴァーン。

その魔神皇からの要求であった。

 

「如何致しましょう?下手な関係悪化を招くのは、得策ではありません」

 

 嘗ては”冷たい谷のイルシール”を納め、ロスリックとは敵対関係にあったサリヴァーンという存在。

しかし四方世界へと移り変わり、同時に事情も移り変わった。

サリヴァーンは数多の混沌勢を統括し、魔神軍なる組織を結成。

数度の交渉を通じ、緊張状態にあったロスリック勢とは一旦白紙の状態へ戻す事となった。

現在は共闘、提携という関係で事が進んでいる。

此処で無下に拒否の意を示せば、再び敵対関係に舞い戻る危険性も孕んでいた。

未だ緊張ある関係には違いないのだ。

イルシールの外征騎士をロスリック城各所に送り込んでいる事が、その最たる証拠だ。

 

「忌々しい為政者め!此方の足許を探り、この機に乗じて譲歩を迫るか!」

 

 残念だが、パワーバランスはサリヴァーン側に傾いている。

此方が強気に出れない事も視野に入れ、その上で牽制も兼ねているのだろう。

今やサリヴァーン率いる魔神軍は、四方世界でも類を見ない程の組織力と勢力を誇る。

過度に強気な態度を執るには、此方の勢力は脆弱に過ぎた。

オスロエスは暫しの思案に耽ったのち決断を下す。

 

「捕えてある別の贄を送り届けよ!今、()()を手放す訳にはいかんのでな!」

 

――幾許かの時間は稼げよう、少し事を前倒しにするか。

 

「ではその様に」

 

 オスロエスの命を受けた部下は、そのまま場から姿を消す。

そして再び辺りを見廻し、残りの部下達へ次々と任務を授けた。

 

「今後はより一層、人族との交流を図り此方側へ引き入れよ」

 

 ある者には勢力拡大へと動くように――。

 

「御するに適した異界の住人を厳選せよ」

 

 ある者には異界の接触を密とするように――。

 

「さて…其方(そなた)らにも、そろそろ働いて貰わんとな?」

 

 一通りの任を授けたオスロエスは、奥に佇む三人の人物へと視線を向けた。

 

(推奨BGM ダークソウル3 ―― 兄王子ローリアン&王子ロスリック )

 

「「「……」」」

 

 三人は無言を貫き、外套に覆われた視線は何処に向けられているのだろうか。

 

「おやおや?我が王直々の言葉に無反応とは、些か礼節に欠けるのではないのかね?それとも長きに渡る不死人生活に、亡者化が進行したのかな?」

 

 オスロエスに見せた恭しい態度を鳴りを潜め、飄々とした態度で接する仮面の錬金術師。

その奇妙な仮面と相まり、得体の知れない不気味さに一層の拍車が掛かっていた。

 

「我等の役割…、理解出来ぬ貴方様ではありますまい」

 

 三人組の一人が漸く口を開く。

東国製の曲剣、いわゆる刀と呼ばれる武器を二振り腰へと差している壮年の男だ。

 

「クックック、相も変わらず見上げた忠義よの…!しかし其方らの守るべき存在は我が手中にある。其方らこそ理解出来ぬ筈はあるまい?」

 

「「「――!」」」

 

 彼ら三人組も、紛う事なきロスリック側の不死人だ。

異形に変じたとはいえ仮にもロスリックを納めた、嘗ての妖王オスロエス。

しかし三人組は、オスロエスに忠誠を誓っている訳ではなかった。

 

「あまり私の手を煩わせぬ事だ。事と状況次第では、即、譲渡するやも知れぬでなぁ!」

 

「――ぬッ…!貴方という御仁はッ――!」

 

 挑発とも取れるオスロエスの言葉に、男は歯軋りしながら睨み付けた。

 

「まぁ良い、任務を言い渡す。心して拝領せよ」

 

 オスロエスは三人組に任務を割り振った。

それは特別なソウルの持ち主を探し出し奪取せよとの任務だった。

現在でもロスリックの外側では生者の街が築かれ、それを拠点に数々の冒険者が侵入し挑戦を試みていた。

その大半は道半ばにして斃れ亡者へと変貌していたが、稀に手練れが来訪する事もあった。

そういった人物は総じて強大なソウルの持ち主で、単なる亡者にさせるには惜しい人材でもあるのだ。

ごく最近では、この大陸を束ねる国王自らが手練れを引き連れ、ロスリックの高壁へと侵入した過去も存在する。

その集団は誰もが強大なソウルの持ち主で、放置するには忍びない人材ばかりだ。

しかし生憎な事に、彼等には”深淵の監視者”が付き従っていた。

どの様な経緯で国王に追従していたのかは定かではない。

だが監視者が居たのでは安易に手を出す訳にもいかず、その時は監視のみに留まった次第である。

 

「「「……」」」

 

 オスロエスの命に、三人はまたもや沈黙の姿勢を執る。

 

「それほど私に反骨を抱くなら、自ら動き手駒を増やそうとは思わんのかね?あの狩人の様に――」

 

「仮にも”王の黒い手”と呼ばれた狩人だろう、君達も?同じ()()を冠する割には、消極的だねぇ」

 

