ゴブリンスレイヤー ―灰の剣士―   作:カズヨシ0509

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ドーモです。
再び視点は、灰の剣士側へと戻ります。
メルル、ミミと一党を組み、ゲームには存在しない進入路からロスリック内部へと挑みます。チョッピリ短くアッサリ目です。

では投稿致しますドゾ。( ゚ ω ゚ )


第161話―ロスリック・深みの聖堂、漂着 廃墟街―

 

 

 

 

 

 

火炎旋風

 

炎を纏った旋風現象。

凄まじい竜巻と同時に高温の火炎を纏い、巻き込んだ対象物を引き裂き焼き尽くす。

自然環境下で発生する場合もあり、別名『火災旋風』と呼ばれる事もある。

 

彼が引き起こしたコレは非常に規模の小さいモノだが、小鬼程度を巻き込み焼き尽くすには些か過剰火力に過ぎた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

   デエェェ ―― 封鎖された進入路 ―― ェェェエン

 

拠点街から出た灰の剣士たちは、得た情報を頼りに暫し歩を進める。

然程の時間を置く事なく、眼前には荒れた通路が姿を見せていた。

 

「ギルドの情報通りだと、多分ここね」

「ホントに封鎖されてるね、瓦礫だらけの山だわ」

 

 注視するまでもなく遠間でも、封鎖の跡が見られる廃棄された進入路。

岩石を主に土嚢などが造作に積み上げられ、小山のような(バリケード)が彼等の目に映っていた。

だが長期間の風雨に晒されたのか、所々が崩れ古びた土嚢も破れ土が今も零れている。

 

「壁の先から多数のソウルを感じる。…小鬼(ゴブリン)のソウルだ」

 

「小鬼って、あの小鬼よね?」

「この国の小鬼って異様に凶悪なのよね。女と見るや直ぐに襲い掛かって来るし」

 

 灰の剣士は、無造作な封鎖の奥から多数のソウルを感じ取っており、ソウルの主が多数の小鬼である事を明かす。

彼の言葉にメルルとミミは、心底嫌そうな表情を浮かべていた。

彼女達が母国とする『アーランド』にも小鬼は存在するが、この国の様に凶暴で獰猛な種族ではなかった。寧ろ非常に憶病な性格で人を視界に納めた途端、即座に逃げ出してしまうほどだ。

メルルもミミも、この国の小鬼を討伐した経験を済ませていたが、余りの凶悪度の違いに困惑する程である。

それほど凶暴で獰猛な小鬼だが、この瓦礫の先から大群の存在を仄めかされ二人は辟易まじりの溜息を吐く。

 

「正確な数、分かる?」

「…大まかにしか分からぬが厄介だな…。()()()()()()()に達するやも知れぬ」

 

「えぇっ!?そんなにぃッ!?」

 

 こういう場面で彼の持つ『ソウルの感知』は便利だが、肝心なのは生息数だ。

ミミが訪ねるが帰って来た答えは、3桁は確実で4桁に達する可能性もあるという。

正確な数ではないが、彼の返答にメルルは耳を疑う反応を見せた。

 

時間短縮を見込み近道を思わしき『封された進入路』を目指した灰の剣士たち。

しかし、小鬼の大群が待ち構えているとなれば戦闘を避ける事は困難で、真面に相手をしていては却って時間と労力の浪費に直結してしまう。

 

「どうする?小鬼の大群に構ってなんていたら――」

「やっぱり、アンタの通るルートにする?」

 

「…そうもいかぬやも知れん。生者のソウルも少数だが感知できた」

 

 下手をすれば4桁に達する小鬼が、この先で待ち構えている。

余程の戦闘狂や()()()()()()でもない限り、ワザワザ小鬼と戦う意味など無きに等しい。

メルルとミミは、この進退の判断を灰の剣士へと託した。

本来なら彼とて無駄な戦闘は避けたいのだが、その選択肢にも躊躇いを滲ませてしまう。

 

彼は小鬼以外のソウル、つまり真っ当な生者の存在を感知していたのであった。

 

「ちょッ…、それ本当なの!?」

「もしかして…もしかしなくとも、小鬼の人質って事よね?…この国の小鬼は、女の人を攫ってすっごいエッチな事するって習性だし…放置できないよ…!」

 

「そんな生易しい言葉では済まされんがな。だが男のソウルも幾つか探れた。若しかしたら身を潜め、救助を待っている可能性も捨て切れぬ」

 

 小鬼の傍に存在する生者など、想像するまでもなく若い女性と判断していいだろう。

彼の言葉にミミとメルルも焦燥を滲ませたが、幾人かの男の存在も告げられた。

これは彼の憶測だが、単純な人質というよりは何処かに潜伏し救助や脱出の機会を窺っている可能性も示唆する。

 

「…いけるな、二人とも?」

 

「勿論よ、放っておく事なんて出来ないし!」

「予定とは違うけど、見捨てられないわ!」

 

