何とか体調も戻りました。
リハビリも兼ねていますので今回は少し短いです。
では投稿致しますドゾ。( ゚ ω ゚ )
聖黄金樹の種
聖黄金樹より生まれ落ちた種子。
淡い黄金光を帯び、その状態でも高い聖性を宿す。
適切な土壌に植えれば、新たな芽吹きを迎えるだろう。
時空を越え世界至る所に広がりつつある、黄金の輝き。
今度こそ…、人類に黄金の時代を。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ちょっと困った事になりました。
何時ものように、世界を模した盤に骰子を振る神様たち。
ああだ、こうだ、と意見を交わし時にいがみ合い時に和やかに――。
そうやって楽しんでいた神さまたちは、盤に降りかかる些細な変化に気付き訝しんでいます。
「予期しない介入…、何処からだろう?」
混沌勢や
本当に何時からでしょう?
見知らぬ魔物や介入者による暗躍。
「記憶に間違いが無ければ、彼等は彼方昔にも――」
「その通りだよ。彼等は元々僕らに近似する宇宙の支配者であり、神々に連なる存在。その総称を僕らは、こう呼ぶ」
幻想の神に応えたのは、黒い鳥の神。
どうやら予期せぬ介入者達は、黒い鳥の神やロードランの神々に関係の深い宇宙を根城とする者たちだと言うのです。
黒い鳥の神は、その介入者をこう呼びました。
―― 大いなる意志たち ――
「その者たち…、何処となく憶えが有るような無いような――」
その名を耳にした太陽の光の神は、何処か懐かしむように頭上の宇宙を仰ぎ物思いに耽っていました。
「僕を含め君達も、大なり小なり関連性のある存在だよ。彼等は例の世界、
「その
黒い鳥は言葉を続け、彼等は主に
しかし少し前から僅かずつ…ほんの僅かずつですが、この世界の盤へと徐々に影響を与え始めている。
(因みに
今は、まだ影響も綻びも大した影響もなく、相対で鑑みれば寧ろ物語を味付ける
しかし、此方に何の許可もなく無断で介入を続ける
このまま放置するのも、如何なものか?
それが幻想や真実に代表される神々の総意でした。
「もう少し様子を見て見ようじゃないか。…もし介在による悪影響が無視できないれレベルに達した場合、僕が手を打つよ。初めての事じゃないんだしね、彼に据えたお灸は」
黒い鳥の神が提案しました。
今しばらく様子見に徹してみようと。
このまま
だが深刻な悪影響を
「黒い鳥の神による粛清が成される。…そういう訳だね?」
「おいおい、物騒な表現だね?
真実の神の物言いを
しかし気にする部分は、
つまり彼――黒い鳥の神は『大いなる意志たち』に対し、
「どの様な手法を用いたのだ?
太陽の光の神の疑念も当然と言うべきでしょう。
大いなる意志たちも、此処に居る神々に比肩し得る存在には変わりありません。
一柱の神が挑むというのも、少々無謀が過ぎるというもの。
しかし、黒い鳥の神は単身で粛清を成し遂げた実績がある模様。
どの様な手段を執ったというのでしょう。
これには他の神々も関心を向けました。
「なぁに、『緑の輝き』で汚染しただけさ。ほんのチョッピリ多めにバラまいてね♪」
「うげぇ…、貴方の管理する
何の事は無いと言わんばかりに、呆気からんと答えた黒い鳥の神。
それを聞いた幻想の神は、心の底から忌避感剥き出しに表情を歪めました。
黒い鳥の神が語る『緑の輝き』は、神々でさえ忌避する程の
「ただ同じ手に抗する術を確立しているかも知れないから、今度は『赤い輝き』で焼き尽くし差し上げるのもいいかもね♪」
「アレはアレで、物凄く厄介な代物だ。『燃え残った全てに火を点ける』だったか?君の十八番は、本当に恐ろしいモノばかりだ…」
黒い鳥の神の切り札とも言うべき『緑の輝き』と『赤い輝き』という、二つの概念。
緑は深刻な汚染を及ぼし、赤は宇宙規模で塵灰へと焼き尽くす。
今度は真実の神が、顔を顰め言葉を濁らせました。
何れ黒い鳥の神が動くにせよ動かないにせよ、今は暫く様子見に徹するという事で意見が一致し小休止に移ります。
……
ここは地母神神殿の裏庭の一区画。
