短いながらもアンケートのご協力、誠に有難う御座いました。
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剣の乙女と灰の剣士の、密室での一夜。
今回も、かなり際どい描写(R17,9ぐらい)が含まれます。(苦手な方は、ブラウザバックをば)
では投稿致しますドゾ。( ゚ ω ゚ )
時計
時計は時刻を指示する機器。
古くは日常生活の中で時刻を知る方法は、星見や太陽の動きなどであった。
砂時計なども、時間を図るための身近な道具である。
近年、機械式の動作機構が開発され実用化に至った。
時計の時刻を読むには若干の知識を要するが、順応してしまえば多様な管理に一役買うだろう。
未だ一般には出回っておらず、貴族を始めとして上流階層が懐中時計として携帯している程度である。
まだまだ普及には時間が掛かりそうだ。
時間は進み、時には逆行する。
過去へと降り立てば、罪の清算は叶うのだろうか。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
西方辺境街の郊外に位置する荒ら屋が立ち並ぶ地帯。
その荒ら屋群の中に一軒の寂れた小屋、人が住むには些かに荒れ果て誰も関心を寄せる事はない朽ちた小屋。
一応、天井と壁面は頑丈な造りだが、黒い染みで床は埃塗れ、この様な小屋に誰が利用するというのか。
だがこの小屋こそ緊急時には重要な役割を発揮し、床には隠し階段が設けられていた。
街でも極一部の者しか知らない隠し階段を下りてみれば、その先には立派な造りの隠し部屋が地下深くに存在していたのである。
ほぼ知る者が居ない、その隠し部屋。
そこに二人の男女は、一夜を明かそうとしていた。
灰の剣士と剣の乙女。
二人は部屋の片隅に設置された寝台に腰掛け、肩が触れ合うほどの距離で互いの視線を交わしていた。
あの寂れた小屋から想像もつかない程、この部屋の造りは立派で高級宿の客室にも比肩し得る家具類が揃えられていた。
一夜を共にするのに、何ら不自由する事はない。
何せ、寝台の上に置かれている
だが先程から、二人の男女は肩を寄せ合うのみで一言も言葉を発していない。
「「……」」
両者とも無言ではあったが、不快には感じておらず二人ともこの感触に身を委ねていたのである。
衣服越しとはいえ、互いの体温が此方にも伝わり肉の弾力が肩を通して伝達する。
そして無意識なのか意識した故なのか、お互いは手を繋ぎ指を絡ませていた。
手と指からも互いの体温が伝わり、剣の乙女は言い様のない幸福感に包まれていた。
何時以来であろう、男と直接肌で触れ合ったのは。
若しかしたら、初めての体験かもしれない。
神殿での修行中も、普段接していたのは女性聖職者ばかり。
冒険者登録の際にも、手続きも付き添いも知人の女冒険者が傍らに控えてくれた。
初めて一党を結成した時も、男の冒険者とは精々言葉を交わす位だった。
そして最初の冒険で失敗し、生まれて初めて肌を許したのが――。
―― ゴブリン ――
そして紆余曲折を経て冒険者として復帰したものの、失った視力の代償は大きく心無い同業者からは罵られる毎日。
転機が訪れたのは、あの彼等と出会ってから――。
苦楽を共にし、死の迷宮に挑み、とうとう世を乱す魔神王を討伐し、彼等は英雄と称された。
だがそれでも、男相手に直接触れられた事など無かった。記憶している限りでは――。
どのくらい指を絡ませ手の感触を味わっていたのだろう。
彼女自身、何時までもこうしていても良かったのだが、何か話しかけた方がいいのだろうか。
あの日、水の都での出来事以来、彼とはほぼ絶縁よりも酷いほどに関係悪化を招いてしまった。
どこからどう考えても隣の彼――灰の剣士に非があるのは疑いようがない。
しかし彼女自身も感情赴くがままに、彼に殴打を繰り返し神殿と街からの追放を言い渡してしまった。
(本編前夜編 第96話参照)
あれ以来、彼女も心の中では白くも濁った霧が渦巻き鬱屈とした想いで、日々を暮らしていたのである。
どう言葉を掛けるべきか?
恨み言をぶつける?それは少し違う気もする。
本当に憎悪を抱くのなら、今こうして互いに肩を寄せ合い指を絡ませたりはしない。
正直、この時間は彼女を満たしていた。灰の剣士からはソウルが流れて来ないのだが、恐らくソウルを抑え込んでいるだろう事は容易に想像できる。
それに彼が悪感情を向けてくるのなら、最初から
此方から謝るべきか?個人的感情だが、それはそれで癪だ。
最初から、あのような馬鹿げた発言などしなければいいだけだ。
全くどうかしてる、この剣士。
何時までも触れ合っていたい、だがアレを思い出しただけで沸々と怒りも込みあげてくる。
――やっぱり、この剣士が悪い。私は悪くないもん…!
ちょっぴり膨れっ面を浮かべ、彼女は彼の方を盗み見た。
しかし手は離さない、触れ合った肩を離す事もせず、寧ろ体重を彼へと傾け凭れ掛かる。
彼のソウルが僅かに動いた。
この感情は分かる。
どうやら困惑している様だ。
今の彼女と同じく、どうしていいのか迷っているという事か。
ちょっとばかり、いい気味だ。
主導権は此方が握っている、そう錯覚するほどに彼女は僅かばかりの優越感に浸る。
だがこの状況にも少し飽きてきた。
何かを切り出せねばならない。
そもそも、腹が立ちつつも傍に居てほしい憎く愛しい存在と、こうして一夜を共にするという極めて特殊な状況。
これを存分に活かさない手はない。できる女は、状況を最大限に活用するものなのだ。
この状況を設ける為の打診をしたのは、他でもないこの剣の乙女。
予め国王と司祭長に事情を説明し、二人きりになれる場を設けてほしいと請願していたのである。
自分ではよく理解していないのだが、どうやら非常に魅惑的な女性であるらしいのだ、剣の乙女という自分は。
至高神の大司教という立場を抜きにしても、彼女は豊満な肢体と魅了せんばかりの美貌を備えていると、周囲は称賛していたのをよく覚えている。
まぁ根拠はあったのだ。
礼拝に訪れる信徒や、会合に参加した際の貴族層の中からは、此方に劣情を抱く小鬼にも似たソウルを向けていた。
正直、身の毛もよだつ程に悪寒が奔ったものだ。
小鬼に蹂躙されて以来、あの悪夢に苛まれる日々を過ごす羽目になった。魔神王を討った後でも、悪夢から解放される事はない。
小鬼に純潔を奪われた挙句、小鬼の子まで出産し文字通り胎の中まで真っ黒に汚されてしまった。
抱かれれば、少しは和らいでくれるのだろうか?
見ず知らずの男に身体を許し交われば、あの悪夢から僅かでも解放されるのだろうか?
嫌だ…恐い…。
あんな小鬼と変わらない下卑たソウルで迫られるのは、御免被りたい。
悪夢が和らぐどころか、かえって悪化するではないか。
では隣に居る、この剣士ならどうだろう。
もう
自分と悪夢を共有し、共に苦しんでいるという事実に。
これで分かったでしょう?
私の苦しみが。
痛かったわ…、苦しかったわ…、暗く、冷たく、熱く、恐ろしく、何も見出せなかった…。
そして小鬼が残していった財産が――。
この眼――。
ねぇ…慰めてよ…。
貴方になら…貴方になら…私は…。
………。
んもぅ、そろそろ何か言ってよ。
一晩中こうしている気?
まぁそれも、悪くはなくてよ。
だけど、こんな一夜…もう多分二度と…。
……。
分かったわよ、分かりました、私の方から切り出してあげるわよッ!
セッティングしたのは私なんだし…意地悪…これも立派なイジメだわ、貴方は。
覚束ない言葉でたどたどしく、剣の乙女が口を開いた。
「あれから見掛けましたか?…
――あらやだ、私ったらなんて意地悪な質問を…。これじゃあ私の方が、いじめっ子みたいじゃない…?
自分でも予想外の言葉に、剣の乙女自身が困惑してしまう。
まるでいきなり彼の心を抉るかのような発言――。
こうではなかった、もう少しオブラートに包み込むような言葉で質疑を投げ掛けたかったのだ。
今の言葉で彼は、この体勢を解いてしまうのではないか?
