ゴブリンスレイヤー ―灰の剣士―   作:カズヨシ0509

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 どーもです。
急激に例のウィルスが蔓延し、変異したものまで広がりつつあるようです。
私もうがいに手洗い消毒を徹底していますが、正直恐いです。

ですが投稿致します。


第72話―暗雲の晩餐(混迷深き胎動4)―

 

 

 

 

 

 

浮遊(フロート) 

 

『ウェントス《風》…、セメル《一時》…、コンキリオ《接続》』

 

 呪文を行使し集中している間は、対象者や自分を浮遊させる事ができる。

 風に乗れる程に軽くなり、熟練すればする程、短時間で長距離を移動できるようになる。

 

 この呪文を使いこなし、高速移動が可能になれば空中戦を繰り広げる事も可能だろう。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

      デエェェ ―― 霧塗れの山 ―― ェェェエン

 

 

 

 

 

 剣、槍、斧、杖――。

 

そういった各自が得意とする得物を携え、山道へと足を踏み入れる。

 

彼等は冒険者。

 

彼等に仕事を斡旋する組合(ギルド)から依頼を請け、報酬を得る事を生業とする職業だ。

 

そんな彼等は剣の乙女からの依頼で、霧が立ち込めるこの地へと赴いていたのである。

 

 

 

―― ダークゴブリンの調査 ――

 

 

 

それが今回の任務だ。

 

既存の小鬼を遥かに凌駕する、異端の黒き小鬼――。

 

存在自体が眉唾物だが、ソレは確かに存在していた。

 

既に目撃者も実害も無視できない程に拡大の一途を辿り、それ等の被害は主に西方へと及んでいた。

 

こうなっては、西を管轄する水の都も放置する訳にはいかず、剣の乙女も動かざるを得ないのであった。

 

銀等級戦士を筆頭とする実力者で構成された一党。

 

調査に向かう途中、砦を発見し数百を超える小鬼を確認――。

 

その夜、野営中に傷付いた冒険者達を受け入れた。

 

彼等も剣の乙女から依頼を請け、同じ目的で動いていたと言うのだ。

 

彼等は任務中で運悪く山賊集団に捕まっていたが、彼等の拠点に小鬼の大群が襲撃する。

 

その混乱に乗じ脱出に成功した彼等は、銀等級戦士の一党に組み込まれたのである。

 

「お嬢ちゃんの言う通りだな、霧のお陰でかなり視界が悪いぜ」

 

 男魔法斥候は先頭を担当するも、霧に遮られた視界の中では地形を把握は無論、獣道を探し当てる事さえ困難を極めた。

 

「悪知恵の働く小鬼の事だ、必ず罠が在る筈。皆、慎重にな!」

 

 男魔法斥候の直ぐ後に続き、銀等級戦士も皆に注意喚起を呼び掛ける。

 

彼ら二人は、10フィート棒(約3メートル)で地面を探りながら慎重に山道を登った。

 

当然幾つかの罠に遭遇し、落とし穴を始め数々のブービートラップが彼等の行く手を阻んだ。

 

……。

 

「ふぅ…、これで何個目だ?」

 

 トラップと思わしき弦を切断したと同時に、トゲ付き丸太が振り子の様に彼等の前を過ぎ去った。

 

「数えただけで、かれこれ24個目」

 

 合流組の戦士が数を告げる。

 

ただでさえ上り坂という悪路に加え、霧の視界不良と罠に対する警戒感で、予想以上に彼等の神経は摩耗されてゆく。

 

碌な戦闘を(こな)す前から、彼等は体力と活力を消耗させていた。

 

「…やむを得ん、此処で小休止だ」

 

「――こんな所で!?もし小鬼に襲われでもしたら――」

 

 銀等級戦士の案に、合流組の一人が懸念を示す。

 

確かに視界不良の山道で、小鬼の奇襲を受ける事は危険極まりない状況だ。

 

しかし、彼ら全員が予想以上に消耗しているのも確かである。

 

このまま進軍した処で、各々の役割を果たす事は極めて困難と判断の上だった。

 

男性陣は兎も角、女性陣は全員が後衛職だ。

 

息を切らし、最早歩くともままならない状態だ。

 

危険ではあるが、ある程度体力を回復させる必要に迫られていた。

 

「こうやって、消耗させる事自体が目的なのかも知れませんね」

 

 呼吸を乱しながら、女司祭は言葉を結ぶ。

 

「確かにね。罠ばっかりで、小鬼を見ていないわ」

 

 山道を登るにつれ遭遇したのは数多くの罠ばかり――。

 

肝心の小鬼は一体たりとも見掛けていなかった。

 

「さっき見たんだけど、罠の中にワイヤーロープを見ました」

 

「…?何だそれ?」

 

 合流組の女冒険者は、解除した罠の中にワイヤーロープを見た事を告げる。

 

「平たく言えば、金属製の紐…と言えば良いですかな」

 

 銅等級の斧戦士が、簡潔に解説してくれた。

 

幾つもの針金をより合わせた金属製のロープで、植物繊維製のロープに比べ遥かに靱性と強度に優れた代物で、鉄索とも呼ばれている。

 

しかし、これ等の技術は未だ実験段階で、王都以外では普及されておらず、専用の設備も必要とされた。

 

「嘘だろ…、小鬼がそんな技術をっ…?!」

「もしや王都に内通者がっ…!」

「ホントに俺達の相手は小鬼なのか!?」

 

 俄かに動揺が広がり彼等は騒ぎ出した。

 

「拙者としては、直ぐに行動を再開すべきかと存じますがな?……多少の犠牲を省みずに…な」

「――指揮権は俺にある、お前ではない!」

 

「――お、おい止せよ?イラついてんのは分かるけどよ、それはきっと疲れているからだぜ?少し休めば、落ち着くって…なっ?」

 

 銀等級戦士と同等級斧戦士に険悪な空気が流れ、それを男魔法斥候が宥めに掛かる。

 

――どうしちまったんだ頭目は、少し前まではあんなに信頼し合っていたのに。

 

「……」

 

――あの日からだ……。あの日を境に……。

 

その様子を女司祭は、神妙な顔つきで見つめている。

 

「ね、ねぇ…。あの二人って、いつもあんな感じ?」

 

 合流組の女冒険者が、彼女に訊ねる。

 

女司祭は静かに首を振り否定した。

 

思えばあの日から、彼等の関係は悪化した様に思える。

 

ある日突然、男斧戦士は法の神殿の結界に反応するようになった。

 

それもかなり影響した様で、触れた箇所が焼け爛れる程の症状だった。

 

そんな症状に至るには、悪魔や魔神位しか彼女は知らない。

 

法の神殿の結界。

 

平時はそれ程強力な結界など張らず、人族であれば焼け爛れるという症状は、先ずあり得ない。

 

今思い返せばその日を境に、銀等級戦士は男斧戦士とは距離を置くようになり関係もギクシャクしたものになった。

 

一体男斧戦士の身に何があったというのか。

 

「フッ…まぁ良い、幾多のソウルが此方に近付いている。これで拙者の…()の目的は果たされた。最早貴公等は()()()…故に、安らぎを与えよう」

 

「……やはりな!」

 

 急激に男斧戦士の口調が豹変し、それを目にした銀等級戦士は剣を抜き立ち上がった。

 

