ゴブリンスレイヤー ―灰の剣士―   作:カズヨシ0509

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 痛ましく信じられない事件の直後。
不安定な心情の中での執筆故、変なお話になってるかと思います。
それでも良ければ、読んで下されば幸いです。

では投稿致しますドゾ。( ゚ ω ゚ )


第100話―いざ出発、近隣の素材採取―

 

 

 

 

 

 

つるはし(マトック)

 

鉱夫が土を掘り返す道具。

本来は戦いに用いられるものではない。

 

だが大岩を砕く渾身の振り下ろしは

半端な鎧などやすやすと貫くだろう。

 

戦技は「気合」

気合により、一時的にスタミナの回復速度を上げる。

そうでなくては鉱夫は勤まらぬ。

 

マトックとは、つるはしの一種である。

一端が斧状、もう一端が鍬状で、穴掘りから切断まで幅広く利用できる。

 

品質にもよるが値段は 金貨2枚~5枚程度

 

 

 

発破用フラム

 

錬金術で生成したフラム(爆弾)の改良品。

投擲ではなく設置した後、起爆させる事で使用する。

主に固定物や施設などを破壊する為に使用され

破壊力や範囲は、通常のフラムに比べ原則上高く設定されている。

高品質の物は、金属製の扉や壁面さえ粉砕させる事が可能で、軍にも提供されている。

起爆方式も時限式や点火形式など多岐に渡り、多くの派生品を生んだ。

 

その効果の恩恵に肖り数多くの需要を生むが、扱いの杜撰な者は大抵悲惨な事故を起こす。

自己責任を棚に上げ、錬金術士に補償を求めるなど厚顔無恥も甚だしいものである。

 

地域と品質にもよるが、値段は平均して 金貨3枚~10枚

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 司祭長からの依頼。

神殿の一画に栽植された『聖黄金樹』の調査。

正確には、その木より滴る朝露を採取する事が今回の主旨だ。

だが取り掛かる時間帯は夜間からで、まだ日は天高く昇り未だ昼にすら達していない。

時間には暫くの猶予があった。

 

(推奨BGM ライザのアトリエ ―― 紅葉と鳥のうた )

 

「灰君、おはよ」

 

「ライザ、それに皆も」

 

「午後から自由になるって聞いてたけど、案外早く終わったみたいだね」

 

 廊下に差し掛かった辺りで、ライザ達が出迎えてくれた。

ライザの他にはルルア達を含め、銀髪武闘家とゴブリンスイーパーも同行していた。

同期戦士の一党も流石に全員が休養を取るらしく、銀髪武闘家は、こうして此処に同伴していた訳だ。

スイーパーに至っては、今までの一党は解散状態となった。

今までの冒険者は全員引退し、残ったのは彼女一人。

一応ギルドで依頼を確認してみたのだが、小鬼関連の依頼は僅か2件しかなかった。

1件は、言わずもながゴブリンスレイヤーが受けた。

残ったもう1件を彼女が受けようとしたのだが、受付嬢に”新人の為に残しておいて欲しい”との旨を受け、小鬼関連を断念する事にした。

そこで偶然ライザ達の誘いを受け、こうして同行していたのである。

 

「領主…おっと此処では司祭長様か。何か依頼でも請けたのか?」

 

「ああ、神樹…もとい聖黄金樹の調査に関してな」

 

 オーレルからの問いに応え、依頼内容について説明する。

仕事は夜間より行われ、早朝に至るまで生態を調査しなければならない。

――とは言え、早朝に葉や幹に発露する”朝露”を採取するという単純な内容なのだが。

 

「それって、夜通し見張ってるだけ…ですか?」

 

「そうだな」

 

 銀髪武闘家の質問に、彼は言葉短く頷く。

 

「めちゃくちゃ暇じゃん。どうしよっかなぁ?」

 

「無理して付き合う必要はない。ちょっとした作業は必要になるが、本当に待機するだけになるからな」

 

 ライザは灰の剣士に付き合うつもりでいたが、余りに地味な内容に難色を見せる。

端から見れば、朝露を採取するだけの極めて地味な作業だ。

だが聖黄金樹の調査には、ソウルの波長を感知し特徴を見極めるという極めて繊細な技能が要求されている。

この街でその役目が務まるのは、灰の剣士を含め極僅かしか存在していない。

更に彼は、ずば抜けて鋭敏な感知力を誇る。

故に、今回の依頼は地味ながらも彼にしか務まらないのだ。

 

「ライザ。何か依頼を請けたのか?」

 

「うん、そだよ。被っちゃったらどうしようかって思ったけど、聞いた感じ大丈夫みたいだね」

 

 ギルドで受注してきたらしく、ライザは依頼書を開示してくれた。

 

   ―― 錬金素材の採取 ――

依頼主は、引退間近の年老いた女錬金術師からだ。

加齢のシワ寄せで無理が祟り、遠出に支障をきたし始めていた。

それ故、若手の冒険者たちに素材採取を依頼したのである。

成功報酬 出来高制。

 

錬金術を生業とする、ライザらしい選択だ。

当然、ルルア達を始めとし、銀髪武闘家やスイーパーも参加する事になる。

 

「貴方には、重要な役割があるんだから今の内にしっかり錬金術の修業を積まないとだね――」

 

 灰の剣士が依頼を受けている間、ルルア達はギルドが用意した錬金小屋に集合していた。

其処で今後の方針について話し合っていたのだが、灰の剣士に錬金術の経験を積ませる方向性で一致していた。

素材の採取から始まり、選定、判別、レシピの発案、調合などなど――。

とにかく成さねばならない事は多岐に渡る。

 

「今回は依頼主の為に素材を採取するけど、君の修業も踏まえて別素材も集めるからその積りでね」

 

「承知した」

 

 依頼内容は当然実施するが、灰の剣士の修練も踏まえて別素材の採取も並行して行われる。

それにより、想定よりも遠出になる事が予想された。

 

「あの~他の皆からの風当たりですけど大丈夫ですか、剣士さん?」

 

 ふと訊ねる銀髪武闘家。

彼に対する周囲からの反応の変化について、気に掛けてくれていた。

 

あの子(見習い神官の少女)の貴方に対する反応も、少し硬い感じだったわ」

 

 ゴブリンスイーパーも同意する。

見習い神官の少女に関して言及していた。

スイーパーも彼女の世話になった事があり、灰の剣士が如何に慕われているかは理解している。

女の勘とでもいうのだろうか。

この神殿に訪れた際、見習い神官の表情を見た瞬間に感付いたのである。

灰の剣士に対する感情の揺らぎに――。

 

「全く問題ない…と言えば嘘にはなるが、これも自業自得だ。一々塞ぎ込んでは前に進めぬよ」

 

 今日まで少女と育んでいた親密な関係。

それが一気に褪せてしまったのだ。

やはり心の最奥では動揺と寂寥感が彼を苛んでいた。

だが今は、成すべき役割を背負っている身だ。

此処で立ち止まっては、何も果たす事など出来ようもない。

今成すべきは、ひたすら目標に邁進する事だ。

元はと言えば、原因は自身にある。

ならば、その結果も受け入れなければならないだろう。

 

「さぁ、行こうか。一応『神樹』…ではなく『聖黄金樹』へ案内しよう」

 

 灰の剣士は強引に話を切り上げ、皆を聖黄金樹へと導こうとする。

その時、廊下の窓から見覚えのある人影を視界に捕る事ができた。

 

