更新致します。
結局のところロスリック編はまだ未完の状態なのですが、キリの良い部分で区切れたので投稿する事にしました。
少々短いですが、お楽しみ下さい。
雷矢(精霊術)
…雷鳥よ、青い空飛ぶ雷鳥よ、俺(私)の声聞いたなら、風巻く光と行ってくれ…
対象に電撃を伴った矢を放つ精霊術。
精霊術の大半は、術の行使に代償となる触媒を必要とする。
この術は、水晶や閃電岩と呼ばれる、電気に関連した物質が対象となるようだ。
万物の精霊に語り掛ける事で、術を行使する精霊術。
そこに思想など関係無く、善悪とは真を以て一方的な
ものの見方に過ぎないのかも知れない。
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デエェェ ―― ロスリックの高壁 ―― ェェェエン
あの日から月日が流れる事、凡そ一年――。
皆にとっては忘れようも無い光景が、現実のものとなる。
「相変わらずと言うか何と言うか……」
「禍々しいこの荒れよう……嫌でも思い出すぜ」
同期戦士や槍使いは苦々し気に顔を顰め、嘗ての記憶と今のロスリックとを重ねていた。
そして、銀髪武闘家を始めとする面々は、今回が初となるロスリックに只々呆けるばかり。
「……な…ナニ…コレ……」
銀髪武闘家は、口にする言葉すら浮かばず口をポカンと開けながら、周囲を見回していた。
「噂には聞いていましたが、これ程までに死を彷彿させる遺跡は見た事がありません」
獣人魔術師は、一見落ち着き払っている様に見えるが、荒く呼吸を乱し冷静な思考を見失いつつあった。
「如何にも混沌側が好みそうな遺跡だ。いと慈悲深き地母神よ……我等に御加護を……」
日常では軽口や戯言の多い森人僧侶――。
そんな彼もロスリックに足を踏み入れた途端、口数が少なくなり、信仰の対象である地母神に祈っている。
――彼等の弔いの為にもこの依頼、必ず成功させねば……!
同じく地母神の男神官は、過去に此処で散っていった仲間達の無念を晴らす為にも、決意を新たに固めていた。
「皆!もう忘れているかも知れんが今回は昇降機を経由した短縮路で、不死街まで一気に向かうぞ!隊列を組み、私に続いてくれ!」
灰の剣士が最前列を担当し、皆はそれに続く為、隊列を組む。
兎にも角も、不死街まで到達しない事には話にならない。
以前、昇降機を稼働状態にさせた事で、ロスリック城の庭広場まではスムーズに行軍できる筈だ。
灰の剣士、ゴブリンスレイヤーが先頭に陣取り、続いて重戦士の一党、槍使いの一党、同期戦士達の一党、最後尾は調査隊が担当した。
昇降機に向かう道中、亡者と化した冒険者に襲われたが、比較的数も少なく部位欠損も激しかったため、大した労力を要する事なく突破できた。
灰達が居ない間も、幾多の冒険者がこのロスリックに挑み続ける事により、対象法を学び編み出したのだろう。
相変わらず不死街まで到達した冒険者は皆無に近かったが、この周辺での亡者は駆逐されつつあった。
昇降機まで辿り着いた一行――。
「おぅ、思い出したぜ。帰り道にこの昇降機を使って近道したんだっけな」
重戦士が昇降機を目にし、過去を振り返っている。
「先ず私と彼が下へ降り、安全を確保しておく。昇降機の床はあまり広くない、場所を押し合ってくれぐれも落下しないようにな」
灰の剣士が皆に忠告し、ゴブリンスレイヤーと共に昇降機で下へと降りた。
「まぁ確かに高いわな。こんな所で落下死なんぞしようものなら、流石に笑い話にもなりゃしねぇ。死んでも死に切れんぜ」
下へと降り立った昇降機を確かめる様に、重戦士が下を覗き込んでいた。
薄暗い下層は辛うじて見えるものの、中途半端に見えるだけに余計不気味さが際立つ。
