ゴブリンスレイヤー ―灰の剣士―   作:カズヨシ0509

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 大変長らくお待たせいたしました。
実はまだ完全に完成していないのですが、区切りのいい部分を抜き取り投稿致します。

表記変更――茶髪の錬金術士をライザ:人物名に変更いたします。

よくよく考えてみればダクソ系のキャラ、ソラールやジークバルド等、普通に名前有りで登場させているので、無理矢理ゴブスレ風に変えてもややこしくなってしまうので。
理由はそれだけではなく、人物名で表記させた方が負担が減るのと、後々の話で真の理由を察して頂けると思います。

色々混乱させて申し訳ありません。m(_ _;)m

ではドゾ!


第74話―時代を超え再開す―

 

 

 

 

 

雷壺

 

 ロスリック騎士たちの竜狩り道具。

 敵に投げつけ、爆発して雷ダメージを与える。

 

 竜を友とするロスリック騎士は古くは竜狩りの騎士でもあった。

 故に騎士たちは太陽を信仰し特殊な狩り道具を用いたという。

 

 現在では正確な製法は失われており、新たに造り出された物は僅かに性能が劣る。

 

 錬金術という神秘の秘術が存在し、その分野に長けた尋常ならざる人物が存在する。

 そんな彼(彼女)らは、古代の狩り道具に何を想うのだろうか。

 

 貴重品であり値段は、金貨 5枚~10枚。 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

(推奨BGM ライザのアトリエ ―― 果てなく続く道)

 

 段差でも踏んだのだろう。

 

車輪が跳ね、それに伴い車体も跳ねる。

 

しかし、乗客たちは顔色一つ変えず平然としていた。

 

否――。

 

約一名は、意外そうな表情をしている。

 

尤も彼の素顔は騎士兜と外套(フード)で覆い隠され、その表情を窺い知る事は出来なかったが――。

 

「意外と揺れないものだな」

 

 西方辺境を発ち、はや数時間――。

 

馬車は街道に沿って走行していたが、この付近は整備も疎らとなり石畳もひび割れ些かの起伏が生まれていた。

 

如何に街道と言えども、その様な道を走れば当然揺れは激しくなろうというもの。

 

しかし思っていた以上に揺れは穏やかで、不快さを感じる事は無かった。

 

灰の剣士とて、馬車の搭乗経験は幾度とある。

 

それ等の大半は荷馬車といった、搭乗には適していない運搬用の馬車ばかりであったのだが。

 

「恐らくは、バネと緩衝材の働きによるものであろう」

 

 玉葱を彷彿とさせる重鎧の騎士、カタリナのジークバルドが言葉を返す。

 

今彼等が乗り込んでいるのは、荷物用などではなく乗用に適した馬車だ。

 

しかもかなりの上質な素材で設計されているらしく、動力源となる馬は無論、車体にも工夫が凝らされていた。

 

ジークバルドが語るには、車輪と車体の間にスプリング状のバネが仕込まれ、その両端部を樹脂製の緩衝材で揺れによる衝撃を吸収しているのだと言う。

 

原始的ではあるが、所謂”サスペンション”構造を施しているのである。

(因みに”ダンパー”は現在研究中――”ショックアブソーバー”の実用化まだまだ先の未来である)

 

「随分専門性のある学問だな、俺には理解出来ん」

 

 揺れの軽減構造に、安っぽい鎧兜の冒険者――ゴブリンスレイヤーも興味を抱いたが、彼にとっては未知の領域であった。

 

「私たちも誰一人として理解していないわ」

「全て技師たちの働きによるものよ」

 

 彼等に同行している女性冒険者達。

 

この馬車を所有している一党であったが、専門知識を有している訳ではなく、本格的な整備や補修は専門家に任せる必要がある。

 

『ごめんなさい、揺れたかしら?』

 

 御者を務める女性冒険者――ゴブリンスイーパーから声が掛かる。

 

「――大丈夫だよ!意外と揺れない事に、みんな驚いている位だから――」

 

 この中で唯一の白磁等級である女冒険者――茶髪の錬金術師(本名 ライザリン=シュタウト)が快活な声音を返した。

 

車体も意外と広く、複数の座席と簡素な机が設置され木窓を開ければ、外の様子を窺う事が出来た。

 

また後部は荷物を収納できる空間が設けられ、上手く使えば家の代わりともなり、移動拠点としてはかなりの優秀な部類に位置するだろう。

 

これなら乗り手も乗客も、長旅による負担を大きく軽減できる。

 

これだけの馬車に乗るには、本来なら少々高めの料金を支払わねばならず、何気なく手を出せる人種は上流階級や貴族に限られた。

 

