お久しぶりです。
いろいろ思うところがありまして、更新が滞っていました。
もし楽しみにしていた方は、申し訳ありませんでした。
2話続けて投稿いたします。
前回、灰の剣士とメルルが急接近してしまいましたが、R18ではなく此方に投稿します。
この時点で展開も、お察しして頂けるかと思います。
ほんのオマケ程度ですので、少し短いですが投稿致しますドゾ。( ゚ ω ゚ )
甘美な事この上ない、彼女の温もりは。
そっと抱き寄せたメルルの口から漏れ出る、女の艶声。
なんとも甘い熱で彩られ、鼓膜に届いた途端、意識が明滅しそうになる。
「ぁぁあぁ…、剣士さぁん…もっと…もっとぉ…❤」
「……」
もう男女の交わりと言っても差し支えない程の、深き抱擁を交わす灰の剣士とメルル。
メルルの方は、すっかり陶酔しきっているのか呼吸が乱れている。
その上で全身が震えているのは、これから訪れる初体験の期待感、もしくは後悔の念の故か?
「ぁぁ…ハァ、ハァ、ハァ…ぁぁぅ…」
彼女の震えは非常に微小で気付き難いもので、こうして深く抱き合っていないと気付かない程に微細なものだった。
それでいて彼の背に手を回し、尚も程よく成熟した躰を押し付け擦り付ける。
彼女の様は一見情熱的にも思えるが、同時に衝動的と言えなくないだろうか。
まるで何かを忘れようと躍起になっているかの様だ。
彼女の心情を察しつつも、今の濃密な抱擁は理性が崩壊しそうになる。
それ程にまで抗い難い魅力を備えていると言えよう、このメルルという女性は。
「……」
対する灰の剣士。
昂りつつある彼女を無言で抱きしめながらも、そこから次の一手には踏み込んではいない。
それどころか彼女の背に回した手を項へと定め、鋭い手刀を叩き込む。
「――うっ…、ぁッ…?」
叩き込んだ瞬間、彼女は呻きに似た声を漏らし眠るように意識を失った。
「…ふぅ…」
気絶したメルルは彼にしな垂れかかる様に倒れこむも、呼吸自体は安定していた。
彼は、眠るように気を失ったメルルを引き離し傍らに寝かせる。
生憎なにか敷く物が無く、彼女には我慢してもらうしかない。
「……」
そこからは彼女に対し特に何かをするでもなく、唯々ジッと篝火を見つめ続けるだけだった。
……
あれからどのくらい時間が経過したのだろうか。
数分にも数時間にも思えたが、どうにも数えるのさえ億劫になる。
今もメルルは寝息を立てるだけで、目を覚ますには今暫しの時間を要すだろう。
「……」
何か行動を起こしたいのだが、どうにも脳内が不自然に搔き乱され手に付かないのだ。
このままでは駄目だ。どうにか心を落ち着け、次なる出撃に備えねば――。
不完全とはいえ篝火の効果は未だ健在。
乱れた精神を平静に戻す効力を発揮している筈なのだが、少し時が経てば直ぐに心が乱れてしまう。
――これで良かったと信じたい。
今も隣で寝息を立てているメルルに視線を落とす灰の剣士。
過不足なく実った彼女の身体が視界に映るだけで、劣情が込み上げてしまう。これ程の魅力ある女性が今、自分の真隣で無防備に気を失っているのだ。
呼吸のたびに上下する胸の膨らみを視界に入れただけでも、触りたい衝動に駆られてしまうのだ。
このまま事に及ぶなど造作もないのだが、彼は敢えて
「アンタ…手を出さないんだね」
「シュバルツラング卿…」
尚もメルルに視線を落としている灰の剣士。
そんな彼に、ふと声をかけたのはミミという女性。
