ゴブスレTRPGのサプリメント出るみたいで楽しみです。
サプリを入手し、ある程度読み通すまで次の更新は暫く控えると思います。m(_ _)m
ではドゾ。
真ストームルーラー
巨人殺しの異名を持つ大剣。
折れた刀身は、今でも嵐の力を宿し巨人を地に打ち倒すという。
巨人ヨームはそれを二本持っていた。
一本は、彼を信じぬ人々に与えられ
もう一本は、薪の王となるその前に一人の友に託されたという。
使命を果たし役割を終えた彼は、世界を隔て二本の剣と共に在った。
既に役目を果たさぬその剣は、新たな依り代を得て生まれ変わる。
古き友の想いを宿し、いざ振るわん――。
戦技は「嵐の構え」
独特の構えから嵐を凝縮させ刀身に纏わせる。
嵐を伴った斬撃は、あらゆる物を粉砕し吹き飛ばすだろう。
その構えから繰り出される戦技「嵐の王」
振るった刀身から放たれる衝撃波は、遠くの対象物を打ち砕き対巨人の切り札ともなる。
更にもう一つの戦技「嵐の螺旋撃」
構えから繰り出される、螺旋を纏った嵐の爆風――。
広範囲を巻き込み、荒れ狂う奔流が全てを砕き叩き潰す。
己の生命力と集中力を代償に、撃ち出される諸刃の戦技――。
盟友の想いを背に、約束を果たした
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
デエェェ ―― 近場の山林・小鬼の洞穴 ―― ェェェエン
実に造作もない。
天然の洞穴なのだろう。
草木に覆われつつも、小高い山にポッカリと口を開けた洞穴から漏れ出す、邪悪なるソウル。
間違えようもない。
弱々しくも下卑て悪意に満ちたソウル。
小鬼のソウルだ。
「依頼内容と一致しているな」
「ああ。…だが想定外が一つ――」
依頼内容の小鬼の巣が、此処で間違い無い事を確信するジークバルド。
しかし返答した灰の剣士は、少々怪訝な表情を浮かべる。
「――人質が居るとは聞いてないぞ」
洞穴から流れ出る小鬼のソウルに混じり、人族のソウルが漏れ出ていた。
「大方、旅人か一般人の類が連れ去られたのかも知れん」
依頼内容を確認した限り、人質は居ないとの事だった。
少なくとも依頼人の村で被害に遭っていたのは作物や家畜で、人には直接及んでいなかった。
「う~む…。生まれ変わったストームルーラーを試してみたかったが、これでは侵入せざるを得んな」
武器工房から受け取ったストームルーラー。
ボロボロの二振りを素材レベルまで溶かし込み、代用していた上質の
それを試す為に、この依頼に参加したジークバルド。。
この剣は嵐を司る力を秘めている。
当然閉所の洞穴で使おうものなら、忽ち崩落し生き埋めになる事は想像に難くはない。
試すなら野外に限られる。
人質が居ないのなら、直接嵐を解放し巣穴ごと殲滅する計画だった。
しかし攫われた者が居たのでは、侵入し乗り込む必要が生じる。
唯でさえ大型の剣だ。
閉所で振るうには向いていない。
「救出を最優先する。人命を軽んじる訳にはいくまい?」
「それも止む無し。急ぐか」
両者は巣穴へと侵入する事にし、灰の剣士が先頭に立ち松明に火を点ける。
洞穴に侵入した途端、あの悪臭が二人の鼻を突いた。
鼻を刺す様でいて脳に直接響き渡る、不快極まる異臭――。
小鬼の糞尿、腐敗した血肉、そして微かに混じる薬品の臭い――。
「何だ、この臭い…薬の類か?」
「どうした?灰剣士殿?」
灰の剣士は脚を止め、立ち込める異臭を吟味する。
「僅かだが薬品の臭いがする」
「足元に転がっている物と関係があるかも知れんな」
ジークバルドが地面を指し示し、灰の剣士もそれに倣った。
地面を見渡せば、彼方此方に小物が散乱していた。
「薬品の臭いはこれ等か」
「見た処それほど時間は経っていないと観た」
割れた小瓶、淵が敗れ穴だらけの鞄、触媒と思わしき杖、等々――。
割れたガラスの小瓶から液体が流れ出ている、薬品の臭いは此処から漂って来たのだろう。
「人のソウルは未だ健在――」
「――罠を警戒しつつ急ぐぞ!」
ジークバルドは、奥から流れ出るソウルを感じ取っていた。
かなり激しく動き回っている様で、恐らく小鬼達と揉み合いになっているのだろう。
直ぐに急行したい処だが、小鬼は狡猾だ。
思わぬ罠にかかり、命を落としたのではミイラ取りがミイラになるという笑えぬ結末を迎える事もある。
両者は罠を警戒しつつ、奥へと目指す。
……
(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― 危機との遭遇)
「――やぁっ、やだぁっ!来るな、くんな、こないでよぉッ!」
若き女の声が響き渡る。
耳を劈く様な声音は、明らかな嫌悪と恐怖に塗れていた。
しかし彼等にとって、それは甘味な興奮剤でしかない。
頭髪は茶色で、項まで届く短髪。
肉感的な女の柔肌――。
胸部は年相応だが、下肢――特に太腿の内側が異様に肉付きが良く、その魅惑的な肢体は小鬼にとって格好の的だった。
そして肢体から滴り落ちる、汗の臭い――。
身を焦がすかの如き荒い吐息――。
そして今も下半身を伝う、刺激に塗れた小水――。
腰を抜かし後退る女の様は、何と扇情的なのだろうか。
恐怖に慄き、涙を浮かべ、小水を垂れ流し、破けた衣服より零れ出た双丘――。
早く蹂躙したい――。
泣き叫ぶ女の絶叫を愉しみながら、究極の娯楽に身を委ねるのだ。
もう我慢する必要もないだろう。
先程から新たな人族の臭いが漂って来るが、それが男の臭いである事は分かり切っている。
そんなものは後回し――。
後先考えず緑の体表を有す異形、
「――や、や、やだ、やだヤダ嫌だ…来ないでぇッ……!」
後退り壁面に追い詰められ、最早逃れる事は叶わない。
ジワリ、ジワリ、とにじり寄る小鬼を足蹴にしながら何とか侵入を拒んでいたが、相手は20を超える小鬼集団だ。
そういつまでも抗せる訳ではない。
「――やだ、汚い!そんな臭いの近付けないでよッ!」
涙を浮かべる女の顔に、小鬼の陰茎が付き出された。
唯でさえ悪臭漂う小鬼の巣穴だ。
それすら霞む程の異臭が、彼女の鼻を突いた。
「――いやぁッ!」
思わず女は、その陰茎を手で払い除ける。
「――Govu!?」
股間を抑えながら小鬼は、無様な悲鳴を上げながらその場を離れる。
それを見ていた他の小鬼達は、ゲタゲタと嘲り大笑いを上げた。
「うぅ…、ひっ、…どうして…、どうしてアタシがこんな目に……」
女は唯々泣きじゃくる。
目的地へと向かう途中、素材集めの為ついでに立ち寄っただけだった。
正直自信があった。
小鬼という異形の事は知っていた。
彼女は他国の出身だが、ゴブリンと言う異形は其処でも存在している。
しかしこの国に比べ絶対数は遥かに少なく、それ程猛威を振るってはいなかった。
また混沌最底辺という存在は彼女の国でも変わらず、悪辣さや凶悪度も幾分緩やかであったのだ。
だが此処の小鬼はどうだろう。
いざ遭遇するや否や、瞬時に殺到し圧し掛かられた。
僅かな
「Gov、Gov、Gov!」
「Gea、Gea、Gea!」
小鬼が涎を流し下卑た声で、彼女に迫らんとしていた。
「――ッひぃっ、イ、い…やだ…!そんなとこ汚いッ……!」
何を思ったか、迫った小鬼の一体は彼女の股間に顔を埋め、垂れ流した小水ごと彼女の股間に吸い付く。
「――★$?&%#ッ!?」
生まれて初めて味わう奇妙な感覚に、彼女の背筋に電流の如き刺激が走る。
既に少女は抵抗する気概など消え失せ、涙混じりの瞳は光を失っていた。
ただ恐怖と悪寒に身を震わせるばかり。
――その
(推奨BGM Antti Martikainen ―― One Against the World )
「――Gea!」
「――Gye!」
「――Gur!」
突如として小鬼の悲鳴が上がり、数匹の小鬼が血飛沫を上げ絶命する。
その悲鳴を皮切りに周囲の小鬼達が騒ぎ立てるが、その間にも次々と小鬼は命を落としていった。
「――えっ…えっ…、な…に…何が……?」
