ゴブリンスレイヤー ―灰の剣士―   作:カズヨシ0509

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 なる〇ぃ様を始めとした考察動画やボスBGMの和訳動画を見て、それ等を参考に自分で考察してみましたが、内容が奥深過ぎて自分では処理し切れていないのが正直なところです。

私の力不足で、ちぐはぐで矛盾だらけな世界観を形成しておりますが、余り本気にならず適当に受け流しておいて下さいな。( ̄ω ̄;)
(それでも感想頂けると嬉しいです)

では投稿します。


第47話―大王グウィン―

 

 

 

 

 

 

闇術師カルラ。

 

 イルシールの地下牢奥深くに幽閉されていた、女性の魔術師。

 数多くの魔術を修め、闇術師の名に違わず闇魔術を得意とする。

 

 自らを深淵の忌み子と称し、異端の者であると語る。

 それ故か、魔術以外にも数多くの奇跡やコルニクスにも扱い切れない

 特殊な呪術をも行使出来る。

 

 当時の火の無い灰に救出され、それが縁で彼に様々な闇術を含めた術の師となった。

 

 火が消えた後、ロンドール一派の手に掛かり『魔術師の世界』にて転生し

 魔術の研究に明け暮れている。

 灰が火を消した事に悪感情は抱いておらず、彼に対する想いは今も変わっていない。

 (決して表には出さないが、恋慕と感謝の念が混在している)

 

 魔術師の世界に転移して当初、身に付けた衣服が強烈極まりない異臭を放つため

 他の女術師達が見るに見かね、無理矢理彼女を風呂に放り込み衣服を交換させた

 過去が存在するのは、彼女の秘密だ。

 (彼女の心中や如何に)

 

 

 ロスリック王子が所有する屋敷の一室を譲り受け、其処で生活を送っている。

 

 魔術師の世界に来た『孤電の術士』と最初に出会った人物でもあり、彼女とは先輩後輩の間柄でもある。

 

「…ああ、貴公、迷っているのだろう?

 だが、道に迷う者は、道をゆく者に他ならぬ

 それは貴公が、英雄であるという証だ

 …そして、たとえ貴公が何を選ぶとも…

 私が貴公に感謝し、抱く思いに、何の変わりもありはしないよ」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 それは、戦いと呼ぶには余りに一方的だった。

 

焼かれ、跳ね飛ばされ、切り刻まれ、吹き飛ばされる。

 

無様な醜態を晒し、地を這いずり回り、羽を毟り取られた羽虫の如く――。

 

只々逃げ惑い、逃れ得んとする……。

 

 

 

正しくそれは、私刑(リンチ)だった。

 

 

 

「さっきまでの勢いはどうした、小僧?」

 

 老いを感じさせぬ圧倒的な戦闘力を以て、灰の剣士を追い詰める一人の神。

 

手にした燃え盛る『螺旋の剣』で幾度も打ち据えられ、彼の全身は傷だらけとなっていた。

 

「儂を殴るとか申しておったが、反撃すらままならぬではないかね?」

 

 吹き飛ばされ倒れ込む灰の剣士に、老いた神『グウィン』が緩慢と歩み寄る。

 

戦いの火蓋が切って落とされると同時に灰から突撃し全力の一撃を叩き込んだものの、容易く受け止められ押し留められてしまったのだ。

 

戦いと呼べたのはその時だけであった。

 

その後は最早戦いとは呼べず、グウィンの振るう剣撃に成す術も無かった。

 

神速の破城鎚を思わせる桁外れの剣撃が、四方八方から押し寄せて来るのだ。

 

彼は忽ち防戦一方に追いやられ、体力を瞬く間に削り取られていくだけである。

 

「くっ…、くそぉっ!……()()()とは何もかも違うっ……!」

 

 そんな彼の思惑などどうでもいいかのように、螺旋の剣が容赦なく打ち降ろされる。

 

「ぐぅっ!」

 

 紙一重で反応し、ローリングでその場から退避――。

 

地を抉った螺旋の剣は炎と灰塵が巻き上がり、その威力を物語っていた。

 

辛うじて回避が間に合ったものの、彼は脇目も振らず逃げ惑い距離を離そうと必死に藻掻く。

 

灰塗れの地べたを這いずり、命からがら逃げ惑うその姿は、最早滑稽にさえ映っていた。

 

一人のアークメイジ『孤電の術士』の耳に、嘲笑や蔑みの声が届く。

 

結界の外側から傍観していた、魔術師達の声だ。

 

当然その嘲りは、醜態を晒しながら逃げ惑う灰の剣士に向けられていた。

 

灰の剣士を知らない彼等からすれば、さぞ矮小に映るのだろう。

 

「……駄目だ……、剣士君っ…!相手は仮にも神。只人でどうにかなる相手ではないっ……!」

 

 太陽の光の神が張り巡らした結界の中で、彼女は悲痛な思いで彼を見守っている。

 

尤も、傍観している魔術師全員が彼を嘲っている訳ではない。

 

彼等の中には、どうにか結界の解呪を試みる者や、この一方的な戦いを止めさせようと動く者も存在していた。

 

当然、『幻想』を始めとする神々に直訴しようと向かう魔術師達も居たが、全て徒労に終わる。

 

大半の神々は、一方的に痛め付けられる灰の剣士に無表情を貫いていたが、一部の神は些かに心を痛めているようだった。

 

『地母神』が顕著だろうか。

 

 高速体術で距離を取り、中回復の奇跡で体力を回復させる灰の剣士。

 

「ハァ…、ハァ…、強過ぎる……。『最初の火の炉』で対峙した時とは、比べものにならんぞ!」

 

