ゴブリンスレイヤー ―灰の剣士―   作:カズヨシ0509

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 どーもです。
投稿致します。
漫画の方では、孤電の術士編から先が描かれているようですね。
私はまだ読んでいないのですが、どの様な話が展開されるのかとても楽しみです。
では続きをドゾ。


第65話―ロスリックのゴブリンハザード(終章)―

 

 

 

 

 

毒咬みの指輪

 

 カリム公アルスターが作らせたと言われる

 独特の「咬み指輪」の1つ。

 

 その製法にはよからぬ噂もつきまとうが確かな効果があり

 毒咬みの指輪は、装備者の毒耐性を高める。

 

 柔らかな石に不吉を感じるものか、その製法は禁忌であるという。

 聖職者だけが、それを弄ぶのだろう。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 いつも通り。

 

そう形容するに相応しいだろう。

 

ロスリック拠点街の一角にある、冒険者ギルドは多数の冒険者で賑わっている。

 

大きな円卓を囲む様に、座している冒険者と騎士――。

 

「――なんと、その様な事態がっ!?」

 

 深緑の外套を纏った一人の剣士『灰の剣士』からの報告を聞き、驚愕を見せるは正規騎士。

 

「残念だが、多勢に無勢…その上、飛翔されては手の打ちようが無い」

 

 亡者の穴倉の戦いから、更に探索を続行した灰の剣士一行。

 

道中存在する筈の亡者は殆どが姿を消していたが、代わりに多数のデーモンがロスリック外へと飛び去ってしまったのだ。

 

デーモン群の標的は定かではないが、方角からして王都方面だと推測できた。

 

「我々の知るデーモンも居たが、初めてお目に掛る個体も居たな」

 

 カタリナのジークバルドも言及する。

 

火継ぎの時代のデーモンと四方世界のデーモンが混在した形で、不死街に集結していた。

 

外観だけでも強力な個体種だと判断出来るデーモンも数多く居た存在し、その様相は正に混沌と呼ぶに相応しいだろう。

 

もし、デーモン軍がこの拠点街に殺到でもしたら、太刀打ちは至難であろう。

 

「――良くぞ調査し生還してくれた。この情報も報告項目に加えておこう」

 

 彼等からの話を聞いた正規騎士は、報告書にペンを走らせる。

 

行方不明者の発見、他国の介入、組織だった邪教徒の存在、そして逃走したデーモンの群れ。

 

本来なら小鬼禍(ゴブリンハザード)を断つ事が主目的であったが、今回の調査は非常に意義のある成果といえよう。

 

「そう言えば、今回の首謀者たちの処遇は、どうなっているのか?」

 

 亡者の穴倉にて確保した首謀者と大勢の一般人が気になり、灰の剣士は正規騎士に近況を訪ねた。

 

正規騎士の話によると、不死である首謀者は厳重に監視した上で、王都へと護送する予定だ。

 

灰の剣士自身はもう彼に用など無いが、王都側からすればまだまだ調べる余地が多分に含まれている。

 

加えてあの首謀者は、特殊な秘術で不死と化している。

 

此処では手に余る存在でもあった。

 

管理は王都に任せた方が良いと判断した次第だ。

 

そして、救助された大勢の一般人――。

 

暫くは療養させ、可能な限り彼等の希望を叶える事にした。

 

大半は王都や都市部への移住を希望しており、彼等の何割かはこの拠点街や別の村への移住を希望しているのだという。

 

本当なら直ぐにでも王都へと報告に向かいたい処だが、如何せん消耗が激しく、調査隊の兵士を含め正規騎士自身も疲労が蓄積していた。

 

加えて移動の為の部隊編成も必須となり、出発は二日後となった。

 

逸る気持ちはやまやまだが、行軍途中で倒れては本末転倒だ。

 

「危険な探索に感謝致す。今日と明日はゆっくりと体を休めて頂きたい。王都へと向かう馬車に加え、西方辺境街へ向かう馬車も提供いたそう」

 

「感謝致します」

 

 こうして正規騎士への報告会は終わった。

 

 

 

一方その頃……。

 

 

 

―― ギルド受付カウンター ――

 

 

 

灰の剣士たちが正規騎士へ事の顛末を知らせている間、重戦士や同期戦士が受け付け嬢へ今回の報告を行っていた。

 

不死街の様子、亡者の穴倉、呪腹の大樹、邪教徒達、滅び去り流れ着いた幾多の故郷。

 

そして最後に目にした財宝の山々――。

 

正直に言おう。

 

彼等の報告に、聞き耳を立てている多数の冒険者達。

 

冒険者達の関心は、もっぱら財宝の山々に関心が向いている。

 

『――おいっ、その情報確かなんだろうな?』

『――何処にあんだよっ!?そのお宝の山ってのは?』

『勿体付けてねぇで、早く教えな!』

『信じていいのかしら、怪し過ぎるわ!』

 

 口々に情報の精度を確かめようとする、冒険者達。

 

