ゴブリンスレイヤー ―灰の剣士―   作:カズヨシ0509

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ドーモです。
特に言う事はありませんが、今回は聖黄金樹の会合のお話です。

では投稿致しますドゾ。( ゚ ω ゚ )



第122話―聖黄金樹を巡って―

 

 

 

 

 

 

魔法灯

 

灯りの原点と言えば、真っ先に『火』が挙げられるだろう。

火の輝きは確かなる灯りで周囲を照らす。

しかし火を存属させるには、薪となる燃料が必須でもある。

その火の代わりに『魔力』による灯りを光源とする。

それが、この魔法灯だ。

勿論、用途に合わせ様々な形が存在し、主に魔法学院や知識を重んじる施設にて重用されている。

 

やはり永劫など、雲を掴むに等しい幻影だ。

存続には犠牲が必要なのだ。

薪となりし何かに縋る、それが人の業なれば――。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 先頭には見知った仲である、ソラールとジークバルドが守りを固め集団を先導している。

刺客と黒い手のカムイの戦闘も一先ずは収束した。

そにより、一定の安全は取り敢えずだが確保されたと言える。

今回の依頼主である王統府側も、それを見越した上で接触を図って来た。

 

灰の剣士と金剛石の騎士(国家元首)が邂逅する。

 

「…貴方様が、例の依頼人…?」

 

「その通り。しかし今は、()()()()として卿に臨みたい」

 

 古びた外套に覆われていたが、その隙間からは眩いばかりの甲冑が時折り見え隠れしていた。

二つの月光が乱反射する事で、実に多彩な光を放ち見る者を釘付けにする。

金剛石の甲冑を纏う冒険者――。

噂に誤りは無かったようだ。

 

「それでは、貴方様を何とお呼びすれば――」

 

 今回の来訪は、あくまで非公式であり大衆の面前で『陛下』と呼ぶのは極力控えねばならない。

――であるなら、『金剛石の騎士様』と呼ぶのが妥当だが、咄嗟の状況で長い固有名は不便が生じる事もある。

叶うなら短めの名で呼びたいものだ。

 

「我等は、この方をロードと呼ばせて頂いている」

 

 彼の問いには、ソラールが返答する。

金剛石の騎士は、国王に就任する以前から()()()の愛称で親しまれてきた。

それに倣い、ソラールやジークバルドも彼の事をロードで呼ぶ事を許されていたのである。

 

「ではこの私めも、ロードと呼ばせて頂いて宜しいでしょうか?」

 

「構わん、許す。……しかし、薪の王たる卿にしては、些かに低姿勢に過ぎるのだが?」

 

 灰の剣士の素性は、助言者により粗方把握している。

()()()()()()()とは言え仮にも大業を成した灰の剣士は、薪の王たる称号を有している。

実際、彼とこうして会うまでは、傲岸不遜極まりない人柄だと判断していた金剛石の騎士。

だが、いざ言葉を交わしてみれば見ての通り、灰の剣士は跪き頭を垂れ、普段から見慣れた臣下同様の態度を執っていた。

 

これが本当に王たる称号を得た人物の振る舞いか?

 

金剛石の騎士は、複雑な心境に見舞われる。

 

「思い違いをしておられるようですが、私めは唯の平民に過ぎませぬ。薪の王などという称号ですが、あの様な名声に如何ほどの価値も御座いませぬ。そもそも『王達に玉座なし』――それが私に課せられし縛鎖であり呪いでもあるのです」

 

「……奇怪な重荷よの。では今後、卿の事は『薪の王』ではなく『灰の剣士』と呼ばせて頂く。異論はないな?」

 

「――ハッ…!無論であります!」

 

 王都外れの祠で知らされた通り、この男が例の薪の王で間違いなかった。

少々想像とは外れていた人物だったが、確かに『薪の王』呼ばわりでは、事情を知らぬ臣民たちに要らぬ誤解を与える恐れもある。

周りがそうしているように、彼の事は『灰の剣士』と呼ぶ事にした金剛石の騎士。

 

「しかし…、卿の戦い振り…実に見事であった…!」

 

「――ハッ…恐縮至極に存じます」

 

 実は『男の調香師』が現れた辺りから、彼等は灰の剣士の戦い振りを静観していた。

灰の剣士という冒険者の実力――。

王宮に持ち込まれた水晶の記録映像などで、彼の戦い振りを見知ってはいたが、やはり映像などよりも直接この目に焼き付けた方が説得力は桁違いであった。

刺客たちとの戦いは兎も角、あの『黒い手のカムイ』との戦いには、金等級冒険者と言えども魅入られるものを感じていた。

彼等は改めて、灰の剣士という男の底知れぬ可能性を実感する。

 

「しかし腑に落ちん部分もあるな、灰の剣士とやら。あの最後に戦った二刀の剣士…、アレは刺客ではないのかね?我々が見た限り、和解にも似ていたが…?」

 

 金剛石の騎士に代わり、今度は赤毛の『枢機卿』が語り掛けて来る。

黒い手のカムイと死闘を繰り広げてはいたが、最終的には和解も同然に事が推移していた事に、彼は違和感を禁じ得なかったのだ。

あの男の素性も図れぬ部分はあったものの()()だという事は、遠間から静観していた彼等でも把握出来た。

遠回しだが『灰の剣士と刺客側は繋がっているのではないか?』、そういう疑念をぶつけたのである。

灰の剣士を見る枢機卿の視線は、鋭いものへと切り替わっていた。

 

無神経にも似た彼の言葉に、無言を貫いていた剣の乙女は一歩前へと踏み出していた。

周囲は彼女の微妙な変化に気付いてはいなかったが、かなり心象を害していたのは確かだ。

 

「…仰る通りです。私と彼等は、ある意味で密接に関わっております。……あまり長くは話せません故、簡潔に。…彼等はロスリック城に属する住民たちです」

 

「――何っ!?それは真の話かッ!?」

 

 灰の剣士は、敵側の間者(スパイ)の可能性もある。

実は、そう疑いの目を向けていた枢機卿。

しかし、当の本人から寄せられた言葉は、彼の予想外をいくものだった。

 

確かに灰の剣士は()()()()にロスリック城と関わり、対峙した悉くを敵として屠ってきた。

最後の薪の王たる資格者『ロスリック王子』を殺し、その薪を玉座へと連れ戻すという使命がある以上、敵対は避けて通れない道だったのだ。

避けようもない敵対関係にて繋がりを持つ――。

 

枢機卿の疑念通り、灰の剣士とロスリック勢力は確かに関係性を有していた。

 

その事情を告げた上で彼は、ロスリック城での体験談と黒い手のカムイとの会話を少しだけ語る。

 

……

 

「…なる程。現在ロスリック城を牛耳っていると思わしき『妖王オスロエス』なる先王か。…して、その組織も魔神軍と提携しているというのだね?」

 

「はい。カムイの言によれば――」

 

 彼の説明を一通り聞いた『銀鎧の騎士』の質問に、彼は()と応える。

 

妖王オスロエスの率いる組織、その先王に囚われている兄王子『ローリアン』の救出、そして現在のロスリック城へと流れ着いた地域の近況――。

灰の剣士からの報に、王統府のみならずソラール達も言葉を失っている。

 

「…そうだったのか。要らぬ疑いを向けた非礼を許して頂きたい、灰の剣士よ。魔神軍との戦いも始まり、周りはみな疑心暗魏に駆られているのだよ」

 

「気にしてはおりませぬ。私めも、よもや敵側から接触を図るとは予想しておりませぬ故――」

 

 強力な味方になるであろう灰の剣士に疑いの目を向けた枢機卿だが、事情を知る事で彼に謝罪の意を表した。

尤も灰の剣士自身も、王統府側の事情もある程度汲んでいた為、さほど不快には感じていなかった。

寧ろ周囲を徹底的に監視し警戒を厳としなければならない程に、危うい状況でもあるのだ今は――。

大半の住民達は、未だに平和な世の中だと思い込んでいるが、実際問題、直ぐ其処まで魔神軍の侵攻は迫っていた。

現に北方辺境では、小競り合いが勃発しているのが現状だ。

そういった理由もあり、王統府上層側は非常な緊張に包まれていたのである。

ほんの些細な災いの芽すら摘まねばならない程に、国家の趨勢(すうせい)は不安定で危ういものだった。

 

「さて、此処で長話に興じては、会合に出遅れてしまう。そろそろ現場に向かおうではないか諸君」

 

 何時までもこの場に留まり会話に興じていては、本来の目的を見誤ってしまう。

金剛石の騎士は会話を切り上げ、歩みを再開する事にした。

まだ安全が保障された訳はないが、この辺りの敵は一掃された。

灰の剣士と合流した一団は、現場に指定されている『火継ぎの祭祀場』へと向かった。

 

「まさかオーベックと貴公までもが、招かれていたとは思わなかった」

 

 一団の中に、オーベックと輝石の貴公子の姿を確認する灰の剣士。

当初の予定には組み込まれていなかったため、彼は意外そうな表情で話し掛ける。

 

「まぁ俺も、お前と同じ側の住人だからな。ある意味で必然という事だ」

 

「僕が召致された理由など、もうお判りでしょう、褪せ…灰人さん」

 

 オーベックは『賢者の学院』への入学を希望しており、便宜を図ってもらう見返りとして可能な限りの情報を提供していた。

接ぎ木の貴公子は『狭間の地』と呼ばれる異界の出身者だ。

彼等の持つ情報と知識は、王統府側にとっても非常に有益であり興味をそそられる価値があったのだ。

その為この二人は急遽、ギルドからの要請を請け領主館に招かれたという訳だ。

 

