ゴブリンスレイヤー ―灰の剣士―   作:カズヨシ0509

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 お待たせしました。

投稿します。

今回は、火の無い灰とゴブリンスレイヤーの視点に戻します。

少し長めで纏まりの無い話ですが、まぁ暇つぶしにドゾ。( ゚∀゚)ゝ


第13話―連続討伐―

 

 

 3件の依頼を請け深夜街で落ち合う

 

灰とゴブリンスレイヤー。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 紅い月と緑の月が妖しく空を支配する宵闇の時間帯。

 

太陽は未だ地平線から顔を出さず、街は静寂と夜の闇が満ちゆく。

 

街の入り口付近で、二人の冒険者が落ち合う。

 

鎧姿の冒険者と、フードを被った冒険者だ。

 

「時間通りか?」

 

「ああ、問題ない」

 

 短い言葉をそこそこに、街を後にする二人の冒険者。

 

彼等は向かう。

 

 

 

――ゴブリン退治に。

 

 

 

暗い街道を歩きながら、鎧戦士は依頼内容を説明した。

 

「3件立て続けに請けたが、ヤれるな?灰」

 

「ああ、憂いは無い。詳細を頼む」

 

 鎧戦士は説明する。

 

 

 

1:昨日と似た内容の依頼が一件。

 

近隣の農村がゴブリンの被害を受け、食糧の備蓄に悪影響を及ぼしている。

 

既に巣穴は発見している為、退治して欲しい。

 

報酬 金貨6枚。

 

 

 

1:やや東寄りの街道付近で、行商人の一団が襲われ物資が奪われた。

 

ホブ率いるゴブリンの集団を目撃した。

 

何とかしてくれ。

 

報酬 金貨8枚。

 

 

 

1:宿場村がゴブリン集団の襲撃を受け、大きな被害を被った。

 

護衛に付いていた、冒険者の女性と女性客も攫われた。

 

頼む、ゴブリンを退治してくれ。

 

報酬 金貨10枚。

 

 

 

彼から内容を聞く限り、どれも一筋縄にいかなそうだ。

 

特に宿場村の件は。

 

それだけに報酬が先日の依頼とは、大きな開きがある。

 

恐らく報酬に見合った、難易度に違いない。

 

先頭を行く鎧戦士、彼はともかく、新人も新人の自分に務まるのか、正直疑問符を浮かべざるを得なかった。

 

「この位のペースで請けんと、依頼の処理速度よりも被害増加の件数が上まるのでな」

 

 鎧戦士は何気無く言ったが、その事実に灰は驚愕する。

 

「そんなに増加速度が速いのか?」

 

「そうだ。気が付けば、ギルドにゴブリン退治の依頼が溢れる。これでもかと言わんばかりにな」

 

 それ程迄にゴブリンの脅威は、身近に跳梁跋扈(ちょりょうばっこ)しているという事だ。

 

「せめてゴブリンに対する認識がもう少し改善されれば……」

 

 灰は歯痒い思いを顕にする。

 

「…もしくは、村そのものがゴブリンの対応策を編み出すかだな」

 

 鎧戦士は淡々と語る。

 

 

 

兎に角ゴブリンが多過ぎる。

 

この世界の真の脅威はデーモンやドラゴン等ではなく、ゴブリンではないかと誤認してしまう程だ。

 

 

 

二人は、暫く無言のまま目的地へ移動して行く。

 

 

 

 

 

 暫く歩いた二人は、目的地の農村に辿り着いた。

 

まだ空は薄暗く日の出前だというのに、依頼人の村長が朝早くから二人を待っていた様だ。

 

村長から内容の説明を受けた二人。

 

先日の依頼とほぼ同様の依頼内容だった。

 

幸運な事にゴブリンの巣穴は特定されていた為、巣を血眼になって捜す手間が省けた。

 

二人は、すぐさま巣穴へと向かう。

 

獣道などは無く茂みを掻き分け、巣穴と思わしき場所に着いた。

 

以外にも近くに存在していたのだ。

 

直線距離に換算すると、10分と歩かない内に到達する距離だった。

 

巣穴の状態は先日の依頼と違いトーテムが無く、代わりに見張りのゴブリンが2匹居た。

 

鎧戦士と灰は、身を隠し慎重に観察する。

 

「恐らく、奴等は見張りだろう。どうやら交代の時間が近いらしいな」

 

 あの依頼の後彼も購入したのだろう、自分用の遠眼鏡を使いそう述べた。

 

灰も見張りのゴブリンを観察する。

 

2匹とも、退屈そうに欠伸をしながら交代時間を待っている様に見えた。

 

「俺が回り込み合図をしたら、奴らの注意を引け。その隙を突き、俺が奇襲する」

 

 鎧戦士の指示の元、早速実行に移す二人。

 

彼が可能な限り音と気配を消し、匍匐(ほふく)前進で茂みの中をゆっくりとしかし確実に進んで行く。

 

