ゴブリンスレイヤー ―灰の剣士―   作:カズヨシ0509

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 どーもです。

少し時間が掛かりましたが、今回は2話分(一つはオマケ話)投稿致します。

相変わらず文の長さが一定しません。

私は対人戦が苦手で、大抵は負けます。( ̄△ ̄;)

つか、皆強過ぎや……!( ̄ω ̄;)


第61話―ロスリックのゴブリンハザード5(不死街 狂った闇霊 聖騎士フォドリック)―

 

 

 

 

フランベルジェ

 

 波打つような刀身を持った大剣

 

 炎を模したという独特な刃は

 皮膚を複雑に切り裂くための工夫であり

 敵に出血を強いる。

 

 戦技は「構え」

 構えからの通常攻撃で、盾受けを下から崩し

 強攻撃で踏み込みからのかち上げ突きと

 状況に応じ使い分けられる。

 

 聖なる騎士は、今日も繰り返す。

 そこに温もりが在る。

 その温もりこそが、家族の寄る辺なのだ。

 

 小鬼はほくそ笑む。

 馬鹿な奴等だと。

 女を前に出せば、どいつもこいつも攻撃して来なくなるのだと。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 其を包みしは、赤黒きソウル。

 

個々の武器を携え、いざ刈り取らん。

 

目指すは、枷となりし椎骨。

 

枷は容を保つ。

 

枷無くして人たり得ぬのだ。

 

人は容易に変貌する。

 

それは神々の恐れし可能性。

 

可能性の存在。

 

存在の可能性。

 

捧げるのだ。

 

祭壇へ。

 

犠牲を強いよ。

 

其処に温もりが在る。

 

家族の温もりが。

 

積み上げよ。

 

枷の椎骨を。

 

積み上げ続けよ。

 

枷こそが人を保つ。

 

しかし終焉は訪れる。

 

たとえ、聖なる偉業であろうとも。

 

だがそれで良い。

 

最後は我等が犠牲となろう。

 

我等『積む者』が。

 

 

 

――嫌なタイミングで来てくれる…全く…!

 

赤黒いソウルを纏いながらゆっくりと此方に歩み寄る、3体の侵入者達。

 

下男亡者への突撃を中断し、出鼻を挫かれた形となる。

 

「何だアイツ等?」

 

「何者か知っているのか、灰の剣士?」

 

 同期戦士と女騎士は、初めて目にする侵入者について尋ねる。

 

「……闇霊」

 

 彼は呼び名だけを口にした。

 

闇霊。

 

他者の世界へ霊体として侵入し、目的を遂行する存在だ。

 

霊体でありながら半ば実体化し、殺す事も殺される事も可能な奇妙な存在だ。

 

侵入者の中でも特に悪意を以て、侵入先の住人に不幸を(もたら)すのが彼等『闇霊』だ。

 

今回は複数同時に侵入して来たようだが、中央の騎士には見覚えがある。

 

―― 聖騎士フォドリック ――

 

元々は『薄暮の国』に属する聖騎士である。

 

老齢の男性だが非常に高い実力を有するが、闇霊として他者の世界に侵入し、殺した相手から椎骨を抉り出し祭壇へと捧げる、精神異常者だ。

 

闇霊は、総じて精神異常者でもあるが、彼は取り分け狂気に支配され、剰え(あまつさ)えそれを自覚すらしている。

 

故に、彼は『狂った聖騎士フォドリック』とも呼ばれている。

 

それを証明するかの如く、他の闇霊とは違い彼のソウルだけは、暗い紫色を帯びている。

 

彼の目的は既に判明している。

 

殺した相手の椎骨を手に入れる事だ。

 

『積む者』としての――。

 

「アイツ、聖騎士なのか?!」

 

 女騎士はフォドリックの職業を耳にし、驚愕しながらも灰に聞き返した。

 

「そうだ」

 

 彼は是と答える。

 

その言葉に女騎士は、無言でフォドリック(狂った闇霊)を睨み付ける。

 

「済まんが、この男は私にやらせてくれ…!」

 

 下男亡者を標的としていたが、この闇霊に狙いを変える。

 

「……分かった」

 

 彼女の主張に反対せず、その意思を汲む事にした。

 

聖騎士を志望している彼女――。

 

今は冒険者の身分だが、将来は民を守護し邪悪を討つ聖なる騎士を夢見ていた。

 

それだけに看過出来なかったのだ。

 

灰の剣士の言う事が真実なら、聖騎士という身分でありながら無関係の人間に剣を突き立て、それに飽き足らず体の一部を抜き取ると言う残虐極まりない行為。

 

眼前の闇霊にどの様な思惑があるのかは、想像も付かない。

 

やっている事は、正しく邪教徒そのもの――。

 

闇霊で侵入という技術と仕組みは、彼女にとっては無知だ。

 

しかし、他者の世界に無断で侵入した挙句、悪意と災いを(もたら)す時点で外道の成す堕ちた存在である。

 

彼女にとって『斬る』に値するのだ。

 

「気を付けろ。あの男は、剣術だけでなくパリィングの名手でもあり、私と同じ『呪術の火』を得意とする。私よりも遥かに高位の術を自在に操れる強敵だ!」

 

 灰の剣士は、フォドリックの特徴を簡潔にだが彼女に伝える。

 

嘗てフォドリックに侵入され、隙を見計らい反撃を試みたが、それは巧妙な誘いであった。

 

反撃を見事に合わされ、盾で弾かれた。

 

そして生じた隙目掛けて、大剣による致命の一撃を叩き込まれ、何度も敗北した経験が有る。

 

何度も挑む内に癖を見極め、辛くも勝利を収める事に成功したが、フォドリックが指折りの実力者である事は、疑いようがない。

 

「……わかった。もし、そちらが早く片付いたら援護してくれ!」

 

 彼の説明に彼女は頷き、フォドリックの前へと陣取った。

 

「さて、問題は両脇を固める2体の闇霊なのだが……見覚えが無いな?」

 

 何度もロスリックを周回(ループ)した灰の剣士だが、フォドリックの両脇を固める闇霊の存在など今回が初めてだ。

 

一体何者だろうか?

 

「他の闇霊は私達が相手をします!」

 

 後方から前へと出て来たのは、半森人の軽戦士と調査隊隊長の正規騎士である。

 

「中央のフォドリックとやらは知らんが、脇二人の装備品は知っておる」

 

 正規騎士には、他2体の闇霊に見覚えがあった。

 

正確には彼等が纏う装備品にだが。

 

他の闇霊が纏う鎧は、王都所属の騎士団の鎧一式だった。

 

東西南北、其々を守護する騎士団には担当地方によって差異が見られるものの、概ね共通している。

 

「北方担当に東方担当が一人ずつ…、邪教徒にでも組したか?」

 

 彼の言葉によれば、東と北に所属している騎士だと言う。

 

鎧の装飾は少なく、正規騎士に比べ下の階級らしい。

 

――四方世界側の住人か…道理で見覚えが無い訳だ。

 

正規騎士の説明を聞き、灰の剣士は納得する。

 

しかし、端から見れば狂人の行動そのものと言える、積む者。

 

どの様な理由で誘惑に乗ったのかは定かではないが、灰とっては理解に苦しむ。

 

遠方で徘徊していた下男亡者も闇霊と冒険者の存在に気付き、大鉈を振り翳しながら此方へと迫った。

 

「私達二人であの亡者を片付ける。戦力の半減している今、早期に仕留める必要がある。極力急所を狙ってくれ!」

 

「…よし、やってやる!」

 

 灰の剣士は同期戦士に声を掛け、彼は些かの不安を抱えながらも力強く頷いた。

 

「頼むぞ、俺達は動けねぇっ!お前等が頼りなんだからな!」

 

「えんご、い、る?」

 

 槍使いと魔女が、灰の剣士に声を投げ掛けるも――。

 

「――駄目だ!『亡者の穴倉』まで温存しておいてくれ!更なる困難が待ち構えている!」

 

 彼は魔女の提案を即座に却下し、程無くして戦闘が開始された。 

 

(推奨BGM BERSERK OST ― New Horizons)

 

「……」

 

 女騎士はフォドリックを真正面から見据え、中盾を前面に長剣を腰だめに構え、慎重に間合いを図る。

 

見る限り、フォドリックは大剣の『フランベルジェ』と称される武器を装備している。

 

女騎士は過去、その剣について聞かされた事があった。

 

刀身を波立たせた独特の形状は、皮膚を複雑に斬り裂き出血を強いる役割があるのだという。

 

元々大剣は腕力に物言わせ、重量と長いリーチで半ば叩き潰しながら切るという意味合いが強い。

 

しかしこの大剣は、斬り裂くという特殊な形状をしている。

 

――長い刀身は接近戦には不向き。ならば一気に踏み込み決着を付ける!

 

相手は大剣、此方は長剣。

 

接近戦の有利を悟った彼女は、盾を前面に疾走する。

 

彼女が得意とする、盾突撃(シールドチャージ)だ。

 

対するフォドリックは、悠然と立ったまま両手構えへと移行し、彼女に備える。

 

――今更遅い、私が有利だ!

 

女騎士は更に加速し、彼の大剣を受け切った上での盾突撃(シールドチャージ)を仕掛ける。

 

実際、彼女の戦術は間違っていない。

 

相手が()()()()()()()()になら。

 

彼女は知らない。

 

火継ぎ時代(ダークソウル)の不死人達の身体能力を。

 

ソウルの恩恵を受け入れた彼等の実力を。

 

彼もまた、灰の剣士と同じ側の人間であると言う事実を、完全に失念していたのだ。

 

フォドリックは瞬時に踏み込み、両手持ちの大剣を袈裟懸けに振り抜いた。

 

――っ?!速い?!