肩を寄せ合い手を繋ぐだけでも十分に満たされていた、この時間の共有――。今の言葉でそれさえも無くなってしまうかも知れない。
若干の後悔の後、彼の応答を恐る恐る待つ剣の乙女。
「居なかった。全てが何時もの、
対する灰の剣士は、何ら感情を乱す事もなく淡々とこれまでの経緯を述べる。
ダークゴブリン戦を終え、水の都から帰還して以来、遭遇してきたのは
悪辣で、邪悪で、悪賢く、欲呆け、奪う事しか能のない、存在意義すら問われる下賤で卑しい混沌最底辺に相応しい住民、ゴブリン。
「だが…無垢なる小鬼とは遭遇した。……産まれたばかりの小鬼の赤子――」
そして彼は強調する。
あの村での小鬼退治の事を――。
銀髪武闘家の故郷であった、あの発展した村での出来事を――。
(本編前夜編 第113~116話参照)
「存じております。貴方の事は少々調べさせて頂きました」
水の都を去った灰の剣士の活動については、ギルドを経由し情報取得に努めていた。
あの日以来、特に目立った活動を聞く事はなかったが、例の村での出来事は目を引くに充分な内容でもあった。
「しかし貴方は斬った…。たとえ無垢なる赤子の小鬼であろうとも」
あの現場で遭遇した、予期せぬ小鬼の出産に当時の灰の剣士たちは立ち合ってしまった。
只人の若い女から生まれ出でたのは、
本当に無垢なるソウルが宿っていた。
それが成長に至れば、人々を平気で襲い残虐行為に愉悦を見出す邪悪な小鬼として活動するのだ。
その現場の中、灰の剣士は惑いを抱きながらも小鬼の赤子を斬り伏せたのである。
ゴブリンスレイヤーに指示されるとおりに――。
苦悩を覚えながら――。
自らの本心に逆らいながら――。
役割を果たした――。
だが彼の心は晴れてはいない。
今も黒い霧が、彼の心には巣食っている。
「存命させる手段は無いものか……。私は、その様な想いさえ過っていた。分かってはいるのだ…、赤子であろうとも、無垢なるソウルを宿していようとも、何れは長じて人々に仇なす邪悪な異形に成り果てる事を…!」
遅かれ早かれ邪悪な小鬼に成長する事は、避けては通れぬ確定事項。
その変えようもない現実を理解していながらも、彼は無垢なる小鬼の赤子を存命させる思考さえ抱いていたのだ。――当時は。
「貴方は斬る事で役割を果たしましたわ。どの様な想いを抱いていようとも……」
「……」
「…私は…
「……」
たとえ幾許かの情が湧いていとはいえ、灰の剣士は苦悩しながらも小鬼に引導を渡し冒険者としてケジメを付けた。
しかし剣の乙女は、度重なる凌辱の末に小鬼を出産してしまい、唯々絶望に打ちひしがれるだけだった。
「知っておいでなのでしょう?私の辿った過去を…あの悪夢を…」
「知っている…。我が身を以て……」
小鬼の凌辱劇に晒された剣の乙女の暗い歴史――。その消せない過去は今も尚、彼女に悪夢として覆い被さっている。
そしてどういう訳か、灰の剣士までもが彼女の悪夢を体験していたのである。
剣の乙女と一体化し、感覚を共有するという形で。
当初はお互いがそれを認識する事はなかったが、実に様々な経緯を経て共有を認知するに至った。
また領主でもある司祭長の館にて、彼は剣の乙女に対し悪夢の暫定的な回避方法まで伝えていた。
(本編前夜編 第123話参照)
彼女は嬉しかった。
自分だけではなかったのだ。あの悪夢に苛まれていたのは。
共有だけでなく、自分の苦しみを理解し更に気に掛けてくれている。
それだけでも彼女の心は随分軽くなっていた。
この男となら、この剣士となら、この方となら――。
―― 人生を共に出来るのではないか ――
手前勝手な妄想なのは重々理解している。
先ほどの尋問でこの男の過去にも、より深く踏み込む事ができた。
彼の過去が如何に壮絶なのは理解している。
それに比べれば、自分の過去など蚊ほどにも軽い事も。
しかし、それでも、自分にとっては耐え難い重く圧し掛かる汚穢の歴史には変わりないのだ。
出来るなら
それが叶わない事を知りながらも。
「お願い、助けて…!もう怒ってないわッ!あんな発言も一時的なものなんでしょ!?私だってそうよ、貴方を殴ったのもただ感情が爆発しただけっ…!ねぇお願いッ…!私を悪夢から連れ出して、消せない小鬼の傷を慰めてッ…お願いぃ…!!」
ここまで事情を察しているなら、これ以上体裁など取り繕う必要もない。
今の彼女は、大司教でもなく、六英雄の一人でもなく、剣の乙女という金等級冒険者でもない、ただ一人の女として彼に寄り掛かる。
女性の魅力漂う豊満な身体を彼に預け、形振り構わず悲痛な叫び声で彼に訴え掛けた。
彼の胸元に顔を埋め、彼女は目尻に涙を浮かべ震えている。
「……あれから考えた。どうやれば貴公の悪夢を払拭できるのかを…」
「……えッ!?」
彼の言葉を聞いた途端、彼女は胸元から顔を離し意外そうな表情で彼を見る。
「最初に悪夢を見た時から、私はどうにか身体を必死に動かそうと抗ってみたが駄目だった。自由になるのは自分の意識と感覚だけだ」
彼は、幼夢魔と初めて遭遇した山中での出来事を語る。
当時、剣の乙女という正体には気付けなかったものの迫り来る小鬼に抵抗は試みていた。
しかし意識とは裏腹に身体は全くの自由も利かず、両目を焼かれるという形で悪夢から目が覚めていた。
(本編前夜編 第51話参照)
「そして、考えに考え抜いた。悪夢に抗う方法を…」
「…私の…私だけの為に…///」
まさかここまで自分を想ってくれての行動だとしたら――。
言いようのない込み上げるこの感情は何なのだろう?
頬を赤らめ口元は緩み、若干上ずった声音で彼に問う剣の乙女。
「…勘違いするな。貴公の為でもあるが、私の為でもある。このままでは私も使命達成に支障が出るからな」
「……」(`ε´)ブゥ
流石に都合よく彼女の思惑通りにはいかず、またもや膨れっ面を向けた剣の乙女。
「彼を…ゴブリンスレイヤーの事は知っているな…?」
「え…はい…存じておりますわ。小鬼専門に武力を振るわれる御方だとか」
ここでゴブリンスレイヤーの名を告げた灰の剣士。
それを聞いた剣の乙女も、彼の事はある程度の知識を有してはいた。
『小鬼を殺す者』との仇名通り、彼は小鬼のみを標的に淡々と小鬼退治を請け負う一風変わった冒険者だ。
「もし、彼が私の立場なら、きっとこう言うだろう。『小鬼が出たなら俺を呼べ、世界中どこへでも駆け付けてやろう。…それが夢の中であろうとも――ゴブリンは俺が殺してやる…!』…彼ならきっとこう言う筈だ」
「――……!!」
その言葉を聞いた瞬間、彼女の心臓がドクンッと一気に跳ね上がる感覚に見舞われた。
いや、感覚だけではない。脳内を確かに貫いた一筋の
ほんの僅かな時間だが、彼女は白い閃光の貫く感覚に身を委ね我を忘れてしまう。
「……。…今からでも遅くはない…。お望みなら、私ではなく
「……」
その言葉を聞いた彼女は暫し思案に耽る。
冷静に考えてみれば、あのゴブリンスレイヤーなる人物の方が確実に助けとなるではないか?
何せ彼は、何の私情を挟む事なく小鬼を確殺するという実績も報告も入っていた。
反してこの剣士はといえば、情に流され、神経を逆撫でする発言をし、挙句の果てにはゴブリンスレイヤーと袂を分かち、自ら小鬼退治から身を引いたというではないか。
ならば、いっその事、この様な頼りになるかどうかも疑わしい異界の住民よりも、ゴブリンスレイヤーを頼った方が自分の助けとなる可能性は高い。
彼の発言を耳にした剣の乙女は、身を預けていた彼から豊満な肢体を……離す事はなかった。
寧ろ更に自らの肢体を押し付け、全体重を預けたのである。
「意地悪な方…。私と関わるのが、それ程に
彼が考えている以上に、彼女は鋭敏にソウルを知覚できるらしい。
自分の為でもあるのは、先ず疑いようはない。
だが彼女の過去を共有したという事実に気付いてしまった以上、どうしても放置する事は出来なかった。
上手くソウルを隠し感情を抑えていた積りだが、剣の乙女には本心を悟られていた様だ。
「夢の中で小鬼を殺せば、果たして悪夢は晴れるのか?……私の答えは
「……どうして?」
―― 夢の中まで駆け付けて小鬼を殺してやる ――
あの言葉は彼女にとって救いにも似た一言だった。
しかし灰の剣士は即座に否定してしまったのである。
全くこの男は、私を救う気があるのか無いのか?
