本編はただいま執筆中です、歩みは遅いですが…。
ドゾ。( ゚ ω ゚ )
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ゴブリン
小鬼は基本的に群れを成し、集団生活を営む。
成体でも只人の子供並の知性と身体能力しか併せ持っておらず、総じて弱者と認識されている。
小鬼単体の質としては、確かに混沌最底辺と称されても相違なく、一般人の村娘でも農具で仕留める事も可能だ。
しかし、その様な小鬼でも集団を形成すれば、戦う術に乏しい一般人には最も身近な脅威と化す。
加えて子供程度の知性でも悪知恵には長け、原始的ながらも罠で冒険者を欺いたりもする。
混沌勢底辺に相応しい存在なのか、余りに醜悪な容貌と精神性を有し、とにかく目先の欲には我先に飛び付く。
小鬼は原則的に夜行性で、暗がり(主に洞穴や洞窟)といった地下施設に住み着く習性があり、昼夜の概念が逆転している。
また夜行性という身体上、暗視と嗅覚にも優れ、小鬼自身も特徴を自覚している。
そして獲物の対象である人族(特に只人)は、暗闇を忌避する習性にも気付いており、自らの領域に引き込み有利に立ち回る事も多い。
小鬼自身は確かに弱者であり、概ねそれは事実である。
(ゴブリンなんて雑魚ですよ、俺は村で小鬼を追い払った事もあるんだ)
確かにそんな経験をすれば、それが小鬼の脅威度としての判断材料にしてしまうのは致し方ないと言えるだろう。
しかしだ。
何度も述べるが、小鬼は基本暗がりを利用し集団で襲い掛かって来る異形だ。
そして原始的ながらも粗悪な武器や罠を駆使し、人々を襲撃するのである。
小鬼は基本的に女(雌)という性別が存在せず、小鬼という種族のみでは子を成す事が出来ない。
そこで他種族の女の子宮を利用し、子を孕ませ数を増やしていくのである。
更に小鬼は略奪を是とする民族だ。
集団を成し集落や村を襲い備蓄を奪い去るが、他種族の女も奪う対象に入る。
女を攫い、巣で凌辱し、子を産ませる。
そして質が悪いのは、非常に加虐的な精神性を有すため必要以上に虜囚に危害を加える事を愉悦としている。
また性欲も非常に強く、後先を考慮しない激しい凌辱を加え物理的にも嬲り、早々に死に追いやってしまう事も多々あるのだ。
とにかく小鬼という種族は残虐かつ短絡的で、また他種族の女(居ない場合は最悪、獣のメスと交わる)を利用し繁殖力も極めて高い。
しかし、単体では確かに脆弱で時と場合によっては、武装した一般人でも撃退できる事例は幾つもある。
そういう理由から、小鬼退治の仕事は何処の地方でも事欠く事がない。
そしてそれ等の仕事は、駆け出しの冒険者向きの仕事と相場が決まっている。
確かに準備と事前情報を備えておけば、徒党を組んだ冒険者一党なら敗北する例は少ない。
しかし弱いという認識が広まっているのも事実で、冒険者の中には驕りや慢心を生む事も少なくはない。
その結果、小鬼に敗北し、男は無残に殺され、女は死ぬまで嗜虐の対象となるのである。
これが混沌最底辺の『小鬼(ゴブリン)』という種族の総評である。
……
小鬼の規模
基本的に群れを成す小鬼だが、数匹~50が最も多く確認されている。
100以上を超える事は、基本的に稀である。
それというのも、小鬼という種族はとにかく身勝手であり、自分こそが最も優れているという根拠の無い自尊心に溢れているのだ。
そういった精神性では、常に仲間割れや身内争いが頻発しており、同族同士の殺し合いで数を減らす事など日常茶飯事だ。
つまり他者を敬い協調性を重んじるという概念が欠如している。
50以上の群れを統率するには、特殊な環境下に身を置くか圧倒的な力を示すしかない。
大抵の場合、進化した小鬼の上位種や別の混沌勢に率いられる事が多い。
通常の小鬼では、10~20を統率するのが関の山だろう。
……
小鬼の使う道具類や武具。
只人の子供並の知性、自分勝手な精神性、堪え性の無い衝動的な感性。
凡そ生産的な営みなど縁遠い種族に見えるが、自身に益となり必要とあらば道具を造り出す能力も”一応”は備えている。
余程知性に優れた個体なら話は変わってくるが、基本的には原始的な物しか生み出せない。
木の枝を組み合わせ、弦や布を利用した紐で括る。
石を削り、刃物の代わりにする。
植物の葉を利用し、簡素な薬を作る。
武器に関しても似た様な水準だ。
……
石斧
木の枝と平たい石を、弦や布紐で結び付けた原始的な斧。
粗悪品だが威力は意外に高く、多少組み立て能力のある小鬼は、この斧系に目を付ける。
削った石剣
そこいらに落ちている石ころを削り出し、刃物状に加工した物。
当然切れ味など、真っ当な刃物と比べるべくもない程に劣悪だ。
だが、雑多なヤスリ状に削られた断面に切り付けられれば、必要以上に痛みを伴い雑菌による追加効果も期待できる。
これも加工が容易で、石が多い地域では採用され易い。
粗悪な槍
木の枝を削り先を尖らせた物。
または、穂先を削った石に取り換えた物。
多少のリーチに優れ、己の力を誇示する象徴としても多用される。
簡素な弓矢
弾力性のある木と丈夫な弦を組み合わせた粗悪品。
矢も枝を尖らせただけで、凡そ真面な命中率など期待出来ようもない。
しかし飛び道具というものは思いのほか厄介で、一般人相手には多大な圧力を掛ける事が出来る。
劣悪な小盾
細い枝を藁(ワラ)や弦などで組み合わせ、盾とした物。
戦士職の冒険者や、力自慢の農夫なら一撃で粉砕できる程に脆い品だ。
しかし防具には変わりなく、小石や投げ矢(ダート)程度なら充分遮る事が出来る。
……
お世辞にも工作能力に長けているとは言い難いが、小鬼の水準など大体こんなものである。
しかし小鬼は略奪した武具をそのまま使う事の方が多く、然して気にも掛けていない節がある。
例えば『折れた直剣』や『刃毀れしたナイフ』程度でも、小鬼にとっては立派な戦利品で勝利の証なのだ。
それ故、万が一『魔法の武器』等が小鬼の手に渡ってしまえば、正に一大事である。
(然る冒険者は、その事を見越した上で敢えて低品質の数打ちを好んで採用する、という話もある)
基本的な小鬼の記述は、この位でいいだろう。
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ダークゴブリン(異端の黒き小鬼)
小鬼にも学習能力は備わっており、時には多くの経験を積み重ね、従来の小鬼とは比較にもならない程に進化する個体も存在する。
ホブゴブリン、ゴブリンシャーマン、ゴブリンチャンピオン等。
しかし、それ等の小鬼とは何もかもが異質の個体が、四方世界に顕現した。
身長は、只人成人よりも若干高い位。
(約:180~190cm)
凝縮された筋肉。
平均的なホブの様に贅肉過多でもなく、チャンピオンの様に膨れ上がってもいない。
とにかく無駄なく全身均等に備わり、極めて高い身体能力を有す。
駿馬を越えるほどの走力、大木を一撃で薙ぎ倒す腕力、といった具合だ。
黒い体表。
ダークゴブリンを体現すると言っても過言ではない、身体的特徴。
全身が、浅黒い皮膚で覆われている。
正確には完全に黒ではなく、褐色染みた皮膚。
豊かな金髪と赤い双瞳。
黒い体表に映え渡る長く豊かな金髪は、他の小鬼には無い特別な特徴だ。
目は血のように赤く、目を凝らせば暗闇でも若干灯っている。
また顔付きも、小鬼の特徴を孕んではいるものの、どちらかと言えば人族側に近い。
傍目に見れば、精悍な闇人に見違えられる位で、その容貌を活かし他種族との交渉に利用する事さえある。
身体能力。
前述でも少し触れたが極めて高い水準で、取り分け敏捷性に長けている。
大木を一撃で薙ぎ倒す程の腕力。
これは並以上のホブゴブリンでも可能。
ダークゴブリンの単純腕力は、ホブ以上チャンピオン以下である。
走力や敏捷性は、同族の追随を許さず、駿馬をも追い越すほどの走力を誇る。
手先も器用で、素材と環境さえ揃えば細やかな小道具さえも自前で造り出す。
実際、幾つもの道具を自ら作り出し、時には自分用、時には同族に分け与えてもいた。
また知性にも優れ、学習能力も非常に高い。
ダークゴブリン自身、初期の活動では主に書物関係を優先的に略奪していた。
無論、新たな知性を学び更なる見分を切り開く為だ。
特に常識離れしているのは、圧倒的な処理能力――。
全速力で疾走し、視界に捉えた地形を瞬時に脳へと叩き込む芸当も可能。
魔力にも優れ、初期から幾つかの呪文を体得していた。
呪文系統は『真言魔法』で、やや”火”に傾倒しているが後に様々な属性を習得している。
精神性
身体能力も然る事ながら、精神性は更に異質さが際立っている。
先ず非常に思慮深く、忍耐強くもある。
従来の小鬼は、とにかく自己中心的で目先の欲に囚われ易く将来性など歯牙にも掛けない。
しかしダークゴブリンは、自らを律する事に長け”即断と熟考”を使い分ける事が出来た。
加えて”情報”を重要視し、組織の拡大と共に部下を各地へと派遣し(場合によっては自ら赴く)情報収集を徹底させた。
また極めて同族意識が高く、組織の結成、活動、戦争も、全て小鬼の未来の為である。
ダークゴブリンは自らの活動を『救済』と称し、混沌勢からも虐げられる小鬼の地位の向上と社会を構築する事を、使命と課していた。
(要するに小鬼の国を樹立させ、人族とは相いれない事を承知しながら”一種の共存”を目指していた)
また組織の運営に『規律』の重要性も理解を示しており、決して無法集団に成り果てはさせなかった。