見張りの側面の位置に着いた鎧戦士は、ゴブリンに気付かれない様に剣を茂みから掲げ、灰に合図した。

 

灰は見張りのゴブリンが、鎧戦士に背を向ける様に小石を投げ、注意をそちらに向けさせた。

 

脱力仕切っていたゴブリンは特に警戒する事無く、2匹とも小石の落ちた地点に向きノソノソと向かう。

 

その隙を見逃さず鎧戦士は、見張りのゴブリンの後頭部を剣で貫き、間髪入れずもう一匹を腰のナイフで首を掻っ切る。

 

見張りのゴブリンは、奇襲された事に気付かないままアッサリと倒された。

 

「良し、死体を片付けておくぞ。交代の見張りに警戒されん様にな」

 

 倒したゴブリンの死体を茂みに放り込み、交代のゴブリンの目に留まらない様に隠す。

 

二人は入り口付近の岩陰に身を潜め、交代のゴブリンを待つ。

 

「いいか、ゴブリンは待ち伏せや罠を使うが、自分達が待ち伏せされるとは思いも寄らんらしい」

 

 そう時間が経つ事無く、耳障りな鳴き声で巣穴から出て来る2匹のゴブリン。

 

ゴブリンを視認した二人は、即座に交代のゴブリンを倒す。

 

ゴブリンの絶命を確認した二人は松明を灯し、巣穴へ侵入して行く。

 

「この依頼は前回と状況が似ている。寧ろシャーマンが居ない分、遥かに難度は低い。昨日の復習を兼ね、殲滅するぞ」

 

 灰は無言で了解した。

 

両者は前回と同じく奇襲を警戒しながら、慎重に進軍して行く。

 

道中の岩陰に隠れたゴブリンを先手必勝で倒し、広めの空洞に辿り着いた。

 

ある程度武器を自由に振り回せる空間なら、十数匹のゴブリンの群れなど、二人の脅威にすらならなかった。

 

巧みな戦術でゴブリンを瞬く間に殲滅した灰と鎧戦士。

 

実に呆気なかった。

 

どうやら子供のゴブリンも居らず、周囲の生き残りや討ち漏らしも無い事を確認した二人は、巣穴を出た。

 

 

 

村に戻り依頼人である村長に、ゴブリンを倒した証拠である切り取った体の一部を見せ、依頼完了の報告を行った。

 

村長も村人達も大いに喜んでいた。

 

規模の小さい村ながらも、気休め程度防護策は拵(こしら)えられていたが、十分とは言えない。

 

前回と同様にゴブリンの簡単な対応策を教え、次のゴブリン討伐に向かう為、村を後にする二人。

 

日が昇っていたが、まだ午前の時間帯だった。

 

どうやら極短時間で片付いたらしい。

 

 

 

 

 

東に進路を取った二人、街道を暫く歩いて行くと、道中に木材やら布切れの破片やらが散乱していた。

 

自然物ではない、明らかに人工物の残骸だ。

 

此処で間違い無い。

 

この場でゴブリンの襲撃に遭ったのだ。

 

鎧戦士と灰は、ゴブリンの痕跡を探索する。

 

人の死体は見付かっていない、どうやら無事逃げ果せたのだろう。

 

そう時間を掛ける事無く、ゴブリンの足跡を発見する二人。

 

流石に見慣れてきたのか、灰にもゴブリンの足跡が容易に判別出来た。

 

「この方角だな」

 

 鎧戦士がゴブリンの足跡を辿り、巣穴と思わしき方角を指す。

 

草木の生い茂る、林の向こう側に巣穴が在る様だ。

 

念の為道中ゴブリンの奇襲に遇わぬ様、警戒しながら向かう。

 

林を進むと、洞窟よりも更に小さい洞穴が見付かった。

 

入り口前に、血痕が見付かった為、ゴブリンの住処だと判別出来た。

 

恐らく、馬車を曳いていた馬の血だろう。

 

確か情報ではホブゴブリンが居た筈だが。

 

「この依頼は人質が居ないと判断し、炙り出しを行う」

 

 鎧戦士が作戦を提示してきた。

 

「わざわざ危険を冒して、敵陣に乗り込む必要は無い。確実に全滅させるか、人質が居る場合にのみ乗り込めば良い」

 

 確かに不要な危険を冒してまで、敵の土俵で戦う必要は無い。

 

少ない労力で最大限の打撃を与えられるなら、それに越した事は無いのだ。

 

鎧戦士の指示の下、灰は燃えそうな木や枝をかき集め、巣穴の入り口に積んでいく。

 

適度な量を積み、鎧戦士が火を着けた。

 

乾いた枝を先に燃やし、やや湿った生木には思った様に燃え広がらず、煙ばかりが立ち上がる。

 

だが、それで良い。

 

火の熱よりも煙で燻し、此方に有利な条件でゴブリン共を外に、誘き出すのが狙いなのだから。

 

鎧戦士と灰は枝と布束で予め作っておいた、即席の団扇で煙を煽り、巣穴へと送り込んで行く。

 