「卿らのお陰で、幾許かの疑念を晴らす事も叶った。今後の活躍も期待しているぞ」

 

「「ハッ、有り難きお言葉…!」」

 

この二人…特に輝石の貴公子からの情報で、カッコウ騎士団の正体も暴く事が出来た。

しかし彼本人も、まさかカッコウ騎士団まで四方世界に流れ着いているとは想像だにしておらず、逆にソラールからの報で驚愕してしまった程だ。

彼の想像もつかない領域で、次々と狭間の地の住民が流れ着いている事実――。

 

鈴玉狩りの件と言い、カッコウ騎士団の件と言い、四方世界の混乱は更なる深みを増大させていた。

 

「そういう貴公なら『調香師』についても知っていると思うが、あの男から拾い上げた物だ。確かめてくれないか?」

 

 そうだ――。

狭間の地出身であるこの少年なら、調香師の知識も持ち合わせている筈――。

先ほどの戦いで絶命した、男の調香師から拾い上げた『調香瓶』と『調香鞄』を少年へと見せる。

あの男の調香師は、狭間の地より流れ着いた者である可能性が浮上していた為、灰の剣士も密かに気になっていたのだ。

 

「……。ええ、間違いありません。この瓶も鞄の中身も、全て僕の見知った物ばかり…狭間の地『アルター高原』にて入手できる素材が大半です」

 

「…そうであったか」

 

 輝石の貴公子は暫しの見分の後、狭間の地『アルター高原』由来の代物であると断定する。

これで確定した。

何時からなのかは判断できかねるが、狭間の地から四方世界へと流れ着く者が予想以上に多いと判断出来た。

 

「卿は、聖黄金樹とやらを通じ、例の異界へと旅立った訳かね?」

 

「はい、仰る通りです。最初は偶然の産物だったのですが…」

 

 金剛石の騎士を始めとした面々も、狭間の地と呼ばれる異界には興味を抱いている。

彼の質問に、灰の剣士は当時の経緯を語った。

 

当初は依頼の遂行と修練を目的とした上で、聖黄金樹のソウルと同調させていたのだが、気が付けば狭間の地へと降り立っていたのである。

その時の彼は、『褪せ人』と呼ばれる一人の男へと乗り移り、狭間の地にて戦いを繰り広げたものだ。

灰の剣士はソウルの感知と同調に長けている為、その時から狭間の地へと降り立つ手法を漠然と掴んでいた。

(本編前夜編 第101話参照)

そういった理由もあり、2回目からは難航する事無く狭間の地へと降り立っていたのである。

そして数多くの道具と輝石の貴公子が流れ着いたのも、その2回目の旅路が大きな要因となっていた。

(本編前夜編 第103話参照)

 

「そう言われると、例の鈴玉狩りやカッコウ騎士団の暗躍にも、より一層の説得力が増すのも頷ける話だ」

 

「狭間の地…聖黄金樹…。薪の…もとい灰の剣士よ、我々でも狭間の地へと降り立つ事は可能か?」

 

 灰の剣士の話を聞いたジークバルドは、あの鈴玉狩りの件やカッコウ騎士団についての考察に耽っている。

そして金剛石の騎士だが、自分達でも条件を揃えれば『狭間の地』へと旅立てるのではないか?

そんな疑問を、彼へと投げ掛けた。

 

「…確証は持てませんが、聖黄金樹のソウルと自身のソウルの波長を同調させれば或いは…」

 

「…ふむ、可能性が無い訳でもないと…」

 

 灰の剣士からは少々曖昧な答えが返って来たが、決して不可能ではないと結論付ける金剛石の騎士。

 

「陛下…まさか…」

 

「……。事の詳細は後程じっくりと聞くとしよう」

 

 思案する金剛石の騎士の様子に、赤毛の枢機卿は溜息を吐く。

彼とは昔ながらの付き合いで、考えている事など容易に想像がつくのだ。

 

――失敗する事を切に願わんよ。この件ばかりはな…。

 

大方、自分も狭間の地へと降り立とうと画策しているのだろう。

狭間の地などという未知なる異界へと旅立ち、万が一の危機が訪れた場合どう対応する積りなのだろう。

今も冒険者の身でありたい望みは察するが、国家元首という重い立場に置かれている自覚が少々足りない様にも思える。

枢機卿は、彼の目論見が失敗し断念する事を願った。

 

「あとジークバルド…。巨人王ヨ―ムの所在も判明したぞ」

 

「――何と…!…では、彼の者は何処にッ……!?」

 

 カムイから齎された、巨人ヨ―ムの行方――。

思いもよらぬ情報に、ジークバルドは驚きの声を上げた。

灰の剣士は更に言葉を続ける。

 

巨人ヨ―ムは罪の都には居らず、魔神軍の虜囚となっている。

 

「何という事だ。よもや我が盟友が、その様な仕打ちを…。いや、あの者は強い。然う然う魔神軍の思い通りにはならぬ筈だ…!…しかし…う~む…」

 

 魔神軍に囚われた盟友の身を案じるジークバルド。

確かに彼にとっては心中穏やかではない悲報であり、ジークバルドは今後の身の振り方について頭を悩ませていた。

 

「我々に協力すればいい、カタリナの騎士殿。我等と行動を共にする限り、魔神軍に接触し易くなる上、情報の提供も可能だ。王統府と繋がる事は、貴殿にとっても何ら悪い話ではないと思うが…?」

 

 銀鎧の騎士が、便乗するかのように誘いをかけて来る。

確かにヨ―ムがロスリック地下深くの『罪の都』に居ない以上、その地に目指す理由が消失してしまった。

その上、魔神軍に囚われているのなら、王統府側に協力し同行する事で目的を果たし易くもなる。

またジークバルドが騎士という身分である以上、王統府側と繋がりを強くする事にも後々利点に働く筈だ。

彼自身の目的を果たせば、一生冒険者で居続ける理由は特にないのだ。

この国で居を構える積りなら尚の事、王統府側との関係を深めておけば社会的立場にも融通を聞かせて貰い易くもなる。

銀鎧の騎士の誘いは、ある意味で魅力的でもあった。

 

「その話は、何れ場を設けてからにいたそう。今の我々には、成さねばならん大義がある故な」

 

 ここで金剛石の騎士が、話に割り込んできた。

何も早急に事を急ぐ必要はない。

今答えを急かすのは、ジークバルドの心象を害す可能性に繋がる。

折角、強力な味方が参入しようとしている矢先、わざわざ印象を悪化させるのは愚の骨頂。

取り敢えずは彼に考えを纏める時間を与え、改めてじっくりと交渉の場を設ければ良い。

 

「ご配慮に感謝致します、ロード」

「気にするな。私も一騎士の端くれ故」

 

 ロードの気遣いに感謝の意を示すジークバルド。

 

こうして一団は、現場へと歩を進めて行く。

道中、幼夢魔が嬉しそうに灰の剣士へと纏わり付き積極的に話し掛けてきた。

余程、彼との再会を心待ちにしていたのだろう。

時々神官戦士たちに窘められながらも、彼女は彼に寄り添い離れようとはしなかった。

 

……

 

   デエェェ ―― 火継ぎの祭祀場 ―― ェェェエン

 

火の陰りし彼の時代――。

その名残とも言える、古びた施設の亡骸――。

火継ぎの祭祀場と呼ばれる石造りの施設に、彼等は一堂に会していた。

 

只人を代表する王統府一団――。

 

森人勢力の代表一団――。

 

両陣営とも形式に則った挨拶を交わし、中心部へと続く階段を下りる。

その中心部とは、嘗て火防女と篝火を起こし憩いとしていた場所だ。

篝火用の石鉢も今は撤去され、誰かが用意したのであろう上質の大卓と椅子が並べられていた。

また此処で発見された当時は、灯りなど完全に消え去っていたが今は新たな灯りが設けられている。

魔法の灯かりだろうか。

火ではない魔法灯が辺りを照らし、足を踏み外す危険性はない。

 

――そこそこには手入れされてるな。補修工事の人員たちだろうか?

 

最前列へと陣取り、一団を先導する灰の剣士。

内部は相変わらずだが、細やかな部分で変更が加えられている事に気付いた。

 

「相当古い遺跡ですね。いったいどれ程の年月の間、存在し続けていたのでしょう?」

 

 ふと声を漏らしたのは、森人勢力の長とも称されている『花冠の森姫』の上森人。

彼女も例に漏れず外套にて姿を覆っていたが、頭部だけを出し物珍し気に周囲を見回していた。

上森人なだけあり、あの妖精弓手と同様に長い耳を持つ。

また見惚れするような美貌を放ち、只人の女性である剣の乙女や他の女性陣は挙って息をのんだ。

 

「正確には私めも把握してはおりませぬ。しかしこの施設は、外界とは切り離された異空間に存在し付け、突如としてこの世界へと流れ着いた。それ故、然程の風化は進行していないかと存じます」

 

 上森人は不死に近い寿命を有す種族だと、灰の剣士はそう記憶している。

そんな上森人の長とも言える彼女でさえ『火継ぎの祭祀場』を知らないのなら、灰の剣士たちは途轍もない時代に活動していたという事になる。

だが火継ぎの祭祀場は、大して風化してはいない。

矢張り切り離された別空間に存在し続け、何らかの原因で此処に現れたという事に繋がるのだ。

 

「只人の剣士よ。あの玉座らしきものは一体…」

 

 花冠の森姫の隣に居た、同じく上森人の男性が彼に訊ねる。

中央を見下ろすかのように設けられ古くも厳然たる石造りの五つの玉座――。

殺風景な石造りの空間に、一際目の惹く存在感を醸し出していた。

 

「遥かなる太古の時代に行われた『最初の火継ぎ』…その儀式を再現させるには、薪の王たる資格者を玉座に呼び戻さねばなりませんでした――」

 

 灰の剣士は、知り得る限り…しかして簡潔に玉座の役割を説いてゆく。

 

――…何をやってるんだ、私は…?

