ゴブリンスレイヤー ―灰の剣士―   作:カズヨシ0509

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 オマケ話です。

灰の剣士一行に便乗する、後続の冒険者達のお話です。

その中でも最も幼い、見習い剣士の少女の視点です。

オマケ話なので少し短いです。

では投稿致します。


第61.5話―ロスリックのゴブリンハザード(見習い剣士の少女のお話)―

 

 

 

 

 

メイス

 

 戦闘用の鉄の槌

 聖職者の武器として知られる。

 

 刃に頼らない打撃武器は苦手が少なく

 盾受けを崩す力もある。

 

 戦技は「我慢」

 断固たる祈りの姿勢で強靭度を一時的に増す。

 また我慢中は被ダメージも軽減される。

 

 耐える事は美徳である。

 誰かがそう教導した。

 だがそいつは嘲笑った。

 「クソの役にも立ちゃしねぇ!」

 

 そして死んだ。

 誰にも看取られず。

 小鬼と心中したのだ。

 

 亡者と化した彼等と……。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

彼は歌い続ける。

 

その身が朽ちる迄。

 

我がソウルが尽きる迄。

 

消えた婆がまたひとり、

だから、孫はずっと籠を背負ったまま孫は籠をせおったまま。

消えた婆は消えたまま。

誰か籠にお入りよ

婆の代わりにお入りよ。

 

 

 

 

 

―― ロスリック拠点街 ――

 

 

 

集まったのは18名の冒険者達。

 

全員が玉等級以上の実力を有した手練れだ。

 

その集団の中に、冒険者ではない一党が混ざっていた。

 

王都に位置する、剣術道場の門下生達だ。

 

彼等は、剣術修練と見識拡大の為、このロスリックへ訪れていた。

 

幸か不幸か、連日続く小鬼禍《ゴブリンハザード》に遭遇し、実戦には事欠かなかった。

 

彼等が仕留めたのは僅かな小鬼だけだったが、それでも実戦を経験したのは大きな自信へと繋がる。

 

一応定めていた滞在期間が迫っていた為、最後に仕上げにと、彼等はロスリックの探索する事で、今回の修業を締め括る腹積もりでいた。

 

その剣士団の中に、11~12歳の幼い少女が一人。

 

整った顔と切れ目のある目立ちに髪を後ろに束ねている少女だ。

 

まだ見習いの身分だが卓越した剣の才を誇り、同年代の門下生では彼女の相手は務まらなかった。

 

彼女の恵まれた才が認められ、特別にロスリックまで同行を許されたのだが、彼女自身は不満を抱かえていた。

 

待ちに待った実戦が経験できる。

 

そう期待を抱き同行したのだが、結局は大人達が小鬼を仕留めてしまい、自信は剣を振るう機会が訪れなかった。

 

そして不満を抱えている内に、ロスリック探索の日を迎えてしまった。

 

しかし、曰く付きの遺跡であるこのロスリックなら、戦う機会に恵まれる筈だ。

 

今迄の不満を帳消しにできると考え、彼女は秘かに意気込んでいた。

 

日はまだ昇り切っておらず、時間帯は早朝で些か睡眠時間が短いようにも思われたが体は不思議と軽い。

 

昨夜、拠点街では噂となっている『灰の剣士』を見る事が出来た。

 

噂になる位だ、どれ程の人物なのかを自らの目で見定める為、こっそりと尾行していたのだが、とんだ拍子抜けだった。

 

抱いた感想は、”隙だらけで弱そう”だ。

 

ゴブリンハザードの戦いでも、少しだけ戦い振りを見る事が出来たのだが、あれもマグレか幸運が重なった結果だろうと踏んでいた。

 

既に灰の剣士率いる集団は先行している。

 

ここいらで我が剣士団の実力を知らしめ、灰の剣士の鼻を明かしてやりたかった。

 

準備は万全だ。

 

糧食も治療薬も手入れ道具も、全て完備している。

 

加えて教導官を始めとした兄弟子達も居るのだ。

 

失敗など在り得なかった。

 

周りには大人冒険者達も同行し、皆が手練れであると聞く。

 

最早怖いもの無しだ。

 

もしロスリックに魔神王でも居るのなら、そのまま討伐出来てしまえるのではないか!

 

そう思える程に気分は高揚している。

 

早く出発したい。

 

そんな自分の意思を汲んでくれたのだろうか。

 

頭目を務めると意気込む屈強な冒険者が、出発を宣言した。

 

集合時間には遅れて来たが。

 

まぁいい、いよいよだ。

 

しかし昂る彼女に横槍を入れる者が一人――。

 

「よぉ!緊張してんのか?」

 

 突如として話し掛ける男が居た。

 

彼も門下生の一人で、彼女の兄弟子に当たる。

 

歳は二つほど上ではあったが、実力は少女の方が圧倒的に上だ。

 

「まぁ無理もねぇわな!お前はまだガキだ!ここいらで俺の実力をたっぷり見せてやるぜ!」

 

 自信あり気に語る兄弟子。

 

彼女はこの男が嫌いだった。

 