「――そうだ貴公、さっき錬金術士について語ろうとしていたな。この機会に教えて貰えないだろうか?」

 

「――ん?ああ!そうだったね!いいよ、いいよ!あたしが知ってる限り教えてあげる!」

 

 ライザは、活き活きとした表情で語り始めた。

 

――とは言え、彼女自身は学問に精通している訳でもなく理論を組み立てた説明は不得手な様で、専ら自らの体験談が主となった。

 

実際彼女は農家の家に生まれ、狭い島での日常に辟易していた。

 

彼女も年頃なのだろう。

 

刺激を求めて、幼馴染たちと共に変わらぬ日常を打破しようと、日夜島を駆け巡っては大人達に叱られるという日々を繰り返していた。

 

しかし、ひょんな事から魔物に襲われていた処を二人の旅人に救われた。

 

そこで彼女は錬金術というものを知り、旅人の一人に弟子入りを志願する。

 

その人物から提示される課題を次々と乗り越え、独学と経験を踏まえた独自の錬金術を磨き上げていった。

 

錬金術を始めた当初、周囲や両親から殆ど忌諱の目を向けられていたが、障害や事件を乗り越え遂には錬金術の価値を認めさせることに成功。

 

その過程で実に多くの人々と縁を持ち、取り分け終生の友とも呼べる行商人の娘《クラウディア=バレンツ》と大親友になれた。

 

その後、錬金術の研鑽や冒険を重ねていく内に自分達の住む島に異変が起き、古代の人類が犯した過ちが故郷の存亡に関わる事件にまで発展する。

 

彼女等の島には古代文明の遺跡が存在し、其処から異界の魔物が雪崩れ込んだのである。

 

紆余曲折あり彼女は仲間達と協力の下、異界の魔物とその統率存在を見事討伐――。

 

元々人工島であった彼女の島は、いつかは滅び去る運命にある。

 

現在は統率存在の一部を使い島を延命しているが、数百年後に到来する運命を変える方法を探る為、彼女は錬金術士としての研究と研鑽に明け暮れる日々を送っているのだ。

 

彼女がこの地に訪れた理由――。

 

全ては、大切な人々が住まう故郷を存続させる為でもあった。

 

「――と、まぁ、こんなとこかな。あ、あんまり錬金術士…関係なかったね。ア、アハハ……」

 

 簡潔だが、彼女は自身の冒険譚を一通り語り終えた。

 

途中、錬金術師から冒険譚へと論点がすり替わった事に気付き、彼女は若干気まずそうに苦笑いを浮かべる。

 

「――凄いね、とても面白かったわ!」

「――聞いてて、ちょっと憧れちゃった!」

「――私もその島に行ってみようかしら!」

 

 ゴブリンスイーパーのメンバーである女性陣は、彼女の語りに心を弾ませていた。

 

「「「…………」」」

 

 だが対照的に男性陣は終始無言を貫いている。

 

「……も、若しかして、つまらなかった…かな……?」

 

 男性陣の反応に、彼女は恐る恐る尋ねる。

 

「ちょ…ちょっと何か反応くらいした方が……」

「この反応…つまらないって感じでもなさそうだけど……」

(ゴブリンスレイヤー)と言い、この二人と言い、変わってるよね……」

 

 女性陣は男三人を見やり、ヒソヒソと小声で話す。

 

男性陣の反応に困惑するライザと女性陣。

 

「いや失礼――。貴公の物語りが些末だったのではない」

 

 灰の剣士が顔を上げ彼女に弁明する。

 

決して彼女の話を不快に感じていたのではなかった。

 

灰の剣士とジークバルド――。

 

彼等は()()()()を想起していたのだ。

 

不死が蔓延り、生命が衰え、忍び寄る滅びの時代――。

 

 

 

―― 火継ぎの時代を(ダークソウル) ――

 

 

 

正直に言えば、彼女の話は魅惑的に聞き入っていた。

 

吟遊詩人が唄う、虚構や脚色の入り混じる英雄譚よりも遥かに小気味の好い内容だった。

 

しかし彼女の語った、数百年後に訪れるという島の運命――。

 

今は延命措置を施してはいるが、根元からの解決には至っていない。

 

確定した未来と、止むを得ない延命という先送り――。

 

灰の剣士とジークバルドには、どうしてもあの時代を重ねてしまうのである。

 

火が陰り、自身を薪とする事で火を継ぐ儀式――。

 

しかし、それも唯の延命という先送りでしかなかった。

 

結果的に火継ぎの限界が訪れ、火の時代の終焉は避けようが無かったのだ。

 

