ゴブリンスレイヤー ―灰の剣士―   作:カズヨシ0509

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 投稿します。
挿絵も、時間と余裕の許す限り、追加していきたいものです。
(尚クオリティは、期待しないで下さい)

ジメジメとした、湿度の高い気候が続き、集中力が直ぐに途切れてしまいます。

う~ん、やだなぁ・・・、この湿気。( ̄ω ̄;)


第29話―対ボルド抵抗戦―

 

 

 

弩砲

 

 テコを用いて弦を引き絞り、石や金属の弾、極太の矢(あるいは矢羽のついた槍)

 複数の小型の矢、火炎瓶などを打ち出す大型の兵器。

 

 白兵戦の支援、攻城戦における攻城兵器

 それらの防衛にも使われ、軍船に搭載することもあった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「おいっ!撤退だ!今すぐ逃げろ!!」

 

 重戦士が武器を構えながら、後方の冒険者達に指示を飛ばす。

 

”アイツを知っているのか?”、”あれは一体何だ?”等の質問が飛んで来るが、全て一蹴し檄を飛ばす。

 

「急げぇ!本隊に伝令だ!殿は俺がやる……!!」

 

『重厚な貴石』と『楔石の欠片』で強化されたグレートソードを地面に突き立て、一歩前に踏み出した。

 

――くそっ……!正直おっかねぇ……!!

 

全身に冷や汗が噴出し、それとは相反するかのように、体温が上昇を始める。

 

「殿役……、俺にもやらせろ。アンタ一人じゃ、時間稼ぎにすらならねぇよ」

 

 槍使いも前に踏み出し参加する。

 

「頭数が居れば、それだけ生存率も増すだろ」

 

 傷を治療した同期戦士も剣を構える。

 

「私無しで、誰がお前のフォローをするんだ?」

 

 女騎士も金属製の中盾と剣を前面に押し出し、後に続いた。

 

更に魔女、少女野伏も武器を構え援護の姿勢に入る。

 

「……どうかしてやがるぜ、お前等……」

 

 重戦士は半ば呆れながらも、内心悪い気はしていなかった。

 

彼は半森人の軽戦士に、”チビ達を頼む”と言い残し、幼い少年斥侯達を撤退させる。

 

既に他の冒険者達は、坑道から退避していた。

 

残されたのは、嘗てロスリックにてボルド相手に戦ったメンバー達だけだった。

 

「お前等、腹ぁ括ったな!」

 

 重戦士の言葉で皆に緊張が走る。

 

「いくぞぉっ!!」

 

 掛け声と共に、全員が突撃を決意したその時――!!

 

 

 

――ナニカが、ボルドに覆い被さった――。

 

 

 

「――ぐぉっ!な、何だ?今のはっ?!」

 

 最も先頭に居た重戦士が、思わず脚を止め様子を覗う。

 

ボルドの頭上から、黒い粘着状の塊が降り注いで来たのである。

 

それも、ボルドの全身を覆い隠すほどの量で――。

 

「ブ…、ブロブ……か?!」

 

 同期戦士が目を見開き、盛り上がった黒い丘を見る。

 

天井から大量のブロブが、ボルド目掛けて一斉に落下して来たのだ。

 

それも洪水レベルで……。

 

ボルドを極上の獲物と見なしたのだろう。

 

坑道内全てのブロブが集結し、ボルドを狙ったのだ。

 

盛り上がったブロブの隙間から、煙とも水蒸気とも判別が付かない気体が立ち昇る。

 

恐らくボルドの甲冑を融解しているのだろう。

 

辺りに鼻を突く異臭が、立ち込める。

 

そう遠く無い時間で、ボルドの本体も溶かし尽くされ、後には何も残らないだろう。

 

「……は、はは、な…んだよ……、すっかり失念していたぜ、ブロブなんざ……」

 

 顔を引き攣らせながら槍使いが、息を吐き出した。

 

ロックイーターやボルドの迫力に気を取られ、ブロブの事など完全に忘れ去っていた。

 

「ロックイーターはボルドが倒し、ボルドはブロブに喰われたか。……何だか肩透かしを食らった気分だな……」

 

 額から垂れて来た汗をミトン型の手甲で拭いながら、女騎士が安堵する。

 

「ブロブの、後始末、ちょっと、大変、そうね?」

 

 魔女が皮肉交じりに、戦闘態勢を解く。

 

ロックイーターを一撃で叩き潰したボルドと言えど、全身を覆う量のブロブを頭から被ったのだ。

 

先ず、助かりはしないだろう。

 

