エスト瓶って味あるんですかね?
そう思い調べてみたら、人間の尿の味がするとか心中穏やかでない事が書かれていたのですが、本当でしょうか? ( ̄□ ̄;)!!
もしそうだとしてもこの世界では、無味無臭という事にします。
灰本人だけが摂取するならいざ知らず、他人にも与えてしまっているので。
後は個人的に抵抗を覚えてしまったことが理由です。
もしこれらの設定改変で気分を害された方々、誠に申し訳ない。m(_ _;)m
地母神の神殿にて、審問を受ける火の無い灰。
己が素性を明かす為に灰は、篝火を起こす事にした。
ソウルの火が、神殿の一室に宿る。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
― BONFIRE LIT ―
前触れも無く、火が灯った。
不死人達の拠り所、篝火。
燃料は、亡者の遺骨を使用している為、そう長くはもたないだろう。
「いきなり火が宿った!?」
驚きの声を挙げたのは、部屋の入り口付近の衛兵達だ。
司祭長を含め一同が、この篝火に対して固唾を呑んでいる。
やはりこの世界の住人にとって篝火は、未知の領域だったようだ。
「驚きました、本当に何も無い所から火が宿るとは、それに不思議と心身共に癒される感じがしますね」
司祭長は感嘆の声を挙げ、篝火に手を翳している。
――流石は司祭長、一目で篝火の特徴の一端を見抜いたか。
灰は、感心を覚えながらも篝火の説明を始める。
「私達火の無い灰の拠り所、篝火。ソウルによって燃焼するこの火は、あらゆる負傷、精神的消耗や疲労を回復させてくれます」
そして・・・・・・。
灰は、エスト瓶、灰瓶両方を手にし、蓋を開ける。
「不死人の宝、エスト瓶の補給も篝火の重要な役割」
・・・と言うもののエスト瓶の中身は、満杯に近い状態である。
灰の墓所で使った三口分だけであり、灰瓶に至っては未使用の状態だ。
せっかくだ、エスト瓶を皆に体感してもらおうと、灰はエスト瓶を皆に勧めた。
「補給する前に、使ってしまいましょうか。橙色は体力回復、水色は精神力回復の効果があります」
「・・・最近足腰の調子が悪くてねぇ、此方を頂きましょうか」
司祭長が、エスト瓶を手に取り一口飲む。
すると・・・・・・
「・・・?!おぉっ・・・!これは、体の奥から何やら湧き上がる感覚が・・・」
彼女は目を見開き、自分の体とエスト瓶を交互に見比べた。
そして、何度も部屋の周りを往復しながら素直な感想を述べる、心なしか顔色も良くなっている様だ。
「古の時代にこの様な物があったとは・・・・・・」
エスト瓶を見つめ何度も頷いていた。
「私は、これを頂きますね」
監督官候補の女性が、エストの灰瓶を手にした。
若干躊躇っている様だ。
灰瓶を凝視したり、匂いを嗅いだりしている。
無臭の筈だが、得体の知れない物を口にするのは些か抵抗があるのだろう。
やがて、意を決したのか灰瓶の中身を口に含んだ。
淡い青色の火が、彼女の喉を通して体内に注がれていく。
「・・・?!すっすごい・・・、一瞬で頭の感覚が鮮明になったかの様な・・・」
先程から嘘発見の奇跡を行使していた為、彼女の精神は随分消耗していた様だが、エストの灰瓶を飲んだ事で全快に回復した。
「これ、マジックポーションも顔負けの効果ですよ。瞬間的に回復しましたけど、どういう仕組みで回復しているのかご存知なのですか?」
監督官候補が詰め寄って聞き出そうとして来た。
しかし灰にとってそのような知的好奇心を満たしている余裕など無い世界で戦ってきた為、詳しい事は分らないと頭を振るしかなかった。
精々”ソウルで出来た火が体内の消耗した部分を修復してくれているのでしょう・・・”と付け加えながら――。
その後、各々がエスト瓶とエストの灰瓶を一通り試し、両方の瓶の中身が空になった。
(因みに一番ガブ飲みしていたのが、女騎士である。)
瓶の中身が空っぽになったところで、灰は瓶を篝火の傍に置いた。
すると篝火が、流れる様に瓶の中に吸い込まれて行き、見る見る間に瓶の中身はエストで満たされていった。
一つは橙色の火で、もう一つは淡い水色の火で、両方の瓶を渦を描くように吸い込まれ中身を満たしていく。
日常的に扱い慣れてる、不死人達にとっては珍しくも無い光景だが、この世界の住人にとっては、全くの未知との遭遇であった。