 ある程度状況を察した3人に、放置するという選択肢は除外されていた。

確認するまでもなく、メルルもミミも瓦礫を乗り越え小鬼との戦闘に意欲を見せている。

こうなれば、やるべき事は1つ。

 

「少し待っていてくれ。上からロープを垂らす」

 

 この先へ進む為にも、先ずは封鎖の瓦礫を乗り越えねばならない。

瓦礫を破壊する選択肢も考えられたが、余りに非効率的で崩壊した瓦礫の下敷きになる危険性さえある。

素直に乗り越えた方が無難というもので、灰の剣士が瓦礫の天辺へと登る事にした。

 

――フックショットを盗られなかったのは幸いだな。

 

腰から銃型のフックショットを抜き、瓦礫の天頂へと弾頭を射出する。

金属上の弾丸が瓦礫の一角へと突き刺さり、彼はスイッチを捻り弾頭部の鉤爪を露出させた。

 

「よし」

 

 何度も体重をかけ引っ掛けた弾頭が外れないかを確かめた彼は、もう一つのスイッチを押し巻き取り機構(リール)を作動させた。

その瞬間、彼は勢いよく持ち上がり瞬時に瓦礫の頭頂部まで移動を果たす。

 

「お~、便利ね~アレ。今度、錬金術で作ってみようかな?」

「使いこなすの難しそうだけどね」

 

 彼の様子を見ていたメルルとミミは、フックショットに少々の関心を抱いていた。

 

「ロープを垂らすぞ、それを伝って登ってくれ!」

 

「はいは~い!」

 

 瓦礫へと登った彼は、もう一つ持ち込んでいた鉤縄付きの長く丈夫なロープをメルルたちへと投げ寄越す。

頭頂部を鉤爪で引っ掛け落ちないように固定し、程無くしてメルルたちがロープを伝い瓦礫を登る。

 

「結構高いね」

「跳び下りれなくもないけど――」

 

「万が一、足でも捻挫されては治療も一手間だ。無難だがロープで降りよう」

 

 瓦礫の頭頂部へと辿り着いた灰の剣士たち。

下から見上げ時と上から見下ろしたのでは随分高さに違いが感じられ、メルルとミミは一気に跳び下りる事に少々の逡巡を覚える。

決して跳び下りれない事もないのだが、思わぬ衝撃で足首を痛めてしまえば活動にも支障が出てしまう。

灰の剣士は治癒の奇跡に長け対応も容易だが、怪我など無いに越した事はない。

此処はロープで確実に下りるべきだろう。

先ずは彼がロープを伝い、ゆっくりと瓦礫の向こう側へ降り地上に足を着ける。

 

だが此処で少々後悔する羽目に陥った。

 

「…しまった///」

 

 先に降りた彼は小声で呟き、暫し上を凝視してしまう。

 

「次は私だね」

 

 彼が降りたのを確認し、次はメルルがロープを伝い瓦礫を降りたのだが短いスカートが災いしてしまった。

微風とはいえ絶えず風が吹き彼女のスカートは微妙に煽られる事で、下に陣取る彼からは桜色のショーツが丸見えとなっていたのである。

しかしこのような環境下だ。

特にメルルは気にした風でもなく、彼も彼で直ぐに視線を外し女二人が降りるの待った。

 

封鎖の瓦礫を乗り越えた3人は、そのまま緩やかな下り道を進む。

視界に映る景色は徐々に人工物の変化が見られ、荒れた人里が流れ着いた事を示していた。

 

「此処にも流れ着いた人里が…」

「そこそこの街ね、完全な廃墟だけど」

 

 やがて3人は、崩壊した廃墟群に辿り着く。

建造物の荒れ具合や崩壊ぶりから、此処に流れ着いた街だと判断できた。

 

「この先に、小鬼の大群が集っている。生者もな」

 

 漂うソウルの波形は、この廃墟群から流れ出ている。

4桁は居るであろう小鬼の群れに加え、幾人かの生者のソウルも感知していた灰の剣士。

 

「準備はいいな」

「当然よ!」

「今度こそちゃんと戦えるわ!」

 

 慎重に廃墟群へと足を踏み入れた灰の剣士たち。

未だ姿を見せない小鬼群だが、怪しい息遣いや異臭が其処彼処から漏れ出ていた。

声をかける灰の剣士に、二人も武器を引き抜き身構える。

 

今までと勝手の違う状況に追い込まれ、ロスリック内ではミミもメルルも辛酸を舐めさせられてきた。

万全とはいかないまでもこうして再起も叶い、今は灰の剣士と言う心強い味方も同行している。

 

今度こそは――。

 

そう意気込む女二人を余所に、周囲の物陰から多数の小鬼が姿を現した。

 

「GYOV!」

「GROOB!」

「GYBEGYBE!」

 

 何時もの小鬼だ。

飽きる程に普段から見慣れ幾度となく切り伏せてきた、小鬼と呼ばれる混沌の住民。

赤爛れた陽光と相性がいいのだろうか。

降り注ぐ今の日差しは、只人には深刻な悪影響を及ぼすが小鬼には何の影響も無い様に見える。

寧ろ、これまで以上に活気づいている様にさえ思えた。

 