後は肥大化したブロブの処理に、労力を割かねばならないが……。

 

「ふぅ~~。お陰でこっちは助かったがな。……流石に生きた心地がしねぇよ……」

 

 重戦士も大きく息を吐き出し、緊張を解く。

 

彼に釣られ全員が”やれやれ”と警戒を解いた。

 

 

 

――その時。

 

 

 

ピシっ、ピシっと、ナニカがひび割れる音が皆の耳を打った。

 

「……何だ?この割れる様な音?」

 

「お、おい!あれを見ろ!……ブロブが――!!」

 

 同期戦士が不振な音に耳を立てる中、槍使いが前方のブロブを指差す。

 

全員が息を呑み、ブロブを注視した。

 

盛り上がったブロブの黒い色が、白みがかった灰色に染まりつつある。

 

それと同時に脈打ってた液状の体が、徐々に固まりながら至る所に亀裂を形成し始めていた。

 

「――!……これ……。ブロブが凍り始めているんだよ、きっと!」

 

 少女野伏が、ブロブに起きている現象を説明する。

 

「そう言えばボルドの野郎、冷気を纏ってやがった……!」

 

 槍使いが舌打ちした。

 

「これだけのブロブを浴びても、生きてやがるとはな!」

 

「寧ろブロブが、凍り付き崩壊しつつあるのか……!」

 

 冷気の影響で、ブロブの固体化を見守る事しか出来ない、重戦士と女騎士。

 

刻々と目まぐるしく変化する状況の変化に、対応が追い付かないのだ。

 

こうして手をこまねいている間にも、ブロブは固体化が進行し崩壊しようとしている。

 

この様子ではボルドは生きているだろう。

 

「今しかない。……撤退し、本隊と合流しよう」

 

 重戦士の肩に手が置かれ、同期戦士の重く低い声が響く。

 

敵の動きが停滞している今を置いて、撤退し生き残る最大の好機は他に無い。

 

この瞬間を逃せば、間違い無くボルドに蹂躙されるだろう。

 

「……そう、だな。……よしっ!今の内に撤退するぞっ!!」

 

 重戦士は重く頷き、撤退を開始した。

 

次々と鉱道内からメンバー全員を逃がし、最後に彼も坑道を後にする。

 

 

 

道中ブロブが粉々に砕け散る音と、ボルドの雄叫びを同時に聞きながら……。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

「……ふむ。その『ボルド』とやらに、ロックイーターは倒されたと言うのだな?」

 

 地上で本隊の指揮を執っていた銅等級の冒険者は、重戦士等から報告を受けていた。

 

「ああ。信じられねぇかも知れねぇが、俺達全員が目撃している」

 

 『冷たい谷のボルド』やロスリックを見た事も無い者に、信じて貰えるとは到底思っていない。

 

荒唐無稽な話だとは自分でも承知している。

 

だが、信じてもらう他ない。

 

ボルドの恐ろしさは、身を持って知っているのだから。

 

しかし重戦士等の予測は、良い意味で裏切られ、あっさりと受け入れられた。

 

「普通なら”ありえない”の一言で一蹴する所だがな。『ロスリック』についての情報は此方でも掴んでいるし、『ボルド』の情報も大まかにだが把握しているつもりだ」

 

 銅等級の冒険者によれば、活動拠点としている都にも『ロスリック』の情報は、最優先で伝達される。

 

そして彼等重戦士等一党も、白磁の新人でありながらロスリックから生還して来た数少ない生き残りである事も、承知していたのだ。

 

その情報は、王都から派遣された調査部隊の隊長、『正規騎士』よりもたらされていた。

 

そう、銅等級冒険者と正規騎士は、知り合いでもあったのだ。

 

「だからと言って、作戦に変更は無い。ロックイーターは倒れたが、鉱山の脅威が消えた訳ではないからな!」

 

 ”排除する事に変わりは無い”と付け加え、部下の冒険者に命じ、ある物を寄越した。

 

布シーツが取り払われ姿を現したのは、車輪付きの荷台に設置された、大型の弩砲だった。

 

「古の時代より伝わる『黒鉄』を素材にした、鉱人造りの弩砲だ!手にした金と知己はこういう時にこそ使わねばな!!」

 

 弩砲を坑道入り口に向け矢を番える前に、地面に振動が走る。

 

「――!!不味いっ!ボルドの奴、すぐ其処だ!!」

 

 重戦士の警告に、銅等級冒険者は苦虫を噛み潰した様な表情になる。

 