「お前等うるせぇぞっ!ちったぁ落ち着きな!順を追って説明してやるからよっ!」

 

 大声で凄む数多の冒険者達に、槍使いも負けずと大声で応対する。

 

そう――。

 

彼等全員が帰還してからというもの、このギルドは終始こんな調子なのだ。

 

少年斥候や鉱人斥候が作成した地図は、大半のギルド職員を動員して模写(コピー)作成へと割かれた。

 

「一応これが証拠品だ、確認してくれ」

 

 重戦士が自分の小袋をカウンターへと置く。

 

不死街で回収した財宝のごく一部が入っていた。

 

荷馬車数台分ほども積み上げられていた財宝の山。

 

当然個人で持ち切れる筈も無く、こうして小袋に詰め込んだ訳だ。

 

「……確かに、この国では見ない貨幣や宝石ばかりですね。嘘発見(センス・ライ)にも反応する様子も見られません。この報告は信用に値すると判断させて頂きます」

 

 ギルド職員が、提出された財宝の一部を検分し、彼の報告に虚偽が無い事を確認する。

 

「――じ、じゃあ本当なのか!?財宝が有るっていうのは……!?」

「――そこへ辿り着きさえすれば、俺達も……」

 

「別に引き留めはしねぇがよ、行くんだったら準備と計画をしっかり練ってからにしな!アイツらの様になりたくねぇだろ?」

 

 槍使いは、顎で別のテーブルを指す。

 

そのテーブルには肩身の狭そうな表情で、酒を飲んでいる集団が居た。

 

灰の剣士達の後を付け、ロスリックへと侵入した冒険者の生き残り達だ。

 

彼等も中堅の実力者ではあったが、人選と連携の不備が露呈し邪教徒の虜囚となってしまった。

 

結局、灰の剣士達の尽力で彼等は救い出され、何とか生還する事が出来た。

 

これを機に彼等も何かしら学び取り、後進の助けとなってくれれば幸いだ。

 

「そ、そうだよな!やっぱ、前情報と準備は入念にな――」

「それから信頼できる奴等と組まねぇとよ――」

「なるべく戦闘を避けながら、最短ルートで行きましょ――」

「早速計画をだな――」

 

 事は進み夜も更け、ギルドでの報告は一段落が付いた。

 

 

 

灰の剣士達は休養を取る為、併設された3階建ての宿屋でそれぞれの時間を過ごす事となった。

 

出発は二日後だが、ゴブリンスレイヤーが連れ帰った二人の遺体は、交易神の神殿に安置し腐敗を防ぐ為に保存の魔法をかけて貰っている。

 

牧場に戻る迄には充分もつだろう。

 

 

 

……

 

 

 

―― 拠点街・三階建ての宿屋 ――

 

 

 

大勢の冒険者が宿泊できるよう、多くの部屋を設けた大きな施設。

 

その三階の一区画にある玄室に、二人の男がテーブルを挟み言葉を交わしていた。

 

灰の剣士とカタリナのジークバルドである。

 

普段鎧姿な彼だが、こういう場ではさすがに兜を外し、素顔を晒している。

 

クッキリとした目元に、やや色黒な地肌、そして陽気さと親しみ易い顔立ちの男性といった風情だ。

 

「そうか、矢張り『罪の都』を――」

 

「――うむ、私がロスリックに赴く理由など、一つしかないのでな」

 

 彼、ジークバルドが単身ロスリックに潜入していた理由――。

 

薄々とは感じていたが、罪の都を目指していた様だ。

 

其処に何が在るのか。

 

最早、多くを語る迄も無い。

 

「薪の王の一人、巨人ヨーム――」

 

「……」

 

 ロスリック地底深くに存在する滅び去った都――。

 

滅び久しいその都も流れ着いた故郷の一つ。

 

その都は太古の昔、巨人の英雄『ヨーム』が治めていた。

 

ジークバルドとヨームは、古くからの盟友同士で固い絆を育んでいた。

 

二人の間に、どの様な経緯があったのかは、灰の剣士には分からない。

 

しかしジークバルドとヨームは、ある誓いを交わしていた。

 

火の陰ったあの時代。

 

ジークバルドはヨームとの古い約束を果たす為、単身ロスリックへと乗り込み罪の都を目指していた。

 

その道中、同じく使命を帯びた灰の剣士と出会い、時に共闘し時に協力し合いながらそれぞれの目的に向かった。

 

遂に念願叶いジークバルドは巨人ヨームの元へと辿り着き、既に先行していた灰の剣士と共に命を凌ぎ合う激戦を繰り拡げた。

 

仮にも薪の王の一人である巨人の王ヨーム。

 

その力は凄まじく、圧倒的な暴力そのものであった。

 

長きに渡る戦いの末、辛くもヨームを打ち倒し約束を果たしたジークバルド。

 

全ての使命を果たし終えた彼は、そのまま力尽き命を全うしたのであった。

 

そして今の四方世界――。

 

ジークバルドも不死人ではなく真っ当な生者として、この世界に再び蘇ったのである。

 