 

少々熱弁してしまっただろうか?

ここに訪れた目的は、政治的な会合に参列する為だ。

今の彼は宛ら、引率(ガイド)役そのものだった。

 

「此処に来たのも2回目ね…って、また顔を会わせる事になったわね。ミスマゴール」

 

「私も故あっての事でな」

――此処に居るという事は、彼女は身分の高い王族に相当するのやも知れんな。

 

森人勢力には、あの妖精弓手も参加していた。

傍には同期戦士たちの姿は見えず、彼女のみが此処に居る。

同じ上森人である以上、彼女も例に漏れず位の高い人物なのだろうと見切りを付ける。

 

「あれぇ…?上の方に誰か居る様な……?」

 

 中心部に辿り着き大卓の周囲に設けられた椅子へと各々が着席しようとした時、不意に幼夢魔が高い天井を不思議そうに見上げていた。

彼女の言によれば、誰かの存在を仄めかしている。

 

「ふむ…言われてみれば、何者かのソウルを微かにだが感じるな」

 

 幼夢魔に釣られ、ソラールも天井を見上げる。

流石に高い天井までは光源も届かず暗闇状態なのだが、何かの気配を確かに感じ取っていた。

 

「あ、あたし見てきますね~。ってこの服ホント邪魔ぁ~ッ!」

 

「――あ、これ!皆の前で、はしたない…!」

 

 幼夢魔は率先して天井を確かめようと飛行しようとする。

しかし彼女も至高神の神殿入りの立場である為、聖職服を纏っていた。

彼女は背に翼を有していたが、展開するにはどうにも衣服が邪魔で仕方がない。

そこで躊躇いも無く幼夢魔はブカブカの衣服を脱ぐ捨ててしまい、扇状的な姿を衆目に曝け出してしまった。

ほぼ裸体と変わら下着かどうかも怪しい布切れは、女の象徴的な部分を…あまり隠し切れてはいなかった。

()()が辛うじて隠れているのみだが、当の本人は完全に素知らぬ顔だ。

その()()()()()()とした振る舞いに、神官戦士長が何かと るものの、彼女は何故か誇らし気に胸を張る始末だ。

少し成長したのだろうか。

幼夢魔の身体は更に丸みを帯びていた。

 

「――ウワわわ…すっげぇ…///」

 

 ソラール一党に所属している男槍の徒などは、彼女の全裸同然な身体に目を見開き凝視していた。

 

「そこの君、見過ぎじゃないかな…?」

 

「そういう少年も…の…!」

 

 男槍の徒の無遠慮な視線に、輝石の貴公子が呆れ顔で言及する。

だが、そういう本人も幼夢魔の身体に釘付けとなり、ソラール一党に付いて来た鉱人導師にツッコミを受ける。

 

「あまり視線を集中させるのは礼節に反しますよ。それ程に興味がお有りなら、私のを後で好きなだけお見せいたします」

 

 少年二人を嗜める戦女神の女司祭だが、彼女も妙な部分で何処かズレていた。

 

「「……」」

 

「大変じゃのう…太陽の」

 

 ダンマリを決め込むソラールと赤毛斥候に、同情の念を向けた鉱人導師であった。

 

「――んじゃ行ってきまぁ~す♪」

 

「――無茶しなさんな、お嬢ちゃん!」

 

 周囲の騒動など露知らず、すっかり身軽となった幼夢魔は天井めざし飛翔を開始した。

そんな彼女に、ジークバルドの相棒を務める女部族が気遣いの声を掛ける。

 

「本当に飛んで行くとは。曲がりなりにも魔神の娘なのだな」

「しかし、あの少女の心は完全に秩序側。もう危険は無いと判断して宜しいのですね、剣の乙女?」

「ええ。保護した当初は、どう教育したものかと苦慮しておりましたが、今やすっかり秩序側ですわ。……()()()()かの働きで…ね?」

 

「……」♪~ (゚ε゚;)プイ

 

 飛翔した幼夢魔を見上げ、銀鎧の騎士と赤毛の枢機卿は剣の乙女へと彼女について問う。

そして剣の乙女も、幼夢魔の教育には間違いはなかったと応えた。

…灰の剣士へと、眼帯越しに意味あり気な視線とクスっと微かな笑みを送りながら……。

対する彼女の仕草に気付き、僅かにそっぽを向く灰の剣士。

 

「ちょっと貴方達。なに前屈みになってるのよ?」

 

 因みに森人側では、妖精弓手が数人の付き人に苦言を呈していた。

どうやら森人の男性諸氏も、幼夢魔の肢体には劣情を催していたらしい。

上森人の男性と老齢の森人は、フード越しに溜息を吐きながら頭を振る。

 

幼いとはいえ、魔神の眷属という事か。

天井部付近に光源などほぼ無く、暗闇に覆われている。

だが彼女は何ら不自由を感じる事無く、直ぐに人影を発見した。

 

「こんにちわ~…じゃなくって、こんばんわ~…かな?まだ夜だし♪」

 

 屋根を支える天井野縁(てんじょうのふち)に潜む一人の人物に、場違いに陽気な声を掛ける幼夢魔。

彼女の声に反応した人物は、驚いたように反応を示し彼女の方へと向く。

 

「わぁ何ですか、その大きな壺みたいなの?」

 

「――ええぃ、アッチ行け、シッシ…!」

 

 怪しい人物は、大型の壺らしき陶器をロープでぶら下げており、それに気付いた幼夢魔は興味を持つ。

だが余程都合が悪いのか、人物は幼夢魔を追い払おうと振り払った。

 

「えぇ~、教えて下さいよぉ…!?その壺、何が入ってるんですか?」

「――うるせぇ、近寄んじゃねぇよ!トットと、どっか行け……って…あっ――」

 

 人物の邪険な対応にも構わず、幼夢魔は尚も中身を教えて貰おうとせがんだ。

そして壺に触ろうと近寄り、人物はそれを阻止しようと細い足場の上で抵抗する。

その細い天井野縁(てんじょうのふち)の上で無理に動き回ろうとすれば、後は想像するまでもない。

 

「――ああああぁぁぁぁ……!!」

 

 案の定、怪し気な人物は足を踏み外し遥か下まで自由落下した。

 

「ありゃりゃ…落っこちましたね?」

 

 仕出かした事の重みなど露知らず、幼夢魔は下層へと視線を送るのみ。

 

……

 

結果だが、天井から落下した人物は()()()()

下層で待機していた者達が受け止め、彼が所持していた大壺も受け止められた。

この人物だが、暗殺を目論む刺客である事が判明――。

会合中に大壺を落下させる事で、重要人物の抹殺を図っていたとの事だ。

 

つまり、この刺客が所持していた壺は、大型の『壺爆弾』という事になる。

また単なる火薬だけではなく、爆風と共に広範囲に渡り鋭い破片を撒き散らすという質の悪い殺傷兵器だ。

たとえ殺害に至らずとも重傷を負わせる事で、今後の政治活動に支障を与える事も考慮しての2段構えで臨んでいたと自白した。

そして標的だが、人族側の国王は無論、森人側の『花冠の森姫』も含まれていた。

 

幼夢魔の行動で暗殺失敗となった刺客の男――。

今現在、確保という形となった訳だが、肝心の依頼主については頑なに口を割ろうとしなかった。

大した忠誠心だと王統府は多少の感心を抱いたが、実際は報酬に目が眩んでいただけだ。

 

成功報酬は、金貨10枚と奴隷少女一人という、何とも闇を感じさせるものだった。

上流階級にとっては、たかが金貨10枚など取るに足らない額。

しかし彼は貧困層出身で、少女と金が同時に入るという誘惑に抗う事が出来なかった。

 

だがここで()()()()が、更なる好条件を課し此方側に引き込む作戦に出る。

その条件とは『王宮で働かせる』という内容だ。

確保された事で、即処刑されるだろうと諦めていた刺客の男。

だが思わぬ条件を提示され、少々間の抜けた顔を浮かべてしまう。

 

たかが金貨10枚では、数週間で使い切ってしまう程度の額。

況してや奴隷少女まで付けられては、後々単なる枷にしかならない筈。

長期的に鑑みれば、とてもではないが快適な暮らしには程遠い。

しかし王統府側に与し、王宮で働くのなら安定した給金(毎月、金貨10枚以上)生活環境(衣・食・住)が保証される。

仮に女が欲しいのであれば、職場(若い小間使いの少女だらけ)で好きなだけ口説けばいい話だ。

 

このまま罪人として刑罰に服すのか、新たな職を得て社会復帰を果たすのか。

国王からの選択肢に、僅かな逡巡を見せた刺客の男――。

だが幾分の理性は残っていたらしく、刺客の男は国王の条件を飲む事に決めた。

 

そして刺客の男は、そのままの流れで依頼主の名を白状した。

 

彼の依頼主は、王都に在住する『評議会一派』の仲介人から依頼された事を明かす。

正確には『評議会・議長派』と言った方が正しいだろうか。

その名を耳にした王党派は、神妙な表情を浮かべ考え込む振る舞いを見せる。

心当たりが有るという事か。

 

評議会・議長派――。

一言で評すなら、反王党派の組織である。

 

君主制を廃し、王侯貴族の代表から成る組織で国家運営を果たすべき。

 

その様な理念を掲げ活動を続ける一派だ。

 

国王一人による舵取りなど古く悪しき過去の遺灰――。

今や選ばれた代表が、国を取り仕切る事こそ発展の要となる。

一応は『権力の集中による腐敗を防ぐと』という目標を掲げ改革を推し進める組織だが、かなり闇を孕んだ活動が波紋を呼んでもいた。

また過激な思想を持つ者が多く所属しており、前々から王党派の監視対象に含まれていたのである。

そして近年、王都にて大きな事件を引き起こした事で、金剛石の騎士に扮した国王自らが事件解決に乗り出す。

彼の活躍もあり、悪事に加担した幾つもの傘下組織は軒並み壊滅させられた。

それを機に王党派は、評議会・議長派の傘下組織を次々と壊滅させる事で、その行動力を削ぐ事に成功した。

評議会・議長派は所謂『急進派』の集まりで、遂に中心人物である『議長』の所在を特定し『逮捕』に至る。

また『議長』だけでなく主軸となった構成員も悉くを確保し、牢獄館へと軟禁。

それに伴い組織は実質壊滅にも等しい程に無力化され、残った穏健派も主だった活動を見せる事はなかった。

ここ最近は、大人しい傾向にあったが、この機を狙い再び動き始めた評議会・議長派。

長である議長と主要構成員は全て逮捕した筈だが、新たに指揮する者が現れたという事だろうか。

新たな指導者…何者だろう?