下層から灰の剣士が叫ぶのを聞いた、重戦士。
どうやら、安全が確保出来た旨を伝えている様だ。
重戦士も大声で返事を返し、傍のレバーを引く。
すると、駆動音を伴い昇降機が元の位置まで戻って来た。
「よし来たな。いいか、俺達は唯でさえ大人数だ!はみ出さん様にな!」
念の為、一党に注意喚起を施し、彼等は昇降機へと乗り下層まで降りる。
降りた先では灰の剣士が待機し、ゴブリンスレイヤーが建物を抜けた先に陣取り警戒していた。
こうして皆は次々と昇降機を使い、下層へと辿り着く。
案の定と言えばいいのだろうか、同期戦士の一党は人数が多い為、二回に分けて昇降機を使用する羽目となった。
昇降機の移動中にも関わらず森人僧侶と鉱人斥候は体形の事で口論を始め、森人僧侶が落下しそうになったのは、些細な余談だ。
そして全員が下層へと降り立った。
「
「どう、し、たの?なにか、きに、なるこ、とでも」
全員が下層へと辿り着いたが灰の剣士は建物から一向に出ようとはせず、気になった魔女が尋ねる。
「上層の連中が、何やら揉めてるみたいでな」
「ああ。跡を付けて来た冒険者達だな。なぁに、彼等も手練れの集団…剣士殿が気に掛ける必要はあるまい」
正規騎士は、気に掛ける必要は無いと促すが……。
全員が降り立った後、昇降機が再び上層へと移動を開始した。
灰の剣士はそれが気になり、昇り切った昇降機を見上げていたのだが、上から微かの口論が聞こえていた。
無論、彼自身も尾行されている事は承知していたが、戦闘で死ぬならともかく、昇降機の揉め合いで死なれ余計な亡者を増やされるのも、正直困るのであった。
正規騎士の言う通り、当然それは向こう側の自己責任ではあるのだが……。
「何やら慌ただしいな……、この分だと高確率で誰かが落下…――っと!!」
彼が喋っている間に、上層の昇降機は再び駆動音を鳴らす。
尚も天井を見上げていた灰の剣士は、咄嗟に腕を伸ばし落下物?を受け止めた。
……
「……今回は偶々私が居たから良かったものの、次が有るなどと思わない事だ」
灰の剣士は、後続の冒険者集団に一人の少女を託す。
先程昇降機で落下してきた、見習い剣士の少女であった。
大方、昇降機を利用する順番で揉めたのだろう。
最も小柄で幼い彼女が、その煽りを受け落下と言う災難を被った。
灰の剣士が咄嗟に受け止めていなければ、彼女は十中八九、落下死していた。
どう言う訳か、このロスリックでは死ねば亡者と化し、見境なくソウルを求め生者に襲い掛かるのである。
別段この少女に何の情も抱いてはいないが、余計な犠牲者を生むのは彼とて本意ではない。
後続の冒険者はバツが悪そうに謝罪し、少女を受け取る。
冒険者の荒くれが、自分を頭目に据えろと要求するが、灰の剣士はすんなりと躱す。
横柄な態度が目立つ荒くれの冒険者に、槍使いが憤るが灰の剣士は彼を抑えた。
「ついて来るのは自由だが、自分の身は自分で守ってくれ。此方も人数がかなり多い。これ以上、我が徒党には組み込めぬ」
灰の剣士は彼等にそう告げ、先へと進む事にした。
唯でさえ、二十名を超える集団で行動しているのだ。
後続の冒険者達も徒党を組んでいるらしく、十数名程居た。
これ以上組み込めば、流石に問題が生じる。
あくまで後続の冒険者達とは、別の集団という扱いだ。
「待たせたな、先へ進もう」
待たせていたメンバー達に声を掛け、灰の剣士達は行軍を再開する。
彼の背中を見つめる見習い少女剣士は何か言いたそうだったが、彼はそれに気付く事はなかった。
先へと進んだ一行は、ロスリックの庭広場へと出る。
其処は、ロスリック騎士達と死闘を繰り広げ、調査隊率いる正規騎士とも出会った場所だ。
しかし今の庭広場は、以前とは全く違う様相を醸し出していた。