「長剣士、ジーノ=クナープは?」
「ちょっとだけ寝かせてあるわよ。あとで叩き起こすけどね」
どうやら彼は再び就寝中のようだ。正確には仮眠に近いといったところだろうか。
ミミがこうして現れたという事は、
「隣、座るわよ」
そのまま何食わぬ顔で彼の隣に腰を下ろし、彼女もジッと篝火を見つめる。
「もし手を出していれば、貴女は斬りかかっていたか?」
「……さぁ、どうかしらね?」
「「……」」
別にミミを恐れての事ではない。
だが、聞かずにはいられねなかったのだ。
意外と言えばいいのか。特に激昂するでもなく軽く受け流してしまうミミ。
「今の私に、アンタを責める資格なんてないわよ。まぁ
自分たちが男女の秘め事に及びながら、灰の剣士やメルルを責めるのは御門違いというものだろう。
確かにジーノから求めてきたのは間違いない。しかし元はと言えば、彼の湯浴みを手助けする為に風呂場へと乱入した彼女本人にも原因はある。
その時の服装がいけなかった。
濡れないための措置として下着で乱入したのだが、それが却ってジーノの劣情に火を点けてしまったのだろう。
最初は僅かばかりの抵抗を見せたミミだったが、結局は彼の求めに応じ秘め事に発展。外の様子などお構いなしに没頭してしまった。
自分たちでは分からなかったが、かなり激しく求め合っていたという事を後で知る事になる。
本当は拒むべきなのは、彼女とて分かっていた。だが彼女も何処かで精神を破綻させていたのだろう。
何せ王都襲撃からロスリック『深みの聖堂』へ連行、そして数多くの犠牲者を目の当たりにしながらの脱出劇。
今までとは異質の過酷な体験を強いられ、彼女も
結果的に灰の剣士とメルルを焚き付けてしまったのは、自分たちなのだ。二人が触発され行為に及んだとしても、責める事などどうして出来ようか。
そう言っているのだ、ミミは。
気の所為ではないだろう。
何気なくミミの横顔に視線を傾ける灰の剣士。
篝火を見つめる彼女は、些か弱々しく消沈した様子が見受けられた。
「アンタこそ、よく思い止まれたわね。相手はメルルよ?」
「……」
先ほどの質問を再び繰り返すミミ。
あそこまで気分を昂らせながら、なぜ途中で止める事が出来たのか。
少し不思議でならなかった。
メルルリンス=レーデ=アールズ。
元王族で、今は錬金術師と冒険者の二足草鞋で活動を続けている。
また彼女個人、女として魅力も十二分に備えており冒険者という立場上、方々から声をかけられる事も珍しくなかった。
それでいて彼女は社交的な振る舞いながら、決して自分から異性に迫る事はなかったのである。
そんな魅力溢れる彼女が異性に迫ったのだ。しかも性的な関係を望むという形で。
並の男なら一も二もなく飛び付き、
「確かにな…」
答える義理は…まぁ有るだろう。
ミミとメルルは昔馴染みの仲間で、灰の剣士よりも深い繋がりを持つ関係だ。
ミミにとって灰の剣士など、どこの馬の骨とも知れぬ怪しい男そのもの。心の底から信用しろという方が無理な話だ。
彼は静かに心の内を語る。
メルルと深く抱き合った瞬間、彼女の身体は小刻みに震えていた。
それは直接肌に触れねば分からないほど微細なものだった。
最初、初体験からくる緊張と恐れによる影響かと思われた。
だが理由は、それだけではなかった。
ライアス=フォールケン。嘗ての門衛でもあり幼馴染の青年でもある若き戦士。
「人の心など読めぬが、ソウルの波形で漠然と察することができた」