少女も状況が理解出来ず、困惑とするのみだ。
しかし小鬼は更に現状が呑み込めていないらしく、今どういう状況かも認識出来ぬまま、その絶対数を減らしているのだ。
外套を纏った一人の剣士――。
狭い空間をモノともせず、東国の打ち刀を巧みに扱い並み居る小鬼を両断してゆく。
脇を閉め腰で剣を振り、壁面に刃を掛けぬよう注意を払いながら、小鬼を切り伏せた。
一方、玉葱を彷彿とさせる全身鎧の騎士――。
大剣は不利と悟ったのか、刃付きの盾と手斧で小鬼達を次々と屠った。
手斧は小型の割に打撃力が高く、小鬼程度の頭部を容易くかち割る。
また盾中央部に取り付けられた刃は鋭く、武器としても充分な性能を発揮し、攻防一体の機能を有し閉所では有用だった。
少女は言葉も無く二人の戦士を見つめ、二人の戦士も無言で小鬼を次々と屠り去った。
「す…すご…い…」
微かな言葉を漏らした頃には周囲の小鬼は全滅し、この洞穴には二人の男と一人の女を残すだけとなる。
「斬滅は完了した。周囲に敵は無し」
「ふむ、こんなものか」
二人の戦士…否、冒険者――。
灰の剣士とジークバルドは、残敵の有無を確認する。
そんな二人に少女が声を掛けて来た。
「あ…あの…あ、ありがとう…助けてくれて…」
緊張しているのか警戒しているのか定かではないが、女は恐る恐る頭を下げる。
それも無理からぬが道理――。
外套を纏った剣士は、見た目からして怪しい野党そのもの――。
玉葱の様な騎士は、外観そのものが奇抜極まりない格好だ。
こんな二人が自分の国に存在していようものなら、忽ち好奇や忌諱の視線に晒されるであろう。
「……ふむ。幸い軽傷に加え、
灰の剣士は、女に視線を移す。
上半身の衣服は既に形を成しておらず、乳房が露出していたものの小鬼の爪後と僅かな出血に留まっていた。
そして下半身だが、赤を基調としたホットパンツは多少ボロボロであったものの無事だった。
股間部分は完全に湿りを帯び、小水の臭いが此方にまで伝わった。
大方、小鬼の群れに殺到され、恐怖のあまり失禁してしまったのだろう。
汚れてはいるものの、下半身の衣服は無事だ。
その事から察するに、小鬼の凌辱だけは免れたという事が確定した。
「少しジッとしていろ」
軽傷とは言え、小鬼の爪など雑菌塗れだ。
かすり傷といえども、毒素が全身を蝕む可能性もある。
灰の剣士は奇跡、治癒の涙と中回復で彼女を治療する。
「――わぁっ…すごい!綺麗サッパリ治っちゃった!」
奇跡の聖光が彼女を包み込み、次の瞬間には傷一つない状態へと戻る。
「聞きたい事は色々あるが、先ずは外へ出ようか。こんな不快な場所に長居したくはあるまい?」
「――う、うん、そうだね。早く出よう!」
彼女が何者であるかは気になるが、取り敢えず落ち着ける場所で話を聞く事にする。
後は小鬼の死体の後始末が残っていた。
「灰剣士殿。小鬼の死体はこのままでも良かろう。どの道この洞穴を封鎖するのなら、私のストームルーラーの出番となろう!」
「ん?いいのか、ジークバルド?」
ジークバルドが言うには、試し斬りは野外で行う予定であった。
亡者化を防ぐ為に小鬼の遺体を焼却するつもりではあったが、洞穴を封鎖も兼ねストームルーラーの威力を試したかった。
確かに入り口さえ封じてしまえば、たとえ小鬼が亡者化しようとも世に出る事はないだろう。
「分かった、では地上に戻るか」
こうして三人は出口へと向かう。
「――あ!…あたしの道具…メチャメチャだよう……」
道中散乱していた小道具類は案の定、彼女の所持品だった。
殆どが損傷し損壊し、使い物にならない状態だ。
無事なのは、杖と鞄に入っていた一部の道具類だけだった。
何とか使えそうな物だけを鞄に詰め、三人は洞穴を出た。
(推奨BGM ライザのアトリエ ―― 風静か)
「…ふあぁぁ…、新鮮な空気ィ……」
地上に出るや否や、少女は心待ちにしていたかの様に何度も深呼吸を繰り返す。
「確かに、異物と悪臭が充満した小鬼の巣だ。慣れた私でさえ、地上が恋しくなる」
小鬼が利用していた巣穴は、至る所に糞尿が散乱した不潔極まる場所だ。
真面な神経を持つ者なら、長居は御免被るだろう。
冒険者と成って以来、数多くの小鬼退治を熟してきた灰の剣士だが、矢張り小鬼特有の異臭は不快極まった。
「――おっと忘れてた。貴公、これを羽織るとよい」
彼は雑嚢から大きめの布シーツを取り出し、彼女へ手渡した。
少女はそれを受け取るも、どう言う訳か首を傾げ何故か羽織ろうともしない。
「――え、何で?別に寒くもないし、もう敵だって居ないでしょ。あたし平気だよ?」
「……貴公……、胸部を露出したまま公衆の面前に出る気か?」
少女のシャツは小鬼により殆ど形を成さず、年相応の膨らみが露わとなっていた。
「……何か問題でも?」
「…………」
返す言葉が見当たらなかった。
どう諭せば良いのだろう。
完全に女性の象徴が露出しているにも拘らず、彼女は平然としていた。
――あの娘と同じだ。彼女も女性としての意識が低いのか?
彼は銀髪武闘家を思い返す。
そう言えば彼女も、女性としての自覚が少々(←かなり?)薄い。
尤も、
若しかしたらこの少女も、そう云った類なのかも知れない。
しかし、胸を出したまま行動を共にされては、此方が色々な面で困窮するのだ。
「女人よ、街には治安を守る衛兵も居る。その様な格好で街を出歩こうものなら忽ち連行され、要らぬ誤解と摩擦を生もう。貴公とて、面倒は望むまい?」
見るに見かねたのか、ジークバルドが彼女を諭しにかかった。
「――うっ…、確かに言われてみれば…、仰る通りです…はい…」
拘らない性格なのだろう。
そんな彼女も、治安を乱し衛兵と揉め事を興すのには抵抗を感じたようで、素直にジークバルドの言葉に従った。
――流石はジークバルド、一流の騎士だ。
倫理や規範には敏く、容易く少女を説き伏せてしまった。
彼の説く論理に、灰の剣士は静かに頷いた。
一方、諭された彼女は、大雑把にだが布を纏う。
気温は高く、多少暑いだろうが我慢してもらうしかない。
それよりも男に対する警戒心が、些か足りない様に思える。
よくその様な無防備な立ち振る舞いで、男共に狙われなかったものだ。
此処は比較的近隣で安全だが、野党や女に飢えた輩も闊歩しているのだ。
彼女の様に肉感的な身体は、間違いなく格好の餌食となる筈である。
加えて、彼女は灰の剣士達に胸を晒しても平然としていた。
その態度からして、これまで男との濃密な接触はないと推察できる。
彼女の経緯は定かではないが、少なくとも灰の剣士はそう見切りを付けていた。
「すまんなジークバルド。貴方に余計な手間を掛けさせてしまった」
「気にするな。騎士の端くれとして当然の措置だ」
本来ジークバルドは、剣の試し斬りの為に同行して貰っている。
要らぬ負担を彼にさせてしまった事を謝罪するが、彼は何ら気にした様子も無かった。
細やかな配慮を施しつつも、拘らない性格――。
それこそが彼――ジークバルドの人柄を現しているのだろう。
「さて、後はこの巣穴を封鎖するだけだが、此処は私に任せて貰えないだろうか?」
「……構わぬが、どうやって?」
ジークバルドは試し斬りを兼ね、此処でストームルーラーを振るうらしい。
この剣は、嵐の力を解放する事が出来る武器だ。
嘗て薪の王の一人”巨人ヨ―ム”に対抗し得た、数少ない武器でもあった。
確かに嵐の力を解放すれば、この巣穴を封鎖する事は造作もない。
「どの道、無機物相手でも効果は検証できるのだ。何も小鬼に拘る必要など無かったな。ウワハハハっ!」
彼はそう笑い飛ばしながら灰の剣士と女を退かせ、自身は巣穴の前へと陣取った。
「ね、ね、一体何が始まるの?」
少女は興味深そうに、灰の剣士に訊ねて来る。
「――静粛に。彼の集中を妨げてはならぬ」
静かにだが強い口調で彼女を制した。
――そう言えば、認識票をぶら下げていたな。随分と好奇心旺盛だが、魔法職だろうか?