 そうこう言っている間に、神は瞬時に距離を詰め剣の間合いに彼を捉えた。

 

「言ったではないか?あの時の儂は、燃えカスだと……!」

 

「――なっ?!」

 

 瞬きする間に追いつかれ、彼は慄く。

 

「『カーサスの高速体術』か……。中々に面白い技を習得したようだが、儂にとっては稚技に過ぎん」

 

 意外にも神は構えを解き、無防備に彼に一歩寄る。

 

「斬って来い、小僧!これでは戦いにすらならん!……無念だろう?禄に抵抗もせぬまま『賽振らせる者』に戻るのは?」

 

「だっ、だまれぇっ!!」

 

 激昂した彼は瞬時に踏み込み、息を突かせぬ猛連撃を繰り出した。

 

持ち得る全ての型と戦技を駆使し、神に向かって感情の赴くがままに剣を振るう。

 

「うぅおぉぉあぁぁぁぁっ!!」

 

 縦横無尽の斬撃が神に襲い掛かるが、悉く躱され彼の刃は虚しく空を奔るばかりだった。

 

今の彼の剣技を躱し切るのは、四方世界を探し回っても然う然う(そうそう)居るものではない。

 

彼の剣術だけを当て嵌めれば、既に銀等級の技量剣士にも比肩し得るのだ。

 

『熟練』以上『達人』一歩手前と謂った所か。

 

結局彼のシミターは掠りもせず、反撃に繰り出された薙ぎ払いに吹き飛ばされ地面に叩き付けられてしまった。

 

大地の殆どが灰や塵で構成され、激突の衝撃が最小限に済んでいるのが唯一の救いか。

 

「……ふんっ、不甲斐無い。1000分の1でも事足りたやも知れぬな!」

 

「ぐっ……、攻めが…通用、しない……」

 

 荒い呼吸を繰り返し尚も彼は立ち上がるが、万策が尽きようとしていた。

 

その時、彼の足元にある違和感を覚える。

 

「ん?水溜まり……?いや、血溜まりか!」

 

 戦いに意識を向けていた為、気にも掛けずにいたが、地面の至る所に血溜まりが形成されていた。

 

――一体何時の間に?!始めは無かったぞ!

 

僅かな間、グウィンから視線を外し彼方此方に存在する血溜まりに視線を向けた。

 

「……私の血か?!……いや、違うな。こんな血溜まりを幾つも形成する程出血すれば、確実に失血死する!」

 

 現在の彼は霊体だが限りなく実体に近い状態だ。

 

仮に死に至らずとも、血溜まりを生み出すほど血を流せば間違い無く意識を失う。

 

一体何時の間に現れたというのか。

 

誰の血だというのか。

 

 

 

「よそ見している暇は無いぞ、小僧!!」

 

 間合いは離れていたが、神が剣先から紅蓮の業火を奔らせ彼に解き放つ。

 

「――うっ?うぅぉあぁぁ?!!」

 

 逃げ場も無い程の広範囲に放たれた火の濁流――。

 

放たれた炎は彼を容赦なく飲み込み、火の洗礼を甘受するしか手は無かった。

 

密かにその熱波が孤電の術士にも到達していたが、神の行使した結界のお陰で事無きを得ている。

 

もし結界が無ければ、熱波だけで焼き尽くされていただろう。

 

今の攻撃を目の当たりにしていた魔術師達も、これには目を見開かんばかりに戦慄を覚え騒ぐ事を止めた。

 

「……矢張り太古の主神。我等は神の掌で踊らされるしかないのだろうか」

 

 結界の外側で静観していたロスリック王子が密かに呟く。

 

薪の王となる事を拒み城に引き籠っていたが、火継ぎを終わらせた灰の剣士には一種の好感情も抱いていたのだ。

 

「賽振らせる者……。たかだか骰子などに生命の行く末を操作されるとは、何と残酷なのだろうか世界は……!」

 

 闇術士カルラは、必死に抵抗し続ける灰の剣士を案じる。

 

 

 

グウィンの繰り出した炎に焼かれながらも、彼は尚も心折れる事無く剣を振るい続けていた。

 

幾度かの剣がぶつかり合い、その勢いに押され彼はバックステップで交代する。

 

すると神は剣を腰だめに引き瞬時に肉薄した。

 

爆炎を纏い迫る、太陽の光の神『グウィン』。

 

その桁外れの踏み込み速度は彼の反射速度を軽く凌駕し、彼の両脚を切断した。

 

「――っ?!!」

 

 余りに一瞬の出来事、神経が痛みを認識する前に、彼の両脚は焼き焦げ無残にも地に晒す事となり、脚を失った彼も立ち上がる事は不可能となった。

 

「……もういい剣士君。もう充分だ……、これ以上見てられんよっ……!」

 

 静観していた孤電の術士は、悲痛な表情で呪文の詠唱を始め加勢しようとする。

 

「最後まで見届けるんだ」

 

 突如として彼女の詠唱は封じられ、呪文の行使が不可能となる。

 

気が付けば、黒い鳥の神が彼女の肩に停まっていた。

 

「下手に動こうと思わない事だ。結界ごと君を焼き尽くすのは造作もないのだからね」

 

 あくまで口調は穏やかだったが、言い様の無い迫力が彼女を襲う。

 

――だ、駄目だ……!逆らえ…な…いっ……!

