ゴブリンスレイヤー ―灰の剣士―   作:カズヨシ0509

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ドーモです。
最近体調が崩れがちで、中々ペンの進みが遅いです。
今回で、ソラール視点でのお話は終了です。
では投稿致しますドゾ。( ゚ ω ゚ )


第112話―エピソード オブ ソラール3 辺境町の防衛3・鐘のガーゴイル

 

 

 

 

 

 

ガーゴイルの斧槍

 

不死教会の鐘楼で目覚ましの鐘を守っていた、ガーゴイルの武器。

ごく普通の青銅の斧槍であり、これ自体強い力は帯びていない。

 

彼の時代は、神々が直接現世にて生を営んでいた。

その影響だろうか。

一見ただの武器でも、四方世界水準に換算すれば伝説級の性能を誇るのだ。

 

ガーゴイルの盾

 

不死教会の鐘楼で目覚ましの鐘を守っていた、ガーゴイルの青銅の盾。

元より皮膚の硬いガーゴイルには所詮飾りでしかなかったのか、物理カット率100%でない珍しい金属盾。

 

討伐された後、遺体は塵芥と化し消え去った。

だが異形や魔神が所有していた装備は、度々現世に遺る。

それ等は戦利品としてギルドに持ち帰り、調度品として飾られる事もあるのだ。

 

ガーゴイルの兜

 

不死教会の鐘楼で目覚ましの鐘を守っていた、魔法生物ガーゴイルの兜。

ガーゴイルの皮膚は元より硬く、この青銅の兜は装飾でしかなかった。

高い防御力は期待できないだろう。

 

顔を売る程の容姿に恵まれない冒険者も数多い。

それが、残酷な現実と言うものだ。

だが兜は、そんな素顔を隠す事で何かを演じる事が出来る。

彼等のささやかな虚栄は、兜と言う装備が満たしてくれた。

 

ガーゴイルの尾斧

 

不死教会の鐘楼で目覚ましの鐘を守っていた、ガーゴイルの尾を切り落とした物。

青銅の戦斧として使用することができ、元々の尾の特性によるものか大攻撃時に柄がムチのように大きくしなる。

 

只人が使うには、少々巨大で大袈裟な武器。

祈る者と祈らぬ者――。

両者の世界の隔たりは、常人では理解し難い禁域にも例えられる。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 鐘のガーゴイル。

 

( 推奨BGM ダークソウル ―― 鐘のガーゴイル )

 

今より遥か昔、火の陰りし時代、亡者が蔓延るロードランの地にて遭遇した2体の異形。

何故、今頃になり四方世界へと顕現したのか。

真相など分かりようもない。

しかし、ガーゴイルとは彫像に魔力を吹き込む事で稼働する、人造の異形という話を聞いた記憶がある。

もしそれが真実なら、今後もこういった類の異形が来襲する可能性も捨てきれない。

 

――魔神軍との繋がりは…あるだろうな。

 

この町へと襲撃してきた敵部隊――。

唯の略奪集団にしては、余りに過剰な戦力を有している。

一見、敗戦から落ち延びた騎士崩れの集団に様相を示していたが、一体何処の国の所属なのか。

ソラールの記憶する限り、該当する国などなかった。

 

――…今は、どう対応するかだな。

 

既に壊滅させた敵部隊と、鐘のガーゴイルの繋がりを詮索するのは後でも出来る。

今は、この2体を処理するのが先決だ。

過去に討伐経験のあるソラール自身は兎も角、周囲の面々は初見も同然の相手だ。

先ずは己自身が彼等の眼前で実例を作り、士気を高める必要があるだろう。

だが彼の記憶通りなら、鐘のガーゴイルの耐久性は極めて高く短時間での討伐は少々厳しい。

流石のソラールでも2体同時に相手取るのは分が悪く、1体は他の面子に引き付けて貰いたいのが本音だ。

 

「…手はあるのだが、貴公等…スマンが少しの間だけアレを引き付けてくれんか?」

 