 

――評議会・議長派…か。混沌勢との繋がりも視野に入れた方がいいな。

 

道中で襲撃してきた『調香士』率いる刺客の一団――。

そして今此処に居る刺客の男――。

無関係でないのは分かる。

灰の剣士は、今の組織とオスロエス一派や魔神軍との関連性を考察していた。

 

「落っこちちゃったけど、大丈夫でしたか?」

 

 ここで幼夢魔が戻って来る。

 

「あれぇ?またアタシ何かやっちゃいました?」

 

 何とも間の抜けた雰囲気で、事の重大さは理解していない様子だ。

彼女の行動に、神官戦士たちは睨みを利かせたが、当の本人は素知らぬ顔でまるで自覚がない。

だが灰の剣士は、彼女に親指を立てた『サムズアップ』で称賛を送り、幼夢魔もドヤ顔で胸を張り応える。

 

「いいから早く服を着なさい…///」

 

 因みに幼夢魔の下着同然な衣服はズレ、小ぶりな胸の先端部は露出していた。

見るに見かねた神官戦士長が、紅潮しながらやっとの思いで聖職服を着せる。

 

――ん?森人側で、ソウルが跳ね上がった!?

 

幼夢魔の行動で、作戦が失敗した最後の刺客――。

その後、王党派への寝返り――。

その一連の流れに、どういう訳か森人側からの『ソウルの乱れ』を感知した灰の剣士。

全員ではないが、数名の森人男と老森人から()()()()()を察知する。

 

「……」

 

 灰の剣士は敢えて口に出す事なく、静観を決め込む。

 

多少の騒動はあれど、いよいよ本格的な会合が執り行われる事となった。

 

……

 

森人側の要求だが、王統府が予想していた以上に()()()だった。

 

   ―― 聖黄金樹は森人のみで管理し、他の種族による干渉一切を禁ず ――

 

つまりは『独占』である。

王統府側では『共有と称した森人の主導管理』と踏んでいただけに、この主張は少々予想に反するものだった。

 

「その主張は、貴方個人の意見ではありますまいか?」

 

 森人側の主張――。

『はい分かりました』と素直に受け入れる只人側ではない。

 普段日和見的とも言える森人勢力にしては、随分()()()とも言える主張だ。

その事に違和感を覚えた『国王』は、発言者である男森人に言葉を返した。

 

聖黄金樹の独占を発言したのは、森人側の長である『花冠の森姫』ではなく、この()()()である。

確かに会合に出席するだけ立場だ、重要な官職を任されているのは理解出来る。

しかし、この男森人にどれ程の権限があるというのか?

花冠の森姫を差し置き、よもや森人勢力の全てを担っている訳ではあるまい。

 

「これは異な事を?私の言葉は王妃のお言葉も同然。我が要求を早急に受け入れ、早々に終わらせたいものですなぁ!?」

 

「――言葉を慎んで頂こう!仮に貴殿が全権を預かっているのなら、女王を始めとするお歴々は、ただのお飾りという事になりますぞ!」

 

 不遜ともいえる男森人の高圧的な言葉に、銀鎧の騎士も反発の意志を示す。

 

「無礼者!我々森人は長年に渡り、自然豊かな樹海の環境保全を使命と課し、これまで管理運営に心血を注いできました。しかし貴方がた只人ときたら、開拓や開発と称し要らぬ自然破壊と闘争の歴史を繰り返すだけではありませんか!?況してや、寿命も精霊との調和も我々に遠く及ばない()()()()ごときが、あの神々しいまでの『聖黄金樹』を抱こうなど自然に対する冒涜千万!万死に値しますなッ!」

 

 ここで老森人が、声高々に発言した。

老齢とは思えない程に、その声量は勢いを感じさせるものだ。

 

「――無礼なのは、そちらであろう!これでは恫喝ではないか!?」

 

 今度は神官戦士達が、老森人の言葉に反発する。

過剰ともいえる老森人の主張に、憤りに近い感情を露にしていた。

 

自然環境と共に歩んできた森人勢力――。

開拓と開発に勤しみ、文明発展を遂げてきた只人側――。

 

ここで両陣営の抱える価値観の違いが浮き彫りとなり、剣呑な空気感が溢れようとしていた。

 

老森人の主張は、確かに反論できない部分はある。

しかし彼の言葉には、只人に対する侮蔑の感情が込められているのは間違いない。

彼の発言には看過に堪えないものがあり、次第に只人陣営は不信感を募らせつつあった。

 

『フンッ…!只人風情に、かの樹木を擁す資格など無いわ!』

『全く以てその通り!種族の分を弁えたまえ!』

『森を焼き、水を汚し、汚物を垂れ流す…!鉱人以下の蛮族よの!』

 

『長き時を貪り怠惰に生きる森人ごときが、何を偉そうに…!』

『魔神軍に抗しているのは我々只人だ!だが日和見の貴様らときたら、ただ傍観するだけの臆病者…!』

『長寿なのは結構だが、停滞に甘んじ前に進む事に消極過ぎはしないかね、森人は?』

 

『蛮族がぁ!斬られたいかぁッ!!』

『無礼ものぉ!矢の的にしてくれようぞ!』

 

もはや会合どころではない!

両陣営…と言っても一部の臣下たちが互いを罵り合い、一色触発な状況へと発展していた。

 

聖黄金樹の対応を巡る協議だ。

これは両陣営にとって大きな政治的意味合いを持ち、相互の未来と関係性にも関わる重要な案件なのだ。

感情論だけに身を任せ、この会合を無駄にする訳にはいかない。

そもそもこの場を取り持ち整えるだけでも、相当数の人員と資金が裏で動いてきたのである。

当然、それに付随した小さな依頼も多数発生しており、幾人もの仕掛け人や冒険者たちの(ささ)やかな物語(アドベンチャー)も生まれていた。

下らぬ諍いなど早急に鎮めねばならないのだが、両陣営の面々は武器を引き抜かん剣幕だ。

 

「どうする?ここは我等で抑え込もうか?」

 

 後方に座していたソラールは、隣のジークバルドと灰の剣士に耳打ちする。

彼等は、大卓の後方に設けられた席へと腰を降ろし、会合の行方を見守っていた。

しかし今の荒れ具合――。

これ以上静観に堪えない状況に、そろそろ動くべきではないのかとソラールは動きを見せようとしていた。

 

「少し待ってくれ。その割に両陣営の長たちは、全く動じていない。それに先ほど発言していた、森人達のソウルだが、かなり悪意に塗れている」

 

 ここで灰の剣士が()()()をかける。

彼が言うには『国王』や『花冠の森姫』といった長は、荒れた状況にも関わらず全く動じてはいない。

その上で灰の剣士は、森人側のソウルを今一度探るべき、と意見した。

 

「ふむ…言われてみれば」

 

 彼の考えを受け、ジークバルドも森人側に意識を集中させる。

彼の言う通り、老森人や男森人を始めとした数名の側近達だが、乱れに乱れたソウルの波長が流れ込んで来た。

 

「それに妙だな。あの上森人連中、何か目配せしてやがる…」

 

 ここでオーベックも、森人側の怪しい点を看破する。

どうにも先程から、森姫を始めとした森人の長たちは静観を貫きながらも上森人同士で目配せし合っていた。

それは今も行われており、オーベックはその事に一種の疑念を抱く。

 

「天井から落ちてきた例の刺客の件…。アレが切っ掛けで、彼等のソウルが一気に揺らいだ。これは何かあるぞ…!」

 

 ここで灰の剣士が、先ほど確保した刺客について言及する。

会合が始まる前、幼夢魔の行動で刺客の一人が天井から落下した訳だが、結果的に暗殺は失敗。

その後、男を雇った依頼主は、『評議会・議長派』なる組織だという事が判明した。

組織名からして只人側の勢力の筈だが、何故か数名の森人がソウルを乱れさせたのである。

 

ソウルの乱れは感情の乱れ――。

 

その乱れは()()()()()といった類の感情である事を、灰の剣士は捉えていたのである。

その事に疑念は抱いていたが、真相が見えない以上迂闊に動く事は慎まれた。

 

「あの森人連中、さっきの()()()()()と繋がりが有るって事か?」

 

「まだ確証は無いがな。だが今は、静観を続けた方がいいだろう」

 