「うわぁ…ヤな視線…」

「ギラつきにも程があるでしょうに…!」

 

 この国の小鬼は、とにかく凶暴で悪辣の一言に尽きる。

メルルとミミという二人の魅惑的な女を前に、多数の小鬼は下卑た笑い声をあげジワリジワリと距離を詰め始めた。

 

「凄い数…、ちょっと厳しいんじゃ…?」

 

 既にメルルの視界には小鬼に埋め尽くされ、それだけでも尋常ならざる数である事が分かる。

彼女の前だけでも200は超えていても不思議ではない群れだ。

小鬼の戦闘力そのものは脅威ではないものの、殺到され押し倒されでもすればその時点で命運は尽きたも同然。

近い将来起こり得るであろう最悪の事態を想像してしまい、少し及び腰となるメルル。

 

「案ずるな、私が注意を引き付ける。討ち漏らしと各個撃破に努め、私の背後を頼む」

 

「やれるの、アンタ?」

「普段通りだ、始めるぞ!奇跡…贖罪!」

 

 全群とはいかずとも今の数だけでも200以上は確実で、脅威には違いないのだ。

攻撃の隙を突かれ殺到されれば古強者でも一溜りもない。

だが陣形と連携さえ構築できていれば、この程度の規模など少人数で対処できる。

この様な状況など幾度も乗り越えてきた灰の剣士…あのゴブリンスレイヤーと共に。

彼はロンドールの奇跡『贖罪』を発現させ、小鬼の注意を自分に集約させた。小鬼の精神構造なら真面な抵抗など出来ない筈だ。たとえ傍に女がいようとも、()()()()()()()()()()()だろう。

並み居る小鬼は一斉に()()()()()()()()、奇跡の効果を再確認する。

 

「私が最前衛に出る、背後は任せたぞ!それと炎を付与せよ、焼却と並行し亡者化を防ぐ!」

 

「分かったわ!」

「しょうがないわね」

 

 奇跡の発現を終え小鬼群の前へと躍り出た灰の剣士。また各々の武器に火の付与(エンチャント)を呼び掛けた。

ロスリック内に居ながら此処の小鬼は生者ばかり。つまり仕留めた傍から亡者と化し再度襲い掛かってくる危険性が高いのである。

西方辺境街の近域でも10分足らずで小鬼が亡者化した前例もある。

(本編前夜編 第126話参照)

四肢を破壊ないし切断するか焼却し体組織の破壊を狙うか、とにかく身体破壊を試み活動阻止に追い込む必要があるのだ。

灰の剣士は元よりメルルもミミも優れた冒険者で、武器に火を付与する術など実に造作も無い。

カーサスの孤炎を『獣狩りの斧』に纏わせる灰の剣士。同時にメルルとミミも瞬時に武器へ火を付与した。

 

「「「「「――GRUOOVO!!」」」」」

 

 火の付与を終えたと同時に、小鬼の大群が彼等(正確には灰の剣士)へと殺到、彼等は縦横無尽に武器を振るい抗う。

 

「獣狩りの斧とやら、私に活かせるか…!?」

 

 出撃前に受け取った斧の柄を変形させ、長柄斧へと変化させた灰の剣士。

武器の特性上、振り回せば広範囲を攻撃する事が可能だ。加えて此処は場の開けた地形でもあり、洞窟や地下とは違う。

いくら多数の小鬼が殺到したところで、彼に肉薄する事は叶わなかった。

 

「――戦技『嵐呼び』ッ…!」

 

 狭間の地より由来する嵐の戦技『嵐呼び』で、長柄状態の斧を振り回す灰の剣士。

回転動作とソウルにより生み出された嵐が巻き起こり、彼の周囲には小規模ながら鋭い烈風が吹き荒ぶ。

また呪術の火『カーサスの弧炎』により肉厚の刀身には炎が宿っていた。その所為もあり、炎による付与と嵐の相乗効果で彼の起こした嵐は、宛ら『火炎旋風』にも似た現象を引き起こしている。

 

「GYOV!」

「GROOB!」

「GYBE!」

「GYOV!」

「GROBE!」

 

 憐れな獲物…、そう高を括っていたのだろうか。

憐れなのは小鬼側の方で、彼に殺到した小鬼だけでなく傍に陣取っていた多数の小鬼をも巻き込み、彼の火炎旋風に吞み込まれ炎熱の顎に食い散らかされてゆく。

嵐の潮汐力と炎熱で焼かれながら引き裂かれた多数の小鬼達は、成す術も無く次々と体組織を崩壊させ命を絶たれた。

 

「ジッとしているだけだと思うなよ、小鬼達よッ!」

 

 更に彼は自ら歩を進め、怖じ気付く小鬼達を巻き込んだ。

 

「「「「「――GROOBROBE!」」」」」 

 