()だわ。珍しいわね、彼が神殿に何の用かしら?」

 

 スイーパーを含め皆の視界には”ゴブリンスレイヤー”が映っていた。

どういう訳か、彼が地母神神殿に足を運んでいたのである。

だが何かをするという訳でもなく、彼は入り口付近で佇むだけだ。

そして、ある一点に顔を向け、程無くして立ち去ってしまったのである。

 

「何だったんだアイツ?」

 

「何かをする訳でもないのに」

 

 ただ訪れ、直ぐに立ち去ったゴブリンスレイヤー。

此方には気付いていない様子だった。

そんな彼の挙動に、オーレルと銀髪武闘家は怪訝な表情を見せる。

 

「「……」」

 

 複雑な表情を浮かべる灰の剣士とライザは、去り行く彼を無言で見送るのみだった。

 

……

 

(推奨BGM エルデンリング ―― アルター高原 )

 

 

灰の剣士の案内で、神殿の一画へと訪れたライザ一行。

それは静かに根を張っていた。

 

「おお!こんな所に!?」

 

 件の木、聖黄金樹。

それを見たライザが、真っ先に声を上げた。

彼女の目に映る若木。

成人男性よりも倍の背丈へと成長していた。

 

「これが剣士さんが持ち帰ったっていう、木?」

 

「その通り。当初は神樹と呼んでいたが、何時の間にか聖黄金樹と名を改めたらしいな」

 

 ルルアに応える灰の剣士。

彼は簡素にだが、ロスリックと呪腹の大樹について語った。

 

「……その冒険に、貴女も居たんだ?」

 

「そうですよ。いやぁ、あの時はホント大変でした」

 

 ロスリックにて引き起こされた小鬼禍(ゴブリンハザード)の戦い。

その冒険には、同期戦士の一党に所属する銀髪武闘家も同行しており、彼女が呪腹の大樹での戦いを語る。

あの当時は危うく命の危機に瀕したが、灰の剣士の機転と行動により今こうして命を繋いでいた。

(本編前夜編 第・63話参照)

 

「…なる程。道理で――」

 

「…?」

 

 合点が行ったのか一人頷くエーファと、疑問符を浮かべる銀髪武闘家。

 

「接点が薄い割には、妙に懐いていたみたいだったからね、この人に」

 

「――えっ…!?えっとぉ…エヘヘヘ…///」

 

 エーファが言うには、灰の剣士と銀髪武闘家は違う一党に所属し、基本的に接触する機会は限られていた筈だ。

しかし彼女は、灰の剣士に対し一定以上の感情を寄せ、今もこうして此処に居る。

最初はライザに対し、友好的な感情を抱いていたのだろうと踏んでいた。

そしてそれは概ね的を得ていたのだが、奇妙な事に灰の剣士に対しても親し気な態度を見せていたのだ。

何か特別な理由でもなければ、違う一党の、況してや格好からして野盗紛いの灰の剣士に近付く筈が無い。

初対面の頃はエーファ自身も、灰の剣士に対し一種の警戒感を抱いていた位だ。

それ程にまで彼は、異様な出で立ちをしているのだ。

エーファの指摘を受け、銀髪武闘家も心なしか頬を赤らめている。

 

「ま、まぁ何だ。旅は道連れ世は情け…と言うではないか。可能性が残されている故、私の手立てが功を成しただけだ。ゴホン…!」

 

 灰の剣士は、尤もらしい理由を述べ咳払いで取り繕う。

 

「それよりも。黄金樹って言うわりには、あまり金色って訳でもなさそうだな」

 

 若木に視線を寄せるオーレル。

聖黄金樹と大層な名前を付けられていたが、外観では然程普通の樹木と何ら遜色は無い様に思えた。

幹も樹皮も若干は黄色染みているだけで、葉もやや薄い黄色がかっている。

別視点で着眼すれば、寧ろ枯れかけているのではないか?という印象さえ抱かせた。

 

「夜間になればかなり印象が変わるらしい。ちょっと確かめてみるか」

 

 司祭長から聞いた話では、夜間では薄っすら黄金の光を帯びているのだと言う。

その話を思い出した灰の剣士は、自分の外套を聖黄金樹の一部へと被せ陽光を遮った。

彼の目論見は正しく、外套に覆われた一部分は僅かながら黄金色の光を放っている。

 

「おおホントだ。金色に光ってるね」

 

 それを目にしたルルアは驚きの表情を見せ、皆も同調し目を奪われていた。

 

「…そろそろ出発しようか。もう良い時間だしな」

 

 未だ午前中だが、既に昼近い時間帯だ。

ライザが別の依頼を引き受けた事を思い出し、灰の剣士は皆へ出発の旨を伝えた。

彼自身の受けた依頼は夜間からだが、ライザの依頼を熟すには若干遅い位だ。

 

「そだね。ちょっと急ごうか」

 

「ある程度なら目的にも目星が付いているわ」

 

「今回の頭目(リーダー)は、ライザだね!」

 

 それを聞いたライザが出発の意を皆に示す。

スイーパーの話によれば、受付嬢から目的地の情報は得ているとの事だ。

そしてルルアが、今回の頭目はライザである事を告げる。

 

「そうだな。ではクーケン島で培った冒険者としての、お手並み拝見といこうか?ライザリン=シュタウト」

 

「任せなさい!灰君こそ、しっかり付いて来なさいよ!」

 

 聞けば彼女も、故郷(クーケン島)でかなりの冒険を乗り越えてきたらしい。

そして錬金術と持ち前の行動力で、皆を先導し困難を解決してきた。

錬金術に出会う前から、ライザは島の中でも悪童として名を馳せ周囲に騒動を引き起こしていたのだと言う。

つまりライザにも頭目としての素養が備わっているという事だ。

 

「ああそれと。黒曜等級に昇進おめでとう、ライザ!」

 

「エへ♪ありがと!直ぐに追い付いちゃうかもよ?」

 

 彼女の首には、黒曜等級の認識票(プレート)が、ぶら下がっていた。

認識票が変わっていた事に気付いた彼は、遅まきながらライザに昇進祝いの言葉を述べる。

あまり笑みは浮かべない灰の剣士だ。

その彼が微かに笑みを浮かべていた。

それを目にしたライザは、気分が高揚したのだろう。

何時もの快活な笑顔ではなく、やや悪戯っぽい笑みで覗き込む様に応じた。

 

……

 

(推奨BGM ライザのアトリエ ―― ひと夏の大冒険 )

 

   ―― 西方辺境・近隣の高原 ――

 

ゴブリンスイーパーの馬車は、現在使う事が出来ない。

幾ら疲労低減効果のある魔法の蹄を装備させているとはいえ、先日の長旅で馬の負担は蓄積し休ませる必要があったからだ。

だが思いの外、目的地は近くに在り一時間足らずの徒歩で辿り着く事が出来た。

緩やかな坂を登った先の高原で、青々と茂った雑草と大小の岩場が混在する地形が、一行の目に留まる。

少々高い事もあり、眼下には辺境街全域と火継ぎの祭祀場が一望できる。

 

「お~、此処からの景色も中々に格別だねぇ!あ、絶景かな絶景かな~♪」( ゚ ∀ ゚ )

 

 東国の文化でもある”歌舞伎狂言”じみた言い回しで、視界に広がる景色に上機嫌なライザ。

額に手を添え、彼方此方に視線を這わせている。

 