「だったら私から一本でも取ったらどうなんだ?」

 

 言葉を終えてから少女は”しまった”と後悔する。

 

「へっ!お子様だな。実戦と稽古は違うんだよ!いいか?よく聴け!そもそも戦いってのはな……」

 

 クドクドと うんちく を垂れる兄弟子。

 

この男は門下生の中でも、特に大口(ビッグマウス)だ。

 

決して弱い訳ではないのだが、他人の影口を叩き自分を必要以上に過大評価する。

 

聞いていて正直、不愉快な事この上なかった。

 

一言で言うと非常に鬱陶(うっとお)しいのだ。

 

そのくせ、必要以上に自分に絡んで来るのだから、不愉快千万である。

 

とうとう在りもしない武勇伝まで語り出す兄弟子。

 

更に少女の肩を抱き、ぺらぺらと喋り出し、終わる気配が見られない。

 

そこへ”置いていくぞ!”と教導官に叱られ、漸く解放された。

 

舌打ちする兄弟子は渋々手を放し、隊列に加わる。

 

少女もそれに続き、やっとロスリックへと向かう事になった。

 

しかし、少女は言い様の無い不安に包まれていた。

 

「お前を頭目に認めた覚えはねぇぞ!」

 

「遅刻した分際で集合にやっと来たかと思えば、偉そうにしやがって、マジで強いのかよ?!」

 

「ああん?!」

 

「今日で後進に道を譲って貰うぜ!老害がっ!!」

 

「今直ぐ口も利けねぇようにしてやろうか、ああン?!」

 

「やめてよ!ここで口論したって意味ないでしょ?!」

 

 進入路途中で、誰が頭目に相応しいかで(いさか)いが発生していた。

 

まだロスリック内に侵入すらしていない。

 

既にこのありさまである。

 

しかし、それは無理からぬ事だ。

 

先行した灰の剣士達は歴とした目的が存在するが、此処の彼等は利益と名声を求めている。

 

それ自体は決して悪い事ではないが、自身の利益を優先すれば自ずと軋轢が生じ、不協和音を生み出すものだ。

 

一色触発の状態に陥ったが、女性の聖職者が何とか宥め大事には至らなかった。

 

彼等は灰の剣士達を追い、ロスリックへと侵入した。

 

 

 

 

 

デエェェ ―― ロスリックの高壁 ―― ェェェエン

 

 

 

 

 

言葉が浮かばなかった。

 

何も思い浮かばなかった。

 

目にする光景に。

 

眼前と広がる光景に。

 

只々立ち尽くすのみだ。

 

少女を始め他の冒険者達も、言葉を失っている。

 

僅かにロスリック経験者も居るには居たが、やはりこの光景には中々慣れるものではなかった。

 

荒れ果てた瓦礫と城塞の跡。

 

木と人間が融合したかのような、奇妙な植物。

 

其処彼処に散らばる、朽ち果てた亡者。

 

犠牲となったであろう、干乾びた部位欠損の冒険者の遺体。

 

悍ましく慎ましいまでの冒涜な世界が、其処に在った。

 

「……」

 

 無言で立ち尽くす冒険者達。

 

『――!』

 

 ふと遠間から人の話し声が聞こえて来る。

 

間違いない、先行した集団の声だ。

 

「おい地図だ!早くしろ!」

 

「……後で覚えとけよテメェ…」

 

 ()()頭目に怒鳴られ悪態を突きながらも、斥候は地図を取り出す。

 

元々彼等は、壊滅し生き残りを搔き集め結成された、言わば即席の一党なのである。

 

互いの為人(ひととなり)も知らず衝突するのは、ある意味必然とも言えよう。

 

「そう言えば、近くに昇降機があるんだったな。確か近道になる筈だ」

 

「よし行くぞ!遅れんなよ!」

 

 荒くれの自称頭目は、上から目線で其処へ向かった。

 

「…組む一党を間違えたかも知れんな……」

 

「教導官……」

 

 剣士団の纏め役を務める教導官は、今の集団に懸念を示す。

 

しかしそれは兄弟子や少女も含め、周囲の冒険者達も同じ気持ちを抱いていた。

 

 

 

「何故、無理矢理割り込む?!」

 

「先に行けって言ったのはアンタだろ?!」

 

「うるせぇっ!トロトロしてっからだよ!」

 

 狭い昇降機で、再び口論が勃発した。

 

灰の剣士達が昇降機を使い終え、自分達の番が回って来たのだが此処でも揉め事が発生したのだ。

 

自称頭目は剣士団に目を付け、彼等を囮に先行させる積りでいた。

 

自称頭目の思惑に憤りを感じてはいたが、剣主体の彼等には敵を駆逐する役割が適任だ。

 

反発する兄弟子を抑え剣士団が昇降機に乗ろうとした矢先、自称頭目がいきなり割り込んで来たのだ。

 

初見の昇降機に戸惑う剣士団に痺れを切らし、無理矢理乗り込んだのである。

 

兎に角、彼は気が短く忍耐力が欠如していた。

 

更にこの頭目は恵まれた体躯を誇り、狭い昇降機が更に狭くなり彼等を押し出そうとする。

 

「やめろ!落ちたらどうすんだ?!」

 

「へっ!お前みたいなガキ使いもんにもならねぇ、落ちた方がマシだぜ?!」

 

 反発する兄弟子に自称頭目は皮肉で返し、彼を軽く押した。

 

既に昇降機は作動している状態で、周囲には壁が設置されていない開けた設備だ。

 

ドンッ!