そう勘繰りたくもなるのだが、不思議と彼女は激昂する事もなく冷静に彼の答えを待った。
こうして否定する位だ、彼なりに何かしら答えを見出したという事でもある。
「貴公は何もしていない。唯々悪夢を甘受するだけで、今までどの様に克服する動きを見せてきた、この数年間…違うか?」
「――貴方ぁッ…言わせておけばッ…!私はァッ……わた…し…は……ッ……わ…た…」
まるで今までの自分を全否定するかのような容赦のない発言に、剣の乙女も流石に怒りが込み上げ彼から身を離し怒鳴り付ける。
だが語尾に勢いは続かず、最後には言い淀み言葉を失ってしまった。
「時間位は、あったのであろう?死の迷宮とやらに挑んだ時期でも、魔神王を討った後でも、多少なりとも…小鬼を討ちに行く時間位はあった筈だ。今の貴公なら、10や20の小鬼、息をするに等しく殲滅できる筈。何ゆえ、それさえも怠った?」
あの一党に加入した剣の乙女は目を見張る程に力を身に付け、あの当時でも冒険者としては特級の実力を備えていた。
それこそ小・中規模の小鬼集団ごとき、殲滅させるのは朝飯前とも言えた。
だが彼女は
やはり過去の凌辱劇が尾を引いていたのは疑いようはない。
それにより彼女は、小鬼という存在に過剰ともいえる恐れを抱いていた事も原因の一つであろう。
「もし単身で敵わずとも、誰か隣人は居た筈だ。その人たちに協力を仰ぎ、一つ一つ向き合い積み重ねて行けば、
「…う…ヒグっ……」
かなり容赦のない言葉を投げ掛ける灰の剣士。
何もせず悪夢に怯え甘受するだけと、ある意味での罵りに、剣の乙女はとうとう静かに泣き出してしまう。
そう――時間はあった。それなりには――。
魔神王を討ち、彼女は至高神の大司教へと就任した訳だが、何も直ぐに昇りつめた訳ではないのだ。
少なくとも傷を癒し平和を享受しつつも、残党の混沌勢が滅び去った訳ではない。
あの忌々しい小鬼など、魔神王を討った直後でも何ら変わらず悪行を働いていた。
もし自ら奮起し、自らの脚で克服に歩むのであれば、それこそ単身なり仲間に同行してもらうなり小鬼退治に従事する事も不可能ではなかった。
いや寧ろ、魔神王を討った後なら絶好の機会でもあったのだ。
しかし彼女は
あの一党の仲間達も、彼女の過去を知りながら誰一人笑う者は居なかった。協力を仰げば、それこそ快く力を貸してくれただろう。
「この際だ、ハッキリと言う。全ては、お前が逃げ出しただけに過ぎぬ…!」
「――うぅぅうぅっ…貴方にぃ…貴方にぃ…何が解るのよぉぅ…ううぅぅわぁぁ……」
止めとばかりの言葉――。彼の言葉には怒気が混ざっていた。実は怒りを込めていたのである。
剣の乙女という希有な英雄――。上級魔神でさえ単身立ち向かえる程の実力を備えながら、小鬼の悪夢に抗う時期と力に恵まれながらも、自分の弱さを怠慢に変え今日まで抗った振りで唯々苦しんできた。
彼は今日まで見てきた。
小鬼に成す術も無く蹂躙され、未来と希望を奪われた女性たちを。
彼女たちは皆挙って、力の無いひ弱な女達ばかり。
その女性たちを救出し、街や神殿に保護できればまだ幸せな方だった。
中には村に保護されたものの、
みな力がなかった――。
小鬼に抗えるだけの力――。
過去に耐え、前に進むだけの力が…なかった。
もしも…もしも…目の前で唯々子供の様に泣きじゃくる
そう思えて仕方がないのだ。
何も彼女だけに責任を押し付けようとは思っていない。
だが力を備えているにも関わらず、ただ自分だけが被害者面するのも少々癪に映ってしまうのだ。
「自分を救えるのは…自分だけだ…!」
「ひィッぐ…グズッ…ひっ…ヒっ…ひ…どうすれば…グす…いいのよぉ…」
自分の脚で立ち前に進め。
それが出来ないからこそ、彼女はこうして
もし克服できる方法があるのなら、今直ぐにで教わり実践したい。
嗚咽を繰り返しながらも、彼に問う剣の乙女。
ここまで引っ張ってきたのだ、先ず何らかの方法を編み出したのだろう。
ならば直ぐにでも教えて貰いたい処だ。
その為に何か代償を要求するのであれば、何でも差し出す積りでいた。
金、地位、物資、…自分の身体。
「今から試してみぬか?私と貴公は互いに夢を共有する現象に見舞われた。私なら、あの程度の小鬼…居ないも同然だ…!」
「…本当に?…グスッ…」
「本当だ。後は、
このまま就寝に至れば、間違いなく彼女の悪夢を共有する。
それだけでも彼女にとってはある種の救いでもあるのだが、それだけでは永遠に抜け出す事は出来ない。
また感覚を共有しているだけで、彼自身は過去の彼女の身体を動かす事は出来ないのだ。
これでは小鬼の蹂躙を成す術も無く受け入れる事しか手立てはなく、何の進歩も変化もない。
とにかく彼が過去の彼女の身体を自由に動かせる方法が、未だに判明していないのであった。
「あの…ならば…尚更…その…私と…貴方で…ま、ま…まじ…わ…る//////」
「…?すまぬが明瞭に話して貰わんと…」
「――もう…意地悪…!分かってるくせに、女の口から言わせるお積りっ…!?一体、そのお顔で何人の女を誑かし泣かせてきたのかしらッ…フンっ…!」(`•ω•´)
「…えぇ~っと、あの子に始まり…彼女と…あと彼女も…村娘も含めれば…――」( ゚ ω ゚ )
「――数えなくてよろしいッ…!って、今は私の事だけに集中して下さいましぃッ…!フ~、フ~…!」ヾ(`ε´)ノ
「…以外と吠えるな、貴公?」( ゚ ω ゚ )
「…貴方の所為ですわ…!これまでの人生で吠えたのは、たぶん貴方が初ですわね…フゥ…」(*`ω´*)
皆まで言わずとも、お互い事の流れで理解していた。
このまま剣の乙女が身体を許し、彼と性行為に及ぶ事で文字通り
本当にそれで身体を明け渡す事に繋がるのかも疑わしいが、試してみない事に何も始まらない。
しかしどうにも灰の剣士は、性行為に及ぶ事に躊躇している様に思える。
さっきからこうだ。
この部屋で共に一夜を過ごすと決まった時点で、
だが彼は、行為に至る事に消極的だ。
剣の乙女は既に覚悟を決めているというのに。
「
自分を気に掛けている事は、彼女とて理解している。純粋な恋慕ではないにしても、何らかの感情を寄せてくれている事も含め。
では一体何が原因で、彼は肌を重ねる事に及び腰なのか。
彼女は訪ねずにはいられなかった。
「私は、ある誓いを立てた。…自らの使命を全うするまで、誰とも深い関係を築く事はしない…と」
深い関係…その定義は人それぞれだが、彼の場合、
「…随分固く誓っておいでですが、誓いを立てた理由も聞かせて頂けます?」
何とも意味のない誓いだ。本人にとっては重要な意味を持つのだろうが、彼女にとっては本当に下らない誓いに思えた。
なぜそうまで頑なに異性との関係を拒むのか。異性と深い仲になる事で、彼にどの様な制限が掛かるのか。それともその使命とやらに、枷として働いてしまうのか。
彼女には理解出来なかった。
「無責任な父親になりたくない…ただそれだけだ」
「無責任な父親…?」
「そう…。使命を果たさぬまま、誰かと交わり子を孕ませ産ませる。しかし私は、家庭をも放り出し目的に邁進しているかも知れぬ。運よく役割を果たし生還できればいいが、もし帰らぬ人と化し家族を残したまま悲しみに暮れさせたくはない…。それが真の理由だ」
輪の都のフィリアノ―ル教会へと辿り着き、真の巡礼を果たさねばならない。
それが大王グウィンとの約束でもあり、彼に課せられた真なる使命でもあった。
だが志半ばで誰かと結ばれ子を成すものの、そのまま家庭すら捨て自分は家族を残して旅立つのか。
家族を切り捨て自分の思いのみを優先し、目的だけに向かうのが果たして『是』と言い切れるのか。
本音で言えば、自分はその様な父親になりたくはない。
これから何年掛かるかも分からないのだ。使命に辿り着くには――。
ならばいっその事、独り身を貫き、目的だけに向かった方が遥かに身軽なのだ。
自分を慕ってくれる人たちが居るのは実に嬉しき事だが、正直
そして今から剣の乙女と性交に及ぶ流れで事が運んでいる。
このまま交わり、妊娠させようものなら彼と彼女は間違いなく人の親と化すのだ。
たとえ両者が夫婦の契りを交わさずとも――。
「思い留まるなら今の内だ。性交以外にも、他に解決方法はある」
「……分かりました」
彼女と交わるのは、悪夢の解決法を一歩進めるだけの切っ掛けに過ぎない。
何も性交に及ばずとも、既に次の一手を彼は構築している。
そこからは別の協力者が必要となるが、何も彼女と関係を結ぶ事は必須ではない。
どうやら剣の乙女も理解してくれたらしく、返答で受け入れてくれた様だ。
そう――彼は受け止めていたのだが、その矢先――。
「…お、おい…貴公…?」
なんと剣の乙女、自ら衣服を脱ぎにかかっていた。
元々薄い布切れの様な娼婦と思わしき法衣、首からゆったりと衣服はずり落ち豊かに実った女性の象徴が、彼の眼前に差し出された。
彼女の行動に驚きを見せた灰の剣士。
「貴方の言葉を聞き、益々抱かれたく存じます。私を愛せとは申しません。ですがせめて…せめて今夜だけでも…私を妻…いえ…
彼女が下着を付けていないのは、既に知っていた。
幾度となく彼女を視界に収めていたが、時折り光に透けて彼女の肌が薄っすらと見えていたのである。
そして衣服を脱ぎ去った彼女は全裸となり、彼に向き合った。
「…こんな私にも、慕ってくれている人たちが居る。彼女達の事を想えば――」
「思い詰めないで下さいませ。今回の事は、誰にも口外無用という事で内密に。そして今宵は安全期…妊娠する可能性は低いですし、念には念を押して避妊薬も用意しております…。少々、至高神様の教義に逆らう事になりますが…」
既に彼には、3人も女と心を通わせている。
冒険者ギルドの監督官――。
ゴブリンスイーパー――。
そして見習い神官の少女――。
未だ性交には及んでおらず交際すらしていない間柄だが、お互いの気持ちを伝えあった仲でもある。
神殿の少女はともかく、監督官とスイーパーは彼との関係を結ぶ事に何ら反対しておらず受け入れる姿勢さえ見せていた。
そんな彼女たちにさえ、自ら立てた誓いを盾に行為を拒んでいたのだ。
(本編前夜編 第118話参照)
その二人を差し置いて流れに身を任せ、剣の乙女を抱いて良いものだろうか?