布を羽織る前に彼女の首には、冒険者の認識票があったのを思い出した。
彼女の認識票は白磁等級だった。
冒険者と成って、まだ日が浅いのだろう。
若干不満気ではあった彼女を制し、二人はジークバルドを見守る。
「……」
やがてジークバルドは、新たに生まれ変わったストームルーラーを構え、意識を集中させた。
(推奨BGM ダークソウル3 ―― 巨人ヨ―ム)
それに伴い、刀身から風が湧き起こる。
「――お、おおっ!?」
見ていた彼女から驚きの声が挙げる。
――これは序の口…ここからだ。
灰の剣士も無言で様子を窺う。
此処までは、幾度となく目にした光景だ。
何度もロスリックを
「――まずは一撃っ!」
徐々に風が激しくなり、ストームルーラーの周りは嵐に似た暴風が荒れ狂っていた。
そして彼が大上段に振り被り、前方目掛けて剣を打ち降ろす。
その瞬間、剣先の風が衝撃波と化し巣穴の入り口に炸裂する。
鋭い風圧を伴う衝撃波は岩盤を削り取り、砕かれた岩の大欠片は巣穴の入り口を塞いでしまった。
「――うわぁ凄いッ!」
「――見事っ!」
少女と灰の剣士は、その威力に驚嘆する。
ストームルーラーに封じられし力が今解き放たれ、その力を存分に発揮したのであった。
しかし、ジークバルドは二人に更なる後退を促す。
怪訝に思う二人だったが、まだ何か有るのだろう。
彼の言う通り、二人は数歩下がり固唾を飲んだ。
「さて、次は更に開放するぞ――ぬんッ!!」
ジークバルドのソウルは爆発的に膨れ上がり、大地を踏み抜かんばかりに軸足に力を込める。
すると先程と同じ様に、再びストームルーラーが風を纏った。
――凄まじいソウルの流れだ。先程とは比べものにならんぞ!……それに微かだが感じる……彼の者のソウルをっ…!
灰の剣士は、ジークバルドから発せられるソウルに嘗ての薪の王の一人、巨人ヨ―ムの残滓を感じ取っていた。
「――ぬうぅぉおおぁあああっ!!」
ジークバルドが雄叫びを上げ、ストームルーラーを振るう。
先程放った戦技『嵐の王』とは明らかに違う。
振り下ろすのではなく、剣を突き出す動作で嵐を解放した。
剣先を軸点とした暴風が、指向性を伴い目標へと突き進んだ。
それは
巻き込む全てを砕かんばかりの衝撃波が弾丸状となり、その周りは螺旋状の暴風を纏っていた。
形容するなら『嵐の螺旋撃』と表すれば良いだろうか。
暴れんばかりの衝撃は、小鬼の巣穴に着弾し入り口を粉々に打ち砕いた。
だが、その衝撃波は尚も突き進み、洞穴を粉砕しながら奥へと浸透する。
岩盤を突き破り周りの岩石を撒き散らしながら、漸く衝撃波は消滅した。
結果――。
岩山は巨大な風穴を形成し、巣穴は瓦礫に埋もれる形で消滅した。
最早封鎖という生易しいレベルではない。
つい先程まで、其処に小鬼の巣穴が在ったと語った処で誰が信じるだろうか。
そんな光景が彼等の眼前に広がっていたのだ。
「……」
「……」
「……」
言葉を発する事が出来なかった。
戦技を放ったジークバルド本人でさえ、その威力に目を見開くのみだ。
「……。と、取り敢えず、巣穴の封鎖お疲れだったな、ジークバルド……」
辛うじて灰の剣士が、声を絞り出しぎこちない様子で彼を労う。
「ハァ…、ハァ…、ハァ…、ハァ…」
暫くジークバルドは言葉を発さず、肩で呼吸を繰り返していた。
「……よもやここ迄、威力が有ったとはな」
呼吸を整え、ジークバルドは静かに語り出す。
生まれ変わったストームルーラー。
ボロボロとなった二振りが融合し、上質の片手半剣を媒介とし、新生した大剣。
威力はたった今、目にした通り。
岩山に風穴を開け、岩盤を砕き掘る威力。
「…フゥ…、ハァ…、しかし些か消耗が過ぎるな。連発すれば此方の命がもたん…!」
未だ息を乱すジークバルド。
膝を突き剣を支えとして、肩を上下に揺らしていた。
どうやら今の
しかも、かなり加減して放ったと語る。
最大出力で放てば、どれ程の効果を齎すのだろうか。
因みに今の戦技は、彼にしか行使する事が出来ない様だ。
灰の剣士も試してみたが『嵐の王』までしか発現しなかった。
「す、す、凄いねっ!今の剣、何っ!?錬金術で造ったのっ、ねぇっ!?」
突如少女が興奮気味で、ストームルーラーに興味を示した。
彼の放った戦技が余程珍しかったのだろう。
半ば、超常現象とも呼べる程の戦技だ。
彼女が興味を示すのも無理はない。
「錬金術?……錬金術といえば、治癒の水薬や強壮の水薬を創る為の職業だったか?」
少女の言い放った錬金術という単語に、灰の剣士も反応を示す。
「――違うっ……って、まぁ違わないけど錬金術って言うのは、もっと凄い物を生み出せるんだって!」
彼の言葉を真っ向から否定するかの様に、少女は熱く語り出そうとした。
「まぁ待て!先ずは村へ報告し、貴公の保護を兼ね街のギルドへ帰還するのが先決だ。細やかな話は其処ですれば良かろう?」
「む~~…、折角聴かせてあげようと思ったのにぃ!」
灰の剣士の指針に、少女は不服そうな表情を浮かべた。
つい先程まで、小鬼の群れに襲われた女とは思えない程の精神性だ。
三人は、一先ず依頼人の村に立ち寄り経過を報告――。
その後、彼女を引き連れ街のギルドまで帰還した。
……
(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― ギルド)
「……そっちの方が早かったか」
「お前達にしては随分遅かったな」
ギルドでは、先にゴブリンスレイヤー達が待機していた。
今しがた、報告を終えたばかりだと言う。
「……人質か」
「少々、予定外に事が運んでな」
布に包まっている少女を一瞥し、ゴブリンスレイヤーは人質だと断定した。
「先に報告を済ませて来る。貴公も来てくれ」
灰の剣士は少女を引き連れ、ギルドの受付カウンターに向かう。
ゴブリンスレイヤー達には、ジークバルドが事情を説明してくれるだろう。
「――あ!ご無事で何よりです、お疲れ様でした!」
三つ編みの受付嬢が応対してくれた。
「予定通り小鬼の斬滅は完了したが、彼女が囚われていてな。少々時間を浪費してしまった」
灰の剣士は、少女の事を含めこれまでの経緯を説明した。
「――あれ?貴方、ついさっきギルドを発ったばかりでしたよね?」
「――えっ!?まぁ…その…あ…あはははは……」
どうやらこの少女、三つ編みの受け付け嬢とは顔見知りの様だ。
少女は苦笑いを浮かべ、バツが悪そうにしている。
「ん?どういう事か?ここの所属なのか?」
イマイチ事情が呑み込めず、灰の剣士は少女の素性を訪ねてみる事にした。
「――ああ待って、先ずその子を着替えさせないと!代わりに私が説明してあげるから」
そこへ監督官が割り込み、代わりに素性を説明してくれる事となった。
そう言えば少女の服はボロボロで、無事なのは下半身のホットパンツと大腿部まで届くブーツだけだ。
先ずは彼女を着替えさせ、落ち着かせる必要があるだろう。
――といっても、少女自身は何ら心に傷を負っておらず、暗い雰囲気など微塵も感じられないのだが。
「あのぉ、この国って同じ服置いてあります?」
「えっと…どうでしょう?幾つかカタログをお持ちしますね」
――ん?この
少女は
若しかしたら、この国の住民ではないのかも知れない。
――いや、今から分かる事か。
灰の剣士は監督官から説明を聞く事にする。
その間、少女は受け付け嬢から衣服のカタログを受け取り、同じ物が無いかを探っていた。
……
灰の憶測通り彼女は、他国の人間だった。
農業よりも金属加工が主な産業で、この大陸から更に南進し海を越えた先に件の王国が存在し、この国とは同盟関係だと語る。
