漸く、灰の墓所編の最終話です。
予定では、2話位で締める予定だったのですが、どうしてこうなった?(°д°)
兎にも角にも、これで灰の墓所編は、終了です。
ふぅ、やっと此処まで来た。
大食らいの結晶トカゲの住処で、黒いゴブリン一団と対峙した、ゴブリンスレイヤーと火の無き灰。
ゴブリンスレイヤーは、依頼を達成する事が出来るのか?
火の無き灰の、今後は?
そして黒いゴブリンの実力は?
両陣営の緊張は、いよいよ高まり激しい戦いが待ち受ける。
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黒いゴブリン。
余りに異質、その一言に尽きる。
だが、幸いにも戦闘に参加する様子が無い。
今は眼前のゴブリン集団に気を配るべきだろう。
「Guao!」
ホブゴブリンの号令と共に、ゴブリンの群れが襲い掛かる。
鎧戦士は、すかさず壁を背に迎え撃ち、灰は身軽さを生かし背後を突かれぬ様に、立ち回る。
突撃して来た二匹のゴブリン、鎧戦士は剣で喉元を刺し一匹を倒す。
続く二匹目を小盾でなぎ払い刺した剣を引き抜き、痛みでもんどりを打っているゴブリンに止めをさした。
間髪入れず、三匹目、四匹目と休む間も無く襲い掛かる、追加のゴブリン達。
彼は敢えて引き付け、鉄兜の強度を生かしゴブリンに頭突きを繰り出し、迎撃。
その衝撃で、昏倒するゴブリンを踏み潰しながら、迫る四匹目のゴブリンを剣で一閃。
その首を刎ねた。
一方灰も、縦横無尽に動き回りゴブリンを翻弄していた。
常に自分の真正面に来るように撹乱し、且つゴブリンの側面や後方から、攻め込み確実に屠っていく。
灰のクラブが、一振りされる毎にゴブリンが、一体づつ数を減らす。
ゴブリン側と人間側の激闘が続いていく。
鎧戦士の傍に二体、灰の眼前にホブ、やや後方に四体のゴブリン、最も離れた所に黒いゴブリン。
ゴブリン側は、数を半数以下に減らしていた。
二人共多少疲労していたが、戦闘に支障は無い。
ホブが叫んだ。
後方のゴブリンに対して。
どうやら命令している様だ。
さっさと攻めろ!と。
だがその四体は、従う様子が無い。
何故か、黒いゴブリンから離れようとしないのだ。
主を警護するかの様に。
そのゴブリン達は、グンダの広場から敗走して来た集団の一部だった。
既にこの四体は、黒いゴブリンを頭目として見ていたのである。
ホブは舌打ちし、灰の前に立ち塞がる、何故か武器を装備していない。
灰は、クラブを構え臨戦態勢を取った。
同時にホブも構えを取る。
左右の拳を握り、それぞれの腕を胸の前へと置き、半身をやや後ろへ下げた。
そして小刻みに身体を上下に揺らし、攻撃のタイミングを図る。
――こいつ、格闘術が使えるのか?!
灰は一層警戒感を強める。
少しずつ少しずつ、すり足で灰とホブは、互いの間合いを詰めていく。
・・・両者の制空圏が触れ合うその刹那!
――ホブから、仕掛けた!
ホブに有り勝ちな、力任せの攻撃では無い!
右による、素早いジャブを三発仕掛け牽制。
灰は、顔だけ揺らし回避。
更に左のボディ、右のフック、左右のワンツー、右アッパーを見事な連携で攻め立てた。
灰は間合いを読み、円を描くように捌きつつ、上半身を上下左右自在に揺らながら、連撃をかわし、最後のアッパーを捻る様にかわし切った。
・・・違うっ!広場に居た、ホブゴブリンとは格が違う!