彼女自身も彼を受け入れる気でいる事は、本心で嬉しき事だ。
もし彼女に恋慕している男なら、飛び跳ねる程にはしゃぎ行為に及んでいただろう。
だが彼は、どうしても踏み込む事が躊躇われた。
対する剣の乙女は、今夜二人だけの蜜月という事で内密に図ってくれるとの事。
また、あまり称賛される事ではないが避妊薬も用意してあるらしい。
「本当にいいんだな?…私は、この状況を最大限に利用する程の腹黒ささえ備えた人間だぞ?」
「はい…出来れば…その…優しく…お願いします…///」
「私に愛情を抱けるか?」
「貴方は覚えておいでないでしょうが、一応は気持ちを打ち明けたのですよ…?あの時、貴方を怒り任せに殴打した時…私は感情赴くがままに本心を吐露いたしました」
実は剣の乙女、彼の発言に怒り任せに殴打したのだが、罵りの言葉と共に恋慕の感情をもぶつけていたのである。
(本編前夜編 第96話参照)
あの時の感情に偽りはなく、こうして恋慕の感情が再燃していたのである。
―― 彼に抱かれたいのだ、剣の乙女は ――
「そういう事なら…私も覚悟を決めねばな…コレを見てくれ…って目が不自由であったか…?」
「いえ…お気になさらず…って、きゃぁんッ…!?」(〃ω〃)゚
ここまで来れば、彼とて応えねばならないだろう。
彼女が覚悟を決め臨んだというのに、彼が何時までも燻ぶっていたは彼女に大恥を掻かせてしまう。
意を決した彼も衣服を脱ぎ、全裸となる。
そして彼の下半身は膨張し、彼女の前に突き出された。
剣の乙女は、小鬼により目が不自由となっていたが、彼のソウルを通じ問題なく見えていたのである。
その所為なのか彼の怒張した下半身を直に見てしまい、彼女は短い悲鳴を上げつつも視界は彼の下半身を捉えて離さなかった。
「コホン///…まぁそう言う事だ。実は私も感情は昂っていた。それ程に貴公の…いや、
「…は…はい…///で…では…その…よ…宜しく…お願い…します…///」
彼女だけではない。
実は灰の剣士も、剣の乙女という女性には魅力を感じていた。
顔を紅潮させる彼女と同じく、彼も若干顔を赤らめながら膨張した陰茎を晒す。
とうとうこの時が訪れてしまった。
灰の剣士と剣の乙女――。
二人は互いの手を取り抱き合いながら、ゆっくりと寝台の上へと横たわる。
寝台に敷かれたシーツも毛布もそれなりの品質を誇り、正に男女が交わるには最適に
先ずは灰の剣士が顔を寄せ、彼女の口に軽く口づけをする。
「…ん…ふ…」
互いの唇を触れ合わせただけの軽い口づけ――。
それを何度か繰り返し、徐々に唇を強く触れ合わせ、やがては彼の方から舌を彼女の口内へと捻じ込ませた。
「…うん…!?フゥん…!ふ…ふ…❤ん…ん…❤」
初めてなのだろう、口づけでさえ人生初だというのに口内に舌まで侵入されてしまったのだ。
剣の乙女は驚き、ビク、ビク、と身体を震わせ僅かな抵抗を見せるが、彼の舌が口内に暴れ回り彼女の舌を器用に絡め捕る。
それさえも繰り返す内に、彼女も徐々に受け入れ彼の唾液と舌を少しずつ味わった。
「んフ…❤うぐ…んぅ…ンん…❤ゴク…ゴク…ゴキュ…❤」
少しは慣れ始めたのだろうか。彼から送り込まれる唾液を舌で受け止め、それを喉へ通し音を鳴らし飲み込んでゆく。
最初は彼の舌を受け入れる姿勢だったが、次第に彼女の方から積極的に彼へと舌を絡め合わせ感触に没頭する。
「おひゃえひぃ…にょんひぇ…❤」
(お返し…飲んでぇ…❤)
今度は彼女から唾液を彼の口内へと送り込み、彼のそれに応えるように喉へと通す。
その様な濃厚な口づけを暫くの間続けた。
この四方世界に流れ着いて彼は、初の性交を剣の乙女と――。
小鬼に蹂躙されて以来、初めて人相手との性交を灰の剣士と――。
「ん…❤じゅる…ぬゅん…ウン❤…ん…ンふぅ…
彼の唾液で喉を潤す剣の乙女。
二人は飽きる事なく深く密着し抱き合いながら、濃密で吐息さえ漏らさぬよう互いの口と口とを縫い合わせ更に舌を絡ませ合っていた。
―― 暫くお待ちください ――
………
……
…
暗く息が詰まるような臭気…むせる様な空気感は湿度が高い所為か。
何度も見慣れた光景だ。
眼前に広がるのは、ゴツゴツとした岩肌と緑色の小型な異形――
下半身からは、熱く、痛く、異物感の出し入れる感覚がとめどなく脳へと伝達する。
「GOV、GOV…!」
「GERVA…!」
「GYOA…!」
この奇妙な声も、いいかげん聞き慣れた。
小鬼達は、一人の少女に群がり滾る情欲をぶつけていたのである。
――全く飽きもせずに腰だけを振るものだ。もう少し女を悦ばせるという発想は湧かぬものだろうか…?
もう幾度も味わった小鬼による凌辱の嵐――。
それを無残に受け続けるのは華奢な少女だが、内に宿した精神は
ここは夢の中――。
剣の乙女が最初の冒険で失敗し、小鬼に連れ去られ孕み袋として歓迎されていた当時の夢ある。
彼女は運よく後続の冒険者に救出されたものの、それ以来暗い影を背青い小鬼の悪夢に苛まれ続けていた。
今日に至るまで。
そして、小鬼の熱烈な歓迎を受けていたのが過去の剣の乙女である。
この時は駆け出しの冒険者で、今の様な英雄級の実力も有してはいなかった。
唯々繰り返される小鬼の凌辱に怯え、甘受し、自らの信仰に縋るしか出来なかった。
それが当時の彼女――。
しかし今の彼女(?)は、小鬼の凌辱に忌避感と侮蔑の眼差しを向けつつも虎視眈々と反撃の時を窺っていたのである。
それもその筈――。
今の彼女には、灰の剣士も宿っていたのだ。
どういう訳か彼は、剣の乙女の悪夢を共有し共に苦しみを分かち合っていた。
つまり彼は、
――彼女は…?剣の乙女は…居た…!
幾度も悪夢を共有する中、過去の剣の乙女と一体化していた訳だが自由は効かず夢の行く末を受け続けるしか出来なかった。
だが今は違う。
首を動かし視線の向きを変える自由が利く事を確かめた灰の剣士。
先ずは僅かに首を動かし、直ぐ傍で《《現在の剣の乙女」》の存在を確認する。
どうやら彼女は
都合のいい事に小鬼達は、現在の剣の乙女の存在を認知できてはいない。これなら襲われる心配もない。
彼女の存在を確かめた彼は、再び視線を動かす。
前回見付ける事ができた、
――居た…!……火防女…よ…。
幸いにも、火防女は霊体の剣の乙女の直ぐ傍に佇み、同じように此方に顔を向けている。
――しかし何ゆえに、君がこの場に居るのだ…?しかも彼女と共に…?
一言で言えば、逢いたかった。それが本心だ。
しかし再会の感傷よりも疑念の勝り、彼女が、剣の乙女の悪夢に存在している理由が分からなかった。
――いや、そんな事は後でいい。そろそろ好い加減、小鬼共をどうにかしなくてはな。
先程から引っ切り無しに、下半身を打ち付けて来る小鬼。
よほど過去の剣の乙女の躰は、具合が好いのだろうか。
尚も必死に滾る情欲をぶつけている。
だがもう充分味わっただろう?
小鬼にとっては愉悦なのだろうが、此方にとっては不快以外の何者でもない。
そして…目論見通り彼女の身体の主導権は、
あの部屋の寝台で、剣の乙女とは存分に交わるだけでなく互いの愛情まで十二分に注ぎ合ったのだ。
長年愛し合う恋人の様に、夫婦の様に。
義務感で事を成す筈だったが、気が付けば彼も彼女も意外なほどに情を注ぎ
あの満たされた多幸感――。
それに引き換え、この品性の欠片もない下卑た凌辱の何たる悍ましい事か。
正直、吐き捨てたくもなる。
もう一瞬たりとも、この少女の身体を小鬼に明け渡す気など微塵もない。
手の自由は…効く。
脚の自由は…片脚が若干痺れるのは捻った為か。だが問題はない。
身体全体の自由は…概ね効く。少々倦怠感も感じたが、これは度重なる
よし…これなら――。
―― 戦闘に支障はない ――
やがて小鬼の凌辱が一通り終わり、展開の読める行動に移った。
――飽きもせず、
小鬼は傍の焚火から燃えた木の棒を取り出し、
彼(彼女)の目を焼き、その悲鳴で愉しむために――。
余りに獣染み残虐の極みとも言える、小鬼の蛮行。
そこに知性も品性の断片も見られないが、過去に討ったダークゴブリンの集団は、もう少し高尚に振舞っていた。
女囚たちの証言と比較的健康であった事からも、どうやら人として最小限の環境を整えてくれていたらしい。
まぁ過去の知る彼等と、今の小鬼共と比較するのも少々無粋というもの。
――さて…そろそろ動くとしようか。さっきから、霊体の剣の乙女が五月蠅くて敵わない。言われずとも小鬼は殲滅するさ。
「GOV!GOV!GOV!」
ニタ付き嘲りと暴力的な眼差しで、松明を彼の顔面へと近付ける一匹の小鬼。
「……」
どうやら少女は完全に心折れたようだ。
抵抗する事無く虚ろな無表情で、燃えた松明を見つめている。
その態度も今から断末魔の絶叫に代わるのだ。
さっきからウンともスンとも言わなくなったな、この孕み袋。
壊れるのはチョットばかし早くね?
おいおい、もうチョイ好い声で哭いてくれよな?
お前の声だけでも俺様はよ、3回はイケるんだぜ?
今壊れちゃツマンネェんだわ、ぶっちゃけ。
ホラよ、優しい俺様が、目ん玉焼いてやっから、感謝の嬉し涙で歓喜してくれよぉ…!
イヤっほぅ…♪俺様ってば、わりかしイケてね?
小鬼の松明が、少女の目へと迫った途端――。
「――おい、何時までも調子に乗るなッ!下賤な小鬼がッ――!」
「――GLE!?」
突如として少女の手が松明の柄を握り、物凄い形相で小鬼を睨み付けた。
また本来淡い水色の筈の少女の双瞳には
今まであり得なかった少女の変貌ぶりに、小鬼は呆気にとられ動きを止めてしまった。
先ほどまで泣き喚いたかと思えば急に黙り込み、今見せているあまりの変わり様。
何だ…?一体何が起こったというのか?