 ガーゴイルの1体を短時間で片付ける策は、既に考案してある。

しかし、その策を実行に移すには、ソラール自身が現場を離れる必要があった。

それ故、彼が不在の間、2体のガーゴイルを味方陣営に押し付ける形となってしまう。

 

「――え~っ、アタシたちだけでぇッ…!?」

「――うっ…そ…それは…!」

 

 先程のトロルなどより、遥かに圧倒的な威圧感を誇る2体のガーゴイル。

手にした武器や巨体を目にしただけでも、一撃で即死する攻撃力を備えている事が見て取れる。

ソラールの頼みに、赤毛斥候と男槍の徒だけでなく他の味方陣営も動揺が奔った。

 

「…あい分かった!お主を信じるぞ、太陽のッ!」

「私たちの命運を託します、ソラール様…!」

 

 僅かな逡巡こそあったものの、鉱人導師と女司祭はソラールに自ら行く末を託した。

 

「引き付けるだけで良い、『いのちをだいじに』…だ!」

 

 冒険者界隈で広く認知されている作戦方針を、周囲に告げるソラール。

 

「――よっしゃ行けぃッ、太陽のッ!」

 

「――直ぐに戻るッ!」

 

 方針が決まったのなら、緩慢は命取り。

鉱人導師の掛け声と同時にソラールは別方向へと疾走し、一旦現場から姿をくらます。

 

「頼むぜ…俺等を見捨てないでくれよ…?太陽の騎士…!」

 

 少々懐疑的な想いを抱きながらも、味方陣営もガーゴイルを引き付けるべく行動を開始した。

各々が恐怖で身を強張らせるも、慎重に武器を構え敵の出方を窺った。

 

そして2体のガーゴイルも一斉に動きを見せる。

其々が、手にした長柄武器で味方陣営に襲い掛かった。

圧倒的な質量を誇る武器――。

硬質ながら強靭な肉体――。

その破壊力は凄まじく、石畳の地面を深々と抉る。

 

「――うぉッ、いてぇッ…!」

 

 抉られた地面から飛び散る無数の破片――。

鐘のガーゴイルの一撃は、幸いにも空振りに終わったようだ。

だが細やかに飛散した石の欠片が、味方陣営に飛来する。

その破片を防具で耐え凌ぎながらも、彼等は痛みに耐えた。

 

「一撃でも直撃したら、即死じゃのッ!じゃが、飛ばれたら手の出しようがないわいッ!」

 

 一方、もう1体のガーゴイルは飛翔しながら鉱人導師たちを狙っていた。

巨大な翼を用い、低空を維持しつつも長柄武器で彼等を牽制する。

低空とはいえ空中を自在に動き回り、硬質の身体に生半可な飛び道具など然して効いてもいない。

 

「――ダメッ…!全然効いてないよぉッ…!」

 

 赤毛斥候のクロスボウによる射撃も、鐘のガーゴイルは注意すら向けていなかった。

だが反撃の初動を見せ、口部から火の揺らめきが漏れ出る。

 

「――まさか、火のブレスッ!?」

「――我等に、守りを…聖壁(プロテクション)!」

 

 男槍の徒でも察知できる程に明確な予備動作は、火のブレス攻撃である事が予見させた。

巨躯から繰り出されるブレスは彼にとって初の体験だが、既に女司祭が聖壁(プロテクション)を展開。

鐘のガーゴイルから吐き出された火のブレスは、彼女の聖壁(プロテクション)に阻まれた。

 

「――なんて熱量…このままではッ…!」

 

 仮にも銀等級へと昇格した女司祭。

等級に相応しい霊力を誇るが、噴射され続けるブレスの熱量に彼女は険しい表情を浮かべる。

未だ聖壁は原形を保ち耐えているが、そう長くはもたない事を彼女は悟っていた。

聖壁付近の石畳が赤熱化する程の凄まじい熱量を誇っていたのである。

 

「――戦の嬢ちゃん!もう少しだけ我慢せいッ…!」

 