灰は、迂闊に攻込めなくなった。
咄嗟にバックステップで距離を取る。
このホブゴブリンとて、最初から格闘術を行使できたわけではない。
嘗ての巣を襲撃した、冒険者の戦い振りを見様見真似で、我流に練り上げた物だ。
既存のゴブリンよりも学習能力が高かったのだろう。
ホブゴブリンの中でも、高い実力を誇るといっても良い。
ホブが地を蹴り距離を詰め、灰を攻め立てる。
拳を振り上げた途端っ――・・・。
腕に、僅かな痛みが走る。
スローイングナイフだ。
ナイフの飛んできた方を見ると、鎧戦士が剣を構え突撃して来た。
二匹のゴブリンは、既に始末されていた。
灰も鎧戦士の突撃に合わせ、ホブに突進する。
左右から、ホブを挟撃する形で、二人は武器を振るう。
鎧戦士は、脇腹を。
灰は、脛をそれぞれ狙った。
ホブは二人の狙いを見極め、腕で庇う。
腕が出血、打撲とダメージを受けたが防御には成功し、二人の目論見は外れた。
更に追撃を掛けるも、ホブはアクロバットなバク宙で間合いを離し、仕切り直しを計る。
ホブの戦意は、些かも衰えていない。
――?、ホブの肩が何者かに捕まれた。
ホブが視線を向けると掴んだ腕の正体は、あの黒いゴブリン。
「Goa」
(下がれ、俺がやる)
瞬間ホブの足が浮き上がり、後方へ投げ飛ばされた。
軽々と。
「Govarua」
(撤退準備だ。この巣を捨てる。我々の負けだ)
後方のホブを含めた、生き残りのゴブリン達にそう告げた。
黒いゴブリンが更に前へと歩を進める。
暫く両陣営に沈黙と張り詰めた空気が流れていく。
そして有ろうことか。
「見事だ!冒険者達よ。この戦い、我らの負けだ。認めよう」
黒いゴブリンが喋った。
それも、只人の言葉で。
ゴブリンの中には、稀に高い知能を有し、人語を操る種が居ると聞く。
チャンピオンやロードといった上位種だ。
鎧戦士も、ゴブリン退治の合間に、ゴブリンに関する知識を貪欲に吸収していた為、話には聞いた事があった。
だが少なくとも、拙い片言で話せるレベルだと知った。
しかしコイツは違う。
俺達、只人と同様に当たり前の様に流暢に、話してくるのだ。
まるで、それが日常であるかの如く。
そしてホブをも軽々と投げ飛ばした膂力。
違う!
何もかもが違い過ぎる!
コイツは、何なんだ?
「・・・・・・本当に、ゴブリンなのか・・・・・・?」
鎧戦士は、戸惑いと本心を口にする、誰に対してでもなく。
「対話が可能とはな。大食らいの結晶トカゲを倒したのもお前だな?」
灰が、黒いゴブリンに問う。
「その通り、奴のソウルは特別だ。利用価値が有る」
黒いゴブリンは、腕組みをしながら悠然と答える。
かなりの戦闘力の持ち主だ。
灰は、そう踏んだ。
それに、ソウルの概念についても理解している様だ。
だが、前の世界にこんな奴は、存在していない。
思っていたよりも、混沌に包まれた世界かも知れん。
今後の身の振り方を考察する必要性が生じ始めていた。
後ろのゴブリン達が、逃げ出そうとしていた。
予め抜け道を作っておいたのだろう、ホブも辛うじて通れる程度の大きさだ。
――逃がすかっ!