 オーベックが思うように、森人陣営と評議会なる組織との繋がりも考えられる。

しかし上森人たちの様子の方が、寧ろ気になって仕方がない。

心なしか、今騒いでいる()()()()()()()は別の派閥という線も考えられ、一致団結している訳でもない可能性も見受けられた。

 

『花冠の森姫』、その婚約者とも言われる『輝ける兜の森人』、そして『妖精弓手』…。

 

どうにもこの3名と、今騒いでいる森人陣営とは()()()()()()()()様に見えて仕方ないのだ。

そして此方の王統府側だが、彼等も彼等で下手に行動を起こす事無く静観を貫いていた。

 

神官戦士を始めとした()()()()()()()()――。

上森人に追従する付き人達を除く、()()()()()()()()()()()()()()()()()――。

諍いを繰り広げていたのは彼等だけであり、長たちは我関せずで互いの視線を交わしていた。

 

「俺は仲間達を抑えておく、このままでは参戦しかねんからな」

 

 ここでソラールは、自分の一党を鎮めに掛かる。

よく見れば彼等も騒ぎに乗じる一歩手前であり、ソラールは彼等を抑えに動いた。

 

幾許かの時間、激しい口論を繰り広げていた両陣営――。

しかし此処で、この街の領主でもある司祭長が声も高らかに宣言した。

その声音は力強く、とても初老を迎えた壮年女性とは思えない声量と迫力に、両陣営は静まり返り彼女の方へと視線が集中する。

 

彼女は静かに一つの案を提示した。

 

それは『聖黄金樹』を、西方樹海の境目に移し替えようという案である。

 

この街の更なる西方には、非常に広大な樹海が存在している。

花冠の森姫や妖精弓手の故郷は、樹海奥深くに存在しており通称『西方樹海』と公には認知されている。

森人の故郷でもある『西方樹海』は、只人や他種族の伐採や開拓など一切の手出しが禁じられており、既に『絶対不可侵条約』が締結されている状態だ。

しかし、極稀に非合法な活動に従事する輩も居るのは事実。

心無い賊徒が、樹海の貴重な樹木や動物の密漁に手を染め、奴隷商人が森人を攫う事件なども発生していた。

樹海の境目は森人と只人の()()()として定められていたが、それに従わない心無き者も存在しているのは頭の痛い問題である。

今の処、只人側と森人側は概ね良好な友好関係を維持していたが、不祥事が今後も続く様では何時の日か関係悪化にも繋がりかねない。

 

そこで、街の領主である司祭長が提案したのが、森人と只人の国境線とも言える『西方樹海』の境目に『聖黄金樹』を移し替えてはどうか、という考えを示した次第である。

淡い黄金色の光を放つ樹木など、この四方世界を隈なく探しても然う然う在りはしない。

あれ程人目を引く『聖黄金樹』を国境線の指標とすれば、心無き輩の牽制と圧力に効果を発揮し、おいそれと手出しし難くなるのではないか。

そういう案だ。

 

「「「「「……」」」」」

 

花冠の森姫を筆頭とする森人側は、暫し無言で思案している素振りを見せる。

しかし、その沈黙を破る森人が一人――。

 

「――はんッ…!何を言い出すかと思えば、あの偉大な樹木を只人側の領域にも重ね合わせるなど、愚の骨頂!聖黄金樹の植生場は、我が故郷の()()()以外にあり得ぬわ!50やそこらの老いぼれごときが、とうとう呆け始めたかぁッ…!?」

 

 先ほどから只人を罵り牽制し()()()()()()()などと能書きを垂れる、あの男森人である。

司祭長の提案を、尊大な態度で嘲るだけでなく彼女本人に対しても扱き下ろし始める始末。

 

「…我々は、あくまで『聖黄金樹の共有』を掲げた上で、貴方がた森人側とも変わらぬ友好関係を維持したいと存じております。この案は貴方がたにとっても非常に恩恵のある内容だと思われますが?」

 

「――耳が遠いのか?枯れた老いぼれがぁ…!貴様ら只人風情など、我ら高貴な森人の足元にも及ばんのだ!黙って我等に差し出せ!それとも敵対関係になりたいのか!?」

 

「随分…憤慨しておられる様ですが、何を焦っておいでです?何か不都合な事でも?」

 

「焦るだと!?この森人たる私がか!?王妃様より全権を預かる、この私がかぁ!?」

 

「思違いをしないで頂きましょうか?(わたくし)は、長である()()()()()()()()()()()()のです。貴方などに聞いてはいません…!」

 

「――干乾びた老女めッ…!」

 

 しかし彼の罵りにも一切動じることなく、司祭長は冷静に応対する。

また、今感情を露わにしている男森人が『全権を預かっている』との事だが、果たしてどれ程に効果を証明できるというのか?

先ほどから花冠の森姫は、沈黙を保ったままなのだ。

国王でもある金剛石の騎士でさえ、発言しているというのに。

司祭長は、身を乗り出す男森人ではなく『花冠の森姫』の返答を待っていた。

彼に用など無いのだ。

まるで幼子をあしらうかのような司祭長の素振りに、男森人は腰の細剣を引き抜こうと勢い付く。

完全に怒り心頭と言った処か。

 

男森人の抜刀態勢に対し、只人側の神官戦士たちも臨戦態勢に移る。

だがここで、周囲に対し一喝する者が一人――。

 

「――そこまでッ!!双方とも、武器をお納め下さいませ…!」

 

 何と『花冠の森姫』その人が、初めて口を開いたのである。

透き通るかのごとき美しい声音は、森人側だけでなく只人側をも魅了せんばかりの美声だ。

その美声に圧倒され、一色触発した険悪な空気感は一瞬で静まり返る。

 

「そこな者…大儀でした。これより先は、この私めが取り仕切ります。席へ控えなさい」

 

 そして数々の暴言を撒き散らしていた男森人に対し、席へ着くように命を下す。

 

「――なっ…し…しかし、この私に全権をお任せ下さる筈ではっ…!?」

 

「お控えなさい」

 

「――そ、それでは話が違うッ…!」

 

「聞こえなかったの!?命令よ…!アンタは、()()()()なの、分かる…!?」

 

「――…チッ!」

 

 長である筈の女王の命令だが、男森人は素直に退こうとはせず不様に食い下がる。

だが女王は『控えよ』との命を繰り返し、終いには妖精弓手からも非難の声が上がった。

女王の『控えよ』は、かなり穏やかな表現だが、要は男森人の役目はもう無い事を比喩してもいた。

頬杖を突き不快感を露わにする妖精弓手の言う通り、つまりは『お役御免』を言い渡されたのである。

そして今後は、本来の長である『花冠の森姫』自らが矢面に立つという旨も含め――。

 

舌打ちを隠そうともしない男森人は反骨の姿勢を露にする。

とても上森人に対する敬意など微塵にも感じさせない不遜な態度で、不承不承ながらも席へと座り直した。

また彼に釣られ、他の森人たちも挙って席に着く。

そして彼等が『老森人』と何やら小声で話しているのを、灰の剣士たちは見逃さなかった。

 

「諸侯の皆さま、度重なる非礼の数々…誠に申し訳ありませんでした。心よりお詫び申し上げます」

 

 何と女王自らが頭を深く下げ、謝罪の意を示した。

 

……

 

花冠の森姫が取り仕切る事で、嘘のように会合は円滑に運ぶ。

なぜ態々、あの様な男森人に場を任せたのかが不思議に思える程だ。

あの罵り合いは、茶番も同然。建設的な進歩は何一つ生まれていなかった。

しかし本来の森人代表である彼女が台頭する事で、司祭長の提案も好感触を得ていた。

 

西方樹海の境目に『聖黄金樹』を移す事は、その恩恵を両陣営に(もたら)し大きな利点として働く。

またその神々しいまでの神聖な樹木は、心無い賊徒たちへの圧力としても機能し更なる境界線強化にも繋がる。

しかし懸念となるのが、聖黄金樹の周囲に及ぼす()()()()である。

聖黄金樹は今も成長途中であり、これからも成長を続けるのは明白だ。

それに伴い効果範囲も拡大していく筈だが、成長限界は未だ見えていない状況でもあった。

地母神神殿でも目下調査中ではあるが、全くの見当がつかない状態である。

現在でも()()()()()の背丈だが、植生された裏庭全体には多種多様な植物が生い茂り、関係者たちが毎日の様に草むしりに追われる日々を送っていた。

時には新人冒険者向きの依頼として、ギルドに提出してしまう始末。

異常ともいえる大地の活性化が、聖黄金樹の恩恵によるものと関係者たちは判断を下していた。

 

「これは此方側の考察なのですが――」

 

 ここで女王からも一つの推察が示された。

実は森人冒険者や神殿参拝者を経由し、秘かに聖黄金樹に関する情報を独自に入手していた森人勢力。

彼女は一度も聖黄金樹を直接観測してはいなかったが、その情報を基に一つの結論を導き出していた。

 

「このまま成長を続ければ、()()()()()()()()()()()()()()()()でしょう、聖黄金樹に」

 

 この発言は、只人陣営にとって衝撃を覚えるに十分な内容だ。

今の西方辺境街――。

大都市に比べれば決して広大とは言えない面積だが、その街全域を飲み込むほどまで成長しようとは俄かには信じ難い。

少々大袈裟に過ぎないだろうか?

普通なら一蹴に伏す様な発言だが、花冠の森姫は()()()であり数千年を生きる非常に長寿で聡明な女性だ。

只人では想像も付かない太古の知識まで備えており、無論だが樹木に関しても深い見識を携えているのは間違いない。

上森人の長である彼女が言うのだ。

信憑性は桁違いに高い。

 

「――『小黄金樹』程度に成長するのなら話も分かりますが、まさか『狭間の地の黄金樹』並みに成長するのは些かに疑念が湧きます!」

 

 女王の言葉に灰の剣士が反応し、思わず席から立ち上がってしまう。

彼は知っている。

狭間の地にて見届けた、黄金樹の偉大さを――。

 

――迂闊だったか…!