――火継ぎの祭祀場、こんなにも近かったのだな。

 

ライザに釣られる様に、灰の剣士も眼下の景色を見つめていた。

突如近隣に出現したと言われる、火継ぎの祭祀場。

こうして遠方から眺めてみれば、意外な程に街からは離れていない事が分かる。

更にぼんやりとだが、灰の墓所も確認出来た。

もはやあの場所に何の用も無いのだが、改めて一望すれば彼の心に言い様の無い感情が満たされていくのだ。

 

「さて、何時までものんびりしてられないし。さぁ皆、作業始めちゃうよ!」

 

 景色を堪能したいのは山々だが、気持ちを切り替えたライザは皆を叱咤し作業開始の合図を告げる。

 

「この岩場で、石材を回収するのよね?」

 

「うん、そだよ。依頼分とアタシたちの分と、両方お願いね!」

 

 周囲の岩場で大方察しは付いていたが、スイーパーが採取する素材を改めてライザに確認する。

依頼内容の一つに”石材の採取”という項目があった。

今回の依頼主は、街に居を構える老いた女錬金術師だ。

石材を素材とした利用方法は様々だが、主に固形物の生成や金属成分の固着を促す為に使用される事が多いと言う。

 

「私は専用のマトック(つるはしの一種)を持ってきたけど、皆はどうやって採掘するの?」

 

 岩場での採取なら、採掘用の道具は必須となる。

スイーパーは、削岩用のマトックを所持していたが、他のメンバーを見る限り採掘に適した道具を準備しているようには見えなかった。

 

「あたしなら大丈夫ですよ、ホラ!」

 

 銀髪武闘家は手甲を装備しており、それで殴れば岩石を削る事など造作もない。

ガッツポーズを浮かべ、得意気な表情で拳を突き出した。

 

「あたしも斧あるから!」

 

 ライザも得意気に自前の斧を披露した。

見た目としては何の変哲もない唯の斧だが、彼女は武器工房で中古の斧を買い取り、錬金術で修復と補強を施す事で再び新品同様に生まれ変わっていたのである。

 

「僕なら問題ない」

 

 オーレルは自身の刀で事足りると語る。

彼の卓越した剣技と特別製の刀が組み合わされば、通常の岩石など容易に切断する事が出来るからだ。

 

「私は、発破用のコレを持ってきたから大丈夫だよ!」

「ルルアちゃんのお手伝いをするから、私の事は気にしないで」

 

 ルルアも錬金術で拵えた、採掘に適した爆弾(発破用フラム)を幾つか用意していた。

エーファは、ルルアの補佐をするという事で、気にする必要は無いとライザに告げる。

 

「こういう時便利ね、錬金術って。最後は、貴方だけど……?」

 

 ライザとルルアの錬金術が活かされた結果と言えるだろう。

必要に応じて適した道具を造り出せるという強みが遺憾なく発揮され、スイーパーは舌を巻いた。

だが最後に残った灰の剣士。

相変わらず外套を羽織っていたが、何時になく軽装の状態だ。

ダークゴブリン戦を経て、主要な武器防具は軒並み修繕に出してしまった。

いま所持している武器も、精々ショートソードを帯刀しているに過ぎない。

 

「やりようは幾らでもある。早く始めよう」

 

 皆が灰の剣士の方へと向くが、彼は何処吹く風と言わんばかりに作業開始を促した。

 

「…もし困ったら声かけてね。道具貸してあげるから」

 

 今迄苦難を乗り換えた彼の事だ、何かしら対策法があるのだろう。

一応声だけをかけ、ライザ達は作業を開始した。

 

……

 

「せいッ、ハァッ、トリャアッ!!」

 

 威勢の良い掛け声で、拳打と蹴打を繰り出すのは銀髪武闘家。

金属製の武具を纏った打撃は、硬度と速度を伴い岩石を易々と打ち砕く。

彼女の足元には、大小様々な岩石が転がっていた。

 

「…少し大きいな。もう少し砕いた方が良いか?」

 

 持ち運びに適さない大きめの岩石が、灰の剣士の下に転がり込んで来た。

 

「あ、ごめんなさい剣士さん。もうちょっと砕きましょうか?」

 

「ん、気にせず作業を続けてくれ。私がやる」

 

「……そんな素手で大丈夫ですか?」

 

「そうだな。まぁ、見てい給え」

 

 彼女とは違い、灰の剣士の拳はバンテージが巻かれているのみだ。

裸券に近い状態で岩石を砕こうというのだ。

余程の鍛錬と研鑽を重ねた武闘家なら、まだ溜飲も下がろうというもの。

しかし彼は剣士であり、あくまで剣術の行使を生業としていた筈だ。

岩の強度に耐え切れず、彼の拳の方が割れてしまうのではないか?

そんな心配をする銀髪武闘家を余所に、彼は掌を岩石へと宛がう。

 

「――むッ!!」

 

 そして一瞬の気合と共に力を加えた瞬間、岩石は粉々へと砕き散った。

只人の胴体部ほどの大きさを誇っていた岩石が、瞬時に砂粒ほどへと変容したのである。

 

「…す、凄いです!どうやったんですか、剣士さん!?」

 

 当然、銀髪武闘家は興奮気味に彼へと迫った。

 

「何も強い衝撃を打ち付けるだけが力ではない。こういう使い方もあるという事だ」

 

 彼は簡潔に説明したものの、学に疎い彼女には到底理解が及ぶ筈も無い。

灰の剣士が行ったのは、筋繊維を脱力させた状態から一気に力を加速するという方法だった。

更に、打撃による”点”ではなく掌による”面”を用い、瞬間的に岩石に対し圧力を加えたのである。

その結果、岩石は粉々に砕き散り砂粒へと変じたのであった。

 

「う~、何か難しいです。昔お師匠様の言っていた、発勁…つまり()の力…てやつでしょうか?」

 

「今のは、ソウル(この場合は気)を発してはおらぬ。単純に脱力からの力みを応用したまでだ」

 

 打撃が接触した瞬間、練り上げた体内のソウル()を一気に解放し叩き込むという技法が存在する。

銀髪武闘家の師は、その技術に優れ、当然彼女にも理論を説いていたのだが、銀髪武闘家は未だ修得の域には達していなかった。

だが灰の剣士が行使したのは、単純な脱力状態からの”力み”でありソウル自体は行使していない。

 

「情けない話だが、当の私も余り網羅しているとは言い難い。まぁ、普段から力み過ぎるな…とだけ言っておこう」

 

 力の使い方は、正に千差万別。

故にあらゆる流派が存在し、世界各地で様々な闘技が生まれては消え去っていくのである。

 

「あ、それなら分かります。お父さんもお師匠様も言ってました。いつも力み過ぎると威力が出ないって――」

「今は、それさえ覚えておけばいい。修練を続けていれば、何れ新たな発見があろうさ」

 

 普段、銀髪武闘家との交流は然程多くはない。

それ故の反動か、今日は何時もにも増して会話が弾み二人は笑みを浮かべていた。

 

「…君が凄いのは、よく分かったんだけどさ。こんなに細かく砕かれたら、持ち帰れないの!」

 

 話の弾む二人の間に、突如としてライザが割って入って来た。

若干眉を顰めた不機嫌な表情を浮かべている様に見えたのは、彼の気の所為だろうか?