見知らぬ大地に見知らぬ世界――。

 

当初彼も困惑し路頭に迷ったが、アテもなく彷徨う内に南方辺境街に辿り着く事となる。

 

其処で四方世界と冒険者についての情報を得て、紆余曲折ありながらも現在に至っている訳だ。

 

「この四方世界にヨームが居るとは限らぬ。しかし、私がこうして生きている以上、確かめずにはいられんのだよ」

 

 一頻り言葉を吐き出したジークバルドは、ジョッキの麦酒を一気に呷った。

 

喉を鳴らし、ジョッキの麦酒は空になる。

 

「ふぅ~~、冒険後の酒は一段と格別だ!……私も騎士の端くれ、いい加減器用に立ち回らねばならんのだが、こればかりは……な」

 

 口元に麦酒の泡をこびり付け、彼は自嘲気に笑う。

 

「誰も貴方を責める事など出来んさ。時代が変わろうとも、巨人ヨームとも繋がりは何人たりとも汚せぬよ」

 

「済まんな、気を遣わせてしまったか?」

 

「気にしなくていい。……そう言えば貴公、腕の良い鍛冶師を探しているそうだが?」

 

「おお、そうだった。あの『アンドレイ』殿がそっちに居るという話ではないか?」

 

 鉱人斧戦士から聞いた腕の良い鍛冶師――。

 

その情報を得たジークバルドは、大層驚き次の目的地を西方辺境街へと定めていた。

 

「腰に下げてる、ずだ袋と関係が有るのか?」

 

 ジークバルドの腰に釣り下がっている、大き目のずだ袋に視線を向ける灰の剣士。

 

よく見れば、鉄糸で丹念に細やかに編まれ、突起物を収納できるように改良されている。

 

刃物で擦り切れないように加工された、特殊な造りの袋だ。

 

「……そうだ。貴公も良く知る()()()()だ」

 

 ジークバルドは鉄糸入りのずだ袋を机の上に置き、縛り紐を緩める。

 

中から出て来たのは、ボロボロに朽ち果て崩れ去った金属物の残骸だった。

 

「……ストームルーラー」

 

「――左様」

 

 崩れ去った金属物……灰の剣士には覚えがあった。

 

嘗てジークバルドが愛用していた剣がそのストームルーラーであり、もう一つが巨人ヨームの玉座に安置されていた記憶がある。

 

名の通り嵐を司る力を秘め、巨人に抗する術を備えた剣でもあった。

 

使命を果たした後この四方世界へと転生したが、その時には朽ち果て役目を終えた二振りのストームルーラーが散らばっていた。

 

彼は何とかそれを拾い集め袋へと詰め込み、各地を放浪した。

 

そして行く先々で、様々な鍛冶師にスト―ムルーラーの修復を依頼したが、誰一人彼の願いを叶える者は存在しなかった。

 

金属生成に絶対の自信を持つ鉱人でさえ、匙を投げる始末で彼は半ば諦めてもいた。

 

しかしストームルーラーは巨人ヨームから授かった、言わば絆も同然の品である。

 

捨てるなど、到底考えられない。

 

「確かに、アンドレイなら或いは……」

 

「うむ。よもやアンドレイ殿までこの世界に居たとは驚きだが、これで少しは希望が見えて来たなウワッハッハッハ!」

 

 灰の剣士はもう一つ気になっていた事、『篝火』について彼に聞く。

 

「時に貴公、『篝火』の生成はどうしている?」

 

 見た所ジークバルドには螺旋剣を所持している気配はない。

 

「ハッハッハ、それなら心配には及ばん!」

 

 彼は陽気に笑い、懐から『螺旋剣の破片』を取り出して見せた。

 

「そうか、杞憂だった様だな」

 

「お互い、篝火の生成には苦慮している様だな」

 

「全くだ」

 

 どうやらジークバルド自身も『螺旋剣の破片』を所持していた様で、エスト瓶については何の問題も無いとの事だ。

 

アンドレイの所在も明らかになり、ストームルーラーの修復も希望が見えて来た。

 

実際どうなるかはまだ断定は出来かねるが、ジークバルドは上機嫌になり追加で麦酒を注文する。

 

「さて、灰剣士殿。こうして我等は再開できた訳だ!()()()()()で乾杯しようではないかっ!」

 

 酒が到着し、ジークバルドはジョッキを片手に祝杯を挙げようとした。

 

「そうだったな、貴公との再会――。これは素直に祝うべき現実だ。では久方振りにいこうか?」

 

 余り減っていない果実酒の入ったジョッキを片手に、灰の剣士も彼に応える。

 

「では…貴公の生と、我が生――」

 

 ジークバルドが語り――。

 

「そして我らそれぞれの再会に――」

 

 灰の剣士も応える。

 

「「―― 太陽あれ! ―― ウワハハハハッ!」」

 

 二人同時にジョッキをカチンと鳴らしぶつけ合った。

 

そして一気に酒を飲み干す。

 