鎧戦士は、逃げ出すゴブリンを追撃しようと走り出すが・・・。
「どこへ行く・・・」
黒いゴブリンによって阻まれてしまった。
どうやらこの黒いゴブリンを倒さねば、先へ進めそうも無い。
だが、人質も居る。
鎧戦士は、逸る気持ちを落ち着かせ、この黒いゴブリンに意識を集中させた。
いつもどおり、倒せば良い。
そう、それだけだ。
「・・・ゴブリン共は、皆殺しだっ!」
鎧戦士の目が、鉄兜の奥で鈍く赤く輝いた。
同時に灰も攻撃の構えを取る。
一瞬の静寂。
「でぇぇいぁぁぁっ!!」
「うぉぉぉぁぁっ!!」
二人は、同時に突撃を敢行した。
「来い!」
黒いゴブリンが腕組みを解き、突撃に備えた。
灰のクラブが、鎧戦士の剣が、黒いゴブリンに迫る。
只の単発攻撃では無く、各々が完全に攻めを意識した、息をつかせぬ連続攻撃。
間断なく繰り出されるその怒涛の連撃が、黒いゴブリンを容赦なく攻め立てた。
しかし、只の一撃も掠める事無く、攻撃が紙一重でかわされていく。
無駄な動きを一切見せず、必要最小限の動作で、全て空振りに終わり、無駄にスタミナが消耗していくばかり。
一人につき約20前後の連撃、合計40を超える連続攻撃が、一発も掠る事無く空振りに終わった。
灰も鎧戦士も息が上がってしまった。
その消耗した瞬間を見逃してくれる程、世の中甘くは無い。
黒いゴブリンは、その隙を突き真正面から突進する。
凄まじいスピードだ!
二人共咄嗟の防御体制を取り、反撃に備える。
だが黒いゴブリンは急に屈み込み、片手を軸に身体をコマの様に回転させた。
その遠心力から生じる、回転足払いで両者の足を蹴り払い、二人は足元を文字通りすくわれた。
敵は、鎧戦士に狙いを定め、足を払われ地面に着く前の、彼の足を掴み硬い地面に叩き付けた。
「ガはぁっ!」
鎧越しに伝わる背中からの衝撃に、思わず息を吐き散らす。
手を離す事無く、鎧戦士の足を掴んだまま、付近の岩壁に勢いを突けて投げ飛ばした。
録に受身も取れず、鎧戦士は直に叩き付けられた。
・・・・・・体が動かない。
戦闘不能に追いやられた様だ。
もし此処にゴブリンが残っていたら、彼は奴等の悪意の歓迎を受けていただろう。
幸か不幸か、ゴブリン達は既に脱出していた。
皮肉とも取れるが、不幸中の幸い、とでも言えば良いのだろうか。
その間に灰は体勢を立て直しており、敵に猛連撃を繰り出す。
上から、下から、横から、斜めから、とあらゆる角度から攻め立てるが、悉く避けられ捌かれていく。
此方の攻めが、全く通用しない。
灰は、深く踏み込み内側からの横払いにクラブを打ちつけた。
そのクラブは、返される様に強い反動で弾かれ、明後日の方向を向いていた。
一瞬思考停止に陥る。
・・・・・・?
それは、黒いゴブリンの金属製の手甲による、パリィングによって弾かれたのである。
「――ヴぉあぁっ!?」
がら空きの鳩尾に、膝蹴りを叩き込まれ、掌で顎を打たれ、高速パンチの連打を30発以上打ち込まれ、止めに腰を深く落とした正拳で吹き飛ばされた。
豪快に吹き飛ばされ壁に叩き付けられた灰は、口から血と吐しゃ物の入り混じった液体を撒き散らした。
これ以上戦える状態ではない。
それでも、灰は立ち上がる。
何度も火継ぎの使命を果たそうとした、あの時の様に。
「・・・そろそろ頃合か」
黒いゴブリンは、戦闘体制を解除した。
灰は、ふと鎧戦士に視線を送る。
どうやら、立ち上がる力は残っている様だ。
戦える状態では無い様だが。
それは、自分も同じ。
立ち上がるだけで、精一杯である。
黒いゴブリンは、飛び退き距離を開けた。
「連中は、撤退した。俺も退かせて貰おう」
そう言うと、片方の掌を上に翳し何か呟き始めた。
奴め何をする気だ?