「な…何だ?」

「一体何がっ?」

「どういう事?」

 

 そんな二人を目にし、周囲の冒険者達は騒ぎ立てる。

 

 

 

『――内輪揉めかな?冒険者諸君!』

 

 

 

 突如として、あらぬ方角から声がする。

 

その声に反応し、冒険者達は一斉に振り向いた。

 

其処に()は居た。

 

成人男性ほどの背丈、凝縮され無駄のない筋肉、豊かな金髪、赤い双瞳、そして全身の黒い肌。

 

傍らに伴う、見慣れた数匹の小鬼。

 

「……闇人?」

「いや待て、闇人にしては何か違う」

「それに小鬼を連れてやがる」

「ま…まさか……」

 

 冒険者側に動揺が広がり、途端に慌ただしくなる。

 

「そうだ。この()に用があるのだろう?」

 

 

 

「「「「「ダークゴブリン!!」」」」」

 

 

 

 黒き異端の小鬼、ダークゴブリン。

 

余りの意表に、冒険者側は正常な思考が働かなかった。

 

本来はダークゴブリンの住処を調査するのが彼等の任務だ。

 

それは全て、ダークゴブリンを討伐する為の布石と言っても過言ではない。

 

だが目の前に居るのは、最終目標であり大本命とも言えるダークゴブリン()()()()であった。

 

彼等に動揺が広がっても何ら不思議ではないだろう。

 

「――全員構えろぉッ!!」

 

 銀等級戦士が叫び、冒険者達は咄嗟に臨戦体制を取る。

 

――が、その時である!

 

紅い血飛沫を上げ、頭部を失った一人の冒険者――。

 

 

 

――男魔法斥候だった。

 

 

 

「――……?!」

 

 突然の出来事に、彼等は理解が追い付くのに数秒の時を要した。

 

首を斬り飛ばされ、倒れ伏した男魔法斥候。

 

残された身体は小刻みに痙攣を繰り返していたが、やがて動かなくなった。

 

「あ…あ…ああぁ……」

 

 何の前触れもなく訪れた、突然の死に分かれ――。

 

数年に渡り苦楽を共にしてきた、気心に知れた仲間――。

 

男魔法斥候()()()躯を目にし、女司祭は僅かな呻き声を上げる事しか出来なかった。

 

()()()と言ったろう?安らぎを与えてやった」

 

 男が手にしていたのは、血と肉片のこびり付いた()だった。

 

「…馬鹿な…」

「仲間を……」

「こんな事って…」

 

 冒険者達はその男に注意が向く。

 

それもその筈だ。

 

斧を手にしていたのは、銅等級の男斧戦士だったからだ。

 

「――き…きぃさぁまぁぁぁぁッ……!!」

 

 銀等級戦士は憤怒の表情を浮かべ、斧戦士に剣を突き付けた。

 

「お取込み中申し訳ないが、我が領地で暴れられては困るのだよ。…我が拠点へと案内しよう、積もる話はそこで付け給え!」

 

 一触即発の二人に今度はダークゴブリンが仲裁に入り、あろう事か自分の住処へと案内すると言い出した。

 

「ホントに人語で喋ってやがる」

「ア、アタシ、初めて見た」

「俺もだ」

「こんな小鬼、居たんだな」

 

 流暢に人語を話すダークゴブリンに、周囲の冒険者は困惑の声を上げる。

 

「では案内して頂きたい。我は()()に用があるのでな」

 

 そう言うや否や男斧戦士の身体が霧に包まれ、中から全くの別人が姿を現した。

 

「あ…あぁ…」

 

 その姿を見た女司祭は驚きの声を上げた。

 

既に男斧戦士の姿は其処に無く、代わりに現れたのは漆黒の甲冑で身を包んだ巨漢の騎士であった。

 

「……ほぅ」

 

「では行こうか?黒き異端の小鬼よ」

 

 漆黒の騎士はダークゴブリンに案内を促す。

 

「冒険者諸君はどうするのかね?」

 

 未だ微動だにしない冒険者達に、ダークゴブリンは声を掛けた。

 

無理もない。

 

つい先程まで仲間だった男が突如裏切り、味方を一人手に掛けたかと思えば、別人へと姿を変えたのだ。

 

通常なら理解が追い付かないだろう。

 

「――お前達は引き返せ、俺一人で行く!」

 

 銀等級戦士は後方の仲間に撤退を命じた。

 

当然、彼の仲間である女司祭は同行を申し出たが、彼は頑なに拒否。

 

麓の馬車まで退避するよう命じる。

 

そんな中ダークゴブリンに叫ぶ少女が一人。

 

「お姉さまは…お姉さまは居るのっ!?」

 

 幼夢魔だ。

 

「誰かと思えば、よもや生き延びていようとはな。意外であったぞ」

 

「答えてダークゴブリン!お姉さま達は居るんでしょっ!?」

 

 過去に上夢魔たちから、なけなしの魔力を分け与えられ、ダークゴブリンの住処から一人だけ脱出し今日まで生き延びてきた。

 

剣の乙女の命令があったとはいえ、秘かに同胞達との再会を期待していたのだ。

 

「成程な。貴様が我等の存在を流布したという事なら、それも頷ける」

 

 質問には答えず一人納得するダークゴブリン。

 

彼女は山中で力尽きかけていた処を、灰の剣士に助けられダークゴブリンの存在を彼等に提供した。

 

「――答えろぉッ!!」

 

 幼いながらも激昂し、ダークゴブリンに食って掛かった。

 

()らん、諦めろ」

「――くぅっ…!」

 

 どうやら目指す先には居ないとだけ告げられ、幼夢魔は歯を食いしばる。

 

「…行きましょう」

 

 怒りと落胆に身を震わせる彼女に、女司祭から穏やかに声を掛けられる。

 

「頭目、どうかご無事で」

 

「信用しろ!」

 

 女司祭は一人残る頭目にも声を掛け、物言わぬ遺体となった男魔法斥候の認識票と手帳を回収する。

 

彼の手帳には、先日の砦を調査した内容が記載されている。

 

銀等級戦士を残し、他の冒険者達は下山を開始した。

 

そして対照的にダークゴブリン達は、山道を登り始めた。

 

一行は無言で山道を登り続ける。

 

黒い小鬼の調査。

 

それが銀等級戦士に課せられた任務だ。

 

しかし彼の意識は、目の前を歩く漆黒の騎士へと向けられていた。

 

不意に男魔法斥候を切り殺した、憎悪すべき相手。

 

恐らくは、本物の男斧戦士も既に――。

 

やがて本来の目的地である、ダークゴブリンの住処へと辿り着く。

 

眼前には、巨大で頑丈な主門が存在していた。

 

主門の両脇には櫓が設置され、数匹の小鬼が遠眼鏡とクロスボウを装備している。

 

見張りと狙撃を担当しているのだろう。

 

「ほう…、小鬼とは思えぬ建築能力よの」

 

 外壁を目にしただけだが、漆黒の騎士は驚嘆の声を漏らす。

 

木製ではあったが頑丈で分厚い防壁と門、そして小鬼の布陣。

 

その運用能力は、人族の軍隊にも勝るとも劣らない。

 

――不味いな、この門を潜れば脱出は至難の業だ。

 

小鬼とは思えない建築能力を目の当たりにし、銀等級戦士は幾許かの冷静さを取り戻す。

 

巨大な主門を潜れば、確かにダークゴブリンの住処を目にする事は叶う。

 

しかし一旦侵入すれば最後――。

 

十中八九、門は閉められ退路を断たれるであろう事は、容易に想像が付いた。

 

――いざとなれば、()()の出番か。

 

彼は静かに息を整え落ち着き払った。

 

「GROOV!」

(開門せよっ!)