定められたルールに従わない同族には、容赦なく厳罰に処し、功績を上げた同族には好待遇を与えた。
余談だが、従来の小鬼は非常に不衛生で不潔極まりない環境でも平然と生活を営んでいる。
しかしダークゴブリンは、そういった環境や習性を嫌い、清潔な環境を徹底させた。
ダークゴブリン自身、世界の崩壊や破壊など到底望んではいない。
あくまで世界のパワーバランスを小鬼側に傾けた形で、人族を搾取の対象とした”小鬼主導の社会”を構築したいだけである。
当然ダークゴブリン自身も”性欲”は存在し、女と交わる事を娯楽としても捕らえている。
しかし、人族の女(只人、森人、闇人、圃人、鉱人)は、性的対象から外れているため異性として全く反応する事がない。
辛うじて獣人(亜人)の女を性的対象として観る事も出来る。
だが意欲が薄かったのか、積極的に関わる事はなかった。
しかし異界の住民と言われる『魔神』の眷属ならば”女”として捉える事が出来、数人の女魔神(夢魔)を伴侶(孕み袋ではない)として迎えている。
総じてみれば、ダークゴブリンの精神性は、寧ろ人族側に近いのかも知れない。
そういう意味では、決して邪悪とは言い切れない精神性を併せ持っているとも言える。
だからと言って善良と評するのも少々語弊があり、大目に見て”中立”と評するのが妥当であろうか。
戦闘力
桁違いに高く、同族で並ぶ者は終ぞ現れなかった。
初期の頃から『魔神将』にも比肩し得る実力を誇り、また研鑽を重ね更なる実力の向上に努めた。
剣の乙女軍との戦頃には、『上級魔神将』さえも凌ぐ実力を身に付け、最早小鬼の範疇を越えていた。
最も秀でていたのは、素手による格闘術。
身軽で軽快な動きと、主に打撃を組み込む事を得意とする。(若干投げ技も)
後にダークレイスの剣を拾い上げ、流れ来るソウルを読み取り剣術を体得した。
若干筋力よりの荒い剣技を繰り出したが、桁外れの筋力から繰り出される剣術は、パワーとスピードを両立させ、あの『深淵の監視者』相手にも肉薄していた。
前述した通り、真言魔法も幾つか会得している。
しかし極め付けは、ソウルと呼ばれる概念を理解し操作できるという点だろう。
広義的に語れば、ソウルは万物の根幹を成すと言われている一種のエネルギー体の様なもの。
ダークゴブリンは、ソウルの感知で敵の位置や状況を探り当て、ソウルの収奪や注ぎ込みを行う事も出来る。
対象からソウルを奪い取る事で、戦闘力や魔力そのものを引き上げる事ができ、特殊能力をも身に付ける事が可能だ。
またソウルの注ぎこみで『洗礼の義』と称した儀式を生み出した。
これは文字通り、ソウルを対象物(主に同族)に送り込む事を指す。
『洗礼の義』によってソウルを送り込まれた小鬼は、その恩恵を賜り限界以上の総力を得る事ができた。
小鬼の中には、これを何よりの成功報酬と捉えている者も少なくはなかった。
ソウルの操作ができるダークゴブリンだが、これを真言魔法の変化にも応用が出来た。
例1 通常単発の『火矢(ファイアーボルト)』だが、これをマシンガンの様に連射したりショットガンの様に拡散発射を可能ともする。
例2 誘導性の高い『力矢(マジックミサイル)』は1~3発の魔弾を放つが、これを60発以上に増加させる事も出来る。
例3 範囲と威力に優れる『火球(ファイアーボール)』にソウルを加え、光り輝く超高熱弾へと強化させ、剣の乙女軍を苦しめた。
……
主な装備品
ダークソード
ダークレイスが使っていた、黒い刀身を持つ肉厚の長剣。
長剣というよりも大剣に近く、かなりの重量を誇る。
使いこなせれば、リーチと重量を活かした剣技を振るう事が出来るだろう。
灰の剣士によって討たれたダークレイスの遺品を拾い上げ、自分の物として長きに渡って愛用した。
軽鎧
部分的な軽鎧。
ハードレザー製だが、金属部で急所は補強している。
袖はなく、胴体部のみを覆う部分鎧で非常に軽く、そこそこの防御力も併せ持つ。
拠点の鍛造設備で、自らが資料を基に造り上げ改良を重ねた品である。
手甲具足
これも革製に金属部で補強した物。
可動域を損ねない様に、先ずパーツ部分だけを造り上げ、それ等をリングや紐で繋ぎ合わせてある。
手足を守る為の防具。
真言魔法
火矢
火の魔力を投射する呪文。
しかしダークゴブリンは、連射と散弾が可能。
力矢
追尾性の高い魔弾を投射する呪文。
通常1~3発だが、ダークゴブリンは60発を同時に投射した。
火球
範囲と威力に優れた火球を投射する呪文。
実力者が使えば、巨大な火球をも生み出せる。
ダークゴブリンはソウルを注ぎ込む事で、光り輝く火球を生成し更なる強化を可能とした。
また、成長(クレスクント)の真言を行使し、消えかけた火球を再び増幅させる芸当も実現している。
分解
高威力の光線を放射する高位の呪文。
ダークゴブリン最大最強の攻撃手段。
しかし、灰の剣士とゴブリンスレイヤーの共同攻撃で撃ち負け、敗北した。
ダークゴブリンの呪文使用回数は最大で、5~6回である。
特殊能力
ソウルの感知と操作。
ソウルの読み取りで相手の位置を探り当て、また攻撃を予測する事が可能。
総力戦に於いて、敵の位置取りを知る際には重宝した。
ソウルの収奪と注ぎ込み。
対象物のソウルを奪い自らの物とする。
または逆を行い、相手側に力を与える。
これも様々な応用が可能で、人心掌握に加え自身強化にも役立った。
結晶ブレス。
大喰らいの結晶トカゲを打ち倒し奪ったソウルから得た、特殊能力。
結晶の魔力を含んだブレスを広範囲へとバラ撒き、牽制や奇襲に利用した。
また風を利用する事で広域拡散させ、威力と引き換えに更なる範囲拡大という応用技も利用した。
冷たい冷気
冷たい谷のボルドのソウルから得た能力。
全身から、凍てつく冷気を噴出させる。
特殊な冷気は、水では消えない筈の火でさえ鎮火させた。
ダークハンド。
灰の剣士により討たれたダークソウルから得た能力。
本来はソウルの収奪に使われるが、攻撃や防御と幅広い運用が可能。
ダークゴブリンは、主に”盾”として使用した。
強化方陣のスクロール
何者でもない、混沌勢の邪教徒が生み出した外法。
魔法陣を描き、対象者の戦闘力を著しく増大させる。
彼は何者でもない末端だったが、その功績は偉大で崇高だった。
灰の剣士達に討たれた後、深みの主教に技術を回収され魔神軍で研究が引き継がれた。
そして効果範囲と時間制限付きで、スクロールに封ずる事に成功。
実験台としてダークゴブリンに譲渡される。
(尤も彼自身は、承知の上で受け取ったのだが)
強化方陣を発動させたダークゴブリンは、小鬼ですらなくなり正真正銘の『鬼』と化す。
その力は圧倒的で”魔神王級”の実力を発揮し、剣の乙女軍を壊滅寸前まで追い詰めた。
しかし残り火を解放させた灰の剣士に形勢を逆転され、最後は彼とゴブリンスレイヤーの共闘に敗北する事となる。
魔力増強の秘薬
妖王オスロエスの陣営に所属する、仮面の錬金術師より託された秘薬。
服用する事で一時的にだが、莫大な魔力を増幅させる。
追い詰められたダークゴブリンは、これを最後の切り札として使用し、増幅した魔力で決着を付けるべく全力の呪文を放った。
しかし、灰の剣士とゴブリンスレイヤー二人がかりの『ソウルの奔流』に飲み込まれ、その生涯に幕を閉じた。
薬液入りの包帯
彼が常備している治療具。
尤も彼自身が滅多に負傷する事がない為、自身で使う事は殆どなく他者に分け与える事が多かった。
一応、通常の包帯よりも治療効果が高い。
……
従来の小鬼とは明らかに一線を画す黒き異端の小鬼、ダークゴブリン。
最後の戦に赴く寸前に、彼は一定の役割を果たした事を確信する。
それは当初思い描いていた理想には程遠かったが、確かに小鬼と人族の共存を実現したのである。
周囲の同族は彼を『黒き同胞』と呼び、敵対する人族は彼を『ダークゴブリン』と呼称した。
彼を生み出したのは、盤外から観測する外なる神。
名を『黒い鳥の神』という。
果たしてダークゴブリンの目的は、黒い鳥の神の思惑に沿っての事だったのだろうか。
その事実を確かめる事は、もう叶わない。
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―― 進化形態 ――
ダークゴブリン軍の組織には、特殊な進化形態に行き着いた小鬼が存在する。
中型種
経験を積んだ小鬼が到達する形態。
体格も幾許か増大し只人に近く、それに伴い身体能力も向上した。
生きる過程で学習したのか、中々に知性をも有す。
また失敗を経験した者は、若干ながらの忍耐力も身に付ける様だ。
大抵は群れを統率している事も多い。
総合評価で言えば、ホブに迫る身体能力、シャーマンに一歩及ばない知力を有した形態。
それが中型種だ。
ここから更なる経験を積めば、ホブゴブリン或いはゴブリンチャンピオンに進化する事も可能。
意外とこの形態に辿り着く個体は多いのだが、所詮は小鬼――。
無根拠な自信と増長で命を落とす者も多く、結果的に長生きする者は少ない。
言い方を変えれば、中途半端とも言えなくもない。
ダークゴブリン軍以外の部族にも、この形態に成長する状況は多い。
大型種
中型種が更なる進化を得た形態。
とは言え、この形態は少々特殊で非常に数が少ない。
それとも言うのも大抵は、前述のホブやチャンピオンに到達するからだ。
実はシャーマンやマジシャンも、この形態に到達する事もある(大シャーマンや書記小鬼)。