その地域の土壌は、鉄分を多く含み独特の植生が散見される。
また国の離島には少量の水分でも育つ
少女は離島出身者で、独学で錬金術を学んでいる様だ。
因みに王国から、この国まで船で約二日掛かるとの事。
一応冒険の経験は有るらしく、魔物や異形相手の戦闘力も、そこそこには備えている様だ。
彼女は、更なる錬金術師としての知識と研鑽を兼ね、数日前この国で冒険者として登録した。
”なんて事のない島の、なんて事のない村、そこでなんて事のないアタシは暮らしていた”というのは彼女の談。
容姿も身体つきも特徴が無いのが特徴の、何処にでもいるごく普通の少女――。
周囲からは、そういう認識を抱かれている。
――どこからどう見ても、男ウケのする容姿と体格だと思うのだが、若しかして私だけが歪んでいるのか?…いや違う、啓蒙が低いのだろう。周囲の人々に比べて――。
灰の剣士だけは違う認識でいたのだが、ギルドに帰還する道中でも街の通行人は彼女に対し、意外な程に無関心だった。
脳に瞳を得るのだ。
――ぬぅっ…、私の人間性が深淵に近いという事か。我が人間性も限界と見える…!
そして、どうでも良い事で発狂ゲージを高める、灰の剣士。
彼女自身、祖国でも幾度となく冒険を繰り返し、小鬼を討伐した経験も有った。
しかし、彼女の国とこの国では異形の生態系も殆どが異なり、今回遭遇した小鬼も彼女の国とはかなりの違いが見られた。
先ず生息数が桁違いで、彼女の国では小鬼は群れを成した処で、多くても精々10匹を越える事は極稀だという。
また凶暴性や悪辣さは、この国の方が圧倒的に高いらしい。
本来は南方ギルドで登録する予定だったが、馬車が道を間違え
つまり彼女は、西方所属の冒険者という事になる。
「錬金術師というのは、戦闘職ではなかった筈だ。何故たった一人でゴブリンに――」
カタログを眺めている錬金術師を名乗る少女――。
彼女は単身、小鬼の巣穴に囚われていた。
”一人で小鬼退治に行かせたのか”と、灰の剣士は監督官に問い質す。
「――まさか、そんな訳無いでしょ!」
彼女は即座に反論した。
彼女の説明によると、茶髪の錬金術師はダークゴブリン討伐へ参加しているのだと言う。
彼女は特定の一党を組まず、現在は
無論この国では何の実績も上げていない彼女を討伐に参加させる気などは無く、受付嬢も難色を示した。
しかし錬金術師という事もあり、後方支援に従事させるという条件で参加を許可したのである。
どうやら彼女は、単身ギルドを発ったらしい。
「若しかして彼女、徒歩で水の都に行くつもりだったのかしら?」
「恐らくはそうだろうな。――でなくば単身、小鬼に囚われたりはしない筈だ」
「――ちょっと聞いてみるわね」
監督官は、茶髪の錬金術師に近寄り聞き出す事にした。
『……――ハァ…呆れた』
暫しの問答の後、彼女から溜息が漏れる。
彼女が言うには、錬金素材の採取を兼ね徒歩で水の都へと向かう算段だったと言う。
この街から水の都へ向かうには、馬車でも相当の時間を浪費する。
況してや人間の徒歩で向かおうものなら、どれ程の時間を要すのだろうか。
もしも今から徒歩で都まで向かったとしても、到着した頃にはダークゴブリンの討伐を終えている頃合いだろう。
とても間に合うものではない。
茶髪の錬金術師は、何とも言えない表情で頬をポリポリと搔いていた。
「そう攻めるな。この国へ来て、まだ日が浅いのだろう」
実際、茶髪の錬金術師がこの国に到着してまだ数日しか経っておらず、近隣の土地勘もままならない状態であった。
「ねぇ、もし差支えなければ、彼女と一党を組んであげられない?」
監督官が、灰の剣士に頼み込んだ。
「――なに?この私がか?」
監督官の案に、灰の剣士も些か戸惑いを見せた。
「ほら、どういう経緯であれ、結果的に貴方が救助したという事になっているんだし――」
「私からもお願い致します。どうか頼めないでしょうか?」
監督官に続き、三つ編みの受付嬢からも頼まれてしまった。
確かに形式上、灰の剣士が救出した事になっていたが、もう一人彼に同行していた人物が存在していた。
「それなら彼――ジークバルドとならどうだろう?」
――彼の人柄と言い、度量の広さと言い、容易に諭した事と言い、きっと彼女にも良き影響を……。
灰の剣士は、同行していたジークバルドこそ適任ではないかと、彼を推してみる。
しかし――。
「……ん?彼は?」
灰の剣士は辺りを見回すも、ジークバルドの姿は何処にも見当たらなかった。
「――あの男なら酒場だ」
近くに居たゴブリンスレイヤーが応える。
――…………。
言葉が出なかった。
「――観念しろ」
「――罪な男」
「――受け入れなさいな」
「――他に誰が居るんです」
ゴブリンスレイヤー、スイーパー、監督官、三つ編みの受付嬢に畳み掛けられる灰の剣士。
滅多打ち――最早受け入れるしか選択肢はなかった。
――おのれジークバルド!……いや、彼に限ってその様な卑しい考えなどは無いか。
一瞬、彼に逃げられたのではないか、という邪推が浮かんでしまったが直ぐにその考えを振り解いた。
実際、ジークバルドにその様な他意など無く、単純に酒場で休息を取りたかっただけである。
小鬼の巣穴を封鎖する時に放った戦技『嵐の螺旋撃』は、予想以上に彼を消耗を強いていた事も原因の一つであろう。
「……承知した、こうして邂逅したのも何かの縁だ。私で良ければ宜しく頼めるか?」
観念した灰の剣士は、茶髪の錬金術師を受け入れる事にした。
――そう言えば、彼女にも諭されたな。
―― 誰かと積極的に交流を持て、現状に胡坐をかくな ――
槍使いの相棒、魔女にそう説かれた事があった。
(イヤ―ワン編、第35話にて)
「へへ、宜しくね!……え…と、君、お名前は?」
茶髪の錬金術師を受け入れる事にし、彼に挨拶をする。
しかし、眼前の剣士の名前を彼女は知らず、どう呼んで良いのか分からない。
「…残念だが、本名は忘却してしまってな。私は『火のない灰』、周りからは『灰の剣士』と呼ばれている」
あの時代で多くの死を繰り返し、精神を喪失してしまった彼だ。
当然、本来の名など覚えていよう筈も無く、便宜上の呼び名を彼女に告げた。
「え?記憶喪失なの?…しょうがないなぁ、ん~と、”灰君”でいいかな?じゃあ、灰君。これから”末永く”宜しくお願い致します!」
「宜しく頼む。私も未熟な身、至らぬ面は多々あるかと思うが貴公の力、頼りにさせて頂こう」
お互い頭を下げ、彼女と灰の剣士は一党を組む事になった。
――末永く……な。短い付き合いになるかも知れんというのに。
彼女の国の状況はよく分からないが、此処では危険な異形が跳梁跋扈しているのが現状だ。
願わくば、彼女が無事帰国できるまで支えていこうと決意を固める。
「あ、そうそう。貴方気を付けてね。そいつ
「――え、そうなの?うわぁ……」
監督官から、灰の剣士に纏わる批評を聞かされ、茶髪の錬金術師はジト目で彼に視線を送った。
「――!?貴公、適当な事を言うな!」
「事実でしょ!みんな知ってるわよ」
彼は監督官に詰め寄るも、彼女に軽くあしらわれてしまった。
「全く以て、言い得て妙ね。私の時もそうだったし、聞けば神殿の子にも、そうしてたそうじゃない?」
(イヤーワン編、第35.5話)(イヤーワン編、第34.5話)
「ロスリックでは、銀髪の武闘家さんや学院の女の子も泣かしたんだとか――」
(本編前夜編、第63話)(本編前夜編、第57話)
「私が聞いた話では、圃人の少女も泣かされたらしいわよ?」
(イヤ―ワン編、第16話)
「自重しないと、女の敵認定されてしまいますよ?」