 苦悶の表情を浮かべる彼女を見て察したのか、鉱人導師から声が掛かる。

 

「――石弾(ストーンブラスト)!」

 

 同時に鉱人導師から、精霊魔法の石弾(ストーンブラスト)が放たれる。

やや大きめの石弾がガーゴイルの口部を塞ぎ、火のブレスを阻止する事が出来た。

 

「何とか収まったわい…じゃが次はどうするッ…!?」

 

 彼の石弾は敵の行動を阻害しただけで、痛痒にもなっていない。

火のブレスを妨害された事で、鐘のガーゴイルは地上へと降り立ち直接攻撃へと切り替える。

手にした長柄武器と斧状の尾が、彼等を容赦なく打ち据えた。

 

「――くッ…もうもちません…ソラール様…早くッ…!」

 

 聖壁で敵の猛攻に抗う女司祭。

しかし強力無比な攻撃を何度も受け続け、亀裂が生じていた。

赤毛斥候と男槍の徒が聖壁を盾に火炎壺で応戦するが、敵に怯む様子が見られない。

いよいよ聖壁の亀裂が増し砕かれようとした寸前、別方向からの火炎弾がガーゴイルへと直撃した。

 

「――待たせたな!」

 

 その声と共に、ソラールが再登場した。

 

   ―― 戦車と共に ――

 

待ちわびたソラールの登場に、女司祭だけでなく味方陣営も視線を向ける。

だがソラールは皆に一瞥をくれる事なく、鐘のガーゴイルへと戦車で直進した。

最高速なのだろう。

巨体に似合わず、相当の加速を以てガーゴイルにぶつける。

戦車の質量も相当のもので、ガーゴイルは戦車に押し出される形で壁面まで激突。

そのまま壁面と戦車に挟まれ身動きが取れなくなった。

 

――しめた!

 

思惑通りに事が運び、ソラールはすぐさま搭乗席から戦車頭頂部へと()じ登る。

 

「――太陽の、何をする気じゃ!?」

 

 ソラールの行動が奇行に映り、鉱人導師は不可解な心境で彼を見守る。

頭頂部へと()じ登ったソラールは、排熱口らしき部分へと剣を突き立て戦技『落雷』を追加で落とす。

単発では規模の小さな雷だが排熱口へと吸い込まれた後、戦車全体が激しく揺れ動いた。

それを確認するまでもなく、ソラールは急いで車体から飛び降り退避する。

彼が退避した後、戦車は振動と共に大爆発を起こし、鐘のガーゴイルごと砕け散った。

通常武器で真面に相手取れば、長期戦を強いられるのは必至。

巨体と硬質の身体を持つ鐘のガーゴイルも、火の魔力が詰まった戦車の爆発をゼロ距離で食らえば、流石にひとたまりもなかった。

ソラールが最初の1両目を破壊した時も、戦車は激しい振動と共に大爆発を起こし四散した。

その事を思い出したソラールは、戦車の1両を再起動させガーゴイルへとぶつけたのである。

彼の作戦は見事成功し、鐘のガーゴイル1体を討伐した。

燻ぶり砕け散った戦車の残骸を残す現場を背に、ソラールは荒い呼吸を繰り返す女司祭の下へ歩み寄る。

 

「…そ、ソラール様ぁ…」

 

「よくやってくれた。少し休むと良い」

 

「///はい…///」

 

 気遣いの言葉を掛けられた女司祭。

安堵と高揚の為か集中力が途切れ、ひび割れた聖壁は消滅した。

彼女は頬を赤く染めながら目を細め、ソラールに寄り添おうとする。

だがその願いは叶う事なく、ソラールは赤毛斥候と男槍の徒にも歩み寄り労いの声を掛けた。

 

「貴公等も良く奮戦してくれた。だがまだ終わってはいない故、彼女を頼む…!導師よ、済まぬが今一度、力をお貸し願えるかな?」

 