ホブやチャンピオンの様に、筋肉過多でもなく比較的均衡のとれた体型をしている。
それでも身長自体はホブと並ぶ為(200~300cm)、かなりの巨体を誇るのだが。
巨体だが無駄のない体格で俊敏な動きを得意とし、長年の経験と学習で熟考するという習慣も身に付けた。
また忍耐や辛抱といった精神性も有し、慎重な行動を心掛けるようになる。
元々希少種で慎重に傾倒する為か、人の目に付く事は滅多になく存在すら疑問視されている。
そんな希少種の彼等が4体も揃うのは異例中の異例で、ダークゴブリン軍の側近は全て大型種だ。
中型種や大型種に進化する個体は、野生にも存在するが、人々の間では関心が薄いようだ。
やはり”小鬼”の一言で片づけられてしまうのが、世の常と言う事だろうか。
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―― 側近 ――
ダークゴブリンに見出された特別な小鬼達。
小鬼と言っても、既に種の範疇を越えた実力を有している。
それと言うのも彼等は皆『大型種』と呼ばれる進化形態に達しており、従来の小鬼とは比較にならない能力を発揮するからだ。
……
―― 長弓小鬼 ――
ダークゴブリン側近の筆頭。
弓矢の扱いに最も長け、弓術だけならダークゴブリンをも上回る。
設備と技術力が揃う頃には、特殊な弾頭矢も使いこなし、爆裂矢で銀等級戦士や巨人化したゴブリンスレイヤーを苦しめた。
更に翼竜を与えられた彼は、3次元軌道と射撃を組み合わせた戦術で剣の乙女軍に対し奮戦している。
戦闘では主に弓矢に固執する為、甘く見られがちだが接近戦や統率力にも高い水準を身に付けている。
また非常に忠誠心が厚く、ダークゴブリンに対しては絶対の恭順を示す。
無論、知性も高く人族の言葉を流暢に話し意思疎通も可能。
指揮能力にも長け、兵士の育成や訓練の大半は彼が担う。
組織の中では若手ながら最古参の部類に属し、歪んだ皺も殆どなく端正な顔立ちをしている。
彼の直轄部隊は、総じて弓矢の扱いと戦闘力に秀でており規律を重んじる傾向が強い。
だが彼自身の精神構造は小鬼の本質からかなり逸脱しており、一時は組織からの脱退も覚悟していた。
基本的に弱者を嬲る事に愉悦を覚えるのが小鬼という種族で、概ねソレは健全で正義だ。
しかし彼と彼の直轄班は、それ等に愉悦を覚えず寧ろ嫌悪感さえ抱くようになっていた。
その精神構造は、秩序側の人族に近く同族から排斥されるべき部類に属する。
彼は懲罰と追放を覚悟でダークゴブリンに本心を打ち明けたが、以外にも受け入られ一定の理解を示された。
後にダークゴブリンに見いだされ、離島の住民として選ばれた。
その証として、肩当てには色付きの鋲が撃ち込まれた。
そういう意味では、彼自身は純粋な邪悪とも言い切れず、ある意味生まれた世界と時代を違えた存在なのかも知れない。
―― 長弓小鬼・直轄部隊 ――
長久小鬼が自ら率いる直属部隊。
一部隊に6体が所属し5班まで存在する。
班長は中型種の小鬼が担う。
全員総合的な戦闘力と知性を備え、その実力は翠玉等級の冒険者に比肩する。
彼等は総じて規律を重んじる性格だが、特に第1班は長弓小鬼の影響を色濃く受けたのか、価値観が似通ってしまった。
それ故、生き残った彼等は長弓小鬼に追従し、離島の住民に選ばれた。
離島の住民として選ばれた小鬼は皆、肩当てに色付きの鋲を打ち込まれている。
―― 専用装備品 ――
長弓(ロングボウ)
粘りの強い上質の木材で拵えられた、威力重視の弓。
構造上、連射よりも強射に向く。
普段使う矢は正規兵の使う物と共用だが、重要な場面では鉄製の矢が使用される。
また彼等も特殊な矢の扱いに慣れ、爆裂矢の一斉射撃でファラン不死隊の進軍を圧し留めていた。
長弓小鬼専用の弓は、長弓というよりも強弓といった趣が強い。
また両端には短い刃が取り付けられており、緊急時には剣を抜かずとも接近戦にも対応可能。
(長弓小鬼は、敢えて剣を装備していない)
他の装備は、正規兵と共通する部分が多く、識別のために腕章が追加されているのみである。
……
―― バンダナ小鬼 ――
大型種に進化した小鬼で側近の一人。
彼も最古参だが『洗礼の義』で進化した向きが強い。
特徴として非常に身軽で俊敏、軽業や潜入に無類の力を発揮する。
素早さだけなら、ダークゴブリンをも上回る。
頭部にバンダナを付けている為、何時しか周囲から『バンダナゴブリン』と呼称される様になった。
(小鬼に、固有名詞が存在するのかは不明)
また身軽な為か、長身の割に痩せ細っており体重も軽い。
使用する武器も軽量小型を好み、彼は主にダガーを複数本用いるが、
陽気で飄々とした性格で粗暴といった印象は薄いが、自由と欲には忠実で基本的に束縛を嫌う。
小鬼らしく性欲も強い為、過剰な程に女好き。
罰則ギリギリの範囲で、孕み袋に所構わず手を付ける。
その為か、伴侶にされた夢魔たちからは内心嫌われていた。
またダークゴブリンに従っている様に見えるが、実際は常に独立の機会を窺っていた。
己の身軽さと隠密技術を活かし、剣の乙女軍本陣まで肉薄し奇襲を成功させ戦果を挙げた。
だが教会の狩人と鉢合わせした事が運の尽き。
憐れにも彼は被検体にされ、
―― バンダナ小鬼・直轄部隊 ――
バンダナ小鬼が手塩にかけて育て上げた部隊。
彼の特性に準じて、皆が総じて身軽さと機動性を重視する。
1班に付き10体で、3班まで存在する。
バンダナゴブリンの影響も強く、皆が自由と欲に忠実で陽気な個体が多い。
偵察専門ではないが戦闘力をも備えている為、威力偵察や機動制圧に乗り出す任務を担う事がある。
潜入にも長け、防備の厚い施設に侵入し裏側から攪乱する戦術を得意とする。
その性格上、正面戦闘はやや不得手だ。
バンダナゴブリンの士気の下、剣の乙女軍本陣まで接近し、ハンドカノンによる一斉射撃で本陣壊滅に追いやった。
だが結局は冒険者の反撃で大半が戦死。
生き残った残党は、散り散りとなり野に下った。
何れ彼等は、自らの巣穴を持つに至るだろう。
因みに偵察班・物見部隊もバンダナゴブリン管轄だが、余り管理し切れているとは言えなかった。
―― 専用装備品 ――
正規兵の装備に加え、彼等は小型の武器を好む。
ククリナイフ
湾曲した短剣で、曲りくねった刀身は間合いを見誤らせる効果を持つという。
また工作作業用も兼ねており、潜入先で攪乱させる為の作業にも重宝する。
ククリナイフだけでなく、様々な刃先を持つナイフを彼等は複数種常備し任務に臨むのだ。
バンダナゴブリンは、投げナイフを10本、接近用の大型ナイフを2本常備していた。
ハンドカノン
専用装備ではないが、敵本陣の打撃に使用した。
一発打ち切り式で威力も大砲に及ぶべくもない。
だが傾向が可能という点は、部隊の特性と非常に相性が良く、肉薄しての一斉射撃は多大な戦果を残した。
……
―― 書記小鬼 ――
側近の一人で大型種の小鬼。
最古参ではなかったが、元が知性に長けたゴブリンの魔術師である。
彼も少々変わり者で、知識欲と探求心が旺盛であった。
特定方面の知性に限定すれば、ダークゴブリンをも上回る知識を有す。
その為か、従来の小鬼にありがちな欲は希薄で、開発や研究に愉しみを見出すタイプである。
上品な服装と
(特に目が悪い訳ではなく、彼のちょっとした戯れである)
彼の役割は主に頭脳労働を担い、部隊も戦闘班ではなく生活班を率いている。
小鬼の生活を忠実させる為、様々な道具を研究し開発と生産を指揮する。
また似たような存在である『大シャーマン』と共同で、研究開発に従事する事もある。
基本的に頭脳労働担当だが仮にも大型種で、戦闘力が低い訳でもなく並のホブ程度なら力尽くで捻じ伏せるだけの実力も併せ持つ。
頭脳労働担当だが余り他者を痛め付けるという欲は希薄な為か、離島の住民に選ばれ色付き鋲の肩当てを譲渡されている。
やはり後方支援という要素は、どの界隈でも重要視されるという事だろう。
混沌勢ながら彼は秘かに知識神を崇めており、モノクルは彼なりの敬意の表れである。
―― 書記小鬼・直轄部隊 ――
書記小鬼の率いる部隊は、主に生活班である。
衣、食、住に於いて実に重要な面で組織を支えている。
建築技術や道具加工も彼等が担い、生産活動に従事しているのだ。
また武具を作り出す為の設備や兵器生産も彼等の仕事とであり、中には専門職の小鬼も存在する。
基本的に戦闘に向かない小鬼が此処に所属するが、戦闘班に配置換えを希望する小鬼も少なくはない。
(尤も戦闘で負傷し、再びこの部隊へと戻る所謂”出戻り”も数多いのだが)
調理や薬草栽培、治療薬作成も彼等の存在が不可欠だ。
そういう物資供給の重要性を理解出来ない小鬼も多いが、彼ら生活班の存在は非常に重く、ダークゴブリンは戦闘班以上に好待遇で報いていた。
待遇を取るか、戦闘を取るか。
その狭間で揺れ動く、迷えし同胞は後を絶たない。
―― 専用装備 ――
戦闘に関しての装備は、正規兵と共通である。
装備というよりも、彼等の居住区には様々な書物や資料が所狭しと陳列されている。
これ等は人族社会から奪った物だが、読解力に長けた個体は、多様な知識と開発技術を身に付けた。
書記小鬼は、常に書物を持ち歩いている。
きっと大好きだったのだろう。
……
―― 大シャーマン ――
側近の一人で大型種の小鬼呪術師。
元々一人のシャーマンが組織に合流し、運良く功績を上げ経験を積み重ねてきた経緯を持つ。