ゴブリンスイーパーを始め、彼女のメンバー達、三つ編みの受け付け嬢による全方位から言葉の刃が、
(何故か皆、ニヤケている)
―― YOU DIED ――
(彼の精神は死んでしまった……一時的に)
「――取り敢えず着替えないとね。私について来て、店を案内してあげる」
「あ、ありがとう。まだ此処に着たばかりで、何処に何が在るかも良く分からなかったんだ」
茶髪の錬金術師は小鬼に襲われ、衣服はボロボロの状態だ。
彼女はゴブリンスイーパーに連れられ、ギルドを後にした。
「ああ言い忘れてました。ゴブリンスレイヤーさんと灰の剣士さん、街外れのええっと、オーベック様より言伝を預かってます。帰って来たら家まで来て欲しいと――」
三つ編みの受付嬢が二人にメッセージを伝えた。
彼等が小鬼退治に向かっている間にオーベックがギルドに訪れ、彼と灰の剣士に渡す物があると伝言を残していたのである。
「分かった直ぐ向かう。…灰よ、俺は一足先にオーベックの下へ行く」
「承知した。私は先に工房と神殿に立ち寄ってから後を追う」
ゴブリンスレイヤーがそう告げ、灰の剣士も後から向かうと応えた。
―― 武器工房 ――
(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― 辺境の街)
「――よぅ、着心地はどうだ?」
「――実に馴染む、感謝する!」
併設された武器工房で注文していた武具を受け取り、灰の剣士は装備を新調していた。
以前、ロスリック不死街から持ち帰った数々の装備品を修繕して貰い、今こうして受け取っている訳だ。
料金は既に前払いしてある。
鎧下を『ミラのベスト』に変更し、付け替えた。
「実験台にして悪いんだが、緩衝材として、新素材を使わせて貰ったぜ」
「…新素材?」
アンドレイは、棚の下から正方形の切れ端の様な物を取り出し、カウンターの上へ置く。
見た事も無い素材だった。
灰の剣士は珍しそうにその切れ端を手に取りながら、肌触りや見た目を検分する。
「何だこれは、伸びたかと思えば直ぐに縮み元通りになる。柔らかい様で弾力があり、引き千切る事もできん。それに臭いも頭の奥に響く様な異臭がする。――これは一体何だ?」
伸ばし、捻り、様々な形で力を加えるも、その素材は形を変えながらも直ぐ元に戻る、今まで目にした事のない不思議な素材だった。
「そいつは
「――ゴム?初めて耳にする名だ」
ゴムと呼ばれるこの不思議な素材。
灰の剣士は、尚も力を加え変形するゴムを注視していた。
ゴムの木と呼ばれる、数種類の樹木が存在する。
その樹脂を採取し生成加工した末に、今の素材が出来上がる。
とにかく極めて伸縮性に富み、耐摩耗性、対弾性にも優れ、半面、耐熱性、耐油性には非常に脆弱であると言う。
「……この素材、上手く使えば産業に革命が起こるのではないか?」
「ほぅ…そこに気付きやがったか」
アンドレイは口端を吊り上げた。
我々の現在社会に於いても、ゴムは日常生活に密接に関わっている。
衣、食、住、あらゆる面で常に欠かす事の出来ない素材だ。
この四方世界では、ゴムという素材もまだまだ試作段階で庶民には広く普及はしていない。
しかし、軍部ではゴムの特性に目を付け、現在進行形で様々な加工や実験が繰り返されているのだ。
当然その素材は他国も目を付けており、冒険者とは関係のない領域で、苛烈な開発競争が行われているのであった。
そう遠くない未来、今よりも更に発展したゴムが誕生するだろう。
そうなれば、ありとあらゆる面で文明社会に大きな変化が生まれる。
それが吉と出るか凶と出るか、まだ誰にも分かってはいない。
「アンタから受け取った時、そのベストは使いもんにはならず、どう修理したものかと頭を捻らせたが、新素材のお陰で現物以上に仕上がった筈だ」
アンドレイが言う様にミラのベストの裏側は、ふんだんにゴム素材が使用され、非常に優れた防御効果を有す。
また急所部分には分厚いゴムを使用し、刺突や斬撃にもそれなりの耐性を獲得していた。
恐らくこのベストだけで、前衛職が務まる位に。
重量も軽量の部類に入り運動力や四肢の可動域を妨げる事はない、極めて良質の防具と化した。
「新素材か……。時代は着々と進んで行くのだな」
「おう!世界が
両者は目を閉じ物思いに耽った。
『――そのゴム素材は私の装備にも使われているし、この娘の国でも流通しているそうよ』
ふと後方から声が掛けられた。
振り向くと、ゴブリンスイーパーと茶髪の錬金術師が立っている。
「――お待たせ、君!」
衣服の新調が終わったのだろう。
茶髪の錬金術師は、得意気な表情をしていた。
――随分と薄着だな。これで誰も好色の視線を向けられんというのだから、世の中不思議な事だらけだ。
運よくこの街にも同じデザインの衣服が販売されており、彼女の服装は元通りとなった。
一応、黄色を基調としたジャケットを羽織っているものの灰の剣士には、どうしても扇情的に映ってしまうのだった。
「私の方も、もうすぐ終わる。少し待っていてくれ」
灰の剣士は彼女達にそう告げた。
後は、他の装備品を受け取る必要がある。
ミラのベストはあくまで鎧下という位置付けで、胴鎧としては、以前持ち帰った騎士の鎧があった。
だが、今の彼では全身鎧は確実に
ミラのベストの上には、騎士の鎧を部分加工した
主に胸部と脇腹を重点的に保護する為の部分鎧だ。
脚防具や腕防具も同様で、重点部分のみを薄い金属板で覆い、他は革や布で構成され軽さと運動性を重視してある。
しかし兜だけは頑丈さを重視し、内側の詰め物にもゴムや革製の緩衝材が使用されていた。
最後に彼の外套だが、無論これも新調されており裏側には、あのロスリック王子が使用していた布が縫い付けられていた。
これにより、魔力や呪いにも高い耐性を得るに至った。
「――よし!」
防具の付け替えが完了し、今迄の装備は修理に出す事にした。
「済まなかったなアンドレイ、これで準備は整った」
「おぅ、死ぬんじゃねぇぞ!そこの嬢ちゃん等もな!」
「有難う店員さん。行って来るわね」
「じゃ、オジサンまたねぇ!」
準備を終え、彼等は工房を後にする。
「後は神殿だな」
「神殿に何か用?…
「まさか。
地母神の神殿へと向かう三人。
ゴブリンスイーパーに茶化されるも、彼の目的はタリスマンを新調する為だ。
奇跡を行使する度に、触媒であるタリスマンは次第に劣化を繰り返し、性能低下が著しかった。
四方世界の奇跡は、触媒の無い状態でも発現させる事が出来る。
しかし、灰の剣士が居た時代の奇跡は触媒が必須となり、その消耗速度も従来の比ではなかった。
「ね、ね、
茶髪の錬金術師は、スイーパーに興味本位で尋ねる。
やはり気になるのだろう。
「運が良ければお目に掛れるわ」
スイーパーは短く返答する。
灰の剣士自身も、神殿に長居するつもりはないのだろう。
そうこうしている内に地母神神殿に到着した。
(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― 女神官と慈悲深きその手に)
入り口付近で、一人の信徒が三人を目にした途端そそくさと走り去ってしまったのが気になったが、真っ直ぐ購買部へと向かう。
「――あ!お帰りなさぁいっ、お兄さん!」
白と青を基調とした法衣を身に纏った、見習い神官の少女が声を掛けて来た。
お勤めの最中なのだろう、サイズはかなり大きめだが、清純な少女と法衣の組み合わせは何とも清らかだ。
「ん……ただいま」
若干たじろぎながらも、灰の剣士は挨拶を返す。
――なぜ我々の来訪が分かったのだ?