「いかんな。射撃準備には、些かの時間を要する。時間を稼がねば……!」

 

 弩砲の弦を巻き上げ、特大の矢を番え、更に付与の魔法で威力を引き上げ、初めて射撃準備が整う。

 

このままでは、準備が整う前にボルドが外に飛び出し、縦横無尽に暴れまわるだろう。

 

そうなれば、旋回速度の劣悪な弩砲では有効な命中は期待出来ず、折角の奥の手が水泡に帰す事になる。

 

「……僕が時間を稼ぎましょう」

 

 名乗りを挙げたのは、青玉等級の男神官だった。

 

「貴殿一人でか?!無謀だ!」

 

「俺達も同感だ。アンタの実力を疑う訳じゃないが――・・・・・・」

 

 銅等級冒険者と重戦士等が止めに入ろうとするが。

 

「坑道の穴から出さなければ良いんです。僕の奇跡が役に立ちましょう!」

 

 男神官が走って坑道内の入り口に陣取る。

 

その間にも振動が強まり、ボルドが此方に迫っているのは明らかだ。

 

「背に腹は代えられんか。よし!今の内に射撃準備だ!」

 

 銅等級冒険者は弩砲の準備を急がせ、残りの冒険者達に陣形を指示した。

 

「重装備の戦士職は前衛で抜剣!弓手の飛び道具持ちは、射撃体勢で中衛に就け!魔法職は、後衛にて呪文を何時でも行使出来る様にせよ!」

 

 射撃準備が整いボルドが坑道から出現した瞬間を狙い、弩砲を射出――。

 

その一撃を合図に、弓手の矢と魔法の一斉射撃で追撃――。

 

最後は戦士職での、全員突撃を仕掛ける作戦だ。

 

彼の指揮の下、冒険者達が次々と割り当てられた配置に就いた。

 

陣形は整ったが、弩砲の準備は未だ完了していない。

 

銅等級冒険者が”まだか”と急かすが、漸く弦を巻き上げた段階だ。

 

 

 

――…っ?!あれが『冷たい谷のボルド』っ……!

 

 

 

坑道の入り口に陣取った男神官は、突進して来るボルドを朧気ながらも視界に捕らえた。

 

「準備には、まだ時間が掛かるようですね。……いと慈悲深き地母神よ、か弱き我らを、どうか大地の御力でお守り下さい……!」

 

 彼は手にした錫杖を地面に突き立て、信仰する地母神に祈りを捧げる。

 

坑道内のボルドが咆哮を上げながら、眼前の矮小な獲物を吹き飛ばさんと迫り来る。

 

――今こそ、地母神様の教えを実践する時!

 

 

 

プロテクション(聖壁)!!」

 

 

 

 坑道の入り口を塞ぐ形で、男神官とボルドの間に淡く輝く壁が入り巡らされた。

 

彼が出現させた聖壁にも意を介さず、尚も突進したボルドは頭から激突する。

 

聖なる奇跡により生み出された壁は、凄まじいまでの衝撃に晒されるが、ボルドの突進はそこで遮られた。

 

「おおおぉぉ……!!やったぞっ!バケモンの動きが止まったぁ!」

 

 男神官の後方から賞賛の歓声が上がり、皆が湧き立つ。

 

「……やるじゃねぇか。あの神官」

 

「『辺境最有望』の渾名は伊達じゃねぇってか!」

 

 彼等の士気は盛り上がるが、男神官の表情は苦々しく、額に汗を滲ませていた。

 

「今の内に弩砲の準備を……!」

 

 精神を集中しながらも、後方の銅等級冒険者に射撃準備を急かす。

 

 

 

――予想以上に攻撃力が高いっ!僕の未熟なプロテクションでは、そう長くは……。

 

 

 

聖壁に阻まれたボルドは、地上に出ようと暴れまくり、眼前の聖壁を何度も戦鎚で打ち据えた。

 

一撃、ニ撃、と耐えていたが、三撃目には聖壁に亀裂が生じ始める。

 

 

 

――なんて馬鹿げた力だっ!聖壁を通して、振動が僕にまで伝わって来るっ!