以前の光景を覚えているだけに、面々は庭広場を見回している。
「……これはどういう事だ?」
灰の剣士は、眼前に広がる異変に困惑を隠せない。
何度もロスリックを繰り返した過去を持つ彼は、特に顕著だ。
「殆ど崩壊している」
「以前とは全く違いますね。何が起きたんでしょう?」
女騎士と少女巫術士も、同様に驚いていた。
ロスリック城へと続く祭儀場の入り口は無残に破壊され、その周辺は瓦礫が散乱していた。
激しい争いが繰り広げられたのだろうか。
広場の
完全に絶命している様だ。
再び起き上がり、襲い掛かって来る事はないだろう。
「あの頑丈そうな建物をここ迄破壊するとは……一体何者でしょう?」
「私は初見ですが、断面を見る限り巨大な物理的な力が作用したと考えます」
「まるで巨人の仕業にも見えますね」
禿頭僧侶に獣人魔術師が見解を述べ、男神官が”巨人では?”と推察する。
「その事について、幾らかの情報を入手している」
其処へ正規騎士が情報を提示した。
拠点街からも確認できる程の人影だ。
間違い無く、只人の大きさではない。
巨人族の代表格は、トロルやオーガと云った類の怪物だが、明らかに規格外の大きさを誇っていた。
それも集団で、ロスリック城へと向かっていたのだ。
近くで確認できた者は居なかったが、拠点街には多くの学士も所属している。
彼等は皆挙って、人影の集団を巨人と断言していた。
「成程な、複数の巨人を以てすれば、この祭儀場を破壊する事も不可能ではない」
灰の剣士は祭儀場の破壊具合を検分し、巨人の足跡らしき痕跡を幾つも発見した。
「そう言えば、この建物の中にはヤバい
同期戦士は、過去の記憶を呼び起こしていた。
そう――。
この祭儀場には『冷たい谷の踊り子』が徘徊していたのである。
幸か不幸か、入り口の扉は固く閉ざされていたが故に、あの異形と戦う事はなかった。
しかし、無残に破壊された今の祭儀場――。
間違い無く『冷たい谷の踊り子』は、自由に徘徊している筈だ。
だが、幾ら意識を集中しても彼女のソウルは感知できなかった。
「何が居たのかは知らんが、その巨人とやらが連れ去ったのではないか?」
以外にもゴブリンスレイヤーが口を開く。
「……かも知れんな。何処へ連れ去ったのかは、判断出来かねるが」
冷たい谷の踊り子が何処へ連れ去られたのか?
灰の剣士は、様々な心当たりを探ってみるが、直ぐにそれは無駄な思案だと悟る。
今は小鬼禍を引き起こした原因を突き止める為に、此処へ訪れた。
冷たい谷の踊り子の所在も気にはなるが、今は後回しにすべきだろう。
灰の剣士は思考を振り切り、踵を返す。
「奥には、梯子が見えるな。あそこから城に侵入できるのか?」
鉱人の少女斥候は、崩壊した祭儀場の奥に在る梯子に目が行った。
「……間違っても侵入しようとは思わない事だ。此処よりも遥かに強力な連中が、
灰の剣士は、彼女に忠告しておく。
まさか興味本位で侵入する事など在り得ないだろうが、ロスリック城は此処よりも本格的に難易度が跳ね上がる、言わば敵本陣と言ってもいい。
ロスリックの騎士一人にしても、高壁の騎士とは比較にならない戦闘力を誇る。
今の実力で挑もうものなら、この集団は間違い無く壊滅する。
それ程までに、危険な場所なのだ。
その分得られるモノも多いだろうが、彼等四方世界の住人にとって需要があるかどうかは、正直疑わしい。
「時間を食ってしまったな。不死街へと急ごう」
灰の剣士は、皆を引き連れ逆方向へと歩き出す。
「此処であの『冷たい谷のボルド』と出会ったんだよね」
「もう二度と見たくないよ」
半森人の少女野伏が、ボルドの広間に辿り着いたのを機に『冷たいボルド』について口に出し、幼い少年斥候はウンザリとした顔で応えた。