 

小鬼の言語で見張りに命じ、門を開けさせるダークゴブリン。

 

「どうぞ中へ、御客人」

 

 ダークゴブリンは貴人の一礼で、二人の男を迎え入れた。

 

「ふむ…中はこうなっておったか」

「これを全て小鬼が建てたのかっ!?」

 

 漆黒の騎士と銀等級戦士は、廃村の様相に各々の反応を見せる。

 

並ぶ建造物全てが、人間の住まうそれと何ら遜色なかった。

 

否――。

 

下手をすれば、寒村の建造物よりも立派な構造をしている。

 

上質の木材を使用し、壁はレンガや粘土で補強されていた。

 

そして其処に住まう小鬼達。

 

その生活様式は、彼等の知る小鬼とは一線を画していた。

 

「如何かな?我が居住区は」

 

「流石は異端の小鬼、魔神皇が注目するだけの事はある。……では本題に移ろう」

 

 ダークゴブリンの言葉に漆黒の騎士は世辞を返し、何やら交渉に入ろうとしていた。

 

「まぁ待て。先程から後ろの冒険者が、貴様に憎悪のソウルを向けている様だが?」

 

「ふ…、まだ我に用があるのか?生者よ」

 

 漆黒の騎士の後ろには、怒りと憎しみの感情を向ける銀等級戦士が居た。

 

ダークゴブリンの忠告に、漆黒の騎士はゆっくりと辟易としながら後ろを振り向いた。

 

「……」

「……」

 

 向かい合う、銀等級戦士と漆黒の騎士。

 

「……何時からアイツ(本物の銅等級斧戦士)と入れ替わった!?」

 

「……ほぅ…多少の洞察力は在るようだな。仮にも銀等級という事か…良かろう、聞かせてやる」

 

 なぜこの様な事態に至ったのか。

 

漆黒の騎士は経緯を語り出す。

 

彼は人族の情勢を探る為、生者に成りすまし彼等の営みに溶け込む事にした。

 

そこで目を付けたのが、近くを通りかかった銅等級の男斧戦士であった。

 

ある夜更けの街で彼と出会い、言葉巧みに路地裏へと誘い込み奇襲――ソウルを奪った。

 

男斧戦士自身も手練れである事が分かっていた為、敢えて正攻法を避けたのである。

 

彼のソウルを奪い記憶を読み取った漆黒の騎士は、彼に成りすます事に成功した。

 

当初、立ち振る舞いに多少の違和感は拭えなかったが徐々に慣れ、一党と合流する頃には上手く溶け込めていた積りでいた。

 

しかし、この銀等級戦士には感付かれていた様だ。

 

「アイツとの付き合いは長いのでな、何処となく言動に違和感を覚えていた。だが確信に変わったのは、法の神殿の結界だ!」

 

 怪しいとは踏んでいたが銀等級戦士には、確信が持てずにいた。

 

しかし或る日、剣の乙女が治める法の神に張り巡らされた結界――。

 

その結界に、男斧戦士は反応してしまったのである。

 

まるで邪悪の存在を拒むかのように結界は強く作用し、彼だけが神殿に近付く事がままならなかった。

 

他の仲間達は彼を気遣ったが、銀等級戦士だけは彼が別人である事に確信を持った。

 

だが敢えて表には出さず、今迄様子を探っていたのだが、結果は御覧の有様。

 

どういう形であれ、苦楽を共にしてきた仲間を失う羽目になった。

 

「本物のアイツはどうした!?」

 

 銀等級戦士は、本来の彼の所在を聞き出そうとする。

 

「手練れ故、我がロンドール臣民に加えようとしたのだが、直ぐにソウルが枯渇した上に亡者とすら成れずに果ておったわ!」

 

”もうこれも、無用の長物よ!”と言わんばかりに、銅の認識票(プレート)を投げて渡す。

 

「……そうか……」

 

 銀等級戦士は、それを受け取り静かに見つめる。

 

そして密かに後方に目を向けたが案の定、主門は閉じられ退路を断たれていた。

 

その後、再び漆黒の騎士を睨み付ける。

 

「仲間の仇を討ってみるか?()()?」

 

「……」

 

 あからさまな挑発で、彼を煽り立てる。

 

「……本来なら此処で仲間の仇を討つべきなのだろう。だが、悔しいが俺の実力では貴様には届かんっ…!…任を果たした以上、もう此処に用はない!」

 

 彼は怒りで身体を震わせながらも、武器を構えたままで向かって来る事はなかった。

 

「意外だな。そこまで冷静だったとは、流石は在野最上位の銀等級…侮れぬ存在よ」

 

 あくまで目的達成を重視する銀等級戦士に、漆黒の騎士は称賛の意を評した。

 

「我等が素直に逃がすと思うのか?人族よ!」

 

 そこへダークゴブリンの側近である、長弓を背負った大型の小鬼が姿を見せる。

 

上質の革鎧を全身に纏い頭には帽子を被った、ホブゴブリン並みの身長を誇り、俗に大型種と呼ばれる類の上位種の小鬼だ。

 

この小鬼も流暢に人語を話し、銀等級戦士に部下を嗾ける。

 

「――チッ!」

 

 銀等級戦士は舌打ちしながらも、迫り来る4体の小鬼を迎え撃った。

 

――完全武装の小鬼とはな。

 

向かい来る小鬼は、全身無駄なく装備を纏っている。

 

普段目にする小鬼の装備とは明らかに違い、真っ当な造りをしていた。

 

全て革造りだが、急所は金属板で補強された代物だ。

 

白磁は無論、黒曜等級の冒険者でも、これ程の装備に恵まれた冒険者は、そうそう居ないだろう。

 

彼に突撃する先頭の小鬼に、上質の長剣(ロングソード)を振り下ろす。

 

瞬時に小鬼の動きを見切り、自分の得意とする間合いで迎え撃った。

 

だがその攻撃は、見事に防がれてしまった。

 

「――何っ!?」

 

 半ばカウンター気味の一撃だ。

 

これを受け止めた小鬼など、今迄の冒険者生活で一度も無かった。

 

彼の剣を小盾で受け止めた小鬼は、それを流し彼の体幹を崩しにかかる。

 

――!させん!

 

しかし、彼も熟練の冒険者だ。

 

直ぐ小鬼の思惑に気付き、軽いバックステップで仕切り直しに掛かる。

 

体幹を崩される事は無かったが、間髪入れずに別の小鬼達が連携で彼を責め立てた。

 

――こいつ等、強い…!