 

つい先程まで、悠然と構えていたとは思えぬ程の、驚異的な速さで大剣を振り下ろした。

 

余りの速さに彼女は盾を合わせる事も出来なかったが、フォドリックの攻撃は彼女の盾に直撃する。

 

――しかし。

 

「――っぐぁっ?!」

 

 盾受けの瞬間、腕に圧し掛かる様な鈍痛と針を刺すような激痛が、同時に襲い掛かった。

 

彼女は悟る。

 

今の一撃で、盾側の腕の骨に亀裂が入った事を。

 

上腕二頭筋と肩部の関節部に亀裂が入り、その痛みに耐え切れず腕をダラリと下げてしまった。

 

その時点で、騎士の中盾は彼女の手から離れ、地面へと落ちる。

 

騎士の盾は中央から、グシャリと折れ曲がっている。

 

もう使い物にはならないだろう。

 

そう――。

 

たったの一撃で彼女の防御は崩されたのだ。

 

彼女を苛む激痛が戦意を萎えさせるが、歯を喰いしばり次の動きに備える。

 

敗ける訳にはいかないのだ。

 

重戦士が壊れ、一党の士気が低下し、自ら一騎打ちを望み挑んだ。

 

聖騎士志望として退く事は出来ない。

 

腕を襲う激痛に鞭打ち、彼女は剣を構える。

 

しかし、フォドリックは無情にも次の攻撃に移っていた。

 

大剣を腰だめに構え、大きく振り被りながら一回転切りを彼女に見舞う。

 

――くそぉっ!

 

彼の攻撃力は序盤の一撃で理解している。

 

本心で言えば、もう二度と受けたくはない剣撃だ。

 

しかし大剣でありながら筋力は重戦士以上、速さは軽戦士以上で振るう恐るべきフォドリックの攻撃。

 

残念だが、完全回避は間に合わない。

 

軋む片腕の痛みに耐え、彼女は長剣を両手持ちに切り替えながら、一回転切りを剣で受けた。

 

「――ぅぐぅっ?!」

 

 互いの刃が合わさった瞬間、彼女の片腕は完全に骨折し、その衝撃を(モロ)に受けた。

 

当然衝撃を逃がせよう筈も無く、彼女は無残に吹き飛ばされてしまう。

 

受け身も取れぬまま地面を転がりながらも、何とか剣だけは掴んだままだった。

 

彼女の所持しているのは『ロスリック騎士の長剣』で、上質の武器だ。

 

剣そのものは傷一つ付いていないが、彼女の戦意は萎えつつあった。

 

実質、防御受けからの二撃で彼女は呼吸を乱していた。

 

しかし、此処はロスリック不死街――。

 

無慈悲にも、フォドリックの大剣が彼女の頭上に振り下ろされんとしている。

 

その攻撃に対応出来たのは、正に紙一重のタイミングだった。

 

何とか片手で剣受けを試みるも、当然フォドリックの両手持ちの斬撃を受け切れる訳が無い。

 

余りの剣圧に彼女の剣は叩き落され、もう片方の腕まで骨折してしまった。

 

更にフォドリックの大剣はそこで止まらず、彼女の兜にまで到達する。

 

鈍い金属音が兜を打ち、斬撃は其処で漸く止まった。

 

しかし、その衝撃は彼女の頭部に振動を与え、彼女の意識は朦朧としてしまう。

 

この時点で彼女は完全に戦意を喪失し、戦える状態ではなくなった。

 

「…あ…あぁ…うぁぁ……」

 

 呻き声を漏らし呆然とした瞳で、フォドリックが大剣を振り上げるのを見ていた。

 

いや、正確には見えていただけだ。

 

彼女は自分の置かれている現状すら、認識出来ていない。

 

勝敗は決し、彼女は自力でこれを覆す事は不可能だ。

 

フォドリックの表情が醜く歪む。

 

暗い紫色のソウルに包まれた霊体の状態ではあったが、表情の影で区別はつく。

 

虚ろな目で女騎士はそれを()()()()()

 

「…う…ァ…ぁ…」

 

人間は死ぬ間際、これまで体験した映像が脳裏を(よぎ)るという。

 

それを『走馬灯』と言うらしいが、彼女にはそんな映像が流れて来る事はない。

 

迫るのはフォドリックの大剣、無慈悲で容赦の無い一撃だけだ。

 

彼女の頭上に彼の刃が迫る。

 

――寸前。

 

”ガキィンッ”

 

フォドリックの大剣が、別の刀身に阻まれた。

 

「――WOooo…?!」

 

 闇霊であるフォドリックは話す事は出来ないが、不気味な声を上げ邪魔された方に視線を向けた。

 

「久し振りだな、聖騎士フォドリック……!」

 

 灰の剣士が、割って入っていた。

 

既に下男亡者は同期戦士との共闘で倒されている。

 

援護は紙一重だが間に合った。

 

「大丈夫か?!今後方へ退げてやる!」

 

 同期戦士は女騎士を抱きかかえ、後方の仲間の元へと退避した。

 

灰の剣士と対峙するフォドリック。

 

「Wahaa…!」

 

 フォドリックは不気味な笑い声を発し、武器を構え直した。

 

「……始めようか!」

 

 灰の剣士も打ち刀を鞘に納め、慎重に間合いを測りながら様子を窺う。

 

片や生者と生まれ変わった火の無い灰。

 

片や不死人のまま時代を跨いだ聖騎士。

 

二人は時空を飛び越え、再び刃が交差した。

 

――っ!相変わらずの剣圧!()()()()で牧場のダークレイス並みか!

 

フランベルジェの一撃を打ち刀で受け止めるが、大剣と不死人特有の筋力で上乗せされた一撃。

 

刃を合わせた瞬間、腕の骨が軋んだ。

 

女騎士の腕が圧し折れるのも無理はない。

 

――真面に受け続ければ此方が不利。

 

灰は、鍔迫り合いの態勢を即座に解き、近間からの連続突きを見舞った。

 

軽く浅い連続の刺突攻撃――。

 

フォドリックは手にしていた『黄昏の盾』で、早速パリィングを試みる。

 

しかし浅く軽い刺突攻撃は、弾かれた所で大して軌道を反らす事はなく、すぐさま次の刺突攻撃に移る事が出来た。

 

元から痛痒を与える為の攻撃ではなく、牽制と相手の隙を誘う為の突きだ。

 

フォドリックも灰の思惑に気付いたのか、パリィングを諦め片手構えのまま反撃を開始。

 

横薙ぎの大剣が灰に迫るが、それが彼の()()であった。

 

次の瞬間、フォドリックの大剣が在らぬ方向へと弾かれる。

 

灰の剣士が執った行動は、戦技『居合パリィ』

 

居合切りの勢いを借り、刃に敵の攻撃を弾く技である。

 

彼にとって致命的な隙を曝け出す結果になった。

 

「――そこぉっ!」

 

 その隙を見逃す彼ではない。

 

フォドリックの心臓部目掛け、両手構えで踏み込み突きをお見舞いした。

 

「――WOu…!」

 

 奇妙な呻き声を漏らすフォドリック。

 

確実に痛痒を与えた証拠だ。

 

しかし灰の剣士は、そこで刃を引き抜いた。

 

本来なら致命の一撃を加えた後、前蹴りで相手を引き離すのだが、彼は敢えてそれをしなかった。

 

ここで前蹴りで相手を引き離すのは、同時に間合いを離すという事。

 

つまり相手の距離で戦う恐れがあった。

 

だが、刃を引き抜き瞬時にを鞘へと納める。

 

そして相手の呼吸が整わぬ内に、戦技『居合切り』からの連続斬撃でフォドリックを斬り刻んだ。

 

目にも止まらぬ無数の連撃乱舞――。

 

鎧越しとは言えフォドリックの身体は無残に切り裂かれてゆく。

 

一応、途中からはフォドリック自身も連撃に合わせて対応し始めていたのだが、とてもパリィングどころではなく、フランベルジェと黄昏の盾で防御するのがやっとだった。

 

尤も、今のフォドリックは霊体であり、出血の様子は見られない。

 

このまま戦局は完全に、灰の剣士が主導権を握っていたかに思われた。

 

しかし、フォドリックは徐々にだが彼の連撃乱舞に慣れ始め、時間を追う毎に防御が確実なものとなってゆく。

 

そして最後には彼の斬撃に完全対応し、盾でのパリィングに成功した。

 

”これ以上無い”と言う位の完璧なパリィングだ。

 

「――GWuu…!」

 

 フォドリックはほくそ笑み、報復と言わんばかりに反撃の予備動作に移る。

 

――掛かった!