暫く煙を巣穴へ送り込んでいると中から、耳障りで聞き慣れた悲鳴が聞こえて来た。

 

「頃合だな」

 

 鎧戦士と灰が剣を抜き戦闘態勢に入る。

 

 

 

「Gya…」

 

「Gorobu…」

 

 煙で燻されたゴブリン達が、我先にと巣穴の出口目掛けて詰め掛けて来た。

 

外に出たゴブリンは息も絶え絶えに、新鮮な空気を吸い呼吸を整えるが、その隙だらけな瞬間を鎧戦士と灰が見逃す筈も無く、瞬く間にゴブリン達は倒されていく。

 

何せ出てきた瞬間を狙い、順番に倒せば良いだけなので、何の苦も無い。

 

最後に怒りに駆られたホブゴブリンが巣穴から出て来たが、煙で燻された状態ではまともな戦闘も行えず、呆気無く二人の集中攻撃に討ち取られた。

 

「全部で12。大した規模ではなかったな」

 

 鎧戦士が討ち取った数を確認する。

 

「煙が晴れるのを確認したら、巣穴を確認するぞ。しぶとく巣穴に陣取る奴が居るかも知れんからな」

 

 煙が晴れるのを待ち、巣穴を確認する二人。

 

丹念に確認して行くものの、倒したホブが最期だったようだ。

 

巣穴にはゴブリンは一匹も存在せず、代わりに略奪した思われる物資と、食い荒らされた馬の死骸のみが見付かった。

 

念の為商品の納品管理書らしき書類だけを回収し、巣穴を後にした。

 

もし被害者がギルドに戻っていたらこれだけでも返せば良いし、討伐の証拠品にもなるからだ。

 

 

 

――それにしても燻り出しか。

 

この戦術は使えるな。

 

何も剣のみでゴブリンを討つ必要は無い。

 

使える戦法は積極的に巧みに、駆使して行くべきだ。

 

 

 

「良く覚えておけ、想像力は武器だ。それが無い奴から死ぬ」

 

 鎧戦士は忠告する。

 

彼は足りない部分を知恵と技術、それらを成す実行力と想像力を全力で駆使して戦い、生き残って来たのだ。

 

これからも、それは変わる事無くゴブリン退治に遺憾無く発揮されていく事だろう。

 

2件目の依頼も想定よりアッサリ終えた二人は、宿場村に向かった。

 

 

 

 

 

 最後の依頼、宿場村のゴブリン退治を成し遂げる為、現場に到着した二人。

 

既に日は傾きつつあり、空は夕暮れの貌を滲ませていた。

 

宿場村に相応しく、その規模は農村に比べても大きく、寧ろちょっとした町といった所か。

 

小さな道具屋、屋台、そして宿場村の代表格とも言える、宿屋。

 

西の辺境街から他の辺境へと続く街道を中継する拠点として、機能しているのだろう。

 

旅をする人々が骨休めする為に立ち寄り、公益の場として多くの人達が交流する宿場村。

 

怪物の対応策もそれなりに講じられており、しっかりした造りの防護柵も拵えられている。

 

だがその柵には破損部分が見付かった。

 

恐らくゴブリンの仕業だろう。

 

此処から見ても村の被害が具(つぶさ)に見て取れる。

 

建物がが所々破損し、店も宿も被害を被っているのか、住人達が補修作業に当たっていた。

 

二人は、宿場村の依頼人に会いに行く。

 

依頼人は、最も大きな宿泊施設の経営者でもあり村長も兼任していた。

 

経営する宿は幸いな事に被害を受けておらず、中々に豪華な仕様だった。

 

街の高級宿にも比肩し得る、しっかりとした衛生設備を完備している。

 

 

 

依頼人は、二人の冒険者を見て驚く。

 

「……まさか追加の冒険者がたったの二人?しかも新人中の新人の白磁……だと?」

 

 明らかに不信を顕にする。

 

仕方なく村長は、自分の宿の応接室に二人を案内し、詳細を説明した。

 

数日前に多数のゴブリンの襲撃を受け、多くの食糧や生活用品、そして宿泊客にも被害が及んだと言う。

 

護衛の為、4人の黒曜等級の冒険者を雇っていたが、敢え無く全滅し、四人の内3人は女性だった為にゴブリンに攫われたのだと説明した。

 

「あのクソ生意気な男戦士野郎、『ゴブリンなんて楽勝だ!』とか抜かしておいてこの始末だ!」

 

 村長は忌々しげに、顔を顰める。

 

恐らく頭目の男はゴブリンを侮り、その慢心から来る油断を突かれたのだろう。

 

「ゴブリンの種類と数は分かるか?」

 

 鎧戦士が尋ねる。

 

襲撃して来た数は、約20。

 

中に大型のボブゴブリンも居た。

 

村長が把握している範囲での情報を提供した。

 

 

 

「恐らく、今夜にも総攻撃を掛けて来るだろうな」

 