 

「――あ…」

 

 押された兄弟子の背中は、見習い剣士の少女に当たり、そのまま押し出される形となる。

 

唐突に起こった最悪の事態――。

 

皆が事の事態を認識した時には、少女は既に昇降機から姿を消していた。

 

 

 

……

 

 

 

「……今回は偶々私が居たから良かったものの、次が有るなどと思わない事だ」

 

 灰の剣士は、冒険者集団に一人の少女を託す。

 

先程昇降機で落下した、見習い剣士の少女であった。

 

「ハンッ!そいつらが間抜けなのがワリィんだろがよっ!」

 

 反省した様子もない自称頭目と、バツが悪そうに彼女を受け取る剣士団の教導官。

 

「おいテメェ、俺を頭目に据えろよ!テメェなんぞよりよっぽど良い仕事をしてやんよ!」

 

――この男、どこまで厚顔無恥なんだ!

 

尚も上から目線で、灰の剣士に”自分を頭目として組み込め”と強要する、自称頭目。

 

その様子に口にこそ出さなかったが、教導官は怒りを滲ませていた。

 

「調子に乗るなよ、破落戸のなり損ない!突き殺されてぇか!」

 

 自称頭目の態度に槍使いも怒りを滲ませ、武器を構える。

 

「ついて来るのは自由だが、自分の身は自分で守ってくれ。此方も人数がかなり多い。これ以上、我が徒党には組み込めぬ」

 

 彼はあっさりと拒否し、そのまま仲間を引き連れ立ち去ってしまった。

 

「あ……」

 

 見習い剣士の少女は、去り行く彼の背中を見つめ声を投げ掛けようとしたが、既に彼の姿は見えなくなった。

 

「けっ!気取りやがって!クズの分際でっ!おらボンクラ共、トットと行くぞ!」

 

 自分の要求が通らず舌打ちする自称頭目。

 

他のメンバーを怒鳴りつけ、彼等も先へと進む。

 

少女の耳に、ヒソヒソと話し声が聞こえて来た。

 

「アイツ、あんなのでよく昇級できたわね…。あれでも、翠玉等級なんでしょ?」

 

 女の魔術師と女の聖職者が小声で話し合っていた。

 

少女は歩きながら、彼女らの話に聞き耳を立てる。

 

どうやら彼が所属していた一党は壊滅し、彼だけが生き残ったと言う。

 

彼はともかく他のメンバーは、等級に相応しい人格と実力を有していたらしく、彼はそれに便乗し要領良く振舞っていたのだという噂が立ち上がっていた。

 

しかし彼一人となり、化けの皮が剥がれた結果が今の状態だろうと、彼女達は憶測を立てた。

 

たとえ生き残ったとしても、直ぐギルドにこの事が伝達され、近い将来彼は降格処分を受ける筈だと、話し込んでいる。

 

実際、少女もそう思えた。

 

あの男の横暴が原因で、死にかけたのだ。

 

今も鬱陶(うっとお)しく話し掛ける大口の兄弟子が、マシに思える程だ。

 

しかし、この少女も思いの外頑固者で、未だ灰の剣士より自分達剣士団の方が優れていると信じて疑わなかった。

 

 

 

 

 

デエェェ ―― 不死街 ―― ェェェエン

 

 

 

 

 

ロスリック高壁を抜け、不死街へと続く細道を抜け、薄暗い民家を抜け、磔広場まで辿り着いた。

 

道中、口論や(いさか)いが絶える事はなかったが、誰の犠牲者を生む事なく、何とかここ迄は無事に到着する事が出来た。

 

しかし考えてみれば、それは当たり前である。

 

並み居る敵は、全て灰の剣士達に駆逐されていたのだ。

 

しかし、磔や火炙りと言い、吊るされた遺体の山と言い、冒涜的な光景がこれでもかと続き、体調不良を訴える者が続出し始めていた。

 

先程から、偉そうに踏ん反り返っていた自称頭目すらも、口数が激減していた。

 

「へっ!ざまぁねぇな、自称頭目さんよ!」

 

「さっきの勢いはどうしたよっ?!」

 

「おやおや震えちゃって、怖いんでちゅかぁ~?!」

 

 他の冒険者達が、ここぞとばかりに彼を呷り始めた。

 

彼に対して抱いていた不満が、此処になって一気に噴出したのだろう。

 

「……テメェらぁああっ!!」

 

堪え性の無い自称頭目は、容易く挑発に乗り得物であるメイスを振るった。

 

しかし、その武器は彼等に届く事はなく、一人の男に阻止される。

 

「テメェ、邪魔すんな!」

 