甲高い悲鳴と助けを懇願する心折れた少女の絶望の声は、小鬼のとって耳障りの好い絶好のBGMでもあった。
だが今の少女は、どす黒い憎悪と憤怒に満ち満ちた低い声音で、狼狽える小鬼達を威圧している。
対する小鬼達は、変わり果てた少女の迫力に唯々気圧され後ずさりするしか出来なかった。
「小鬼風情がぁ、不遜であろう…?地に…伏せよッ!…我こそは、
黄金の君主『ゴドリック』の台詞を借り、並み居る小鬼達へ威圧を仕掛けた灰の剣士。
身体自体は、何れ『剣の乙女』として昇り詰める少女のものだ。
ここは敢えて
とても15歳の少女とは思えない迫力だ。
橙色の眼光を双瞳に灯らせ、全身からは白いソウルが立ち昇っている。
そして「地に伏せよッ!」発言と同時に、彼(彼女)は戦技『嵐脚』で松明を持った小鬼を早速仕留めていた。
小規模な嵐に巻き込まれ全身を切り刻まれた小鬼は宙へと打ち上げられながら既に絶命しており、未だ消えない松明が彼(彼女)の手に握られた。
その光景に残りの小鬼達は困惑するばかりで、お互いの顔を見合わせる事しか出来ないでいる。
「……ああ、灰の…方…」
端から静観していた現在の剣の乙女。
今までどうする事も出来なかった、あの絶望の悪夢が今ここで新たな展開を迎えようとしていた。
まだ、たったの1体しか仕留めていないが、彼女の鼓動は高鳴りを感じていた。
「そう…これが灰の方…。決して諦める事無く、どの様な絶望であろうとも前へと進み続ける」
そして隣の火防女も言葉を続ける。
「――…!?火防女…さん…!?」
今まで起こる事がなかった火防女の返答。
その初めての反応に、剣の乙女は驚き振り向いた。
既に幾度となく夢で姿を見せていた彼女が、火防女である事は知っている。
過去に灰の剣士に仕え、幾度となく旅の助けとして導いてきた女性――火防女。
どの様な理由で彼女が自分の夢の中に現れたのか、その原因はまだ分からない。
だが剣の乙女は戸惑いながらも、灰の剣士の方へと視線を戻す。
「GYOBE~BEBEBE~!?」
1体の小鬼が地面に倒れ伏し、断末魔の絶叫を上げていた。
灰の剣士が乗り移った少女を組み伏せようと、身の程知らずな別の小鬼が無造作に飛び掛かり返り討ちに遭っていた。
跳びかかったが最後、彼(彼女)はカウンターの手刀で打ち落とし、
顔面を焼かれた小鬼は只今絶賛、想像を絶する熱さに悶えているという訳だ。
松明の火で緑色の皮膚が焼け爛れ、やがては黄色の歪な眼球にも火が届く。
尚も小鬼は顔面を焼かれる苦痛で暴れ藻掻くが、松明で顔面を抑え付けられ逃れる事は不可能だ。
「お願いぃッ、灰の方ァァッ…!私の仇を討ってぇッ…!私の代わりにソイツの目を焼き尽くしてぇぇッ…!!」
横から剣の乙女の叫ぶ声が届く。
彼女は小鬼に目を焼かれた結果、目が不自由となり後ろ指を刺される人生を送ってきた。
今目の前に繰り広げられている一見残虐な光景――。
しかし剣の乙女にとっては、またとない復讐の好機でもあるのだ。
私でなくてもいい。せめて、せめて、目を焼かれた仕返しを――。手を下すのが私でなくてもいい――。ほんの少しでも小鬼に報いを――。
「よく見ていたまえ、剣の乙女よ。今から小鬼達に報いを授けてしんぜようぞ…!」
「はいっ…!」
顔面を焼かれた小鬼は、程無くして動きを止めた。
どうやら苦しみ抜きながら絶命したらしい。
だが忌避感は湧かない。
これは当然の報いなのだから。
剣の乙女の期待に応える彼(彼女)――。
残された小鬼が動き出す前に、瞬速の動きで次々と小鬼達を絶命させてゆく。
拳で、肘で、膝で、脚で、時には
たかだか10そこらの小鬼だ。
彼(彼女)にとっては何の事はない低難度。居ないも同然なのだ。
増援だろうか?
二人の新たな女囚を抱え連れてきた首領と思わしき小鬼が一体、この洞窟へと帰還した。
既に女囚には凌辱の跡があり、然したる抵抗も見せてはいない。
小鬼の首領に昇るだけの事はあり、腰には普及品だが
だから何だというのだ。
首領と思わしき小鬼は洞窟の惨状に怒り狂い、抱えていた女囚を放り投げ此方に襲い掛かってきた。
女囚から奪ったのであろう小剣を大上段から振り下ろすも、彼(彼女)は拳でパリィング。
小剣を弾かれた小鬼は呆気にとられるも、余りに隙だらけ。
そのまま彼(彼女)は肉薄し、小鬼の顎に手を掛け一気に180度捻る事で頸椎を破壊し絶命させた。
「こんなものか…ダークゴブリンに遠く及ばぬ」
実に呆気ない戦闘だ。
たかだか10程度の小鬼など、彼(彼女)にとっては息するに等しく殲滅できる水準なのだ。
これで歴史は変わった。剣の乙女の目は無事で、彼女は小鬼を出産する事もなく救出を待てばいい。
これが現実の歴史なら、どれ程救われただろうか、剣の乙女は。
残念だが、これは夢の中の出来事。
たとえ結果を変えたとしても、過去の歴史を改変した事には繋がらないのだ。
精々が、この結果を目の当たりにしている彼女の心を僅かに満たしたに過ぎない。
それが非常な現実だ。
一連の戦闘を終えた洞窟――。
先ほどまで耳障りな小鬼達の宴会は、今や静寂な無音と化している。
ここには何も無い。あるのは小鬼の無残な死体のみ――。
小鬼の殲滅を終えた彼(彼女)は、剣の乙女へと向く。
「終わったの…ですね…」
「取り敢えずは…な」
これが過去の自分の姿なのだろうか?
そう思える程に、今の姿は最早別人そのものだった。
確かに彼(彼女)は過去の自分の姿をしている。
細身で小柄な少女の身体つき。今でも変わらぬ長くも淡い金髪。そして水色の瞳。
しかし明らかに違うのは、その佇まいだ。
とてもか弱き少女の、駆け出し冒険者の纏う気配ではない。
一見無防備だが一切の油断なく悠然と立ち、意志を込めた強い眼力で此方を見つめている。
私は金等級の力を持ち、嘗て仲間と共に魔神王さえ討伐した冒険者だ。
だが眼前の、過去の私には勝てる気が全くしない。
仮に術なり飛び掛かるなりした処で、瞬く間に返り討ちに遭うだろう。
間違いない。
これが灰の剣士という男。
あの悪夢を塗り替えてくれたというのに、剣の乙女は彼(彼女)に対し戦慄さえ覚えていた。
だが嫌悪感はない。小鬼へ仕返しを担ってくれたのだ、私の代わりに。
彼女は礼を述べ、彼(彼女)も短く応えた。
そして彼(彼女)は、傍に居るもう一人の女性――火防女へと向く。
「今更何ゆえ…とは聞かぬ。彼女を通じ、四方世界を体感しているのであろう、火防女よ?」
「はい…。生命溢れる四方世界…この様な世界を味わえる…私は本当に果報者です。そしてお久しゅう御座います、灰の方」
どの様な理由で、火防女が此処に姿を見せたのか。
既に大方の察しはついていた灰の剣士。
肉体を失い霊体となった火防女は、剣の乙女のソウルと一体化する事により彼女を通じ四方世界を生きていたのだ。
人々の営み、喧噪溢れる街並み、美しい自然、美味な食事に珍しい珍味の数々、心躍る音楽や娯楽、未知なる学問、そして何よりも人々との交流。
それら全てが彼女にとって、新鮮で魅惑的なものだった。
灰の剣士が自ら火を消し、あの火の時代は完全に終わりを迎えた。
彼はそのまま亡者と化し消滅したが、火防女は取り残されたままだった。
火が完全に途絶え、暗く冷たい暗黒の世界を一人彷徨っていたのではないか。
彼は内心、気が気ではなかったのだ。
自分一人だけが、この生命溢れる四方世界に流れ着き、新たな人生を謳歌している。
叶うのなら、火防女にも生命溢れる四方世界を満喫してほしかった。
実は、そう密かに願ってもいたのだ。
だが思わぬ形で、彼の願いは叶っていた。
彼が気付いていないだけで、既に火防女は四方世界を生きていたのである。
肉体は失ってしまったが、剣の乙女のソウルと融合し彼女を通して。
「もう何も言わぬ、図らずとも私の願いは叶った。別れは言わぬぞ、また会おう火防女よ」
「ええ、何れまた。貴方に火の導きがあらん事を」
火防女は、今も生きていた。剣の乙女と共に――。
その事実が分かっただけで充分だ。
図らずも自分の願いの一つが叶った事を悟り、火防女に言葉と想いを送る灰の剣士。
彼の想いを受け取った火防女は消えゆく前に、再び彼へと語りかけた。
「灰の方、もう少し
「――ひ…火防女さん、そ…そんな事まで仰らずとも…///」
「――ぬ…///」
彼女の言葉を聞いた剣の乙女は、途端に顔を真っ赤に染め上げ、当の灰の剣士も言葉を途切れさせ赤面した。
話の内容など詳細を聞かずとも分かる。
二人の行為について言及していたのだ。
そして剣の乙女に宿り、火防女も生きている。
それ即ち、この二人も感覚を共有しており、結果的に
発言した火防女自身も、心なしか照れ臭そうに笑みを零し赤面していた。
周囲が徐々に薄れゆくのが分かる。
夢の世界が解けようとしているのだ。
もう間もなく夢から覚めるだろう。
一先ずは、過去の剣の乙女を救出する事は出来た。
だがこれで、彼女の悪夢を払拭できた訳ではない。
この程度で彼女が悪夢を克服してくれれば、ここまで引き摺る事も無い筈なのだ。
更に夢が薄れゆく中、火防女は彼(彼女)に歩み寄り最後の言葉を残す。
「また一緒に湯浴みしようね、お兄さん❤」
「――ッ!?」
火防女の最後の言葉と共に、夢は完全に消え去った。
………
……
…
「……」
気が付けば、彼は寝台の上に横たわっていた。