灰は、朦朧とした意識で、敵の掌を注視する。
「カリブン・クルス・・・・・・」
ん?何のの言葉だ・・・・・・?
突如、鎧戦士が声を張り上げ叫んだ。
「詠唱だ!呪文が来るぞ!!」
?!灰は、歯軋りした。
どんな呪文が来るのか?
狙いは、誰なのか?
その対処方法は?
「・・・クレスクント・・・」
更に詠唱が続き、掌に直径1メートル程の火球が出来上がっていた。
「貴様等から特別なソウル感じるぞ。更に成長するだろうな。機が熟したら奪いに来てやろう」
詠唱を止めなければ。
体が、言う事を効かない。
灰も鎧戦士も、満身創痍だ、まともに動けそうに無い。
・・・チリ。
?突如灰の左手に熱が篭るのを感じた。
・・・気の所為か?
・・・チリ。
・・・!気の所為じゃない。
灰は、自分の左手に炎が宿っているのを感じた。
― 呪術の火 ―
滅んだイザリスの遺物、火の業。
すっかり失念していた。
世界の変化と装備品の確認にばかり、気を取られていた。
もう術を阻止する事は出来ない。
残念だが手遅れだ。
やる事は、ひとつ!
「では、さらばだ!」
敵が、発射体制に入った。
黒いゴブリンは、灰を見据えている。
突如、鎧戦士へと火球を向けながら。
「ヤクタ!!」
黒いゴブリンから、投射される呪文。
― ファイアーボール ―
使い手によって、威力は大きく変動される、四方世界の火の魔術。
大型の火球が、鎧戦士へと迫る。
まともに動けない彼に回避手段は、残されていない。
「させるかぁっ!!」
灰が、ファイアーボールと鎧戦士の間に割って入る。
「どけっ!灰よ!俺を庇う必要は無い!」
だが、灰は即座に反論した。
「言ったろ?私を有効活用しろと!」
灰は、左手をファイアーボールへ翳し、右手で左手首を掴む。
やるべき事は、火の相殺!
出来るかどうかじゃない。
――やるんだ!!
いよいよ、ファイアーボールが迫って来る。
灰は、意識を集中させ。
「イザリスの火よ・・・我に力を」
そして灰が、行使した術は。
「大発火!!」
― 大発火 ―。
呪術の火には、最も初歩的な発火という戦技が存在する。
手を翳し、火を発するという単純な技だが、それ故威力も高い。
その発火を更に強力で範囲を拡大したのが、大発火である。
大きな火の爆発が、広い空洞を熱し、紅い光を照らしつける。
火の粉がいくつも舞い上がり、やがて小さく消えていく。
鎧戦士と、膝を着き肩で息をしている、火の無き灰。
厳密に言えば、相殺は失敗。
僅かに威力が、足りなかった。
灰の左手は、黒く変色し酷い火傷を負っていた。
しかし火の玉や火球の術では、更に状況は悪化していただろう。
辺りの火の気が静まる。
鎧戦士は、周囲を警戒するも、あの黒いゴブリンは姿を消していた。
ゴブリンの殲滅には、失敗したのだ。
だが、人質が生き残ってる以上、見捨てる分けには行かない。
それでも生き残ったのだ、それは紛れも無い事実。
生きてさえ居れば次が有る。
・・・後処理が面倒そうだがな。
鎧戦士は、兜の中で苦笑した。
「クソ!ヒ-ルポーションがっ!」
― ヒールポーション ―
冒険者達が常に携帯し、お世話になる、身近な回復薬。
薬草各種に加え、錬金術師が醸造した魔法を蓄える事が出来る特殊な溶液を混合した後に、治癒の魔法を付与した水薬である。
ガラス瓶に詰められた、この水薬を摂取する事で、ある程度の負傷を忽ち癒す事が出来るのである。
但し、地域や時期によって多少の差はあれど、一律金貨一枚という新人冒険者には些か高い、高価な代物でもあるのだが。
ガラス瓶が、災いしたのだろうか。
瓶が割れてしまい、中身の回復液は、全て地面に吸収されていた。
黒いゴブリンに投げ飛ばされた衝撃で、背嚢が壁に激突した際に全壊したのだろう。
鎧戦士は、困窮した。
このままでは人質の女性も、長くは持たないかも知れない。
鎧戦士が放り出された、背嚢の中身を漁る、何か使える物は無いか?