今でこそ、この時代は”二度目の火”が宿り繁栄期を迎えてはいる。

 

だが何時の日か、その時代も終わりを迎える時が、必ず到来する。

 

その時代、此処に棲む生命はどう向き合うのか――。

 

二人が背負う事ではないのだが、どうしても意識せざるを得なかった。

 

火継ぎの時代を語る事も考えたが、アレを語るには膨大な労力と時間を要し、場を暗くさせてしまう可能性が高い。

 

必要はないだろう。

 

灰の剣士は敢えて黙っておく事にする。

 

「どうしても我々の知る過去と重なる部分があってな。なぁに、貴公の気に病む事ではあるまいよ。ウワハハハ……」

 

「そ、そうなんだ。なら良かった」

 

”気にする必要はない”

 

ジークバルドが気遣い無用と笑い掛けるが、その笑い声は何処となく虚構と諦観が入り混じるのを、灰の剣士だけは感付いていた。

 

「――お前の錬金術、ゴブリンを殺せる道具は造り出せるのか?」

 

 話題を変え彼女に振るのは、ゴブリンスレイヤー。

 

実に彼らしい、強引な話題の振り方だ。

 

「ん?素材と設備を整えれば、多分いけると思うよ」

 

 現状、彼女が所有しているのは携帯用の錬金釜――。

 

非常に小型で持ち運びが出来るという利点はあるが、性能そのものは一般の錬金釜には大きく劣る。

 

錬金した処で、必要最小限の完成品しか生み出す事が出来ないだろう。

 

また彼女の国とこの国では、採取できる素材にも大きく隔たりが生じ、同じ物が手に入る保証はないのだ。

 

故に彼女が今まで培ってきた、レシピが此処で通用するとは限らない。

 

恐らく、新たに開拓する必要に迫られるだろう。

 

だが、ヴィンハイムのオーベックからレシピの書物を受け取る事が出来た。

 

その書物を起点とし、ある程度の判断基準にも都合が付く筈だろう。

 

「そうか」

 

 いつも通り――。

 

ゴブリンスレイヤーは普段通りの反応を返す。

 

「…………。な…なんか、この人も凄く変わってるね。小鬼を専門に狩るんでしょ?この()な人」

 

 ライザは、またもやヒソヒソと女性陣と小声で話し込んだ。

 

「ま、まぁ、その辺は余り突っ込んじゃ駄目よ?」

「丸こい騎士さんはいざ知らず、あの二人はギルドでも結構有名なの」

 

 ゴブリンスレイヤーに灰の剣士――。

 

この二人は、西方辺境でも特に変わり者として扱われていた。

 

そして馬車は直走る――水の都へと。

 

 

 

 

 

(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― 依頼書の張り出し)

 

 白亜の城塞――水の都。

 

西方辺境より東方へと向かう先に、それは存在した。

 

鬱蒼と生い茂る樹海の中、幾つもの支流を束ねる巨大な湖の中心に在る古き街――。

 

西方の要衝であり、嘗ては神代の砦が在ったという。

 

都市と呼ばれるだけあり、多くの人々が集い、船が行き交い、物が文化が入り乱れ、それは混沌織り成す流砂にも似ていた。

 

ただ、それでいて華やかで雅びやかのが、この街の特色ともいえた。

 

そして、西方最大の都市でもある。

 

常日頃、人や物資が行き交う光景は住み慣れた住民たちにとって、普段と変わらぬ何気無い昼夜の一部。

 

何の感慨も無い。

 

慣れとは()()()()ものなのだ。

 

故に、眼前広がる異様なこの光景は、そんな日常を送る彼等にとってちょっとした娯楽に等しかった。

 

湖と陸地を結ぶ跳ね橋を通り過ぎる多種多様な、数十台にも及ぶ数多の馬車群――。

 

入り口に当たる主門が如何に巨大とはいえ、数十台の馬車が一度に潜れるわけもなく案の定、そこで渋滞を引き起こしていた。

 

『――押さないで下さい!一台ずつ、順序を守ってお通り下さい!』

『――手続きを済ませた馬車から、渡って下さい!』

 

 主門の衛兵たちが馬車の御者に確認手続きを済ませ、一台また一台と馬車を街へと引き入れた。

 

しかし数十台が一度に押し寄せるという、未だ嘗て経験した事のないこの大事に、手慣れた筈の衛兵も相当手こずっている。

 

その光景が珍しいのだろう。

 

付近には暇を持て余した多くの住人達が野次馬として群がっていたのである。

 

そんな珍百景が繰り広げられているのにも無論原因は存在する。

 