ライザの指摘通り、灰の剣士が砕いた岩石は粉々で殆ど”粉”に近い状態だ。

今回は大量に素材を持ち帰るためギルドから荷車を借りて来たのだが、砂粒状態では袋に詰める必要がある。

単純に持ち帰るだけならそれで片付くのだが、岩石には様々な鉱物も含有している事がギルドの事前情報で明らかとなっていた。

含まれた鉱物の種類によっては、錬金素材としての役割に大きな違いが生じる。

当然、完成する道具にも効果の善し悪しが現れ、安定性に不都合が発生してしまう状況が発生する。

つまり、余りに細かく砕いてしまえば、それだけ素材の選定が困難となり調合にも余計な手間ばかりが掛かってしまう。

その理屈を説くライザの眉は些か吊り上がっており、灰の剣士は怒られる形となった。

 

「…申し訳ない。次から気を付ける」

 

「ハァ…、意外と君ってヌけてるよね、そういう所は。君は破砕作業禁止!この子の素材拾いに従事なさい、いいわね!?」

 

「し、承知!」

 

 ライザからは、銀髪武闘家の補助を命じられた灰の剣士。

 

「ご、ゴメンなさい剣士さん。次は、もっと上手く砕きますね」

 

「ん、まぁ、それほど気にする事はない。それよりも作業を再開しようか」

 

 もう少し手頃な大きさになる様、配慮しながら破砕するべきだった。

申し訳なさ気に此方を窺う銀髪武闘家だったが、彼は”気にするな”と流し、二人は作業を再開する事にした。

その後は、特に何事もなく順調に作業が進行してゆく。

途中ルルアは発破フラムを切らした為、『ナナシ草』や『ギンイロヅタ』を始めとした各種野草の採取に移行していた。

 

……

 

「えっと量的にはこんなものですかね?」

 

 銀髪武闘家の周囲には、砕け散った岩場が散在していた。

彼女の近場に在った岩場は粗方破砕され、其処彼処に砕けた岩石の欠片が転がっている。

 

「ああ規定値(ノルマ)は達成した筈だ。後は…すまんが回収を手伝ってくれないか?」

 

 大雑把に確認出来ただけでも、相当数の岩石が転がっている。

流石に一人では回収が追い付かず、灰の剣士は助力を求めた。

 

「あ、はい。今手伝いますね」

 

 彼の要請に応じ、彼女は直ぐに四つん這いの体制で岩石の回収作業へ移った。

彼の顔に対し、臀部を向ける体勢で――。

 

「大方回収出来たな。――おっと、あと一つ…!」

 

「えっと、もう良いかな?――あ、ここにも一つ…!」

 

 あと一つ残った欠片を取ろうと灰の剣士は、その体勢のまま前へ――。

同時に銀髪武闘家も視界に映った小粒の石を回収しようと、そのままの体勢で後ろへずり下がる。

 

そして小さな事件は起こった。

 

「――おぶっ!?」

「――んや?」

 

 ふと顔を挙げた灰の剣士。

それと同時に、彼の視界は暗闇に覆われ顔は何かに埋もれ、呼吸が一旦静止してしまう。

対する銀髪武闘家も、臀部に奇妙な違和感を覚え作業の手を止めてしまった。

 

(推奨BGM ライザのアトリエ ―― へじへじものへ )

 

「……」( ̄□ ̄;)

「……?」( ゚ ω ゚ )

 

 二人は暫し無言のまま制止する。

 

「おや?何ですかね、コレ?お尻に変な感触が…?」

 

 何やら奇妙な違和感に、銀髪武闘家は腰を小刻みに揺らし始めた。

 

「……お、おい、止し…たまえ…!うご…かすんじゃ…な――ふゴッ!?」

 

 対する灰の剣士は、途切れがちな言葉で後ろへ逃れようとする。

だが、銀髪武闘家が奇妙な感触を確かめようと更に腰を動かし押し付けて来た。

つまり彼女の臀部に、彼の顔が埋まった体勢となっていたのだ。

状況を直ぐに察した灰の剣士は直ぐに逃れようとするも、銀髪武闘家の方は腰をグイグイと押し付けるものだから、彼の顔は尚の事埋まってしまうのだ。

 

「///んふぅ…何ですか…コレ?あぅ❤…ふぅ❤…剣士…さぁん…?」

 

 違和感の正体を確かめようと、ここで漸く後ろへと振り向いた銀髪武闘家。

そんな彼女でも視界に映れば、流石に状況を理解する。

 

「……ご…御免…なさい…剣士さ…ん…ンうッ❤」

 

 現状を認識した彼女は謝りながらも無意識に腰を揺らす。

そして奇妙な感覚で腰をブルッと一際大きく揺らし、秘部と下腹部に電流に似た刺激が奔った。

 

「分かったから、その…離れてくれ…!」

 

 焦りにも似た灰の剣士の訴えで、彼女は漸く彼から離れる形となった。

 

「……」

「……」

 

 両者は無言で互いを見つめ合う。

こういう時どう動けばいいのか、灰の剣士でさえ理解が及ばなかった。

二人とも他意はなく純粋に作業に集中していた為、尚更次の行動がとれないでいた。

 

「あぁ…うん…その、すまなかっ――」

「――申し訳ありません!剣士さんに、とんだ恥をッ!」

 

 経緯はどうであれ謝罪すべきだろう。

先ず灰の剣士が謝罪の意を示そうとしたのだが、言葉を遮った銀髪武闘家が深く頭を下げ謝ってきた。

どういう訳か自分が悪いと感じていた様で、目尻に若干の涙を浮かべ彼女は何度も深く頭を下げる。

 

「これでもアタシ、街に居る間は、ちゃんとお風呂に入って身体だって綺麗に洗ってるんです!」

「――分かった。別に怒ってはおらぬ。今後、お互い気を付ければいいだけだ」

 

 何やら取り乱し始めた銀髪武闘家。

自身の生活習慣まで語り出したが、灰の剣士は極力話を切り上げようとする。

幸い周囲には、二人以外の姿は見られない。

他のメンバーは、少し離れた場所で作業していた。

しかし、この様な場面を他の誰かに見られようものなら、お互いに弁明の余地もなく気まずい立場へと追いやられるだろう。

 

「そ、そうですか?」

「もうこの話は無しで、他言無用だ。それでいいか?」

「は、はい。剣士さんが許してくれるなら、アタシはそれで…」

 

「…何か言いたいのなら今の内だ。言ってくれ」

 

 まだ納得に至っていないらしく、彼女は何かを言う素振りを見せている。

それも致し方なし。

彼女も年頃の娘で、心はともかく身体つきは立派な大人の女性だ。

不可抗力とはいえ、局部に近い部位を異性の顔に押し付けてしまったのだ。

好意を抱いている異性になら兎も角、あまり交流の無い自分に羞恥を晒していしまった。

下手をすれば、彼女の心を深く抉り取ってしまったかも知れないのだ。

周囲に気付かれる前に、なるべく話を付ければそれに越した事はない。

あらゆる罵詈雑言を受ける覚悟で、灰の剣士は彼女の言葉を待つ事にした。

何かと躊躇いがちだが、意を決したのか彼女も口を開く。

 

「あのぉ、臭くなかったですよね?アタシのお尻…?」

「……。ん、ああ、別に」

(実際は顔面と臀部が衝突した拍子に、タイミング良く(悪く?)思いっ切り息を吸い込んでしまった。その際、かなりの異臭が彼の鼻を突いた。彼女の汗と体臭の融合した独特の匂いが、鼻腔を経由し脳へと響き渡っていた)

 

 突然何を言い出すのか?