 

顔に冷や汗を滲ませ、従うしかなかった。

 

「そろそろ決着が付く。さて?どう転ぶか……?」

 

 黒い鳥の神も戦いの場へと視線を戻す。

 

 

 

「ふむ、まだ抵抗した方か」

 

 グウィンはゆっくりと彼に近付く。

 

既に両足を失い、立つ事もままならず、地に倒れ伏した彼には戦う術は残されていなかった。

 

「……では幕を降ろそう。この剣がお主に引導を渡した後『賽振らせる者』として、四方世界で目覚める事となろう。あとは宿命と偶然に身を委ね、儂ら神々を楽しませると良い。幸い、お主を贔屓にしている神も居る事だしな。……そして儂の意志を引き継ぎ殉ずるが良い!」

 

「…ぅうっ、あ…、ぐっ……」

 

 神は語り掛け、ゆっくりと螺旋の剣を振り上げるが、彼には最早それを睨み付ける事しか出来なかった。

 

「……()の使命に……な」

 

「……?真の……使命……だ…と…?」

 

 神の語る真の使命――。

 

その言葉に彼の胸中は疑念と迷いが渦巻く。

 

――どういう意味だ?!俺の気付かぬ使命が他に在るというのかっ?!

 

必死に身体を動かそうとするが両脚は切断され、うつ伏せのまま彼には成す術が残されていなかった。

 

「……それだけの傷を負い尚、剣を手放さん意思だけは称賛しよう。……お主は最低最弱の出来損ないだが、消すには惜しい存在。……最後まで諦めずによくぞ絶望に立ち向かった。実に天晴(あっぱれ)よ!」

 

 倒れ伏した彼の地点は、奇しくもあの点在していた血溜まりと重なっていた。

 

切断された両脚から噴き出る彼の血と、血溜まりが混ざり合い、螺旋の剣の火がそれを明るく照らす。

 

「力を抜くと良い。恐れるな、変わる時が来ただけだ」

 

 既に勝敗は決した。

 

その頃、結界の外では魔術師達が再び騒ぎ始めていた。

 

『おい!もう充分だろ!やめろぉっ!!』

 

『神々よっ!これが貴方達の所業か?!』

 

『一つの生命体を弄んで何が楽しい?!』

 

『こんな仕打ちをして、貴方達の良心は痛まないの?!』

 

『何が盤を司る神々だ!何が世界を構築するだ!』

 

『神の風上にも置けないわね!あの剣士が可哀想よ!』

 

『恥を知れ恥をっ!!』

 

事の成り行きを見守る神々に浴びせられる、暴言と罵声。

 

「……これも、神々にとっては想定内なのだろうな」

 

 別の場所で見守っていたカルラがその様子に呟いた。

 

魔術師達が、一致団結して結界の解呪を試みた。

 

結果、神側と魔術師側を隔てていた結界に綻びが生じ、亀裂が徐々に拡がりつつあった。

 

幻想や真実と云った上位神は視線を傾けただけだったが、至高神や地母神等の下位神は焦りを見せ始める。

 

「……はぁ……やれやれ、もう少し大人しくしていてほしいんだけどね、僕としては」

 

 孤電の術士の肩に停まっていた黒い鳥の神が面倒そうに、飛び立ち魔術師達の上空に陣取った。

 

「素晴らしい感情だ、君達!その感情を全ての生命体と世界に向ける事が出来れば、僕等の仲間入りを果たす事も出来ただろうに。……今の君達は、自分の知識と技術の研鑽のみに心血を注ぎ、最も深く熱い感情を置き去りにしてしまった。……誠に残念だ!」

 

 黒い鳥の言葉に魔術師達一斉に注意を彼に向け、不満をぶつけるかのように呪文を解き放った。

 

嘗て神々を興奮させ世界を湧き躍らせた彼等だ、今の魔術師達とは比較にならない強大な魔法が、黒い鳥の神を襲う。

 

「……僕に余計な仕事を増やさないでおくれ。……大人しくしているんだ!」

 

 地形を変形させんばかりの強力な魔法も、この神には傷一つ付ける事も叶わず、彼は軽く羽ばたいた。

 

一瞬で魔術師達の周囲に業火が巻き起こり、彼等を焼く。

 

無論、彼等も素人ではない。

 

魔術で火を防御するも、そんな抵抗など何処吹く風の如く、防御ごと炎の洗礼が彼等を焼いた。

 

何もかも焼き尽くす黒い鳥。

 

「……安心するんだ、殺しはしない。大人しくしていれば僕も、手を出さないさ」

 

 かなり加減したのだろう。

 

火は魔術師達を確かに焼いたが、彼等の衣服と身を少し焦がしたのみで生命活動に影響を及ぼす程ではなかった。

 

因みに暴動に参加しなかった一部の魔術師やロスリック王子達に影響はない。

 

黒い鳥の神、彼の巧みな制御を以てすれば、この位は容易い事だ。

 

彼は瞬く間に損傷した結界を修復し、再び現場へと戻る。

 

「あの神……、全く以て得体が知れぬな」

 

 その様子を静観していたコルニクスは、黒い鳥を目で追っていた。

 

嘗ては自ら鴉を自称し呪術師として活動していたが、格の違いを思い知らされるに至る。

 

 

 

「終わりだ、小僧」

 

 螺旋の剣が彼に振り下ろされた。

 

――その瞬間っ!!