「――っぷっはぁぁ~…堪らぬ!矢張り酒はこうでなくてはな!」

 

 ジョッキを降ろし大きく息を吐くジークバルド、彼はご満悦だ。

 

「――ふぅぅ……、流石に一気飲みは厳しいモノがある」

 

 余り度数の低い果汁酒を選んだのだが、彼自身酒には弱く頭がふら付いていた。

 

「ウワッハッハッハ、お互い生者で良かったではないか!不死のままでは、酒に酔う事も叶わなかったのだ!」

 

「確かにな、ハハハ」

 

 あらゆる欲求が希薄となり、感情すらも喪失してしまうのが不死人だ。

 

こうして酒に酔い、味を楽しむ事すら困難であった。

 

しかし今は生者だ。

 

二人は各々で酒に酔い、今在る人生を噛み締めていた。

 

「ふぅ……、さて。私は少し眠ってゆくとするか、祝杯の後は寝ると相場が決まっているのだからな……ZZZzzz…」

 

 これも懐かしいやり取りだ。

 

あのロスリックの地でも彼とこうして祝杯を交わし、決まって彼は眠りに就いてしまうのだ。

 

「ああ…ゆっくりと休むが――って、ちょっと待て貴公っ!?せめて自室で休み給えよッ!」

 

 いきなり玄室で眠りに就き、既に(いびき)をかいていたジークバルド。

 

最早ちょっとやそっと揺らした処で起きる気配は無い様だ。

 

仕方なく灰の剣士はジークバルドを背負い、彼の自室へと連れて行った。

 

――ジークバルドめ、まさかとは思うがロスリック探索中に亡者のど真ん中で就寝してたんじゃないだろうな?

 

彼は数日間ロスリックに籠もっていたらしいが、どうやって夜を明かしたのかは定かではない。

 

西方辺境街へ帰還するのは二日後だ。

 

寝息を立てるジークバルドを寝台に寝かせ、灰の剣士は明日の予定を立てながら自室へと戻った。

 

 

 

―― 翌日 ――

 

 

 

日が昇り人々の活気が此処にまで届く。

 

カーテン越しに日の光が部屋まで差し込み、街の喧騒が彼の耳を打つ。

 

「……何だ……、もう朝か……」

 

 瞼をゆっくりと開け、寝台から起き上がるのは灰の剣士。

 

何気なく隣の寝台に目をやったが、既に彼は居ない。

 

――相変わらずの早起きだな、彼は。

 

ゴブリンスレイヤー、彼の朝は何時も早い。

 

ゴブリン退治の依頼があろうがなかろうが、それが変わる事はないのだ。

 

「さて私も起きるか」

 

 近くに置いてある水差しから喉の渇きを潤し、彼も身支度を始めた。

 

食事を摂るのは外出してからでも出来る。

 

何時もの格好に一冊の書物を携え宿から出た。

 

――この拠点街で一夜を明かすのは初めてだ。

 

普段目にする西方辺境街の街並みとは、また違った味わいを持つ拠点街の活気――。

 

多種多様な種族が、色とりどりの衣服に身を包み街を闊歩している。

 

街の隣は死と呪いが渦巻くロスリックなのだが、それを思わせない程に生ある営みに溢れていた。

 

彼はそんな営みを目にしながら或る場所へと向かっていた。

 

――一応約束していたからな、私の記憶違いでなければ確か彼女はギルドに居る筈だが…。

 

不死街へと旅立つ前の晩、ある少女となし崩し的に約束を交わす羽目となってしまった。

 

王都に位置する賢者の学院に籍を置き、深い知識と見識を有す少女だ。

 

彼女は不死街へと同行を申し出ていたが、いつ不測の事態が起きるとも知れぬロスリックだ。

 

無論彼は少女の申し出を断ったのだが、彼女を泣かす結果となり彼は仕方なく妥協案を提示し無理やり納得させたのである。

 

幸い『亡者の穴倉』には古びた書物が幾つか置かれ、呪腹の大樹と邪教徒との戦いを終えた際、秘かに回収しておいた。

 

その書物は、火継ぎの時代に使われていた言語で記された、ソウルの概念と魔術を扱っていた。

 

もう昼近くなのだが彼の遅い起床の原因は、その書物を解読していた為であった。

 

夜更けまで解読に当たっていたのだが、分厚い書物を完全解読するのは不可能で、解読は重要部分に絞られたが、彼女等なら時間を掛けて解き明かしてくれる事だろう。

 

「――剣士様ぁッ!おはよう御座いますっ!」

 

 ギルドを目指す道中、一人の少女が声を掛けて来る。

 

見習い剣士の少女だった。

 

「おはよう、よく眠れたか?」

 

 彼も少女に気付き挨拶を返す。

 

「え…と…その…一人ではちょっと…アレだったので……皆様のお部屋に……」

 

 少女は言葉を詰まらせながら、頬を紅く染め目を逸らす。

 

そもそも彼女本来の仲間は皆、亡者の犠牲となり()()()と言う所で、灰の剣士達に助けられたのである。

 