こう反論してやりたかったが、取り敢えず彼女の話に合わせ相槌を打つ事にした。

誰かが此方に近付いているのだ。

ソウルの波長で、此方に来るのはゴブリンスイーパーである事が分かる。

とにかく早く話を切り上げたかった。

 

「良かったぁ…!剣士さんに軽蔑されたらどうしようかと思っちゃいました。昨日だって、お尻の穴まで丁寧に洗ったか…――」

「――言わなくていい!軽蔑なぞせぬ故、この話はここまで!」

「は、はぁい」

 

 際どい隠語をも平気で口に出す銀髪武闘家。

内容の過激さに、彼は強制的に話を切り上げた。

程無くして此方に到着するゴブリンスイーパー。

 

「どうしたの、何か揉め事?」

 

 二人のやり取りを見てはいたのだろう。

”何かあったのか?”と彼女は訪ねて来る。

 

「…若しかして、見ていたのか?」

 

「ええ、見ていたわ」

 

「「……」」

 

 どうやらあの内容は見られていたらしい。

もはや生半可な言い訳は通用しない。

非難も覚悟で、彼は次の言葉を待つ。

 

「二人共、張り切り過ぎよ。一生懸命になるのもいいけど、適度に息を整えないと…。だから転んだりするのよ」

 

「…?そ、そうか?そう…だな…ハハハ…」

 

 彼の思惑とは違う言葉が返ってきた。

あの時、灰の剣士も銀髪武闘家も這う姿勢で回収作業に従事していた為、多くの岩場が二人の全容を覆い隠していた。

そのお陰で、スイーパーの視点では、二人とも転倒してしまった様に見えていたのである。

 

「特に貴方は、汗びっしょり…顔も紅いわ。さ、これ飲んで❤」

 

「あ、ああ。すまないな///」

 

「ありがとう、でしょ?こういう時は、フフ♪」

 

 いつもの事だが灰の剣士は、外套で顔が覆われ下半分だけが露出している。

どういう表情なのかは判別でき難いがスイーパーからの視点では、彼の顔面は多量の汗が滴り落ち紅潮していた。

不必要に集中し過ぎたのだろうと憶測を立て、スイーパーは飲み物の入った水筒を彼に手渡す。

可能な限り動揺を抑え平静を取り繕った彼は、彼女から水筒を受け取り喉をを潤した。

 

――頼む!そんな純粋な笑みを私に向けないでくれ…!

 

 因みにスイーパーは兜を外した状態だ。

本心から来る微笑みを彼に向ける彼女は、純粋に彼を労ってくれていた。

その事に彼は言い様の無い罪悪感に苛まれ、残り半分となった中身の水筒を銀髪武闘家に手渡した。

 

「作業は一通り片付いたみたいだから、ライザがお昼にしようって」

 

「分かった。作業は、ここまでにしよう」

 

「賛成です。アタシお腹が空きました!」

 

 スイーパーは、二人に昼食を報せに来ていた。

彼等が岩場の採掘に勤しんでいる間、ライザ達は大方の素材を集め終え目標を達成していたのである。

クーケン島での素材集めのノウハウが、実を結んだという事だ。

これ以上、不必要に採取する理由はない。

昼に差し掛かった事もあり、頃合いと見たライザは作業中断と昼食の旨を告げたのであった。

 

「じゃ、行きましょうか」

 

 スイーパーが二人を引き連れライザの待つ場所へと向かう。

そして皆が揃った時点で、昼食を摂る事となった。

この日の為に、エーファが弁当を用意してくれていた。

編み込まれたバケットには、具沢山のサンドイッチが詰まっている。

 

(推奨BGM ライザのアトリエ ―― 採取?バカンス? )

 

「さぁ皆、一杯あるから食べて!」

 

「うわぁ、おいしそう!」

 

「いただきまぁす!」

 

 カツやベーコンを始め様々な具を挟んだボリュームたっぷりのサンドイッチに、ルルアやライザは上機嫌だ。

 

「エーファさん、凄いです!すっごく美味しい!」

 

「私もここまで作れたら、毎日自分で調理するんだけど」

 

 エーファのサンドイッチを口一杯に頬張る銀髪武闘家とゴブリンスイーパー。

 

「まるでピクニックだな」

 

「好い風だ、偶にはこういう日も悪くない」

 

 砕けた表情を浮かべるオーレルに、微風に身を委ねる灰の剣士。

見晴らしの良い絶景が眼下に広がり、彼等の程よく汗ばんだ身体を微風が涼めてくれた。

胃を満たし談笑に明け暮れ、一行は平和な時間を満喫する。

 

「――ぅわッ、何!?この子ブタちゃん!?」

「――あ、ダメっ!それはルルアちゃんの分!」

 

 そんな団らんの最中、奇妙な客が舞い込んで来た。

奇妙な客が突如乱入し、バケットのサンドイッチを食べ始めたのである。

驚くルルアとエーファの視界には、愛らしい子ブタの姿が映っていた。

 

「何だ何だ!?子豚…こんな所にッ!?」

 

 何処から迷い込んで来たのだろう?

予期せぬ子ブタの乱入に、オーレルは辺りを見回した。

 

「この子ブタ…牧場のだ」

 

「え?灰君、知ってるの?」

 

 灰の剣士は、目下サンドイッチに夢中の子ブタに見覚えがあり、牧場で飼育されている個体だと語る。

ライザの質問に応じ彼は、ゴブリンスレイヤーが世話になっている牧場について説明する。

 

「脚に布が巻いてあるだろう?それが証だ」

 

 彼の指摘に従い皆は子ブタの脚に視線を向ける。

彼の言う通り、子豚の脚には赤い布が巻かれていた。

これは万が一逸れたり逃走した時の為、直ぐに見分けを付ける為の措置でもあった。

 

「確か牧場って、アッチの方角でしたよね?」

 

「それに何だか変よ?その方角…緊急通報用の狼煙が上がっているわ!」

 

 銀髪武闘家とスイーパーが指し示した方角には、赤い煙が立ち上っている。

その赤い煙は、巡回兵に緊急事態を通報する為に色付けされた狼煙でもあった。

そして狼煙の方角は、牧場と一致していた。

 

「何かあったな、この子ブタと関係あるやも知れぬ」

 

「じゃあ決まりだね。直ぐに牧場へ急行よ!あ、でも、男共は荷車お願いね♪」

 

 腹八分といった具合に胃は満たされた。

灰の剣士の懸念に呼応するように、ライザは昼食を中断し出発を指示する。

だがそこへ、更なる怪しい集団が介入して来た。

 

(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― 危機との遭遇 )

 

『おいおいおい、ツイてるねぇ!』

『豚肉の晩飯に加え、上玉揃いのメスまで居やがる!』

『今夜は宴だぜぇ!』

『俺、黒髪の娘が好いな!』

『んじゃ俺は、鎧着た嬢ちゃんな!』

『先に男、殺っちまおうぜ!?』

 

 下卑た笑みを浮かべる六人の男たち。

エーファやスイーパーに対し、あからさまな好色の視線を向けていた。

もはや語るまでもない。

素人でも判別がつく粗暴な出で立ちの集団。

 

「賊か。どこの国にでも居るな…」

 