仰向けの姿勢で視界に映るのは、石造りの無機質な天井。
――そうか、悪夢から覚めたのだな。
意識が完全に覚醒した事を知る灰の剣士。
意識と共に徐々に感覚も戻り、胸元に感じる暖かくも豊かな肉の感触。
剣の乙女が彼の上で寝ていたのである。
勿論、二人共一糸纏わぬ全裸なのは言うまでもない。
「…お疲れ様です…灰の方…」
「…君もな、そしてお早う…と言うべきか?」
「クス…❤、いいえ、まだ夜中…あれから2時間ほどしか経ってませんわ…」
彼女の豊かな乳房の感触を胸に感じながら、朝の挨拶を交わそうとした灰の剣士。
だが剣の乙女は微笑み、まだ夜中だと告げた。
「よく分かるな。時間を図る手段でも存在する…と?」
「ええ…『時計』という物が御座いますの。この時代に存在する革命的な文明の産物――今からお見せしますねって…ふやぁんッ❤」
それを見せようと彼の上から退こうと身じろぎしたが、不意に喘ぎ声を上げ身を激しくクネらせる。
「…
二人の下半身…つまり生殖器――。
穏やかながらも深く濃厚に愛し合い、
それに気付かず動こうとしたものだから、無理な体勢でお互いの性器が擦れ合ってしまい急激な感触に彼女は思わず声を漏らしてしまったのである。
しかも卑猥で淫靡な悲鳴に似た喘ぎ声――。
我ながら聞いてて恥ずかしくもなる声だった。
「は…灰の方…?私がそっと動きますから、貴方様は出来るだけジッとしていて…ってぇ~ヤァフゥッ…❤」
「あ…済まぬ…先に…」
出来るだけ刺激を避け、体内の膣内に在る彼の陰茎を抜き取るべく、彼女の方から動こうとした矢先――。
皆まで言い切る前に、先に彼の方が動き無理やり引き抜いてしまった。
無理に動き、勢いよく摩擦した事で、彼女の全身には電流に似た感覚が迸っていた。
「――バカぁッ…おバカぁッ…何て事するんですッ!?すごく…凄い…変な…気持ちよくって❤…ばか、馬鹿、おバカ、エンガチョ剣士ぃッ…///!」(>ω<)
「――っがぁ…止せッ…、地味に…痛いッ…!」(o ̄∇ ̄)=◯)`ν゜)
今のは流石の剣の乙女も激昂し、抗議の声を上げながら彼の顔面目掛け、数発のパンチで攻撃する。
一見か弱い豊満な色気漂う妙齢の女性。しかし、こう見えて彼女は剣の乙女で金等級の冒険者。
たとえ後衛職であろうとも、並の男なら素手でも昏倒させる事ができる。
そんな彼女のパンチは地味な威力を有し、顔面を殴られた灰の剣士も若干の打撲を負った。
――これだけの力を今も発揮できるのなら、小鬼退治は造作もないな。
恐怖さえ克服できれば、今からでも素手だけで小規模な小鬼集団を撲殺できるだろう。
何としてでも自分の力で成し遂げて貰いたい。
彼女の秘めた可能性を信じ、敢えてパンチを顔面で受け止めていた。
「んもぅ…後で
彼から離れガサゴソと辺りを探る剣の乙女。
また彼に対し臀部を向ける姿勢でいた所為で、彼の視界に彼女の性器が直に映る事となる。
「…///…!」( ̄ω ̄;)
直視を躊躇うほどに卑猥な光景だ。
露わとなる彼女の股座からは、分泌された体液と彼の注ぎ込んだ体液が混ざり合い、乳白色な粘性の糸を引きながら寝台へと滴り落ちていた。
娼婦顔負けの卑猥な光景を無自覚に提供する剣の乙女の姿に、再度興奮を覚える灰の剣士。
先ほど達したばかりだというのに、既に彼の下半身は盛り上がりを見せていた。
「ご覧くださいまし、灰の方。これが、時計という代物ですわ❤」
まるで10代の少女の様に再び寄り添う剣の乙女。
時計なる物を手に取り紹介する姿は、本当に
「この二つの針と、描かれた数字の組み合わせで、時刻を図るのです。読み方に少々の知識を要しますが、上手く活用すれば活動や管理の上で重要な役割りを果たしますわ♪」
「…これは不思議だ。独りでに針が動いている…!」
「フフ…驚きました?時間を管理する為の機器、これが時計ですわ♪。まだ一部にしか流通していませんが、何れは国全体に広がるかと」
「これは興味深い。…ん?待てよ、君は目が不自由であったのだろう?この針と数字が読める筈は――」
「大丈夫。私は、手触りで数字と針の位置を読み取りますので。でも貴方のソウルを通し、今は明確に見えますわ」
実は時計の針と数字を真面に見たのは、今夜が初めてでもある剣の乙女。
時計を入手した処で目の不自由な彼女。当然、時計の針を読むほどの視力はない。
今までは、時計のガラス蓋を開け手触りで針と数字の組み合わせを読んでいたのである。勿論、触れる程の力加減で時計の針が狂わないよう細心の注意を払いながら。
だが今は、灰の剣士のソウルを通し明確に物が見えていた。
楽し気に時計について語る剣の乙女。そこに悪夢に苛まれる彼女の影は、消え去っていたかのように見える。
「フゥ…さてと…、これで、夜はまだ更けたばかりである事が証明されました。後は――」
「ああ。もう一度就寝につき、本当に悪夢が晴れたかどうか確かめる必要がある」
夢の中で、彼女に群がる小鬼を全滅させる事は叶った。
今まで成す術も無く甘受するだけで、毎夜悪夢に怯え続けていた剣の乙女。
意外にもアッサリと、灰の剣士が乗り移る事で達成してのけた。
だが、完全に解決できとは考え難い。
―― 夢の中でも駆け付け小鬼を殺してやる ――
その閃光にも似た言葉が、果たして本当に彼女の救いとなるのか否か?
これで悪夢が真に晴れるのか?
今から確かめねばならないのだ。
だが、眠りから覚めた直後ならまだしも多少の会話で盛り上がってしまい、二人とも眠気が吹き飛んでしまったのである。
これでは就寝以前の問題だ。
「では、
「ん…それは…酒の類…?」
こうなれば強制的に眠気を得るしかない。
どうにも用意周到な気もするが、剣の乙女は棚から一つの小瓶とグラスを取り出す。
灰の剣士の言うとおり、小瓶からはアルコールの匂いが漂っていた。
確かに酒の力を借りれば、個人差はあれど眠気に襲われ易くもなる。
「ブランデーを御存じ?入眠に向いておりますのよ」
「失礼、あまり酒に明るくなくてな。どちらかと言えば、茶や果汁水を好む」
ブランデーとは、林檎や葡萄と言った果実酒を蒸留させた蒸留酒の総称である。
この類の酒にも様々な種類があり、愛飲している者も多い。
剣の乙女も酒豪という訳ではないが、必要とあれば嗜む程度には酒を口にしたりもする。
「フフ…果汁水は私も好きですわ。けど程々に…健康を害しますので」
「そうだな…一応は気を使っていてな、普段は茶を愛飲している」
その様な他愛のない会話を挟みながら、彼女は小瓶のコルク栓を抜きグラスに酒を注いでゆく。
やや黄色がかった薄い茶系の液体が、透明なグラスを染め上げた。
しかしグラスが一つしかないのは、何故であろうか。
そんな疑念を抱く灰の剣士を余所に、剣の乙女は早速酒を一口含む。
だがここで、彼女は大胆な行動に出た。
そのまま灰の剣士へと抱き着き、口移しで口内の酒を注ぎこんだのである。
「…!……ング……ゴクン……ブハァッ…!」
彼女の不意打ちに若干惑いを見せた灰の剣士。
彼女の意図を直ぐに察した為、溢す事なくブランデーを飲み込んだが酒独特の味が口内に拡がり、程無くして頭がフラ付く感覚に見舞われた。
無理もない、従来の酒と比較してもブランデーの類は総じてアルコール度数が高い。
これは酒全般に言える事だが、本来は少しずつ口に含みながらゆっくりと愉しむものである。
酒豪なら短時間に一気飲みしても問題はないかも知れないが、慣れてもいない者が真似をすれば『急性アルコール中毒』に陥る危険性があるのだ。
彼女からの口移しは、ほんの一口分の量だが彼にとっては少々多かったようだ。
さっそく酔いが回ってきたのか、どうにも頭が降られる感覚に見舞われ体温の上昇が感じられた。
彼の様子を見た剣の乙女は、酒の入ったグラスを彼へと差し出す。
今度は自分の番だと言わんばかりに――。
「よ…良し…覚悟した…まえ…」
――いかん、早くせねば、私が呑まれそうだ…。
たった一口分のブランデーだが、既に彼の血中にアルコールが溶け込んだとでも言うのだろうか。
徐々に朦朧とし始めた意識を振り絞り、彼もグラスの酒を一口含む。
そして剣の乙女を抱き寄せ、彼女がしたように口移しで口内へとブランデーを注ぎ込む。
「…ん…ンむ…コク…コク…ゥはァ…///」
彼女も注ぎ込まれた酒を喉奥へと通し、飲み干してゆく。
息継ぎの為に一旦口を離すも、再び彼へと口づけを交わし更に強く抱き合った。
――彼女…口づけが好きなのかもな。
本行為も口づけで始まり、本行為中も口づけを交わしたままの時間的割合が長かった。
彼の憶測通り、彼女は口づけという行為がすっかり気に入ってしまったのである。
もう何度も交わした濃厚で熱い口づけだが、お互いの口内を舌で絡ませ合い唾液混じりの酒の残り香を啜り合っていた。
「ん…❤にゅふ…ちゅぅ……❤ぬゅん…くちゅ…❤ぬちゅ…んちゅ…❤」
彼の見解通り、剣の乙女は口づけと行為に夢中となっている。
実はあのブランデーには、睡眠作用を助長させる成分を予め含ませていた。
悪夢に苛まれるのは避けたいが、どうしても眠りに就かねばならない夜には、あの様な酒に頼る状況も発生する。
至高神の大司教という重責を務めるのは、英雄級の彼女とて決して楽ではないのだ。
酒の成分も体内に回り、気分が高揚していた所為もあるのだろう。
二人は貪るような口づけに没頭し、灰の剣士も遠慮する事なく彼女の全身を手で撫で回す。