まるで待ち構えていたかのように、彼女は出迎えてくれた。
――そうか、さっきの信徒か。
入り口付近で信徒が彼等の姿を見るなり、走り去って行ったのを思い出す。
恐らくその信徒が、彼女に来訪を告げたのだろう。
「えっと、後ろの方たちは――」
彼の後ろに控えている二人に、少女は視線を向けた。
「こんにちわ、久し振りね」
「初めまして、錬金術師のライザリン=シュタウトよ。宜しく!」
「あ…よ、宜しくお願いします、此処の見習い神官です!」
全身装備のゴブリンスイーパーとは面識がある。
過去にこの神殿で治療を受けた身だ。
(イヤーワン編、第49話)
もう一人の錬金術師の少女とは、初めてだ。
「――うわぁ、可愛い!この人の事、”お兄さん”って呼んでたけど、妹さん?」
茶髪の錬金術師は、灰の剣士との関係について尋ねた。
「――えっ?お、お兄さんとの関係ですか?えぇっと…そのぉ…」
彼との関係を尋ねられ、少女は脚をモジモジさせながら俯き、時折意味あり気に視線を彼に向ける。
「血縁関係という訳ではない。話すと長くなるのだが――」
少女に代わりに灰の剣士が、経緯を大まかに説明した。
この街に流れ着き、神殿にて数日間滞在する事になった折、彼女が世話をしてくれたのである。
それ以来、彼女と交流を持つ事となった。
「ああ。あたしね、この人と一党を組む事になったんだ」
「え、そうなんですか」
茶髪の錬金術師の言葉に、少女は暫し考え込む仕草を見せるが、やがて彼女にそっと耳打ちするようにヒソヒソと話し出した。
「お兄さんにイジワルされたら直ぐ私に言って下さいね。ちゃんと叱っといてあげますから」
「オーケー、オーケー、大丈夫。ギルドの人達にも言われたから……って、あの人……まさか悪い人じゃ…ないよね?」
「……ふふふ、御自分の目で確かめた方がいいですよ」
――お、おぉ!達観してらっしゃる!
茶髪の錬金術師は、少女の対応ぶりに舌を巻いた。
「……お兄さん方も冒険ですか?何だか冒険者さんが大勢詰め掛けて来ましたけど」
水の都へ旅立つ為、多くの冒険者がこの神殿へと訪れていた。
それ故、彼女も大方の察しは付いている。
「実は、このタリスマンを買い替えたくてな」
灰の剣士は、手首に撒いていた『粗布のタリスマン』を彼女に見せた。
それはボロボロに擦り切れ、手垢に汚れ濁った色に染まり、不規則な皺だらけに変貌していた。
「…………」
少女は、それを手に取りジッと視線を向けるも、当然晴れやかな表情ではなかった。
「…これ買われたの、いつ頃ですか?」
「正確には覚えていないが、約一ヶ月ほど前か」
「……お兄さんのやり方に文句を言うつもりはありませんけど、チョット使い方が荒っぽ過ぎませんか?作った人達が可哀想です」
余りにも早過ぎる損耗率に、少女は苦言を呈した。
布造りの質素なタリスマンだが当然作り手は存在する訳で、決して道楽で造った訳ではない。
純粋な信仰心を持つ聖職者が使用者の無事と息災を祈り、慈悲の心を以て丹念に生み出された品なのだ。
奇跡の触媒としても機能するが、本来タリスマンは邪を払う魔除けとしての意味合いが強い。
彼の様に僅か一か月前後で劣化させる事など、先ずありえないのだ。
「それに関しては誠に申し訳ない。本当に造り上げた人たちに、合わせる顔が無いな」
灰の剣士は少女に頭を下げる。
「――んもう!私に謝っても意味がないですよ!」
「――だが、そういう人達が造ってくれたお陰で、私は奇跡を発現する事ができる。その奇跡で私自身だけでなく、何度も仲間が助かった。頻繁に酷使している事は自覚しているが、同時に感謝もしている」
彼は頻繁に奇跡を行使し、その度に触媒は劣化してゆく。
だが、彼が奇跡を行使するのは決して私欲の為ではない。
これまで彼の奇跡で、多くの仲間を支えてきたのも事実だ。
此処に居るスイーパーと茶髪の錬金術師も、彼の奇跡で治癒を施された経緯があった。
「――もぅ、しょうがない人ですね、貴方は!」
後のゴブリンスレイヤーに使うであろう言葉を、彼にも吐く。
「……買い替えても構わないか?」
「――クスッ…私の”お許し”なんて必要ないですよ!……けど、なるべく大事に扱ってあげて下さい、精魂込めて造ってくれた人達の為にも――」
彼女はクスクスと笑いながら彼に道を譲った。
彼は購買部でタリスマンを買い替える。
「なんて言うか、凄くしっかりした子ね」
「――そう思うわ」
茶髪の錬金術師とスイーパーは、彼等のやり取りについてヒソヒソト話していた。
「では、もう行く。我々の無事を地母神様に祈っていてくれないか?貴公の祈りなら安心できる」
用が済み、三人は神殿を発つ事になった。
「――任せて下さい!皆様にいと慈悲深き地母神様の御加護があらん事を――」
少女は、晴れやかな表情で彼等を見送った。
「また会おうね、君!」
「それじゃ行って来るわ」
二人の女も灰の剣士に続き、神殿を発った。
「……。タリスマンかぁ…。造り方…勉強してみようかな?」
――詳しい人いっぱい居るし…よしッ!