今や神殿のみならず街の象徴ともいえる『聖黄金樹』の移植作業が、
花冠の森姫を代表とする森人勢力が主導する中、只人や街に流れ着いた来訪者たちが現場に集い、その光景を見守っている。
『お~い、そぉっと、そぉっとだぞ!聖黄金樹を傷付けるなよ!』
指揮役の森人が、複数の
3体の
既に大木寸前にまで成長している『聖黄金樹』を無理に引き抜けば損傷の恐れがあり、力任せという荒行は避けねばならなかった。
先ずは周辺の土を掘り返し根を露出させてから、
「これがゴーレム本来の使い方なのかもな」
あっという間に根を掘り返し『聖黄金樹』を持ち上げていた3体の
灰の剣士は彼等の働きぶりを称賛し、掘り返された土壌に視線を寄せる。
聖黄金樹の根を掘り返すだけでも、どれほどの人出と労力を必要とするのだろう。
只人だけで成し遂げようとすれば、まる一日は掛かるかも知れない。
それだけの重労働を、僅かな短時間でやってのけた3体の
過去に混沌勢の使役する
あのような戦闘で無駄な資源を浪費する位なら、只人だけでは厳しい重労働に使う方が余程有益というもの。
(イヤーワン編 第38.5話B前編・参照)
文字通り、根こそぎ掘り起こされた聖黄金樹を担ぐ
神殿の信徒を始めとした大勢の人々に見守られながら、聖黄金樹は
その後、聖黄金樹をロープで何条にも固定し、只人勢が用意した何頭もの馬に牽引されながら神殿を出発した。
流石に
後は、心無い輩の襲撃から聖黄金樹を守り通さなければならない。
同期戦士の一党を始めとした多数の冒険者たちに警護され、聖黄金樹の輸送隊は西方樹海へと向かった。
ここで重要となる事項が存在する。
聖黄金樹が移動するという事は、
今は何の影響もないが、あと数時間もすれば加護の影響範囲も大きく動く事になる。
そして加護化から外れた地域から、あの『赤黒い空』と『赤爛れた陽光』の猛威に晒される事になるのだ。
そうなれば、この街とて急激な衰退を招く事は避けられない。
しかし、王統府を始めとした街全体が対策法を予め準備していた。
聖黄金樹の輸送隊が街を出発したと同時に、幾多ものの冒険者を中心とした実働部隊が動く事になる。
先ず街を中心とし、円で囲むように3重層の結界を展開させる手筈だ。
その結界の基軸となる『結界石』の設置は、複数の冒険者部隊が担う。
設置が済み次第、合図となる狼煙を上げる。
それを確認した神殿関係者が一斉に結界を展開させれば、赤黒い空の脅威を凌ぐ事ができる。
完全ではないものの、その間に赤黒い空の原因を取り除けば状況の改善には繋がるだろう。
「あ~あ、聖黄金樹、持ってい行かれちゃったね」
「神殿の象徴として、けっこう注目されてたんだけどなぁ…」
「夜なんて凄く綺麗に輝くもんね。わたしアレ見たあと眠りに就くの好きだったのになぁ」
「仕方ないわよ。あのまま成長し続けてたら、この街全部飲み込まれちゃうって言うじゃない?」
つい先程まで其処に根を張っていた聖黄金樹の姿は、今はもう無い。
神殿の象徴でもあった聖黄金樹の掘り返された跡に、寂し気な視線を送る神殿関係者たち。
大きく捲れ上がった土と鬱蒼と生い茂る草花が、閑散とした光景として彼女達の瞳に映っていた。
やや白みがかった黄金の光を常時放ち、周辺の土は急激に肥えると現象さえ引き起こしていた聖黄金樹。
樹木から滴る朝露は聖なる力を帯び、治療薬の素材や魔除けの道具として大いに役立っていた。
また聖黄金樹の輝きは人々の荒んだ精神をも癒し、一種の聖地と化していた程である。
その姿を、もう拝む事は出来ないのだ。
神殿関係者のみならず、王統府や剣の乙女たちも無言で視線を向けるだけであった。
『あの…お三方…、此方にて――』
国王、剣の乙女、司祭長に対し、小声を掛けて来たのは灰の剣士である。
何やら見せたい物があるとの事だが、あまり公に晒したくないのか物陰に隠れながら手招きしていた。
3人は怪訝な表情を浮かべながらも彼の誘導に従い、物陰へと向かう。
「どうしたのだ、卿よ?」
「実は、この様な物を入手いたしまして――」
何を見せたいというのか、灰の剣士は?