 ごく小規模とはいえ『火炎旋風』などという災害に、同胞たちが餌食と化している現実。

巻き込まれ塵芥と果てる同胞を目にし、難を逃れた小鬼達は怖じ気付き一目散に逃走を図った。

 

「――逃がさぬ、エオヒドの剣舞ッ!」

 

 逃げ惑う小鬼の集団目掛け、彼は戦技『エオヒドの剣舞』を発動し獣狩りの斧を投擲する。

彼のソウルが宿った長柄斧は回転を止める事なく炎風を纏いながら、逃走を図る小鬼達の背後から無残に引き裂き焼き切った。

本来この戦技は、鈴玉狩りこと鉄茨のエレメールが会得していた技だが、ジークバルドだけでなく灰の剣士も会得している。

 

「――まだまだぁッ…!」

 

 彼は斧を操りながら別の集団へと嗾け、他の小鬼達をも巻き込み仕留めてゆく。

威勢が良かったのは最初の接敵のみで、ほぼ一方的に小鬼集団は蹂躙の憂き目に遭っていた。

 

「――攻勢は今の内だッ!二人ともっ!」

 

 今や戦局は此方側に傾いた。

完全に浮足立っている小鬼集団を逃す慈悲など不要。

彼は後方に陣取るメルルとミミに、追撃を指示する。

 

「そうだったね、呆けてる場合じゃないよ!」

「ホント呆れるほどに規格外ね、ダークゴブリンの時といい!」

 

 彼の暴れ振りに半ば呆然としていた二人だが、彼の声で瞬時に動きを開始した。

 

「いくら凶暴って言ったってッ!」

 

 本来の愛用品ではないが『パラッシュ』と呼ばれる剣は、メルルの手に良く馴染んだ。

自身の魔力で付与した炎の刀身が、並み居る小鬼を焼きつつ切り伏せる。

聖堂の虜囚となっていた頃とは打って変わり、メルルの動きは非常に冴えていた。

魅力的な女と見るや怖じ気付いていた小鬼達は一斉に蜂起し、メルルへと襲い掛かるも素早い身のこなしで掠りもしない。

 

「私だってやる時はやるんだからッ!」

 

 刀身に更なる魔力を注ぎ火の付与を倍加させ、メルルは自身を高速回転させながら殺到する小鬼の集団を細切れに迎え撃った。

 

「小鬼如きが私に触れようなんて図が高いのよッ!」

 

 一方ミミも得意の槍裁きで、多数の小鬼を刺し貫き切り裂いてゆく。

回復し切った彼女の動きも機敏に長け、曲芸染みた身体能力で終始小鬼を圧倒。

普通の村娘なら成す術も無く餌食なっていたであろう小鬼集団を、いとも容易く屠り去っていた。

 

――こんな環境下だっていうのに…。

 

また彼女は、覚えのある感覚に見舞われていた。

それは、アーランドで活動していた時の何時もの感覚。時には独りで、時には気心の知れた仲間たちと共に――。

彼女とて長年の冒険者生活で、命の危機に陥った状況など幾らでも体験している。

だが絶望を感じた事など一度たりとも無かったのだ。

今の感覚は、過去のアーランド時代に良く似ている。

 

頭上には、赤黒い空に赤爛れた陽光――。まるで、この世の終わりとも言える光景。

そして王都襲撃に始まり、ロスリック深みの聖堂での逃亡劇。今度も切り抜けられる、そう信じ足掻いた傍から間断なく襲い来る絶望的状況。

親しい仲間達とは離れ離れになり安否も知れない現状に、彼女の精神は摩耗の極みを強いられた。

 

だが今はどうだろう?

 

大した交流もない剣士と行動を共にしているというのに、何故か全てが上手く行くという心象を抱いてしまうのだ。

何百という小鬼に殺到されていた悪条件も、気が付けば一方的な蹂躙で場が治まろうとしている。

 

これなら若しかすると――。

 

「認めてあげるわよ、取り敢えず今だけはね」

 

 やや遠間で戦う灰の剣士を一瞥し、ミミは小声で彼を認めていた。

 

灰の剣士たちの奮戦もあり、並み居る小鬼集団の殆どを殲滅。生き残った小鬼達は、散り散りになりながら巣と思わしき方角へと逃走した。

 

「よし、第一陣は凌げたな」

 

 逃げ去る小鬼の背を目で追いながら、彼は武器を納め戦闘体制を解く。

 

「追わなくていいの?この調子だと仲間引き連れてまた来るよ、きっと」

 

 まだ小鬼の全てを殲滅した訳ではない。何百という小鬼を屠ったが、まだ半数も仕留めたかは怪しい限りだ。

直ぐに第二派が来るのではないかと、メルルは懸念を示す。このまま小鬼の後を追い住処を特定し、その場で完全に全滅させる。

それがルルアの考えだ。

 

「その前に――」

 

 彼女の意見は尤もだ。恐らく例の彼(ゴブリンスレイヤー)も同じ考えに至っていただろう。

だが灰の剣士は既に別方角から新たなソウルを感知し、何の変哲もない荒れた壁面へと視線を傾けていた。

 