その後共闘し、亡者の穴倉戦と不死街探索を乗り切った訳だが、その後彼女は実質独りとなる。

 

11~12の彼女にロスリックの体験は強烈に心に刻み込まれ、意図しようがしまいが独りで就寝できる筈も無い。

 

彼女は怖くなり女性陣の部屋と尋ね、其処で寝させて貰ったのである。

 

「…………」

 

 少女は伏目がちに俯く。

 

寧ろあの様な体験を得ながら、均衡を保っている彼女の強さは特筆に値するだろう。

 

灰の剣士は特に言葉を発する事も無く、彼女の肩に手を置く。

 

驚いた少女は彼を見上げ、灰の剣士は力強く頷きを返した。

 

「あの…剣士様はこれからどちらへ?」

 

 彼の動向が気になり思わず尋ねる。

 

「これからギルドへ向かう。この書物を渡さねばな」

 

「私も御一緒して宜しいですか?」

 

 学院の少女との約束を果たす為、彼はギルドを目指していた。

 

特に予定もない少女は同行を申し出、彼も拒む事はなかった。

 

「構わぬ、では行こうか?」

 

「は、はい!」

 

 既にギルドは視界に映っているのだが、少女は笑顔で返事し彼に追従した。

 

「……」

「……」

 

 お互い言葉を交わす事も無かったが、見習い剣士の表情は何処か安堵に包まれていた。

 

原因は分からない。

 

だが、何故か妙な安心感に包まれるのだ。

 

――何者だろう、この御方は?

 

ギルドに着く迄、彼女の視線は灰の剣士に釘付けとなっていた。

 

『前を見て歩かんと、ぶつかるぞ?』

 

 少々の注意を受けたが……。

 

 

 

豪華な装飾が施されたギルドの扉が開かれ、二人は中に入る。

 

その瞬間、一斉に周囲の視線が此方へと注がれた。

 

『剣士……』

『剣士だ……』

『例のアイツか……』

『ロスリック生き残り組の筆頭……』

『あんな弱っちそうな奴が……』

『灰の剣士……』

 

 灰の剣士達が姿を現した途端、ギルドに屯していた冒険者がヒソヒソと陰口を叩く。

 

灰の剣士自身は平然としていたが、見習い剣士は彼等に対し睨み付けた。

 

彼は真っ直ぐ受け付けのカウンターに向かい、要件を告げる。

 

「いらっしゃいませ!ロスリックのギルドへようこそ!」

「実は学院関係者に用があってな、お取次ぎ願いたいのだが?」

 

 職員は少し時間が掛かると告げ、直ぐには来れないと言う。

 

仕方なくカウンター付近で待つ事にし、適当に周囲を見回した。

 

よく見れば見知った面々が酒を嗜んでいたり、会話に華を咲かせていたりしている。

 

――ジークバルド……、少し飲み過ぎではないかね?

 

中にはカタリナのジークバルドの姿も確認でき、重戦士の一団に混ざり酒を楽しんでいた。

 

「あの…剣士様…?」

 

「何か?」

 

 見習い剣士の少女が遠慮がちに尋ねる。

 

「剣士様は……その……王都に来られる予定は…おありですか……?」

 

 彼女は王都の剣士団に所属し、日々研鑽を重ねていた。

 

灰の剣士が王都出身者でない事は承知している。

 

しかし彼女は、彼の今後が気になり訊ねずにはいられなかった。

 

「いや、特にない」

 

「……そう…ですか……ですよね…は…はは……」

 

 きっぱりとそう言われ、彼女は落胆の色合いを見せる。

 

だがそれも致し方なし。

 

特に接点がなければ、王都に赴く理由も無いのが現状だ。

 

「私は西方辺境に籍を置く冒険者だ。何か有ればギルドを通し、依頼を寄越すと良い。その時は再び会えよう」

 

「――は…はい……!」

 

 しかし会えない訳ではない。

 

彼は冒険者で、西方辺境街の所属だ。

 

何か起きればギルドに依頼する事で、彼とも接点を持つ事も不可能ではない。

 

尤も、それ相応の理由が不可欠となるが。

 

『お待たせ致しました、彼女等は向こうに――』

 

 暫しの時間が流れ、ギルド職員が件の人物が到着した事を告げる。

 

二人は早速向かう事にした。

 

二人を待つローブを羽織った少女と数人の魔術師達。

 

「先ずは無事の生還、何よりです灰の剣士様」

 

 ローブの少女は深い一礼で、彼の帰還を労う。

 

年齢からして、見習い剣士とほぼ同じ年代であろう事は、想像に難くはない。

 

しかしローブの少女は、年齢の割に落ち着いている。

 

あの時取り乱した事が、まるで無かったかのようだ。

 

「さて約束だったな。――こんな物しか見付けられなかったが、これで貴公の欲求を満たせるだろうか?」

 

 早速本題に移ろうと、彼女に持ち帰った書物を渡そうとするも――。

 