国王たちに対し、彼は掌を開いた。
「それは…、種…でしょうか?」
「聖なる…黄金のソウルを宿していますね。まさかこの種――」
開かれた掌を見る司祭長と剣の乙女は、3粒ほどの種らしき物を目にした。
また剣の乙女は、3粒の種から聖なる黄金を宿したソウルの波形を感知する。
「聖黄金樹の種です」
灰の剣士の掌に有る3粒の種だが、あの聖黄金樹が残した物だと明かした。
「森人勢力にしては珍しく見落としていたようです。こんな貴重な種を放置するとは」
聖黄金樹の移植という大役に意識を割き過ぎていたのだろうか、森人勢力は――。
彼等が見逃してくれたお陰で、こうして種の回収に成功。
「つまり、この神殿に新しい聖黄金樹が宿るという事ですね」
現在3粒ある聖黄金樹の種だが、一つでも此処に植えれば何れは聖黄金樹の子孫が神殿に宿る。
どれ程にまで成長するかは未知数だが、神殿に聖黄金樹が再び宿る事は司祭長にとっても喜ばしい事態でもあった。
「一粒差し上げます。お好きな物を――」
「聖黄金樹が再び宿るのは好いにしても、巨木に成長してしまうのなら手放す事を繰り返すだけ…。どうしたものでしょう?」
「司祭長、
灰の剣士が差し出した種は3粒だが、それぞれの輝きに差異が見られた。
この神殿に聖黄金樹の子孫が宿るのは好いのだが、それも”ローデイルの黄金樹”並みに成長しては元の木阿弥に帰す。
街全体が飲み込まれては何の意味もないのだ。
司祭長の理想で言えば、先ほど輸送された聖黄金樹ぐらいの大きさに留まれば良いと考えていた。
”街路樹”以上”大木”以下――。
その位の成長限界なら、街の規模に見合う『第2の聖黄金樹』となろう。
種の選択に惑う司祭長に、剣の乙女が助言を呈した。
最も輝きの鈍い種なら、間違っても巨木に膨張しない可能性が高い。
実際どれ程にまで成長するかは分からないが、彼女が提示する種を選ぶのが無難だ。
「そうですね。では、この種にいたします」
司祭長は、最も輝きの鈍い種を手に取る。
「そのまま土ではなく、植木鉢にでも植え経過観察した方が良いやも知れんな」
このまま土に植えても構わないが、それでは誰かが知らず知らずの内に掘り起こしてしまう危険もある。
一旦は植木鉢にでも植え発芽を確かめた後、土に植え戻す。
国王は、そう提言する。
「その方が安全ですね、ではその様に――」
灰の剣士から種を受け取った司祭長。
近い将来、再び神殿に新たな第2の聖黄金樹が誕生する。
その未来に胸を躍らせた彼女は、意気揚々と神殿内へと引き返した。
最近の彼女は、動きも軽やかで調子が良いようだ。また肌の血色も今まで以上に良く、司祭長の身に何か吉事が舞い込んだのかもしれない。
「あとは、陛下に大司教様。お受け取り下さい」
頭を垂れ、残り二つの種を差し出そうとした灰の剣士。
「いや折角の申し出だが遠慮しておく。聖黄金樹は、アレだけで良い」
「私も同感ですわ、灰の方。同じモノが多く存在しては、その希少価値が薄まってしまおうというもの」
しかし国王も剣の乙女も、受け取りは控える姿勢を見せた。
あの聖黄金樹は森人と只人の友好の証としての
もし聖黄金樹に比肩し得る巨木が、其処彼処で散見されようものなら政治的意味合いも薄まるのではないか?