「小鬼は粗方排除しました、もう出てきて大丈夫ですよ!」

 

 そして彼は壁面へと声を投げ掛ける。

 

『『『………』』』

 

 すると彼の声に呼応するように、壁面の向こう側から数人の男女が姿を現した。

出で立ちからして冒険者である事を察し、此処で立ち往生していた者達だと判断出来た。

 

「…アンタら、冒険者…だよな?」

 

「そうだ、我々は――」

 

 声に応じ姿は見せたものの、彼等は武器を構えたまま警戒は解いていなかった。

向こうにとっては、灰の剣士たちも混沌勢側だと疑いの目を向けているのだろう。

魔神軍側とて人族は数多く属しており、なにも敵は魔物の類だけではないのだ。人族だと油断を誘う輩とて多く存在する。

 

先ずは同じ陣営だと認識させる必要があり、灰の剣士は自らの認識票を見せた。これで疑いが晴れるとは到底思えないが、とにかく敵意が無い事を伝えねばならない。

 

「白磁等級の駆け出しがこんな所に?」

「等級なんざどうだっていいぜ、本当に味方なんだろうな?」

「混沌勢に寝返った冒険者だって居たわ、その認識票だって偽物の可能性さえ――」

 

「分かった、現状をお話しよう」

 

 かなり警戒している様で、灰の剣士たちに疑いの目を解く事はなかった。

身に纏う装備品も損傷が目立ち、彼等からも幾分の異臭が漂ってくる。相当過酷な体験に晒されてきたのだろう。

認識票の提示だけでは不足と判断した灰の剣士は、王妹を始めとした王統府要人の救出の成果を明かした。

 

「――何だって!?姫様たちの救出に成功したのかッ!?」

 

「左様。王妹殿下は既に『水の都』へと身柄を移された。ロスリック拠点街よりは安全も確保されよう」

「本当よ。私は姫様たちと共に人質にされていたけど、この人のお陰で助けられたの」

「私もロスリックから脱出した身で、宰相閣下と共に救出されたわ。この剣士にね」

 

 冒険者たちは驚愕の表情を浮かべ、一瞬だが構えを解いてしまう。

やはり彼等も王統府救出作戦の参加者で、敗走も同然にロスリックからの脱出を試みていた。

灰の剣士に加え、メルルとミミも言葉を添付し彼の成果を説く。

特に王妹と共に居たメルルは、当時の状況を大まかにだが説明した。

 

「「「……」」」

 

 自分達が必死に脱出を試みていた間、何時の間にか目的が達成された事知った彼等は、半ば呆けながら警戒を完全に解いてしまった。

ある意味で拍子抜けしたのかもしれない。生きるか死ぬかの瀬戸際の中、肩透かしも同然に目的が達成されてしまったのだから。

 

「私は『灰の剣士』というものです。貴方たちの救出も兼ね、こうして事を起こしました。貴方たちの状況をお話しください、可能ならば直ぐにでも拠点街へと向かいましょう」

 

「そうだったのか…。お前さんが、あの灰の剣士だったんだな。例のロスリック生き残り組の筆頭」

 

 此処へ来た目的を語る灰の剣士に、冒険者たちは漸く留飲を下げたようだ。

傍目でも分かる程に脱力し、赤い空のもと澱んだ空気を大きく吸い込み若干咳き込んだ。

灰の剣士の名を聞いた彼等は敵意を完全に解き、自分達の潜伏場所へと案内する。

 

……

 

「この街は北方の辺境に存在していた田舎町でな。残念だが見ての通り、魔神軍の襲撃で壊滅しちまった…」

 

 損傷の目立つ金属鎧の戦士風の男が先導しつつ、この廃墟の過去を語ってくれた。

北方方面は現在でも魔神軍との交戦領域で、この街は運悪く攻撃対象となり壊滅したのと事だ。

 

「場所によっては損傷も軽いわね、まだ住めそうな建物もあるわ」

 

 冒険者たちの後に続くミミは、視線を方々に傾け廃墟の荒れ具合に言及する。

 

「小さな田舎町でしたが必死に抵抗したと聞いているわ。その尽力もあり大半の住民は避難に成功したとも」

「屈強な冒険者や兵士が集っていたのでね、連中の働きには感謝しかない」

 

 ミミに言葉を返す、斥候風の女と弓使い風の男。

小規模の街ながら手練れの兵士や冒険者が数多く留まり、魔物へと必死に抵抗し奮戦を繰り広げていた。

街自体は壊滅したが彼等の予想以上の粘りもあり、住民の避難時間の確保にも繋がった。

しかし冒険者や兵士の犠牲が、死という負の呪力を呼び寄せたのだろうか?