それは剣の乙女も同じで、負けじと彼の全身を撫で回した。
酒の力を借り、二人は2度目の眠りに旅立った。
……
結論から言おう。
無論、二人とも共有するという形も同じだ。
再び目覚めた二人は、寝台に腰掛け沈んだ面持ちで言葉もない。
「…ゥ…グス…スン…」
剣の乙女は静かに泣いていた。
これもある意味で仕方のない反応だ。
灰の剣士により、悪夢の中の小鬼は全て仕留められた。
これは彼女にとっては救いも同然であり、あの時確かに心が軽くなっていたのは間違いない。
しかし、今回も同じ悪夢に見舞われた。
まぁ今回も、灰の剣士が過去の彼女へ乗り移るという形で、愚劣な小鬼を殲滅したのだが火防女の姿は見当たらなかった。
そして今、再び目が覚め現在に至っている。
つまり、灰の剣士が正しかったという事になる。
―― 夢の中でも駆け付け小鬼を殺してやる ――
やはりこのような言葉だけで、小鬼の悪夢から解放される事はなかった。
彼の見解通り、最大の原因は
―― 本来の世界線(原作)では、彼女はこの言葉で悪夢から解放され救われている。だがこの結果に至っていないのは、原作とは違う歴史を歩み『灰の剣士』という本来存在しない筈の人物と関わっている事も無関係ではない ――
剣の乙女は今も泣いている。
落胆し絶望しているのだろう。
彼と本行為に及ぶ事で、夢の中での主導権は彼が握る形となった。
だがそれも、ほんの些細な変化でしかなく根本的な解決には至っていない。
凌辱と目を焼かれるという苦痛を繰り返さずに済んだ事は幸いだが、肝心な悪夢そのものは何も変わっていないのだ。
そして彼と毎夜を共にしなければ、彼女は再び一人で悪夢に放り出される事も示唆していた。
今も泣きじゃくる剣の乙女。その姿は大司教の威厳など綺麗さっぱり消え去っている。
しかしこのまま泣き止む気配が一向に見えない。
まだ夜明けまで時間はあるようだが、そろそろ切り出してみる事にしよう。お互いが前に進む為にも――。
「ゴブリンスイーパー。彼女の事も知っていよう」
「……グス…」
予てより画策していた悪夢の克服方法。
今度は彼女――ゴブリンスイーパーの名前を出す。
その名を聞いた剣の乙女も、次第に落ち着きを取り戻しつつあった。
「もう知っていると思うが、彼女も小鬼に敗北し度重なる蹂躙を受けた者の一人だ」
「……はい」
彼は話した。
当時の出来事を――。
ゴブリンスレイヤーと共に、遺跡に赴き小鬼の殲滅と虜囚と化していた当時の彼女たちとの出会いを。
(イヤーワン編 第35話参照)
灰の剣士とゴブリンスレイヤーは遺跡を制圧し、憔悴し切った彼女たちを救出した。
だが彼女たちの受けた傷跡も決して浅くはなく、彼女たちは暗い影を背負い続ける羽目となる。
神殿の保護を受けた彼女たちは、冒険者稼業へと復帰したが楽な再起ではなかった。
小鬼から受けた経歴は心無い嘲笑の的となり、容赦なく彼女達へと降り掛かった。
そして彼女たち――取り分け頭目役の
「今の君と同じだ。彼女も悪夢に責められ続け、眠りに就く事に怯えていた」
「……」
彼の言葉を無言で受け止める剣の乙女。
既に分かり切っていた事だが自分だけではないのだ、小鬼に付けられた傷を背負う者は。
だがスイーパー達は諦めなかった。
当時のゴブリンスレイヤーに師事する事で、対小鬼用の戦術を学び直し実践に移し徐々に実績を積み重ねてゆく。
そして気が付けば、毎夜の様に視る悪夢にも変化が生じていたのである。
最初は、ほんの僅かな抵抗だった。
度重なる凌辱の末に、焼きごてを全身に圧し付けられる拷問を受け続けた彼女。
本来なら灰の剣士たちが救出するのだが、彼女は拘束され痛め付けられながらも、焼きごてを払おうと藻掻いたのである。
それは些細な抵抗であり、結局は小鬼の嗜虐心を刺激する結果に辿り着いたが、自分でも変化の兆しに驚いていた。
現実では無抵抗に受け入れ許しさえ乞うような有様。
しかし夢の中とはいえ、彼女は自力で抵抗を試みる事ができた。
「それからも彼女たちは、小鬼退治を継続する事で徐々に悪夢に抗う術を獲得していった」
「……」
自らの手で小鬼退治を成し遂げる。
その事実と結果は、何時しか彼女たちに大きな変革をもたらしてもいた。
やがてはゴブリンスレイヤーの師事から独立を果たし、自力で小鬼退治の成功を積み重ねた。
その度に悪夢に対する術を、より明確により確実に成し遂げ、少しずつではあるものの彼女達の精神は強靭に鍛え上げられていた。
そして遂には、自力であの拷問から脱していた。
無抵抗な振りを装い、油断した小鬼が近付くのを待ち、隙を見計らい焼きごてを奪い反撃に移る。
それを悪夢の中で何度も繰り返した。何度も何度も。
たとえ失敗し小鬼の逆襲を受けようとも、彼女は諦めず悪夢に挑み続けた。
小鬼の癖を読み、流れを学び、同じ責め苦を受ける仲間を助けながら、抵抗の術を確立した。
最後には、自力で並み居る小鬼を仕留め逆襲を果たす。
小鬼の総数――実に40前後。
挑んだ回数など数えてもいないが、彼女は成し遂げたのである。
自力で悪夢に抗う事を。
「彼女は言っていた。後で救出に訪れた私たちの顔は、拍子抜けする程に笑いものであったと」
現実では絶望の中、灰の剣士たちに救出された。
だが彼女たちを苛む悪夢では、とうとう自力で抗い自分で自分を救出したのである。
また悪夢でも彼等が救出に訪れたが、何とも間の抜けた唖然とした表情で呆気に取られていたというのだ。
それ以来、彼女は悪夢を視る回数も目に見えて減った。
何せ抗う術と確信を得た以上、もう
まだ同じ夢を見る事はあれど、彼女は恐れる事なく自力で危機を脱し小鬼達を仕留め切った。
若干の恐怖はあれど、彼女は独りの就寝に怯える事はなくなったのである。
「悪夢を克服する術は必ずある。それは彼女、ゴブリンスイーパーが証明してくれた。本当は…それを伝えたかった」
「……」
一頻りを語り終えた灰の剣士。
対する剣の乙女は言葉を失っていた。
自分と同じ境遇…いや、それ以上の酷い状況にも関わらず、ゴブリンスイーパーは諦める事無く前へと進み続けた結果、自力で悪夢に抗う術を獲得していたという事実。
尤も、剣の乙女とスイーパーの環境や状況は当時とはまるで違うものでもあり、一概に一括りには出来ない。
しかし、剣の乙女もスイーパーも生き延びた事には変わりないのだ。
剣の乙女は、悪夢と小鬼の影に怯え続けた。
ゴブリンスイーパーは、悪夢と小鬼の影に抗い続けた。
たとえ、周囲の助成があったとて両者の差は歴然だ。
いや寧ろ、剣の乙女の方が遥かに有利な環境と人生を歩んでいる。
金等級の実力を有し世界を救える程の実績を積み、至高神の大司教という地位まで賜った剣の乙女。
対するゴブリンスイーパーは、何者でもない唯の村娘にして孤児。凡庸な女鎧戦士の域を出ない、何処にでも居る冒険者。
その余りに開き過ぎた地力の差。
なれど見据える方向は真逆も同然。
剣の乙女は過去に怯え、スイーパーは前を見据える。
「……出来るでしょうか…こんな私にも…?」
「事の成否を決めるのは、私でなく君自身だ。……本当なら私が力を貸してやりたいが、傍には居られぬ流れに事が推移している。…済まぬ…!」
ここから先、何を成すべきか。もう分かり切っていた。
しかし小鬼を前にした途端に、彼女は怯え竦み上がり戦意喪失さえも当たり前に委縮してしまう。
これでは小鬼退治に挑む以前の状態だ。とてもではないが、単身では挑めようもない。
そこで彼女に協力する人物が必要となる。
本来なら彼――灰の剣士が傍らに控えるべきなのだ。
悪夢に抗う術を語り、彼女の背中を推そうとしているのだから。
だが、彼は剣の乙女と共に歩む事は出来ないだろう。
明朝、彼の罪と処遇が決定される。
先ず極刑などはあり得ないのだが、既に先ほどの司法取引で彼の行き先は決まったようなものなのだ。
「君を抱いておきながら、結局はこのザマ…つくづく私は情けない卑怯な人間だ…!」
「自分を卑下しないで…!それは貴方に関わった全ての人々を侮辱する事に繋がるの…!本来なら関わらなくてもいい私に、貴方は知恵を絞り歩み寄ってくれた。嬉しいの、本当に…!その上で貴方と愛情を注ぎ合い、女の喜びと幸せを知ったわ…!まだ足りない位よ…本当は。…もっと…もっと――あむっ…❤」
自身を嘲る灰の剣士に即座に反論した剣の乙女。言葉の最後に、強い口づけで彼の口を塞いだ。
自分を否定するのは、これまで関わった人々を否定する事でもある。
それが行き着けば、彼を慕うスイーパーや神殿の少女までをも否定する事に繋がるのだ。
それは、彼とこうして寝台を共にしている剣の乙女さえも含まれている。
彼女にとって、到底受け入られるものではなかった。
「有難う…剣の乙女。……さて、後はどうやって彼女を説得するかだな?それと…あの夢魔の子もだ…」
「え…スイーパーさんだけではなく…?」
「ああ。どの様な要因が働き、私まで君の悪夢を共有する事になったのか。多分だが、
剣の乙女が自力で小鬼退治を続ける事で、悪夢の克服は叶うだろう。
しかしその為には、協力者が必須となる。しかも、唯の冒険者では務まらない。彼女と同じく女の苦しみを知る者が必要なのだ。
女同士なら、互いの境遇に理解を深め合う事も然程難しくはない。
あとはどの様にスイーパーに協力を申し出るか?