彼等にとっては忘れようも無い、ロスリックの異形だ。
最初の戦闘中どう言う訳かボルドは逃げ出し、ロスリックから外へと脱出を図ったのである。
その後金鉱山で発見されるも、多くの冒険者が犠牲となった、曰く付きの異形だった。
「『冷たい谷のボルド』かぁ、アタシも見てみたかったなぁ」
「やめてくれ!思い出したくもないわい!」
銀髪武闘家はボルド戦後に冒険者と成った為、直接は目にしていない。
従って興味を持つのも致し方の無い事と言えるが、鉱人斧戦士が不快そうな顔で反応する。
多くの面々は、あの凄まじい戦いを思い出しながら、ボルドの広間を抜け出た。
そして一行は、不死街へと続くあの絶景を、再び目にした。
眼前に広がり並び立つ建造群――。
昇り始めた朝日に照らされ、その輪郭は淡い光を帯びる。
これから向かう先は『不死街』と呼ばれる場所だ。
名前からして、如何にも死と腐臭が漂う所である事は、容易に想像が付く。
しかし、朝日に彩られた不死街は何とも言いようのない光を放ち、幻想的な異世界を演出していた。
前回は、此処で探索を切り上げた一行――。
「いよいよこっからが本番か」
重戦士が、不死街へと続く細い進入路へ視線を向けた。
本来なら此処は道が閉ざされ、断崖絶壁に阻まれていた場所だ。
『ロスリックの小環旗』を掲げる事で、デーモンの運び手達が不死街へと
土手を丘状に盛ったかのような、辛うじて道の体を保っているか細い道だ。
だが、見た目以上に頑丈なのか、数十人が渡っても崩壊する事はない。
そういう意味では、何の懸念もいらないだろう。
「……」
灰の剣士は眼下に広がる街並みの中に黒い塔を発見し、其処へと目をやっていた。
暗黒の塔――。
嘗て、孤電の術士と呼ばれた学士とゴブリンスレイヤーを伴って暗黒の塔へと挑んだ。
苦しくも激しい戦いの連続ではあったが、彼等は見事苦難を乗り越え、孤電の術士は悲願を果たした。
ふと視線を移せば、ゴブリンスレイヤーも暗黒の塔へと首を向けている。
だが、何時までも感傷に浸っている場合ではない。
孤電の術士は目的を達成し、あの冒険には区切りを付けたのだ。
「皆、この道は思いの外狭く、横風も強い。バランスを崩し崖に落とされぬよう、細心の注意を払え。落ちたら先ず助からんぞ!」
気持ちを切り替え、灰の剣士は他のメンバーに呼び掛け、不死街を目指す事となった。
「もう少し、この景色を楽しみたかったんだけど、仕方ないよね」
「私達は、物見遊山で此処に来た訳でもありません。先を急ぎましょう」
銀髪武闘家と半森人の軽戦士は、絶景を少し惜しみながらも同意し、一行は隊列を組み直し進入路へと足を踏み入れる。
幸い、進入路に陣取る敵は居なかったが、横風が予想以上に強く体格に劣る女性陣は何度も煽られ、道から落下しそうになる。
「や、いやぁっ!落ちるっ!」
「俺に捕まれ!離すなよ!」
少女巫術士が横風でバランスを崩し、少年斥候が即座に反応して彼女を支える。
「ねぇ、あんまり下着見られると困るんだけど……」
「アホ言っとらんで早よ進まんかい!お前さんの下着なんぞに興味は無いわい」
半森人の少女野伏は横風にスカートが捲れ上がり下着が露出していた。
ある程度覚悟はしていたものの、やはり衆目に晒され顔を紅潮させながら、歩みが遅くなっている。
鉱人の斧戦士は業を煮やし、そんな彼女を叱責し先へと急かした。
「アタシは見られても、全然気にならないけどなぁ」
「――貴方と一緒にしないで!」
女としての意識が低いのか銀髪武闘家は
「……しっかりついて来いよ。調査隊の人達が困ってるだろ」
同期戦士は、そんなやり取りを尻目に軽く溜息を吐いていた。
そんな他愛のないトラブルが発生したものの、全員無事に進入路を渡り終える。