「せっかちな人。そんなに急いでいるのですか?」

 

「……いや、そう言う訳では……」

 

 結局彼女の勧めで適当なテーブルを囲み、茶と適当な菓子を注文する。

 

一頻り茶を嗜んだ後、今度こそ件の書物を差し出す灰の剣士。

 

「……かなり古い書物ですね」

 

 ローブの少女はそれを受け取り、ページをパラパラと捲り目を通す。

 

「……古代文字の書籍。ある程度解読されているようですが、視たところインクが真新しい。これ程の解読量、あの邪教徒達が?」

 

「いや、私だ。時が限られたが故、全ては無理だった。済まぬが後は自身の力で成し遂げて頂きたい」

 

 少女は解読されている事に思案を張り巡らせたが、解読を行ったのは目の前に居る灰の剣士だった。

 

「――!?ま…待って下さい!これだけの量を貴方がッ!?」

 

 先程の落ち着きは何処へやら。

 

ローブの少女は素っ頓狂な声を上げ、身を乗り出す。

 

「ほう、これは興味深い」

「一体、貴方様は何者なのです?」

 

 彼女に付き添っていた大人の魔術師達も、彼に関心を向ける。

 

「こ…この文字は、遥か太古の古代文字ですよ!?四方世界が成り立つ遥か昔の、神々の時代、別名『火の時代』……おいそれと容易に解読出来るものではありません!学院高位の学士でも、一晩賭けて精々数行が関の山なのに――」

 

 声を捲し立て唾を撒き散らしながら興奮する、ローブの少女。

 

「私を詮索して貴公等に何が得られようか?」

 

 灰の剣士は平然と受け流し、逆に質問で返す。

 

「なに、我等は知識の探究者。貴方様を知る事で、新たな知的好奇心と開拓がありましょうや?」

 

 魔術師の一人が、ほくそ笑む。

 

灰の剣士は念の為、彼に対しソウルの流れを探るが、悪意の類は感知できず純粋な知的好奇心に基づく行動だった様だ。

 

「可能だから翻訳しただけだ。もし私が只者でなくとも、一冒険者で剣士である事には何ら変わるまい。……それとも此処で私を拘束するかね?」

 

 あくまで穏やかに、しかし言の葉に闘志を滲ませ放つ。

 

「…………」

 

 冒険者の賑わいに包まれている筈のギルド。

 

しかし、この空間だけ別に切り離されたかの様な、空気感が瞬時に張り詰めた。

 

「――うっ…あ…」

「――け…んし…様…」

「「「…………」」」

 

 見習い剣士は無論、魔術師の端くれである彼等でさえ感じとれるほどの迫力が、直接に伝わって来る。

 

「落ち着いて下され剣士様。気に障ったのなら、素直にお詫び致します。単純に興味を引いただけですので、どうかここは穏便に」

 

 一人の魔術師が深く頭を下げ、謝罪の意を示した。

 

「いや、此方こそ済まぬ。こういった事例が幾度かあってな。私とした事が大人気もなく、感情を昂らせてしまった、申し訳ない」

 

 灰の剣士も気を静め、彼等に謝罪する。

 

「ああそうだ。貴公らは学院所属なのだろう?」

 

「如何にも」

 

「ならば近い将来、入学希望者の男が訪ねて来る筈だ」

 

 灰の剣士は、彼等に然る男の事を話し出す。

 

その男は現在、西方辺境街に居を構えているが、知識と真理の探究を求め、賢者の学院に入学を希望しているのだという。

 

もしその男が門を叩いた場合、快く迎え入れて欲しいと頼んだ。

 

その人物は火の時代の魔術や知識に長け、この四方世界の知識に深い興味を抱いており、日夜研鑽を続けている。

 

学院に迎え入れる事が出来れば、太古の文化の研究に更なる進展がみられるだろうと吹き込んだ。

 

「生徒でなくとも、研究員や講師としてでも構わない。どうか頼めないだろうか?」

 

 駄目もとで彼等に頼み込んでみた。

 

「……ふむ、貴方様ほどの方が強く推す人物ですか?……いいでしょう、実際どうなるかは別として学院長にはその旨、お伝えしておきましょう」

 

「宜しく頼む!」

 

 どうやら話だけは通してくれるらしい。

 

「……では我々はこれにて――」

 

 一応お茶代を机に置き、灰の剣士と見習い剣士は席を立った。

 

「あ…あの、灰の剣士様!」

 

 突如ローブの少女も立ち上がり、彼を呼び止める。

 

「……?」

 

「その子は、剣士団所属の生徒ですよね。貴方様とどの様なお関係なのです?」

 

 ローブの少女は、見習い剣士の少女と灰の剣との関係を聞き出した。

 

「――な?何を言っている?この御方と私は、ロスリックで生死を共にした仲で、その…特別と言うか…それなりと言うか……」

 

 見習い剣士は顔を紅潮させ、しどろもどろになる。

 