『しっかし、すげえ数だな!』

『行商でもなさそうだし』

『あれ全部冒険者だってよ!』

『何だ何だぁ?此処に魔神でも現れたんか?』

 

 ごった返す数十台の馬車――。

 

それに搭乗しているのは全て冒険者である。

 

街の住民は口々に無遠慮な憶測をたて、犇めき合う馬車群を見つめていた。

 

そう――。

 

彼等は冒険者で、理由も無くこの都市に訪れる事はない。

 

冒険の時代――。

 

彼等は依頼を請け、この都市に馳せ参じたのだ。

 

漸く渋滞が収まる頃、混雑していた門付近は普段通りの光景を取り戻す。

 

数十台の馬車は各々が指定された停車場へと向かい、其処で馬を預ける。

 

専用の施設があり、馬車の車体と馬は其処で管理される仕組みだ。

 

だが今日に限っては、一斉に馬車が多数押し寄せて来たのだ。

 

無論専門の係員だけでは対応し切れず、方々の地域から幾人もの係員が派遣されていた。

 

小は名も無き集落~大は街クラスまで――。

 

今日というこの日の為だけに――。

 

主門の次は、停車場が慌ただしくなるのは最早必然といえる。

 

多数の馬車から幾多の冒険者が降車し、俄かに騒々しくなる。

 

耳障りな冒険者達の無駄口をも意に介せず、彼ら係員は己が役割を果たさんと奮起した。

 

そんな彼等の奮闘を余所に冒険者達は、或る場所へと一斉に足を運ぶ。

 

法と秩序が支配する神――至高神。

 

天秤と剣を組み合わせた神の威光は、この街の象徴でもあり道行く人々に行き渡る。

 

門に掲げられた紋章には、至高神の象徴が彫り込まれていた。

 

白亜の大理石を、何本も円柱として築き上げた壮麗な社。

 

疑う余地など何処にも無い。

 

神に縁なき無神論者でも、一様にして認識せざるを得ないだろう。

 

一言で言うなら――。

 

 

 

      ―― 神殿 ――

 

 

 

それ以外の言葉など必要ない。

 

佇むそれは正に神殿だった。

 

至高神を祀る法の神殿――。

 

法と正義、光と秩序、その名の下に冒険者は集う。

 

神殿入り口の広場に、彼等も集っていた。

 

「こいつぁ、スゲェ数だな……」

 

 西方辺境所属にして、後に辺境最強と称される美丈夫の若き槍使い――。

 

広場に集う群衆に、唯々口をだらしなく開け呆けていた。

 

「3、ケタ、こえて、るわ」

 

 彼の相棒であり、豊満な美女である魔女も同調する。

 

()()()の比ではなかった。

 

嘗て岩喰い虫(ロックイーター)討伐のため金鉱山にて集結した50人を超える冒険者を、遥かに上回っていたのだ。

 

「まるで軍隊だな」

 

 背に大剣を担いだ巨漢――重戦士は、一同に会した冒険者の群れを軍に例えていた。

 

「無理もありません、これだけの人数…私も初めてお目に掛りましたからね」

 

 驚嘆しているのは重戦士だけではない。

 

彼の一党のメンバーでもある、半森人の軽戦士も息を呑む。

 

「この神殿には私の友人が務めていてな」

 

「そういえば、そんな事を言っていましたね」

 

 女騎士の言に、圃人の少女巫術士が返す。

 

法の神殿には女騎士の友人が仕えていた。

 

彼女は神官戦士長の妹であり副長でもあり、女騎士とは古い付き合いだ。

 

お互い至高神の信徒で水の都と辺境との情報を交換し合う事で、ある程度の状況を共有していたのである。

 

今は姿を見せていない。

 

神殿の中に居るのだろう。

 

「水の都…、そんなに経ってないんだよな」

 

 そんな言葉を吐くのは、若い一人の冒険者――同期戦士だ。

 

「結構、活動したもんね…此処で」

 

 彼の相棒でもある、半森人の少女野伏が同調した。

 

今思えば彼等はこの都市で多くを学び、見違える程に実力を身に付けたといっても過言ではない。

 

銀等級戦士を筆頭とする一党に師事を乞い、実に多くを教わった。

 

「――彼等は居るのでしょうか?」

 

 獣人の魔術師は辺りを見回す。

 

高い実力を誇る一党だ。

 

この大規模な討伐作戦に参加している可能性は高い。

 

「お前さんがこの間、話とった一党じゃな?」

「こんな人込みじゃ、誰が誰だか分かんねぇって!」

 

 鉱人の斧戦士と斥候は、件の一党を見付けようと視線を泳がせたが見付ける事は困難を極めた。

 