「……こりゃまた、デッカイ主門だぜ」
進入路を渡り終え、眼下に広がる巨大な門が皆の目に嫌でも映る。
同期戦士は、そんな巨大な主門に視線が釘付けになっていた。
「全方位に気を配れ!この階段を下り、あの城門まで向かうが、脇には亡者がぶら下がって待ち構えているぞ!」
灰の剣士は、僅かなソウルを感知し階段の脇にぶら下がっている亡者を察知した。
「うぉっ!ホントだ、油断も隙もありゃしねぇ!」
鉱人の少女斥候は、彼の言葉を頼りに伏せの態勢で脇を覗き込んだ。
すると、その言葉通りに亡者がぶら下がりながら、ジッとしているではないか。
「これは飛び道具持ちの出番かな」
「だったら、私達が適任だね!」
「我々も、加勢しましょう!」
このまま飛び道具で亡者を落とせば、余計な戦闘も消耗も避けられる。
ダートガンを持つ森人僧侶、弓を所持している少女野伏と調査隊の兵士達が、事に当たった。
ぶら下がり状態の亡者には回避する術など持たず、次々と矢の餌食となり落下死し絶命する。
「ふむ、樫の木で造ったボルト…やはり亡者に効果てきめんだな!」
森人僧侶は、ロスリックへ侵入する前に得ていた情報で、亡者が蔓延っている事は把握していた。
聖木と呼ばれる『樫』の木は、アンデッドの類に効果が高い。
ならば、ロスリックの亡者にも効くのではないかという結論に達し、一党のメンバー等と相談し用意していた。
「持って来て正解だったね。数はまだまだ有るから余裕だよ!」
無論、少女野伏も樫の木で拵えた矢を所持している。
常に森と共に在る森人ならではの発想か――。
調査兵達は、通常の鉄矢だったが精鋭と称されるだけあり、寸分の狂いなく初弾で命中させ亡者を落下死させていた。
彼等の活躍で亡者の待ち伏せを乗り切り、一行は巨大な主門の前まで辿り着く。
「随分と頑丈そうな門じゃあ…」
巨大な巻き上げ式の門を見上げる、鉱人斧戦士。
ロスリック城へと続くであろう道を隔てるその門――。
外敵の侵入を阻み、来客を迎える為に拵えられた、巨大な門――。
火が陰り亡者が蔓延った嘗ての時代――。
次元を乗り越え四方世界へと流れ着いた後も、己が役割を果たし続ける。
門の麓には、食い散らかされた遺体が散乱している。
亡者犬に食い殺されたのだろう。
同様に、亡者犬の遺体も転がっていた。
「こいつ等は一体……」
散乱している遺体に目をやる女騎士――。
ギルドからは、冒険者が此処まで到達したという報告は、聞いていない。
過去に、灰の剣士とゴブリンスレイヤーが付近の亡者を一掃していた事も原因の一つだったが、不死街の住民が亡者犬を解き放ち無抵抗な亡者へと
この付近に佇んでいた一部の亡者達――。
彼等は何故か此方に敵意を向けず、一心不乱に不死街へと向かっていた。
そんな彼等に対し、不死街の住人は情け容赦無く亡者犬を放っていた訳だが、彼等との間に何が有ったのだろう。
基本亡者と化した者は、理性や自制心が崩壊しソウルを渇望する存在と成り果てる。
ただそんな彼等でも、生者であった頃に培った知識や技術は行使出来る。
恐らくは、習慣や本能的に染み付いたモノに限定されるであろうが、基本的にそう謂った行動を繰り返す傾向が強い。
「ロスリックから逃げ出そうとしたのかも……そんな感じがします」
少女巫術士も物言わぬ遺体に視線を送り、居た堪れない表情を浮かべていた。
ロスリックは、奴隷制度を採用していたのだろう。
至る所に布袋を被った奴隷達が徘徊していたのを、灰の剣士は覚えていた。
一行の後方には、朽ち果てた馬車が転倒している。
そして付近には、亡者達の遺体――。
彼等は皆一様に、城門に正対したまま果てていた。
最早語る迄も無いだろう。