「ロスリックで共闘した――。それ以上でもそれ以下でもない。……しかし何故(なにゆえ)その様な質疑を…意図が読めぬのだが?」

 

 灰の剣士は事実をあるがまま述べ、少女に質問の真意を問う。

 

「――!そ…それは…その……」

 

 ローブの少女は、フードを深めに被り直しモゴモゴと小声で喋るのみだ。

 

「ほっほっほ、お互いまだまだお若いという事ですよ。いやはや貴方様も隅に置けませんな。ファッファッファ……!」

 

 魔術師の一人が助け舟を出し、静かに笑い声をあげる。

 

「……良くは分からぬが、つまりはそう言う事だ。……(えにし)があらば、何れどこかで会えよう……ではな」

 

 そう言い、灰の剣士はギルドを立ち去った。

 

――灰の…剣士様……、不思議な御方……。

 

ローブの少女は、消えゆく彼の背中を目で追い続けた。

 

 

 

「あの剣士様……この後の予定などは――?」

 

 ギルドを出て特にアテもなく歩く、灰の剣士と見習い剣士。

 

彼女は今後の予定を彼に聞く。

 

「実は得に決めていない」

 

 時刻はちょうど昼真っ盛り。

 

本来なら昼食に舌鼓を打つ時間帯だが、あまり動いていないのか空腹でもない。

 

実際、どうしたものかと思案していた処だ。

 

「そ、それなら私とお手合わせ願えませんか!?も、もしも…お嫌でなければ…ですけど……」

 

 見習い剣士は期待と不安の入り混じった表情で、彼の反応を窺った。

 

「ふむ…剣の稽古か……。いいかも知れんな」

 

「ほ…本当ですか?」

 

「正直予定もなく暇だったのだ。少し動いて、腹を空かすのも悪くない」

 

「な、ならこの近くに都合の良い場所が在るんです、其処へ向かいましょう!」

 

 彼の反応に彼女は満足そうな顔を浮かべ、ギルド近くに位置する修練所に彼を連れて行くのだった。

 

 

 

……

 

 

 

 ここは交易神の神殿。

 

出会いと別れ、循環と交流を司る神を祀る神聖な場――。

 

其処には数名の聖職者と、明らかに不釣り合いな冒険者が一人佇んでいた。

 

「ここで彼等を葬る事も出来るのですよ?」

 

 神殿所属の聖職者が、その冒険者に語り掛ける。

 

「それには及ばん。どうしても見送らせたい人達が居る」

 

 神殿に不釣り合いな冒険者、ゴブリンスレイヤーは告げた。

 

ロスリック探索の折、何故か流れ着いていた彼の故郷。

 

小鬼の襲撃で滅び去り、彼が冒険者を志す切っ掛けを生んだ、あの悲劇――。

 

彼が連れ帰った遺体は、牧場で住んでいる幼馴染の両親だった。

 

彼の幼馴染は数年前の惨劇の際、運良く牧場に移っていたため難を逃れていた。

 

あの惨劇の後、一応の葬儀は行われたものの空の棺に別れを告げ埋葬するという、何とも空虚な葬儀であったと聞く。

 

それ以来彼女自身の心にも何かが欠け、人との接触を極力拒むようになっていた。

 

今でこそ多少感情を取り戻した様だが、まだ(わだかま)りを残している様に思える。

 

「…そうでしたか、その様な痛ましい悲劇が――」

 

 聖職者は彼の気持ちを汲み、安置されている二人の遺体に祈りを捧げる。

 

「明日連れて行く。それまで、どうかお頼みする」

 

 彼は短くそう告げ、神殿を後にする。

 

神殿入り口では、男神官が彼を待っていた。

 

「待たせたな」

 

「いえ。街へ戻れば、早急に彼等の葬儀を執り行いましょう」

 

 当時の村の犠牲者は、地母神神殿の墓地にて行われていた。

 

其処へ彼等を再び埋葬し直し、魂を天へと送り届ける。

 

男神官も聖職者の端くれ。

 

一通りの手順は踏まえている。

 

無論、上司である神官長や司祭長に報告し、立ち合った上で執り行う。

 

「済まん、手間を掛けさせてしまう」

 

「お気になさらず、これも神官としての務め故に」

 

 男神官はそう言い、二人は神殿から立ち去った。

 

 

 

木剣が何度も交差する。

 

カァンっ!カァンっ!と木の刃が互いを打ち付け、その衝撃で何度も跳ね返される。

 

「ハァッ、ハァッハァッ……!」

「――遠慮するな、全力で来たまえ!」

 

 灰の剣士は木剣を構え、攻防一体の自然体で彼女を迎える。

 

「――うぅぉおおっ!!」

 

 見習い剣士は、地を蹴り全力疾走で彼に迫る。

 

そして下段からの振り上げ攻撃で、彼に見舞った。

 

低い身長を活かした防御し難い剣技で彼を攻め立てるが、いとも簡単に受け流され位置を変えられ、気が付けば首筋に剣を当てられていた。

 

「――ぅ…ァ…」

 