 鎧戦士は断言する。 

 

護衛の冒険者を破り、戦利品を巣に持ち帰ったのだ。

 

これで満足する奴等ではない。

 

味を占めた奴等は更に増長し、全戦力を持ってこの村を略奪し尽くすだろう。

 

鎧戦士はゴブリンの修正を述べていく。

 

この事実に村長も顔を真っ青にした。

 

「そんな…どうすれば、今度襲撃されたらこの村は、もう駄目だお終いだぁ!」

 

 何とかしてくれと懇願する村長。

 

「手はある」

 

 鎧戦士は短く答え、作戦内容を提示した。

 

 

 

先ず住人全員と重要な財産を、最も大きいこの宿に退避させる事。

 

そしてこの宿の入り口と裏口以外の勝手口を封鎖する事。

 

そして女性の体臭が染み付いた衣類や酒などを村に撒き散らし、この宿の正面に誘導する事。

 

そして視界を確保し易い様に、入り口付近には大きめの松明を設置して欲しい。

 

我々二人は入り口に陣取りゴブリンを迎撃、水際で防御する。

 

「ゴブリンは今夜襲撃して来る、可能な限り急いで欲しい」

 

 鎧戦士は、直ぐにでも迎撃準備に取り掛かりたいと申し出た。

 

村長は快諾し、使用人や従業員を総動員し、早速準備に取り掛かった。

 

 

 

「避難準備を急げ!ゴブリンが来るぞ!」

 

「重要な財産は宿の地下倉庫に!」

 

「ばら撒く酒は、この廃棄品で充分だよな!」

 

「すいません奥さん、協力して下さい。村を守る為なんです」

 

 

 

 村中から宿に避難民が押し寄せて来た。

 

住人には多少窮屈な思いをさせてしまうが、護衛対象を一箇所に纏めてしまえば迎撃し易い。

 

鎧戦士は木を削った投げナイフを作成し、灰は尖った小石を集め始めた。

 

避難が完了した事を確認した灰は、小石を宿周辺にバラ撒いていく。

 

ゴブリンに正面入り口を迂回させない為だ。

 

ゴブリンは、大抵裸足。

 

尖った石ころでも、迂回を断念させる効果が充分に見込める筈だ。

 

未洗濯の女性の衣類や下着を道に配置し、更に酒を撒き散らした。

 

全てゴブリンの侵入経路を限定させ、この正面入り口で迎撃する為に。

 

準備を終えた頃には、日は既に沈み夜を迎えていた。

 

大き目の設置型松明に火を点け、後はゴブリンの襲撃を待つのみ。

 

 

……

 

………

 

静かだ。

 

本来多くの宿泊客で賑わっていたであろうこの村も、灯りはこの設置型松明のみ。

 

音も虫の鳴く声とパチパチと音を立てる松明の火だけが、二人の耳に響く。

 

宿に非難した住人は、息を殺し固唾を呑んで見守っている。

 

 

……

 

………

 

遠方からギャワギャワと声が微かに聞こえて来た。

 

聞き慣れた混沌の産物、ゴブリンの声だ。

 

落ちた衣類を手に取り匂いを嗅ぐ者、地面に撒いた酒の匂いを嗅ぐ者、ゴブリン達が匂いを頼りに此方の誘導に引っ掛かってくれた。

 

真っ直ぐ迷い無く、ゾロゾロと此方に向かって来る。

 

 

 

宿を守る二人の冒険者とゴブリンとの目が合う。

 

 

 

ゴブリン達は忌々しげに眼前の冒険者達を睨み付けた。

 

 

 

――そこをどけ!

 

――獲物に有り付けないだろうが!

 

――有るんだろ?そこに、食い物と雌がよ!

 

――道を空けろよ!

 

――お前らは、どの道殺すけどな?

 

 

 

下卑た笑いを醜悪な顔に浮かべ、武器を片手に迫り寄るゴブリン達。

 

その後方には、襲撃部隊のリーダーと思わしきホブゴブリンと物見偵察を生業とする、やや大きめのゴブリンが佇んでいた。

 

 

 

 

 

 物見のゴブリンは、冒険者から奪ったと思わしき遠眼鏡を覗き込み、状況を逐一ホブに伝えていく。

 

巣穴の頭目であるシャーマンに及ばない知性、このホブに並べない体格。

 

通常種より優れ上位種より劣る、中途半端な小鬼。

 

誰よりも優れているのは、この脚力を生かした俊足、それがこの物見ゴブリンだ。

 

中途半端な体躯と知性により、上から罵られ下から嫉妬と憎悪の悪感情に晒される毎日。

 

正直嫌気が差していた。

 

 

 

…そう。

 

 

 

―― 黒い同胞と出会うまでは ――

 

 

 

 

 

物見は思い返す。

 

あれは黒曜等級4人組の冒険者に勝利し、宿場村の物資や雌を持ち帰った夜だった。

 

久し振りの豪華な戦利品だった。

 

数名の雌(孕み袋)。

 

使えそうな装備品。

 

加工済みの味付き食糧。

 

酔えそうな酒類。

 

これ等の戦利品を目にした同胞達は狂喜乱舞した。

 

そして自分に与えられたお零れは…。

 

 

 

男冒険者の指2本と硬いパン切れ2枚だけだった。

 

お前は戦闘に参加出来ない物見しか能がない役立たずだから、と言う理由で。

 

 

 

『使って貰えるだけでも有り難く思え!』

 

 

 

シャーマンから罵声を浴びせられ、ホブから嘲られ、下からも馬鹿にされる。

 

 

 

いっそ巣から抜け出してやろうか!