彼等はロスリックから逃走しようとしていたのだ。
そして彼等は、ロスリックで何をされるのかも理解していたに違いない。
そこで罪人として奴隷にされるのか、若しくは贄として犠牲を強いられるのか――。
灰の剣士は思い出す。
あの時代で行われていたであろう、ロスリックの血の営み――。
その実験台となる為に、彼等が連れて来られたのではないだろうか。
「このレバーが開閉スイッチみたいですね」
男神官は、開閉レバーを見ている。
「ああ、やってくれ」
灰は、彼にレバーを引かせた。
男神官が力を込めレバーを引くと、歯車が動き出し連動した他の歯車が鎖を巻き上げ、巨大で重厚な主門が上方へと昇ってゆく。
「よっしゃ!ここから新たな領域だな!」
重戦士が大剣を振り翳し、気合をみなぎらせる。
彼に釣られ、他の面々も自身に奮起を施した。
「全員、よく聞いてほしい!ここから先は不死街の住民達が主な敵となる。彼等の一人一人の質は決して優れているものではない。しかし、彼等は住民間で培った連携を駆使し、我々を全力排除してくるだろう。それに伴い、悍ましい光景を何度も目にするようになる。今まで以上に死と腐臭が蠢く、慎ましくも冒涜的な領域……その入り口に漸く到達したと言っていい!此処からでも見えると思うが、民家には待ち伏せや潜伏、奇襲に打って付けな条件が揃い、地の利は敵側にあると言っても過言ではない。脅している様だが同時にこれは事実だ、各自留意しておいてくれ!」
灰の剣士はメンバー達に警告する。
此処は、ロスリック――。
故郷の流れ着く地とも言われているが、同時にあらゆる呪いが流れ着く場所でもあるのだ。
火が陰りを見せ、その呪いは加速度的に蔓延した。
ロスリック城下街に住む住人達は、知識と技術を総動員して呪いへと対抗した。
何時しか彼等自身も不死となり、亡者と化し、理念も人格も喪失する。
だが、彼等は呪われたこの故郷を守る為に、今日も徘徊しているのだ。
これより先……一行は目に焼き付けるだろう――。
住人達の業を――。
目的を果たす為に、何を行って来たのかを――。
住人達が生んだ狂気の産物を――。
嫌でも目にし、その身に、その心に、焼き付けるだろう――。
かの時代の残滓を――。
この街は、流れ着いたあらゆる呪いを受け入れ、且つ対抗した彼等の聖地――。
冒険者達よ。
ようこそ。
呪いの流れ着く地。
デエェェ ―― 不死街 ―― ェェェエン
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ロスリックの拠点街
故郷の流れ着く地ロスリック。
巨大地震と共に突如として顕れた、正体不明の巨大遺跡。
数多くの冒険者の為に、建造された拠点となる街である。
ロスリックが現れた当初は、王都派遣の調査隊がベースキャンプとして使っていた地。
其処へ逐次増築が行われ、次第に街に迄発展した。
冒険者用に必要な施設は一通り用意され、疲れ切った彼等を癒す為の娯楽にも力を入れている。
難度の高い遺跡には、当然実力者が集い、それに比例するかのように荒くれ者も多く集う。
また、冒険者以外にも多くの一般人や学士、技術者なども訪れ、彼等を守るためにも治安維持には
余念がない。
昔から存在している城塞都市の『黄金の騎士亭』を参考に、この拠点街は今後も発展を続けていくだろう。
今回は、不死街到達までです。
活動報告にも書きましたが、ロスリックの内容はとにかく書く事が多過ぎて、取捨選択が困難です。(まぁ、唯の愚痴ですが……)♪~( ̄ε ̄;)
如何だだったでしょうか。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
デハマタ。( ゚∀゚)/