「……」

 

 激昂し声を荒げる自称頭目を止めたのは、剣士団の教導官である。

 

腰に差した長剣を鞘ごと抜き、彼の攻撃を阻止していた。

 

しかし、よく見ると彼の脚は震え、額には汗を滲ませている。

 

「なんだぁ?粋がってた割りにはビビってんのかぁ!?」

 

 怯えを滲ませる教導官に、自称頭目は嘲笑った。

 

「そうだ。ビビっている…」

 

 挑発された彼だが、それを否定する事はなかった。

 

「先ずいけ好かねぇテメェから殺してやろうか、あぁん?!」

 

 調子付いた自称頭目は更に威圧し、自己満足を満たそうとする。

 

「……殺されるだろうな。このまま行けば全員…奴等に!後ろを見てみろっ、間抜けめ!」

 

「――ああんっ?!」

 

 教導官の指摘に、厳つい顔を顰めながら彼は後ろを振り向いた。

 

「――?!なっ、コイツら、何時の間に……!」

 

 振り向いた先には、亡者の群れが出現し此方にゆっくりと近寄って来るではないか。

 

「く、くそ!囲まれてるぞ!」

 

「ど、どうしよう!」

 

「た、戦うしかねぇだろっ!」

 

 次から次へと亡者は増加し、彼等を取り囲みつつあった。

 

冒険者達は、各々武器を構え戦闘態勢へと移る。

 

「おいっ!自称頭目!こんな時に指揮しねぇでどうする?!」

 

「……おい!返事しろぉ?!」

 

 冒険者の一人が、自称頭目を叱咤するが返事が無かった。

 

「――あ、アイツ…自分だけ勝手に…!」

 

 気が付けば、自称頭目は単独で逃走を開始していた。

 

その方角は馬小屋のある民家の方角で、亡者の数も比較的少なく彼は強行突破しながら逃げ出したのだ。

 

 

 

仲間を見捨てて――。

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 自称頭目は脇目も振らず一心不乱に逃走する。

 

出口とは無関係な方角にも拘らず、彼は兎に角走った。

 

一応それなりの戦闘力は有していた。

 

不死街の住人程度なら、集団で襲われない限り何とか凌ぐ事が出来ていたのだが、馬小屋の天井から奴隷亡者の奇襲を真面に受ける。

 

「――ぐぎゃぁあ!」

 

 小柄な体躯に似合わず大剣を携えた、ロスリックの奴隷。

 

その奇襲で肩を切られた彼は、絶叫を上げた。

 

「ひ、ひぃぃ、ヒぃ、イぃ……」

 

 その激痛と噴き出る鮮血で、彼は戦意を喪失し命からがら馬小屋を脱出した。

 

馬小屋の脇道を、(もつ)れた脚で只管逃げ惑う自称頭目。

 

「い、いてぇよぉ…畜生…無能な奴等の所為で……」

 

 自分だけ逃亡しておいて、暫定とは言え仲間に責任を押し付ける彼の精神性は、最早ゴブリンと何ら変わりないだろう。

 

よろめきながら必死に安全地帯を探す彼に、突如脚から激痛が襲った。

 

「――ぐあぁっ?!」

 

 気が付けば彼の脚には、針が幾つも突き刺さっていた。

 

彼はふと針の飛来した方角に顔を向ける。

 

其処には、ロスリックの奴隷達が民家の壁面や天井に張り付き、吹き矢で攻撃していたのである。

 

「あ…あ…あぁぁ……」

 

 複数の奴隷亡者を目にし、彼の意識は混濁とし始めていた。

 

彼の目は絶望に染まるが、更に追い打ちが降り掛かる。

 

物陰から、亡者と化したゴブリンが襲い掛かって来た。

 

「――ぎぃやぁあぁっ?!やめぇろぉっ?!」

 

 一匹の小鬼亡者が彼に噛み付き、肉を食い千切る。

 

そして次々と追加の小鬼亡者が現れ、彼の全身に喰らい付いた。

 

もう運命は決まった。

 

彼はそのままバランスを崩し、脇道から崖へと真っ逆さまに転落する。

 

「ああああああああああ……!」

 

 小鬼亡者を引き連れながら、自称頭目は落下死した。

 

 

 

―― YOU ⅮIED ――

 

 

 

最早戦いとは呼べなかった。

 

恐怖と混乱が伝達した彼等に碌な統制など取れよう筈も無く、17名居た半数は戦意喪失し逃走した。

 

奇しくも、自称頭目が逃げた同じ方角に――。

 

「――ぎぃやあぁぁっ?!」

 

「――あぎゃあぁぁっ…!」

 

「――た、タス、たしゅ…ケっ?!」

 

 残りのメンバーは次々と亡者の餌食となり、或る者は銛で串刺しにされ、或る者は引き倒された後、錆び付いた鉈で生きたまま解体された。

 

「あ…あぁ…あ…ァ……」

 

 剣を振るう処ではなかった。

 

あまりに残虐で、あまりに凄惨に、一方的に殺されてゆく冒険者達。

 