 

だが、これも灰の想定内。

 

打ち刀を弾かれたと同時に、剣を手放し前へと踏み込んでいた。

 

意表を突かれたフォドリックは大剣で迎撃を試みるが、間合いが近過ぎた。

 

殆どゼロ距離で灰の剣士は突如仰向けに倒れ込み、フォドリックの腹部を蹴り上げながら『巴投げ』で後方へと投げ飛ばす。

 

空中へと放り出されたフォドリック――。

 

そして――。

 

「――今だっ!」

 

 後方に向かって大声で叫んだ。

 

「――オルゥアァッ!!」

 

 間髪入れずに、聞き覚えのある声が周囲に響き渡る。

 

思いもよらぬ灰の『巴投げ』に、フォドリックは空中で無防備な体制のままだ。

 

そして無防備なフォドリックに、重厚な大剣が炸裂した。

 

大上段からの、全力攻撃にフォドリックの霊体は、空中に浮いたまま消滅する。

 

フォドリックに止めを刺した人物……。

 

 

 

それは、重戦士だった。

 

 

 

ソウルの流れで彼が意識を取り戻した事は分かっていた。

 

そして剣を構え、加勢しようとしていた事も含めて。

 

彼の性格上、敵の隙を生めば攻撃を加えるだろうと予想していたが、此処まで上手くいくとは思っていなかった。

 

もし思惑が違えば、その時は間髪れずに自分が止めを刺し行くだけだったが…。

 

 

 

フォドリックが倒された、ほぼ同じ時間帯――。

 

他の闇霊も始末されていた。

 

正規騎士は単騎でも、ロスリック親衛隊騎士に持ち堪える事が出来るほどの実力が有り、闇霊とは言え四方世界の下級騎士に後れを取る事はない。

 

一方軽戦士側は苦戦こそしたものの、同期戦士の加勢により共同で闇霊を討ち取っていた。

 

こうして『狂った闇霊 聖騎士フォドリック』を撃退し、『ボロ橋のたもと』での戦闘は終わる。

 

 

 

……

 

 

 

「……すまねぇ…、無様なとこ見せちまった……」

 

 申し訳なさ気に謝罪の意を示す重戦士。

 

皆の方へと顔を向けながらも、その視線は何処か泳いでいる。

 

「全くだ!……っと、言いたい所だが。……立ち直ってくれて、本当に良かったよ」

 

 そんな重戦士へ、意外にも女騎士は暖かな言葉を掛けた。

 

「貴方が居なければ、私達の一党は始まりませんからね」

 

 女騎士に続き、軽戦士、少年斥候、少女巫術士も同様の反応を見せる。

 

「お前…、腕の怪我はっ?」

 

 重戦士は突如思い出したかのように女騎士を気遣った。

 

彼女は、狂った闇霊フォドリックの攻撃で両腕を負傷していた。

 

しかし彼女に代わり、灰の剣士がフォドリックとの戦闘中、調査隊の神官により奇跡と上質の水薬(ヒールポーション)により、腕は回復していた。

 

「……まだ少し、痺れはあるが…な……」

 

 彼女は何とか気丈に振舞おうとするものの、先程の勢いは見られない。

 

やはりショックだったのだろう。

 

単身フォドリックに挑む意気込みを見せておきながら、ほぼ一方的に嬲られるという失態を侵してしまった。

 

余りに実力が違い過ぎた。

 

培った戦術が真正面から潰され、『騎士の盾』は防具の役割は果たせない。。

 

それに加え、彼女の鉄兜も使い物にはならなくなった。

 

しかし、頭防具が無ければ彼女はフォドリックの一撃で確実に死んでいた。

 

兜の重要性を改めて再認識されられる。

 

そして、灰の剣士からのダメ押しが、彼女の心に深く刻み込まれていた。

 

 

 

―― あのフォドリックは只の様子見に過ぎず、本気ではない ――

 

 

 

今回のフォドリックは、あれでまだ手心を加えていたと言う。

 

つまり今後遭遇した場合は、更なる強敵として立ちはだかるという事だ。

 

「……悔しいが、今の私で敵う相手ではない……」

 

 女騎士は歯を喰いしばり、悔し気な表情をしていた。

 

更に言えば灰の剣士の戦闘力にも、彼女の悔しさに拍車を掛けている。

 

全く歯が立たなかった相手に、灰の剣士は互角以上に戦っていた。

 

――これが太古の人間の強さか……何時か追い付ける日が来るのだろうか……。

 

彼女の視線は、灰の剣士へと注がれていた。

 

彼女の想いは兎も角、灰の剣士とて最初から強者だった訳ではない。

 

初見では、闇霊のフォドリックには手も足も出ず、何度も殺されたものだ。

 

何度も繰り返し挑み続けては殺され、篝火に戻され、少しづつ相手の癖を学び、漸く勝利を収める事が出来たのだ。

 

もし、灰の剣士が四方世界側の住人であれば、成す術も無く今回のフォドリックに殺されていただろう。

 

元々彼の素性は『持たざる者』と呼ばれる、奴隷身分の存在。

 

戦士としての素養に恵まれている訳ではない。

 

もし同じ条件で競った場合、女騎士の方が遥かな高みに上り詰める事が出来ただろう。

 

「皆、動けるな。この先に在る『白木地点』を抜ければ、小さな民家が在る筈だ。其処で一息入れるとしよう。もう直ぐだ、堪えてくれ!」

 

 灰の剣士は皆を励まし、次の地点へと前進を開始する。

 

 

 

……

 

 

 

朽ちた石造りの二柱を潜った先――。

 

眼前には異様な光景が広がっていた。

 

丸太の様な金属製の杭が、地面や壁面に突き刺さっていたのだ。

 

しかも一本や二本ではなく、辺り一面に同じ方向に突き刺さっている。

 

「……これ等が、巨人の放った矢か……」

 

 女騎士は、額に汗を滲ませながら周囲を一望する。

 

彼女は未だに前衛、即ち灰の剣士の傍らに陣取っていた。

 

戦線復帰したとは言え、重戦士はまだ本調子ではない。

 

些かに不安と衝動に苛まれ、前衛を務めるには不安が残っていた。

 

「全ての矢が同じ方角で突き刺さっている。特定の方角から射られた証拠ですね」

 

「巨人の射手が存在したってのも頷けるぜ……」

 

 獣人魔術師と槍使いも、巨人の矢に視線が釘付けとなっていた。

 

巨人の射た矢は、地面に突き刺さり宛ら鉄柱の様に佇んでいる。

 

もし事情の知らない者からすれば、それは奇妙なオブジェにしか見えない事だろう。

 

既に件の民家は見えている。

 

一行は更に進み民家を目指した。

 

道中数人の亡者に襲われたが、何度も見慣れた不死街の住人であり、灰の剣士を筆頭に同期戦士と女騎士が駆逐する。

 

そして民家に辿り着くのだが数人の亡者が農具を構え、灰の剣士達を威嚇していた。

 

「……仕掛けて来ませんね?」

 

 男神官が不信感を露にする。

 

これまでの亡者は、侵入者と見るや問答無用で襲い掛かって来たが、この亡者達は威嚇し警戒するだけで攻撃を仕掛けて来る様子はない。

 

「何なんだ、コイツ等?」

 

「…私が行こう」

 

 疑念を抱く同期戦士。

 

灰の剣士は、前へと歩み出る。

 

少々様子は怪しいが、亡者なら斬るだけだ。

 

慎重に近付きつつ、何時でも抜刀出来る態勢で警戒する。

 

しかし……。

 

「デてゆケ……」

 

「?!」

 

 空耳だろうか?

 

今確かに聞き取れた、人の言葉。

 

「出テユけ……!」

 

「……喋ったぞ…!」

 

 同期戦士が驚きの声を上げた。

 

どうやら空耳でも聞き間違いでもない。

 

自分以外も皆、同じ反応を示している。

 

「故郷ヲ汚スな、出て行ケっ!」

 

 明らかに眼前の亡者達が喋っているのだ。

 

此方にも認識出来る人の言葉で。

 

「亡者が喋れるとはな……」

 

 女騎士の言う通り、民家を守るように威嚇する複数の亡者が、此方に向け威嚇と退去を要求している。

 

あの時代、亡者でありながら言葉を話す個体も僅かだが存在していた。

 

とは言え大半は正気を失い、真面な会話もままならなかったが…。

 

しかし、この時代この不死街で、人語で話す亡者など誰一人として存在しなかった筈だ。

 

況してやこの民家の亡者は皆、問答無用で襲い掛かって来たのだから。

 

「此処は、俺達ノ故郷ダ!アイツ等にモお前たチにも、汚さレて堪ルか…!」

 

 この亡者達は、あの民家に居た連中だ。

 

各々が農具を持ち、威嚇している。

 

「……」

 

 軽く息を吐いた灰の剣士は、鞘を手から離し打ち刀を地面へと置いた。

 

「お、おい止せ!危ないぞっ!」

 

 槍使いが叫ぶが灰は構わず、前へと一歩踏み込んだ。

 

「私達は『亡者の穴倉』に巣食う連中を討ちに来た。だが道中、我々もかなり疲弊している。少しの間でいい、貴公の民家で休ませてくれないか?……用が済めば直ぐにでも出て行こう。どうか頼む……!」

 

 彼は事情を説明し、深い一礼で返事を待つ。

 

「……」

 

 亡者は押し黙り、お互い顔を見合わせ困惑している様だ。

 

多少警戒している様だが、やはり襲って来る気配はなさそうだ。

 

「……」

 

 皆も息を呑み、事の顛末(てんまつ)を注視している。

 

そして……。

 

亡者達は不意に此方へと近付いて来た。

 

「……」

 

 灰は一瞬身構え、他のメンバー達も襲撃に備える。

 

しかし亡者の手にしている農具は、此方に向ける事も無く、唯歩いているに過ぎなかった。

 

――……何かが違う……。

 

亡者達は彼等の横をすり抜け、ボロ橋のたもとの方へと立ち去ってしまった。

 

「……好キに使エ…!俺達が出テユく…!」

 

 去り際に、そんな言葉を残しながら。

 

「……」

 

 そんな亡者の反応に、彼等は茫然と見送る事しか出来ないでいた。

 

「……なんか…ワリィ事しちまったか?」

 

 後方に陣取っていた重戦士が、やるせない表情で亡者の背中を見送っている。

 

「よもや話が通じるとは思わなかった」

 

 流石に灰の剣士も、これには当惑していた。

 

以前ロスリックの高壁にて遭遇した、最初のロスリック騎士――。

 

あの当時、女騎士が一騎打ちを申し込み、相手側も騎士の儀礼で対応した。

 

孤電の術士、ゴブリンスレイヤーとで侵入した時も、暗黒の塔や僅かだが差異が見られた。

 

そしてこの不死街――。

 

ゴブリンスレイヤーの故郷が流れ着き、話が通じた先程の亡者達。

 