それを危惧した二人は、敢えて受け取りを控えたのである。
「今のも
「ハッ、ご配慮に感謝いたします。陛下ッ!」
こうして聖黄金樹の移植作業は一段落を迎える事となる。
後は、街を防護するための結界の展開作業となるが、実は最も内側の第3層の担当する人員だけが決まっていない。
そこで、第3層の結界展開のための下拵えは、灰の剣士が担当する事に決定した。
彼は保護観察中の立場だが、近隣までなら自由行動も認められている。
それに治安維持や周辺の安全確保には、他の冒険者たちも率先して動いてくれているのだ。
そこで彼は訓練の意味合いも兼ね、あの見習い勇者たち3人を引き連れる事にしたのであった。
(R18版 第5~6話参照)
………
……
…
あれから数日が経過する。
聖黄金樹の移植騒動も落ち着き、街は結界に守られ少しでも日常の維持に努めていた。
荷車を曳く灰の剣士たちは、とある牧場を目指している。
「その牧場に、エスティ先輩が?」
「旅に出たって聞いてたけど、この国に来てたんだ」
荷車の後方では、ロロナやステルクたちが会話に興じていた。
以前、件の牧場から逸れた子豚を送り届けた際、牛神娘を山賊の魔手から救い出してくれたのがエスティ=エアハルトという女性であった。
彼女は然る理由で故郷を離れ、現在は牧場の世話になっていたのである。
ルルア達から事情を聞いたロロナやステルクは、懐かしい隣人との再会に少しばかり浮かれ気味だ。
(本編前夜編 第100話参照)
「それにしてもよ、この『獣除けの香』って言ったか?
荷台の上に腰掛ける調香娘は、傍にある麻袋を掴み手触りを確かめていた。
「初回だけだけどね。次からは有料にしないと、素材代もバカにならないしさ」
同じく荷台に腰掛けるライザも、調香娘に言葉を返す。
獣除けの香だが、獣の病の羅患者や獣そのものを退ける効果を持つ。
また内に獣の如き衝動を宿す者にも効果を発揮し、混沌勢は煙を嗅ぐだけで強い拒絶反応を示す。
当然、人間にも効果を発揮し、下卑た邪欲や衝動に忠実で凶暴な輩ほど忌避感を覚え、忽ち身体に悪影響を及ぼしてしまう。
無論、魔物も該当し、あの小鬼でさえ『獣除けの香』は高い効果を発揮する事が実証されていた。
現在この街には、他方から大勢の避難民が流入している状態だ。
今は、物資にも受け入れ地にも余裕が見られるが、時間を追う毎に治安悪化は避けては通れない筈だ。
一応冒険者や衛兵たちが共同作業で巡回しているが、何事も完璧とはいかない。
最悪、冒険者や衛兵が問題を起こす
現に牛飼い娘などは容姿にも優れ年不相応の豊満な身体を有しており、心無い輩の毒牙に掛かる寸前まで追い詰められた過去も、幾度か起きていた。
この数日の間、灰の剣士は『獣除けの香』のレシピをライザ達に公表し量産させた。
そして効果を確かめた後、無償でレシピを街全体に開示。
街に所属する錬金術士たちが一斉に『獣除けの香』を増産し、それを住民各所に配布する事を領主が取り決めたのである。
初回配布は無償だが、次回からは各雑貨店にて個人で購入してもらう手筈となる。
今はギルドの依頼で冒険者たちが、増産された『獣除けの香』を街中の至る所に配布している状態だ。
そして灰の剣士たちには、この牧場が割り当てられていたのである。
だが『獣除けの香』を配るだけなら、荷車を曳く必要はない。
ワザワザ荷車を持ち出している理由――。
それは、大量の干し草や雑草の類を積載していたからだ。
錬金術とて廃材は発生し、こうした雑芥類は飼料に混ぜ込み家畜の食糧に利用される。または畑の肥料と化すかのどちらかだ。
かなりの雑芥が蓄積したため、牧場の家畜の飼料としても利用できる事を知った彼等は、処分を兼ね荷車に積み込んでいたのである。
「お~い、貴公ら…と言うか、ハリにステルク公。手を貸してくれても罰は当たらぬぞぉ…ハァ、フゥ…」
息を乱しながら一人荷車を曳く灰の剣士は、後方のハリとステルクに呼び掛ける。
この二人は荷台には乗っていなかったものの、会話に興じ殆どに荷物も所持していない。
「いえいえ、灰人さんの崇高な役目を奪おうなどという罪深い愚行、恐れ多くて僕には、とてもとても…とてもとても――」┐(´∀`)┌
「君ほどの烈士が、この程度で音を上げるとは到底思えん。さぁ今こそ、真の試練を乗り越えてみせてくれ」(uдu*)