結果的にロスリックへと流れ着くという事象に繋がった。

 

「貴方たちの他に何人居るの?」

「我々を除き、あと10人ほどだ」

 

「けど良かったわ、小鬼に囚われてなくて」

「いくら消耗していても簡単にやられたりはしないって、まぁ場所が良かったのと…()()()のお陰なんだけどな」

 

 潜伏しているしているのは、当然彼ら3人だけではない。他に10人ほどだが身を潜めている事を告げた戦士風の男。

万が一小鬼の虜囚と化していた事を懸念したミミに、弓使い風の男は『一人の人物』について仄めかす。

だがどことなく言い淀む口調に、灰の剣士たちは疑念を浮かべた。

 

「とにかく来てくれ、其処で詳細を明かす」

 

 嘗ては街の大通り(メインストリート)だったのだろうか。

街道の石畳は凹凸の損傷が激しく、不用意に走れば躓きかねない。

荒廃の極みにあるようだが、幾つかの建物は原形を留めており身を隠すのには使えそうだ。

彼等の後に続く灰の剣士たちに、一つの建物が目に映った。

 

「あ…、冒険者ギルドって書いてある」

 

 煤に塗れ読みづらいが建物の看板には『冒険者ギルド』と記されていた事をメルルは気付く。

 

「そうさ、俺達は此処を潜伏場所として使わせて貰っている。外面はこんなだが、意外と中は無事でな。ま、入ってくれ」

 

 窓ガラスは無残に割れ、壁面も扉も半壊し中の様子が幾分か窺えた、嘗ての冒険者ギルド。

戦士風の男が言う通り、かなりの損壊度合いだが外からでも分かる様に、中は意外にも無事なようだ。

彼等に従い建物へと足を踏み入れる灰の剣士たち。

 

「成程、地下倉庫か」

「その通り。物資も少し残っててな、それで何とか耐え忍んでたのさ」

 

 ギルドカウンターの奥に地下階段が設けられており、其処から地下倉庫へと続いていた。

幸いにも、生活に必要な物資が必要最小限には残っていたのか、彼等はそれで何とか凌ぐ事ができていた。

彼等の言う通り地下倉庫には、10人ほどの男女が身を寄せ合い力無く項垂れている。その様子から、かなりの焦燥具合が見て取れた。

 

「……見たところ、脱出準備が整っているようにも思えるのだが?」

 

 注意深く観察した灰の剣士。意外にも荷造りは完了しており、何時でも動けるよう準備が整えられている様にも思えた。

 

「ああ、それなんだがな。ちょっと聞いてくれるか」

 

 少し気まずそうに相槌を打ったのは、弓使い風の男だ。

先程道中で仄めかしていた『とある男』の事に関係しているとの事。

 

正直に言えば彼等は自力でも廃墟から脱出可能だった。だがこうして足止めを食らい立ち往生しているには幾つ原因が存在し、その一つに『とある男』が重なっているというのだ。

 

「まぁ待てよ、直接見て貰った方が早い。アンタ等なら何とかしてくれるかも知れない、こっちに続いてくれるか?」

 

「…分かった」

「当分は小鬼の再襲撃もなさそうだし、目を離しても大丈夫そうね」

 

 詳細を説明しようとする弓使い風の男を遮った戦士風の男。彼が言うには、見た方が早いとの事だ。

消耗の激しい冒険者たちだが、今は目を離しても問題ないだろう。そう判断したミミたちも、灰の剣士と共に同行する。

 

再び地下倉庫を出た彼等は、戦士風の男に案内され別の廊下を抜けた。

その廊下を抜け裏口へと出た彼等。そこから大して離れてもいない裏庭に、件の『とある男』が視界に映る。

 

「……嘘…!?()()()…さん…?」

「…何やってんのよアイツ…!人に散々心配かけさせてっ…!」

「何か様子が変だ、正気を失っている様にも見える」

 

「アンタら、あの人と顔見知りかっ?」

「やっぱ説明した方がいいって、不用意に近付くなよ!?今のアイツ、血に()()()やがるからよ…!」

 

 瓦礫だらけの裏庭に力無く徘徊していた一人の男に、メルルとミミは驚きの表情と声を漏らす。

また灰の剣士は、その男が正常ではない事を見抜いた。

 

その男は二人にとっても近しい間柄で、嘗ての仲間『ジーノ=クナープ』という名の剣士だった。

 

驚きを隠せないメルルに反し、ミミはというと怒りの形相を浮かべつつ目尻には小粒の涙滴を滲ませている。今にも食って掛からん勢いだが、何処か様子のおかしい彼には気付いている様でギリギリ踏み止まっていた。

また灰の剣士の見解通り、ジーノは正気を失っている様で正常には見えない。そこで後から追い付いた斥候風の男が、ジーノが精神異常に見舞われている事を明かす。

何故ジーノが、()()なったのか?此処までに至るまでの経緯――。

弓使い風の男が今までの道中を説明した。

 