 

「――フォース!!」

 

 突如彼の身体から、全方位に衝撃波が発生した。

 

それでグウィン自身が吹き飛ぶ事は無かったが僅かに仰け反り、止めの一撃が阻止される。

 

「ぅうぅおぉぉぉ!!」

 

 全方位に発した衝撃波は地面に跳ね返り、彼はその反作用を利用して両手で地面を叩いた。

 

その勢いで飛び上がった彼の上半身がグウィンに迫る。

 

「――貰ったぁっ!!」

 

 僅かに生じた隙を突き、最後の力を振り絞り手にしたシミターを振るう。

 

「――甘いな!」

 

 しかし現実は残酷だった。

 

不安定な体制だったが、カウンターで振るった螺旋の剣は、彼のシミターごと腕を切断した。

 

「残念だったな、小僧」

 

 彼は右腕をも失い、最後の反撃すら水泡と帰す。

 

残された彼の上半身は、宙に舞ったままだ……。

 

「――言った筈だ、貴様をブン殴るとなぁっ!!」

 

「――ぬっ?!」

 

 最後に残った左腕に全力を込めて、神の頬に拳を叩き込んだ。

 

「――っぬぅおぉ?!」

 

 渾身の反撃を真面に受けた神は、数メートル吹き飛ばされ地面に激突した。

 

両脚と右腕を失い、左腕と上半身のみの彼は受け身もままならず、血溜まりの地面に落ち最後の力で神を見据えた。

 

「俺を創った割りには、ドジ…だったな。……俺は…、両利き…なんだ…ぜ……」

 

――見ているか?神々に翻弄された者達よ……。一発……、ほんの一発だったが、ブン殴ってやったぞっ!!

 

――……後は、……どうとでも、なれ…だ……。

 

一気に視界が暗闇に満たされ、彼の瞼は閉じられ彼の意識は其処でプッツリと途絶えた。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

随分、暖かいな……。

 

直に伝わる何度も感じた温もり。

 

それが『篝火』である事はすぐに分かった。

 

――ん?篝火……?

 

疑問を感じた時点で意識が急速に覚醒し、彼は目を覚ます。

 

「……大丈夫かい、キミ?」

 

 孤電の術士が心配そうに彼の顔を覗き込む。

 

気が付けば彼は、彼女に膝枕をされた状態で寝かされていた。

 

彼の傍らには篝火が再び熾され、中央にはあの螺旋の剣が突き刺さっている。

 

先程失った四肢も元に戻り、身体は再生されていた。

 

「気分はどうかね?我が駒……否、灰の剣士よ!」

 

 忘れもしないその声に彼は瞬時に飛び起きた。

 

「――うわっ?!」

 

「……グウィン、貴様!」

 

 彼が唐突に跳ね起きた為、孤電の術士が驚きの声を上げる。

 

篝火の傍には、先程剣を交えた『太陽の光の神』が腰を降ろしていた。

 

「流石は『篝火』。……いや、その回復力は君自身の持ち味なのかな?」

 

 その肩には『黒い鳥の神』も停まっている。

 

彼等だけではない。

 

灰の剣士と篝火を取り囲む様に、幻想と真実を始めとした神々やロスリック王子ら面々、多くの魔術師達が一堂に会していたのである。

 

「――なっ?!」

 

 流石にこの光景に灰自身も驚き、絶句した。

 

「戦いはもう終わりだ。これ以上は剣を交える理由もあるまい」

 

 太陽の光の神が、戦いの終わりを宣言する。

 

その表情は威厳と温和を併せ持ち、真に慈悲深さを漂わせていた。

 

先程の敵意と蔑みを露わにしていた者と同一とは思えない程に、彼の表情は穏やかであった。

 

「……それでも、貴様の所業が消え失せる訳ではない!」

 

 神々とは対照的に、彼は敵意を剥き出しグウィンを睨み付けた。

 

正確には、太陽の光の神を含めた神々全員に向かって……。

 

「貴様等にとっては、俺達は駒の一つ。遊戯の道具でしかないのだろう。だが!俺達はその不条理な世界で、必死に生きているっ!貴様等は只骰子を転がし、その結果に一喜一憂していればいいのだろうが、俺達一人一人は確かな意思を以て生活しているんだよっ!……貴様等に俺達の苦しみは、永遠に分からないだろうがなっ!!」

 

 彼は感情を吐露する、幻想を始めとした神々にも向かって。

 

幼い少女の姿をした神に、こんな恨み言を吐くのは我ながら大人気無いのかも知れない。

 

しかし、許す事は出来なかった。

 

其処へ地母神が割って入る。

 

「貴方達の……別けても貴方の受けた苦痛は、痛い程に理解していますよ。……文字通り、痛いほど……。()()()はね」

 

 背に翼を有した美しく温厚な女性が、彼の前に近付いて来た。

 

長い金髪を真ん中で分け、露出の高い薄着に身を包み、全体的にフワッとした印象を受ける。

 

「……どう言う事だ?それに、貴方は……?」

 

 訝しみながらも、眼前の女性に視線を向ける。

 

「私は『地母神』と呼ばれています。癒し、守り、救う、貴方も多少は存じていますよね」

 

「……ええ……」

 

 彼自身も世話になった神殿は、主に地母神の信徒が主導となって運営している。

 

彼女は、あくまで友好的に語り掛けるが、灰自身は警戒感を解く事は無かった。

 

なまじ個人的に彼を気に入っていたが故、今の態度に些かの落胆を覚えたが仮にも女神。

 

そんな事は(おくび)にも出さず、彼女は幻想を始めとした神々にある許可を取った。

 

「小娘!余計な事はせんでよいっ!!」

 

 唯一人、太陽の光の神だけが反対の意を示す。

 

しかし、幻想の神が彼を説得した。

 

「駄目だよオジ様。唯でさえ誤解から敵意を抱かれてるのに、これ以上放置しておいたら貴方様個人の目的も果たせなくなっちゃいますよ?」

 

「ぐ…ぬぅ……」

 

 下位神なら兎も角、同列の上位神の意見は無下に断る訳にもいかず、渋々了承する事にした。

 

――目的?私を骰子の支配下に置く事ではないのか?