 

そんな考えが過ぎり、指とパンを胃に納め、外に出た物見。

 

 

 

――何か居る。

 

 

 

巣穴入り口近くの木に、腕を組み凭れ掛かる何かが見えた。

 

二つの月から発せられる月光に照らされた、黒い人影が一つ。

 

ゴブリンは夜目が効く為、人族の類では無い事は瞬時に判断出来た。

 

通常種より賢く上位種より愚かな物見の頭でも、黒いそれは同族だと解った。

 

 

 

成人した只人と同等の体躯。

 

血の様な紅い双瞳。

 

ホブよりも細身だが、圧縮された筋肉。

 

不快さを感じさせず、小鬼の特徴を残したままの整った顔立ち。

 

貧相な自分の髪とは違い、豊かな金色の頭髪。

 

今迄見慣れた同族とは違う、黒い黒い皮膚。

 

 

 

そして何よりも迫り来る、強大な存在感。

 

 

 

――違う……何もかも違い過ぎる。

 

 

 

気圧されたのか、惚けた様に動かない物見。

 

「Guru…」

(我が下へ来い、貴様が必要だ)

 

唐突に投げ掛けられる言の葉。

 

あまりに唐突の出来事に身動き一つ取れない物見。

 

更に言葉付け加える、眼前の黒い同胞。

 

 

 

次の襲撃の際、己が任務を果たした後、指定の場所にて我らと合流すると良い。

 

さもなくば用済みの貴様は、処理されるであろう。

 

我らの下でその才能を存分に生かせ。

 

生き延びたいだろう?

 

もう一度言う。

 

貴様が必要だ。

 

 

 

 

 

気が付けば、黒い同胞は姿を消していた。

 

 

 

 

 

 意識を現実に引き戻し、襲撃目標の宿の入り口を守る二人の冒険者の特徴をホブに告げる物見。

 

 

 

役立たずが!言われんでも解る!

 

忌々しげに吐き捨てるホブ。

 

 

 

――そろそろ邪魔になってきたな。

 

物見の代わり等、幾らでも居る。

 

分け前が減る前にコイツは始末しておくか。

 

 

 

そんな自分本位なゴブリン達の素晴らしい模範的な思考で、視線も向ける事無く石斧を振り降ろすホブ。

 

 

 

グチャ。

 

小気味良い肉を潰す感触と音。

 

 

 

……それが全く伝わって来ない……。

 

 

 

ホブは振り下ろした石斧の地点に視線を送った。

 

さっきまで居た筈の物見の姿は影も形も無く、虚しく地面に突き刺さる石斧。

 

辺りを見廻すも視界に捉える事が出来ず、ホブは苛立ちを募らせるが、直ぐに落ち着きを取り戻し略奪に参加する事にした。

 

既に居なくなった、物見の事など記憶から消していたのだ。

 

 

 

物見は草むらに身を隠しながら、指定の場所に向かっていた。

 

黒い同胞の言葉通りだった。

 

あのまま居座っていれば、自分は呆気なく殺されていただろう。

 

この先自分は、どう扱いを受けるのか定かではないが、あの同胞に賭けて見ようではないか。

 

物見は、様々な感情が入り混じったまま只管(ひたすら)に草むらを掻き分けて行く。

 

 

 

 

 

複数のゴブリン達が獲物目掛けて突撃して来る。

 

閉所ではなく開けた地形は、火の無い灰にとって非常に有利だった。

 

間合いに入った一匹を上段から剣を振り下ろし、両断。

 

わき腹からもう一匹が短剣で突進するが、身を捻り短剣をかわすと同時に、ゴブリンの足を掴む。

 

間髪入れずに掴んだゴブリンを、3匹の集団に投げ付ける。

 

投げ付けられたゴブリン同士の衝突で、出鼻を挫かれた集団に疾走する灰。

 

ゴブリンの十八番、互いを罵り合う、と言う特技も生かせぬまま、灰の連続斬撃に敢え無く絶命するゴブリン達。

 

真後ろから2匹のゴブリン達が、『しめた!』と言わんばかりに襲い掛かる。

 

突如ゴブリンの視界が見慣れた、『真昼』の暗闇を映し出す。

 

灰は後方宙返りでゴブリン達の頭上を飛び越え、真後ろに着地。

 

その隙を見逃さず、がら空きの背中を左右の袈裟切りで切り捨てた。

 