 オスロエスに加え、仮面の錬金術師までもが罵倒で畳み掛けた。

 

   ―― 王の黒い手 ――

 

三人組はそう呼ばれている、特殊な役割を背負った狩人だ。

忠誠を誓った主が為、外敵の排除や暗殺を担う事を使命とする。

そんなロスリック王に代々仕える筈の三人組だが、本来忠誠を誓うべき相手はオスロエスではなかった。

寧ろ彼等は、この狂人に対し敵意すら抱いている。

しかし彼等本来の主は、今やオスロエスの手の中だ。

生かすも殺すもオスロエス次第である。

 

「働き如何によっては、私の気も変わるやも知れぬ。全ては其方らの双肩にかかっているのだよ、解るかね?」

 

「……これより任務を開始します」

 

 オスロエスの挑発染みた皮肉。

王の黒い手と呼ばれた三人組は、余計な言葉は発さず直ぐさま任務へと動く。

転移の術を使い黒い手達は、その場から瞬時に姿を消した。

オスロエスの間には、妖王本人と側近達のみが残される。

 

「一応、あの三人組にも監視役の使い魔を差し向けておきましょう」

 

 仮面の錬金術師が自らの錬金術で練り上げた人造生命体(ホムンクルス)を用い、王の黒い手たちの監視に当てた。

 

「あの三人では精々、恭順の姿勢しか示せぬよ。まぁ期待などしてはおらぬがな」

 

 彼等が向かったであろう方角に視線を向けるが、オスロエス自身は彼等に然して関心など寄せてはいなかった。

 

「冒険者共の件、どうなっておる?」

 

 王の黒い手達は、ロスリック外へと移動した筈だ。

それに伴い気掛かりとなるのは、この国の冒険者たちだ。

群がるハエに等しい存在だが、無視に徹するには少々危険な存在でもある。

未だ我が庭園に到達した者は皆無だが、徐々に包囲を狭めつつあるのは、妖王とて感付いていた。

 

「巨人どもが祭儀場入り口を破壊して以来、城に挑む者達は増加の一途をたどっている模様」

 

 仮面の錬金術師は語る。

巨人の集団が祭儀場の入り口を破壊し、冷たい踊り子を連れ去るという事態が発生した。

恐らくサリヴァーンの差し金だろう。

強固に閉ざされていた主門は無残に損壊し、以来、不死街ではなくロスリック城へと挑む冒険者が現れ始めていたのである。

城に住まう異形や亡者達は、城下側の非ではない程に強大だ。

ただでさえ低い生存率は更に低下し、犠牲者の増加傾向に拍車を掛けていた。

今の処、妖王の庭深部にまで到達した冒険者は居ない。

しかし近年は、銅等級や銀等級といった熟練冒険者が参戦しつつあった。

熟練者だけあって彼等の生還率は高く、そう遠くない将来、此処に辿り着く一党も現れるであろう。

 

「ならば、此方側に引き込んでみるのも一興か」

 

 異形の顔を更に歪ませ、オスロエスは口元を吊り上げた。

何も冒険者全てが、王国へ忠誠を誓っている訳ではない。

中には歪んだ思想や欲に駆られた輩も数多く存在する。

それが人の世の常だ。

富なり力なり望む報酬を授与し、或いは彼等の思想を受け入れる。

現に魔神軍の中にも、寝返り混沌側に与した冒険者も数多く存在している。

オスロエス陣営も、それなりの戦力を有しているが勢力拡大の為に、冒険者を引き入れる手段は有効に働くかもしれないのだ。

 

――試してみるのも一興ぞ。

 

この四方世界には人のみならず様々な種族が共存し、それこそ只人とは一線を画す価値観と思想を以て生活を営んでいる。

ならば、ソコに踏み込む隙が生ずるというものだ。

 

「では諸君!我らも悲願達成の為、躍進を始めようではないか!」

 

「「「「「御意っ!」」」」」

 

 意を決した妖王は、部下である彼等に声を投げ掛け、彼等自身も目的を果たす為に各々の動きを見せる。

薄暗く怪し気な空気に満ち溢れた妖王の間。

なれど不死にも拘わらず、彼等は生者の如き躍動に溢れていた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

ソルロンドのタリスマン

 

神の奇跡をなす触媒。

ソルロンドのそれは高位の聖職者にのみ与えられ

加護により信仰によらず高い威力修正を実現する。

 

他を嫉み、また妬むという心の移譲。

神を信奉する彼らとて、所詮人に過ぎないのだ。

 

 

 

 

 

 




 オスロエス側の視点でした。
ソウルシリーズって、ゲーム開始時点では既にゴーストタウンと化してますから、人との交流が少ないので少々寂しい気がします。
頻繁に刺客が差し向けられていたので、オスロエスってあんまり人望がなかったんでしょうか?
やっぱ、白竜の研究に没頭したのがいけなかったのかな?
もう人型ですらないし…。
しかしオセロットの正体は最後まで分からず仕舞いで、未だにモヤモヤしてます。

如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
デハマタ。( ゚∀゚)/
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