彼女の手には先程灰の剣士が使っていた、ボロボロに擦り切れたタリスマンが握られていた。
神殿を出た三人は、川沿いへと足を向けた。
「残るはオーベックの所だな」
「――オーベックって誰?」
当然、彼の事を知ろう筈も無く、茶髪の錬金術師は灰の剣士に訊ねる。
「小川沿いの小屋に、優秀な魔術師が居る。確か錬金術の知識も有していた筈だ、何か話を聞けるかも知んな」
「――え、そうなんだ?何か楽しみだなぁ…!」
彼の言葉に、彼女は高揚しながら歩みを速める。
”早く行こう”と言わんばかりに――。
――すっかり元気になった、良き事だ。
数時間前までゴブリンに襲われていたとは思えない程に、彼女は心身ともに回復し切っていた。
元々、精神の土台がしっかりと根付いているのだろう。
灰の剣士は、そんな彼女に言い様のない頼もしさを感じていた。
小川のせせらぐ街外れの地、ゴブリンスレイヤーの牧場とは真逆の方角に位置する小屋。
其処に彼等は集まっていた。
(推奨BGM ライザのアトリエ ―― 秘密の隠れ家)
「今日は、また随分と団体さんだな」
小屋の住人である、ヴィンハイムのオーベックは苦笑いを浮かべている。
「ギルドから連絡を受けた」
「ああ。渡す物があってな。…こいつだ」
オーベックは壺の様な物体を取り出し、ゴブリンスレイヤーと灰の剣士に見せる。
「……火炎壺…ではなさそうだな」
「――オーベック…まさかこれは…!」
火炎壺に似た形状の壺らしき物体。
もしこの壺が火炎壺なら、態々ここで紹介したりはしない筈だ。
火炎壺は手軽な攻撃道具として、広く流通している品だからだ。
灰の剣士には見覚えがあるのだろう、この壺に反応を示す。
「―― 雷壺だ ――」
オーベックが短く告げる。
「……雷壺……」
ゴブリンスレイヤーは、その壺を注視している。
「雷壺というのは――」
「――あ~ッ知ってる!確か、”イナズマ鉱”と”中和剤”を錬金釜で調合して出来るんだよね!」
説明しようとしたオーベックに、突如として茶髪の錬金術師が割り込んだ。
「おおぅ…びっくりした。どうした藪から棒に……いや待て、お嬢ちゃん若しかして、調合師か?」
かなりの声量だったのだろう。
狭い小屋に、彼女の声は大きく響き渡る。
「調合師じゃなくて、錬金術師!あたしこれでも知識と見聞を広める為に、この国に来たんだ!」
「ほぅ…」
錬金術師を名乗る彼女に、オーベックは多少なりとも興味を抱いた様だ。
しかし閑話休題――。
彼は説明の為に話を戻す。
雷壺とは呼んで字の如く、投げ付け破裂させる事で周囲に電撃を撒き散らす投擲道具だ。
当然、火継ぎの時代より存在していた道具で、竜と共に在りながら竜狩りを生業とするロスリック騎士達が携えていたと言われている。
「お嬢さんの言う”イナズマ鉱”とやらは知らんが、主な原材料は
オーベックは棚の上に、ある鉱石を置く。
「この鉱石は?」
「イナズマ鉱とは違うね」
灰の剣士と茶髪の錬金術師は、その鉱石を凝視する。
棚の上に置かれた鉱石は、
これ等の石材は電気を帯び、雷壺の主成分を占める。
そして
その上で、ベースに雷の魔力を付呪する事で、完成に至るのだ。
「本来なら”黄金松脂”があれば最適なんだが、アレは製法が失伝しちまっててな…。まぁ幸い、魔力を含んだ松脂なら代用が可能だったのは、助かったがな」
どうやらこの雷壺は、代用品だと言う。
あの時代に存在した雷壺本来の製法は失われ、こうして代用品で再現するのが精一杯であった。
「電撃の特性は理解しているな?扱いを一歩でもを間違えれば、自滅の原因となる」
「分かっている。これ程強力な品なら、ゴブリン共にも効果は見込めるだろう」
「これを製造するには、かなりの手間を掛けた筈だ。市場に出回ったとしても、少量且つ高価な品になるだろうな」
オーベックの忠告を受け、ゴブリンスレイヤーと灰の剣士は雷壺を受け取った。
加えて魔力を含んだ松脂など、手に入る場所と言えば、あのロスリックしかないのだ。
更に出来上がったベースに、雷の魔力を吹き込む必要がある為、素人が知識のみを頼りに調合した処で出来上がる品ではないのだ。
「使い心地を報告してくればいい。例の小鬼と対決するそうじゃないか」
「ああ。厳しい戦になるだろうな」
改良の余地があるのだろう。
ダークゴブリンとの戦で使い勝手を試して貰う為、この品を二人に託したオーベック。
「うぅ~ん、国によってこうも製法が違うんだね。奥が深いなぁ…錬金術って――」
茶髪の錬金術師は、ウンウン唸りながら深く思案している様だ。
「――だったら、其処の道具を持って行って構わんぞ」
「――え、いいの!?」
オーベックは、木棚に置かれている数々の道具を顎でしゃくった。
其処には、様々な小道具が陳列されている。
フラスコ、小瓶、
どれもが調合や加工に使われる小道具類で、錬金術師にとって必須となる代物だ。
幾ら、知識、技術、才覚が備わったとて、ありふれた道具類が、実は最も重要な部分で偉業を支えているというのは否定しようもない事実。
いと小さき部分で、人は、世界は繋がりを持っているのだ。
「俺は魔術師でな、錬金術師ではない。多少かじってはいるものの、お嬢さんには遠く及ばんだろうさ」
それ等は元々、前の住人――『孤電の術士』が所持していたものだった。
今はオーベックが住人となっているが、錬金術師ではない彼は正直それ等を持て余していたのである。
「やったぁ、有難う!実は困ってたんだぁ!小道具類って結構高いのもあるし――」
茶髪の錬金術師は、嬉しそうに小道具類を受け取り新調した鞄に詰め込んだ。
これまでの道具は大半が、小鬼に壊され使い物にならなくなっていた。
無事なのは、携帯式の錬金釜に特殊な水晶をはめ込んだ杖だけで、彼女自身の路銀も王国金貨にして1枚分だけとなっていた。
オーベックからの思わぬ提案に、彼女は意気高揚とする。
「さて、アンタは良いのか?何かしら使命を帯びているのだろう?」
小屋の入り口付近で佇んでいる一人の男に、オーベックは声を掛けた。
「ウワハハハ、何の、気遣いは無用だ。私は小細工が苦手でな」
玉葱の様な全身甲冑の騎士、カタリナのジークバルドは豪快な笑い声を上げた。
「本当に困窮した時、貴公に頼るとしよう!」
「ふ…、アンタらしい」
オーベックも目を閉じ静かな笑みで返す。
火継ぎの時代、彼等も密かに交流を深めていたのであった。
「そろそろ発とうか?皆の者」
何時までも長居する訳にはいかない。
ジークバルドが区切りを付け、皆は小屋を後にしようとした。
「ああ待て、お前達にはまだ伝える事がある」
オーベックは、灰の剣士とゴブリンスレイヤーの二人だけに残るよう告げる。
「先に馬車に行っておくわ」
ゴブリンスイーパー達は、先に小屋を出て自身の馬車で待つと告げた。
小屋には男三名だけが残る。
「お前達、あのスクロールはまだ持っているのか?」
単刀直入にオーベックは訪ねる。
以前ロスリックへ向かう二人に、スクロールを手渡していた。
(本編前夜編、第57話)
「そう言えば、極力野外で使えと念を押していたな」
灰の剣士は、スクロールを手渡された時を思い出す。
「今回は、野戦兵器の存在に加え未だ嘗てない規模の小鬼共……明らかに野外戦を想定した戦いになる」
ゴブリンスレイヤーは、今回の依頼内容を思い返す。
洞窟内で野戦兵器や翼竜は力を発揮する事が出来ない。
――となれば、戦場は必然的に野外に限定される。
「出番が回って来たか」
オーベックからは、スクロールの効果を説明されていた。
二人がもつスクロールは、それぞれ効果は違うが、どれもが強力無比で戦局を左右する程の潜在能力を秘めたスクロールだ。
「温存しておいて正解だったな。あの時に使う事も意識はしていたのだが――」
亡者の穴倉にて立ちはだかった、呪腹の大樹――。
以前とは違い再生能力を備えていた為、ゴブリンスレイヤーは最後の切り札としてスクロールの使用を視野に入れていた。
だが結果的に別の戦術で討伐が叶い、今も手元に残っている。
「下手に使えば、亡者の穴倉ごと全員が生き埋めになってただろうぜ?」
亡者の穴倉は、比較的開けた空間だった。
それ程の地形すら崩落する力を秘めているという。
「既に運用方法は考えてある、帰ったら土産話代わりに聞かせてやる」
珍しく、軽口を交えながらゴブリンスレイヤーは告げた。
「そろそろ俺達は行く」
あまり待たせる訳にもいかず二人は小屋を出ようとしたが、またもや灰の剣士だけ呼び止められた。
まだ用が?――という表情でオーベックに視線を送る。
「そんな顔をするな。なぁに、ちょっと個人的に聞きたかっただけだ」
茶髪の錬金術師について聞きたい事があるらしい。
――彼女に、興味を持ったのだろうか?まぁ、錬金術繋がりだ、あり得る話だ。
恐らく彼女と一党を組みたいのだろう。
そういう類の質問だと予想し、オーベックへ向き直った。
しかし向けられた質疑は。
「おまえ、あんな女が趣味なのか?」
「…………」
「すまん。質問の意図が理解出来んのだが?」
「深読みするな、そのままの意味だ」
オーベックが言うには、何処にでも居そうな特徴が無いのが特徴のといった、普通の村娘みたいなのがお前の趣味なのかと、問いていたのである。。
「……彼女に何か問題が?」
「……いや悪い。俺が口出す事じゃなかったな、忘れてくれ」
引き止めて悪かったとやんわりと謝罪し、オーベックは彼を解放した。
――何なのだ全く……!