 呆れの色を隠そうともせず、オーレルは溜め息混じりに呟く。

オーレルの言う通り、彼等は山賊の一味だ。

どうやら子豚を追ってきたらしいが、ここでライザ率いる一行と遭遇した事で思わぬ獲物と判断したようだ。

 

「何、オジサンたち!?あたし達忙しいの!邪魔しないでよ!」

 

「こういう連中に話は通用しない。構えた方が良い」

 

 既に山賊達は、女性陣に狙いを定めている。

故郷でも男に対し警戒心皆無なライザでも、邪悪な山賊相手には嫌悪感を抱き威嚇する。

だが、邪欲と悪意の塊のような彼等だ。

ライザの様な少女が吠えた処で、彼等にとっては嗜虐心を煽るだけで却って逆効果だ。

灰の剣士の言う通り、臨戦態勢を執るべきだろう。

 

「おいおい、()()()が一人居るぜぇ!?」

「獲物の独り占めは良くねぇわな!」

「俺等が流儀ってもんを教えてやんよ!」

 

「…僕らがやる!女は後方支援だ!」

 

 灰の剣士も野党紛いの格好をしている為、山賊は彼を同業者と誤認した様だ。

山賊は既に武器を抜き、襲い掛かろうと迫る。

オーレルと灰の剣士が率先して前に出、女性陣をやや退がらせた。

 

「――おらぁ!やっちまえッ!」

 

 数名の山賊が一斉に飛び掛かり、偶発的な戦闘が繰り広げられた。

 

……

 

(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― 鼓動 )

 

 

威勢は良かったものの、それだけだ。

今彼等の眼前には、後ろ手に縛り上げられた山賊達が不様な醜態を晒している。

 

「コイツ等、口だけか」

 

 刀を鞘に納め、オーレルは軽く息を吐く。

数分としない内に山賊は無力化され、こうして拘束されているのだ。

腕に自信があったのか、女に目が眩み本来の力を発揮出来なかったのかは、定かではない。

他国出身とはいえオーレル達は、指折りの実力者である事には違いない。

当然一介の山賊ごときが適う訳がなかった。

 

「切り伏せる事は容易いが……」

 

 鞘ごと抜いたショートソードに視線を落とす灰の剣士。

心無い邪悪な山賊ならば、切る事に何ら迷いはない。

だが敢えて彼は、鞘ごと剣を抜き山賊を叩き伏せていた。

構えを解いた彼は、ライザ達を盗み見る。

彼女らも不快な表情を浮かべていたが、切るという事は”殺す”という事だ。

そして心無い山賊とはいえ、彼等も歴とした生者で人間である。

つまりライザ達の前で、残酷な人殺しを披露するいう事に他ならない。

我ながら生温い事は百も承知だが、純粋な瞳を持つライザやルルア達の前では、その気になれなかった。

オーレルも同じ考えに至っていたのだろうか?

彼も刀を抜きはしたが、全て峰打ちで事に及んでいた。

その結果、山賊達はお縄を頂戴した次第である。

 

……

 

―― 貴公の剣は快楽を恐れている ――

―― 生者を斬りたくて仕方がない ――

―― だが理性では、それを否定している ――

 

あの時の男――そう、医療教会に属する得体の知れない敵。

教会の狩人の言葉が、彼の脳内に反響する。

ダークゴブリン軍との戦中、本陣へと奇襲してきた医療教会。

その時の彼との会話が、今も心に根付いていた。

(本編前夜編 第・82話参照)

 

――そんな筈あるものか。そんな筈…!

 

小さく被りを振り、あの言葉に抗い否定しようとする。

決してあってはならない。

快楽殺人に愉悦を覚え、況してやそれに呑まれ溺れてしまう事など――。

 

―― 殺戮トは…ゆエつ…ナり ――

 

一瞬…、ほんの一瞬だが、かの時代の記憶が脳を奔った。

二度と思い出したくもない、忌々しく憎悪に彩られし彼の記憶。

たった一度の過ちで『最初の火』を簒奪し、漆黒の篝火と黒き太陽を生み出し、死と破壊に満ち満ちた悍ましい時代を迎えた――。

 

   ―― ヒト(ロンドール)の時代を ――

 

過去を消す事は叶わない。

どれ程に手を尽くそうとも、過ぎ去った”(とき)”は二度と帰って来ないものだ。

しかし忘却する訳にはいかない。

自身にとって忌々しく憎むべき過ちであるならば、尚の事目を背けてはならない。

己が中に巣くう殺戮の破壊衝動――。

是が非でも屈してはならないのだ。

 

「ふぅ…」

 

 一旦呼吸を整えた彼は、鞘ごと抜いた剣を腰に終い込む。

 

それにしても意外なのは、銀髪武闘家だ。

彼女は何故か真面な戦闘行為を行わず、精々接近した山賊を突き飛ばす行動に終始していた。

それは武術の体すら成しておらず、素人の女の子が男を突き飛ばす行為そのものと言える。

加えて彼女の表情は暗く、それが彼の疑念に拍車をかけていた。

しかし今は彼女を気に掛けている場合ではない。

 

「ねぇ、この人達ってどうすればいいの?悪人よね?」

 

「我々も狼煙を上げた方が良い。幸い此処は衛兵たちの巡回圏内だ」

 

 今までこういう悪人とは、ほぼ縁が無かったライザ。

懲らしめたは良いが、事後処理の仕方など分かろう筈も無く、彼女は灰の剣士へと対処法を聞き出す。

彼の提案で、此方も狼煙で衛兵に通報する方策を推奨された。

街からはやや離れていたが、この地は衛兵の巡回圏内に入り狼煙を見れば直ぐにでも駆け付けてくれる筈だ。

 

「緊急事態用の、赤い狼煙を上げてくれ」

 

「おっけ~い!」

 

 煙幕用可燃物に赤色の顔料を混ぜた物を燃やす事で、赤い狼煙を上げる事が可能だ。

自然状況下で赤は特に目立ち、危険度を現す情報伝達手段としては最適でもあった。

ライザはすぐさま、ポーチから可燃物を出し火を点けた。

 

「おい!冗談だろ!?」

「考え直せ!俺達と手を組もうぜ!」

「なぁ、お前、同業者のよしみで見逃してくれよぉ!」

「ちくしょう!折角ゴブリンが減って、仕事がやり易くなったと思ったのによぉッ!」

 

 狼煙を上げた途端に、山賊達が喚き散らし始めた。

殆ど命乞いや見逃せといった類ばかりだが、当然そんな要求を聞き入れる気は微塵もない。

山賊の振る舞いからして信用する要素など皆無だ。

お人好し度では1、2位を争うルルアでさえ、彼らの訴えにそっぽを向く位だ。

かける情けなど不要というもの。

 

「ついでにメッセージでも添えておくか」

 

 衛兵が見れば直ぐに判別がつく位に、彼等は典型的な山賊と言った風体なのだが、灰の剣士は念の為メッセージを添えておく事にした。

山賊の一人が使っていた『木板の盾』に、『白いサインろう石』でメッセージを記す。

 

   ―― おそらく山賊…だから、ヤッちまえ、の時間だ ――

 

「…では行くか」

 

 必要なメッセージを書き記し、一行は子豚を引き連れ牧場へ向かう事にした。

去り行く彼等の背に、縛られた山賊達の罵詈雑言が飛び交うが応じる必要はなく無視を決め込んだ。

 