治療に使えそうな物、ごそごそと探っている彼の目の前に瓶が差し出された。
見上げると、何時の間にか無傷の灰が、得体の知れない瓶を差し出していた。
灰は、無言で施す、飲め・・・と。
鎧戦士は、差し出された瓶を受け取り一口、口内へと含んだ。
・・・・・・?!!
喉の奥に吸い込んだ瞬間に、体中に、指の先、爪の先に至るまで、何かに満たされていく。
柔らかく、それでいて暖かいそれは、癒しの火 そのものとしか形容しようがなかった。
「何だこれは?体中が満たされていく・・・・・・」
鎧戦士は、思わず言葉に出してしまうほどの、未知の体験であった。
これもある意味、冒険なのかも知れない。
既に、傷は完全回復していた。
「良かったよ、生者にも効果が有る様だ」
灰が、差し出したのは火の無き灰の宝、エスト瓶だったのだ。
「・・・これが話に聞いた、エスト瓶・・・・・・便利な物だ」
鎧戦士は、そう呟きながら瓶を、返した。
後は、倒れている女性に、エストを口に含ませた。
意識は戻っていないが、呼吸が安定したようだ、命の心配は無いだろう。
鎧戦士は、背嚢から布シーツを取り出し、女性に羽織わせる。
そしてもう一束。
それは、灰に渡され、灰は疑問符を浮かべ尋ねた。
「私には、必要無いと思うのだが?」
「街へ案内してやる。そんな格好でうろつかれたら、衛兵に連行されるぞ。」
鎧戦士に、指摘された灰は、改めて自分の身に着けている物を確認した。
恥部隠しにバンテージ、粗末なサンダルもどきetc,etc。
つまり裸同然、下着姿で公道を徘徊する様なものである。
人それを、変態と呼ぶ。
灰が、この四方世界の規範に馴染むには、今暫くの時間が必要かもしれない。
暫しの休息の後、鎧戦士が人質の女性を背負い、念の為灰が周囲を警戒しながら、墓所の出口を目指す。
クラブは、先程の戦闘で使い物にならなくなった。
他の落ちている装備品を探したが、役に立ちそうな物は無い。
めぼしい物といえば、精々数枚の、錆びついた金貨だけだった。
鎧戦士は、換金用にとって置けと言った。
何事もソウルで交換する前の世界とは、違うのである。
この世界では人の営みが当たり前に行われている。
灰は道中、己の体内に意識を集中させ、呪術の火が使える事を再確認出来た。
白教の奇跡、ソウルの魔術が条件付きで、行使できる事も含めて。
前の世界で、覚えた魔法の類は、そのまま引き継がれた様だ。
だが現時点では、必要な能力値を満しておらず、行使に必要な触媒も所持していない為、まともに使えるのは呪術の火、それも初歩的な術に限定されるだろう。
――冒険者か。
灰は鎧戦士に尋ねる、自分の様な者でも成れるだろうか、と。
登録すれば、誰でも成れる。
簡潔だが、確かな答えが返ってきた。
グンダの広場を抜け、大きな門を潜り、一行は灰の墓所を脱出した。
・・・?、前方に誰かいる。
どうやら、冒険者の一党の様だ、灰の墓所を探索するつもりだろうか。
男剣士、大柄の斧戦士、男の僧侶、少女の魔法使いだろうか?四人居る。
一党の頭目らしき男の剣士が、鎧戦士に話しかけに来た。
「よう、珍しいな。アンタが遺跡探索とは」
鎧戦士は、首を振り否定する。
「ゴブリンを退治しに来ただけだ」
律儀に、立ち止まり答える鎧戦士。
「もしかして、背負っているのは?」