大型種へと進化した事で持ち前の魔力に更なる磨きが掛かり、精霊魔法だけでなく真言魔法や死霊術にも足を踏み入れた。
魔力の質は兎も角、修得呪文の多彩さや知識の豊富さだけなら、ダークゴブリンをも上回る。
呪文の使用回数は、最大で8回を誇る。
大柄な体躯にフード付きローブを纏い長い杖を携えた、特異な出で立ちをしている。
また呪文使いの育成と指揮も担い、数は少ないものの呪文使いを生み出す事に成功した。
一見大人しい性格だが、実際はかなりの身勝手で欲深く残虐な精神性を有す、凡そ最も
弱者には尊大だが強者には媚びへつらう傾向があり、弱きを挫き強きを助ける事を是とする。
しかし、知識欲や探求心も旺盛で、時には書記小鬼と共同で研究開発に勤しむ事もある。
彼が主に担当したのは、呪文系の研究が大半。
一度手を付けると没頭するタイプなのか、研究に没頭していた時期と重なり、伴侶となる夢魔を当てがわれても積極的に相手にはしなかった。
(不満を抱いた夢魔の一人は、ダークゴブリンに相手をして貰っていた)
何れは組織に見切りを付け、独立と生存を兼ね魔神軍に帰順しながら地位の確立を画策している。
その上で野心も備えている為、何時の日か魔神王に成り代わる日を夢見ている様だが、詳細は定かではない。
剣の乙女軍との戦の最中、天候を操る程の大呪文を再現させた後、早々に戦線を離脱し賛同する部下と共に組織を脱退した。
因みに彼は、覚知神を信仰対象として拝めている。
―― 大シャーマン・直轄部隊 ――
大シャーマンの育成した呪文使いで構成される部隊。
皆が高い呪文行使能力を持つ。
1班に付き15体所属し、4班まで存在する。
その実力は極めて高く、青玉等級の魔法職冒険者と並び立つ実力を持つ。
雑多な呪文使いと違い、一人一人の呪文使用回数も3~4回と高い。
だが大シャーマンの精神性が影響されたのか差別意識が強く、常に蹴落とし合いの気風が強い。
そのため才覚に劣る者は侮蔑と差別の対象となり、そういった個体は止む無く通常の呪文部隊へと移籍せざるを得ないのだ。
大シャーマンとの共同で行使した呪文は、下降気流(ダウンバースト)現象をも引き起こし、剣の乙女軍に壊滅的な打撃を与え有利に導いた。
その後、ケジメと捕らえたのか、大シャーマンに追従し戦線離脱と組織脱退を図っている。
しかし大シャーマンは気付いているのだろうか。
己も何れは切り捨てられる存在だということを――。
―― 専用装備 ――
例に漏れず基本的には、正規兵の装備と共用である。
だが彼等は呪文使いである為、特殊な装備が際立つ。
月光宿りの杖
魔力と親和性の高い木材にを削り出し、魔法陣の中で一定期間を月光に晒す事で完成した杖である。
従来の杖に比べ、魔力変換効率に優れており、呪文威力の増加と使用負担の軽減にも役立つ。
(呪文使用回数を1引き上げる)
この武器は、大シャーマンが開発し彼の部隊が生産に従事した。
魔法関連の品は、生活班ではなく彼等が挙って開発と生産を行っている。
面子の所為もあるのだろう。
己の得意とする土俵を、他者に任せてはおけないという事だ。
歪な性根だが、彼等の実力は認める要素が多い。
―― 格闘ホブ ――
ダークゴブリンが来訪する前に集団を統率していたホブゴブリン。
彼も先代のホブゴブリンを打ち負かし、世襲的に集団の長へと就いたは良いが、結局ダークゴブリンの圧倒的な実力とカリスマ性に屈する結果となる。
だが彼もホブゴブリンとしては異彩を放ち、学習能力が高く鍛錬を奨励する性格だ。
常に鍛えている為か、脂肪過多なホブとは違い筋骨隆々な体躯をしている。
また返り討ちにした冒険者の戦法を真似、拳闘(ボクシングスタイル)を中心とした格闘術を会得した。
ホブの体格に軽快なフットワークも兼ね備え、攻防ともに接近戦では無類の強さを誇る。
小鬼らしく粗暴で暴力的な性格だが、部下(特にホブ)に対して面倒見がよく、実は同族から注目を集めている。
部下からは『ホブの兄貴』と呼ばれ、見方を変えればダークゴブリンとは違った方向性で慕われているのだ。
何時かはダークゴブリンを打ち負かし、再び組織の長になる日を夢見ていた。
結局それは叶わず、ダークゴブリンが討たれ組織が瓦解した折、秘かに戦線を離れ生き残った部下を引き連れ各地を放浪している。
彼の階級と立場は少々特殊で、側近と同等の階級ながら側近ではないという微妙なものである。
渾身のアッパーカットは、オーガ相手にも通用するだろう。
……
―― 格闘ホブ・直轄部隊 ――
通称、ホブ切り込み隊。
総数は、20体。
ホブゴブリンのみで構成された部隊で、常に最前線に立ち戦線を切り開く立場にある。
元々討たれ強いホブの体格は、最前衛と相性が良く彼等は勇猛果敢に敵部隊を蹴散らし勝利に貢献してきた。
だが小鬼とは、怠惰な性質で基本的に鍛える事はしない。
そこで格闘ホブは、そんな惰弱な彼等を徹底的に鍛え上げ、精強な部隊へと育て上げたのである。
(少々ダークゴブリンの入れ知恵もあったが)
剣の乙女軍との戦闘で生き残った彼等は、格闘ホブに追従し放浪の旅へと出た。
……
―― 専用装備 ――
体躯の為、大型の武器が用意される。
主に長柄武器(ハルバードやポールアクス)を好み、時には大型のラージクラブやグレートクラブを用いる事がある。
刺股(マンキャッチャー)
対象を拘束する為の捕具。
先端部は輪っか状に加工され、長柄と連結されている。
ホブゴブリンの腕力と複数を組み合わせる事で、オークなど言うに及ばずトロルや魔神などの格上さえも拘束できた。
深淵の監視者相手にも効果を発揮したが、相手が悪く直ぐに振り解かれ吹き飛ばされている。
金属バックラー
ホブゴブリンが使うには些か小さ過ぎる小型の盾。
しかし物は使い様――。
これを紐で括りつけ、急所を守る防具として胸当てや手甲代わりとして用いる事もある。
格闘ホブは手甲(ナックルガード)として用い、パンチ力の増大と拳パリィとしても運用した。
大鎧
ホブ専用の防具。
基本的に革が使用されている。
しかし紐を括り付ける穴が至る箇所に設けられており、盾や金属板を括り付け強化改造を図れるよう工夫がなされた。
タワーシールド(ホブ専用)
ホブの体躯に合わせた巨大な盾、と言うよりも寧ろ壁である。
木板を幾重にも合わせた盾が主流だが、時には金属製の盾を用いる事もある。
複数のホブが並び立ち、金属製のタワーシールドで固めた防壁陣を破るのは容易ではない。
彼等ならトロル程度の突進さえ食い止めるだろう。
他の兵種と組み合わせる事で、真価を発揮する戦術だ。
アーバレスト(ホブ専用)
ホブゴブリンの体型に合わせた大型の重弩。
設置式の弩と殆ど変わらないサイズで、その威力は薄い金属盾なら貫通できる。
元々設置式の弩を、手持ち式に改良した品である。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ダークゴブリン軍
ダークゴブリン率いる小鬼軍だが、階級や役職は無論存在する。
……
―― 階級 ――
囚人小鬼
正確には階級というよりも、懲罰対象の小鬼である。
混沌勢ながらも規律を重んじるダークゴブリン軍。
しかし本来の小鬼とは、身勝手な種族で欲深い。
自分が最も得したいという欲に駆られ、ありとあらゆる狼藉を働く者が後を絶たないのだ。
拠点を汚す者。
他者の物を掠め取ろうという者。
寝首を搔こうとする者。
捕虜(孕み袋とした女)の独占や過剰な虐待を行う者。
生け捕りにした捕虜(敵部族の小鬼の事)。
それら規律を乱した者は、拠点各所に設けられた懲罰区へと連行される。
軽微な罰なら、雑用や鞭打ち。
重罪なら、それに見合った重労働や実験台(拷問)或いは追放。
しかしそれ等の刑罰では、心を折らない個体も少なからず存在する。
そういう小鬼には、極め付けの刑罰が存在した。
メスのオークと無理やり交配させる事である。
元々小鬼の美的感覚も人族側と共通項が多く、やはり容姿に優れ且つ肉感的な女を好む傾向にある。
故に、蜥蜴人の女や余りに人間離れした姿の亜人の女などには、さほど興味を示さない。
オークという種族も小鬼と同水準で醜悪な姿をしており、小鬼とは違いメスが存在する。
しかし流石の小鬼もメスオークと交配しようとする強者は、皆無であり寧ろ敬遠していた程だ。。
其処でダークゴブリンは、この刑罰を考案したのである。
思惑通り、メスオークと無理やり交わらせる事は、小鬼にとって最大の屈辱と拷問であった。
女と見るや我先に飛び掛かる小鬼がだ。
そして対照的に、メスオークも男と見るや我先に襲い掛かる種族でもあった。
メスオークと無理やり交配させられた小鬼は、皆挙って更生するか自ら組織を去ってしまうのである。
(因みに、自由口も設けられており、たとえ刑罰中でも自由に去っても良い事になっている)
この刑罰に処された小鬼に対しては、看守役の小鬼でさえも同情の念を禁じ得ない程に憐憫の眼差しを向けるのである。
(一人の囚人小鬼は曰く、糞団子を食す方がマシだと。このあと彼は発狂し、全身から黄色い炎を噴き上げたという)
一応緊急時には、戦力として駆り出される事もあるが、支給される装部品は使い古しか廃品ばかりである。
(それでも通常の小鬼が使う物に比べ、幾分真面な物ばかりであるのだが)
当然、食事も劣悪な物が与えられるのは言うまでもない。
主に仕留めた生物の臓物や端肉、そして腐敗が進んだパンなどである。
(もともと悪食の小鬼は、然して気にも留めず喜んで食す)