 

幻想の神の言葉に、灰の剣士は疑念を抱く。

 

「さて、許可も出た事だし、この人が貴方の苦しみを理解…いえ、共有しているしている理由をお教えしましょう」

 

 地母神が手で印を切る。

 

程無くして太陽の光の神の纏っていた防具が剥がれ落ち、鍛えられた彼の身体が露わとなった。

 

 

 

      ――夥しい程に血を滴らせた、彼の身体が――

 

 

 

「「「「「――……?!!」」」」」

 

 

 

神々を除く、その場に居た誰もが息を呑んだ。

 

太陽の光の神、彼の身体は鮮血で染まっていた。

 

否、今も尚、彼の身体からは多量の出血が見て取れる。

 

裂傷、抉れ、打撲、火傷に凍傷、ありとあらゆる傷から現在進行形で血が噴き出し今も滴り落ちていたのであった。

 

「こ…この傷……!さっきの血溜まりは、まさか……!」

 

 太陽の光の神の傷を見て、灰は先程の戦いで不可解な血溜まりを思い出していた。

 

「その通りです……。あの血溜まりは、全て彼の血によるもの」

 

 今度はもう一人の下位神『至高神』が、言葉を付け加えた。

 

「どう言う事だ?!何故こんな傷がっ……?!!」

 

 今の現象に理解が追い付かず、彼は説明を求めた。

 

孤電の術士を始めとする他の面々も、言葉こそ発しなかったが皆が同じ疑問を抱いていた。

 

「僕が説明してあげるよ。彼ではきっと、はぐらかすだろうからね?」

 

「……」

 

 沈黙を貫く太陽の神に代わり、黒い鳥が代弁を申し出てくれた。

 

彼の話を要約するとこうだ。

 

 

 

使命を果たさせる為、幾人もの不死人を当時の盤へと送り込んだが、悉くが失敗に終わり或る者は亡者と化し、また或る者は消滅し存在そのものが消え去った。

 

そして後に出来上がった最低最弱の不死人、今此処に居る生者となった()

 

 

 

      ――灰の剣士――

 

 

 

直ぐに果てる事は容易に想像が付いたが、神は一計を案じ彼に或る細工を施した。

 

それは自らのソウルと血肉を彼に練り込ませ、盤に降り立たせたのである。

 

それ即ち、創造主である神と操作対象である駒が、感覚を共有する事に他ならない。

 

つまり駒である灰の剣士が傷付けば、創造主であるグウィン自身も同様に傷を負うのである。

 

先程の戦いも、傍目に見れば一方的に灰自身が痛め付けられていたが、同時にグウィン自身も傷を刻まれていたのだ。

 

そう、自分で自分を傷付ける、言わば自傷行為に等しい。

 

当時の灰は『北の不死院』で目覚め長い長い巡礼の旅へと出たが、その度に何度も命を失いソウルと精神を擦り減らしてきた。

 

心身共に苦痛を嫌という程味わい、その度に学び、同時に亡者へと近付いった。

 

そして彼の与り知らぬ盤の外で、グウィン本人も苦痛を共有していたのである。

 

眼前の神が今尚、体中から血を流し続けている。

 

灰が苦痛を味わう度に、この神も痛みを背負って来たのだ。

 

あの幾つもの血溜まりは、グウィン本人の血であった。

 

「……何…故に……そんな真似を……」

 

 半ば絶句しながらも、灰は自らの造り主に問い掛ける。

 

「……」

 

 本人は黙して語らず……だったが――。

 

「全ては……儂の、……()()()()()()……!」

 

 静かに…だがはっきりとした口調で、グウィンは重く口を開いた。

 

「あれは……、最初の火が陰る前の時代だったか……」

 

 彼はポツリポツリと、遥か太古の時代へと想いを馳せる。

 

遥か太古の時代。

 

朽ちぬ古龍と岩の様な樹木のみが存在していた変化の無い世界。

 

突如として『最初の火』が熾り、世界には多くの差異がもたらされた。

 

その差異の闇から生まれた名も無き幾匹かの一つが『王のソウル』を見出し、神を名乗るに相応しい存在へと進化する。

 

彼等は部下達を率い、古龍達に挑み見事勝利を収めた。

 

しかし、名も無き小人の一人が最初の火から密かに、或る物を見出していたのである。

 

 

 

      ――ダークソウル――

 

 

 

王のソウルと対を成し、それに比肩し得る可能性を秘めた、暗き魂。

 

古龍を討ち、火の時代を熾した彼等は既に予見していた。

 

何時しか最初の火は陰り、次第にダークソウルが力を増大させ、闇の時代が訪れるであろうことを。

 

ダークソウルは闇の力の源。

 

ダークソウルの欠片と呼ばれる『人間性』は、人にのみ宿る。

 

闇の時代とは即ち『人の時代』の到来なのである。

 

グウィンを始めとする同志達は、人の時代を恐れ火の時代を存続させる為、あらゆる手を尽くした。

 

その中の一環として行ったのが、次代を誕生させる事『子を成す』行為である。

 

グウィンは『魔女イザリス』を妻として娶り、彼女と交わる事で数多くの子を成した。

 

結果『太陽の長子』を始めとした数多くの次世代の担い手が誕生したが、此処でグウィンは自らのソウルを彼女の子宮に送り込みながら交わる事にした。

 

あらゆる可能性を模索し、より確実な火の時代の担い手を生み出す為である。

 

少しでも、有能な次世代を生み出そうとしたが故の試みだった。

 

 

 

それが、そもそもの間違いを生むとは知らず。

 

 

 

誕生したのは、見るも悍ましい異形の子『デーモン』だった。

 

それからだ。

 

()()が狂いだしたのは……。

 