――こんな変化は今迄に無かったな。この時代へと流れついた影響か、それとも『二度目の火』が宿った結果か。

 

辟易する程繰り返したロスリックではあったが、味わった事の無い変化に幾許かの好奇心を抱いてしまう。

 

それが不謹慎であったとしても――。

 

 

 

一行は民家へと入り、腰を降ろす。

 

「ふぅ…やれやれ、やっと一息つけるぜ…」

 

 槍使いは担いでいた遺体入りの袋を丁寧にと降ろし、適当な場所へと座る。

 

民家の中は比較的混雑としていたが、囲炉裏には既に火が熾され暖か味に包まれていた。

 

その温もりは、悍ましい不死街には不釣り合いにも思える。

 

「現在の時刻はどうなっている?」

 

「ハッ!まだ正午前ですな」

 

 正規騎士が時間帯を訪ね、部下が現時刻を告げる。

 

早朝に出発し、未だ昼には至っていなかった。

 

拠点街からこの不死街まで、直線距離としてはそう離れてはいない。

 

しかし、予測不能な亡者の襲撃に加え冒涜的な死の腐臭が、彼等の心身を予想以上に損耗させていた。

 

ささやかだが彼等は漸く、安らぎの時を得る事が出来たのである。

 

此処までの探索は皆の足腰に負担を強いていた。

 

油断は出来ないが、緊張を解いた面々はダラリと力を抜く。

 

――本当なら直ぐにでも進軍したいが、皆予想以上に疲弊しているな。数時間の休養は必要か。

 

亡者の穴倉は近い。

 

故に、生者のソウルも数多く感知できる。

 

余り時間を置く事は、敵にとっても利得となりかねないが、彼等に無理強いする事には抵抗を感じていた。

 

一部のメンバー以外、特に目立った外傷はないが予想以上にが精神が疲弊している筈だ。

 

銀髪武闘家は兎も角、唐突に暴走した重戦士。

 

彼も知らず知らずの内に、心を壊していたのだろう。

 

ここいらで十分な休養を取らせ、心身共に少しでも癒して貰わねば、思いの寄らぬ処で心を壊し発狂するメンバーが出ても何ら不思議ではない。

 

万が一、亡者の穴倉で暴走されては堪ったものではないのだ。

 

「……ハれ?ここは…どこ…?」

 

 寝かせていた銀髪武闘家が目を覚ます。

 

寝惚け眼を擦りながら彼女は辺りをキョロキョロと見回した。

 

「お目覚めか」

 

「現在、絶賛休憩中だ。多少は安全だぜ」

 

 灰の剣士と同期戦士が彼女に声を掛ける。

 

「頭目さん?剣士さん?…アタシ何してたんだろ……?」

 

 未だ彼女はボンヤリとしていたが、松明で暴走していた時の記憶は曖昧らしい。

 

「皆お腹が空いたでしょう?」

 

 半森人の少女野伏が、幾つかの糧食取り出し皆に振舞った。

 

「そうでしたね。一安心したら、空腹になってきましたよ。ささ、(わたくし)からも一品どうぞ」

 

 彼女に続くように、禿頭僧侶も糧食を取り出す。

 

「ふっ…みんな現金だな。どれ私からも、振舞わせて頂こう」

 

 表向き呆れ顔ではあったが、女騎士も笑顔で二人に追従した。

 

「おぅし、皆!一品ずつ出し合え!腹ごしらえだ!」

 

 

 

「「「「「さんせ~いっ!!」」」」」

 

 

 

重戦士の方針に各々が賛同し、各自が手持ちの食糧を出し合い或いは交換し合う。

 

休憩は約3時間を予定していた為、簡単な調理をする余裕もあった。

 

囲炉裏に小鍋を置き、野菜や肉を煮込んだ具沢山のスープを煮込む。

 

「っかぁ~!うめぇ!」

 

「腹減ってたんだ、ありがてぇっ!」

 

「美味しいですね、これ」

 

 皆が皆舌鼓を打ち、至福の時を過ごす。

 

主食である具沢山スープの後は、日持ちの良い菓子類やドライフルーツを楽しんだ。

 

「さて、取って置きを披露するとしようかの!」

 

 ふと鉱人の斧戦士が、雑嚢から或る物を取り出した。

 

「オッチャン、何だいソレ?」

 

「まぁ、見とけって!」

 

 鉱人の少女斥候が不思議そうな顔で尋ねる。

 

彼が取り出したのは、紙に包んだ豆類と小型のすり鉢だ。

 

「…随分、香りの良い豆だな?」

 

「おっ?いい反応しとるのう。一番煎じは、お前さんに決定じゃ!」

 

 森人僧侶は、豆類に興味を唆られ鼻腔をくすぐる香りに身を任せていた。

 

斧戦士は豆を粉末状に磨り潰し、紙の上に撒いた。

 

その豆は既に加熱加工された後だろうか。

 

何処と無く焼け焦げた香りもしていた。

 

紙の下に漏斗を置き、それをカップの上に乗せる。

 

その後、漏斗の上から熱湯を注ぎ込むと、黒に近い茶褐色の液体がカップを満たした。

 

「ささっ森人の!香りを楽しんだ後、ゆっくりと啜ってみぃっ!」

 

 出来上がった液体を森人僧侶に勧める斧戦士。

 

「う…うむ…」

 

 初めて見る正体不明の液体に、恐れを抱きつつもカップを受け取り、先ずは香りを愉しむ事にする。

 

「ぉおぉぉ……、これは何とも……深く…香ばしぃ…」

 

 立ち込める湯気を吸い込み、嗅覚を刺激する生まれて初めての香りに、彼は目を閉じ言い様の無い感覚に酔いしれた。

 

彼は森人で、他種族に比べ長い人生を歩んで来た。

 

森人としてはまだまだ若輩者だが、それなりの体験を積み重ねて来たという自負もあった。

 

しかし、この様な香りには出会った事が無い。

 

「良いから早く飲めよっ!」

 

 唐突に鉱人斥候が、横から急かしてきた。

 

「フン!これだから無粋な小娘は困る!同じ鉱人なら、少しは彼を見習ったらどうかね!」

 

 鉱人斥候の横槍に現実へと引き戻され、森人僧侶は不機嫌になりながらもカップを口に付けた。

 

カップから彼の口へと液体が注がれ、口から喉へと流れ込む。

 

「――っ!!」

 

 その刹那!

 

カッと、彼の目が見開かれ、一同は戦々恐々と様子を見守った。

 

「……これは…茶の類か?しかし、抽出した葉の味わいとは何かが違う。この深い味わい…苦味はあるが、豆茶ではこの様な香ばしさは()()う出せん…!……そうかっ!豆の過熱加工が、そうさせるのだなっ!――して、この飲み物は一体…?」

 

 今迄出会った事の無い味わいに感銘を受け、彼は斧戦士に訊ねる。

 

「よぅ聞いてくれた!」

 

 上機嫌となった斧戦士。

 

彼が振舞ったのは、所謂『珈琲(コーヒー)』と称される嗜好飲料である。

 

この珈琲豆は、主に気温の高い地域で栽培され寒冷には弱い。

 

その為、この国では南方辺境で盛んに栽培されている。

 

しかし更に南下した周辺国では、この国とは比較にならない位に流通しており、ほぼ全ての国民に愛飲されている。

(逆に紅茶は、あまり流通していない)

 

収穫した珈琲豆を焙煎加工と呼ばれる熱加工を施し、水や湯で抽出した物を飲む。

 

そしてミルクや砂糖と云った物を加える事で、別の味わいを楽しむ事も出来る。

 

「う~む、これは是非とも王都に流通させねばならぬな」

 

 正規騎士は振舞われた珈琲をゆっくりと味わいながら、王都への流通を画策していた。

 

一応、王都にも有るには有るのだが殆ど認知されておらず、一般国民には知られていない。

 

「すご、く、い、いわこ、れ」

 

「ミルクを入れるのが好きかな、私は」

 

「うぇ…苦い…ちょっと厳しいな俺には…」

 

「ほぅ…悪くない…が、俺はやはり、レモネードだな」

 

 珈琲は皆に振舞われ、十人十色の反応を示す。

 

――ミルクと砂糖を入れれば、かなり甘い味わいだな。どちらかと言えば子供向きだろうか。私はこちらの方が好みだが……。

 

無言ではあったが、灰の剣士も初めて出会う珈琲をじっくりと味わい、心身を癒す。

(ミルクと砂糖入りだが……)

 

各自がゆったりとした時間を過ごし、或る者は談笑、或る者は仮眠を取り、幾許かの安息を得る。

 

それにより消耗した魔法の使用回数も一回分は取り戻せた。

 

「少し外の様子を見て来る。落ちていた道具も回収したいのでな」

 

 灰の剣士は休息を得る面々に告げ、単身道具の回収を進言した。

 

「おいおい、一人で行く気か?」

 

「幾ら暫定の指揮官とは言え、単独行動は感心しないな。せめて誰かを同伴させるべきだ」

 

 同期戦士と女騎士は、彼の方針に難色を示した。

 

せめて誰かを連れて行けと言う。

 

「……そうだな。万が一何かあった場合を想定して、誰かは同行して貰うか」

 

 彼等の言う事も一理ある。

 

灰の剣士と言えども、今のロスリックは余りに変化が激しい。

 

彼とて何時何が起こるか分からない。

 

誰かを連れて行けば、()()起きた場合仲間に伝える事が出来る。

 

「……そうだな……」

 

 誰を連れて行くか。

 

彼は周囲をざっと見廻す。

 

動けそうな者、疲労で寝入っている者、人それぞれだ。

 

「あ…あの、アタシ…アタシ…連れてって下さい!」

 

 そこへ名乗りを挙げたのは、銀髪武闘家だった。

 