否、生きたまま解体されてゆく冒険者達。

 

このままではそう時間を置く事なく、自分達も同じ運命を辿るに違いない。

 

あれだけ意気込み、自信満々でロスリックに挑んだ見習い剣士の少女。

 

脚はカタカタと震え上がり、歯はカチカチと鳴らすばかり。

 

気が付けば、生き残ったのは彼女が所属する剣士団だけであった。

 

「――はぁあぁっ!」

 

 教導官の長剣が亡者の首を刎ね、一人奮戦していた。

 

真面に戦っていたのは、実質彼のみと言えよう。

 

「全員私に続けっ、こっちだ!」

 

 更に亡者を切り伏せながら、彼はもう一つの民家を目指し門下生達を誘導する。

 

「教官そっちは、出口じゃ……」

 

「いいから早くっ!」

 

 もう一人の門下生の反論も許さず、彼は強引に民家を目指し中へ侵入した。

 

「よし、ありったけの荷物で扉を塞げ!」

 

 扉を閉め、散乱している壺や木箱で扉が開かない様に塞ぐ。

 

亡者相手には気休めだが、少しは追撃を阻む事が出来るだろう。

 

何とか亡者の襲撃から逃れ、剣士団は息を切らしていた。

 

「どうするんですか、教官?」

 

「彼はこっちへ向かった様だな。彼との合流を試みよう」

 

 教導官の言う”彼”とは、灰の剣士の事である。

 

今なら事情を説明すれば、何とか受け入れてくれるだろう。

 

このまま下手に出口を目指しても、亡者の遭遇で全滅は必至だった。

 

噂には聞いていたロスリックの遺跡。

 

まさか、これ程にまで危険極まる遺跡だったとは……。

 

今なら分かる。

 

”ロスリックの生き残り達”の偉大さが。

 

”灰の剣士”が如何に優れた剣士であるかを。

 

実際彼は、昇降機で落下した彼女を救ってくれた。

 

我々との接点は皆無…。

 

見捨てる事も出来た筈だ。

 

しかし、彼はそれをしなかった。

 

彼が心有る人間な証拠だ。

 

そう判断した上での行動だった。

 

「息を整えるんだ、今に内にな」

 

 教導官の指示で、皆は水筒で水分を補給したり携帯食を口へと頬張り、僅かな小休止を取る。

 

「……よし、そろそろ行くか」

 

 教導官は松明を灯し歩みを再開しようとした。

 

その矢先――。

 

「ぶぅえぇぇえ…!!」

 

「おげぇええぇう…!」

 

 次々と門下生達が嘔吐する。

 

暗くて分からなかったが、明かりが灯った瞬間、天井には夥しい数の遺体が吊るされていた。

 

「見るな!前だけを向いて行くぞ!」

 

 なけなしの勇気を振り絞り、教導官は指示を飛ばす。

 

そして慎重に民家の中を進んだ。

 

しかし”前だけを見ろ”と言う指示が、彼の運命を決定付けた。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

「はぁ、ヒぃ、フゥ、へぇ、ほぉ……」

 

 磔広場から逃げ出した、生き残りの冒険者達。

 

馬小屋を抜けようとしたが、巨大な壺を持った下男亡者と火炎壺を投擲する亡者に阻まれ、止む無く断念。

 

再び馬小屋へと引き返し、自称頭目が落下死した脇道へと辿り着いていた。

 

無論、彼等も奴隷亡者や小鬼亡者の襲撃を受けたが、複数人で居る事とあの憎い頭目が居ない事が幸いした。

 

何とか彼等は連携し、亡者の襲撃を凌ぎ撃退させる事に成功していた。

 

戻る選択肢も考慮したが、あれだけの亡者に退路を断たれては最早絶望的と言えた。

 

仕方なく彼等は別の道を辿り梯子を伝って民家の屋根を抜け、やや広い広場へと到着する。

 

「先行したあの連中は、此処を通ったんだろうか?」

 

「分からないわ!でも、合流すれば何とか助かるかも……」

 

 彼等の言う先行した連中。

 

そう、灰の剣士達である。

 

彼等もまた灰の剣士達との合流を考えていた。

 

即席とは言え仲間を見捨て逃亡してしまったが、いざ切羽詰まれば自分の身が可愛いものである。

 

今の彼等は生き残る事が、最優先事項であった。

 

「え…?何か足音が聞こえて来ない?」

 

 女冒険者が耳を澄まし、他の面々も同様に耳を傾ける。

 

前方から、ガシャ…ガシャ…と足音が近くなって来るのが聞こえて来た。

 

「例の剣士だろうか?」

 

 僅かな希望を滲ませる冒険者達。

 

少し冷静になれば、その足音は一つだけで明らかに異常な音をしているのに気付いた筈だ。

 

彼等が本来の実力を発揮していれば、その位判別するのは造作も無い事だが、今の彼等は完全に冷静さを欠いていた。

 

「よし、行ってみよう!」

 

 僅かな希望を胸に足音の方角へと向かう彼等。

 

「……え……?」

 