 

 

 

「――まだですかっ?!もう限界です!」

 

 亀裂が拡大し、恐らく後一撃で聖壁は崩壊するだろう。

 

ボルドの桁外れな圧に、彼は焦りと恐怖の入り混じった表情で叫ぶ。

 

付与(エンチャント)完了!」

 

「方位よし!」

 

「角度調整よし!」

 

「動作正常を確認!」

 

「射撃準備完了!!」

 

 矢継ぎ早に弩砲を操作している冒険者達から、報告が飛んで来た。

 

”何時でも撃てます!”の報告が、銅等級冒険者の耳に入る。

 

「よし!待っていたぞ。――神官よ、貴殿は退避せよ!よくやった!!」

 

 彼は最前列で単身、ボルドを食い止めている勇敢な男神官に後退を促す。

 

 

 

「――てぇっ!!!」

 

 

 

 彼が聖壁を解き退避すると同時に、大型の弩砲から特大の矢が打ち出された。

 

およそ人が扱う弓や弩とは、比較にならない力で限界ギリギリまで引き絞られた金属製の弦。

 

その桁外れな張力をもって打ち出された、槍と見紛わんばかりの巨大な矢。

 

嘗て火継ぎの時代より端を発した『黒鉄』と呼ばれる、硬度に優れた重い特別製の鉄を素材に作り上げられた矢だ。

 

凄まじい速度で射出された黒鉄の矢は、複数の魔法付与の効果も相まって、祝福の光と魔法の炎を纏いながらボルド目掛けて空を切る。

 

矢はボルドの左肩部に命中し、深々と突き刺さった。

 

「目標に命中!――総攻撃開始っ!!」

 

 肩に深く食い込んだ矢は、決して小さくないダメージを与え、ボルドは雄叫びを上げる。

 

弩砲による攻撃は、確実に効いていた。

 

そして間髪いれずに呪文と矢による、一斉射撃が加えられた。

 

「サジタ《矢》、インフラマエ《点火》、ラディウス《射出》!」

 

「サジタ《矢》、ケルタ《必中》、ラディウス《射出》!」

 

「雷鳥よ、青い空飛ぶ雷鳥よ、私の呼ぶ声聞いたなら、風巻く光と行っておくれ!」

 

「仕事だ仕事だ、土精《ノーム》ども、砂粒一粒、転がり廻せば石となる!」

 

「矢を番えっ!……撃てぇ!!」

 

 火矢、力矢、雷矢、石弾、鉄製の矢が濃密な弾幕と成って、ボルドに雪崩れ込んだ。

 

呪文攻撃と弓矢が、ボルドの至る所に命中し、傷を負わせていく。

 

「よし!前衛部隊は一斉攻撃を開始せよ!私も出る!」

 

 前衛に配置された戦士職の冒険者達に攻撃を命じ、銅等級冒険者自らも刺突剣を抜き、攻撃に参加する。

 

「今の内に、次弾装填を急げ!」

 

 弩砲に次の射撃準備も追加で命じた。

 

彼の号令と共に、戦士職の冒険者達が一斉に飛び掛る。

 

「俺達も続くぞ!」

 

 重戦士も踏み込もうとした矢先に、ふと”待ちな!”と槍使いに呼び止められた。

 

「おい、何なんだ?タイミングを逃しちまうだろうが!」

 

「どういうつもりだよ?」

 

 同じく同期戦士も踏み止まっていた。

 

どうやら彼も、槍使いに止められたようだ。

 

「……残念だが、この作戦は失敗だ」

 

 槍使いは、そう宣言した。

 

”どう言う事だ?”

 

彼等が抗議の声を挙げる前に、槍使いは言葉を付け加える。

 

 

 

先ず一発目で、弩砲の矢を頭部へ命中させるべきだった。

 

周りが坑道に囲まれたあの状況こそ、回避もままならない絶好の機会だったのだ。

 

ボルドが外に出てしまった以上、正面から弩砲を撃ったところで回避されるか防御されるかのどちらかだろう。

 

 

 

「だったら他に手はあるのかよ!」

 

「俺達を呼び止めたんだ。何か思い付いたんだろうな?」

 

「ああ。よく聞きな!」

 

 

……

 

………

 

「悪く無い手だが……」

 

「間に合うのか?」

 

 重戦士と同期戦士は、槍使いの案に不安を隠せない様だ。

 

「……間に合わせるさ!――それに、見ろよ……」

 

 槍使いはボルドと戦闘中の冒険者集団を指差す。

 

「クソ、こいつ。冷気を纏ってやがる!」

 

「何なんだ?馬鹿みたいに硬い甲冑は…!」

 

「このバケモノ、デカイくせに速いわ!」

 

 既に陣形は乱れ、乱戦に近い状況に陥っていた。

 

ボルドの纏う冷気と甲冑の前に碌な刃が通らず、巨大な戦鎚の反撃で或る者は吹き飛ばされ、或る者は叩き潰され原型を留めない程の肉塊と化す。

 