「えぇっ…?だ、大丈夫なの?」

 

 少女野伏は彼女を気遣い、不安を示す。

 

「だ、だってぇ、剣士さん一人じゃ心配でしょ。いっつも隙だらけだし。あ、アタシが居れば何とか……」

 

 少女野伏に対し、彼女は何とか弁明した。

 

少々失礼な事を言われたが、灰の剣士はスルーした。

 

「……何を言ってる?君は()()()()()()だろう?」

 

「うぅ……」

 

 同期戦士も少女野伏に続く。

 

今の不安定な精神状態で、銀髪武闘家一人を同行させる訳にはいかない。

 

助けになる処か、却って灰の剣士を危機に陥らせる恐れがある。

 

多少回復している様だが、まだまだ予断を許さない状況だ。

 

「分かった。貴公ともう一人同行して貰うか」

 

 しかし灰の剣士は特に反対する訳でもなく、条件付きで彼女に同行させる事とする。

 

「……良いのか、アンタ?」

 

 同期戦士の懸念に彼は短く頷く。

 

此処から先『亡者の穴倉』には、今迄とは比較にならない脅威が待ち構えているのだ。

 

間違い無く、フォドリックを含めた不死人のソウルも感知出来た。

 

フォドリックが居る以上、此方の存在も感付いている筈だ。

 

充分な迎撃態勢を整えているだろう。

 

ならば良い機会だ。

 

彼女が戦力に足るか否かを、この外出で判断材料にすればいい。

 

()()()なら良し。

 

()()()なら後方に退げ、支援に徹して貰う。

 

どちらにせよ彼女はまだ万全ではない。

 

もう一人連れて行く必要も、また然り。

 

「なら俺が行こう」

 

 そこで名乗りを挙げたのは、ゴブリンスレイヤーである。

 

「頼む」

 

「ああ」

 

 灰は直ぐに承諾し、彼も呼応した。

 

身軽さ、一定の戦闘力、常に考察する胆力、多方面に渡る対応力。

 

彼が同行するなら非常に心強い。

 

その力が小鬼戦で特に発揮されるのだとしても、彼とはそれなりの付き合いだ。

 

見知った彼なら、断る理由は微塵も無い。

 

「しっかし、そんな珍しいモン落ちとったかいの?目ぼしい物と言やぁ、楔石くらいじゃ」

 

 鉱人の斧戦士は、小袋から道中回収した楔石を幾つか見せた。

 

()()()()()は有用な物が幾つか落ちていたのでな。今の内に回収しておきたい。そう時間は取らんさ、皆は今の内に英気を養っておいてくれ」

 

――後続の冒険者達のソウルが消えた?引き返した様にはみえん。何かあったな。

 

彼の目的は道具の回収だけでなく、秘かに後続に続いていた見ず知らずの冒険者達にも向けられていた。

 

何時の間にか彼等のソウルが感じ取れなくなっていたのである。

 

もし単純に引き返したのなら、ソウルが徐々に離れていくので直ぐに判別が付く。

 

自分達も戦闘の有耶無耶で混乱状態にあった為、気が付いた時には彼等のソウルが感知出来なくなっていた。

 

――『ボロ橋のたもと』までは確認しに行くか。

 

「直ぐに戻る」

 

彼は目的地を定め、二人を引き連れ外へと出た。

 

 

 

……

 

 

 

灰の剣士は民家を出た後、小坂を昇る。

 

「うわ…、お墓だらけ……」

 

 道中嫌でも目に付く、多くの墓石に銀髪武闘家は顔を背ける。

 

墓石の周囲には、多くの巨人の矢が突き刺さっていたが、これ以上狙撃される事が無いのは気楽であった。

 

後は、亡者の奇襲に気を付ければ良いだけだ。

 

「こんなの喰らったら、一発で死んじゃうよ……」

 

 話に聞くのと実物を目にするのとでは、認識に雲泥の差が出る。

 

巨大な矢は、彼女に恐れを抱かせるのに十分だった。

 

しかし、この矢は静止している状態の矢だ。

 

実際撃たれ死ねば、彼女は死後即座に亡者と化していただろう。

 

程無くして崩壊し切った家らしき場所に辿り着いた。

 

殆どが崩壊し、壁面の一部が存在するのみだ。

 

朽ちた壁面に凭れ掛かる様に遺体が在る。

 

「…あのぉ…剣士さん?こんな所に何の用があるの?」

 

 彼女は完全に委縮してしまい、小刻みに震えている。

 

しかし、彼女の反応は寧ろ真面であるとも言えよう。

 

そもそも『死』の臭いが立ち込めるロスリックで平静を保てる方が、どうかしている。

 

「先ずはこれを回収だ」

 

 灰の剣士は、遺体が所持していた物を拾い上げた。

 

彼が回収したのは、『聖職者の防具一式』と『青木の盾』だ。

 

「いいの?遺体から剥ぎ取っちゃって。斥候のあの娘もよくやってたけど」

 

「今更お前に必要か?そんな装備」

 

 鉱人の少女斥候は、冒険中よく仕留めた怪物から有用そうな物を回収していたが、斥候でもない銀髪武闘家には理解し難い行動だった。

 

ゴブリンスレイヤーも、灰の剣士が聖職者の装備を欲しがるとは到底思えなかった。

 

「木盾は兎も角、この装備を冒険に生かそうとは思っていない」

 

 彼は、文化資料として西方辺境へと持ち帰るつもりでいた。

 

日頃、神殿には世話になっている。

 

恩義を返す意味も含まれていた。

 

それに『青の木盾』は魔力カット率に優れ、後衛職にも無理なく装備できる。

 

神殿かギルドに納めておけば、今後誰かの役には立つだろう。

 

そう意図しての回収だ。

 

「――剣士さん上っ!」

 

 突如彼女は叫ぶ。

 

「――このぉっ!」

 

 上から降って来たのはロスリックの奴隷だ。

 

回収作業に勤しむ灰の剣士目掛けて、頭上から手斧で襲い掛かって来たのだ。

 

そこへ銀髪武闘家が跳び蹴りで、亡者を拾う様に迎撃――。

 

蹴りで吹き飛ばされた亡者に、ゴブリンスレイヤーが透かさず止めを刺した。

 

「……ちょっと剣士さん…?!不用心過ぎませんっ?!」

 

 ジト目で彼女が睨み付けて来る。

 

「貴公等が付いていてくれるからな。だから安心して回収に専念できる」

 

「……もしかして知ってて回収していたんですか?!」

 

「お陰で助かった、礼を言う」

 

 短い礼を述べた灰の剣士は、次の回収地点へと移動した。

 

「あ、コラ待て!剣士さん?!…んもぅ…!」

 

 尚も抗議を続ける彼女と、無言で追従するゴブリンスレイヤー。

 

「ふぅ…、漸く入手出来たな。これは絶対に必要だったからな」

 

 灰の剣士は或る物を拾い上げ、上機嫌になっている。

 

「……何処からどう見ても、死人の骨にしか見えないんですけど?」

 

「そう、だ」

 

「……」

 

 いともアッサリと答える彼に、銀髪武闘家はぐうの音も出なかった。

 

「ちょっとちょっとちょっとぉっ!何考えてんですかっ?!骨なんて何に使うんです?剣士さんよく神殿に出入りしてますよね?!流石に捕まりますよ!」

 

 声を大にして彼女は叫ぶ。

 

それにしてもよく通る声だ。

 

彼が回収していたのは『不死の遺骨』だ。

 

これを篝火に焚べる事で、火力を上昇させる効果がある。

 

今日まで『亡者の遺骨』や『帰還の骨片』等で、燃料を代用してきたが、薪として役割は些かに不足していた。

 

だが、この遺骨を使えば、より完全に近い篝火を熾す事ができ、エスト瓶の回復力も上がるだろう。

 

それに今後の為にも篝火を完全な(かたち)に近付ける事は、必須とも言えた。

 

どう言う訳か、不死の遺骨は数人分回収する事ができた。

 

彼にとっては喜ばしい事と言えよう。

 

銀髪武闘家は、更に目を細めジト目となっていたが、彼は気にも留めていない。

 

「残念だが、神殿には既に罰を受けていてな。その上で此方の事情も汲んで頂いている。安心して良い、公衆の面前で使う気は毛頭ない」

 

「この骨は、何れ俺達にも益を(もたら)す。お前にも分かる時が来る筈だ」

 

「…フ~ンだっ!」

 

 灰の剣士とゴブリンスレイヤーの論理に、彼女はふくれっ面となり、そっぽを向いた。

 

「……かなり回復しているな」

 

「油断は出来んが、戦闘に支障は無いか…」

 

 そんな彼女の様子に、二人は一先ずの安堵を覚える。

 

休養と食事、嗜好品の効果も影響しているのだろう。

 

多少は情緒不安定だが、少なくとも戦う事は出来そうだ。

 

 

 

「…さっきからうるせーな、あの娘…」

 

「思っていたよりも元気そうで何よりです」

 

「苦労してんな、お前も」

 

因みに、銀髪武闘家の大声は民家にまで届き、同期戦士は何とも言えない表情で苦笑いをしていた。

 

 

 

幾つかの地点を廻り、道具を次々と回収していく灰の剣士。

 

またアイテムの配置も以前に比べ変化しており、苔玉の実や緑化草なども入手する事が出来た。

 

「ほぅ、緑化草か」

 

「何かの野草ですか?」

 

 見覚えがある緑化草にゴブリンスレイヤーは、視線を向ける。

 

以前『暗黒の塔』で、深淵の監視者から手渡された事がある。

 

スタミナ回復を増大させる効果があり、彼にとっては非常に大きな助けとなっていた。

 

尤も、それは花付き緑化草という上位種で、今の緑化草は幾分効果が控えめである事は言うまでもない。

 