少々腑に落ちないまま小屋を出た灰の剣士――。
別段、あの錬金術師について悪く言われた訳ではない。
しかし街の住民からも見事な位、彼女に対し視線を向ける事は無かった。
寧ろ不審な格好をした灰の剣士やゴブリンスイーパーに対し、視線を傾けてきた位であった。
だが、そんな事に意識を向ける意味は無いのだろう。
灰の剣士は頭を振り、そんな考えを意識を奥へと追いやり、皆が待つ集合場所へと向かった。
……
水の都へは、ゴブリンスイーパーが所有している馬車を使う事になった。
馬車を引く馬は二頭だが、特別大柄で逞しい体躯をしている。
またスタミナ消費を極端に軽減する魔法の蹄が装着されていた。
二頭四輪式で、一般に乗合馬車に分類され街から街への長距離移動に適していた。
人の乗る車体部分は木製だが扉や木窓が備え付けられ、夜間用に専用のランタンを吊り下げられる構造をしており、さしずめ移動拠点と言った処だろうか。
御者はゴブリンスイーパーが務め、他のメンバー達は車体部分へと乗り込んだ。
「それでは出発します、――ハァッ!」
スイーパーが合図を送り馬を走らせ、一行は水の都へと向かう。
途中で小鬼退治という依頼と、錬金術師の虜囚という障害を乗り越え、いよいよ本格的な討伐任務が始まるのだ。
しかし、これは冒険ではない。
戦争なのだ。
異端の黒き小鬼――ダークゴブリンとその軍団との――。
その事実に気付いていたのは、ほんの僅かな冒険者だけであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
錬金術師
錬金術(Alchemy)とは、卑金属から貴金属を錬成する術のこと。
卑金属は要するに「貴金属の対義語」で、鉄や銅など貴重ではない金属を指す。
広義には不完全な物質からより完全な物質を生み出すそうとすることも含む。
不老長寿の薬に、有り余る黄金、人工生命体。
神の領域に近いものを生み出すため、日夜研究に明け暮れる者も居る。
一般では、専ら治癒の水薬や強壮の水薬といった治療薬(ポーション)や
身体能力向上の秘薬(エリクサー)を作り出す職業として認知されている。
また燃える水
一言に錬金術師と言っても練度の差は実に千差万別で、精製技術は人によりけりである。
錬金術には実に多くの素材が必須となり、弟子に採取させる者や
自ら外出し採取に赴く事も多々ある。
その際、危険に見舞われ帰らぬ人や錬金生命を絶たれる人も実に多く存在している。
錬金術師になるには、実に多くの専門知識、調合或いは合成技術に伴う器用さ、配合の繊細さのみならず、向上心、探求心、不屈の精神、ちょっとした魔力?など多くの素質が必要とされる様だ。
現代ではオカルトもしくはファンタジーの一要素だが、18世紀までは正統な学問として位置づけられており、化学の発展に大きく貢献した。
学問とは実に尊いものである。
その知識の深海の果てに底は無く、故に全てがやって来る。
灰の剣士
素性:持たざる者(農奴)
ソウルレベル 70
生命力・18
集中力・16
持久力・17
体力 ・18
筋力 ・19
技量 ・20
理力 ・16
信仰 ・20
運 ・15
技能
奇跡、呪術の火、ソウルの魔術、カーサスの高速体術、ソウルの感知、一部の戦技は武器種を問わず使用可能。
装備品
頭:無名騎士の兜(改・祈祷の外套付き)
名も無き騎士の兜、薄板でも防御効果を保つ溝の加工が特徴。
詰め物と緩衝材に樹脂製の新素材(ゴム)が使用され、耐衝撃に長ける。
またバイザーは、開閉着脱が自由で視界を妨げる事はない。
特別な祈祷により魔力を宿した布を外套裏に縫い付け
魔力や呪いに強い耐性を持つ。
また寒冷にも強く、その布は嘗ての王族
ロスリック王子が身に付けていた衣類と同じ材質で出来ている。
値段は 金貨8枚。
体1:無名騎士の胸当て(キュイラス)
名も無き騎士の鎧、薄板でも防御効果を保つ溝の加工が特徴。
その鎧の胸部と腹部のみの部分鎧で、軽量だが防御範囲は大幅に低下した。
しかし材質は一新し重要部分は高張力鋼を使用し、他はレザーなどで補強。
軽鎧だが、一定水準の防御効果を獲得した。
キュイラスとも呼ばれている。
値段は 金貨10枚。
体2:ミラのベスト(改)
ミラの騎士団の旅装。
正当な騎士にのみ与えられたという、ハードレザーのベスト。
入手した当時は風化が酷く、そのままでは機能しなかった。
しかし時代は進み、新たな素材は修復を可能とし復活を果たす。
鎧下としても機能し、軽量且つ優良な防御効果を持つ逸品である。
騎士の旅は使命と共にあり、それを成就する者は少ない。
値段は 金貨9枚。
腕:ミラの手甲
ミラの騎士団の旅装。
ミラのグローブをベースに改良が加えられたもの。
正当な騎士にのみ与えられるという柔らかな鹿革のグローブ。
その鹿革制のグローブに、無名騎士のパーツや軽銀で補強。
僅かな重量増加と引き換えに手甲としても機能する。
騎士の旅は使命と共にあり、それを成就する者は少ない。
値段は 金貨7枚。
足:ミラの足甲
ミラの騎士団の旅装。
ミラのズボンをベースに改良が加えられたもの。
正統な騎士にのみ与えられたという柔らかな鹿革のズボン。
その鹿革制のズボンに、ハードレザーや無名騎士の足甲を部分的に追加。
動き易さと防御効果の両立に成功。
騎士の旅は使命と共にあり、それを成就する者は少ない。
値段は 金貨7枚。
指輪1:緑化の指輪
武器1:打ち刀(鋭利+6)
東の地で鍛えられる独特の刀剣。
高い技術による業物。
研ぎ澄まされた刃は優れた切れ味を誇り、また対手に出血を強いるが
繊細さ故に刃こぼれしやすい欠点がある。
戦技は「居合」
居合構えから攻撃は何れも出が速く
通常攻撃で踏み込み斬り、強攻撃で弾きパリィと状況に応じ使い分けられる。
最上質に近い素材を使用し、尚且つアンドレイが調整を加えた逸品。
鋭い切れ味のみならず、斧に並ぶ頑強さをも誇る。
古い歴史を連綿と受け継ぐ国、東国。
火が陰りし時代、その国でも戦は例外なく絶える事は無かった。
人はそれを戦国時代と呼ぶ。
値段は 金貨40枚。
武器2:ロングボウ(+3)
武器3:孤電の杖(+3)
盾1:ターゲットシールド(+3)
盾2:粗布のタリスマン
所持品: エスト瓶(10回)
エストの灰瓶(5回)
緑化草×3
ダガー
ペンダント
基本セット(雑嚢)
スローイングナイフ×6
雷壺×1
七色石×10
遠眼鏡
太陽のメダル×1
狼血の剣草×1
苔玉×2
決闘の護符×2
不死狩りの護符×2
スクロール×1
螺旋剣の破片
某錬金術師のゲームキャラをモデルにした誰かさんを登場させてみました。
元々錬金術師キャラは登場させる予定だったので、オリキャラでも良かったのですが、
敢えて分かり易いゲームキャラをモデルにしました。
キャラ名は敢えて明かしませんが、色んな比喩を持つ彼女です。
(推奨BGMで、バレバレですが……)( ;˙꒳˙;)
因みに私は、あのシリーズはプレイした事がないです。
触れてみたいですが、時間がとても足りません。
積みゲーが溜まりつつある。
如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
デハマタ。( ゚∀゚)/