 彼等の眼前に現れたのは、大鉈を携え大籠を背負った紅いフードの大男だった。

 

その眼は赤く濁り、虚ろに此方を見つめている。

 

明らかに尋常ならざる者の目だ。

 

「――うわぁああっ!!」

 

 彼等は一目散に逆方向へと走り出した。

 

最早彼等の頭は真っ白になり、自分が何をしているのかさえ判断が出来ないでいる。

 

そして此処は絶望渦巻く、ロスリック。

 

 

 

―― 狂った闇霊 聖騎士フォドリックに侵入されました ――

 

 

 

逃げ惑う彼等の眼前に突如現れた、得体の知れない人型らしき、ナニカ。

 

暗い紫色のソウルを身に纏い、ゆっくりと此方に歩み寄って来る。

 

「……」

 

「……」

 

 両者とも無言ではあったが、彼等は本能と細胞で悟った。

 

 

 

―― ヤバイ ――

 

 

 

狂った闇霊は、人差し指を立て「チッチッチッチ……」と顔と共に左右に振る。

 

その時点で彼等は悟り、誰かが呟く。

 

 

 

「……終わった……」

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

紅いフードの大男の背には、巨大な鉄籠が背負われている。

 

その鉄籠には複数の男女が無理やり、鮨詰め状態で詰め込まれていた。

 

先程の冒険者達である。

 

一応、彼等は生きてはいた。

 

狂った闇霊フォドリックは、彼等を殺す事も椎骨を抜き取る事も無く、彼等を無力化させ籠へと詰め込んだのだった。

 

紅いフードの籠男は、そのまま亡者の穴倉へと向かって行く。

 

彼等を祭壇へと捧げる為に。

 

 

 

 

 

そんな様子を虚ろな目で見ていた一つの籠蜘蛛――。

 

彼は歌い続ける。

 

その身が朽ちる迄。

 

我がソウルが尽きる迄。

 

消えた婆がまたひとり、

だから、孫はずっと籠を背負ったまま。

孫は籠をせおったまま。

消えた婆は消えたまま。

誰か籠にお入りよ、

婆の代わりにお入りよ。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

其処でも亡者の奇襲は止む事はなかった。

 

「――ぬぅぉおおおっ!」

 

 教導官の長剣がハルパー持ちの亡者を両断する。

 

しかし、彼もまた至る所にナイフや斧を突き立てられ、全身血塗れの状態だった。

 

「――う、うわあぁっ、来るなぁっ!」

 

 大口の門下生が、亡者に接近され闇雲に剣を振り回していた。

 

「――させん!」

 

 教導官が肉薄し、亡者の首を刎ねる。

 

「きょ、教導官……」

 

 安堵した彼は、へたり込もうとするが”しっかりしろ!”と檄を飛ばされ、何とか踏み止まった。

 

「……ここは私に任せて、お前達だけでも何とk――?!」

 

 教導官は言葉を最後まで紡ぐ事なく、白目を剥きガクガク痙攣を始めた。

 

それを呆然と見やる三人の門下生。

 

彼の頭部は、奴隷亡者の手斧で克ち割られ、鮮血と脳髄を噴出させながら即死した。

 

いきなり意識を司る脳幹を破壊され、僅かに残った身体の本能が痙攣で応えていたが、やがてそれも無くなり彼は物言わぬ遺体となる。

 

そして追い打ちを掛けるように後続の亡者が、此方へと追い付き襲い掛かった。

 

「……逃げろ…!お前達だけでも、生きのびろぉっ!」

 

「お、おい、待てっ?!」

 

 門下生が剣を構え、後続の亡者を食い止めんと突撃を開始した。

 

それを見習い剣士の少女が止めようとするが、もう一人の大口の門下生に手を掴まれそのまま走り出す。

 

「もうこれまでだ…!せめて教導官の仇だけでも討ってやる!」

 

 門下生は先程の奴隷亡者に突撃し、その頭部を剣で貫いた。

 

そしてそれが、彼にとって不死街での最初で最後の戦果だった。

 

残された二人は逃げる。

 

何も考えず逃げる。

 

民家を抜け細い通路に出た。

 

少女の手を掴んでいた大口の門下生は、不意に脚を止める。

 

「――?!どうしたんだ?」

 

 何事かと少女は彼の顔を見る。

 

しかし、彼はジィっと此方を見つめ、口を開いた。

 

「もう、俺達だけしか居ねぇ……」

 

「…ああ…」

 

 生き残ったのは二人だけだ。

 

その事実に少女は目を伏せる。

 

「そうさ…、俺達だけが生き残ったんだ…。俺とお前だけが……へ…へへへ……」

 

「……一体何を…?」

 

 普段から碌でもない事を口走り、自分を過大評価したり、他人を過小評したりする奴だ。

 

そのくせ実力は追い付かず、少女はこの男が嫌いだった。

 

しかし幾ら嫌悪していても、今の様な訳の分からない事を口走る男ではなかった。

 

「俺とお前、そう、俺達は生き残り神に選ばれたんだよ!だったらやる事は一つだよなぁ…!ヒ…ヒヒひぃ……?!」

 