 女司祭の疲労は、かなり蓄積している。

これ以上戦いに参加させるのは、些かに無理があるだろう。

彼女を二人に託す事にしたソラールは、もう1体のガーゴイルを討つべく鉱人導師に同行を請願した。

 

「一杯の酒…高いぞッ!?」

 

「ウワッハハハ、承知した!」

 

 疲労が蓄積しているのは鉱人導師も同じ――。

そこで彼は一杯奢るという条件で応じ、ソラールも笑いながら承諾した。

 

鐘のガーゴイルは残り1体。

しかし、ソラール以外の人員にとっては今までにない強敵だった。

巨人の如き巨躯から繰り出される長柄武器の薙ぎ払いで、数人の衛兵が吹き飛んだ。

大盾を装備していた冒険者は、敵の攻撃に何度も耐えた。

だが大盾で受け止める度に、腕の骨がひび割れ遂には圧し折れてしまう。

味方陣営も総力を合わせ反撃を積み重ねていたが、中途半端な攻撃ばかりが目立ち有効打には至っていない。

ガーゴイルが武器を振るう度に、一人また一人と確実に味方戦力が削られてゆく。

 

「思っていた以上に苦戦しとるのぅ…!いや…お主が、ずば抜けとるだけか…!?」

 

「余り時間は掛けられん。導師よ、石弾(ストーンブラスト)を頼む…!」

 

 真面に動ける味方は、残り数人となっている。

彼等も決して低能な戦士ではなかったが、相手が強大過ぎる。

それを太陽の騎士ソラールは、策有りとはいえ討伐を成し得ている。

やはり、彼の実力が飛び抜けて高いと言わざるを得ないのだ。

敗色濃厚となる味方陣営に駆け寄るソラール。

そんな彼に視線を向ける鉱人導師に、精霊魔法の要請が入る。

精霊魔法『石弾』を射出して欲しいとの事だった。

 

「術はあと一回…!ワシの石弾程度では、有効打にもならんぞ!?」

 

 口を塞ぐ目的とはいえ、先程のガーゴイル顔面目掛けて石弾を撃ち込んだが、大した痛打とはならなかった。

その事を踏まえても、牽制程度が関の山だろう。

加えて術は残り一回――。

石弾という基礎的な術で、戦局を打開するのは難しい。

直接言葉にはしなかったが”他に有効な術があるのではないか?”…そういうニュアンスを込め、鉱人導師はソラールに言葉を返す。

 

「構わん。俺が乗れるほどのデカい弾を、(ガーゴイル)の頭部に向け撃ってくれ!」

 

「…()()()()()か!ええじゃろ、とびきりのを拵えてやるわい!」

 

 今のやりとりで全てを察した鉱人導師は、即座に術の詠唱に移る。

鉱人導師ほどの実力者なら、然程の手間はかからず短時間で大型の石弾を生成できる。

しかし攻撃の為ではなく、ソラールを乗せる為の乗り物手段として術を発動した。

完成したと同時に、ソラールは大型の石弾へ跳び乗る。

 

「――撃ってくれ、導師!」

「――落ちるなよ、太陽の!」

 

( 推奨BGM Antti Martikainen ―― Divine Alliance )

 

 後はガーゴイル目掛けて撃ち出すだけ。

ソラールの搭乗を確認した鉱人導師は、大型の石弾を撃ち出す。

しかし大型化とソラールの体重が災いし予想以上に鈍い弾速は、ガーゴイルに容易く察知されてしまった。

ソラールの乗った大型石弾を警戒したガーゴイルは、手にした長柄武器で石弾を薙ぎ払った。

長柄武器は青銅製だが、そこは強靭なガーゴイルの放った一撃だ。

鉱人導師の生成した石弾は、呆気無く粉々に砕け散る。

砕け散った石弾の欠片は地面へと降り注いだが、其処にソラールの姿は無い。

石弾が粉砕される寸前、ソラールは全力で跳躍していたからだ。

既にガーゴイルの頭上から剣を振り下ろす寸前であった。

彼の剣は淡い光を帯びており、戦技『太陽の誓い』と『王騎士の決意』を併用していた。

この戦技は両方とも攻撃力を高める効果を備え、二つの戦技で上乗せられ落下エネルギーと大上段からの唐竹割りは、凄まじい威力を誇る。

光を帯びた直剣が、ガーゴイルの頭部を一撃で粉砕した。

そしてソラールの着地と同時に、頭部を喪った鐘のガーゴイルの動きは鈍る。

 