後述する正規兵に比べ、遥かに粗雑な扱いを受け嘲笑の的となる懲罰者。
それが、囚人小鬼である。
―― 囚人小鬼の装備品 ――
古びた小剣・短槍・手斧・短弓・小槌
使い古され、損傷も激しいナマクラ同然の代物。
それでも石や木の剣に比べれば鉄製な為、充分武器として機能する。
これ等は、他の小鬼が作成し使い古された物が大半を締める。
古い小盾・中盾
酷使され、破損だらけの盾。
それでも盾としては一応機能し、端材や廃材で補修するだけの自由は与えられている。
主に樫の木で構成されている為、加工は比較的容易だ。
囚人用の鎧一式
囚人と正規兵を区別する為の鎧防具。
主に布鎧だが、要所で低品質の皮や木材が使われ防具としての体は保っている。
たとえ囚人でも戦力としては、みなされているという事だ。
……
―― 正規兵(ゴブリンソルジャー) ――
小鬼兵士とも言う。
この組織に入団し、日の浅い者。
または正規の組織員として認められた者。
懲罰期間を終え罪を清算した者。
つまりは通常の兵士の事を指す。
充分な訓練を積み、真面な装備も与えられた小鬼の兵士は、下手な新人冒険者よりも優れた戦闘力を発揮する。
大抵の小鬼兵士(ゴブリンソルジャー)は、鋼鉄等級の冒険者戦士と真正面から打ち合える程だ。
ここで初めて真っ当な組織員として扱われ、組織の恩恵を一身に受ける事が許される。
役割りは多岐に渡り、戦力として前線を担う者や生活面を支える者など実に千差万別である。
この階級でダークゴブリン手製の『肩当て』が進呈され、真の一員として認められるのである。
(彼等の忠誠心は、ともかくとして)
―― 正規兵―小鬼戦士(ゴブリンファイター) ――
正規兵の中でも、特に個体戦闘力に長けた小鬼を指す。
小鬼戦士自体は、他の部族間にも存在し巧みに武器を使いこなすが、彼等は基本的に鍛錬や武具の手入れなどという面倒な事はしない。
しかしダークゴブリン軍に所属する小鬼戦士は、その限りではない。
主な理由だが、敵から奪った物にせよ組織内で支給された物にせよ、彼等は改良を重ね自身に見合った武器へと”強化改造”を施すからである。
精魂込め手を加えた代物には、幾許かの愛着が沸くのだろう。
それ故、ダークゴブリン軍内の小鬼戦士は自前の武具を大事に扱う者が多い。
更に、この組織では訓練が奨励されており、高い実力者ほど好待遇を受ける事が出来る。
そういう状況も手伝い、組織内の小鬼達は鍛錬を重ね実力に磨きをかけるのである。
しかし個体戦闘力に優れる半面、連携を活かした集団戦法が御座なりとなってしまい、集団行動を苦手としてしまった。
小鬼戦士同士で組ませる場合は、基本的に少数(2~5体)で編成する。
或いは、小鬼兵士の部隊に1体を組み込ませる場合が殆どである。
また指揮能力もお世辞には高いとも言えず(例外もあり)、指揮官として抜擢される事は少ない。
そういう特性の為か、彼等は総じて”遊撃任務”に就く事が多い。
―― 正規兵―特化小鬼兵士(
数多の小鬼兵士。
その中でも特定の武器に特化した役割を担う。
彼等は、特定の武器の扱いや運用に習熟し、それに伴った訓練に明け暮れている。
幅広い武器の扱いは苦手で、臨機応変な乱戦には不得手だ。
しかし、限られた状況下で運用される武器戦術は、時に驚異的な効果を生み出す事も少なくはない。
個体戦闘力に長ける小鬼戦士とは対極に位置し、主に集団戦にて力を発揮するが、指揮官の運用次第では格上の軍とも渡り合える。
基本的に、他の兵種や部隊と連携する事で真価を発揮する。
長槍小鬼(ゴブリンスピア)
槍の運用に特化した小鬼兵士の総称。
しかし個体戦闘の技術ではなく、あくまで集団戦を想定した扱いに関してだ。
陣形を組み長槍を前へと突き出し、槍衾の壁を生成する。
これにより敵騎馬隊に対し備えるのである。
または一斉に
片手に円盾を携えた、
小鬼兵士に比べ、比較的な長い槍を装備する事が多い。
長槍(ロングスピア)、鉄小槍(ピロム)、戦槍(パイク)など。
弓小鬼(ゴブリンアーチャー)
弓、弩の扱いに特化した小鬼兵士の総称。
主に射撃戦で活躍する。
射撃道具の扱いに長ける半面、接近戦能力は必要最小限しか備えていない。
短弓程度なら通常の小鬼兵士も扱うが、彼等は更に扱いの難しい飛び道具を運用する事が出来る。
主に軍団戦にて組み込まれるが、一つの班に1~2体編成され援護射撃を担う場合もある。
また弩、重弩を装備した部隊も存在し、長弓や強弓以上の威力を誇る
しかし弩や重弩などは、次弾装填速度は非常に遅く隙も多い。
ダークゴブリンも、その弱点には懸念を示しており部下には原則的に一斉射撃を禁じ、撃ち手を交代させ断続的な射撃戦を徹底させた。
だが剣の乙女軍との戦で功を焦ったのか、隊長職の小鬼は一斉射撃を敢行し、結果的にソラールやジークバルド率いる騎馬隊に全滅させられた。
盾小鬼(ゴブリンガーダー)
盾運用に特化した小鬼兵士の総称。
主に盾防御で敵攻撃を食い止める、所謂タンク役を担う。
また使う盾は金属製の、中盾、大盾、巨大盾で重量も嵩む。
その為、筋力と持久力に長けた小鬼しか務まらない。
両手で盾を保持し大地を踏み締めた防御特化の陣形は、深淵の監視者が得意とする狼の剣技さえ食い止めた。
基本的に部隊間で防御陣を展開するが、通常班に配置される事もある。(1~2体)
盾を重視した装備の為、武器は精々小型に絞られ攻撃面は低い。
だが高い身体能力を活かした
盾に意匠を凝らし、自己主張を誇示する小鬼も存在する。
騎乗小鬼(ゴブリンライダー)
飼い慣らした狼や魔犬(悪魔犬)に騎乗する小鬼兵士の総称。
獣の脚力を利用する為、非常に機動性に優れ戦場を自由に駆け巡る。
雑多な部族にも騎乗小鬼は存在するが、真面な戦術など思い付きもしない。
しかしこの組織は、単純ながらも騎乗戦術の編み出しに成功している。
部隊単位で行動し敵の注意を引き付け、その隙に別の騎乗小鬼が強襲を仕掛ける。
決して接近せず部隊で連携し合い、機動力を生かし矢が尽きるまで全方位からの射撃戦を徹底させる。
また小鬼と狼の組み合わせは、人間の騎兵に比べ小柄で小回りも効く。
それ故、起伏に富む地形や森林でも優位に立ち回る事が可能なのだ。
獣の機動力を生かし、伝令役や物見専門の小鬼も騎乗する事がある。
―― 上級兵―小鬼統率者(ゴブリンエリート・ゴブリンリーダー) ――
正規兵よりも1ランク上の階級を持つ、小鬼の総称。
同名を冠する雑多な巣穴の統率者も存在するが、この組織の彼等とは実力に大きな壁が存在し比較にすらならない。
(そもそも小鬼兵士でさえ、雑多な群れを統べる小鬼統率者を越える実力者揃いである)
主に班長(分隊長)クラスの役職を持つ。
正規兵の中から才覚と経験を積み、実力を身に付けた者が到達できる。
本来自分勝手な小鬼達だが組織全体が仲間意識を重視する気風に晒されている為、この領域に到達する頃にはすっかり染まってしまう。
彼等の中には、稀に呪文の習得に成功する者も存在する。
(それでも1つか2つが関の山だが)
階級に伴い当然、待遇も良くなる。
―― 小鬼呪文使い・小鬼呪術師・小鬼召喚士(ゴブリンマジシャン・ゴブリンシャーマン・ゴブリンサモナー) ――
言わずもがな、真言魔法や精霊術の行使を可能とした小鬼達の上位種。
彼等は知識に長けた小鬼の進化形態の一種としても認知され、基本的な部分は変わりない。
希少価値の高い呪文使いの彼等は、小鬼兵士に比べ若干上の待遇を与えられる事も多い。
基本的には、上級兵と同等の階級扱いとなる。
(我等は1階級上なのだ!…と怒鳴り、正規兵を殴り付ける輩も少なからず居る)
組織間での運用に、彼ら呪文使いの存在は決して切り離す事のできない存在だが、呪文使いは総じて生息数が少ない傾向にある。
そこでダークゴブリンは、呪文使いの育成にも腐心し一定数の確保に成功した。
(それでも、全構成員の4分の一にも満たないのだが)
呪文使いの彼等が部隊間で行動した結果、天候さえ左右する現象を引き起こし、剣の乙女軍に多大な損害を与えた。
小鬼召喚士に関しては、呪文使いよりも遥かに少数しか所属していない。
それ故、魔神といった種族の召喚が叶わず、精々が悪魔犬レベルに留まった。
人型の下級魔神は、使役魔法で傀儡化し労働力として飼い慣らした。
だが小鬼召喚士は、召喚する術法に長けているだけでなく使役魔法の造士にも深い事が判明している。
ダークゴブリンは其処に目を付け、狼や悪魔犬などの騎乗用の使役に彼等を担当させ同時に好待遇を与えた。
―― 指揮官―小鬼部隊長(ゴブリンコマンダー) ――
複数の班を統べる、部隊長クラスの指揮官。
この階級に到達するには、通常の小鬼(小型種)では少々厳しい。
この役職に就く小鬼は、最低でも”中型種”と呼ばれる進化系統に到達する必要がある。
全体を統べる状況把握能力と高い知性が必須とされ、理不尽な状況にも耐え忍ぶ忍耐力も備えていなければならない。
ただ単純に、武力一辺倒のホブやチャンピオン(小鬼戦士も含む)では務まらないのだ。
単純武力よりも、総合力や統率力が重要視される。
特別な服装や装備品に加え、識別し易い様に配慮された”上質な腕章”が授けられる。
また戦闘部隊だけでなく、生活班や偵察班にも同様の指揮官階級は存在する。
……
何も戦闘だけが、組織の運営に寄与している訳ではない。
当然の事ながら、生活を営む為には様々な雑務が必要不可欠なのは言うまでもない。
この部隊を統括し指導するのは、書記小鬼が担当している。