 

 

一方鎧戦士は、木を削った即席の投げナイフをゴブリン達に連続投射して迎撃。

 

まだまだ修練が必要だが、碌な防具を身に着けず全身が急所だらけのゴブリン達。

 

どこに当たっても傷を負わせ、戦闘力を奪う事が出来る。

 

腕に当たれば、攻撃能力。

 

足に当たれば機動力。

 

頭に当たろうものなら、そのまま絶命。

 

実に簡単だ。

 

わざわざ自分から敵の攻撃範囲に入る事はあるまい。

 

後先考えず次々進撃して来るゴブリン達を二人は各々の戦術で迎撃していく。

 

 

 

状況が好転しないゴブリン達は、業を煮やし二人の冒険者との戦闘を避け、迂回し宿に侵入しようと試みる。

 

数匹のゴブリン達は戦闘中の同胞と冒険者を鼻で笑う。

 

――馬鹿な人族と同胞め!戦利品に有り付くのは俺達だ!

 

ニヤけ面で、侵入を試みたゴブリン達。

 

「――Gyabubu?!!」

 

 踏み込んだ足の裏から、唐突に襲い来る激痛。

 

激痛の正体は角の尖った小石だった。

 

痛みにもんどり打ち、のた打ち回るゴブリンを周りのゴブリン達が嘲る。

 

だが辺りを見廻すと尖った小石が、此れでもかと言わんばかりにバラ撒かれていた。

 

足の踏み場も無い程に、其処彼処(そこかしこ)に撒かれている。

 

灰が予めバラ撒いておいた物だ。

 

踏み込むのを躊躇する程に撒かれていては、迂闊に踏み込めない。

 

況してや、自分主義の臆病なゴブリン達では尚更だ。

 

 

 

踏み込めず苛立ちを強め仲間割れを起こすゴブリン達を尻目に、灰はフードの下でほくそ笑んだ。

 

どうやら自分の防御策は功を成した様だ。

 

そのゴブリン達へ、木の投げナイフを投射する鎧戦士。

 

その攻撃を受け、迂回組は瞬く間に全滅した。

 

 

 

ホブを含め残り5匹となったゴブリン達。

 

不利を悟り敗走するゴブリン達の頭を掴むホブ。

 

何とそれを弾丸代わりに冒険者達へ投げ付けた。

 

ホブの肩力で投げられるゴブリン達。

 

猛スピードで飛んで来るゴブリンの質量弾。

 

直撃すれば一溜まりもあるまい。

 

だが真っ直ぐ飛んで来るだけに加え、距離も離れている為、回避は容易だった。

 

灰も鎧戦士も喰らう事無くかわし切り、投げられたゴブリン達は地面に激突!

 

……そのまま憐れな最期を遂げた。

 

その隙にホブは、背を向け巣穴に向かい一目散に走り去ろうとした。

 

だが、背中の数箇所から激痛が走った。

 

――それは突き刺さった木の投げナイフだった。

 

背中の至る所、足の脹脛(ふくらはぎ)にも数箇所から出血していた。

 

後方に目をやると鎧戦士が此方に疾走しながら、猶もナイフを投げ付けて来る。

 

ホブは、全力で巣穴に退散した。

 

 

 

程無くして、灰も後から鎧戦士に追い付く。

 

「逃げられたか。足の速い奴め!」

 

「いや、これで良い。傷は負わせた、追跡は容易だろう」

 

 鎧戦士は灰に、残りのゴブリン達の処理は?と訊く。

 

「全て処理は完了している」

 

 そう告げ、一旦戦闘は終了した。

 

 

 

二人は、残りのゴブリンを追う事を依頼主に告げ、巣穴へと進路を取った。

 

逃げたホブに出血を負わせたのは正解だった。

 

時刻は深夜だった為、暗闇の中では足跡の追跡は困難を極めたが、ホブに負傷させていたので血痕を辿れば良いだけだ、巣穴の特定は非常に容易だった。

 

巣穴の入り口に到達した二人。

 

「トーテムがあるな。シャーマンがいる証拠だ、罠と奇襲に注意して進むぞ」

 

「ああ、分かっている。人質も居るしな、乗り込むしかない」

 

 両者は互いに警戒を促し、巣穴に侵入した。

 

従来どおり、慎重に進軍する二人。

 

巣穴の道中には、ホブと思わしき血痕が奥へと続いている。

 

暫く血痕を頼りにゆっくりと進んで行く。

 

「俺がゴブリンなら……」

 

「この血痕を利用して、罠や奇襲に利用するがな」

 

 両者とも考えは同じだった。

 

突如、岩陰から一匹のゴブリンが姿を現し醜悪な笑みを向けて来た。

 

そして挑発気味に二人の侵入者を嘲り笑い、奥へ一目散に逃げ出して行く。

 

途中で不自然にジャンプしながら。

 

「……そういう事か」

 

 鎧戦士は妙に納得した様に呟き、只進んで行く。

 