「このままいけば、確実に全滅だろうな……!」

 

 槍使いの言葉通り、ボルドの猛攻を前に一人また一人と、味方に犠牲者が増えていく。

 

最早躊躇している暇は無い。

 

「しょうがねぇ!お前の案に乗ってやる!!」

 

 重戦士が、強化された『重厚な大剣+2』を構えボルドに突撃した。

 

「俺達が戻るまで、死ぬんじゃねぇぞ!」

 

「お前等こそ、役割を果たせよ!」

 

 重戦士とは別行動を執る、槍使いと同期戦士。

 

「おい!お前達、何処へ行く?!」

 

 途中で銅等級冒険者が二人を呼び止めるが、二人は脚を止めない。

 

「今から助っ人を呼んで来る!それまで死ぬなよ?銅等級さんよっ!!」

 

「必ず戻る!俺達を信じてくれ!」

 

 槍使いと同期戦士は其々、魔女と少女野伏を引き連れ、手頃な馬車に乗り込んだ。

 

「早く戻らねば、敵前逃亡と見なす!いいなっ!!」

 

 銅等級冒険者の警告も気に留めず、二人は馬車を発進させた。

 

その光景を見ていた何名かの冒険者は、”自分達だけ逃げる気か?!”と非難の声を浴びせるが、それは些細な問題でしかなかった。

 

「……簡潔で良い、説明を要求する」

 

 重戦士の傍らに位置取り、先程の槍使い等の行動目的を問い質した。

 

「なぁに、簡単な事ですよ」

 

 彼は、槍使いと同期戦士達の策を説明する。

 

 

 

「そうか」

 

 以外にも銅等級冒険者から返って来た応えは、淡白なものだった。

 

彼は再び戦列に戻り、ボルドに攻撃を加えていく。

 

てっきり罵倒されると覚悟していたが、予想外にアッサリとした応えに却って拍子抜けしてしまった。

 

 

 

――あの騎士が言っていた事、満更戯言でも無いやも知れん。

 

 

 

銅等級冒険者は、都での出来事を思い出す。

 

王都から派遣されたロスリック調査隊の隊長を勤める、正規騎士の言葉――。

 

彼の話によれば、一人の剣士が群を抜いた実力を誇り、殆ど一人でボルドと互角に戦っていたと言う。

 

しかも、その剣士。

 

白磁の新人だとか――。

 

 

 

――もし、その話が真実だとすれば、この戦局をも覆すやも知れん。

 

 

 

頭から信じる気も助っ人を待つ気も毛頭無いが、どの道眼前の敵を倒さねば、依頼を達成出来ない所か部隊が壊滅し、人里に危害を及ぶであろう事は容易に想像出来る。

 

「……しかしどう攻めたものか?」

 

 有効打を与えたのは実質弩砲の一撃のみで、冒険者達の攻撃は効果が薄く、一斉攻撃もってしても敵の衰えは未だに訪れず、皆が攻めあぐねていた。

 

ボルドと冒険者達の攻防は続き、戦局は敵側に傾いていると言わざるを得なかった。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

鉱山を降りた所で、二台の馬車は其々別の目的地へと向かう。

 

「よぉし、間に合ってくれよ!今から連れて来るからな!!」

 

 馬の手綱を握る槍使いは、巡航速度を保ちながら馬を走らせる。

 

目的地は、北に在る開拓村だ。

 

――アイツが居れば、ボルドのヤローも倒せる筈だ。

 

 

 

今から連れて来るのは、彼も良く知る人物。

 

 

 

嘗てロスリックの高壁を探索し、苦楽を共にした剣士。

 

 

 

その人物とは――。

 

 

 

 

 

       ――火の無い灰――。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ボルドの大槌

 

 冷たい谷の外征騎士ボルドの大槌。

 武器に冷気を纏い、凍傷を与える。

 

 冷気は蓄積し、たまりきるとダメージを与え、また凍傷状態とする。

 凍傷はしばらく続き、カット率と、スタミナ回復を下げる。

 

 戦技は「我慢」。

 大地に武器を突き立て、強靭度を一時的に増す。

 また我慢中は被ダメージも軽減される。

 

 

 

 

 




 書くのは非常に難しいけど、こういう団体戦イベントは結構好きだったりします。

黒鉄について調べてみたのですが、詳しい事が殆ど分からなかった。
精々、炎に強い事と非常に硬い位しか、情報が載っていなかったです。
フロム脳で考察せよと、言う事か・・・・・・。

如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

デハマタ。( ゚∀゚)/

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