 

4体の小鬼は連携で攻撃の緩急を付けながら、彼を翻弄した。

 

一撃離脱を図ったかと思えば死角へと回り込み、背後からの奇襲を狙う。

 

――こいつ等は一体一体が、鋼鉄等級の戦士職並の戦闘力だ。

 

個々の質では彼に遠く及ばないまでも、一定の戦闘力を保持した上での連携攻撃。

 

未だ痛痒は負っていなかったが、長引けば此方の命が危ない。

 

周囲には、まだ多くの小鬼が存在している。

 

今の処、静観を決め込んでいる様だが、いつ加勢して来るか分かったものではない。

 

「――型が単調だ!」

 

 多少訓練されている様だが、所詮は鋼鉄等級の戦闘力。

 

銀等級の彼には敵うべくもなく、一体また一体と確実に屠り去った。

 

間合いを読み、呼吸の流れを見極め、その隙を確実に突き、4体を切り伏せる。

 

――よし、取り敢えずは凌げたか!

 

第一陣とも言える小鬼の襲撃を凌ぎ切り、彼は武器を構えながら周囲を警戒する。

 

其処へ先程の長弓ゴブリンが矢を番え、彼の頭部に狙いを定めていた。

 

そして間髪入れず矢を放つ。

 

剛力で引き絞られ放たれた鋼の矢は、金属鎧を貫く程の威力を有していた。

 

頭部に命中すれば、確実に命を絶たれるであろう一撃だ。

 

「――フンっ!」

 

 しかし、銀等級戦士は容易く見切り、長剣で矢を弾く。

 

「残念だが撤退させて貰うぞ。仲間の死を無駄には出来んのでな!」

 

 そう言うや否や、彼は呪文の詠唱を始める。

 

「ウェントス《風》…、セメル《一時》…、コンキリオ《接続》!」

 

 詠唱を終えた彼は真言魔法『浮遊(フロート)』を発現させる。

 

この呪文は術者が集中している限り、空中を自由に浮遊する事が出来る呪文であった。

 

移動速度は術者の力量に大きく左右されるが、彼は習熟以上の練度を誇っていた。

 

「――おのれ、逃がさんぞ!」

 

 長弓ゴブリンは部下と共に一斉に矢を射かけるが、既に彼は空中を飛翔し高い防壁を容易く乗り越えた。

 

先程の小鬼達との戦闘で、彼は勝ち目がないと見切りを付けていたのだ。

 

雑兵の小鬼でさえ鋼鉄等級の戦闘力を有し、尚且つ連携戦術まで行使する。

 

ましてや部隊長クラスや、統率存在であるダークゴブリンの実力は如何ほどか?

 

正直想像も付かなかった。

 

故に、彼は撤退という選択肢を取り、浮遊呪文を行使したのである。

 

それを目にした長弓ゴブリンは直ぐさま翼竜を呼び、単身追跡を開始する。

 

「あのような呪文も存在していたのだな。ソウルを奪っておくべきだったか?」

 

 その様子を眺めていたダークゴブリンは、銀等級戦士に些かの関心を寄せた。

 

「フフフ…それ以上のソウルが、この世界には存在する。今からそれを教えてやろう、異端の小鬼よ」

 

 漸く邪魔者が去ったと言わんばかりの漆黒の騎士。 

 

「貴様から感じるソウル……、生者ではないな」

 

 漆黒の騎士から流れ出る、深みに満ちたソウルを感知するダークゴブリン。

 

その騎士が、生者ではなく不死の存在である事を看破した。

 

「まぁ良い、立ち話も無粋というもの。応接室にて話そうか、漆黒の騎士よ」

 

 山道の麓でダークゴブリンに用があると言っていた。

 

ダークゴブリンは、漆黒の騎士を来客用の部屋へと案内する。

 

「これは有難い。よもや持て成しを頂けようとはな!」

 

 漆黒の騎士は軽口を叩きながらも、ダークゴブリンの後へと続いた。

 

 

 

……

 

 

 

浮遊の呪文で防壁を飛び越え、逃走を図る銀等級戦士。

 

それを翼竜で追跡する、長弓ゴブリン。

 

――腐っても銀等級だな。

 

長弓ゴブリンは、翼竜の上で顔を顰める。

 

浮遊の呪文などより、翼竜の飛行速度なら容易に追い付ける筈だった。

 

しかし銀等級戦士はそれをも見越し術を止め地上へと降りた。

 

そして木々をカモフラージュとして、山林に隠れながら下山していたのだ。

 

飛行速度に優れた翼竜と言えども、生い茂る木々に阻まれては補足もままならない。

 

長弓ゴブリンは戦士が居ると思わしき座標に、複数矢を射かけたが手応えは無かった。

 

「思った通りだ。木々に隠れながら下山すれば、容易に捕まる事はない」

 

 姿勢を低くしながら身を隠し、確実に山を下りる銀等級戦士。

 

山道を下手に疾走しようものなら、あっという間に捕捉されるのは目に見えていた。

 

伊達に銀等級の地位を務めている訳ではない。

 

長年の経験と知識が、今の彼を生かしていると言っても過言ではなかった。

 

多少時間は掛かるが、確実に下山し仲間の下へ合流すればいい。

 

下山すれば視界が開け、翼竜と長弓ゴブリンに捕捉されてしまうのは分かり切っている。

 

だが人数と戦力が揃えば、凌ぎようは幾らでも存在するのだ。

 

――このままでは埒が明かんな。ならばっ!

 

一向に捕捉できない事に業を煮やした長弓ゴブリンは突如向きを変え、翼竜を別方向へと向かわせる。

 

「――いかんっ!あの方角はッ!」

 

 樹海の影から翼竜を見ていた戦士は、焦りの表情を浮かべる。

 

翼竜の向かった先――。

 

それは彼と仲間との合流地点である、馬車だった。

 

空中を飛翔する事で広い視界を確保できる事は、小鬼側にとって大きな優位性(アドバンテージ)となる。

 

既にこの時点で、冒険者側の馬車の位置を把握していたのである。

 

どうせ捕捉できないのなら、合流地点で待ち構えればよい。

 

長弓ゴブリンはそう見切りを付け、先回りする事にした。

 

――もう身を隠す必要はないか。

 

仲間の待つ馬車を襲撃される訳にはいかない。

 

彼は山道へと戻り、全力疾走で麓を目指す。

 

――さぁ出て来い…一網打尽にしてやる!

 

馬車を補足した長弓ゴブリンは、翼竜を滞空させ矢を番えた。

 

銀等級戦士と冒険者が合流した瞬間を見極め、一手で殲滅を図る算段だ。

 

番えた矢は、特別製の大口径爆裂矢で弾頭には高性能の爆薬が装填されている。

 

瞬発信管は装備されていないが、命中と同時に翼竜の火炎ブレスを吹き掛け爆発させるという計画だった。

 

「やはり待ち構えていたか!」

 

 麓付近まで下山したものの、翼竜が馬車上空に陣取っているのを確認した銀等級戦士。

 

彼はギリギリの所で樹木に身を隠しながら隙を窺っていた。

 

このままノコノコと身を晒せば、恰好の餌食となるのは火を見るより明らかだ。

 

――今こそアレの出番か。

 

雑嚢から道具を取り出した彼は羊皮紙の束を丸め、即席の拡声器(メガフォン)を作り出し、呪文の詠唱を始めた。

 

「ウェントス《風》…、クレスクント《成長》…、オリエンス《発生》…」

 

 彼は真言魔法”突風”を行使し、馬車目掛けて風を起こす。

 

彼と馬車との距離は数百メートルと、呪文の有効範囲には遠く及んでいないかった。

 

しかし、それは彼自身百も承知だ。

 

送るのは風ではなく、彼自身の()

 

 

 

「――全員、馬に触れろぉっ!!――全員、馬に触れろぉっ!!――全員、馬に触れろぉっ!!」

 

 

 

彼は何度も声を張り上げ、力目一杯に叫んだ。

 

何度も何度も――。

 

「――ッ!?頭目の声っ!?」

 

 馬車で冒険者達と待機していた女司祭は、その声を捕らえる。

 

「何だ何だ?」

「あの戦士の声かっ!?」

「馬に触れろって…!?」

 

 周囲の冒険者にも戦士の声は届き、皆は戸惑いながらも馬に手を置いた。

 

音は、空気や物質に振動を通して伝う事で、対象に到達させる事が出来る。

 

そして彼は即席の拡声器を使う事で、より確実にメッセージを送る事を狙ったのであった。

 

――そこかっ!