だが問題は、それだけではない。
剣の乙女と灰の剣士が悪夢を共有した原因――。
憶測の域は出ないが、あの
灰の剣士は、そう見解を示していた。
元はと言えば幼夢魔は、混沌勢の住民で魔神の眷属だ。そして夢に干渉する能力を先天的に備えている。
今の段階では、自身の能力に無自覚で制御もままならない状態だが、訓練を積み能力を高めれば他者への助けに拍車が掛かるのではないか。
「他にも小鬼に蹂躙された人たちは大勢いる。もしも夢の制御が叶えば、被害者へのより大きな助けとなるのではないか?…そう考えもいる。…噂でしか知らないのだが、夢魔が経営し甘美な夢を魅せる店も在るそうじゃないか?」
「在りますわよ。いつか私と共に、来店してみる?…ああでも…貴方では夢魔さえ魅了しかねないわね。現に
「……」
どうやら噂は本当だったようだ。
夢魔は夢を制御できる。本来は人の夢や精神に干渉し良からぬ結果を残す種族だが、これを良き方向へと使い人族社会に適合している者たちも居るのは確かだ。
一応真面目な話をした筈なのだが、何故か剣の乙女の
「何はともあれ、あの子の訓練と、スイーパーさんの交渉は私に任せて下さいまし。貴方に塁が及ばない様、配慮いたしますわ」
「…いいのか?本当は私の口から――」
「ダ~メ…!貴方は今夜の事も、お話になるお積りでしょう?いずれ話す事になるかも知れませんが、それは私の口から…。……それでも彼女たちは、きっと貴方に変わらぬ愛情を抱き続けると思いますよ。仮に愛想を尽かされた場合は、私が貴方を受け入れるだけです。もう、赤の他人ではなくってしまったので…私たち…フフ///」
説得も交渉も、剣の乙女が率先して行う事を主張する。
あの3人との関係が崩れる事を覚悟してまで、剣の乙女と一夜を共にした灰の剣士。
だが関係性を崩す事を望んでいないのは、誰よりも剣の乙女その人であった。
元々は、悪夢の原因も剣の乙女自身の問題だ。
此処に居る灰の剣士を、寧ろ巻き込んだという形になり、それでいて彼女に寄り添ってもくれている。
ここまで悪夢に真剣に立ち合ってくれた人間は、ほぼゼロに近かった。
大抵は同情や憐憫はあれど、それ以上踏み込む者は居なかった。
尤も、下手な情で踏み込まれても却って傷口を抉られてしまうのだが。
話は決まった。
これからどう動くべきなのか。
大司教としての務めを果たしながら、剣の乙女個人として悪夢に抗い続ける。
悪夢に怯えるのではなく、抵抗し続けるのだ。
そして何時の日か、悪夢を克服する。
ゴブリンスイーパーの様に――。
灰の剣士が切っ掛けを与え、後は自分で事を成す。
これ以上、話を掻き乱す必要もあるまい。
悪夢の克服には未だ遠いが、目指すべき
あとは行動に移すのみ――。
剣の乙女には確かな希望が宿り、これまでにない忠実感に満たされていた。
そして徐に、黒い眼帯を取り外し完全な素顔を曝け出す。
「貴方は素顔なのに、私だけ目元を隠すのは卑怯ですからね」
そう言い、彼女は彼と向き合い互いの視線を交差させる。
淡く薄めの水色の瞳――。本来なら焦点の定まらない視線は、真っ直ぐに彼の橙色の瞳を捉えている。
また彼も視線を逸らす事なく、彼女の視線を真正面から受け止めた。
暫く見つめ合う二人――。やがて剣の乙女の方から言葉を発した。
「今寝てしまえば、また悪夢を視る羽目になりますわ。明け方になるまであと3時間…もうお判りですわよね?」
「…ん…まだ足りないと?」
「当り前ですわよ。この様な機会…もう二度と訪れないかと。そして今夜限定とはいえ、
視線交わすだけなど物足りない。そう意思を示す剣の乙女。
再び彼へと抱き着き、熱い抱擁を交わし合う。
「ん…くフ…んちゅ…❤」
そして飽きる程に繰り返した濃厚な口づけをまたもや交わし、彼の舌と自分の舌を絡ませ合った。
「――ムッ…むぐぅッ…!?」
だが今度は彼からの思わぬ反撃に遭う。
彼女の豊かな胸の先端部を器用に摘まみ上げ、その予想外の刺激にくぐもった悲鳴を上げてしまった。
思わず口を離そうとするも、彼の片腕に抱かれ離れる事ができなかった。
――もう、このいじめっ子…!ホント、
抵抗を諦めた彼女は、彼の刺激を完全に受け入れ、口づけを交わし抱き合ったまま再び寝台へと身を横たえた。
………
……
…
ドアをノックする事が二人に届く。
彼が出迎える形でドアを開ければ、司祭長が訪れていた。
「大司教様、灰の方、準備が整って御座います」
「此方も、いつでも出立できますわ。朝早く恐縮です、ご領主」
時刻は早朝、今日は灰の剣士の裁定が下される日だ。
既に二人とも身なりを整え、出立の備えは終えている。
この部屋に入った当時の服装で、彼等も司祭長に応じていた。
明け方を迎え二人は漸く真面な就寝に就き、ほんの数時間だが心身ともに休む事ができた。
あとは部屋の片隅に溜めてある用水で身を清め、予め持ち込まれていた携帯食で朝食を摂り、備えていた。
「…そうですか。ご両人とも…
「何を仰います。私もこの方も、ただ
「……ええ、ええ、理解しておりますとも。身なりは完璧ですが、もう少々、消臭に努めるべきでしたね。残り香で察せますよ…ホッホッホ…」( ̄∇ ̄)
「「……!?」」( ̄ω ̄;)( ̄ω ̄;)
完璧に取り繕った筈の剣の乙女と灰の剣士。
外面は兎も角、部屋内には二人の行為の臭気が未だ残留していたのである。
自らの熾した淫臭、消したつもりでも第三者からは完全にバレていた。
口元に手を当て、意味あり気に笑う司祭長。
対する二人は、反論する事も出来ず顔を真っ赤に紅潮させてしまう。
―― ゆうべはおたのしみでしたね ――
「「――あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっ……!!!」」(;゚Д゚)(;゚Д゚)
二人は頭を抱え発狂する。
もはや言い逃れは叶わなかった。
―― MADNESS ――
二人は頭を抱え膝立ちとなりながら、大声で
……
「それと、灰の方はコレを――」
「…かたじけない、司祭長様」
発狂から立ち直った彼は、司祭長から何時もの外套を手渡される。
そもそも今は素顔を晒した状態。
大衆の面前で裁定の場に出廷したところで、周囲からは『誰コイツ?』状態だ。
灰の剣士といえば、素顔を外套で覆い隠した状態が常なのだ。
彼女から愛用の外套を受け取り、彼は直ぐにそれを羽織る。
「では参りましょうか」
こうして二人は、司祭長に追従する形で部屋を出る。
―― また一緒に湯浴みしようね、お兄さん ――
剣の乙女の夢が覚める間際、火防女の残した最後の言葉。
「……」
あの言葉は彼の心に強く残るが、その想い無理やり振り切り部屋を後にした。
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ブランデー
果実酒からつくった蒸留酒の総称。
単にブランデーと言った場合は、通常ブドウが原料のワインを蒸留して作られたものを指すが、リンゴから作ったアップル・ブランデーやサクランボから作ったチェリー・ブランデーも存在する。
アルコール度数は40度弱から50度程度である。
また総じてアルコール度数も高い傾向にあり、糖質も低い為、入眠に向いているとされている。
酒と人類の関りは古く長い。
そして神々や異界の異形でさえ、酒との縁は深い。
神秘の液体、酒――。
探求の旅路の果ては、未だ見えず。
もはや御託は言うめぇ…!(錯乱)
二人はヤッちゃいました…!(狂い火)
ガッツリと…濃厚に…!(コーラル)
最初は義務感で致した筈ですが、知らず知らずの内に深い愛情で行為に及びました。
それでも正式には、まだ恋人同士ではありません。(無論、夫婦でもない)
(とは言え、実質フラグは立ったも同然)
まぁ誓いを破った形にはなりましたが、何事も例外と流れというものははあるかと――。
あと、彼が泣かした女性陣に、めでたく剣の乙女がランクインしましたW
まだ完全に悪夢の克服は達成していません。
ほんの一歩を踏み出しただけで、完全に克服するには今しばらくの時間を要すでしょう。
しかし確実に克服へと進んでいます。後は、協力者と剣の乙女次第ですかね。
一応、18禁にならない範囲で描写した積りです。(匙加減が難しい…)
詳しいプレイ内容は、近日中18禁verに掲載いたします。(できました)
明かされてはいませんが
ベッドメイキングを担当したのは、仕掛け人である禿頭の銃槍男(パッチ)ですW
如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
デハマタ。( ゚∀゚)/
そして世に平穏のあらん事を(発狂)