彼は諦めず何度も彼女にソウルを注ぎ込み子作りに奔走したが、誕生したのは何れも冒涜的なデーモンばかりであった。

 

幾ら王のソウルが強大でも、それは決して無限ではない。

 

グウィンの宿したソウルは次第に枯渇し、業を煮やした彼は失ったソウルだけでも回収しようと配下の騎士達と共に、デーモンを狩り始めた。

 

数多のデーモンを狩りソウルの大半を取り戻す事には成功したが、此処でイザリスの怒りを買う羽目になった。

 

悍ましく冒涜的なデーモンとはいえ、彼女にとっては紛れもなく、かけがえのない子供達なのである。

 

彼女の反乱によりグウィンと彼に付き従った側近達は捕らえられ、罪に問われる事となった。

 

彼等のソウルと肉体は、最初の火を永らえさせる為の『薪』として火に焚べられ、グウィンに本人に至っては名を奪われる結果となった。

 

当時の『嵐の王』として名乗る事を許されず、『太陽の光の王』へと名を変えられた。

 

所謂一度目の『火継ぎの儀式』でもあった。

 

ロイド裁判とも云われてる。

 

これには実験の意味合いもあった。

 

もし彼等が考案した計画全てが失敗に終わった際、火の陰りを食い止める最後の延命手段でもあったのだ。

 

莫大且つ特別なソウルと肉体を有した者は、最初の火の薪として機能する事がこれで証明された訳だ。

 

後に『最古の火継ぎ』と称される儀式が後世に迄、語り継がれる事となった。

 

しかしグウィン自身は、これで朽ち果てる事は無かった。

 

最初の火に身を燻ぶらせ、その苦痛を共にしつつも彼は生き永らえたのである。

 

大半のソウルと力を失うも、彼は自身の熾した火の時代を存属させる為に再び尽力するに至る。

 

長らく火の時代は安定期を迎え、世界の人々はその恩恵にあやかり平和な日々を過ごす。

 

だが、そのような時代が何時までも続く筈も無く、最初の火が衰えを見せ始めた。

 

徐々にだが、ゆっくりと確実に火は衰え、次第に闇が芽吹きを花開く。

 

荒廃の色合いが増し、生と死の差異が曖昧いに成り始めた。

 

火の陰り……、終わりが始まろうとしていたのだ。

 

王のソウルを見出いした者達を始め、ロードランの神族は様々な手法で火の陰りを食い止めんと手を尽くした。

 

しかし、それ等の試みは悉く失敗と裏目に出る結果となり、結果的に残されたのは『火を継ぐ』選択肢しか残されていなかった。

 

当然、火を継ぐに相応しい候補者が選出される。

 

とは言え、火を継ぐというのは自らを火に捧げ燃料となる事。

 

世界の為を口実とした犠牲、謂わば生贄なのだ。

 

当初は罪人や、火の陰りで発生した不死人を『贖罪が為の殉教』と称し、最初の火へと投げ入れる行為が頻発した。

 

資格無き体と僅かなソウルしか有さない有象無象の輩でも、数が揃えればそこそこの効果をもたらす事は出来た。

 

精々、数日分の延命……、良くても数週間分の延命が関の山であったが。

 

当然その様な行為を続ければ世界中の人口は激減し、文明が衰退するのは世の道理。

 

世界を延命する筈が結果、世界を衰退させるという矛盾と皮肉を生み、悪循環を形成していく事になった。

 

その現状の心を痛め憂いていたのは、他でもない大王グウィンその人であった。

 

罪を犯し大罪人として名ばかりの大王として座していた彼だったが、秘めたソウルと命はいまだ健在である。

 

今も尚、火に焼かれ続ける身体に鞭打ち、再び世界の為に犠牲になる決意を秘め、立ち上がった。

 

嘗ての火に焼かれ続け燻ぶり続ける身体は、どの道長くはもたないと予期していた為、犠牲になる理由は十分にあった。

 

最初の火に身を捧げる前に彼は『王のソウル』を部下達に分け与え、旅立った。

 

そして彼はもう一度、最初の火に自身を焚べ『火継ぎ』を行ったのだ。

 

そう、グウィンは二度『火継ぎ』の犠牲となっていたのである。

 

火は瞬く間に彼の身体とソウルに燃え移り、再び火は勢いを取り戻し世界は延命された。

 

その日を境にグウィン本人は分離し、最初の火の炉に残ったのは辛うじて人の体を成す『燃えカス』が残留する事になり、大半の意識と肉体は(世界)の外へと弾き出された。

 

こうして彼は後に、宇宙の神々の仲間入りを果たし、そしてグウィンではなく『太陽の光の神』として盤を直接観測する側となったのである。

 

しかし、彼は心残りであった。

 

二度、火を継いだ事により世界は長らく延命を迎えたのは間違いない。

 

だが、何れは火は陰り世界は斜陽の時を迎えるのも避けては通れぬ宿命。

 

自分亡き後を考慮し様々な手を打ったが、安息を得る事は出来ない。

 

ロードランを始めとした世界は暫く繁栄を謳歌していたが、案の定火は陰りを見せ始め、世界は荒廃の色合いを強めつつあった。

 

人々の間には不死の証『ダークリング』は現れ、不死人が蔓延し始める。

 

世界はいよいよ闇に呑まれ、やがて夜ばかりが続き、闇の時代が到来しようとしていた。

 

こうしている間にも、ロードランの神々は次々と(世界)を去り、残された人々は不安と絶望に身を寄せる事となる。

 

グウィンこと太陽の光の神は、他の盤の神々から得た知識を基に駒を創り出す技術を学んだ。

(黒い鳥の神と交流を持ち始めたのは、この時である)