そして不自然にゴブリンがジャンプした地点で立ち止まり松明を照らす。

 

「成る程な、出し抜いたつもりだろうけど」

 

 灰もそれを見て納得する。

 

それは横に並べられた多数の石だった。

 

「灰よ、分かるな?」

 

「無論だ。この石が罠の発動スイッチだ」

 

 冒険者がこの石に引っ掛かると、真上の大量の石ころや岩が頭上から降り掛かって来る仕組みだ。

 

ゴブリンを侮り慢心や驕りを抱く冒険者なら効果があっただろう。

 

だがこの二人は、ゴブリンを脅威と見なしている。

 

油断や慢心は、微塵も無い。

 

更に言えば、逃げたゴブリンの表情や行動の不自然さから、容易に罠の予測が付いた。

 

「このまま発動させて、解除するのも良いが……」

 

 鎧戦士は、暫し考え込む。

 

 

 

 

 

攫った一糸纏わぬ女性達に欲望を叩き付ける、シャーマンと複数のゴブリン達。

 

女性達は許しを懇願するが、悪辣なこの小鬼達にとっては加虐心を煽るだけだった。

 

打ち付ける欲望に一層熱が入る頃、耳障りな金属音が巣の出口から響いて来る。

 

その時『罠に誘い出してやった!』と、一匹のゴブリンが誇らしげに戻って来た。

 

シャーマンは行為を一旦中止し、訝しむ。

 

もし罠に掛ったのなら、不自然な金属音など鳴るだろうか?

 

恐らくは罠を回避し、誘い込む魂胆だろう。

 

 

 

――面白い!俺の強さを思い知らせてやる!

 

 

 

シャーマンは部下のゴブリン達や負傷したホブを引き連れ、残りの全戦力で出撃した。

 

不満を漏らす部下達を骨の杖で小突き、進軍して行くゴブリン達。

 

 

 

――突如前方から、木の投げナイフが飛来した。

 

 

 

運悪く先頭の一匹の頭部に刺さり、そのまま絶命した。

 

ゴブリン達が前方に視線を向けると、鎧戦士が松明を掲げ立ち止まっていた。

 

そして唐突に背を向け、走り去ってしまった。

 

ゴブリン達は、怒り狂い彼の後を我先にと追う。

 

仲間を殺されたからではない、自分達の領域を好き放題暴れ回る侵入者が許せないのだ。

 

自分達が人の生活圏を脅かすのを棚に上げておきながら。

 

 

 

鎧戦士が疾走する中、地面に落ちながらも燃え続ける松明を見付ける。

 

――先ず一つ目。

 

落ちた松明付近に並べられている横並びの石。

 

それを難なく飛び越え、更に疾走。

 

そして二つ目の落ちた松明。

 

その付近には、より多くの散乱した石が無造作に並べられていた。

 

――これだな。

 

鎧戦士は目一杯加速し、全力で散乱した石を飛び越えた。

 

「こっちだ!」

 

 奥で灰が手招きしている。

 

鎧戦士が灰の誘導に従い、彼と共に岩陰で身を隠す。

 

 

 

ゴブリン達が侵入者を追い、落ちた松明に目が行った。

 

付近には、自分達の仕掛けた罠の発動スイッチの石が並べられたままだ。

 

ゴブリン達はそれを飛び越え、更に二つ目の落ちた松明を見つけるが気に留める事無く、追いかけて行く。

 

付近の無造作に並べられた石も、邪魔だと言わんばかりに蹴飛ばす。

 

その瞬間頭上から、大量の石ころや岩が雪崩れ込んで来た。

 

追っ手の殆どがその岩石に飲み込まれ、残るはホブとシャーマンのみになった。

 

 

 

先ほど蹴飛ばした石ころ、それこそがゴブリン達の仕掛けた罠だったのだ。

 

一本目の落ちた松明付近の石は、見せ掛けだけの偽物。

 

二本目の松明付近の無造作に散乱した石が、ゴブリン自身の仕掛けた本物の罠だったのだ。

 

鎧戦士の提案で罠を敢えて解除せず、逆に利用する事にした。

 

そのままゴブリンを誘い込んでも、罠に嵌まる間抜けは居ないと判断し、見せ掛けの偽物を作りゴブリン達を誤認する様に仕向けた。

 

更に本物の罠を悟られない様に、無造作に石や岩を並べ自然に近くなる様に擬態した。

 

念を入れてゴブリンの跳躍では乗り越えられない様に範囲を拡大し、発動し易く細工した。

 

因みに細工は、灰の提案である。

 

結果誘引は成功し、残りは2匹。

 

追い詰めたつもりが逆に追い詰められ、逆上したホブが負傷も忘れ二人の冒険者に突撃した。

 

灰が前に立ちはだかる。

 

閉所である為、高速体術は使えない。

 

ホブ渾身の石斧を紅の盾で受け流す。

 

 

 

戦技、パリィング。

 

 

 