 

戦士の声は長弓ゴブリンにも届き、そこ目掛け突撃した。

 

「――狙い通り、後はっ…!」

 

 迫り来る翼竜の姿を捉えた戦士は、更に一種の小瓶を取り出し、その中身を一気に飲み干す。

 

――よしっ!

 

意を決した戦士は樹木の影から飛び出し、脇目も振らず馬車目指して全力疾走。

 

彼が飲んだのは、走力増強の秘薬(ラン・エリクサー)――。

 

文字通り、一時的に脚力を増強させる秘薬だ。

 

錬金術師が手間暇かけ作成した薬品で、治癒の水薬以上に値の張る代物だが、使用時期を見極めれば値段以上の効果を発揮する。

 

銀等級という実力に加え、秘薬で走力が増強した彼は、人間とは思えない速度で馬車へと迫った。

 

「――お、おい、あれ見ろよ!」

「――翼竜に追われてるぞっ!」

「――急げぇっこっちだ!」

 

 全力疾走する銀等級戦士の姿は、待機組からでも捕らえる事ができ、皆が口々に叫んだ。

 

そして彼に追い縋りながら、矢を番え狙いを定める長弓ゴブリンと翼竜。

 

戦士が馬車へと辿り着いた。

 

――貰った!

 

その瞬間を狙っていた長弓ゴブリンは、大型の爆裂矢を放つ。

 

「――今だっ!」

 

 そして同時に銀等級戦士も、腰の雑嚢から或る物を取り出し封を解いた。

 

その瞬間、戦士の肩に大型の爆裂矢が突き刺さる。

 

更に翼竜の追撃で、火炎ブレスが畳み掛けられた。

 

「――ぐぁっ…!」

 

 金属の肩当てを突き破り、鏃が内部へと到達する。

 

更に翼竜の火炎が馬車へと迫る瞬間、周囲に眩い光が展開し、馬車ごと冒険者達は姿を消した。

 

――な、なにっ!?

 

爆裂矢の誘爆を狙い、火炎ブレスを吹き掛けたが爆発は起こらず、冒険者達はその場から綺麗サッパリ消え去った。

 

「Guoob!」

(スクロールとはな…、してやられたか!)

 

長弓ゴブリンは舌打ちし、眼下を見据える。

 

そう――。

 

銀等級戦士が使用した奥の手とは、転移の呪文を封じたスクロールだった。

 

太古の昔に失われた技術(ロストテクノロジー)

 

最終手段として彼は転移のスクロールを使い、この窮地を脱したのだ。

 

――これ以上の長居は無用、戻るしかあるまい。

 

既に用済みと言わんばかりに、長弓ゴブリンは住処へと帰還した。

 

 

 

……

 

 

 

上質のテーブルを挟み対峙する、二人の人物(?)漆黒の騎士とダークゴブリン。

 

テーブルの上には、酒と幾つかの食物が振舞われていた。

 

「ほぅ…スタウトとはな」

 

 漆黒の騎士は、グラスに注がれた黒色の酒を堪能していた。

 

「大麦を高温で焙煎し、度数が高いのが特徴だ。気に入って頂けて何よりだ」

 

 一方ダークゴブリンも、ゆっくりとグラスの中身を口に流し込み、深く味わった。

 

「そして牡蠣(カキ)――。燻製物をオイル付けにした物だな」

 

 スタウトを味わい、燻製した牡蠣を口へと放り込み咀嚼する両者。

 

その様子を唖然と見つめる部下の小鬼達。

 

「しかしなかなかどうして、食文化に深い理解のある小鬼よ」

 

 一頻り味わい堪能した漆黒の騎士は、空のグラスをテーブルの上へと静かに置く。

 

「限りある()――快楽は味わっておかねばならぬ」

 

 ダークゴブリンも空のグラスを置き、漆黒の騎士を見据えた。

 

「ならば、その快楽を永久(とわ)に享受したいとは思わんかね?」

 

「……貴様の往来と関係があるようだな」

 

 対峙する両者の空気が一変するのが、周囲の小鬼達も伝わった。

 

漆黒の騎士とダークゴブリン。

 

二人は交渉の段階へと入る。

 

漆黒の騎士の要求は、ダークゴブリンを自身の勢力へと組み込む事だった。

 

「――何も魔神皇とは手を切れという訳ではない。我等に協力すれば、永遠の命を授かり貴公の悲願達成へと大きく傾こう」

 

 漆黒の騎士は”永遠の命”という言葉で、ダークゴブリンを揺さぶった。

 

だが意外にもダークゴブリンは即答で返す。

 

「断る。永遠など俺の辞書には無い」

 

 そして漆黒の騎士も、ダークゴブリンの返礼には淡白だった。

 

「ふ…、矢張りな。あの()を信奉しておる故か」

 

 あの神――。

 

それは魔神皇が新たに信奉する、黒い鳥の神――。

 

その神をダークゴブリンも信仰の対象としていた。

 

ありとあらゆるもの――。

 

其処に永遠は無く、故に、全てに終わりと始まりが集う。

 

彼の神を信奉する者は、正直にいって極少数派だ。

 

しかし黒い鳥の神を信仰する者は、総じて永遠という概念とは対極に位置していた。

 

「俺の救済は間近だ。亡者と化す理由など存在せん」

 

「思い違いをして貰っては困る、亡者と不死は似て非なる存在。貴公なら容易に亡者と成り果てる事はあるまいて」

 

「――だとしても、貴様の誘いには微塵ほども魅力は感じぬ。生憎だが、他所を辺り給え!」

 

「フフフ、これは手強い。……追加を」

 

 思いの外交渉が通らず微かに首を振り、漆黒の騎士はスタウトの追加を要求した。

 

ダークゴブリンは顎でしゃくり、部下にスタウトを注がせる。

 

「……王のソウル というのを御存じかな?異端の小鬼よ」

 

「――!?」

 

 再びスタウトを口に注いだ後、漆黒の騎士は”王のソウル”という言葉を出し、ダークゴブリンも反応を示した。

 

「――王のソウル……それは何だ?」

 

 流石にソウルという言葉に、ダークゴブリンも些かの興味を惹いた様だ。

 

――矢張り食い付いたか。

 