―― 偵察班―物見小鬼(ゴブリンスカウト) ――
文字通り、偵察を主任務とし情報収集を専門とする小鬼の総称。
また伝令役も兼ねている。
基本的に身軽さと慎重さに加え、隠密行動に長けた技術が要求される。
更に俊足も重視され、敵地への潜入には速さが欠かせない。
それに伴い装備品も隠密に適した物が与えられ、闇夜に紛れる色合いや地形色に扮した軽い衣服が支給される。
敵地の偵察に欠かせない、望遠鏡、手鏡、信号弾といった小道具も彼等の常備品だ。
戦闘力は重要視されていないが、時には暗殺をも辞さない場合と護身用に、短剣や吹き矢なども用意される。
基本的に俊足で身軽な彼等だが、伝令や遠方へと移動する際は狼や獣に騎乗する事もある。
この部隊は、バンダナ小鬼の管轄下にあるが統率し切れておらず、専ら書記小鬼が管理する事が多い。
小さな集落や村など格好の的であり、住民など物見小鬼の存在すら気付かず日々を生きているのである。
―― 生活班 ――
多種多様な雑務を行う部隊。
小鬼の中には、戦闘力の低い個体も存在する。
或いは負傷により戦線離脱を余儀なくされた小鬼も、この部隊に移籍となる。
彼等の任務は多岐に渡り、ある意味、戦闘よりも才覚が必要かも知れないのだ。
生活に必須な家具類を作り出す者。
武具や兵器といった、戦闘に必須な製造・加工職に従事する者。
衣服を生み出す者。
加工に必要な、加工道具を作る者。
建築に造士が深い者。
治療薬や医療品を作り出す者。
食材を加工し調理を担う者。
有用な薬草や農作物を栽培する者。
何よりも重要視されるのは、器用さに加え技術力である。
しかし単純な腕力と持久力も必要なのは世の常であり、戦闘に向かないホブゴブリンなども少数が、この部隊に所属している。
戦闘班では彼等を子馬鹿にする小鬼は多い。
だが彼等の存在無くしては、組織など無残に瓦解する。
故に、ダークゴブリンは彼等の存在を重要視し、より良い環境と待遇を与えていた。
だが決して戦わなくてもよいという訳でもなく、剣の乙女軍との決戦では彼等も戦線に投入されている。
……
―― 小鬼軍の装備品 ――
ダークゴブリン軍で用いられる装備品の数々。
これ等は専用装備ではなく、兵士から側近まで共通で使用される。
所謂普及品だが、武器としての性能は実用水準に達する。
……
カトラス(舶刀)
主に船上で使われる、片刃の湾曲剣。
人間から見れば小型サイズだが、小柄な小鬼にとっても使い勝手が良く、標準兵装として支給されている。
全構成員に支給される標準兵装とも言える。
手槍(ハンドスピア)
取り回し重視の短い小型の槍。
しかし普及品とはいえ、歴とした金属製の武器には違いない。
一般的な小鬼兵士は、カトラスとハンドスピアがセットで支給される。
(自分で好きな武器を作成し使いたいのなら、上に申請する必要がある)
長剣(ロングソード)
人間の使う物と同等の品。
小鬼にとっては長大なサイズとなる為、大剣として扱われる。
基本的に鉄製だが”鋼”を生成する技術と設備も設けられている為、手間暇さえ惜しまぬなら”鋼”で強化する小鬼も居る。
これを使いこなせる程の小鬼なら、この剣も非常に強力な武器と化す。
曲刀(シミター)
湾曲した刀剣。
引く力を利用し、斬り裂く事に向く。
しかし筋力よりも技量が重視される為、この武器を使う個体は少数に限られている。
他にも、ファルシオン、シャムシールなどが作られている。
短弓(ショートボウ)
連射性を重視した射撃武器。
雑多な小鬼が作るような粗悪品ではなく、伸縮性に富む木材と丈夫な弦を使い作成された真っ当な武器だ。
また矢も、木製の細枝に鉄製の鏃で補強し、冒険者の軽革鎧ごと痛痒を与える威力も確保している。
一般的な小鬼兵士が射撃戦に移行する際、大抵この弓が使われる。
手斧(ハンドアクス)・棍棒(クラブ)
小型ながら鉄製の手斧に、金属で補強された木製の棍棒。
単純な構造だが、打撃力に優れた武器。
小鬼も個体差があり、腕力に優れた者もしばしば出現する。
そういう小鬼は、皆好んで斧や棍棒を装備する事が多い。
戦斧(バトルアクス)
戦闘用に作成された大型の斧。
肉厚の刃は、切るというよりも叩き潰すといった趣が強く、粗暴な小鬼達には
小鬼にも戦斧を希望する者は多いが、如何せん重量があり扱い切れずに足枷と化す事が多い。
この武器はホブゴブリンからも注目されおり、小鬼という種族は押し並べて筋力に頼る傾向が強い事を示唆しているのかも知れない。
戦嘴(バトルピック)
嘴の様な突起物と打撃用のコブを備えた武器。
武器の構造上、特殊な使い方が要求され筋力を含め技量も重視される。
しかし使いこなせれば、鎧の上から打撃を与え、嘴部分で盾を掻い潜り攻撃する事も可能だ。
だが、これを装備する小鬼は少ない。
長柄武器(ポールアーム)
筋力に長けた小鬼なら、長柄武器を選ぶ個体も存在する。
長物ゆえ、リーチに優れる分間合いの調整が必須となり扱いは難しい。
主に、槍、長柄斧、大鎌、薙刀、斧槍などが用意されている。
これ等の武器は、ホブやチャンピオンも好んで装備する。
投げ網
小型の投擲網。
主に敵の行動を阻害する為に用いられる。
完全に拘束できなくとも、一時的に動きを制限できれば優位に戦況は傾く。
また網に油を染み込ませ刃物に対し投げ付ければ、滑った刃物は切れ味を鈍らせる。
その特性を利用し、ファランの不死隊相手に活躍した。
改良品として鉄糸で編んだ網も作られたが、量産には向かなかった。
投げナイフ
小さな投擲用のナイフ。
持ち柄もなく、刃のみを象った単純な武器だ。
故に持ち運びし易く、小鬼兵士は6本これを持ち歩く。
木を削った普及品の他に、鉄を薄く伸ばした改良品も存在する。
煙玉
冒険者に流通している物と同様の品。
松脂と硫黄を組み合わせた物で、点火する事で毒煙を生み出す。
目くらましや脚止めにも使用される為、局面によっては非常に重宝する品だ。
彼等を知らない冒険者は、思いもよらない筈だ。
まさか小鬼が、これを使って来る事など。
痺れ瓶
麻痺性の神経毒を詰めた小瓶あるいは小壺。
相手に直接投げ付け、痺れさせる事で動きを制限させる。
また、鏃や武器に塗り毒薬として用いる事も。
格上の魔神が襲撃してきた際、これで時間を稼ぎ戦線を持ち堪えた。
また余談だが、ファラン不死隊のグルー相手にも効果を発揮している。
(因みに深淵の監視者には効かず、反撃の的となってしまった)
バックラー
受け流しに向く、小型の盾で小鬼にとっても装備し易い。
中央に競り出したコブは、パリィに向く。
しかし、この技術を使いこなせる小鬼は少なく、大抵は受け止めるだけに留まった。
ラウンドシールド
受け止めに向く、中盾。
木製の円盾に、革張りと金属の縁で補強した物。
やや大型化したが、木製であるため比較的軽量。
それ故、使い勝手も良く円盾を持ち出す小鬼も多い。
小鬼戦士は、盾を装備する事が少ない。
それと言うのも、防御する位なら攻撃を優先する傾向が高いからだ。
恐らく小鬼という性格上、攻撃性の強い種族なのだろう。
元々、改良型の鎧一式を身に着けた事で、充分な程の防御力を手にする事が叶った。
その時点で、小鬼戦士は防御に関して及第点と見なす者が多い。
それ故、態々片手を塞いでまで盾防具を装備しようなどとは思わないのである。
これもある種の”増長”なのだろうか。
一般防具一式
正規兵用の鎧一式。
胴鎧は運動性を重視する為、薄い革で構成されているが急所は堅革が使用されている。
兜は薄い板金で補強され、軽量ながら一定の防御効果を備えた。
手甲具足も同様に、普及品ながら防具として機能し、戦闘にも十分耐え得る。
また鎧下に着る服も完備され、小鬼の中には服に刺繍などを施し、ちょっとしたオシャレを楽しむ者も居る。
重防具一式
持久力に優れる小鬼ならば、重い甲冑を身に着ける事も出来る。
堅革製に金属板や鉄鋲で補強した鎧(スタデッドレザーアーマー)が主な割合を占め、防御力と運動性の両立を図っている。
手甲具足や兜も同様。
また金属製の比率を引き上げた鎧一式も生産され、重量が嵩むものの小鬼戦士が好んで着込んだ。
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―― 兵器 ――
戦線を支えるのは、個人用の武器だけではない。
ダークゴブリン軍は、兵器の価値も見出し生産に着手した。
一応雑多な小鬼でも、極稀に兵器擬きを生み出す事もある。
(荷車を改良した手押し式の木組み衝車が代表例)
あらゆる面に秀でたこの組織が、兵器を生み出さない筈がないのだ。
……
投石器(小鬼用)
一般にはカタパルトとも呼ばれている。
石などを投擲して、敵の人馬もしくは城などの建築物を標的とし射出攻撃する野戦兵器である。
構造の関係上、小鬼単体で運用する事は不可能で複数の小鬼が総出で稼働させる必要がある。
取り回しや連射性に賭けるが、小鬼がこういった野戦兵器を使用する事例は極稀で、軍団規模で使用する事など前代未聞であった。
稼働率は良好であったものの命中精度の面では、人の造った物よりどうしても見劣りしてしまう。
それ故、複数纏めた岩石を投擲し、散弾状に散布する事で面制圧を強めた。
奪い取った書物には運良く絵付きで記されてたため、解読が比較的容易だった。
そういった理由も手伝い、早期に作成と量産が叶い彼等の戦力増強に一役買ったのである。
冒険者陣営に多大な被害を及ぼしたが、巨人化したゴブリンスレイヤーによって蹂躙され粉砕された。