歯の浮く台詞をほざきながら、結局二人は手を貸す気は無いようだ。
「灰君、頑張れ頑張れぇ♪」( ゚∀゚)/
「剣士さん、ファイトですよぉ♪」( °▽°)
「ガンバレガンバレ、剣士さん♪ガンバレガンバレ、ケ~ンシさん♪」\(`ω´)/
「こういう時男はよぉ、黙って曳くもんだぜぇ?命尽きるまでなぁ…?」( ̄∀ ̄)
「それもそれで、なんか大袈裟過ぎない?」( ゚ ω ゚ )
荷台に腰掛け談笑に耽っていたライザ、銀髪武闘家、ルルア、調香娘、スイーパーは各自の反応を寄せる。
各自の態度は違えど、結局は誰一人として彼に手を貸す者は居なかった。
「皆の気遣い痛み入る。(覚えとけよ、貴公ら!)(# ゚Д゚)」
灰の剣士も何気ない言葉で返しながらも、内心は毒づいていた。
「お、牧場だ。牛さんが一杯いるね♪」
「ここで作られるチーズは、逸品だと評判…」
「遠間から、よく目にしていましたが、近くまで立ち寄ったのは初めてですね」
同じく荷台に腰掛ける、見習い勇者、賢者、剣士も近付く牧場に関心を寄せていた。
「あ、あの子だ。お~い!」
ライザが牛飼い娘の姿を捉え、大声で呼び掛けた。
まだ遠間だが声が届いたのだろう。
牛飼い娘も手を振り、此方にまで駆け寄って来る。
……
家畜の飼料となる干し草や雑芥を指定の納屋に納めるべく、鋤や熊手を使い作業していた灰の剣士と男性陣。
一方、女性陣たちは家の中で談笑に華を咲かせていた。
「まさかエスティさんが、此処に来てたなんて驚きです」
「それは私も同じよ。他所の国で再開できるなんて、世の中分からないものね」
ロロナたちは、昔馴染みのエスティとの再会で思い出話で盛り上がっていた。
そしてエスティという女性は、ステルクの先輩でもあり嘗ては王宮に所属していた経緯がある。
「それにしてもロロナちゃんとステルク君との関係、相変わらずなのね」
「そういうエスティさんは、ここの主さんと親しいみたいですね」
「そう、分かる?今までどうして気付かなかったのかしら…。男はね、顔や財力じゃないの…。中身が重要なのよ、中身がッ――」
「アハハ…」
エスティが、この牧場に居座り、それなりの年月が経過していた。
彼女の持つ技能は、牧場経営にも大いに役立てられており、牧場主には大変気に入られていた。
また二人の関係は時間を追う毎に親密となり、お互いがお互いを異性として意識し合ってもいる。
エスティは密かに、ここで『第2の人生』を歩む事を意識さえしていたのである。
「おめでとうございます、エスティさん」
「こらこら、まだ早いってば。そうなるかもって話よ、今はまだね」
ロロナとエスティが話している横では、ライザ達が牛飼い娘に『獣除けの香』や『ロアの実などの栽培法』の件について説明していた。
「この煙がね、悪い魔物や山賊を追っ払ってくれるんだよ」
「へぇ~凄い。錬金術って、こんな物も作れるんだ」
丸い球体状の香に導火線を繋げた、一見爆弾にも見えなくはない代物だ。
しかし爆発物ではなく、あくまで煙だけを発生させ、邪悪な意思を持つ者には多大な忌避感を抱かせ追い払う事に繋がる。
ここは街外れに位置する牧場なため、野盗や賊に狙われ易い場所に立地していた。
これを焚いておけば、多少なりとも予防策にはなるだろう。
「貴女も時間があれば、
「ゴブリンスレイヤーさんも時々来るみたいだし、もし良かったら」
「うん。時間が出来た時そうさせて貰うね」
獣除けの香を手に取り物珍し気に見つめる牛飼い娘に、ルルアとエーファが
同年代で同性の知り合いに乏しい牛飼い娘は、彼女たちとの出会いに一種の充足感を覚えており、直ぐに受け入れる。
獣除けの香を届けるという作業は終わりを迎えた訳だが、灰の剣士は牛飼い娘を伴い少し歩きながら話をしていた。
因みにゴブリンスレイヤーは留守で、あのオーベックと共に『壷師』が住まう隣村に出かけているとの事だった。
「えっと頼みって何かな、剣士君?」
街道から外れ、放牧の道なり歩いていた二人。
柵の向こうには、多数の牛や豚が草を食んでいた。
「そう複雑な話でもない。彼…ゴブリンスレイヤーの事で少しな」
今日、ゴブリンスレイヤーは居ない。
出来れば彼に直接伝えたかったのだが、不在であれば仕方がない。
彼と最も親しいと思われる牛飼い娘を通じて、とある旨を伝達する。