 

主賓である両陣営の後方に座していた灰の剣士――。

そんな彼が突如立ち上がってしまったものだから、主賓たちは一斉に彼へと視線が集中した。

彼は少々後悔したが、時既に遅し。

 

「狭間の地の黄金樹…そして小黄金樹…?貴方様ですね、聖黄金樹を持ち帰った()()()というのは?…少しお聞かせ願えませんか、その狭間の地について…」

 

 当然の事ながら、女王は狭間の地にあるという黄金樹に興味を持ち、彼に質疑を投げ掛ける。

灰の剣士が聖黄金樹の苗木を持ち帰っていた事は、森人側でも情報は得ていた。

森人――取り分け上森人側は、彼に関しても幾許かの興味も寄せていたのである。

 

「ロード、司祭長様、宜しいでしょうか?」

 

「許可する」

 

「感謝致します。……貴公、少し手伝ってくれぬか?」

 

 彼らの会合を遮った事で、発言を求められてしまった。

流石に勝手な発言は如何なものかと国王と司祭長に許可を求め、二人は特に反対する事もなく許しを下す。

二人からの許しを得た彼だが、実は彼以上に狭間の地に詳しい人物が一人居る。

 

「…呼ばれとるぞ少年!何時までも見惚れとらんで、シャキッとせんかい!」

 

 輝石の貴公子である。

彼は、狭間の地より流れ着いた住民そのもの――。

その知識量は、灰の剣士を遥かに凌駕している。

彼も主賓の後方へと座していたのだが、花冠の女森人王の美貌に終始見惚れてしまい、耳には届いていなかった。

 

「――えっ…は…ハイッ!ぼ…ぼボ…僕で良ければ…!」

 

 隣の席に座る鉱人導師から肘で小突かれる事で、漸く我に返った輝石の貴公子は慌てて席を立つ。

そして灰の剣士と共に、主賓が囲む大卓にまで歩み寄った。

 

「我々が狭間の地で見た()()()ですが、それは王都『ローデイル』と呼ばれる都市の中心部に鎮座していました。…地図に印を付けても宜しいでしょうか?」

 

 先ずは『黄金樹』の幹の直径を伝える必要性を感じ、大卓の上に置かれた地図に印を付ける許可を主賓側に求める。

黄金樹の大きさを知りたい主賓側も特に反対する者は現れず、彼は地図の上に黄金樹の凡その大きさを記す。

 

「王都ローデイルが…この位の広さを誇り、その象徴とも言える『黄金樹』が……この位でしょうか?」

 

 地図上に円を描く事で、黄金樹の大体の大きさを指し示す。

 

「これは……!この街など大半が埋まってしまうではありませんか…!」

 

 円で囲んだのは、あくまで()()()()()部分の直径である。

しかしその幹だけでも、西方辺境街の主要区域を覆ってしまう程の広大さを誇っていた。

その事実に主賓全員が息を飲み、取り分け街の領主でもある司祭長は驚愕の声を上げる。

 

(わたくし)の予想を凌駕していますね。貴方様は、その狭間の地の出身者であり且つ黄金樹を実際に視認していると?」

 

「は、はい。無論、僕だけでなく、この褪せ…灰人さんも同じく狭間の地で目視しています」

 

 聖黄金樹の成木時だが花冠の森姫の予想では、もう一回り狭いと判断していた。

彼女の推測だけも辺境街の殆どを覆うほどの広さを誇るのだが、彼が示した黄金樹の広さは更なる想像を越えていたのである。

そして輝石の貴公子だけでなく、灰の剣士も褪せ人として狭間の地にて黄金樹を目撃している。

尤も彼の場合は、リムグレイブという辺境の地より遠間から目にしたに過ぎないのだが。

だがそんな遠間からでも、黄金樹の異様さは度肝を抜く程に神々しいものだった。

 

「私めは、てっきり『小黄金樹』並みに成長すると踏んでいたので……。因みに小黄金樹の規模は、この辺りですね」

 

 次は灰の剣士が『小黄金樹』について語り、地図上に新たな円を記す。

小黄金樹は狭間の地に幾つも点在しており、その規模は黄金樹に比べるべくもない程に小さなものだ。

しかし『小黄金樹』と言えども、()()()()()()()()()()()()()()()に並ぶほどの偉大さを誇っていた。

また小黄金樹も薄っすらとだが黄金色の光を帯びており、夜間でも目立つ存在であった事を告げる。

 

「確かに『小黄金樹』程度なら、神殿内でも収まりますね。それでもギリギリですが…」

 

 灰の剣士からの説明を受け、小黄金樹と神殿内裏庭の敷地面積を秤にかける司祭長。

裏庭全域を埋める事にはなるが、小黄金樹の規模なら辛うじて収める事が出来るだろう。

 

「どの道、移植せねばならんという事か。況してや、それ程までに成長してしまってはな」

 

「この西方の街は、我々森人側にとっても重要な拠点。失わせる訳にはいかないのです」

 

 聖黄金樹は、今も順調に成長を続けていた。

否、順調と称するには少々異常な速度で()()を続けている。

灰の剣士がロスリック不死街から持ち帰り、神殿裏庭に植生してから一ヶ月と経ってはいないのだ。

持ち帰った当初は『苗木』の状態だったが、僅か数週間で『街路樹並み』の大きさにまで膨れ上がっている。

この成長速度を誇るなら、花冠の森姫が告げたように街全域を埋め尽くすという話にも、一定の説得力が生まれた。

 

そして西方辺境街だが、この街は森人側にとっても重要な拠点でもあり喪失させる事は大きな痛手にも繋がる。

何せ、森人と只人を繋ぐ架け橋としても機能しており、多くの若い森人が街の機能を活用しているからだ。

またこの街は『地母神信仰』が主となっており、自然を崇拝する森人とも親和性が高い。

花冠の森姫としても、この街とは良好な関係を維持しておきたい思惑もあるのだ。

 

「移し替える件は兎も角、件の聖黄金樹の恩恵がどれ程まで拡大するかだな。あと現時点の影響範囲も知る必要がある」

 

 聖黄金樹の移植、その候補となる場所、この件は一先ずの合意が成ったと観て良いだろう。

だが未だ判明していないのは、現時点での聖黄金樹による恩恵の範囲、さらに成長後の及ぼす影響については未知なる領域でもあった。

 

両陣営は再び協議を交わし、聖黄金樹の更なる調査を重ね、より知識を深める事で意見が一致した。

また肝心の移植時期だが、早くても1週間、最長でも10日を目処に定める。

そして手法は、森人側が主導で行い『ウッドゴーレム』を用いる案が提示された。

やはり樹木の扱いに関しては森人に軍配が上がり、極力傷付けないよう細心の注意を払っての事だ。

だが只人に介入させないという訳でもなく、()()()()()()()()という条件付きで合意に至る。

最後に『西方樹海』へと植え替えた後の処遇だが、両陣営の人員を割き部隊を駐屯させる案が浮上。

植物に関する専門家を主とし、心無き賊徒を取り締まる衛兵部隊の派遣も検討した。

この項は、今後も双方の会合で調整が必要だが、何れは聖黄金樹の麓には監視所を兼ねた集落が出来上がるだろうとの見解を示す。

仮に『聖黄金樹』が『黄金樹並み』に巨木化するのなら、王国でも有数の観光名所と化す可能性も予見できる。

兎に角あらゆる意味で、森人勢力と只人側にとっての転換期を迎えようとしていたのだ。

 

後は、森人以外の勢力がどう反応を示すかが懸念材料ではあったが、鉱人勢力は樹木に関しては概ね無頓着。

今日に至るまで他勢力も、ほぼ何の反応(リアクション)も示してこない状態だ。

恐らくは然程関心が無いのだろうと見切りを付けた。

 

徒にも角も今成すべきは、聖黄金樹の更なる調査が急務とされる。

しかし余り時間を掛けては、聖黄金樹の急成長が仇となり移植も困難となり時期の見極めが必要だ。

 

「では、この契約書に互いの印を――」

 

 多少の騒動はあれど、合意は成った。

序盤の森人による威嚇は何だったのだろうと勘繰りたくもなるが、女王が取り仕切った事で嘘のように円滑に事が運んだことは幸い言えよう。

思惑の一致が叶った事を機に、国王は2枚の契約書を提出し、其々に互いの拇印を記す事で締結とする。

締結済みの契約書、1枚は王統府側――。

もう1枚を森人の女王が所持する。

この締結を以ちて、両陣営の会合は概ねの成功を遂げた。

これ以降、聖黄金樹は只人と森人の両陣営の『共有財産』という事で合意が成された訳だ。

 

これにて聖黄金樹を巡っての会合は終わりを迎え、双方は一先ず解散という形を執った。

 

この後の予定だが、両陣営の主賓たちは司祭長の領主館にて宿を執る事が決まっている。

今回は会合が主だが、こうして森人の長たちが足労して頂いたのだ。

会合も成功という結果を辿った事で、此処で両陣営の友好の証として明日は街の散策を楽しみながら地母神神殿の聖黄金樹を視察する。

そもそも公式には『剣の乙女』が主賓で街に来訪し、聖黄金樹を視察するという触れ込みが出回っている。

これ以降の護衛も必要となるが、森人側の主賓には是非とも街の散策と少々の催し物を楽しんでもらいたいものだ。

 