「――おお、や、やったッ!?」

「――いや…まだだッ…!」

「――顔が無くても動くのかよッ!?」

「――仮にも魔法生物だからな…!」

 

 確かに致命の一撃だった筈だが、未だガーゴイルは活動を停止していない。

生き残っていた味方陣営も状況は理解しており、警戒を解く事はない。

確実に動きは鈍くなったものの、ガーゴイルは見境なく武器や尾を振り回し半ば暴走状態で暴れ回った。

 

「――うわぁぁッ…、に、逃げろぉッ…!」

「――くっそ、手が付けられねぇ…!」

 

 頭部を失った事で視覚が効かないのか、所構わず武器をを振り回す。

だが巨体による長い武器や尾を無秩序に振り回されるのは、却って危険度が増していた。

付近の民家は見るも無残に破壊され、味方陣営も手が付けられず逃げ惑うのみ。

 

「――ウぉおおぁああッ…!!」

 

 だがソラールは単身、頭部を失ったガーゴイルへと突撃する。

無造作に振るうガーゴイルの薙ぎ払いを、前ローリングで躱し懐へと肉薄。

 

――あの戦技を試してみるか。

 

大量の遺灰を被った事で、彼は幾つかの戦技を習得していた。

見ず知らずの戦士が使っていたと思われる、雷の戦技を今此処で試す。

ガーゴイルへ肉薄したソラールは、更に深く踏み込み剣を一文字に振り下ろした。

 

「――戦技、雷撃斬ッ!!」

 

 一見ただの踏み込み切りだが、剣を振り下ろしガーゴイルの硬い胴体部を断ち切る。

だが刀身には、雷が宿っており断ち切ったと同時に時間差で追加の雷がガーゴイルを襲った。

付け加えて言えば、踏み込みにも若干の衝撃が付与され、強靭度の低い敵なら踏み込みだけでも痛痒を与える事が可能だ。

 

雷の戦技、雷撃斬。

 

その戦技を受けたガーゴイルは確実な痛痒を負い、首の無い胴体部には裂傷が奔っていた。

だが止めには至っておらず、緩慢ながらも腕を伸ばしソラールを掴もうと足掻く。

 

「ならば今一度、雷撃斬ッ!」

 

 鈍い動作など、格好の的。

掴もうとするガーゴイルの腕目掛け、彼は再び雷撃斬を見舞った。

流石に胴体部に比べれば、腕の構造は幾分脆弱――。

その一撃に、腕は粉々に破壊された。

 

「――止めといこう…ぬんッ!」

 

 だが何を思ったのか彼は突如、剣を鞘へと納めてしまう。

そして空いた片手に雷を迸らせ、それは徐々に大きさを増した。

 

「最大まで溜めた我が一撃で、幕を閉じよう…!」

 

 それは常に彼と共にあった奇跡『雷の槍』である。

 

「――ぬぉあッ!」

 

 日常的に多用する雷の槍だが、今度は最大まで力を溜めた状態で投射した。

普段よりも幾分太く長い雷弾が、ガーゴイルの胴へと直撃し同時に雷が上下へと拡散する。

その結果ガーゴイルの全身は焼け焦げた後、程無くして塵となって霧散した。

つまり鐘のガーゴイルは2体とも討たれ、町は守られたのである。

あれ程猛威を振るった敵が塵も残さず霧散した事で、周囲は言葉もなく立ち竦む。

2体のガーゴイルは討たれたものの、更なる追加戦力に備え周囲は暫し警戒を緩めなかった。

――とは言え、徐々に理解が追い付いた彼等は、脅威が去った事を悟る。

 