……
弩砲(小鬼用)
一般にはバリスタとも呼ばれている。
てこを用いて弦を引き絞り、石や金属の弾、極太の矢(あるいは矢羽のついた槍)、複数の小型の矢、火炎瓶などを打ち出す野戦兵器。
人族(銅等級冒険者の一党)の弩砲を持ち帰り、研究と模倣を重ね小鬼用へと創り上げた。
数を優先させる為、造りそのものは簡素で粗製な部分が目立ち、命中精度や耐久性は低い。
(膨大な金属資材を必要とする為、木材や既存の素材で代用)
しかし、敵の陣形と流れを読み的確に運用する事で、性能以上の戦果を齎した。
確かに粗製品は、長期の運用には向かない。
だが必要な場面で機能さえすれば、役割は充分に果たせる。
剣の乙女軍との緒戦では有利に立ち回り活躍した。
猛威を振るった野戦兵器の一つであったが、巨人化したゴブリンスレイヤーにより根こそぎ破壊されてしまう。
……
フックショット(小鬼用)
小鬼が製作した、引っ掛け鉤(フック)を射出する銃型の道具。
引き金を引く事で、内部に備わったバネとスプリングの力でフックを発射する。
フック先端部は鋭いトゲと返し刃が付いており、対象物にめり込み返し刃で維持させる。
また銃身下部に備わった別のスイッチを押し込む事で、一気にフックを巻き上げる事で銃身へと巻き戻る。
あまりお目に掛る機会が少なく、一見すると小鬼が開発した様に思えるが実際は只人の技師が開発した代物。
ただ非常に特殊な道具で、物資の流通が盛んな王都でも市場に並ぶのは極稀である。
物に引っ掛け引き寄せる・殺傷武器として使用する・壁に引っ掛け此方から引き寄せられる等、使い方には創意工夫が求められるだろう。
だが小鬼用に合わせて造られている為、人がそのまま利用するには射出力も牽引力も些かに心許ない。
只人が運用するには、技師による改良が必要となるだろう。
決戦の後、幾つか回収された内の一つは、一人の剣士の要望で彼に譲渡された。
一方設置型やクロスボウ式も作成され、夢魔部隊襲撃で使用されている。
小鬼に比べ圧倒的な力を有す魔神の動きを制限する為、痺れ液を塗付した鉤縄を打ち込み後部には丈夫な縄を括り付け、一時的にとはいえ拘束と弱体化に成功した。
鉤縄だけでなく
大型の網は、端にアンカー状の突起物を取り付ける事で地面に固定し易く工夫されている。
ダークゴブリンは、秘かに視野に入れていたのかも知れない。
何時かは訪れる魔神軍との決戦に――。
……
狼・魔狼
大型のイヌ属で、ハイイロオオカミとも呼ばれている。
狼の帯状の毛皮は、通常、白、茶、灰色、黒が混ざっているが、極地の亜種は殆ど白である事もある。
基本的に群れを成し、本来なら人を積極的に襲う事はない。
しかし、小鬼や混沌勢が使役し飼い慣らす事例も確認され、そうなれば恐るべき存在となり冒険者の脅威と成り得るであろう。
一方、異界に住まう”魔狼(悪魔犬とも)”と呼ばれる混沌の魔獣。
狼を遥かに超える体躯を有し、優れた脚力と咬筋力を誇る。
主に混沌勢に飼い慣らされ、明確な殺意を以て人に襲い掛かる。
単体でも非常に脅威で、通常は小鬼如きに使役できる存在ではない。
また最低でも4人以上の白磁等級一党で、漸く対峙が叶うとも言われている恐るべき魔獣だ。
大型に似合わず非常に俊敏な為、騎乗用として使役できれば頼もしい戦力となる。
それらを飼い慣らした上で更なる訓練と調教を施す事により、騎乗用として運用が可能となった。
使役魔法で無理やり従属させる事も考案されたが、それはあくまで緊急用として極力避けられた。
常に使役魔法が使える状況とは限らないからだ。
人族の模倣は小鬼にとっても不本意であったが、やはり伝統的な訓練法と調教を実施し積み重ねる事を重視した。
騎乗用として活用できた彼等は、小鬼の騎兵を生み出し更なる軍備の増強と機動力を得るに至った。
また戦闘のみならず偵察や情報収集にも役立ち、彼等の活動範囲は大幅に拡大する事となる。
飼い主であった小鬼が討たれ生き残った彼等は当然野生に帰属する事となるが、悪魔犬の放置は危険が伴うだろう。
一刻も早い冒険者による討伐が望まれる。
……
小鬼戦車(ゴブリンチャリオット)…小型・大型・専用大型
小型
騎乗戦力と並行して取り掛かったのは、更なる火力と突破力を重視した戦車と呼ばれる兵器群である。
機動性と突破力を両立すれば、歩兵よりも遥かに高い戦力を発揮する。
小型のものは、箱形の乗り物に狼や魔狼を繋げ動力源とし、小回りと加速に優れていた。
手綱を引く小鬼と弓矢・弩を装備した小鬼(2~3体)が搭乗し、機動性を活かした射撃戦を仕掛ける事が出来る。
また車輪側面部分には斬撃用のブレードを備え、擦れ違いざまに冒険者を殺傷する事も可能。
車体部分に若干の対弾性も備わっている為、小柄な小鬼が身を屈めば全身を隠す事が出来、矢などの飛び道具から身を守れた。
突破力を期待されたが、大盾を装備した陣形に阻まれ敢え無く転倒し無残な最期を迎えた。
慢心ダメ、絶対…!
大型
箱形の構造部を備え、内部はペダル式の機構を備えている。
漕ぎ手は、持久力と脚力に優れたホブゴブリン(一体)が担い、比較的長時間の可動が可能。
先端部分に刺突用の衝角を設け、車輪部分にもブレードが装備されている。
また箱型の装甲は木板が主だが要所は金属で補強され防御力も高く、並の矢程度ではビクともしない。
主に装甲と重量を活かした突撃戦法で敵陣を切り開き、車体内部には多数の小鬼が乗り込み、現代社会でいう輸送装甲車の役割も併せ持つ。
一方で大型である反面、旋回性能は低い。
車体上部にはハッチが設けられ、外部にはゴブリンが複数陣取り飛び道具を装備する事で射撃戦にも対応可能。
しかし大型である弱点、内部から外部に向けての視界は良好とはいえない。
訓練を受け知性に長けたとはいえ、基本的には自分勝手なのが小鬼という種族だ。
精霊魔法と地形を生かした冒険者側の罠で、結局は全滅の憂き目に遭った。
専用大型(格闘ホブ専用)
大型戦車を更に強化し、車体上部には個人用の旋回式弩砲が設置されている。
格闘ホブ専用に拵えられた特別製の戦車。
動力源は大型戦車と同じくホブゴブリンが担当するが、此方は4体のホブが漕ぎ手を担い桁違いの機動力を誇る。
相変わらず小回りは劣悪だが装甲と質量は増大し、生半可な壁など容易に粉砕できる。
旋回式弩砲には高威力の爆裂ボルトが装填され、一種の火砲と化している。
中の搭乗者も大半はホブゴブリンで構成され、多くの冒険者に深い痛手を負わせた。
快進撃を続けたものの、やはり大型である事が災いし、最後は精霊魔法の地形変化を利用され無力化された。
中に居た小鬼達は大混乱に晒されたが、格闘ホブの助力で歪んだハッチを解放され皆が無事に脱出している。
(それでも半数以上は戦死した)
これ等戦車の作成には実の多くの
だがダークゴブリンは、敢えて金品ではなく資材を優先的に略奪した。
全ては、これら兵器や拠点構築の為、ひいては小鬼という種族の未来を憂いての事である。
……
翼竜(ワイバーン)
下級の竜族に分類され、小柄に似合わず巨大な翼で飛行を得意とする。
高速の飛行速度に加え、炎のブレスと自身も高い炎耐性を持つ。
竜属に分類されているが、翼の生えた蜥蜴擬きと蔑称する地域も存在する。
総じて荒い気性で獰猛な為、飼い慣らし調教するには一筋縄ではいかない。
しかし、飛行能力は非常に有用な移動手段で、どの陣営・国でも頭を悩ませながらも使役しようと腐心する。
それは混沌側にも当て嵌まり、使役するにも苦労が絶えない様だ。
そこで魔神軍は『医療教会』の協力の下、特殊な薬液を注入し、知性と理性の拡大を施し漸く使役へと漕ぎ付けた。
一部の翼竜は、ダークゴブリン側にも譲渡された。
ダークゴブリン軍が危険を冒してまでファランの不死隊との戦に参加したのは、この特別報酬を見返りとして要求していた為である。
翼竜を飼い慣らす中で問題となるのは、餌に関してだ。
しかしこれは魔神軍から定期的に食料が支給される為、然したる問題には成らなかった。
5体の翼竜を得たダークゴブリン軍は、早々に部隊を編成し手始めに、取引相手でもあり険悪な間柄となっていた山賊の砦を襲撃し制圧した。
総勢100を超え下手な街の自警団よりも強力な山賊集団だったが、空からの攻撃など想定しておらず一方的に殲滅。
空中兵力の味を占めたダークゴブリンは、剣の乙女軍の本陣急襲を画策したが、事前に対策された対空連弩により壊滅し失敗している。
因みにダークゴブリンの駆る翼竜には『アルド』という名が付けられ、他の翼竜に比べ取り分け優秀な個体であったという。
主な搭乗者は、ダークゴブリン、長弓小鬼、バンダナ小鬼、他2体の上級階級の小鬼である。
飛行可能な翼竜は、最高の騎乗手段としても重用され、王都軍でも僅かに使役されている。
……
ここに挙げるのは、特殊な武器だが生産数が少なく戦線には投入されなかった。
連弩(小鬼用)…携帯型
リピーティングクロスボウとも呼称される。
連射機構を備えた携行式の
しかし小鬼用はレバーを前後に退く事で頂部にある弾倉が作動し、ボルトが装填される仕組みとなっている。
連射機構を備えた弩は、代償に本来の威力を喪失してしまった。
とはいえ、数を揃え連携と陣形を駆使して運用すれば充分な弾幕を張る事が可能で、敵側にとって脅威と成り得る。
主に近~中距離での運用に適している。
ダークゴブリン残党軍は、時間を稼ぐ為に山林の地形を利用し的確に運用した。