 

 

……

 

 

 

   ―― 西方辺境の牧場 ――

 

(推奨BGM ロロナのアトリエ ―― 困ったときは相談してね )

 

一方、件の牧場でも似たような状況に見舞われていた。

街道付近には、4人の山賊が後ろ手に縛られ無力化されている。

彼等の他に、牧場主と牛飼い娘、そして見知らぬ女性が佇んでいた。

 

「身内を助けて頂き、本当に有難う御座います。さぁ、お前も礼を言いなさい」

 

「あ、あの、守ってくれてホントに有難う御座いました!」

 

 牧場主と牛飼い娘は深く頭を下げ、見知らぬ旅の女に感謝の意を述べる。

 

「いいのよ、気にしないで。()()()()()良かったわ」

 

 上質の旅装束に身を包み腰には細身の片手剣を吊り下げた女性は、牛飼い娘を気遣った。

普段通り仕事に従事していた牛飼い娘だが、突如山賊に身柄を拘束され茂みの奥へと連れ去れてしまったのだ。

4人がかりの山賊が、彼女の手足を拘束し大声を出さぬよう布で猿轡(さるつぐわ)を嵌めた。

あまりの手際に彼女も思考が追い付かず、気が付けば衣服を剥ぎ取られ全裸にされていた。

そして、豊かな乳房や局部を嫌と言う程まさぐられ純潔をも奪われる寸前、見知らぬ旅の女に救われたのである。

旅の女は相当な実力者で、瞬く間に山賊どもを捻じ伏せた。

紙一重の所で、牛飼い娘の貞操は守られたのだ。

相当、恐い思いをしたのだろう。

今は着替えているが、牛飼い娘は今も涙目で泣き腫らした跡が窺えた。

 

「それにしても随分物騒な地域ですね。普段から()()なのですか?」

 

「まさか!こんな近隣まで賊が入り込む事など、先ずありえんさ!」

 

 山賊が出没する地域にしては、余りに無防備だった牛飼い娘。

もしも日常的に賊が徘徊するような地域なら、彼女を一人で外出させたりはしない筈だ。

旅の女に反論する牧場主。

此処は街からも近く、当然兵達の巡回圏内に入る。

日常的に賊が徘徊しているなら、既に衛兵たちが対応している。

ここまで急激に治安が悪化し始めたのは、ほんの数日前からだ。

ギルドの話では、小鬼の生息数が急速に減少し、代わりに賊が幅を利かせる様になったと言う。

現在街の治安部隊が対応策を練っているが、効果の程は限定的なのが現状だ。

 

「しかし、今後この子の外出は、極力避けねばならんかもしれんな」

 

「それが良いと思いますよ。またゴロツキ連中に絡まれないとも限りません。ただでさえ魅力的だからね、貴女は」

 

「でも、逸れたあの子を探さないと!」

 

「…もう諦めなさい、危険すぎる」

 

 実は牛飼い娘、脱走してしまった子豚を探す為に外出していた。

其処へ運悪く山賊に捕まり、危うく手籠めにされる寸前だったという流れだ。

何としてでも子豚を見つけ出したかった牛飼い娘だが、危険すぎるという理由で牧場主に止められてしまった。

子豚が逃げ出してから、かなりの時間が経過しており何処へ逃げたのかも見当が付かない。

もう諦めるしかないだろう。

 

「お、此処だ此処だ。合ってるよね、灰君?」

 

 そんな諦めムードな空気感を破裂させんばかりの快活な声が、遠方から聞こえて来た。

声の方へと振り向くと、数人の男女が此方にやって来るではないか。

 

「おや?君は――!?」

 

「あ、剣士君?」

 

 牧場主と牛飼い娘は、数人の群れから灰の剣士の姿を確認する。

彼の外観も野盗紛いだが、佇まいと纏った雰囲気で二人には()だと判るのだ。

 

「これは、貴方達の子ブタでしょう?」

 

 曳いて来た荷車から子豚を抱きかかえ、牧場主へと手渡す。

 

「――あ!見付けてくれたんだぁ!」

 

 正に牛飼い娘の探していた子豚だった。

半ば諦めていた子豚が見付かり、牛飼い娘は歓喜の声を上げた。

 

……

 

お互いの自己紹介を済ませた彼等は、牧場主に経緯を説明した。

やはり牧場(牛飼い娘)も山賊の襲撃に遭っていた。

今は狼煙を上げている為、もう直ぐ衛兵たちが駆け付けてくれるだろう。

 

「それにしても急ですね。ここまで治安が悪化したのは」

 

「全くだよ。どうやら賊は、北方から流れて来たらしいね」

 

 灰の剣士に向かい、現状を嘆く牧場主。

拘束した山賊が喚いていたのだが、彼等は北方から西方へと流れて来たらしい。

 

「こちらでも山賊から、小鬼が極端に減ったという旨を聞きました。その事と無関係ではないでしょう」

 

 拘束した山賊が口にしていた事を思い出す灰の剣士。

今まで西方では、かなりの小鬼が幅を利かせていたものだ。

それが極端に減り、入れ替わる様に賊が台頭し始めていた。

それは数日前を境に顕著となり、奇しくもダークゴブリン戦の決着と時期が重なっていた。

 

「エルメルリア=フリクセル。じゃあ、貴女がロロナちゃんの娘さんだったのね」

 

「そうですよ、まぁ養子ですけど。でも私、ロロナ母さんで良かったって心底思ってます!」

 

 旅の女はルルアの本名を知り、彼女がロロライナ=フリクセルの縁者である事を知った。

旅の女はロロナを良く知っており、実は彼女も同郷の出身――つまりアーランドから、この国へとやって来たのである。

 

因みに彼女の名は、エスティ=エアハルトという。

 

彼女がアーランドに居た頃は、王宮勤めの過去を持つ。

そんな彼女が何を目的に、この国まで渡って来たのかは定かではない。

 

「えっと、貴女がゴブリンスイーパー…さん?」

 

「そうよ。周りが勝手に付けた渾名だけど、こうしてお話するのは初めてね」

 

「…ええ」

 

 牛飼い娘とゴブリンスイーパー。

緊張ながらも勇気を振り絞り、牛飼い娘は彼女に話し掛けた。

以前から彼――ゴブリンスレイヤーと彼女が一党を組んでいた事は知っていた。

ギルドの噂だが、彼女も小鬼の被害に遭ったと聞いている。

以前、彼女達を引き連れていた姿を目にした事もあった。

最もスイーパーを含めて当時の彼女等は、全身を武具で覆い性別さえ判別できない様な出で立ちで、それほど気にはならなかった。

だが今のスイーパーは、兜を外した状態で素顔が露わとなっている。

牛飼い娘から見ても、彼女は魅力的な容姿を誇っていた。

着飾りさえすれば、方々から男が声を掛けて来るほどの可憐さを有す。

 

「……」

 

「……貴方が何を言わんとしているか?(ゴブリンスレイヤー)の事をどう思っているか…でしょ?」

 

 以前から気になって仕方なかった。

殆ど人との交流を拒む彼が、魅力的な若い女性冒険者と行動を共にしている。

彼の事だ、恐らく想像しているような関係ではないのだろうと思っていたが、訊ねずにはいられなかった。

自分から言い出す前に、スイーパーの方から看破されてしまったのだが。

 

「正直に言うわね。彼の事は、感謝と同時に恋慕も寄せているわ。…フラれちゃったけどね」

 

「そ、そうなんだ…」

 

 スイーパーがゴブリンスレイヤーと灰の剣士に救われた事は知っている。

小鬼に嬲られ絶望の淵から救い出してくれたのだ。

彼女にとって、二人は宛ら救世主にも王子にも等しい存在だ。

何の感情も寄せていない方が不自然というもの。

だがスイーパーから”フラれた”という言葉を聞き、牛飼い娘は心の何処かで安堵を覚えていた。

 

「でも何て言うのかしら…。まだ彼に対し、何の感情も抱いていないのかって聞かれたら嘘にはなるわね。多分…私もまだ分かっていないの、どう歩んで行くべきなのか」

 

 確かに自分の様な犠牲者を少しでも減らしたい。

その志が、ある事は間違いない。

その為に、小鬼に対処し続ける事に対し何の恐れも無い。

だが、本当に()()()()なのか?