「――?!く、来る…な…」

 

 次第に様子が怪しくなる眼前の男に、少女は後退る。

 

彼の目は血走り、口からは涎を垂れ流しながら二ヤケていた。

 

もう明らかに普通ではない。

 

そうかと思えば、彼は突如剣を振り上げ彼女の胸元を切り裂いた。

 

「――うぐっ…何をする?!」

 

 彼にとっては彼女の服のみを切り裂く予定だったのだが、実力が伴わず僅かに胸をも斬ってしまった。

 

突如襲い来る痛みに彼女は、胸元を手で覆い(うずくま)る。

 

「ヒヒヒぃ?!思ってた以上に、膨らんでるじゃねぇかよ、おい?!」

 

「ど、どう言うつもりだ?!私を殺す気か?!」

 

 彼の突然の凶行に、理解が追い付いていない少女。

 

端から見れば彼の目的は一目瞭然なのだが、彼女は今迄剣一筋に生きてきた。

 

一応読み書きや男女の理といった基本的な学問は納めていたのだが、男女間の項目については全く学習意欲が湧かず、右から左へと聞き流していた。

 

故に彼の目的が理解出来ず、彼女は困惑するのみだ。

 

「俺達はヨォ、エラバれたんだぜェ?!今コそ、想いをトゲなきゃぁよぉ?罰が当たるってもんダぁ?!気持ちYOKUしてやっかRAぁ、大人しKUしTEろヨぉ?!」

 

「う…あぁぁ……」

 

 最早彼は完全に狂気に呑まれ、何処からどう見ても異常極まりない状態だ。

 

彼女は尻餅を着き両手で身体を支えるが、その時胸元と短いスカートは(はだ)け、女の芽生え始めた膨らみと質素な下着が露わとなる。

 

「おオぅ?!やっと、そのきになったかYO!うREしいZE、オれはYOぉ……?!」

 

 既に人語の体を成していない彼の言葉は途中で遮られ、異様な音が彼女の耳を打った。

 

ベチャっと、果実が潰れるに似た音が耳に届き、その瞬間に奇妙なオブジェが出現した。

 

頭部が異様に潰れた、()()()()()()()()が其処に居た。

 

その奇妙なオブジェの後ろには、大木槌を持った亡者が更に得物を振り上げ、完全にそれを叩き潰す。

 

赤黒い肉片と飛び散った血が、彼女の口に入り潮と鉄の入り混じった奇怪な味が拡がる。

 

そこから先はよく覚えていない。

 

気が付けば彼女は、一心不乱に走り出し別の民家へと逃げ延びていた。

 

後ろから亡者の足音が聞こえて来る。

 

自分を追って来ているのが嫌でも分かった。

 

もう何が何だか分からなかった。

 

こんな筈じゃなかった。

 

そんな後悔の念だけが頭に残る。

 

灰の剣士と合流するという目的すら彼女は忘却していた。

 

助かりたかった。

 

抜け出したかった。

 

この異界から逃げたかった。

 

もうそれしか残っていなかった。

 

それでも彼女の手には、剣が握られていた。

 

手放す事が無かった。

 

もうこれだけが、今の彼女を繋ぎ止めていたのだ。

 

人の心を――。

 

涙を零し、鼻水が垂れ、涎を撒き散らし、少女は暗い民家を抜け出した。

 

民家の中に居たのは僅かだが、出口の光が何とも心地良かった。

 

民家を抜け、複数人の人が背を向け佇んでいた。

 

もう、誰でもよかった。

 

只々、助けて欲しかった。

 

見習い剣士の少女は、背を向ける人物に縋り懇願する。

 

「お、おねがい、です!助けて、助けて下さいぃ…!」

 

 僅かな希望に縋る少女。

 

返って来た応え……。

 

「GWuOouuu……!」

 

 縋り懇願した結果は……。

 

 

 

―― 錆び付いた鉈の返礼 ――

 

 

 

「……」

 

 ゆっくりだ。

 

そして遅い。

 

止まって見える。

 

そうだ。

 

反撃しなきゃ。

 

敵は剣で切り伏せる。

 

そう学んで来たじゃないか。

 

 

 

亡者の鉈が振り上げられ、彼女の顔面に振り下ろされる……寸前――。

 

「……」

 

 突如亡者の動きが停まった。

 

「?!」

 

 少女も異常を察知し、その亡者を見上げる。

 

亡者は彼女に再び背を向け、あらぬ方を見ていた。

 

いや、全ての亡者がそちらに向いている。

 

この少女など、まるで眼中に無いかのようだ。

 

奥から人影が向かって来るのが見えた。

 

「…あ…」

 

 三人の人影だ。

 

特に中央の人物には見覚えがある。

 

あの男だ。

 

見定めてやろうと思い、後を付けたあの男。

 

正直弱そうだと高を括った、あの外套の剣士。

 

昇降機で自分の命を救ってくれた、あの恩人。

 

 

 

(推奨BGM BERSERK ― 灰よ)

 

 

 

亡者は、完全に少女を無視し灰の剣士に殺到する。

 