惜しむべくは生産数が非常に少なく数丁しか完成していない点だ。
それでもまだまだ試作品という意味合いが強く、ここで真面に作動したのは殆ど幸運と言ってもいい位だった。
もし更なる改良を重ね稼働率と生産数さえ解決していたなら、戦況は、どう傾いていたのだろう。
シールドクロスボウ(小鬼用)
盾を取り付けた弩。
やや視界が狭まるが、相手の攻撃を凌ぎながらの射撃が可能。
取り付ける盾の材質は複数種に及ぶが、限定された場面で使用するなら木板でも十分機能するだろう。
これも撤退時間を稼ぐために、山林地で小鬼軍が使用した。
地の利は彼等にあり、追撃する冒険者は思いのほか手こずった。
彼等は技術力だけでなく運用する戦術眼も併せ持っていたのだ。
やはり生産数が少ないが、盾を取り付ける機能を追加しただけなので、比較的数を揃える事が出来た。
しかし視界は狭まる為、誰でも運用できるという訳でも無い。
盾を取り付けた分、重量と持ち運びという面に不便が生じた。
銃
ダークゴブリン軍は、銃の開発にも着手していた。
既に現物は幾つか入手していた為、模倣した量産品を生み出そうとしていたが、この水準までくると構造が複雑化しており解明するには相当の時間を要した。
幾つか試作品は出来上がり、弾丸を発射させる事には成功したが実用水準に満たないものばかりが生産される。
しかし弾丸の射出自体には成功していたのである。
これは近い将来、実戦配備も決して不可能ではないという事を示唆しており、万が一『銃』が量産され全ての小鬼が運用していたらとすれば……。
いや、彼等は壊滅し冒険者側は勝利したのだ。
これ等は軒並み回収され、小鬼の生態や可能性の貴重な資料として利用されるだろう。
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―― その他 ――
無論、武器だけでなく生活を支える要素は幾つも存在する。
生活物資の獲得だが、組織の規模が大きくなるにつれ維持が難しくなるのは世の常である。
基本、小鬼は略奪民族だ。
小さな集落や村を襲うならまだ安全だが、獲得できる戦利品には乏しい。
半面、街や都市など襲おうものなら物資は豊富だが多大な危険が伴い、人族側の的となるのは必至だ。
そこでダークゴブリンが考案したのは、人族が得意とする”金の力で売買”を行い物資を獲得するという方法である。
幾度にも渡る襲撃で貴金属(金銀の貨幣やインゴット・宝石)の獲得にも成功した。
其処で人族側と取引する事で、物資の獲得へと至った次第である。
流石に秩序側と直接接触する事は出来ず、混沌側の人族(悪徳商人や山賊)を経由して取引を行った。
売買(正確には物々交換に近い)が功を成したのか、安全な物資獲得に成功する。
更に栽培といった生産活動にも手を付け、恒久的な食材の確保にも努めた。
(結局規模に見合わず、農業だけでは賄い切れなかったが)
主に根野菜やトマトなどが栽培され、また治療薬となる薬草なども数種類栽培された。
……
飲み物・食事類
小鬼も生物である以上、食事を摂取し生命活動の糧とするのは言うまでもない。
しかし従来の小鬼は、基本的に仕留めた生物をそのまま捕食する事が多く、凡そ調理の概念など無きに等しい。
一応、火で焙り焼くという行為は理解しているが、面倒臭がりなのか然して気にしないのか殆ど生で胃袋へと納めてしまう。
毒は効くくせに不衛生な環境でも平気なのは、何とも不思議な種族だ。
だがダークゴブリン軍は、調理で食材に彩りを加える事を理解しており、単純ながら煮込む事や炒めるといった調理方法を確立していた。
主な食事となるのは、やはり『シチュー』であろう。
鍋に水を注ぎ、肉や野菜などを詰めじっくりと煮込む。
味は殆ど素材そのものが適用されるが、一応”塩”といった原始的な調味料は手に入れていた。
また炒めるといった調理法で、拙いながらも『ステーキ』を作り出し最上級の御馳走とされた。
惜しむらくは、彼等には調味料が圧倒的に不足していた点であろう。
それでも従来の食事に比べれば遥かに豪勢で、小鬼達の食事事情は一気に改善したと言っても過言ではない。
飲み物は基本的に”水”だが、略奪品の中には複数種の酒類なども含まれていた。
下っ端に振舞われたのは主に、麦酒(エール)や葡萄酒で小鬼達は喜んで愛飲した。
嗜好品としては主に果実の類だが直ぐに痛む為、大抵は乾燥したドライフルーツに生成される。
乾燥した果肉は長持ちし、彼等の嗜好品として重用された。
家具類
ダークゴブリン軍の拠点内には、簡素ながら寝台が設けられている。
主に木の台に、藁(干し草)と布を敷いた単純な物であるが、地面に直接寝るよりは遥かに快適だ。
流石に全ての小鬼分を賄う事は出来ず、適当な箇所に干し草を敷いただけの物が大半である。
それでも雑多な巣穴よりは遥かに良環境で、小鬼達は喜んで寝所へと就いた。
また椅子や机といった調度品も用意され、様々な用途に利用された。
略奪した物もあれば売買で入手した物や小鬼自らが作成した物まで、千差万別に渡る。
衣類
流石に生産力を身に付けたダークゴブリン軍だが、糸を紡ぎ出すという細やかな作業までは再現できなかった。
そこで予め衣服や布を手に入れ、それ等を加工する事で簡素な衣服を作り出していたのである。
防寒の為や鎧下に着込み肌を保護する為に。
建築
ゼロから建造物を創るのは至難の業で、あばら家などを補修し改良する事で新たな施設や部下用の居住区とした。
(一応ゼロからでも可能だが、膨大な資源と時間が割かれるので極力敬遠した)
廃村を利用した拠点は、主にその方法が取られている。
それでも下手な素人よりも精巧で頑丈な建築技術を有し、魔神軍や夢魔たちを驚愕させた。
傷の治療
小鬼は傷を癒すという手段に乏しい。
というよりも無知に等しい。
精々”布や薬用の葉”を包帯代わりに巻き止血する位しか知らない。
だが不衛生な小鬼は、汚れた布でも平気で使用し、傷口から雑菌が侵入し更なる悪化を招くという事態も頻発していた。
それはダークゴブリン側も同様で、清水で傷を洗い流し清潔な布を包帯として活用する位の知識しか備わっていなかったのである。
略奪した物資にからは、幾許かの治療薬も入手できたが、知識も用法も分からず仕舞いで上手く活用できず数も限られていた。
それを憂慮したダークゴブリンは、手に入れた書物を読み漁り可能な範囲で治療薬の生成に取り掛かった。
多数の部下と共同で、研究開発や加工に勤しんだのである。
流石に当初は、
アロエ。
肉厚の葉には、ゲル状の物質が多く含まれており、それらを磨り潰しゲル液を抽出、その液に適量の水を加え鍋で煮沸――。
その際生じる”アク”を抜き取り低温で抽出液を”ろ過”し冷ました後、包帯等に塗布し傷口へ巻き付ける事で、傷の治りが早まった。
多少効果は弱まるが、患部に葉その物を貼り付け布で固定するだけでも、効果を確認出来た。
火傷の治療にも効果を発揮する為、火による痛痒にも効果を発揮した。
ダークゴブリンは、アロエの薬液を浸し染み込ませた包帯を常備している。
体質によっては
オトギリソウ(弟切草)。
多年草で、生葉や茎の汁を塗布薬として使用。
また日干しにして煎じたエキスは、服用液として鎮痛剤や神経痛にも効果がある。
名の由来は東国の古い伝承から伝わったらしいが、ゴブリンにとってはどうでもよかった。
バジル。
葉に利用法があり、一年草でハーブの一種。
乾燥させた葉を細かく砕き、食事などに混ぜ込む事で摂取する。
主に、精神の鎮静効果や抗菌作用、鎮痛にも作用する。
また煎じた物を茶として服用し、体温効果を高めたり強壮作用も確認された。
食事のスパイスとしても使用可能。
他にも存在するが、当分はこれ等に代表される治療薬が活躍した。
後に、剣の乙女軍との決戦間近には粗悪品ながらも
(数が少ないため、側近や上級階級にのみ行き渡ったが)
これは魔神軍の物資供給や医療教会の狩人と取引した為、更なる知識や技術の獲得に成功した事が理由だ。
娯楽
基本残虐な小鬼達。
彼等の楽しみなど、お世辞にも高尚とは言い難い下賤な行為ばかりだ。
ダークゴブリンも残虐な面もあるが、品性に欠ける精神性は有しておらず捕虜への過剰な虐待は禁止した。
だが不満を抱える小鬼達の鬱憤を解消する為、別の娯楽を生み出す事になる。
例1 草や廃材で組み合わせた”球”を使った複数参加型の競技を考案する。
例2 楽器を奏でさせ、酒盛りや食事に彩りを与えた。
例3 身体は闘争を求めている。模擬決闘やチーム戦を催し、観戦者にも興奮を促した。
例4 女を抱く場合は当番制とし、過剰に負担を強いる事を禁じたが、末端にも行き渡る様に配慮する。
しかしそれでも部下達の不満が完全に解消される訳ではない。
やはり実戦に飢える性分らしく、人族のみならず組織の発展を妬む他の小鬼集団相手にも戦争を仕掛け、ガス抜きを図った。
人族はあくまで搾取の対象で、絶滅させる訳にはいかないのだ。
だが意外にも小鬼達は、敵対するなら混沌勢や同胞相手でも躊躇う事なく戦いに明け暮れた。
彼等にとって、戦いこそが最高の娯楽なのかも知れない。
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しかし考えてみれば、我ながらここまで、よく考えたなという感はあります。
まだ全て語り尽せていない部分は、多分にあると思います。
如何だったでしょうか?
少しでも暇潰しになって頂けたら幸いです。
デハマタ。( ゚∀゚)/