攫われた女の冒険者だ、他の二人は死亡した。
そしてゴブリンの殲滅には、失敗した事も含めて、事実を端的に伝える。
「後ろのあんたは、冒険者じゃないのか?」
剣士の関心は、シーツを羽織った灰に移った様だ、興味有り気に聞いてくる。
「旅の者です。襲われていた所を彼に助けられました」
灰は、そう答えた。
剣士は、他にも聞きたそうだが、少女が止めに入る。
「これ以上引き留めちゃ駄目だよ!怪我人も居るみたいだし」
少女に怒られ剣士は、これ以上の追及は止めた。
行くぞ、と鎧戦士に施され街へと向う灰達。
対照的に四人の冒険者達は、灰の墓所へと向う。
何も無いと思うのだが、それは彼等の探索を止める理由にならない。
聞けば、さっきの剣士と鎧戦士は、奇しくも同じ日に冒険者になったそうだ。
成る程、同期という事か。
更に灰は、重要な事を問う。
「この近くで、火継ぎの祭祀場を見掛けなかったか?」
だがその問いに対する答えは、あっさり否定された。
「残念だが、見ていない。この近くに在るのなら直ぐにでも見付かる筈だ」
その通り。
周りは、広大な平原。
火継ぎの祭祀場が存在していれば、否が応にでも目立つだろう。
どうやら存在していない様だ。
街へ行くしか選択肢は残されていない。
灰は、一抹の寂しさを覚えた。
火継ぎの旅を支えてくれた、あの絶望渦巻く世界での唯一といって言い程の、拠り所。
あそこには、仲間達が居た。
彼等は、どう思っていたかは知らないが、少なくとも灰にとっては大切な友であったのだ。
いわば家も同然である。
そして自分に対して献身的に尽くし、最後まで周回の記憶を共有し、世界が終わるまで支えてくれた女性。
「・・・・・・火防女・・・・・・」
最後の記憶が、呼び起こされる。
王達の化身を倒し、立て続けに侵入して来たロンドールの闇の王一党を退け、亡者化寸前の死に掛けの私を気に掛けつつ私に協力してくれた、掛け替えのない存在。
私の意識が途切れた後、彼女は一人暗黒の世界に取り残されたのだろうか。
叶うなら彼女にも光溢れる、この世界を見せてやりたい。
・・・・・・もう彼女には、逢えないのか。
灰は立ち止まり、地平線を空を見つめる。
美しい、ひたすらに美しい、しかしどこか哀しさ或いは寂しさを孕んでいる、両方だろうか?
純粋に美しく、暖かい世界だと思っていた景色が、どこと無く哀しげに視えて来たのだ。
火防女に逢う事が出来ない。
この事実も無関係ではないのだろう。
灰は、感傷に浸っていた。
日は、やや傾き始めており、もうすぐ夕暮れになるだろう。
「おい!置いてくぞ!」
ふと鎧戦士に、声を掛けられ灰は、ハっと我に返った。
小走りに、鎧戦士に追いつく火の無き灰。
疲れ切った彼等に、優しく穏やかな風が撫でる、彼等を労う様に。
彼等の後方には、変貌した灰の墓所が静かに佇んでいた。
如何だったでしょうか?
気が付いたら戦闘ばっかり書いてるなぁ、などと思っております。
まぁ次からは、灰が冒険者になる話を書くつもりで居ます。
最後に出てきた冒険者一党は、イヤーワンで出てきた、ゴブスレさんの同期です。
結構好きなんですよ彼ら。
それでは、失礼します。
宜しければ、感想など送っていただけたら嬉しいです。
私のやる気がアップします。
それではマタ。(゚∀゚ )/