「不思議な光景です。この様な未知の神秘を体験出来るとは、長生きしてみるものです。地母神様とこの出会いに感謝を」
司祭長は、目を閉じ声を上げ祈りを地母神に捧げていた。
記録係りの助祭も、一心不乱にこの出来事を記している。
無理も無い、文献にも篝火やエストについて簡潔に表記されていたが、実際の現象を目の当たりにしたのだ。
現実目にし体感するのと、文献で知識だけで見聞きするのとでは雲泥の差がある。
「・・・あっ、火が消えていく・・・・・・」
程無くして篝火は急速に衰え完全に消えてしまい、後には燃え尽きた灰と螺旋の剣の欠片が残されていた。
やはり亡者の遺骨では、数分が限界であるらしい。
……
燃え尽きた火の後始末を衛兵の一人に任せ、尋問は終わりを迎えようとしていた。
「くれぐれも今宵の内容を根拠の無い個人の裁量で流言流布し、市民に混乱など招かぬ様お願いしますよ!皆様方」
司祭長が全員に釘を刺し、この件に関しては、
あくまで、この件は地母神の神殿で解決を図った――旅の者が不審物を所持していた為、早急に取り上げ処分した。
そう処理したいのだろう。
「灰の方、貴方もみだりに口外しないで頂きます。それで宜しいですね?」
無論灰にとっても否定する理由など無かった。
余計な揉め事などこの街に持ち込んだところで何一つ利点など無く、灰自身もこの街で生きていく術を学び身に着けていく必要があるのだ。
「では、火の無い灰。貴方に処分を言い渡します!」
司祭長が、厳かな口調で最終処分を言い渡す。
――流石に無罪放免という訳にはいかぬか。
こればかりは素直に従った方が良さそうだ、今更暴れて状況を悪化させたくは無い。
彼は、どのような処分をも受け止める覚悟を決めた。
処分の内容は、こうだ。
一つ、先ずは数日間この神殿に滞在する事。
一つ、滞在中、午前は座学を通じてこの世界の一般常識と、読み書きを習得してもらう事。
一つ、午後は、雑用に従事してもらう事。
――以上であった。
表向きは処分と言う名目だが、実際は冒険者になっても不便の無い様に…との司祭長の配慮の面が大きい。
「・・・・・・慎んで御受け致します、司祭長様」
灰は特に反論する事無く、深い一礼で応え感謝の意を込める。
そして司祭長は立ち上がり。
「これにて、閉廷!・・・各々方、ご苦労様でした。謝礼は、守衛室の関係者からお受け取りください」
一同も立ち上がり、一礼で応え尋問は終了した。
気が付けば、彼に向けられていた剣呑な雰囲気は消え失せていた。
「ああそれと、一つ言い忘れてました灰の方」
突如司祭長に呼び止められる灰。
何事かと思い、振り返ると司祭長からこう告げられる。
「余り素顔を衆目に晒さない方が宜しいかと」
――?
話の意図が理解出来ず”どういう事か?”と灰は思わず尋ねてしまう。
「・・・・・・非常に申し上げにくいのですが、貴方の容姿は信徒達に・・・、特に若い女性の信徒達の信仰に影響を与えてしまう可能性があるかも知れません。」
この建物は地母神を祭り信仰する神殿、どちらかと言えば女性の信徒が多い。
つまり灰の容姿は、大なり小なり、うら若き純真な女性達の信仰心に影響を与えてしまう恐れがある為、素顔をなるべく隠してほしいとの要望であった。
前の世界での彼は、容姿なぞ全くと言っていいほど歯牙にも掛けなかった為、完全に無頓着になってしまっていた。
そもそも殺し殺されの殺伐とした時代に、見た目に拘る様な猶予など微塵もない。
四方世界に流れ着いたばかりの彼は、未だ
周囲をよく見てみると、司祭長の傍らに居る記録係の助祭や監督官候補は、十台半ば~後半ぐらいの若い女性だ。
彼と目が合った途端に顔を逸らし目を合わせようともせず、心なしか熱っぽい表情も浮かべている。
――・・・・・・ショックだ、まさか私の容貌がこれ程までに醜悪極まりないとは。
灰は、若干の衝撃を覚え女騎士に目を見やる。
女騎士は何とも言えない表情をしながら曰く。
「司祭長様の言う事に一理あるな。私は余り気にしないが全員そうはいかない、素直に従っておくといい」
そこまで言われては無視しないわけにもいくまい。
鎧戦士から貰った、布シーツで簡易的なフードを作ることにしよう。
そう決め従う事にした。
そして、一同が部屋を後にする途中で奇妙な音が鳴り響く。
・・・クゥ・・・。
何の音だろうか?