強壮の水薬(スタミナポーション)と同じ様な物でしょうか?」

 

 彼女は口元に指を当て、視線を上に向け考え込むような仕草を見せる。

 

「違う。アレはスタミナを前倒しにするような物で、必ずシワ寄せがやって来る。この草は、あくまでスタミナ回復を助ける効果があるのだ。上手く使えば、より長期に活動する事が可能で、ゴブリン退治にも有用に働くだろう」

 

 灰の剣士に変わりゴブリンスレイヤーが解説してくれた。

 

何処と無く熱く語っている様に思えたのは、気の所為だろうか。

 

「多少苦味はあるが、効果は保障する。貴公にも分けよう」

 

「う~ん…、ホントかなぁ……」

 

 受け取った彼女は、緑化草をまじまじと見つめ疑わしい表情をしていた。

 

全部で9束見付かり、一人3束ずつ分け合った。

 

苔玉の実も6個回収に成功し、それも2個ずつ分け合う。

 

その後も道具の回収作業は続き、やがて白木地点へと辿り着いた。

 

「この木だけなんか白いですね」

 

 銀髪武闘家は、白木をジィっと見つめていた。

 

灰の剣士は付近に落ちていた枝を、何本か回収する。

 

「よく見ておくといい」

 

 そういった後、彼は白い枝を使用する。

 

「ぅわっ?!えっ?なになに?!」

 

「これは一体……!」

 

 二人が驚くのも無理はない。

 

灰の剣士の姿は瞬く間に消え、代わりに蓋の付いた壺が現れた。

 

「流石に驚いたか、こういう事も出来る」

 

 壺に擬態した彼はゆっくりと移動する。

 

「「……!」」

 

 その様子に二人は言葉を失い、唖然とした。

 

程無くして彼は元の姿に戻る。

 

彼が使用したのは『幼い白枝』と言い、周囲の相応しい何かに変化する事が出来る。

 

「丁度5本ある」

 

 彼は、ゴブリンスレイヤーと銀髪武闘家に手渡すが。

 

「う~ん、アタシは別に使いませんね。特殊過ぎて……アハハ…」

 

 些か彼女には突拍子過ぎたらしく、遠慮し受け取る事はなかった。

 

「ふむ…擬態か…」

 

 対してゴブリンスレイヤーは受け取り、何かを思案している。

 

これを有効に使えば、小鬼相手に様々な戦術を取る事が出来るだろう。

 

それに彼なら悪用される心配はない。

 

「君には4本渡しておこう、一本はオーベックにでも渡すといい」

 

 銀髪武闘家が受け取りを断ったため、その分を彼に渡す。

 

幼い白枝は魔力を含み、嘗て存在した魔術の国『ウーラシール』に縁が深いと聞く。

 

この道具なら彼も受け取ってくれるだろう。

 

「済まんな、大事に使わせてもらう」

 

 彼も快く受け取った。

 

道具回収はそれからも続行され、不死狩りの護符 決闘の護符 ソウル を始めとした各種道具を入手できた。

 

一応二人にも勧めてはみたが、銀髪武闘家からは”ガラクタにしか見えない”と突っぱねられ、ゴブリンスレイヤーには”もう充分だ”と遠慮されてしまった。

 

まぁ何はともあれ、重要な不死の遺骨や帰還の骨片なども手に入れる事が出来たのだ。

 

今後の『篝火』にも大いに期待が高まる。

 

一通りの回収作業が終わり、三人は『ボロ橋のたもと』へと向かった。

 

「灰よ、あの場所にまだ用でもあるのか?」

 

 ゴブリンスレイヤーが訊ねて来た。

 

灰の剣士は気がかりだった。

 

ロスリック不死街の入り口付近では、確かに後続の冒険者達のソウルを感じ取ってはいた。

 

しかし、流れ着いたゴブリンスレイヤーの故郷から戻って来た時には、全く感知する事が出来なくなっていたのである。

 

何人かは此処へ辿り着き合流できればと考えていたが、一つとしてソウルが感知出来ない。

 

「亡者の恐さは身を以て知りましたから、お気持ちは分かりますけど――」

 

「――!誰か向かって来る!」

 

 銀髪武闘家の言葉を途中で遮り、此方に向かって来る生者のソウルを感じ取る。

 

「――急ぐぞ!」

 

 灰の剣士は突如走り出し、ゴブリンスレイヤーも遅れずに追従する。

 

「ああ待って!置いてかないで下さいよぉっ!」

 

 やや遅れて銀髪武闘家も走り出した。

 

――生者のソウルがたった一つに、亡者のソウルが複数。嫌な予感がする!

 

感知出来るソウルの数と種類に、不吉な予感を覚えながらも『ボロ橋のたもと』へと急ぐ。

 

 

 

 

 

こんな筈じゃなかった。

 

自信があった。

 

同年代の門下生に比べ、腕が立った。

 

自分には剣の才覚が有る事を知った。

 

だから、立ち塞がる脅威は全て剣で切り伏せるという自負があった。

 

それだけで、全て切り抜けられると信じていたのだ。

 

そして挑んだロスリックの遺跡。

 

二人の兄弟子と教導官の一人と共に、この遺跡へと乗り込んだ。

 

周囲には他の冒険者達も大勢居る。

 

恐怖はまるで感じなかった。

 

初の実戦だ。

 

小鬼など相手取るよりも、遥かに意識が高揚する。

 

どんな怪物が待ち構えているのだろう。

 

デーモンか?

 

ドラゴンか?

 

得体の知れない巨人なのか?

 

気持ちが逸った。

 

自分達の先を行く集団が気になる。

 

取り分け外套を纏ったあの剣士は――。

 

聞けば相当腕の立つ剣士らしい。

 

鼻を明かしてやるつもりだった。

 

見るからに弱そうだった。

 

昨晩こっそり後を付けていたが、その背中は正直隙だらけだった。

 

その気はなかったが、何時でも奇襲出来る自信はあった。

 

あの小鬼集団の戦いも、仲間の助力で成し遂げたに違いない。

 

実力などではない筈だ。

 

今まで自分は剣で同年代には負けた事が無い。

 

自分を打ち負かす事が出来るのは、精々が数人居る教導官とお師匠様ぐらいだろう。

 

だから奴等が苦戦している所を加勢して、自分達の方が優れている事を証明してやるのだ。

 

そう意気込んだ。

 

ある時何かが狂った。

 

あの昇降機での出来事だ。

 

外套の剣士の集団は、特に騒ぐ事なく昇降機を使い下へと降りて行った。

 

しかし自分達の集団はどうだ。

 

誰が先に使うだの、順序がどうだの、下らない事で揉めた挙句その煽りを受け、自分が昇降機から押し出され落下した。

 

一瞬何が起こったのかも分からなかった。

 

気が付いた時には背中に強い衝撃を受け、視界にはあの剣士の姿が映っていた。

 

助けてくれたのだ。

 

それが分かった時には、彼の姿はもう無かった。

 

そこからは、何もかも無茶苦茶だ。

 

あの細い絶壁を何とか抜けたまでは、まだ全員が無事だった。

 

しかし、不気味な不死街に足を踏み入れた途端、悍ましい異形が襲い掛かって来た。

 

亡者と呼ばれている類の怪物だ。

 

書物や話には聞いていたが、実際お目に掛るのは初めてだった。

 

全て剣で切り伏せる。

 

そう誓った筈なのに――。

 

その結果が今だ。

 

自分は只々逃げ惑う。

 

もう何が何だか分からなかった。

 

大勢いた冒険者達は、味方を見捨てて放々に逃げ去り、或る者は亡者に殺され、或る者は崖へと落下した。

 

気が付けば、傍に居たのは兄弟子の一人だけだった。

 

正直嫌いな奴だった。

 

事ある毎に、過剰に自慢したり誰かの陰口を叩く不快な男だ。

 

亡者に囲まれた時、その男は私の服を剣で切り裂いた。

 

 

 

少女には、その兄弟子が何をしようとしているのか、理解が及ばなかった。

 

年齢の割に身体は既に女の特徴を孕んでいたが、彼女自身はまだ無自覚で幼過ぎた。

 

今迄剣一筋に打ち込み、他の事など目にもくれなかった。

 

”俺達だけしか居ねぇ!想いと遂げさせろ!”等と口走っていたのは覚えていたが、言葉の意味は全く理解出来ない。

 

ただ、目が血走り口元は吊り上がり涎を垂らしていたのは、はっきりと覚えている。

 

そして少女に掴み掛ろうとした矢先、その兄弟子も亡者に殺された。

 

頭部を大木槌で潰されたのだ。

 

結局、少女は何もする事が出来なかった。

 

剣を抜いたまでは良いが、真面に振るう事も出来ず完全に恐怖で支配されていた。

 

そこからはよく覚えていない。

 

今少女は薄暗い民家の中を逃げ惑っている。

 

背後から複数の亡者が追って来るのが分かった。

 

ただ怖かった。

 

実際彼女がこの場で奮起し、地形を生かせば亡者を駆逐出来るだけの実力を有していたにも拘らず。

 

そんな戦意など、とっくに消え失せていた。

 

明かりが見える。

 

出口が近いのだろう。

 

ああ、出口だ。

 

少しでも光が欲しい。

 

誰か居ないだろうか。

 

誰でもいい。

 

助けて。

 

少女はそんな願いを胸に、民家を出た。

 

誰か居た。

 

しかも何人もだ。

 

彼等は背を向け少しボロイ服装だったが、形振り構っていられなかった。

 

「お、おねがい、です!助けて、助けて下さいぃ…!」

 

 彼等の背中に(すが)り付き、助けを懇願する少女。

 

彼等の反応が無い。

 

聞こえていないのだろうか。

 

そんな筈はない。

 

ない筈だ。

 

「お願いぃっ!助けてぇっ!」

 

 尚も懇願し、少女は懸命に訴えた。

 

「GruAaaa……!」

 

 その瞬間、少女は凍り付き凝視する事しか出来なかった。

 

振り向いた複数の人は、不死街の住人…亡者だった。

 

手には錆び付いた鉈や鋤を持ち、干乾びた顔で此方を睨み付ける。

 

少女の身体は絶望で固まり、思考も真面に働かない。

 

亡者の鉈がゆっくりと振り上がる。

 

いや、ゆっくりと遅く()()()()()だけだ。

 

実際はかなりの速度で振り上げている。

 

人間は死の間際、異様な集中力を発現するという。

 

今、冷静になれば避ける事も容易いだろう。

 

止まって見える。

 

これなら稽古の方が数段速い位だ。

 

しかし、思考も体も動くという選択肢を取らなかった。

 

取れなかった。

 

少女の意識は全て『見る』事に集約されていたからだ。

 

亡者の鉈が少女の顔面に迫り、いよいよ最後の時が訪れ……なかった。

 

亡者の動きは寸前で止まり、彼女に背を向ける。

 

何が起きたのか?