「皆様、此度の御出席、誠に感謝の念に堪えません。さぞやお疲れでしょう。今宵は私めの館にて、御ゆるりと旅の疲れを癒して下さいませ!」

 

 両陣営の出席者全員を労う、領主にして地母神神殿の司祭長。

特に旅の疲れもあろう森人側には、存分に旅の疲れを癒し英気を養って頂こう。

彼女は灰の剣士たちを含めた冒険者全員に対しても、自分の館へ招待する。

(因みに外で待機していた、同期戦士たちも含め)

しかし、そんな彼女の厚意を無下に拒む一派も存在した。

 

「我々はこれにて失礼する――」

「只人ごときの穢れた住まいなど唾棄に値する!」

「所詮、我等とは相容れぬ下賤な種族よ!」

 

 先ほど高圧的に振舞った、森人の一派だ。

彼等は軒並み、司祭長の行為を拒否し帰路へ着こうとする。

 

「何処へ行こうというのだね?ここで只人との親交を深めるのも、我々の役目であるぞ!?」

 

 穢れた物でも見るかのような森人一派に、女王の婚約者でもある『輝ける兜の森人』が引き留めにかかった。

しかし森人一派の筆頭でもある老森人でさえも蔑む表情を隠そうとせず、彼へと言葉を返す。

 

「西方の里も落ちぶれたものですなぁ…。上森人の長ともあろう者が聞いて呆れまする。これ以上、言葉を交わす価値も無き故。…まぁ精々、只人の坩堝へと染まり穢れるが宜しかろうて…ファファファファ…!」

 

 老森人を始めとした森人一派の態度は、不快極まる物言いだった。

とても身分が上であろう、上森人側を敬う振る舞いなど微塵にも感じさせない姿勢だ。

 

老森人の発していた『西方の里』という言葉。

彼を筆頭とする一派は、別地域の里から来訪したのだろうか。

若しかしたら、森人一派と上森人側は()()()()()で構成されているの可能性もある。

そう勘繰る程の分裂感を見せつけられ、只人陣営は唖然と傍観するしかなかった。

 

「……」

「……」

 

 もう用は無いとばかりに、早々に火継ぎの祭祀場を去り行く森人一派。

残ったのは、女王を始めとする3名の上森人と僅かな小姓の森人だけ――。

その行方を見届けた『花冠の森姫』は『妖精弓手』に目で合図を送り、それを受けた彼女も軽く頷き俊敏な動きで姿を消す。

 

「…やはり何かあるな?あの連中…」

 

 その様子を見ていたオーベックは、灰の剣士たちへ耳打ちした。

 

……

 

 火継ぎの祭祀場の外では同期戦士たちが待機していた。

特に変わる事の無い状況に、彼等も何となく星見で時間を潰している。

 

「待たせたわね。ちょっと仕事出来ちゃったから、も少し付き合って…て、なにやってんのよ貴方達…!?」

 

 少々暇を持て余していた彼等に声を掛ける妖精弓手。

だが同期戦士たちの惨状を目にし、彼女は避難の目を向けた。

 

「何…って、私は()()()と長い付き合いなんだし……❤」

「別に良いでしょこれ位。こういう好い男は中々居ないのよ❤」

 

 半森人である少女野伏と女剣士は、人目が付かないのをいい事に同期戦士へと体重を預け撓垂れ(しなだれ)掛かっていた。

 

「よ、よう…お疲れ…!…お、おい困るぜ…。こういうのは、ちゃんと手順を踏んでからだな…先ずは手堅く、文通から…な?」( ゚∀゚;)

 

 そして彼は彼で、気まずそうに作り笑いを浮かべながら妖精弓手を迎える。

妖精弓手は彼に絡み付く女二人を睨み付けるが、全く意に介す様子もなく離れる気配がない。

半森人女剣士なんかは、困り顔ながらも鼻の下を伸ばす同期戦士に舌を這わしている。

 

「…ほら、早く行くわよ。標的、見失うでしょ!」( ㅍ_ㅍ)ジトー 

 

 花冠の森姫より指示を受けた妖精弓手の目的は、先ほど此処を去った森人一派の動向を探る事だ。

このままグズグズしていては、彼等を見失い尾行どころではなくなる。

 

「ほ、ほら、新しい仕事だ。…俺達も、行こうぜ?」

 

 魅力的な少女二人に絡み付かれれば、男なら誰でも心は踊るもの――。

少々名残惜しいが任務を放棄する訳にもいかず、同期戦士は女二人を離し再出撃の体勢へと移った。

 

「…何やってんだか」

 

 彼等のやり取りにヤレヤレと頭を振る妖精弓手。

そのまま森人一派を追跡する為、動きを開始する。

 

……

 

二つの月光に照らされた夜の平原は、昼間とは違った彩を演出する。

元々夜目の利く森人だが、今宵は灯りなど無くとも十分視界の確保が出来た。

また夜風も心地よく、このまま身を委ねたい程だ。

しかし、平原を歩く数名の森人たちの心は穏便に非ず。

 

「ええぃ…!あの低能どもめ、悉く失敗しおってからに…!」

 

 見た目麗しい容姿が森人の売りの一つでもあるのだが、先頭を歩く森人の顔は(シワ)だらけ。

つまり齢を重ねた老人だという事だ。

老森人は皺だらけの醜い顔を歪めつつ、手にする杖に力を込める。

 

「戦力は充分でした。しかし只人勢力の冒険者どもは、皆精強な者ばかり――」

「何でも、太古より流れ着いた古人が、只人側に付いているとか――」

「それなら協力体制にある彼の組織も、例の時代から流れ着いた筈だ!」

 

……

 

老森人に追従する部下の森人たちは挙って言い訳を並べ、自らの責任逃れに腐心する。

この一団は、例の会合にて優位な立場を築こうと散々に只人側を罵った『森人一派』の集団であった。

 

「全く忌々しい冒険者共…!計画を今一度見直さなくては――」

 

 様々な地下組織と交渉を重ね、今日という日の為に用意した策は全て不発に終わった。

老森人が率いる一派の計画――。

 

彼等は元来、()()()()()()()()とする部族の出身である。

この老森人は、北の部族を統括する長老たちの一人だ。

西方樹海の森人勢力に比べれば、北方森林の部族は些かに見劣りする規模で厳しい環境下で生活を営んで来た。

その為、穏やかな環境下にある西方樹海の移住を秘かに計画していた。

一応、西方の森人勢力とは幾許かの交流はあったものの、本心は対等な関係など微塵にも考えていなかった。

彼ら北方の森人勢力は、決して邪悪ではなかったが少々傲慢な思想が大半を占めていた。

北方での荒れた環境下を長年に渡り耐え忍んだ。

そんな歴史が、彼等の精神に()()を生んだのだろうか?若しくは、西方に住む部族への妬みの感情も手伝っての事だろうか?

 

厳しい北方森林から、穏やかな環境の西方樹海へ――。

 

彼等の悲願は日増しに膨れ上がる。

そして北方の森人部族は一計を企て、先ず西方樹海へと人員を送り込み長い年月を掛けジワジワと乗っ取りを画策する。

先ずは友好の証として取り入る前段階で、容姿や気立てに優れた若い森人を『花嫁・花婿』と可能な限りの珍品を添え、差し出す作戦を展開した。

元々西方の森人勢力も変わらぬ日々を長年過ごしていた事も影響し、珍しい物には心惹かれ別の部族からの来訪者を寛大に受け入れる。

北方部族の計画は成功を収め、彼等は何度も使者を通じ交流を重ねる事で関係性を深めてゆく。

そして頃合いを見計らい、老森人率いる一派も送り込まれたのである。

彼等は只人や他の種族に対する知識と、西方森人勢力には無い技術を多く携え、西方の森人勢力に取り入り多くの貢献と信頼を蓄積する。

その労力が功を成し、老森人一派は重要な役職を任され時には交渉役として官職の一翼を担うまでに昇りつめた。

彼等が費やした期間は、凡そ()()()()に渡る。

只人や他種族から鑑みれば途方もない時間だが、長寿の森人にとっては然したる期間でもない。

 

時は過ぎ、彼等に転機が訪れた。

()()の本性を隠しつつも()()の姿勢を保ち続けた彼等――。

突如として飛来する『聖黄金樹』なる樹木の報――。

西方樹海の近隣に位置する只人の街にて植生された若木は、黄金の輝きを放ち神聖な力を宿しているというのだ。

それを知った老森人――。彼の本性が、自然と表情に現れていた。

 

これを利用しない手はない。

 

その神聖な樹木は、只人側の手中にあるが此方(森人)側に引き寄せる功績を立てれば、自分の立場と権威は盤石なものとなる筈だ。

そうなれば西方樹海の掌握は完璧なものとなり、何れは()に就任する事も不可能ではない。

あとは北方部族を呼び寄せ、主導で西方樹海を支配する。

そうと決まれば計画の修正を急がねば――。

只人の感覚で時間を合わせるのも楽ではなかったが、またとない好機には違いない。

老森人は、聖黄金樹の処遇を女王でもある『花冠の森姫』へと進言――。

()()とは名ばかりの()()()を企てた。

彼は言葉巧みに嘆願を繰り返す事で、遂に森人勢力が動く事となる。

更に今までの働きも認められ、花冠の森姫から直々に全権を預かる栄誉を授かった。

これは二度とない幸運と言っても過言ではない。

どの様な手段を用いてでも『聖黄金樹』を此方側に引き寄せねばならない。

それが成功すれば、彼の野望は現実的なものとなるのだ。

 