灰の剣士は、メルルの幼馴染について言及する。
確かにメルルは感情を昂らせ、灰の剣士との性的な関係に及ぼうとはしていた。
しかしそれは、彼女自身が真に望む形と言えたのだろうか。
抱き合った瞬間の震えの真なる理由。
それは幼馴染の青年に対する、罪悪感や負い目が働いたが故の事ではないのか。
灰の剣士に対する感情など実は一時的なもので、彼女の本心は…彼女の真なる望みは――。
「そう察した時、私は…」
「……」
気が付けばメルルの項に手刀を叩きこみ、無理やり行為を中断させていた。
実際メルル本人に聞いてみなければ断定できないが、自分と交わる事を心底望んでいるとは到底思えなかった。
そもそも彼女とは友人関係に発展したかどうかも疑わしい程、曖昧な間柄でしかないのだから。
「なんだ…見透かされてたんだね…」
「メルル」
「アールズ卿」
何処から聞いていたのだろうか。
そっと身を起こしたメルルは、ヨロヨロと姿勢を整え篝火に視線を傾ける。
「…今はどうか?」
「え…?」
「私と関係を結びたいと本心から思えるか?」
「……。…ごめんなさい…私やっぱり…――」
「メルル…」
少し野暮なのを承知した上で、メルルの本心について尋ねた灰の剣士。
少々の沈黙の後、彼女は謝りつつ本心を吐露した。
皆まで言わずとも分かる。
やはり灰の剣士に対する感情は、一時的かつ衝動的な高まりでしかなかった。
彼に対する好感情は間違いないのだが、メルルの心の奥底には件の青年の姿が深く刻み込まれていたのである。
「本当に御免なさい、私どうかしてた…」
「謝らなくていい。応じようとしていた私にも問題はある」
もう一度謝罪するメルル。
ジーノとミミの行為に触発され、一時的に衝動的に灰の剣士を求めてしまった。
やはり安否不明となったライアスの件が関係しているのは間違いない。
表層的には平静を保っていた積りでいたが、実際は激しい動揺に見舞われていたのである。
今は平静を取り戻しているメルル。
隣の灰の剣士を異性として視る事も出来るが、寝台を共にする程ではなかった。
その事に幾許かの罪悪感を抱いていた彼女だが、対する灰の剣士も謝罪の言葉を口にする。
彼も半ば衝動的にメルルの求めに応じようとしていた。
思えば幾人との女性と肌を重ね、今なら暴走していたのではないかとさえ思えてしまうのだ。
確かに合意の上で肌を重ねた事は間違いない。それは真実だが、果たして今の彼女たちは後悔していないのだろうか?
例を挙げれば、ルルアたちとオーレルの関係だ。表向きはどうであれ彼は、灰の剣士とルルアたちの親し気な関係に反発していた。
更に言えばロロナとも関係に及んでいる、経緯はどうであれ。
もう過ぎてしまった事だが、彼女たちとも改めて本心を確かめてみる必要があるだろう。
いや彼女たちだけではない。自分を慕う異性は複数に上るが、果たして最後まで添い遂げる気持ちを抱いているのだろうか。
過去に肌を重ねはしたが、若しかしたらソレも一時的な感情が働いての事なのかも知れないのだ。
彼女たちにも本当に結ばれたい相手がいるのではないか?
もしくは近い将来、そいう異性と出会う可能性もあり得る。
そう意識した矢先、彼の胸中には得体の知れない罪悪感が込み上げていた。
――確かめねばならんな、今一度。
今まで肌を重ねてきた彼女たちとの関係を維持する選択肢もあるにはあったが、もう一度機会を設け深く話し合う事が肝要ではないのか?