兜の奥で漆黒の騎士は、ニヤリとほくそ笑む。

 

「では説明しよう。嘗てこの世界には、光も闇も無く、灰色の岩と大樹、そして朽ちぬ古竜ばかりがあった」

 

 漆黒の騎士は語り出す。

 

この四方世界が構築される前の、遥かなる太古の時代を――。

 

始まりの火が紡いだ物語りを――

 

………

 

……

 

 

始まりの火に惹かれた、幾人かの名も無き存在――。

 

彼等は、その火から『王のソウル』を見出し、神と呼ばれるに足る力を手に入れた。

 

そして古竜達に戦いを挑み、見事勝利――。

 

繁栄の時代を切り開いた。

 

それ程にまで可能性を秘めた『王のソウル』

 

「それは何処に在る」

 

 当然ダークゴブリンも興味を示し、その行方を聞き出そうとした。

 

「残念だが、もうこの世には存在せぬよ。()()()()()()()()が、余計な事(火を消す)を仕出かしたお陰でな」

 

 漆黒の騎士は皮肉交じりに返した。

 

火が陰り、火継ぎのシステムに限界を迎えた時代――。

 

薪の王が、火継ぎの使命を裏切り自ら火を消すという凶行に奔った。

 

その後世界は闇に包まれ、薪の王は完全な亡者となり消滅。

 

それに伴い、彼に宿る”王のソウル”も霧散し存在は消え去った。

 

「だが望みはある」

 

 漆黒の騎士は更なる言葉を吐き出す。

 

始まりの火に導かれ、幾人もの存在が”王のソウル”を見出した。

 

しかし秘かに、とある名も無き小人は、始まりの火からもう一つのソウルを見出していたのである。

 

手にした者に神の如き恩恵を齎す王のソウル。

 

そして対をなす、もう一つの暗き魂――。

 

 

 

 

 

      ―― ()()()()()() ――

 

 

 

 

 

「ダーク…ソウル……」

 

 黒き小鬼は息を呑み、その名を口にした。

 

「そうだ。王のソウルと対をなし且つ比肩し得る、暗き魂よ!」

 

 漆黒の騎士は更に言葉を加えた。

 

「我等は、あらゆるソウルを練り合わせ、そのダークソウルを生み出さんと精を出している。貴公が我等に協力するのなら、共にその恩恵に(あやか)り、共に悲願の成就が叶うのだぞ?」

 

「…………」

 

 思案に奔っているのだろうか。

 

ダークゴブリンは無言となった。

 

「……まぁ良い。貴公の反応が見れただけでも、この訪問は有意義なものであったわ!」

 

 漆黒の騎士は静かに席を立ち上がる。

 

「そう言えば、この村にも篝火が設置されているのだったな?……何れあの紅い火も、我の力で黒き火に変容しよう。ではまた会おう、黒き小鬼よ。その時こそ、良き返事を期待しているぞ!」

 

「貴様……」

 

 睨み付けるダークゴブリンなど意も介さず、漆黒の騎士は腰のタリスマンを秘かに握り締めた。

 

「我は闇の王、ロンドール黒教会が一人。……そして世に平穏のあらん事を……」

 

 彼の周囲に光が満ち溢れ、瞬時に姿を消した。

 

奇跡を使用し、本来の居場所へと帰還したのだろう。

 

程無くして長弓ゴブリンが帰還し、冒険者を取り逃がしてしまった事を報告した。

 

「GUUV!」

(…よい!それよりも計画を前倒しにする。早急に物資と資材を集め、例の場所へと送り出すぞ!)

 

「Gov!」

(ぎ、御意!)

 

ダークゴブリンの雰囲気に気圧され、長弓ゴブリンは直ぐに動いた。

 

「GYREEV!」

(貴様らもだ、グズグズするな!)

 

ポカンと見ていた部下にも一喝し、慌てふためいた小鬼達も大急ぎでその場から立ち去った。

 

一人取り残されるダークゴブリン。

 

「GYEV」

(急がねばなるまい)

 

――ダークソウル……。

 

あの漆黒の騎士が残した言葉――。

 

王のソウルとは対を成す暗き魂――。

 

異端の黒き小鬼は、心の中でその名を何度も反復した。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 水の都に存在する法の神殿。

 

入り口付近は、多くの人々が詰め掛け大騒ぎの状態だ。

 

「――何だ何だ?」

「突然馬車がっ…!」

「おい、怪我人も居るぞ!」

 

 突如として何も無い場所に魔法陣が現れたかと思えば、一瞬にして馬車が現れたのである。

 

そして馬車と共に、複数人の冒険者が馬にしがみ付いていた。

 

それを目撃した通行人たちは当然驚き、辺りは忽ち騒ぎが広がるのも不思議ではなかった。

 

その光景は神殿の関係者にも目に届き、直ぐに神官戦士率いる守衛部隊が駆け付け、その場の収拾に当たった。

 

冒険者達の大半は負傷と疲労に見舞われ、彼等が剣の乙女から依頼を請けた冒険者である事が判明した。

 

成果の報告を兼ね、彼等は神殿で療養する事となる。

 

 

 

……

 

 

 

金属と革を組み合わせた上質の胴鎧を脱ぎ、肩は包帯で覆われていた。

 

銀等級戦士は肩を負傷しており、申し訳なさげに顔を俯けている。

 

「――では、任務そのものは……」

 

「はい…。アイツ(男魔法斥候)のお陰で、調査そのものは成功…と観て宜しいかと……」

 

 戦士は俯いたまま、呻くように声を絞り出していた。

 

調査の道中一つの砦を発見し、男魔法斥候と幼夢魔を調査に向かわせた。

 

その結果、砦はダークゴブリン傘下の小鬼に占拠されていた。

 

元は山賊の拠点であったが、ダークゴブリン集団の襲撃により、彼等の拠点と化していたのである。

 

そこでは500体を超える小鬼と、様々な野戦兵器、狼、翼竜といった存在が確認出来た。

 

その後、紆余曲折を得てダークゴブリン本来の住処へと侵入を試みた。

 

しかし、山道の半ばで裏切りが発生――。

 

仲間だった筈の男斧戦士が突然、男魔法斥候の首を刎ねたのである。

 

混乱に見舞われる彼等の下へ、ダークゴブリン本人が登場――。

 

銀等級戦士は仲間達を撤退させ、ダークゴブリンの案内に従い巣へと向かった。

 

ダークゴブリンの本拠点に居た小鬼は疎らで、精々100にも満たなかった。

 

「小鬼の数は合計600前後…、しかし現時点でこの数だ。討伐に向かう頃には、更に勢力が増しているだろうな」

 

 神官戦士の長、戦士長は戦士から渡された手帳に目を通していた。

 

「その上、数々の兵器に加え翼竜の存在となると、生半可な編成では却って全滅を招くのみです」

 

 戦士長の副官で妹でもある副長も頭を悩ませていた。

 

「100を超える山賊を制圧する程の戦力――」

「粗悪品ではなく、正規品に匹敵する装備の調達能力――」

「更に兵器や翼竜の存在――」

「それ等を意識した部隊編成を行わねば、勝ち目はない」

「ええい、よもや小鬼如きに、これ程頭を悩ませねばならんとは――」

 

 俄かに神官戦士達が騒ぎ立てた。

 