「――お、おぉぉおッ…!いやったぞぉっ~!」

「――お、俺達は生き残ったんだぁッ!」

「――町は…守られた……!」

 

「「「「「――ウゥォオオおおっ!!」」」」」

 

敵の脅威が去った事を確信した味方陣営は、勝利を捥ぎ取った事に安堵し喝采の声を上げた。

 

   ―― YOU DEFEATED(敵を無力化セリ) ――

 

「――バディっ…!」

 

 勝利に喚起する味方陣営に混ざり、赤毛斥候を筆頭に仲間達が駆け寄って来る。

 

「――だ、大丈夫ですか、ソラールさん!?」

「――ソラール様ぁ、お怪我はッ…!?」

 

 ソラールの身を案じる男槍の徒と女司祭。

 

「ウワハハハ…!俺は見ての通り…!」

 

 多少の痛痒は負っていたが、彼にとっては取るに足らない程の軽傷だ。

ソラールは何時もの『太陽賛美』で、勝利を祝った。

 

「いやぁあ…大したもんじゃの…!連戦で、あのデカ物を退治してしまうとは…」

 

 そこへ鉱人導師も加わり、ソラールを称賛する。

 

「礼を言うぞ、導師よ!貴公の術が無ければ、更なる被害が拡大していた筈だ」

 

 実際、鉱人導師の貢献は計り知れないものがある。

精霊魔法だけでなく策を弄する知識や冷静さを兼ね備えた年長者。

彼の助力が無ければ、仮に勝利したとしても町自体が機能停止に追いやられてい可能性も否定し切れないのだ。

ドカッと腰を降ろし疲れ切った様子を見せる鉱人導師に、ソラールは惜しみない感謝の意を述べた。

 

「太陽のッ…!分かっとるな!?」

「――ハハハ、勿論だとも!」

 

 一杯の、とびきり高い酒を奢る――。

戦闘中、そんな約束を取り交わしていた二人。

勿論この町にも酒場は在るのだが、鉱人導師の口には此処の酒は合わなかったらしい。

水の都で飲み交わそうとソラールが提案し、鉱人導師も快く受け入れた。

 

町は守られた。

決して小さな被害ではなかったが、まだ復興が叶う程度の規模だ。

味方陣営にもかなりの犠牲者が出たが、幸い死者は居らず負傷者のみである。

敵部隊の襲撃を退けた事で脅威は去った。

町を管理する代官もソラール達に感謝の意を示し、ソラール一行は報告のため水の都へと帰還する事にした。

 

……

 

( 推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― 辺境の街 )

 

逃げ出した馬を確保するのに少々苦労した。

敵集団、特に鐘のガーゴイルに対する恐怖でソラール達の馬は街の隅々を走り回り逃げ惑っていたのである。

戦闘が終わった後も休む事なく彼等は馬の確保に追われ、漸く捕まえた頃には、ソラールでさえ疲労で動けなくなったほどだ。

幸いにも町中での確保に成功したのが、せめてもの救いだ。

これで町の外に逃げ出していたらと思うと……そんな不吉な考えを即座に切り捨てるソラール一行。

戦闘後もちょっとした騒動はあったもののソラール一行は、こうして帰還の途に就いていた。

 

「カッコウの騎士団…そう言っていたのか?」

 

「はい、確かに…」

 

 女司祭から再度確認を取るソラール。

彼女たちが別動隊として動いた時、敵指揮官は絶命の間際そんな名を口にしていた。

 

「やはり誰も知らんようじゃの」

 

 ソラール達の馬車に乗る鉱人導師も『カッコウの騎士団』という名に心当たりはなかった。

 

「……」

 

 何時になく無言で考え込むソラール。

 

――結局、あのクレーターの謎も分からず仕舞い…。

 