しかし、西方樹海の長は『花冠の森姫』であり上森人と称される森人の上位種でもある。

普段、寝ているのか起きているのかも分からない昼行燈(ひるあんどん)ぶりだが、彼女の権威は確かなもので決して侮れない。

そこで彼は、会合の場を設け騒動を引き起こし女王の力を削ぐ事を画策した。

彼には長年の功もあり、様々な勢力にも顔が効く。

伊達に老齢を経てはいなかったのだ。

主に非合法な組織と繋がりを持ち、計画の邪魔になる者を次々と消してきた。

今回の標的は『花冠の森姫』及び『只人の国王』である。

刺客と工作員を揃え、双方の長を襲撃――。

上手くいけば『亡き者』に出来る。

 

女王が亡くなれば、我が影響力を駆使し『西方樹海』の掌握も容易となる。

仮に殺害に失敗したとしても傷さえ負わせれば、その責任を只人側へと転化させ、その弱みに付け込み『聖黄金樹』引き渡しの交渉を有利に進める。

また只人側の国王も消えて貰えば、国力を削ぐ事にも繋がるのだ。

何れは只人の領域をも実効支配し、自分がこの大陸の長とする『森人帝国』を樹立する。

只人など、たかだか100年足らずの短命にして秀でた能力も持たない低能な下等民族――。

混沌最底辺が小鬼(ゴブリン)なら、秩序最底辺は只人(人間)に違いない。

 

計画は順調だった。

部下は手際よく働いてくれた。

非合法な地下組織を通じ、強力な刺客を引き込んだ。

老森人の一派は、従来の森人とは違い貨幣価値にも着目しており積極的に導入。

その結果、実用水準に足る数を揃える事にも成功する。

刺客の素性が少々懸念材料ではあったが、計画さえ成功すれば些細な問題だ。

一大勢力さえ築ければ、()()()()()より流れ着いた組織など恐るるに足らず。

 

我が計画は完璧だ。

後は実行に移し、完遂するのみ。

 

しかし()()()()に終わった。

 

刺客は全滅。

最後に潜んでいた者も只人の王統府へと寝返り、あまつさえ依頼主の一翼を暴露する始末。

アレは流石に冷や汗ものだ。

自分達の名も明かされるのではないかと、内心キモを冷やした。

女王の力を削ぐ事は叶わず、仕方なく自力で只人側を牽制するしか手立てが残っていない。

下賤な只人ごときが、あの『聖黄金樹』を抱こうなど言語道断――。

アレは森人の象徴として今後も輝かねばならんのだ。

 

老森人は部下達に命じ、ありとあらゆる暴言で只人を貶めにかかる。

過去の暴虐――自然破壊や土壌汚染を突けば、少しは動揺するだろう。

だが只人は動じることなく、冷厳とした態度を崩さない。

おかしい――。

()()()()()()()()()は、もっと惰弱だった筈なのに――。

全く揺らぐ様子がない。

 

そして会合の途中、ある異変が森人一派を驚愕させた。

 

上森人である『花冠の森姫』による唐突の台頭――。

これは全くの想定外だ。

何せ今の今まで、彼女自身が何かを判断し動く素振りなど見せる事がなかったのだ。

森人一派が『西方樹海』に派遣され100年あまり――。

お上品に振舞い『輝ける兜の森人』との婚礼に浮かれる御嬢様が、よもやあの場で声高々に主張するとは。

 

其処からは完全に計画の瓦解だ。

森人一派の全権は突如にして剥奪され、彼等は黙って成り行きを見守る他なかった。

 

女王から直々に言い渡された『全権を預ける』……アレは嘘だったのか。

 

女王自らが主導となり交渉を進め、あの『聖黄金樹』は()()という形で合意が成った。

あの時の彼女は、指導者として相応しい威厳を備え、他部族である彼等でさえ圧倒する程で反抗の余地すら与えなかった。

これで老森人一派の権威は、一気に失墜したも同然。

全ての計画は水泡に帰した。

 

しかしどうにも不可解だ。

象徴として参列するとばかり踏んでいた、花冠の森姫による唐突の参加。

最初からその積りなら、態々老森人たちに全権を預ける必要など無い筈だ。

彼女の真意とは一体――。

 

……

 

「我々は泳がされていたのでは…!?」

 

「ぬぅ……」

 

 部下の一人である森人が発言し、老森人は低く唸るばかり。

女王の昼行燈の如き普段の立ち位置――。

まさか老森人たちを欺くための()()だったとでも?

そして会合で見せた、あの振る舞いが()()()()()()姿()であると?

 

「――馬鹿な…!認めぬ、認めぬぞ…!」

 

 世間も知らないような純粋培養の如き、上森人の女王――。

美貌と若さのみが取り柄の様な、長寿の上森人――。

只人の街の路地裏にでも放り込めば、忽ち慰み者にされるかの様な無防備極まりない、あの女王が?

 

しかし、現に彼等は完全に()()()()()()()()

 

その事実を否定する事は出来ず、しかして認めるのは更なる屈辱でもある。

老森人は怒りの形相で歯を喰いしばった。

 

「ですが、これからどう致しましょうか?我ら一派の権威は実質失墜。あの西方樹海に留まるのは些かに危険かと――」

 

「分かっておる!寄る辺は一つだけではない」

 

 あの会合で反骨に次ぐ反骨を晒し、これまでの積み重ねは無駄となる。

このまま西方樹海に留まった処で、彼等の居場所などは無い。

後ろ指を刺され厳しい風向きに晒されるのは目に見えている。

今までのやり方は二度と通用しないのだ。

恐らくだが『花冠の森姫』は全て把握した上で、ワザと演技で彼等を欺き泳がせていたのだろう。

そしてあの会合を利用し、この一派の本性を焙り出したという事だ。

そう解釈すれば、あの女王の動静にも一定の納得がいく。

 

西方樹海に留まるのは危険だが、なにも彼ら一派の拠点が消失した訳ではない。

他にも幾つかの拠点を方々の森林に設けていた。

暫くはその拠点に潜伏し、再起を図るのが得策だろう。

老森人の寿命も懸念されたが、幸い彼は『長寿の秘薬』を隠し持っている。

然程の問題はない。

 

「先ずは最寄りの拠点に立ち寄り、静養を図り、今後の計画を練り直す!」

 

「「「「「――ハッ…!」」」」」

 

老森人は今後の行動指針を部下達へと示す。

 

最寄りの拠点で英気と回復を図り、行動方針をゆっくりと練り直す。

だがここで、彼の精神には微妙な変化が訪れていた。

彼の…北方部族の悲願は『西方樹海の掌握』だが、あの聖黄金樹を手中に納める()()()()をも芽生えさせていた。

 

「あの美しく神々しいまでの聖黄金樹…実に我等にこそ相応しいと思わんかね、諸君?」

 

「「「「「――ハッ!仰る通りです、長老!」」」」」

 

「そうであろう。見たまえ、あの忌々しい只人の街に咲く、健気な黄金の輝きを…!」

 

「「「「「――とても美しゅう御座います!」」」」」

 

「うむ…!何時の日か我々の慈悲で救ってやり、このワシの手元こそが絶対の安住となろう。のう…?」

 

「「「「「――全くであります!」」」」」

 

「その通り。聖黄金樹を手にし、このワシが森人の長として世界の覇者と成す。そして聖黄金樹の恩恵を一身に受け、ワシの力で恒久の安寧を全世界に授けるのだ!……ククク、ファはっハハハハ…!」

 

「「「「「――ハぁッハハハハハ……!」」」」」

 

此処からでも街に座す聖黄金樹の輝きが、彼等の目に届く。

彼等には、呪いに等しい街にて孤独に耐え助けを待ち侘びる懇願の光に見えて仕方がなかった。

老森人の妄言染みた戯言にも、一切反論する事なく受け入れる森人達。

彼にとって、何とも都合よく心地良い響きなのだろう。

部下達による肯定の言葉に酔いしれ気を良くした老森人は馬鹿げた高笑いを上げ、部下達も釣られて笑い声を待ち散らす。

その光景は端から見れば、何とも空しく滑稽に映った事だろう。

しかし彼等は本気で『聖黄金樹の支配』と世界制覇を思い描き、身の丈に合わぬ空虚な誇大妄想に耽り散らかした。

 

この位は許されていいのかも知れない。

虚空に消え去る儚い妄想など、神々からのせめてもの手向けとして受け取っても良い。

 

   ―― 残念だが彼等の物語りは此処までだ ――

 

『器に見合わぬ醜悪な()()()()に焦がれるか。分を弁えぬ輩が黄金の輝きを擁こうなど、傲慢の極みよ…!』

 

 静寂な平原に響く不気味な声が、彼等の耳を突いた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

大壺爆弾

 

大型の壺に可燃物を満載させた代物。

衝撃や導火線方式で起爆させる事で、対象物を破砕する。

大型化に伴い重量は嵩むが、強力な爆発力と飛散する破片を持つ凶悪な兵器でもある。

本来は、投石器や弩砲に設置し投射する兵器の一種であり、個人が携帯するには向いていない。

トロル級の巨人なら、楽々と投擲できるだろうか。

 

貧困層に生まれた男は報酬に目が眩んだが、後に改心し真っ当な社会生活を送る。

彼は、幸運と豊穣の祝福を拝領したのだ。

 

 

 

 

 

 




『花冠の森姫』の婚約者でもある『輝ける兜の森人』ですが、『上森人』で良いんでしょうか?もし間違ってたら指摘の程宜しくお願い致します。
う~ん、政治的なお話を書くのは難しい…。 ( ̄ω ̄;)
もっと駆け引きとか書ければいいんですが、私の実力ではこれが精一杯です。

如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。  
デハマタ。( ゚∀゚)/
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