農具を振り翳し、彼を解体せんが為――。

 

彼を殺し、ソウルを奪い取らんが為――。

 

亡者の農具が彼に届かんとするその刹那――。

 

少女は目を疑った。

 

4体の亡者が瞬く間に、上半身のみが宙を舞った。

 

一瞬だ――。

 

瞬きする間も無く、彼は打ち刀を振り抜き亡者を一閃していた。

 

上半身と下半身が無き別れした亡者は、微動だにしなくなった。

 

赤黒い濁った体液を撒き散らしながら、倒れる複数の亡者。

 

残りの亡者が彼等に迫るが、灰の剣士と鎧戦士に悉く討ち取られてゆく。

 

「もう大丈夫だよ!こっちに来て、奥から亡者が来てるから!」

 

 気が付けば、銀色の髪をした女に声を掛けられ、少女は安全な場所へと退避させられていた。

 

武器を所持してはいない様に見える。

 

自分と似た様な髪形をした彼女は、斥候か武闘家の類だろうか。

 

そう思案している内に、民家からも亡者が追い駆けて来ている。

 

程無くして増援の亡者が民家から次々と飛び出して来る。

 

先程の状況を嫌でも思い出す。

 

意気込んでロスリックに挑んだ挙句、いざ亡者との戦闘になれば半ば一方的に皆が死んでいった。

 

結果大勢居た冒険者は容易く瓦解し、徒党は瞬く間に崩壊した。

 

今の亡者もかなりの数だ。

 

あの剣士も、どうせ()()()()のだろう。

 

これから訪れる結果に、少女は再び絶望する。

 

そして彼女の視界に入った光景は……。

 

 

 

―― 異様の一言だった ――

 

 

 

殺到する亡者達が次々とバラバラにされ、動かなくなる。

 

否、()()()に死んでゆく。

 

灰の剣士の間合いに入った亡者達は皆例外なく、()()()に死んでゆくのだ。

 

そして彼の死角に入ろうとした亡者は、もう一人の鎧戦士に討ち取られていった。

 

瞬きする度に亡者の数は確実に減り、気が付けば全くは居なくなっていた。

 

「す…すごい…」

 

 少女は只々、見る事しか出来なかった。

 

「ホント強いね…。最初は弱そうだと思っていたのになぁ……」

 

 隣に居る銀髪武闘家は呟く。

 

そう、彼女も見習い剣士の少女と同じく、灰の剣士を弱いと決め込んでいたのだ、出会った当初は。

 

しかし、結果は見ての通りである。

 

「よし、周囲の亡者はもう居ないな」

 

「お前がそう宣言するなら間違いはあるまい」

 

 灰の剣士とゴブリンスレイヤーは、武器を納め此方へと歩み寄る。

 

この時、彼女は初めて悟った。

 

自分は助かったのだと。

 

そう安堵した途端、また涙が溢れて来る。

 

今迄とは違う涙が――。

 

こうして見習い剣士の少女は、彼等に保護される事となった。

 

合流地点である民家に案内され、彼等の一党は皆が優しく、自分に良くしてくれた。

 

更にあの横暴な自称頭目の様な輩は一人も()らず、不死街だというのにその空間は暖か味に満ちていた。

 

少女は完全に気が抜け、僅かだが束の間の平穏を得る。

 

そして少女は、一時的にだが彼等の一党に編入される事となり、亡者の穴倉へと目指す事となった。

 

目的地に着き、数多くの異形が立ち塞がった。

 

しかし、今の彼女に恐怖はあっても、言い様の無い安心感が勝っていた。

 

今なら戦える。

 

自分の為ではなく、人の為に剣が振るう事が出来る。

 

そう思った瞬間、彼女の内から得体の知れない力が沸き上がっていた。

 

 

 

「わ、私だってやってやる!この日の為に剣を学んだんだっ!教導官、兄弟子達、見ていて下さい!今こそ仇は討ちます!」

 

 彼女は敵を見据え、剣を構えた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ハルパー

 

 不死街の作業具のひとつ

 大きく湾曲した刀身は、遺体の切断に用いる。

 

 刃は刀身内側にあり、引き切るように用いるため

 その攻撃は盾をかいくぐりやすい。

 

 戦技は「クイックステップ」

 特にロックオン状態で使用することで

 側面や背後に一気に回り込む動きも可能となる。

 

 切り取った一部は、聖堂に捧げるべきか?

 それとも、あの聖木に捧げるべきか?

 

 彼は惑う。

 

 どちらも尊き、神の具現なのだと。

 

 

 

 

 

 




 如何だったでしょうか?

もう少し彼女の視点を掘り下げて書いても良かったかな?
大分やっつけで書いたので、かなり内容が薄くなった気もします。

もうお気づきかも知れませんが、見習い剣士の少女は、後の『あの娘』です。
今後出番があるかどうかは分かりませんが。

ロスリックの絶望感をもっと上手く表現したいのですが、今の自分ではこれが精一杯です。( ゚ ω ゚ )

少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

デハマタ。 ( ゚∀゚)/
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