序盤では事を上手く運んでいた王統府救出作戦。

しかし、女魔神である『深き夢』が女系の魔神軍の一部を召喚し、作戦は失敗に終わる。

冒険者残党は敗走を重ね大半が虜囚の身と化した。

だが一部は抵抗の傍ら撤退を継続し、ジーノを含めた彼等も何とかロスリック脱出を試みた。

彼等は実力者揃いだったが、相手は強大な力を有す魔神の眷属に加えロスリック先住の亡者の大群。

退けども退けども敵の脅威が去る事はなかった。

度重なる連戦に次ぐ連戦で、一人また一人と犠牲者が続出。

その度に希望的観測が打ち砕かれ、全滅の行く末が彼等の脳裏を過った。

次第に士気を低下させてゆく彼等の中にありながら、ジーノだけは叱咤激励で皆を鼓舞し孤軍奮闘する。

また彼の実力は周囲を圧倒し、銀や金等級にも比肩し得るほどだった。

小型の魔物など歯牙にもかけず、時には中級魔神や上級魔神にも善戦してみせ幾度も撃退を繰り返していた。

そんな彼の尽力もあり、彼等は犠牲者を出しながらも此処まで何とか辿り着けたのだった。

生き残ったのは10数名ほどだが、損傷の少ないギルド跡を利用し、彼等は漸く一時の休息を得る。

幸いにもギルド地下倉庫には、少量だが食料なども保管されており身を隠すのに都合が良かった。

だが上層とはいえロスリック内には違いなく、何時の間にか小鬼の大群がこの廃墟を占拠していたのである。

そこでジーノは小鬼の侵入ルートを割り出し、たった一人で並み居る小鬼の大群を押し留めていた。

しかし長きに渡る連戦で、彼は身体よりも寧ろ精神に異常をきたしてしまう。

徐々に彼の様子にも変化が現れ、小鬼と見るや即座に襲い掛かり、酷い場合には様子を見に来た味方にさえ刃を向ける始末。

 

「あの人を放っておけば、俺達だけでも此処を脱出できたんだ。…けどよ…」

 

 一頻り説明を終えた弓使い風の男は静かに嘆息し、また本心を吐露する。

度重なる戦闘で精神をすり減らし、血に酔った挙句狂気に支配された剣士ジーノ=クナープ。

もう敵と味方の区別さえつかず唯々剣を振るう事に支配され、今もこうして獲物を求め死臭渦巻く廃墟を徘徊するだけの狂戦士と成り果ててしまった。

だがそれも、彼が孤軍奮闘を果たし見ず知らずの冒険者たちを守り通してきた事が主な要因だ。

 

狂ったジーノを見捨て脱出していいものだろうか?

自分達を守り抜く為に心身ともに摩耗させた彼を差し置き、自分達だけのうのうと生き延びる。

死んで何になる?今は生き抜き再起を図る事が肝要ではないか?彼を犠牲にしてでも生き延び、次に生かすべきだ。

そう理屈を述べ否定する事は容易い。

しかし彼等にも人の心があり、損得や実益だけで行動できるほど冷徹な判断は下せなかった。

 

「何度か取り押さえようとはしたんだが、あの人メチャクチャ強いんだよ…!」

 

 顔を顰め申し訳なさ気に告げる戦士風の男。

一応彼等も黙って放置していた訳ではなく、幾度か大人しくさせるべくジーノを無力化させようと努力した。

しかし彼の戦闘力に前に却って負傷を積み重ね、終いには放置せざるを得なかったのである。

 

「ねぇ、若しかして貴方たちの怪我って――」

「駄目だよミミさん、それ以上言っちゃ――」

「「……」」

 

 負傷や消耗の目立つ彼等の様相に何かを察したミミだが、メルルが慌てて言葉を遮った。

実は地下倉庫の物資を使う事で、かなりの回復を果たしていた冒険者たち。

しかし精神破綻を引き起こしたジーノを取り押さえようとしたはいいが、結局は返り討ちに遭い余計な重傷を負う羽目になった。

 

「彼を元に戻さねば。だが私の術が有効に効くか分からぬ」

「こんな事態想定してなかったし『眠り煙玉』一個しか手元にないよ」

 

「私一人でヤるわ。こういう事、何度か経験してるからね」

 

 ジーノが精神を破綻させた主な原因。

恐らくは度重なる戦闘に加え、ロスリックという悍ましい環境と赤黒い空と陽光の相乗効果だと考えられる。

この様な環境下では確かに荒れた心象を癒す事など無理に等しく、知らず知らずの内に負の感情を堆積させた線が濃厚だ。

どれ程の戦闘を繰り返したのか定かではないが、相当数の戦いを一人で背負っていたのだろう。

今も彼は、宛ら亡者の様に徘徊しながら小鬼の遺体に刃を振り下ろし、腐肉を飛散させていた。

散乱した幾多もの小鬼の体は一つとして原形を保っておらず、亡者化した小鬼でさえ破壊し尽くした事を物語っている。

 

回復手段に長けていた灰の剣士だが、ジーノの精神を元に戻すのは少々不安が残る。毒や出血に有効な奇跡は習得していたが、精神異常となれば少々疑問符が過るのであった。

またメルルも時間と素材が限られていた事もあり、睡眠用の煙玉を一つ持ち込む事が精一杯であった。

どういう形であれ生存が確認されたジーノを元に戻し、拠点街に連れ帰る必要に迫られた。

有効策を思い悩む灰の剣士とメルルに対し、ミミが無力化に名乗りを上げる。

魔法や錬金術の類に長けていない彼女だが、どうやら過去にも前例があると語った。

 