 

盤を去った後も心残りであった或る悲願を果たす為、闇の訪れを恐れ火の時代を延命させんが為、彼は完成した駒を盤に置き偶然と宿命を司る小道具『骰子』を振り、物語を紡ぐ事になった。

 

 

 

()()()()()()と呼ばれる壮大な物語りの幕開けでもあった。

 

 

 

彼によって生み出された幾多の不死人は試練へと果敢に挑むも、結局は亡者と成り果て行く手を阻む敵対勢力へと移り行き失敗に終わった。

 

他の神々、時には外部の神々が、彼の行動にあれこれと言及を始めてきたのもこの時からだろうか。

 

”諦めては?”そんな声も掛かって来たが、彼は駒を創り出しては送り続ける事を繰り返す。

 

もう果たせぬ自分に成り代わり、火継ぎを成し遂げる為、悲願を成就させる為、彼の心が折れる事はなかった。

 

彼の心には”絶望に立ち向かう彼等の勇姿が見たい”という願望も芽生えていたのも理由の一つではあるのだが……。

 

しかし事態は一向に好転せず彼は痺れを切らし始め遂に無理矢理、盤内へと舞い戻る決心をした。

 

直接介入を試みようとしたのである。

 

だがしかし、それは数多の神々が取り決めた絶対不可侵の約束事(ルール)でもある。

 

たとえ別の盤の神々であろうと、その様な勝手気ままな愚行を見過ごす事は出来ない。

 

無論彼は取り押さえられ、咎めを受ける事になる。

 

彼は激昂し暴れた。

 

持ち味の武力と神通力を振るい蛮行に奔ったのだ。

 

彼の力は上位の神々をも恐れさせるものではあったが、彼に比肩する神々は多く存在する。

 

そんな勝手が通用する筈も無く、彼の暴走は瞬く間に鎮圧された。

 

 

 

『ええいっ!!邪魔するなぁっ貴様等ぁっ!!儂は成し遂げねばならんのだぁっ!!儂以外に務まるものかぁっ!ぬぅおぉぉぉぉっっ……!!』

 

 

 

 彼は雄叫びを上げ、涙ながらに激情を吐き出した。

 

 

 

だが此処で、慈愛に満ちた声が彼を優しく包む。

 

今現在『四方世界』の盤を管理する二柱の片割れ『幻想の神』との出会いでもあったのだ。

 

幼い可憐な少女の様な風貌だったが、彼女の愛に満ち溢れた言動は彼の業火の様な激情を癒した。

 

最後に彼女は諭す。

 

 

 

――貴方は、駒の苦しみを解ろうとしていない――と。

 

 

 

そう――。

 

彼は世界の行く末や自らの悲願に傾倒するあまり、自らが創り出した駒に意識が向いていなかった。

 

創り出し送り込んだ駒と言えど、生命体であり心が存在するのも不変の理。

 

駒であろうと彼等には彼等の人生が在り、意思がある。

 

自らの愚行を悔い、考えを改めた彼は心を入れ替え再度、駒を生み出した。

 

この時ばかりは、幻想を始めとした四方世界の神々や外の神々も自分達の遊戯を中断し、彼の行動を見守っていた。

 

だが、偶然と宿命(骰子)はなんと無慈悲で残酷なのだろうか。

 

誕生した駒は、何とも不憫の念を禁じ得ない程に弱々しく出来の悪い駒であった。

 

 

 

「……それがお主だ、灰の剣士よ」

「……」

 

 

 

 篝火に身を寄せながら灰に言葉を向け、灰自身は無言でそれを受け止めた。

 

 

 

完成した駒に当然グウィンは意気消沈し、早々に使い潰してしまおうかと考えた。

 

だがつい先ほど幻想の神に諭されたばかり、更に此方の行動を注視している。

 

使い潰す行動を繰り返したのでは何も進歩しない。

 

そこで彼は一計を案じ、自らの血肉とソウルを駒に練り込ませた。

 

それは、駒の意識と感覚を始めとした事象を共有する事を意味する。

 

肉体にせよ精神にせよ駒が傷付けば自分自身も傷を負い、心に苦痛を受ければ自らも苦しみを背負う事になるのだ。

 

逆に駒は、彼自身の特徴を受け継ぐ事にもなるのだ。

 

彼自身の心を――。

 

彼は知ろうとした。

 

駒達が負う苦痛を――。

駒達が背負う困難を――。

駒達が味わう絶望を――。

 

これには他の神々も驚愕する。

 

駒の苦しみを理解しろとは言ったが、よもや()()()()するとは――。

 

出来の悪いこの駒は、最初の難関である『北の不死院』で散々に打ちのめされ命を落とす事になる。

 

グウィン自身にとっては造作もない事でも駒にとっては、天井知らずの壁に等しい難関なのだ。

 

駒が死ぬ度にグウィン自身も傷を負い、苦痛を味わう羽目になった。

 

――まさかこれ程の苦痛に苛まれようとは……。

 

駒達が味わった苦痛は、自分の予想を遥かに上回るものであった。

 

途中で駒を回収し、新たに作り変えた駒へ置き換える事も考えたが、彼はそれをしなかった。

 

駒の苦しみを共有する事で、彼の心は次第に変化を見せていたのである。

 

――駒達の苦しみ比べれば、火に焼かれた儂の苦しみなど如何ほどのモノかっ……!

 

火に身を投じ焼かれ続ける苦痛を長年味わい続けたが、有していた『王のソウル』の恩恵により耐え抜く事は思いの外、易かった。

 

だがその様な特別なソウルを有していない駒達には、想像を絶する苦痛を味わっていたのだ。

 

――これは……、今日の今日まで多くの者達に仕出かした、儂の罰だ!そして全てを終える迄、この苦痛から逃れる事は許されぬ!