各々が部屋を見渡す。
・・・クゥ・・・。
またしても奇妙な音が鳴り響いた。
「ホッホッホ・・・、どうやら空腹な方がいらっしゃるようですね」
司祭長が口に手を当て控えめに笑っていた。
更に何度か空腹音が部屋に鳴り響き、音の主を割り当てた。
皆、女騎士と火の無い灰の方に視線が集中する。
「わっ、私ではないぞ!・・・ええぃ!何故私の方を見る?!」
女騎士は、顔を真っ赤にし必死に否定した。
その間にも腹の虫が何度も鳴り、音の主は。
「どうやら私のようです・・・・・・、お見苦しいところを申し訳ない」
音の主は、灰だった様だ。
バツが悪そうに、灰は何とも言えない表情をしている。
「不死人って、食事を摂ったりするの?」
監督官候補の女性が質問した。
灰は否定する。
不死人となった時点で体の成長は止まり、老いる事も飢える事も無くなる。
食物を口から摂取する行為自体は可能だが、彼の居た世界では、真面に食事を採る概念すら失われて久しい。
この様に人間としては当然の生理現象、空腹感を覚えるなど何時以来だろうか?
突如、彼の言葉が思い起こされる。
『このジークバルト特性の、エストスープは如何かな?不死人とて、たまには食事の真似事も悪くはないぞ』
冷たい谷のイルシール、かの地の下水道を抜けた先の暖炉で身を休めていた、陽気なカタリナの騎士ジークバルトが、精魂込めて振舞ってくれたエストスープ、思えばあれが記憶に残る最後の食事だろうか?
暖炉の前で冷え切った身体を温め、ゆっくりと食事にありついた。
彼は、陽気に豪快に笑い飛ばし、あの瞬間を最大限に楽しんでいた。
彼の生き様に、どれだけ救われていたか計り知れない。
灰自身は自覚していなかったが、亡者化しかけた状態でありながらも確かに心底笑っていたのだから。
暫し空腹感も忘れ、遠い記憶に思いを馳せていた灰。
「どうやら貴方は、本当に不死の呪いから解放されたのかも知れませんよ」
司祭長の言葉で我に返る灰。
――本当にそうであってほしい。
灰は心底そう願った。
もう不死人として存在していくのは、只の苦痛でしかないのだ。
「では灰の方を部屋へ案内なさい。食事は後程、持って来させますので」
司祭長の指示で衛兵の一人が、灰を部屋に案内するので後に続く様に促された。
……
― 冒険者ギルドにて ―
「・・・では、この黒いゴブリンを『ダークゴブリン』と呼称しますが、それで宜しいのですね?」
受付譲が確認の意を含め鎧戦士に尋ねる。
「ああ、構わん。報告すべき事は以上だ」
鎧戦士は短く頷く。
「長きに渡る討伐と報告義務、本当にお疲れ様でした!」
受付嬢は、笑顔で答える。
鎧戦士は再度頷き、踵を返しギルドを発った。
これから帰路に着くのだろう、夜も更けている時間帯だ、彼も流石に疲労の色が見え隠れしていた。
若干の重い足取りで帰るべき場所、町外れの牧場へと足を向けた。
大切な人が待っている、あの牧場へ――。
ギルドには、冒険者は誰一人居ない。
閉店時間である。
「はぁうわぁ~~・・・・・・」
受付嬢の顔が、溶けたブロブの如き表情で机に突っ伏した。