その想いだけで、これからも歩んで行けるのか?

本音で言えば自信がなかった。

恐らくゴブリンスレイヤーと灰の剣士に対し、何かしらの繋がりを求めている自分が居る。

今思えばスイーパー以外のメンバーは、自身の過去に決着を付け、それぞれの道を歩んで行った。

だが自分は未だに冒険者を続けている。

社会的に観れば彼女達の方が過去に見切りをつけ、未来へと突き進んでいるのではないか。

それに比べれば自分は未だ、志よりも寧ろ”迷い”が勝っているのではないか?

そんな気がしてならなかった。

 

「此処までにしときましようか。どうせ彼の事だから、二言目には”ゴブリンだ”なんでしょう?」

 

「プッフフフ、ちょっと似てた、今の」

 

「フフフ…」

「アハハハ…」

 

 ゴブリンスレイヤーの口癖を真似したスイーパーに、牛飼い娘は『似てる』と吹き出してしまう。

当初ぎこちなかった二人の壁は、すっかり取り払われたようだ。

互いに談笑し、会話に華を咲かせていた。

其処にライザやルルアを始めエーファも加わる事で、牛飼い娘は何時も通りの調子取り戻す。

先程山賊に襲われた事など、綺麗サッパリ忘れていた。

 

「皆さん、良かったウチで食事でもしていかんかね。何か礼をしなければ!」

 

 頃合いを見計らった処で、牧場主が礼をしたいと提案してきた。

だが灰の剣士たちは依頼遂行の最中であり、これからの予定が詰まっている。

些かに心苦しいが、彼等はやんわり断りを入れた。

その旨を聞いた牛飼い娘や牧場主は、少々残念そうな表情を浮かべたが、その時誰かの”腹の虫”が鳴り響く。

 

「///あの…私です。お恥ずかしい話ですが、何か食べさせて下さい///」

 

 腹の虫の正体は、エスティ=エアハルトだった。

恥ずかしそうに顔を赤らめ、腹部を手で覆っている。

聞けば彼女、この地域に辿り着く途中、賊の目くらましに遭い貴重品を持ち逃げされていた。

此処を通りかかったのも実は、窃盗犯を追跡する為でもあったのだ。

しかし結局、見付ける事は出来ず旅を続ける為の路銀は完全に喪失してしまった。

これでは旅を続ける処か今日を生きる糧すら得る事も叶わず、故郷に帰る事も不可能だ。

彼女は今、非常に困窮しているのであった。

 

「そういう事なら遠慮なく召し上がって下さい!」

 

「お嬢さん、もし仕事にお困りなら、私の所で住み込みで働いていかんかね?」

 

 牛飼い娘を山賊の魔の手から助けてくれたのだ。

困窮しているというのなら、手を差し伸べずにはいられない。

牛飼い娘は元より、牧場主も彼女を家に招き入れようと提案した。

 

「えぇ!?いいんですか!?押しかけたりして…」

 

「なんの、遠慮する事はない!私の所もちょっと人手不足気味でね、聞けば帳簿や計算といった書類仕事に長けているそうじゃないかね?好きなだけ居てくれて構わない。それに、この子に身を守る術を教えてあげてくれば、言う事はないさ」

 

 一晩泊めてくれるなら兎も角、住居や仕事まで提供してくれるという牧場主。

流石に厚かましい過ぎないかと、提案を受ける事に抵抗を感じていたエスティ=エアハルト。

だが牧場主としては、頼りがいのある女性の登場と牛飼い娘を守ってくれる事に大いに期待を寄せていた。

 

「で、では、お言葉に甘えて良いですか///?」

 

「勿論だとも!これから宜しくお願いするよ、お嬢さん!」

 

「改めて宜しくお願いしますね!お姉さん!」

 

「そんな、お嬢さんにお姉さんだなんて…。もういい歳なのよ私」

 

 牛飼い娘も快く歓迎してくれている。

戸惑いながらも、エスティは牧場主の家へと招かれる事となった。

 

「それじゃあ、あたし達はこれで!」

「もし良かったら、ギルドの工房(アトリエ)まで訪ねて来て!私たち其処で大抵は作業しているから!」

 

「うん!貴方達と沢山お話出来て、ホントに楽しかった!また遊びに来てね!剣士君も、子ブタちゃん連れて来てくれて、ありがとね!」

 

「ああ。(ゴブリンスレイヤー)に宜しく言っておいてくれ。では私たちはこれで――」

 

 ライザたち女性陣も一旦別れの挨拶を交わし、灰の剣士一行は街へと帰路に就く。

 

――彼の反応が気になるな。

 

エスティを見たゴブリンスレイヤーの反応を想像してみる灰の剣士。

 

――ま、どうせ、『そうか』の一言で済ませるのだろうな。

 

しかし大体の察しがつき、彼は荷車を曳きながらそんな事を考えていた。

彼の曳く荷車の轍――それは僅かに街道を記す。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

斧(ライザ)

 

錬金術士、ライザリン=シュタウトが用いる素材採取用の斧。

クーケン島から持ち出した物は、ゴブリンによって持ち去られてしまった。

仕方なく武器工房から中古の斧を購入し、錬金術で改良した物が現在の品だ。

斧本来の役割を発揮し、丸太や岩塊を割り素材を採取するために使用される。

 

無自覚ながらライザ本人は、秘かに身体能力が高く本格的な指導を受ければ

戦士職に転向できる程の潜在能力を秘めている。

これも環境と、両親の遺伝子を受け継いだ結果であろうか。

 

 

 

手甲・脚甲(銀髪武闘家)

 

銀髪武闘家用にカスタマイズされた金属製の手甲及び脚甲。

彼女の敏捷性を損なわない様に、重要部分のみを分厚く、その他は革性などで軽量化を図っている。

 

本来は防具として機能するが、金属部分を活かし打撃武器としても使用が可能。

また盾の代わりともなり、腕を直接覆う分扱い易く盾ではなく手甲に重きを置く装備者も居る位だ。

故に、武闘家とは非常に相性のいい武具でもある。

別名ガントレット(大籠手)とも呼ぶ。

 

未だ未熟ながら銀髪武闘家は、高い才能を有す。

拙いながら気の概念も学んでいる為、開花させれば更なる高みを目指せる逸材なのだ。

 

 

 

 

 

 




 何時までも引きずる訳にはいきません。
私も気持ちを切り替え、再び執筆に励む事にします。
日々平穏に生きていられる事に感謝しながら。

如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
デハマタ。( ゚∀゚)/
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