出撃の途中で立ち寄った箇所には、滅び去った集落と不気味なクレーターが存在していた事を思い出す。

クレーターの中は何もかもが消失し、窪んだ地面だけが残されていただけだ。

あの敵部隊も『鐘のガーゴイル』を召喚するという術をみせたが、クレーターを引き起こす程の力は備わっていなかった様に思える。

もしそれ程の現象を引き起こせるなら、最初の襲撃で町など容易に滅ぼせる筈だ。

 

「……」

 

 ソラールは、町から回収した戦旗に目をやった。

それは敵部隊が掲げていた旗だ。

赤と紺の色合いに覗き込むような鳥を彩った紋様。

鳥を『カッコウ』に見立てた部隊、それがカッコウ騎士団なのだろう。

 

――あの景色と関係があるのやも知れぬな。

 

遺灰を被った時、脳裏を過った景色の数々。

そのどれもが彼の見知らぬ大地であった。

 

――分からぬ事だらけだな、この世界も…。

 

再び意識を現実へと引き戻した彼は、馬の手綱を握り直す。

 

「それにしてもさ、本当にアレ…持って帰るんだ?」

 

 赤毛斥候が御者台のソラールの肩を叩きながら、後方に指を差した。

彼女の示す先には、一台の戦車が彼等の馬車に牽引されていた。

敵部隊が持ち込んでいた3両の戦車――。

内、2両は破壊されたものの1両だけは健在で今に至る。

敵部隊に勝利した後この戦車だけが残ったのだが、町の鑑賞用にしては?という提案も浮上していた。

しかし、戦車の前面部が余りに不気味で襲撃を思い出してしまうとの理由も手伝い、町の住民の大半から反対意見が続出。

一応、瓦礫の撤去には役立ったが、動かせる人物がソラールただ一人という事もあり、こうして持ち帰る事になったのだ。

 

「これからは、あの戦車も持ち込んで活動するんですか、ソラールさん?」

 

 馬車の隣を並走する別の馬を駆る、男槍の徒からも声が掛かる。

 

「ウワッハハハ、それは無い。嵩張るだけだからな」

 

 確かに戦車自体は強力な火力と突破力を誇った。

更に規格外の爆弾としても機能し、鐘のガーゴイル1体を爆死させる事も出来た。

だが、戦車を操れる者が現状ソラール一人、そして小回りも効かず乗り心地も最悪――。

更に維持するにしても専門的な知識と設備が必要となり、費用も軽視できない額に膨れ上がるだろう。

とてもではないが、数人の一党で運用できる兵器ではなかった。

管理運営するには、それに相応しい組織に託した方が上策というものだ。

 

「先ずは法の神殿に一時駐留させて頂き、然る後、王都軍へと引き渡すのが良かろう」

 

 個人で所有するにも持ち運ぶにも、少々癖が強過ぎる代物だ。

王都軍へと引き渡し技術解析が進めば、心強い戦力にはなるだろう。

 

「ま、そいつが無難じゃ。王都ならワシらの同胞も数多い、直ぐに解析されるじゃろうて」

 

「うむ。戦車を見た住民の驚く顔が容易に想像できるな、ウワッハッハッハ…!」

 

 特に前面の見た目が異様な戦車だ。

水の都にも、この様な兵器は存在しておらず、住民が目にすれば騒ぎに発展するのは目に見えていた。

ソラールの言葉に、一行全員が住民の驚く様を想像し一気に笑いが込み上がる。

町での緊張感ある戦闘を潜り抜けたとは思えない程に、彼等は和気あいあいと盛り上がりながら水の都へと帰還した。

 

……

 

彼等の予想通り、戦車を目撃した住民は大騒ぎへと発展し、法の神殿にて一時預けられる事となった。

住民だけでなく神殿の関係者や剣の乙女までもが驚きを隠せない様子で、説明に苦慮するソラール達一行であった。

 

……

 

( 推奨BGM ダークソウル ―― キャラメイク )

 