 無論、寸止めで宛がうだけで直接打つ訳ではない。

 

しかし彼の持つ迫力は鬼気迫るもので、訓練用に拵えられた木製の剣とは言え、この瞬間だけは恐怖感が拭えない。

 

拘束されている訳でもないが、彼女は硬直し身動きが取れないでいた。

 

「良い剣筋をしている。修練と経験を重ねれば、更なる向上が見込めよう」

 

「――!ほ、本当ですか!?」

 

 既に剣術の基本は熟達し、後は己の持ち味に更なる磨きをかける段階だと述べる。

 

このまま順当に経験を重ねれば、後世に名を残す程の剣士に成長するだろう事も付け加えておく。

 

「さて、少々張り切り過ぎたか?」

 

 少し体を動かす積りが、何時の間にか没頭してしまい既に昼遅い時間帯となってしまっていた。

 

「はは…そうですね、ちょっとお腹が空きました」

 

 二人は木剣を元の場所へと戻し稽古を終える。

 

そして遅めの昼食をとる為、修練所を後にした。

 

「……」

 

「良ければ、貴公もどうかな?」

 

 修練所を後にする際、隠れてこっそりと見学していたローブの少女にも声を掛ける。

 

「――え!?あ…いや…わ、私は…その……」

 

 先程ギルドで書物を渡した、あの学院の少女だ。

 

どうやら此処でずっと様子を窺っていたらしい。

 

「……何しに来たんですか、貴女?」

 

 見習い剣士は不満げな表情で、ローブの少女を問い詰める。

 

「……貴女なぞに何の関心もありません!」

 

 負けじとローブの少女も言い返す。

 

「止さぬか二人とも。よければ、お勧めの食事処でも案内してくれんか?この辺りは疎くてな」

 

「「……フンっ!!」」

 

 灰の剣士は二人を宥め、両者は無言で睨み合った後互いにそっぽを向く。

 

その後、三人で適当な食堂へと脚を運んだ。

 

その頃、同期戦士達の一党は遊戯場で様々な娯楽を楽しみ、槍使い達は拠点街を散策し、各々の時間を過ごしていた。

 

こうして一日は瞬く間に過ぎ、翌日を迎える。

 

 

 

……

 

 

 

「諸君、準備は宜しいですかな?」

 

 数台の荷馬車――。

 

多数の冒険者と、王都所属の軍人達。

 

灰の剣士含む冒険者達は西方辺境街へ――。

 

王都所属の軍人たちは、王都へと向かう為に馬車へと乗り込む。

 

「貴殿等のお陰で調査は進み、重要な情報を入手する事も出来た。此度の協力真に感謝致す」

 

 正規騎士は、灰の剣たち冒険者に感謝の意を示す。

 

「我々は、成すべきを成したのみ。報告と彼女等の件、お任せします」

 

 例には及ばないと灰の剣士も返し、見習い剣士とローブの少女の事を彼に託す。

 

彼女等は王都の住人だ。

 

同じ馬車に乗る事は出来ない。

 

「騎士のダンナ、また何かあったら頼って下せぇっ!」

 

「あの邪教徒は不死、厳重に監視した方が良い」

 

 重戦士と女騎士も正規騎士に挨拶を交わす。

 

「少し、名残惜しいですね……」

 

「また、お逢いしたいです!」

 

 ローブの少女と見習い剣士も別れを惜しみ、灰の剣士に声を掛ける。

 

「私は西方辺境に属している。何かあれば、依頼を寄越すといい」

 

”無論!ギルドを通してな”そう付け加える灰の剣士。

 

そんな彼の言葉に二人の少女は僅かに()()()()、クスクスと笑った。

 

『――お~いっ!そろそろ行くぞぉっ!』

 

 槍使いからの声が投げ掛けられる。

 

「では我々は、これにて――。またお会いしましょう!」

 

「うむ。我等も出立するとしようか!」

 

 彼等は別々の馬車へと乗り込み、それぞれの目的地へと馬車を走らせた。

 

 

 

――灰の剣士様……か。

 

――いつか、また……。

 

王都へ向けて直走(ひたはし)る馬車。

 

その幌の中で二人の少女は、灰の剣士に想いを馳せていた。

 

後の彼女等は、こう呼ばれる事となる――。

 

 

 

      ―― 剣聖 ――

 

 

 

      ―― 賢者 ――

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ミラの防具一式

 

 ミラの騎士団の旅装。

 正当な騎士にのみ与えられたという。

 

 騎士の旅は使命と共にあり、それを成就する者は少ない。

 

 使命とは、過酷で険しき道。

 それでも尚、彼等は歩みを止める事はない。

 

 歩む事が、使命の本質なのだろうか。

 

 

 

 

 




 これでロスリック不死街編は終わりです。
後は西方辺境での報告と、牛飼い娘の御両親の葬儀が残っていますが、一段落着けたかと。
しかし長かったな……。( ゚ ω ゚ )

如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
デハマタ。( ゚∀゚)/
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