まだ新人の域を抜け切れていない彼女にとって、今日の業務は流石に堪えたのだろう。
「夜遅くまでお疲れ、はい差し入れ」
隣で彼女の業務を最後まで見守っていた先輩嬢が、ハーブティーを差し入れてくれた。
飲みやすい温度に細やかに調整してある。
「・・・はわぁ、頂きますぅ」
一口、口に含み喉の奥にゆっくりと流し込む、その一口分の液体が五臓六腑に染み渡った。
仕事の後の一杯は格別だ、それが茶であれ酒であれ。
「今日の彼、本当に珍しかったわね?」
先輩嬢が報告に来てたあの鎧戦士について話し始めた。
本当にその通りだった。
何時もゴブリン退治のみを請け負い、成功させ、必要事項だけを報告する彼が今日に限って多弁であったのだ。
「黒いゴブリン・・・・・・、改めダークゴブリンでしたか」
この黒いゴブリンに対して特に熱が篭っていた。
只人と同じ言葉で喋り、高い知性と桁外れの戦闘力、素直に劣勢を認め同族の為に殿を自らの意思で受けもつ。
正直前代未聞、異例中の異例――俗にいう”異端”である。
「まぁ流石に口伝だけで信じろ・・・っていうのも少々抵抗があるわね」
先輩嬢が本心を口にする。
実際に体験していない者に、未知の存在を報告のみでの証明は難しいだろう。
「彼は、虚偽を報告する様な人では、ありませんよ」
受付嬢は即座に反論した。
別に彼を特別擁護しようとした訳でない、此れまでの彼の人柄、実績を鑑みた正当な評価に基づいてだ。
(些かの私情も含まれているが)
「はいはい分ってるわよ?彼の事となると直ぐにねぇ・・・・・・」
先輩嬢のニヤニヤした表情が受付嬢に向けられた。
「んもぅっ!そんなんじゃないんですってばっ!」
受付嬢の顔が真っ赤に膨れ上がり慌てて否定した、実に判り易い素直な性格である。
閉店時間の迎えたギルドに、職員の声が木霊した。
……
地母神神殿の一室。
尋問の終えた灰に、あてがわれた部屋である。
公式上一応は罪人なのだが、小奇麗な一室で適度な広さと机、椅子、寝台、一通りの家具が揃えられていた。
生活するのに不便は感じられない。
司祭長の配慮なのか、或いは地母神という存在そのものが、慈悲深い神の成せる施しなのか灰には判別しかねる。
―・・・地下牢に幽閉されると踏んでいたのだがな・・・。
灰はそんな事を考えていた。
やはり、火継ぎの旅が長過ぎたのだろう。
どうしても、物事を悲観的に悪い方向へ捉えてしまう癖が身に付いてしまっていた。
特に何をするでもなく時間を潰していると。
― コンコン
ドアをノックする音が鳴る。
「開いてます」
灰は声を掛けた。
「では失礼します」
幼い少女の声がした。
ドアが開かれ入ってきたのは、まだ十歳に成るか成らないかの幼い金髪碧眼の女の子だった。
質素な見習い修道女の衣服を身に着け、愛らしい笑顔を此方に向けていた。
食事の乗った盆を手に持ち、机の上に運ばれ置かれていく。
暖かい香りが鼻腔をくすぐり、灰の腹は深淵の闇に誘うかの如き音を発す。
はっきり言って、恥ずかしい事この上ない。
クスクスと少女の笑い声が聞こえて来る。
「さぁ、準備出来ましたよ。共に頂きましょう」
―?、ん?共に頂く?