 

錯乱する思考の中、彼女は再び目にした。

 

 

 

 

 

―― 灰の剣士を ――

 

 

 

 

 

結論から言おう。

 

灰の剣士達は亡者集団を瞬く間に殲滅し、少女を救っていた。

 

先程、民家を去った理性ある亡者とは、違っていたようだ。

 

救い出された少女は、灰の剣士にしがみ付き嗚咽を漏らしている。

 

「もう大丈夫だ」

 

 簡素な言葉しか思い浮かばなかったが、何とか彼女を安心させようと試みる。

 

「見たところ貴公一人だが、仲間は?」

 

 大方の予想は付いているが、なるべく状況を知っておきたかった。

 

辛い体験を掘り返すようで気は引けるが、状況把握は重要だ。

 

彼の問いに少女は暫く泣いていたが、やがてポツリポツリと呟くように説明する。

 

不死街の磔広場付近で亡者集団と遭遇した。

 

しかし自信とは裏腹に、いざ戦闘となれば皆好き勝手に動き回り碌な統制も取れず、次々に亡者の餌食となってゆく。

 

四方八方から滅多刺しにされる者。

 

生きたままバラバラにされる者。

 

混乱して逃げ惑い、落下死する者。

 

半数は亡者の犠牲となり、半数は敵前逃亡した挙句、散り散りに逸れてしまった。

 

最早、戦う処ではなかった。

 

生き残ったのは二人の兄弟子と教導官を含めて4人だけ。

 

退路は完全に亡者達に遮断されていた。

 

生き残った4人は、先へと進むように逃走し大きな民家へと侵入する。

 

その民家は灰の剣士達が通ったルートだ。

 

しかし其処でも亡者に遭遇した。

 

最も腕の立つ教導官が奮戦していたが、天井から亡者の奇襲に遭い即死。

 

兄弟子の一人が仇を討ったものの、背後から追い付いた亡者達に殺された。

 

生き残った二人は、半狂乱になりながら民家を脱出。

 

しかし恐怖に支配され、もう一人の兄弟子が何を血迷ったのか『もう俺達だけだ!ここで想いを遂げるぞ!』などと口走り、少女の服を切り裂いた。

 

彼女自身は自分を殺す為に斬ったのだと思い込んでいた。

 

灰の剣士が少女を見た時、胸元の衣服が不自然に切られていたのが気になっていたが、これで合点が行く。

 

その兄弟子は恐怖のあまりタガが外れ、彼女を凌辱しようとしていたのだろう。

 

この少女の胸元は、薄っすらと一筋の切り傷が見られた。

 

一見幼いが、少女の身体は女の特徴が出始めている。

 

その後も彼女の説明は続いた。

 

発狂した兄弟子は涎を垂らしながら何やら喚いていたが、背後から亡者に頭部を潰された。

 

一人取り残された少女は、脇目も振らず地面を這いながらも何とか逃走。

 

後は無我夢中で、気が付けば民家を抜けこの場所まで来ていた。

 

只々助かりたい一心で、民家の外に陣取っていた亡者と生者の区別も付かずに助けを懇願。

 

その亡者達に襲われそうな所を、灰の剣士達が駆け付けたのである。

 

一頻り説明を終えた少女は、再び涙が零れ今度は大声で泣き出した。

 

それでも、この少女の手には剣が握られたままだった。

 

――ほぅ…恐怖に駆られて尚、剣を手放していない。剣も心も未だ折れず…大したものだ。

 

少女の剣を見つめ、彼は彼女の心の強さに感心していた。

 

「心折れずによく頑張った。長居は無用だ、我々の一党と合流しよう」

 

 彼等は踵を返し白木地点の民家を目指す。

 

少女は軽傷だが治療の必要があり、切り裂かれた衣服も何とかする必要がある。

 

一応回収した『聖職者の青衣』で代用する事も考えたが、サイズが大き過ぎるため断念した。

 

合流する迄、彼女には我慢して貰う事にする。

 

「おぉいっ!こっちだっ!」

 

 道中、槍使いと魔女が迎えに来てくれた。

 

「中々戻って来なかったんでな、心配したぜ!」

 

「あ、れ、?その、子……」

 

 魔女は、灰の剣士が抱かえている少女に気が付いた。

 

「後で説明する。先にこの子を休ませたい」

 

「了解だ!亡者は居ないが、一応護衛してやる」

 

 彼等は急いで合流地点を目指す。

 

 

 

……

 

 

 

「そうか…、そんな事が……」

 

 一通りの説明を聞き、正規騎士が溜息を漏らす。

 

後続の冒険者達は、仮にも翠玉~紅玉の経験豊富な実力者だった。

 

しかし、彼等は実力を発揮する事なく亡者の餌食となり、成す術も無く壊滅してしまったのである。

 

出世欲、功名心、虚栄心、承認欲求、物欲。

 

そんなありとあらゆる欲が悪条件で噴出した結果、彼等本来の実力を覆い隠してしまったのだと彼は判断した。

 

どれだけ経験と実力を備えていた処で、その精神が不釣り合いでは何の意味も成さない事を改めて認識させられた。

 

――集団行動では統率力こそが肝要か。この剣士の貴重さが、嫌でも思い知らされる。

 

他の面々に説明を続ける灰の剣士に視線を向ける正規騎士。

 

「う~ん、こんな物しか出来なかったけど」

 

 半森人の少女野伏が、即席の衣服を完成させていた。

 

布切れに頭部用の穴を開けただけの簡素な物だが、圃人の少女巫術士が両脇を縫い合わせ、袖口を追加してくれた。

 

防具としては心許ないが、何とか衣服の代わりにはなるだろう。

 

再出撃まで、あと一時間ほど残っている。

 

今は少女を休ませ、少しでも回復を図る事にした。

 

 

 

……

 

 

 

取り敢えず遺体は、この民家へと一時的に安置する事にし、一行はいよいよ進軍を再開する事にした。

 

後続冒険者の生き残りである、見習い剣士の少女を加え『亡者の穴倉』を目指す。

 

「此処から右に行けば廃教会へと続き、左が今回の目的地だ」

 

 T字路に差し掛かり、一行は左へと進む。

 

「花は綺麗な筈なのに、何だか気持ち悪いですね……」

 

 道中足元には紫色の花が咲いていたが何故か心を癒す事はなく、寧ろその風景は禍々しさに拍車を掛けていた。

 

そんな風景に少女巫術士の顔は悲しげだ。

 

一行は立ち止まり、目の前には大きな扉が閉じられている。

 

見た目にはかなり頑丈そうだ。

 

開くだろうか。

 

「よし、では開けるか」

 

 灰の剣士は扉に手を掛け、力を込める。

 

「儂らも手を貸すで!」

 

「任せな!」

 

 斧戦士と重戦士も加わり、重厚な扉は金属音の掠れる音を奏でながら、ゆっくりと開いた。

 

「――……?!!」

 

 扉が開かれ眼前に広がる光景に、皆は言葉を失った。

 

眼前には巨大な穴が、ぽっかりと口を開け侵入者を待ち構えている。

 

異様に広がる漆黒の暗い穴。

 

その巨大な穴は、暗闇の底へ誘うかのようだ。

 

――最初から、こうなっていたか。

 

灰の剣士が火継ぎの旅を繰り返していた時代は、此処は広場であり穴は開いていなかった。

 

元々は『呪腹の大樹』が鎮座していた場所で、複数の亡者が縋り祈りを捧げていた。

 

「文字通り穴倉だがよ、どうやって進むんだ?」

 

「よく見ろ、坂道が在る」

 

 底無しの穴では、落ちる意外に進む手立てはない。

 

しかし、そんな事をすれば落下死するのは必至だ。

 

進みようが無いと思っていた槍使いだったが、ゴブリンスレイヤーが下へと続く坂道を発見した。

 

――以前には無かったな、こんな道。ご丁寧な事だ。

 

「どうやら歓迎されている様だ。行くとしよう」

 

 呪腹の大樹が暴走し、地面を踏み抜く事で亡者の穴倉へと繋がった以前とは違い、今はスロープ状の坂道が存在していた。

 

灰の剣士に続き一行は慎重に下って行く。

 

下へ降りるにつれ次第に異様な空間が、皆の視界を染め上げた。

 

壁面至る所に積み上げられた、人らしき骨、骨、骨。

 

積む者が捧げた『枷の椎骨』が、積み重ねられているのだ。

 

闇霊として他人の世界に侵入し、時には直接他人を殺し椎骨を抉り取る。

 

そんな凶行の歴史が物語られていた。

 

 

 

『ようこそ冒険者諸君!我等の輝かしい祭壇へ――!』

 