盾で攻撃の方向を変え、相手を隙を生む技。

 

凄まじい衝撃だった為、木製の紅の盾は破損してしまったが、大きな隙を作る事が出来た。

 

その隙を逃さず、ホブの喉下と頭部に連続で剣を突き入れる灰。

 

鮮血を撒き散らし、悲鳴を上げる事も無く倒れ伏し、そのまま動かなくなったホブ。

 

慌てたシャーマンが詠唱を始めるが、護衛も居ない状態では最早脅威と成り得なかった。

 

鎧戦士がナイフを投げ、シャーマンの顔に命中、詠唱を中断させた後距離を詰め頭部を剣で突き刺し、止めを刺した。

 

 

 

これで、巣穴のゴブリン達は殲滅出来た。

 

 

 

…子供達のゴブリンを残して。

 

 

 

巣穴の最奥に到達した二人は、攫われた5人の女性を発見。

 

うち3人は冒険者、2人は宿場村の宿泊客の様だ。

 

女性達を鎧戦士に任せ、灰は子供のゴブリンの処理を担当する。

 

怯えた目で此方を見る幼いゴブリン。

 

だが灰は躊躇う事無く、剣を振るい首を刎ねていく。

 

今の灰はゴブリンを討つ事に、何の忌避感も罪悪感も無かった。

 

攫われた女性はゴブリンの虐待によって消耗していたが、全員意識もあり自力で歩ける様だ。

 

ゴブリンの殲滅を確認した二人は、攫われた女性達と共に巣を後にした。

 

 

 

 

 

地平線が僅かに明るみ始め、もうすぐ夜明けの暁が訪れようとしていた。

 

宿場村に着いた一行は、傷ついた女性達の治療を村人達に一任し、灰と鎧戦士はギルドへと帰路に着く。

 

依頼人からは、せめてもの礼にと無料での宿泊を提案されたが、二人はやんわりと断った。

 

ならばギルドへ報告に向かう為、馬車で移動するので乗って行って欲しいと提案を受けたので、二人はその案に乗る事にした。

 

村の所有物にしては、かなり豪勢な馬車で、内装、乗り心地、馬の移動速度共に申し分なかった。

 

既に朝日が昇り、時刻は早朝。

 

戦闘と移動の疲労から馬車に乗っていた灰と鎧戦士は、眠りに就いていた。

 

暫しの休息……。

 

――突如馬車に激しい振動が起こり、急停車した。

 

その衝撃に二人とも、瞬時に目を覚ます。

 

武器を構え外に出た二人。

 

 

 

――ゴブリンの襲撃か?

 

 

 

馬車を飛び出た二人は周囲を警戒するが、襲撃者の姿は無かった。

 

何事かと、御者を兼任している依頼人に尋ねると、馬車の前方に人が倒れているのだと言う。

 

 

 

二人は馬車の前方に移動した。

 

そこには、赤汚れ黒ずんだ法衣に身を包み、全身血塗れでうつ伏せに倒れている人が一人。

 

 

 

法衣の紋章や首の認識票から、男の神官で青玉等級の冒険者である事が判った。

 

 

 

――二人は駆け寄り、生死を確認する。

 

 

 

まだ息はある様だが、血を流し過ぎたのだろう、顔に血の気が見られない。

 

灰は倒れている男神官に、エスト瓶を振り掛け、口に少量流し込ませた。

 

少し呼吸が安定したのを確認し、その負傷者を馬車に運び込む。

 

 

 

再びギルドへ向け馬車が移動を再開する中、男神官の意識が僅かに戻った。

 

そしてうわ言の様に言葉を繰り返す。

 

「…街のギル、ドへ……、ほ、報告を……何と…しても……」

 

 途切れ途切れの弱い口調…かなり苦しそうだ、このままではギルドに到着するまで、彼の容態が持つかどうかも怪しい。

 

よく見ると彼の手に、血濡れの用紙が握られていた。

 

重傷を負っても、その用紙は硬く握られており、確認する事は出来ない。

 

余程重要な物なのだろう。

 

ギルドに到着するのを待つしかない。

 

エスト瓶の効果により、出血は完全に収まったが、失った血が戻って来る訳ではない。

 

なるべく負担を掛けさせない様に、彼を安静にさせた。

 

 

 

彼が意識を取り戻す事を祈ろう。

 

 

 

 

 

馬車が大急ぎでギルドに向かう。

 

地平線には、うっすらと街の輪郭が姿を現していた。

 

 

 

 

 

 




 如何だったでしょうか。

ちょこっとだけ、黒いゴブリン改めダークゴブリンを登場させました。

彼をどう言う位置付けにするかは、まだ完全には決まっていません。



最後に、ロスリックの高壁から何とか脱出した男神官と合流しました。

彼を生存させるか、それともこのまま息を引き取るかは、ギリギリまで決めずにいようと思います。



少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

この様な行き当たりばったりな作品を読んで下さって本当に有難う御座います。

デハマタ。( ゚∀゚)/

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