たかが小鬼――。

 

混沌勢底辺の存在が、今や西方全体の脅威と成りつつあったのだ。

 

「大司教様、王都では膨れつつある魔神軍に対抗する為、軍備を増強中で御座います。機を見誤れば、ダークゴブリン討伐どころではなくなります、早期の御決断を!」

 

 戦士長が言うには、王都では魔神皇率いる魔神軍に抗する為、軍備増強を急いでいるのだと言う。

 

ダークゴブリン討伐を遅らせればその分、優秀な冒険者達も軍に引き抜かれる可能性が高まる。

 

今回の小鬼討伐は、生半可な冒険者一党に担える案件ではないだろう。

 

過去に金鉱山にて、50名からなる冒険者集団が敗北したという事実も存在するのだ。

 

その当時、小鬼の規模は50にも満たなかったという。

 

今は約10倍以上――。

 

相当数の兵力を用意するか、下手をすれば金等級冒険者で一党を形成する必要性すら生じていた。

 

剣の乙女がどの様な采配を振るうにせよ、緩慢はそれだけ討伐を困難へと向かわせるだけだ。

 

「戦士長、名簿《リスト》の用意を――」

「――はっ!」

「――他の者は各ギルドと連携し、登録冒険者の割り出しに努めて下さい!」

「――畏まりました!」

 

 剣の乙女の命により、各神官戦士は蜘蛛の子を散らすように動き出した。

 

神官戦士達が居なくなり、部屋には剣の乙女と数人の冒険者だけが取り残される。

 

「困難な任務の達成、誠に感謝しております戦士殿」

 

 剣の乙女は、無念の表情で俯く銀等級戦士に労いの言葉を掛けた。

 

「全くだ!アンタが居なければ、俺達も今頃何処で野垂れ死んでいた処だ」

「ホントに有難う!」

「アンタは俺達の恩人だ!」

 

 周りの冒険者達も、銀等級戦士に感謝の意を示す。

 

彼等は、銀等級戦士の一党に拾われた冒険者達だ。

 

彼等も剣の乙女から依頼を請け、ダークゴブリン調査の最中、運悪く山賊に囚われの身となった。

 

その後、小鬼の襲撃の混乱に乗じ、脱出できたものの方向感覚を失い平野を彷徨い続け、銀等級戦士の一党に拾われる形となった。

 

「……だが……、アイツらを失う結果となった。クソっ!俺がもっとしっかりしていれば――!」

 

 彼等の感謝にも意に介さず、戦士は歯を喰いしばっていた。

 

彼の仲間である銅等級男斧戦士(――らしき偽者)の裏切りで、男魔法斥候は命を散らした。

 

正確には裏切りというよりも、男斧戦士に何者かが入れ替わっていた。

 

つまり男斧戦士は既に、この世には存在していない事になる。

 

銀等級戦士の意識は、ダークゴブリンの脅威よりも寧ろ、その裏切り者に怒りが向いている。

 

途中で正体を露にした、あの漆黒の騎士――。

 

今でも記憶に、鮮明に焼き付いていた。

 

「私にも責任の一端があります。あの時、貴方に注意喚起を施しておけば、若しかしたら結果は――」

 

 剣の乙女が彼等に調査を依頼した時、一人だけ神殿に入る事ができず、結界が作用していたのを思い出す。

 

その時から不穏なソウルを察知し、そちらにも意識が向いていた。

 

今更だが、更なる警戒を向けておくべきだったと、彼女は悔いる。

 

「聞かせて頂けないだろうか頭目殿。その漆黒の騎士とやらを――」

 

 傍に居た太陽の騎士ソラールは、漆黒の騎士について気掛かりであった。

 

「ふ…、とっくの昔に一党を解いたんだぜ、アンタとは。…そんな俺をまだ頭目と呼んでくれるのか?……仲間の裏切りも見抜けず、結果仲間を死なせてしまった俺を……」

 

「あの時のたった一度切り…たった一度切りの冒険だったが、俺は忘れた事は無かった…頭目よ」

 

「……アンタ……。……分かった!知り得る全てを話そう!」

 

 ソラールの言葉に心を打たれたのだろうか。

 

銀等級戦士は、記憶している全てを説明する。

 

漆黒の騎士の言動一つ一つを――。

 

……

 

「ロンド-ル…!間違いないのだな?頭目よ!」

 

 彼の口から出たロンドールという言葉に、ソラールは食い付いた。

 

「ああ、間違いない。奴はそんな事を口走っていた」

 

「ソラール様、御存じですの?そのロンドールなるものに」

 

 銀等級戦士を介護していた女司祭が、ソラールに訊ねる。

 

「…実は俺も過去に……」

 

 ソラール自身もロンドールに遭遇した過去があった。

 

水の都を離れた道中で、小さな開拓村に立ち寄った事があった。

 

その村で、彼等はロンドールの襲撃に遭遇したのであった。

 

その時、漆黒の騎士とは出会っていないが、銀等級戦士の語るロンドールとも決して無関係ではないだろう。

 

「死と深みを信奉するロンドール黒教会の組織ですね、私もある程度の情報を有しております」

 

 剣の乙女もロンドールについて言及した。

 

王都より、そう云った情報が幾つか通達されていたのである。

 

王都には辺境とは比較にならない程に、質も規模も優れた冒険者達が大勢在籍している。

 

そんな彼等も多くの冒険で、何度が黒教会と遭遇していた。

 

「ロンドールって、あの気味の悪い連中だよねバディ…?」

 

 赤毛の少女斥候が不安気にソラールを見る。

 

――ロンドール……、どう言う訳かアストラの騎士達も協力していたな。

 

ソラールはあの村での戦闘を思い返していた。

 

あの時はどちらかといえば、嘗ての祖国であるアストラ所縁の騎士達と死闘を繰り広げた。

 

太陽信仰の盛んな貴族の国アストラ――。

 

その様な国が真逆な概念に傾倒するとは、どうしても信じたくはなかった。

 

「頭目よ、頼みがある」

「――?」

 

 物思いに耽っていたソラールだったが、銀等級戦士に頼み事があるようだ。

 

「もう一度、我々を其方に組み込んでは貰えないだろうか?」

 

「――アンタ…!?」

「――バディっ!?」

「――ソラール様っ!?」

 

 それを聞いた戦士を始め、赤毛の少女斥候、女司祭も驚きの表情を浮かべる。

 

「迷惑はかけぬ!どうか検討の余地を――!」

 

 ソラールは頭を下げ、深い一礼で彼の返事を待った。

 

あの当時は白磁等級の新人ではあったが、今は青玉等級に身を置く立場だ。

 

「……アンタこそ良いのか?今度は俺達がアンタの足を引っ張るかも知れんのだぞ?」

 

「……頭目……」

 

「貴公の実力は、俺なりに把握している積りだ。失ったあの二人の穴埋めにはなると自負している、その上でどうだろうか?」

 

 女司祭は不安に満ちた顔で成り行きを見守り、暫しの沈黙が過ぎる。

 

「……宜しく頼む!」

 

 些かに迷いがあった様に見えたが、戦士は顔を上げソラールの頼みを受け入れた。

 

「こちらこそ頼む、頭目よ!ウワハハハ…!」

 