幾許かの時間が流れ、ソラールは空に浮かぶ太陽を見上げる。

彼にとって唯一無二の存在であり、憧れと信仰の対象でもある絶対の象徴。

何時しか太陽の様に、でっかく熱い男になりたい。

そんな想いを胸に抱き、彼は旅立った。

故郷であり既に滅び去った我が故国、アストラ。

騎士の家系に生まれ、彼自身も親兄弟と同じく騎士の道を歩んだ。

それ自体に、何も不満は無かった。

訓練に明け暮れ、勉学に励み、交友関係も良好だった。

見習い期間を終え、実際戦場に出た時も彼の部隊は着々と戦果を挙げ勝利に貢献した。

彼の人生は、概ね成功と言っても良いだろう。

だが、彼の胸中は何かで燻ぶり続けていた。

もう我慢が出来なかった。

領地に居ても、戦場に居ても、これだけは変わらない。

何時までも見上げているだけでは、永久に追い付く事は出来ない。

アイツは…、友人(オスカー)は、使命を果たす為に旅立った。

もう帰れないかも知れないというのに――。

 

俺は、探し出し、見付けてみせる。

 

俺自身の”太陽”を――。

 

それが俺の生まれ出でた使命と信じ。

 

――あれから随分と経ったな…。

 

故郷のアストラを旅立ち、自身の太陽を探し幾星霜――。

旅の途中、いよいよ火の陰りが進行した事を知った。

ロードランに辿り着く前から、行く先々で異常をきたす人々を見てきた。

発狂する者や、異形化する者……極め付けは生きたまま不死と化し果てに亡者へと変貌する者。

それでも、彼は漸くロードランへと辿り着き各地を彷徨った。

 

――いつの間にか、四方世界なんて所に来ちまったか…。

 

薪の王グウィンを討ち果たし、最初の火を継いだ。

そこで自らの生涯を終えたのだと悟り意識を手放してみれば、今は冒険者などという職業に身を置いている。

相変わらず、火の陰った世界を再現したかのような遺跡群(ロスリック)も存在しているが、この世界は生命に溢れ太陽も天高く君臨している。

太陽は自らの中に存在する。

絶望に苛まれたロードランの地で、あの男と出会い太陽を見出す事が出来た。

その目的を果たした以上、自身の中に在る太陽を磨き上げ極めるのみ。

だが最近になり、空の色に変化が訪れた気がする。

いや、実際変化しているのだ。

以前は、もっと青々しかった晴天の空。

今も晴天の筈だが、どうにも淀み灰色がかっていた。

その空は若干青い程度――。

そんな鈍い青も徐々にだが、色褪せ始めている様にも思える。

まるで火の陰った時代の再来を匂わせる様な空模様が、刻々と近付きつつあるように思えて仕方がないのだ。

 

――偉大な太陽よ…、お前は陰ってくれるなよ…!

 

淀みつつある空に浮かぶ太陽に向かい、何時ものジェスチャー『太陽賛美』で称えながら、彼は願いを込めた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

戦技・落雷 

 

王都竜信仰の戦技のひとつ。

突き上げる武器に雷を宿し、落雷を呼ぶ。

連続で放つこともできる。

 

何時しか忘れ去られたのだろう。

竜もまた、雷と共に在ったのだと。

 

戦技・雷撃斬

 

武器に雷を呼び、斬り下ろすことで凄まじい雷撃を発生させる戦技。

武器の雷は、しばらく継続する。

 

何時しか忘れ去られたのだろう。

人と竜の交流。

その歴史は、古くから在ったのだと。 

 

戦技・王騎士の決意

 

かつてエルデの王に仕えた、騎士たちの戦技。

武器を眼前に掲げ、決意を誓い次の一撃の威力を大きく高める。

 

主無きであろうとも、騎士は己が決意で守り抜く。

妄想の果てであろうとも、騎士は己が決意で奮い立つ。

 

 

 

 

 

 




今回ソラールが修得した狭間の地の戦技。
実は『雷の槍』も地味にエルデンリング仕様となっております。
(確かダクソでは”溜め”が出来なかったような…)

如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。  
デハマタ。( ゚∀゚)/
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