彼自身、彼女たちの人生を背負う覚悟も気概もある。しかし彼女たちが、
本音で言えば今すぐにでも彼女たちと話し合い、改めて関係を見直したいという思いもある。
だが今やるべき事は、目の前の問題を全て清算した上でだ。
話し合った結果、全員から見限られ愛想を尽かされる事もあり得るだろう。それこそ下手をすれば命さえ狙われる可能性すらある。
もしそうなったとしても、これは全て彼自身が選択し種を蒔いたからに他ならない。
万が一そのような結果に行き着いたとしても、彼は受け入れる覚悟でいた。
――だが今は、この混乱期を収めてからだな。
彼女たちが話し合いに応じてくれるかどうか。それはその時の状況によるだろうが、少なくとも今はその時ではない。
それは自ら課せられた使命を清算するか、もしくは今よりも平穏な世界を取り戻してからだ。
もっともその間に、彼女たちが
「まだちょっと…気持ちがグチャグチャしてるかな…」
「机の上に飲み物置いてあるから持って来るといいわ」
「ありがとうミミさん、取ってくるね」
そう思案していた灰の剣士。
対するメルルだが、まだ完全に気持ちの整理がついていないようだ。
破綻してはいないようだが、まだ何処かにシコリが残留しているようにも思える。
篝火だけでは不足だっただろうか。
そんなメルルに対し『机の上に有る飲み物を持ってくればいい』との提案を受ける。
元々は風呂上がりの喉を潤すための物だったが、今のメルルを落ち着けるには都合が良いかも知れないとの事だ。
「あ、そうだ、剣士さんも要るよね?」
「そうだな…頼めるか?」
「私の分のカップもお願いね」
少しの間、灰の剣士とミミだけが残される事となる。
「アンタ辛くないの。そんな状態で」
「無用だ。溺れるほど落ちぶれてはいない積りだ」
紙一重で踏み止まった灰の剣士だが、確かにメルルは魅惑的な女性だ。
どの様な流れであれ彼女と関係を持てた状況を、ワザワザ彼は放棄したも同然。
自らお預けという状態に追い込み、実は今も、劣情収まらぬまま身体は燻ぶり続けている。
人によっては号泣し喚き散らしたくもなるだろう。
それだけならまだいいが、彼の隣にはミミも居るのだ。
彼女もメルルとは違う方向性で、溢れんばかりの魅力を備えている。
今も燻ぶり続ける彼の劣情が、いつミミに降りかかっても不思議ではない。
ある意味そのような危機的状況ながらも、彼は平静を口にし相変わらず篝火に視線を落としている。
「次からは、別の場所で頼む。一応私の拠点なのでな、此処は」
「――わ、わかってるわよっ!///」
なし崩し的に応じた自分にも非はあるが、矢張りアレはジーノに責任がある。
首長から提供されたとはいえ、この民家は灰の剣士専用の拠点だ。
『次からは宿なり人目の付かない場所で事に及んでくれ』と痛い所を突かれ、ミミは顔を真っ赤に染めながら返答した。
「ミミさん、これでいいんだよね?」
「あ、そうそうそれ。ジーノの馬鹿、まだ寝てる?」
「もう少しで目が覚めると思いますよ」
「ま、あと少し寝かせておきますか」
そうこうしている内に再びメルルが戻ってきた。手には飲み物入りの瓶と小さなカップが握られている。
未だジーノは目を覚まさないようで、自然に起きるまで待つことにした。
メルルからカップを受け取り、各々が中身を注いでゆく。どうやら酒ではなく果汁水の類の様だ。
ゆっくりと喉を潤す3人は、再び篝火の温もりに身を委ねた。
飲み物の効果も手伝ったのか、今度こそメルルは平静な心を取り戻す。
「彼が起きるまで、もう少し剣を手入れしておくか」
頃合いを見計らい、再びジーノの長剣を手にした灰の剣士。
このままでも手直しは十分行き渡っていたが、念には念を押しておきたかった。
それから直ぐの事だった、ジーノが目を覚ましたのは。
―― 本編前夜編 第163話終盤へと続く ――
以前にも活動報告で言及いたしましたが、各キャラクターの暴走(迷走)が過ぎた結果、あのような展開に至ってしまったようにも思えます。
私としては、真面目に物語りを展開していた積りでしたが、少々思い直すことにしました。
もしR18を期待していた方は誠に申し訳ないです。
(メルルとの関係は、IFルートにでも執筆することにします。思い付けばの話ですが…)
如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
デハマタ。( ゚∀゚)/