「何か打開策が?」

「アイツとは不本意だけど、何年も一緒に組んでいた時期があったのよ。こういう時は決まって『ショック療法』…!力尽くでシバキ倒して強引に連れて帰るわ!」

 

 過去に何年もジーノと組み冒険者活動を繰り返していたミミは、彼に強い衝撃を与えるという何とも強引な作戦を提示した。

 

「…ふむ(狂い火や獣化などの波形は感じぬ、単純に血に酔っているだけなのか)」

「まぁでも…、アイツ無駄に強いから後方支援お願いできるかしら?特にメルルは、その煙玉とやらで頃合い見計らってジーノの馬鹿を眠らせて」

 

「承知した」

「任せてミミさん!」

 

 力尽くでジーノを打ち負かす作戦だったが、暴走した彼に殺される危険性も高い。

激情の一面を秘めた彼女だが念を押し、灰の剣士とメルルに助成を打診した。

灰の剣士には回復を始めとした術や奇跡の支援を、メルルには先程言及していた例の『眠り煙玉』の投擲を。

恐らくメルルの加勢が決定打となるだろう。

お調子者で短慮な印象を与えるジーノだが、ああ見えても手練れで一流の実力を兼ね備えた冒険者には相違ない。

出来るだけ作戦成功に確実性を高めておきたかったミミ。自信ありげな彼女だったが、ジーノの実力をイヤというほど知っており内心では戦慄を覚えていたのである。

 

「さて、あの馬鹿と一戦交えましょうか?スゥ~ハァ~…」

 

 深呼吸を繰り返し意を決したミミは槍を構え、血に酔ったジーノへと距離を詰め歩み寄った。

 

「……」

 

 ミミの気配に気が付いたのか、ジーノも無言で彼女を睨み付けフラフラと歩を進める。

 

「うわぁ…、ジーノさんの目…もう普通じゃないよ…!」

「前より酷くなってらぁ…」

「あの槍の女…大丈夫なんだろうな…?」

 

 力無く長剣を引き摺るジーノだが、凄まじい程の狂気に覆われ血走った相貌をミミへと向けた。

遠間から見ていたメルルや戦士風の男たちは、不安感を禁じ得ないでいる。

 

「…どこもかしこも、魔物ばかりだ…。…貴様も、どうせそうなるのだろう?」

「ハァ~…。アンタねぇ、私と小鬼の区別も付かないの?」

 

「俺を前に人の振りかよォ…?生意気に、上等な槍まで拵えやがってェ…!」

「しょうがないわね、もっかい分からせてやるわよ…!(今までで一番ヤバいわね、味方の誰か殺しちゃいないでしょうね?)」

 

 ズリズリ…と長剣を引き摺り脱力しつつミミへと近付くジーノ。彼の長剣は血脂に汚れに汚れ素人目に見ても酷い有様だが、意外にも刃毀れや損耗は見受けられない。

とはいえ普段の手入れさえ行き届かない程に、彼の精神は異常をきたし完全に血に酔っていた。

加えて、嘗ての相棒でもあったミミと異形の判別すらもできず、完全に敵意と殺意を剥き出しに尚もゆっくりと近付いている。

威勢よく返すミミだったが、彼の類を見ない程の異常ぶりに危機感を募らせ慎重に槍を構え直す。

 

「…匂い立つなあ…。けどよぉ…モンスターは、ぶっ殺さねぇとなァ…!仲間の為にもよォッ…!!」

 

 力無くダラリと下げていた腕に急激な力が込もり、血汚れた長剣が一気に持ち上がった。

血走った眼を爛々と輝かせ雄叫びを上げるジーノは、躊躇いなくミミへと襲い掛かる。

 

「――さぁ来なさいッ!私が助けてやるわッ…!!」

 

 一方ミミも真剣な表情で、完全に笑みと余裕が消えていた。

しかし恐れはなく自然な動作で、襲い来る血に酔ったジーノを迎え撃つ。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

眠り煙玉

 

メルルが錬金術で錬成した消耗品。

地面に投げ付け衝撃で爆発。

睡眠効果のある煙幕や香料を飛散させる。

 

時間と素材が限られた環境下では、限定的な粗悪品しか錬成できなかった。

しかし運用次第では、大きな効果を発揮できるだろう。

 

 

 

 

 

 

 




ジーノと再会いたしました。最初見た時は、大剣使いだと思っていたのですが、どうやら長剣使いのようですね。作中でも筋力よりも敏捷性に優れた剣技を持ち主のようですし。
例の神父さんの如きセリフを吐いていますが、獣化はしていません。血に酔っているだけです。それでも十分危険な状態ですが(汗)。

如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。  
デハマタ。( ゚∀゚)/
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