「これから先、彼と共に
「へ…食事…?」
随分、珍妙な事を言うものだ。
灰の剣士に対する、牛飼い娘の正直な感想だった。
「奇妙な話だという事は、私自身もよく理解している。毎日毎食とは言わん。二日…いや三日おきでもいい。朝なり昼なり神殿にてシチューを彼と共に食べてくれれば、それでいい」
「…う~ん、やっぱり変な話だね。ワザワザ神殿まで行って
「今のが正常な反応だ。だが彼には重要な事なのだ。貴公の作るシチューが絶品なのは、私も認める所ではある。だが…頼めないだろうか?貴公だけでなく、牧場の主やエスティ殿を同行させても構わない」
「まぁそんなに難しい事じゃないと思うけどね。とにかく数日に一回、彼を引き連れて神殿でシチューを食べればいいんだね?」
「そうだ。近い将来、神殿主導で炊き出しも行われるだろう。その時も、なるべく顔を出して貰いたいのだ」
「…なんか…、彼の事で事情があるんだよね、貴方が其処まで真剣に頼み込むなんて」
「…済まんね。本来なら、彼に直接伝えるべきだったのだが――」
「いいっていいって、私も貴方には何度も助けられるし、まだ真面な御礼も出来てなかったんだよ?あとは任せて。彼を説得して、神殿まで連れて行くから。私も時々は、お父さんやお母さんの墓参りしなくっちゃ」
ゴブリンスレイヤーを伴い、地母神神殿にてシチューを食す。
それが灰の剣士の願いである。
真相は伏せておいたが、彼の実姉『レイラ』という女性との件に起因していた。
不死の呪いも解き、彼女は元の人格と記憶を取り戻していた。
そしてゴブリンスレイヤーの実姉である事を自ら告白し、その日の内に彼と対面した。
しかし彼の方が拒絶を露わとし、レイラを受け入れる事無く神殿から飛び出してしまう。
実の姉弟の関係を隠蔽したまま、彼女は引き続き神殿から保護される身となる。
そして現在は、調理士として神殿で生活を続けている。因みに彼女の作るシチューは、神殿内でも人気のメニューと化していた。
実の姉弟でありながら、ギクシャクとした関係に至ってしまった二人。
この状況を何とか打破したいと考えていた灰の剣士は一計を案じ、こうして彼女に打ち明けた次第である。
勿論、レイラの存在と因縁の事は隠しておいた。
とにかく、ゴブリンスレイヤーとレイラの
灰の剣士は、そう考えていたのであった。
強制的に彼を諭した所で、却って頑なに拒むだろう。そしてあの一件以来、彼は再び神殿に赴く事を拒んでいると聞いていた。
たとえ強引にとはいえ、何度も何度も直接会い顔合わせを繰り返せば、自然と角も取れる可能性が生じる。
会わないのだけは、何としてでも避けなくてはならない。
彼と姉との関係を修復させ、心の重石を取り除く。
そして何時の日か、彼には
それが、彼の小さな願いでもあった。
彼とも浅からぬ関係ではないのだ、灰の剣士も。
牛飼い娘からは、何とか承諾の意思を取り付ける事ができた。
彼が此処に訪れた真の狙いは、今の心情を伝えるためでもあった。
最初は難航するかも知れないが、繰り返す内に彼も自然と足を運ぶようになるだろう。
「これは、私の持論なのだが――」
「ん、なぁに?」
話の締め括りにと、牛飼い娘に告げる灰の剣士。彼女も振り返り、改めて耳を傾ける。
「彼のゴールは――」
―― ゴブリンを殺す事じゃない ――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
森人が用いた木製のゴーレム。
植物類との親和性が高いのか、森人はウッドゴーレムの扱いにも長けている。
今回用いられたのは重労働用に特化させた個体で、戦闘には向いておらず動き自体も些か鈍い。
また細やかな作業も苦手だが、膂力には優れており単純な重労働を任せるには適している。
森人は、精霊との縁も深く精霊使いも数多い。
なんの教育も受けず自然体得に至る者も、度々出現するという。
ゴブリンスレイヤーが本当の意味で救われるには?
幼い頃の惨劇が全てを決定付けたと言ってもいい、彼の壮絶な物語。
やはり小鬼の呪縛から解放される事が、真なる救済と言えるのかもしれません。
如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
デハマタ。( ゚∀゚)/