 

彼はその苦しみを受け入れる道を選んだ。

 

贖罪と戒めを胸に誓い――。

 

 

 

彼は悟っていた。

 

この駒も直に亡者と化し、敵対するであろうと。

 

 

 

……駒は亡者化しなかった。

 

 

 

何度叩きのめされ、何度死のうと、何度篝火に戻され、やり直す結果になろうとも、この駒は心まで亡者に成り果てる事は無かった。

 

それどころか、自分の意志で勝手に動き始め次第に骰子に頼る事は無くなったのである。

 

次の駒を創りかけていたグウィンは手を止め、その駒の動向を見守る事にした。

 

――こ奴なら、或いは――。

 

様々な苦難を乗り越え、駒はとうとう『最初の火の炉』へ到達する事になる。

 

途中『闇撫でのカアス』が駒にあれこれ吹聴し、『闇の王』へと誘惑していたが何とか火を継ぐ方向へと誘導でき一先ず安心した。

 

彼は意識を分離させ、火に捧げた自分の燃えカスへと精神を繋げ、駒に試練を課した。

 

この自分を倒し、火を継ぐに相応しいか否かを――。

 

紆余曲折あり、ソラールの助力はあったものの、駒は見事自分の燃えカスを倒し火を継ぎ、世界は再び息を吹き返した。

 

 

 

――こ奴ならば、成し遂げるやも知れん……。火継ぎだけでなく、託した儂の悲願……()()使()()をっ!!

 

 

 

犠牲になるのは自分だけで良い!――

 

そう誓い、二度火継ぎの為に身を捧げた『太陽の光の神グウィン』

 

最早自らが、この世界に直接介入する事は叶わぬが、この駒なら成就してくれるやも知れぬ。

 

そんな期待と願いを駒に託す。

 

こうしてロードランでの使命を終えた駒は、次なる舞台(ステージ)『ドラングレイグ』編へと進む事になる。

 

 

 

 

 

「……そんな理由が……、あったとは……」

 

 灰は言葉を詰まらせ、太陽の光の神から視線を外していた。

 

いや、直視出来なかった。

 

今の今迄、自分の欲と虚栄心の為に、他者を蹴落とし蔑ろにし虚言と謀略で世界を都合良く操作した、そんな身勝手な神――。

 

灰の胸中にて象っていた眼前の神様像が、音も無く崩れ去ろうとしていたのである。

 

ロードランやドラングレイグを旅する道中で様々に耳にした、グウィンの所業。

 

余りに身勝手な神ではあったが、自信を犠牲にして世界を延命させたのも事実であったのだ。

 

それは自分の権力に執着したから――。

自ら立ち上げた時代を終わらせたくなかったから――。

 

道中に記された言葉や伝承には、そう伝わっていた。

 

だが、知ってしまった。

 

この神の本心を。

 

「……別に間違ってはおらぬ」

 

 グウィンは言った。

 

「確かに儂は、虚栄心や欲の塊である。その事は、擁護しようのない事実だ。闇の時代を恐れ、火の時代を存続させようとしたのも含めて……な」

 

「何故に、闇の到来をそうまでして恐れたのです?グウィン様」

 

 不意にロスリック王子が疑問を投げ掛けた。

 

「……よかろう。こ奴の果たすべき()()使()()を含め、語ろう。此処に魔術師達を呼び込んだ理由も含めてな」

 

――真の使命?……そういえば、先程の戦いでも口にしていたな。火継ぎやサリヴァーン、ロンドールは関係無いというのか?

 

真の使命という言葉に意識を向けざるを得ない火の無い灰。

 

姿勢を変え、グウィンは語りを再開した。

 

周囲の魔術師を含め他の神々も耳を傾ける。

 

 

 

 

 

中心部の螺旋の剣を伝い、篝火の炎は暗い空に向かい燃え盛っていた。

 

 

 

 

 

「お主が何故……、ロスリックだけ繰り返したのかが関係しておる」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

祭儀長エンマ

 

 ロスリックに仕える老女。

 祭儀長は古くより、王に仕える三柱の一つとされ常に女性であったという。

 また彼女は王子の乳母も務めていた。

 

 当時の火の無い灰に『ロスリックの小環旗』を授け、王達の故郷へと誘った。

 

 いよいよ火が陰る頃、灰を呼び戻し双王子を託した後絶命する。

 

 全てが終わった後、彼女は王子の所有する屋敷にて隠居生活を送っている様だ。

 

「おお、お待ちしていました。火の無い灰よ私はエンマ

 この城、ロスリックの祭儀長

 貴方に伝えることがあるのです

 薪の王たちは、この城にはおりません

 皆、帰っていったのです

 この城の麓に流れ着き、淀んだ、かつての故郷へと

 …高壁の下に向かいなさい

 大城門の先、この小環旗が貴方を導くでしょう」

 

 

 

 

 

 




 幻想の神、モデルは某魔法少女らしいですが、口調がイマイチ分からずあんな感じになりました。
あんなんでいいのでしょうか?( ゚ ω ゚ )

グウィンやら神々が繁栄していたロードランの時代。
様々な考察動画を参考にして、あんな形になりました。
まぁテキトーに受け流しておいて下さい。

私はグウィン割と好きです。
(散々な謂われ様ですが……)

それにしても蛇の神が空気と化しつつある。
完全に黒い鳥に存在感を喰われてしまった感がする。( ̄ω ̄;)

如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
デハマタ。( ゚∀゚)/
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