どうやらこの少女も食事を共にするらしい。
「この神殿の人達は、こんな夜遅くに食事を?」
この世界に疎い灰でも流石に、夜も更け深夜である事くらいは容易に想像がつく。
「あはは、まさか。私も夜遅くまで作業のお手伝いをしていたので、司祭長様から共に頂くと良い、との慈悲をお授けになられたのです。では、頂く前にいと深き地母神様へ感謝の祈りを」
少女は静かに目を瞑り、祈りを捧げる。
灰もそれに従い、見様見真似ながら少女の動きに習い祈りを捧げた。
・・・但し地母神に向けたのは、感謝ではなく抗議にも似た疑問だった。
――地母神よ!どういうつもりか?( ゚ ω ゚ )
――得体の知れないこの私の元に、この様な純心無垢な少女を寄越すとは。( ̄ω ̄;)
――火継ぎの世界からやって来た不死人だぞ?、襲い掛かる可能性は考慮しなかったのか?( ̄ー ̄)
――前の世界では私は、比較的まともだと認識されていたらしいが、この世界の水準に照らし合わせると少々怪しい。( ̄△ ̄)
――私が、ゴブリン並みの異常者だったらどうするつもりだったのか、この少女を遣わす司祭長も司祭長だ!( ゚Д゚)
決して声には出さないが、長い抗議と言う名の祈りを、少女は目の当たりにし心配そうに声を掛けた。
「随分長い祈りを捧げている様ですけど、冷めてしまいますよ?」
灰は、我に返る。
――いかんな、白教の奇跡を行使するならともかく、信仰した事の無い地母神に疑念をぶつけても応えてくれる筈も無い。
祈りを止め灰と少女は、食事を口に運んだ。
どうやらこの食事は、夜食にあたるらしい。
決して豪勢ではないが、机に並べられた料理は出来たてで、温かな香ばしい香りが食欲をそそる。
焼きたてのパン、乾燥豆のスープ、蒸かしたジャガイモ、カットされた果実。
灰の僅かに残った不死人以前の記憶にも、これらの料理の味が脳を刺激し口の中に唾液を満たし始める。
「――美味い!」
思わず声に出す、只その一言に尽きた。
口に運んだ食物の味は、灰の舌を通じて心身共に拡がるかの様な感覚に陥る。
思えば不死人時代に口にしたものは何だったろうか?
苔玉の実、緑化草、虫の丸薬各種、そしてエスト瓶、etcetc。
辛うじて食事らしき物は、エストスープとジークの酒ぐらいしか思い出せない。
我ながら荒んだ生活を送っていたものだ。
しみじみと過去に思いを馳せながら食事を口に運んだ。
それはそうと先程から少女が、灰の顔をじっと覗き込むように見ている。
灰は何事かと視線を向けた、もしかして余りに浅ましい食べ方でもしていたのだろうか?
ふと心配になる。
しかし少女は、そんな灰の心情を知ってか知らずか。
「あのぉ、
どうやら灰が、素顔をフードで隠しながら食事しているのが気になっていたらしい。
「いや、気にしなくていい。司祭長様にも念を押されていてね、極力素顔を晒すことは控えよ、と仰せつかったのだ」
灰は、事情を簡単に説明した。
「ご、ごめんなさい!」
少女は、慌てて謝る。
「此方こそ不快な思いをさせて申し訳ない。・・・さ、それよりも食事を済ませてしまおう」
灰と少女は、やや手早く食事を済ませた。
……
「有難う。馳走になったよ」
お互いに食事を済ませ灰は、少女に感謝の意を述べた。
フードで顔は隠れていても口元は見えるため、灰が微笑んでいるのが少女にも分かった。
少女も笑みを返し食べ終わった食器を盆に載せ片付けていく。
「いえ、これも地母神様の思し召し。」
「それでは、明日の朝起こしに行きますので、ごゆっくり御休み下さい」
手早く片付けた少女は、そう言い部屋を後にした。
残された灰は、ランプを薄明かりの強さにまで弱め、寝台に横になる。
完全にランプの火を消すことが出来なかった。
誰の言葉だっただろうか?
―― 灰は残り火に惹かれるものさね ――
全くもってその通りだった。
――未だに火と言う物に執着し続けている私は、火継ぎの呪縛から抜け出せていないのやも知れん。
「二つの月か・・・・・・、本当に別世界に来たのだな」
横になった灰は、窓から映し出される二つの月明かりに照らされながら、目を閉じた。
これまでの激しい出来事が予想以上に灰の身体を酷使していたのだろう。
そう時間を掛ける事無く、睡魔が灰を支配していった。
そして静かに夜が更けていく。
如何だったでしょうか?
この灰は、腹も空くし、生理現象もあります。
そして出会いました、後の神官少女となる子と。
なんだか予定以上に長引いてしまった、灰が冒険者に成れるのは何時になる事やら・・・・・・。 ( ゚ ρ ゚ )
も少しこの神殿のお話は続きます、ハイ。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
ではマタ。( ゚∀゚)/