 彼の返事を聞いたソラールは高笑いを上げ、太陽賛美で称える。

 

「ふ…そう言う所は変わらんな」

 

「もぅ、バディったら……」

 

 その様子を見た戦士と赤毛の斥候は呆れ顔を受かべる。

 

「ソラール様……。また宜しくお願い致しますね!」

 

 女司祭は満面の笑みでソラール達を……取り分けソラール本人を歓迎した。

 

「あぁ…そうそう、ソイツずっとアンタの事を意識してたんだぜ。全く罪作りな男だな、アンタ」

「――ちょっ…頭目、いきなり何を!///」

「――え…えぇっ!?」

 

 突然の戦士の言葉に女司祭は顔を真っ赤に染め、赤毛の斥候は驚愕の声を上げた。

 

「むっ?そうなのか?まぁ、何にせよ再び世話になるぞ!」

 

 ソラール自身どう受け止めたのかは定かではなかったが、女司祭にも快い声を送った。

 

そんな彼等のやり取りに、部屋には笑い声が木霊した。

 

 

 

……

 

 

 

更に数時間が経過し、執務室には剣の乙女と付き人の侍女、そして数人の神官戦士達が居た。

 

「これが、全国ギルドに所属する冒険者達の名簿です」

 

 神官戦士長が冒険者の名と簡単な特徴が記された名簿を、剣の乙女へと手渡す。

 

彼女自身、目が不自由ではあるが、紙面に記されたインクの手触りの違いや滲み具合で読み取る技術を習得しており、それほど活動に支障はなかったのである。

 

名簿を読み取った彼女は冒険者の名を上げ、侍女に別用紙へと記すよう命じた。

 

侍女は次々と冒険者の名を記してゆく。

 

「――次は西方辺境ですね」

 

 剣の乙女は西方辺境の事項へと紙面を捲る。

 

――西方辺境、あの()()が……。

 

ほんの僅か時間だが、彼女は一人の剣士を思い浮かべていた。

 

「――大司教様、一つ宜しいでしょうか?」

「どうしました?副長」

 

 そこへ、神官戦士の副長が意見を申し立てて来た。

 

「西方辺境には、かなり特徴的な冒険者が大勢所属しておりまして――」

 

「……聞きましょう」

 

 副長の言葉に剣の乙女は聞く体制に入る。

 

質はどうであれ西方辺境街には、実に特徴的な冒険者が大勢所属していた。

 

重戦士の一党。

 

槍使いの一党。

 

同期戦士の一党。

 

彼等は総じて高い実力を持ち、多くの依頼を達成してきた。

 

更には、故郷の流れ着く地ロスリックの生き残り組でもあり、その噂は他のギルドでも度々噂になっていた。

 

「そして、此処からが面白いのです」

 

 実は副長には、西方辺境の冒険者である”女騎士”と古くからの付き合いがあった。

 

副長は、そんな女騎士から幾つかの情報交換していたのである。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、この名に御存じは?」

 

「……詳細を」

 

 副長の言葉に、剣の乙女は意識を向ける。

 

決して動揺を悟らせぬよう平静を装いながら――。

 

小鬼のみを専門とし、あらゆる技術と知識を駆使しながら確殺してゆく対小鬼の専門家、ゴブリンスレイヤー。

 

そして若い女性でありながら小鬼退治を中心に引き受ける女冒険者、ゴブリンスイーパー。

 

「……そのような方達が?」

 

「はい。検討の余地は有るかと――」

 

「……」

 

――対ゴブリンの専門家、ゴブリンスレイヤー、ゴブリンスイーパー。

 

まるで何かに取り付かれたかのように、剣の乙女は紙面にペンを走らせた。

 

「後はカタリナの騎士ジークバルド。彼は南方に属する冒険者ですが、ロスリック調査にも関わり大きく貢献しております。現在は西方辺境にて活動している模様」

 

「カタリナ……ですか」

 

――昔古い文献で、その様な名を目にした記憶が……。

 

副長より告げられた、カタリナの騎士。

 

剣の乙女は見習い期間中、文献から火の時代について学んだ時期があった。

 

その時、カタリナという名を記憶していた。

 

もし今告げられたカタリナと何か関連があるのだとしたら――。

 

――カタリナのジークバルド。

 

剣の乙女はその名を紙面に記す。

 

「……残るはあの男、灰の剣士。……何でも最近ロスリックの小鬼禍(ゴブリンハザード)を鎮め、その功績を着々と積み上げている御様子」

 

 その名を聞いた途端、剣の乙女はペンを握る手に力が籠っていた。

 

副長は更に言葉を続ける。

 

灰の剣士は、先程話した冒険者達にも大きく関わっており、ロスリック生還にもゴブリンスレイヤー達にも強い影響を及ぼしているのだという。

 

「そうでしたか……。()を加えない理由はありませんね」

 

 それを聞いた彼女は、彼の名(?)を紙面へと加えた。

 

尤も、最初から彼を外す選択肢など微塵も存在していないのだが。

 

――あの男、大司教様に何を吹き込んだ?

 

副長は見逃さなかった。

 

剣の乙女が灰の剣士の事を訊いた途端、頬が朱に染まってゆくのを――。

 

「この書面をギルドへと届けて下さい」

「――ハッ!お任せを!」

 

 程無くして書面が完成し、神官戦士長へと手渡す。

 

先ず水の都のギルドへと届け、其処を経由し全国のギルドへと伝達させる仕組みである。

 

基本的に討伐部隊参加に制限は設けず、自由意思が尊重される。

 

しかし書面に記された冒険者には、可能な限り参加が推奨されていた。

 

「資金に糸目は付けません、各種物資の調達も視野に入れて行動を――」

 

「「「「「――仰せのままにッ!」」」」」

 

 ダークゴブリンには、様々な野戦兵器を所有している。

 

それ等に対抗する為の物資も、入手する必要があるだろう。

 

剣の乙女の命を受け、各神官戦士達は速やかに動き神殿を後にした。

 

――どれだけの人員と物資が集まるかがカギとなりますね。まさか小鬼相手にこれ程の、手間を掛ける事になろうとは。

 

「偉大なる至高神様、どうか我等に正しき導きを――。卑劣な小鬼に神罰を――」

 

 彼女は跪き、信仰する神へと祈りを捧げた。

 

 

 

いよいよダークゴブリン討伐に向け、動きが本格的に始まった。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

王のソウル

 

 嘗て最初の火が宿り、闇より生まれた者たちが火の中から見出したとされる強大なソウル。

 名も無く何者でもない矮小な彼等ですら、神を名乗るに等しい力を得るに至った。

 

 神を名乗りし彼等は、やがて古き支配者『古竜』へ戦いを挑み勝利を収める。

 戦に勝利した彼等は国を興し、長きに渡り栄華を極める事となった。

 後の人々は、これを火の時代と呼んだ。

 

 しかし永遠などこの世には存在しない。

 

 最初の火は差異を誕生させただけでなく、始まりと終わりという概念をも生み出していたのだ。

 

 それが世界の選択肢だったのだろう。

 

 

 

 

 

 




 ワイヤーロープが少し出てきましたが、その起源、原形は、かなり古くから存在していたようです。(違ってたらスミマセン)

如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
デハマタ。( ゚∀゚)/
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