 

 

 黒いローブを纏った一人の術士らしき男が、両腕を広げ不気味な笑みを浮かべながら、仰々しく叫ぶ。

 

しかしよく見れば彼だけではない。

 

彼の後ろには数人の人物が立ち並び、磔にされた大型種の小鬼が存在していた。

 

加えて奥には、あの『呪腹の大樹』が鎮座し、複数の亡者と生者の小鬼が祈りを捧げている。

 

そして隅に在る巨大な鉄格子に大勢の人々が囚われていた。

 

「悪趣味な祭壇だぜ……!」

 

「全くだ!許してはおけねぇな!」

 

 同期戦士と槍使いは、積み上げられた椎骨の壁面にうんざりし、不快感を露わにしている。

 

「磔にされた大型種の小鬼と、生者の小鬼だと?!どういう事だっ?!」

 

 亡者の巣窟である筈のこの地に、生者の小鬼と磔の小鬼の存在にゴブリンスレイヤーは訝しむ。

 

「あれがフォドリック本人か」

 

「間違いない。王国所属の騎士も居る」

 

 奥に佇んでいるのは、狂った聖騎士フォドリック。

 

彼の両脇には、王国所属の騎士が二人追従していた。

 

女騎士と正規騎士は、其々に視線を向ける。

 

「剣士殿の言った通りですね」

 

「大勢の人質が囚われています」

 

 以前、灰の剣士がソウルの感知で大勢の生者の存在に言及したが、彼の言った通りになった。

 

何とか救出の方法を模索する、禿頭僧侶と獣人魔術師。

 

「あ!あの人達は――」

 

 見習い剣士の少女は大勢の人質の中に、散り散りに逸れた冒険者達の姿を捉えた。

 

戦闘の混乱の最中、我を失い逃走した連中だ。

 

どうやら殺される事なく、囚われ此処へ連れて来られたようだ。

 

灰の剣士は一人、前へと歩み出る。

 

小鬼禍(ゴブリンハザード)の首謀者が一人、その側近らしき不死の邪教徒が二人、呪腹の大樹が一つ、聖騎士フォドリックが一人、王国騎士が二人、亡者が複数、何故か生者のゴブリンサモナーが3体、ゴブリンビースト候補である磔の大型種ゴブリンが一体、そして……」

 

 祭壇に居る敵対勢力を名指しながら一人の不死人を見据えた。

 

「水の都、地下水路に居たな貴公」

 

 最奥に居る、茶系のローブに身を包んだ一人の不死人を指す。

 

彼は無言ではあったが、灰の剣士の指摘を受け口元を吊り上げた。

 

「今度は此処が貴公の実験場という訳か。あの磔のゴブリンは、ゴブリンビーストの被検体だな!」

 

「くっくっく、直ぐに分かる」

 

 ローブの男は不敵に嗤い、はぐらかす。

 

「奴が小鬼獣(ゴブリンビースト)を生み出した張本人か!」

 

「それに小鬼召喚士(ゴブリンサモナー)と言いましたか?」

 

 ゴブリンビーストとゴブリンサモナーの名称を聞き、ゴブリンスレイヤーと男神官は再度彼に聞き返す。

 

「ああ、間違いない。実際遭遇した事がある」

 

 彼は肯定の意を伝える。

 

「早速、噂の新種に出くわした訳か!」

 

「それにあの禍々しい大木、あれも敵なのですね?」

 

 灰の剣士の報告で、ゴブリンサモナーとゴブリンビーストの存在は仄めかされてはいたが、実際目にするのは初だ。

 

重戦士は新種の小鬼に、半森人の軽戦士は呪腹の大樹に注目している。

 

『……』

 

メンバー達は静かに武器を構え、臨戦体制を取る。

 

「おやおや、もう戦うのかな?もう少しゆっくりとしていけば良いものを…。まぁいい、貴様等のソウルを回収し、肉体をも有効利用させて貰うとしよう。サモナー!!」

 

 首謀者はゴブリンサモナーに命令を飛ばす。

 

「――例の召喚か!させんっ!」

 

「――馬鹿めっ!準備は既に整っておるわっ!」

 

 初見ではあったが、何やら術を行使する気配はこれまでの経験上察知していた。

 

ゴブリンスレイヤーは術を阻止しようと踏み込むが、手遅れだった。

 

事前に準備し、何時でも術を行使出来る状態で待機させていたのだろう。

 

ゴブリンサモナーから幾つもの魔法陣が浮かび上がり、水溜まりだらけの地面から複数の小鬼が出現する。

 

その数、実に70を超えた。

 

「それだけではないぞ!…ファキオ《生成》…ミニステルアリス《従僕》…ゴブリン《小鬼》!」

 

 更に首謀者が真言魔法を詠唱し、小鬼の集団を生成させた。

 

数は30を超える。

 

「ちっ!併せて100を超える小鬼かよ!」

 

「そう言えばアタシら、小鬼退治に来たんだったなこのロスリックに!」

 

 100を超える小鬼を前に同期戦士が舌打ちし、鉱人の少女斥候は今回の主目的が小鬼禍の阻止である事を、今更ながらに思い出す。

 

「では、実験開始と行こうか」

 

 地下水路の時と同様に、ローブの不死人が驚異的な脚力で跳躍し、磔のゴブリンに着地、頚部に注射を刺し込んだ。

 

「何もんじゃ、あの男?!」

 

「只者ではないぞっ!」

 

 その脅威的な身体能力に、斧戦士と森人僧侶は驚愕する。

 

「ではたっぷりと堪能してくれ給え!」

 

 不死人はそうほくそ笑んだ後、直ぐに元の位置へと戻る。

 

程無くして磔のゴブリンが目を覚まし、咆哮を上げた。

 

――かと思えば、忽ち鎖を引き千切り全身に体毛が生え揃う。

 

その姿は、正しく獣と呼ぶに相応しいだろう。

 

「あれ、が獣、の小鬼…」

 

「……なんか強そう……!」

 

 雄叫びを上げる大型種の小鬼に、魔女と少年斥候は慄く。

 

「まだまだ続くぞ、さぁ『呪腹の大樹』よ!今こそ強大な力を振るう時だ!」

 

 首謀者は何らかの術を行使した後、眠っていたかのように動かなかった呪腹の大樹がゆっくりと胎動を始める。

 

「あの大っきいの動き出しましたよ!どうするんですか、剣士さん?!」

 

 蠢きゆっくりと此方へ向かって来る呪腹の大樹――。

 

銀髪武闘家は、その威容と巨大さを含めた不気味な姿に狼狽え、灰の剣士に解決策を仰ぐ。

 

「灰よ、あのゴブリンビーストとやらは、学習能力と瞬発能力に優れるのだったな?」

 

「そうだが、何か考えが?!」

 

 ゴブリンスレイヤーが灰の剣士に案を提示する。

 

彼の案は、ゴブリンビーストを一人で相手取るというものだった。

 

流石にそれは無茶が過ぎると彼に意見するものの、彼には一つの策があった。

 

その策を聞き、灰の剣士は彼の案を呑む。

 

そして困惑するメンバー達に指示を飛ばした。

 

「皆!『呪腹の大樹』は私がっ、ゴブリンビーストは彼…ゴブリンスレイヤーが、それぞれ担当する!槍使いの一党は、ゴブリンサモナーを!残りのメンバーは、大量の小鬼と亡者を殲滅してくれ!奥の不死人連中は、参加する気が無い様だ!皆、死ぬなよ!」

 

 後は状況次第で追加指示を出すと付け加え、戦闘態勢へと移行した。

 

――頼んだぞ、皆…!君の策、アテにするぞ、ゴブリンスレイヤー!

 

それぞれ対応するメンバーと、小鬼獣に応対するゴブリンスレイヤーに視線を送り、灰の剣士も呪腹の大樹へと向き合った。

 

「フォドリックは動く気が無い様だな、高見の見物という訳か」

 

「良いじゃねぇか、逆に楽だ!無様なとこ見せちまった分、存分に暴れるぜっ!」

 

 フォドリックの事が気掛かりだが、女騎士と重戦士は多数の小鬼へと対応する事にし、武器を構える。

 

「わ、私だってやってやる!この日の為に剣を学んだんだっ!今こそ仲間の仇を討つ!」

 

 見習い少女剣士も剣を抜き、小鬼を睨み付けた。

 

若干の恐怖はあったが、安心感が桁違いであった。

 

見ず知らずの自分に良くしてくれた今のメンバー達に、居心地の良さを感じていたのだ。

 

「くくく、さぁ!宴を始めよう、冒険者諸君っ!」

 

 余裕を見せる首謀者。

 

この『亡者の穴倉』で時代を跨ぎ時を越え、再び戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

生者と不死人の戦いが、今勃発したのである。

 

 

 

亡者の穴倉で――。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

黄昏の盾

 

 薄暮の国の聖騎士に与えられる盾

 

 薄暮の聖騎士の象徴色である黄昏の色の中に

 燃え盛る炎の紋文様が描かれている

 それは炎を宿し、また対する者の証である

 

 戦技は「パリィ」

 左右どちらに装備していても有効な戦技

 タイミングを合わせて攻撃を受け流し

 追撃で、致命の一撃を叩き込こむ。

 

 彼女は何を想い、何を見ていたのだろう。

 墓に刻まれた、家族の名。

 それだけが、唯一の証だ。

 

 

 

 

 

 




 やっと亡者の穴倉まで到着したぁ。

えらく時間が掛かったなぁ……。

不死街のフォドリックはともかく、磔の森のフォドリックには散々、苦汁を飲まされました。
パリィからの致命攻撃で、HPががっつりと減る減る。(゚ρ゚*)

言葉も出ませんでした。

如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

デハマタ( ゚∀゚)/



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