「おや、彼等は――?」

 

 その代わり、見覚えのある冒険者が此方に歩み寄るのを禿頭僧侶が気付く。

 

見栄えと小奇麗な装備を身に纏った一党で、首には銅等級の認識票(プレート)をぶら下げている。

 

「誰かと思えば久しいな、貴殿等――」

 

「あ…アンタ達はっ――」

 

 重戦士達は、その一党を視界に捕らえ驚きの声を上げた。

 

「――金鉱山以来かな?」

 

 過去に金鉱山で采配を振るった、徒党の指揮官を執った銅等級冒険者だった。

 

岩喰い虫《ロックイーター》、冷たい谷のボルド、そしてダークゴブリンとの連戦をどうにか切り抜け生き残った強者でもある。

 

彼もまた、剣の乙女により指名を授かった身だ。

 

あの死闘から、それなりの月日が経過していた。

 

当時白磁等級だった自分達は随分昇進を重ね、中堅冒険者という位置付けに至っている。

 

しかし、眼前の彼にはあまり目立った変化ない。

 

等級を引き上げた事により彼等は、冒険者の内情に更に深い知識を得ていた。

 

故に今なら、この冒険者(銅等級冒険者)の実力も認める事が出来た。

 

「……旦那――」

 

「――言いたい事は分かっている」

 

 彼の実力を知る重戦士の言葉を途中で遮る。

 

皆、同じ疑問を抱いているのだ。

 

 

 

   ―― 何故、彼は()()()のままなのか? ――

 

 

 

銅等級冒険者――。

 

彼の実力は、あらゆる分野において高い総合力を有していた。

 

戦闘力は言うに及ばず、指揮能力、人を束ねる統率力、野戦兵器を整え、それに準じた人脈や資金力――。

 

どれをとっても、等級に相応しいと言わざる得ないだろう。

 

正直、銀等級に位置しても何ら不思議ではなかった。

 

しかし、彼は未だ銅等級のままなのだ。

 

「…あまり誇れる話でもないのだが――」

 

 銅等級冒険者は、ゆっくりと自分の身の上を語り始める。

 

金鉱山での戦いの後、彼は依頼主からの信用を落としていた。

 

ロックイーターに加え、悪名高いロスリックの怪物でもあるボルドをも討伐した彼等ではあった。

 

しかし、問題はダークゴブリンの集団だ。

 

辛うじて撃退という形を取ってはいたが、彼等が現場に引き付けられている間、依頼主の所有する倉庫地帯が襲撃され莫大な損害を被った。

 

襲撃者は、他でもない小鬼の群れだった。

 

しかも10にも満たない小規模の群れ――。

 

混沌最底辺でもある、たかが小鬼の策略にまんまと嵌ってしまった。

 

その結果に依頼主は激怒し、彼等の一党は社会的に大きな信用を喪失してしまったのである。

 

銅等級とはいえ序列第4位の高い等級――。

 

最も登録者の多い王都でも彼等の失態は瞬く間に広がり、ギルドから降格処分を言い渡される羽目になった。

 

つまり彼は、銅等級から紅玉等級へと降格してしまっていたのだ。

 

それからというもの彼等はより一層奮起し、新人冒険者しかやらない様な依頼をも積極的に引き受けた。

 

ドブさらいや地下水道の害虫駆除――。

 

 

 

   ―― 小鬼(ゴブリン)退治まで ――

 

 

 

そんな彼等の功績が認められ、再び銅等級まで返り咲く事が叶ったのである。

 

「「「「「……」」」」」

 

 彼の過去語りを皆は黙って耳を傾けていた。

 

「――何処かで慢心が有ったのだろうな」

 

 銅等級冒険者は、あの金鉱山での戦いを思い起こし空を見上げていた。

 

黒い小鬼――ダークゴブリン。

 

所詮は小鬼――。

 

消耗していたとはいえ、相手は小鬼率いる集団――。

 

労せず討てるだろう。

 

敗けるなどあり得ない。

 

しかし、あのような結果を迎えてしまった。

 

「ダンナ一人だけの所為ではありませんぜ!」

 

 些か強めの口調で重戦士が割り込む。

 

『そうだぜ!アレは俺達全員にも原因はある!』

 

 いつの間に居たのだろう!

 

彼等の周囲には、金鉱山に参加していた冒険者達が集っていた。

 

全員が、あの戦いを生き残った強者達だ。

 

結局彼等も、たかが小鬼と心の何処かで侮っていたのだろう。

 

抵抗するのが精一杯で、予想以上に被害を被ったのは否定しようがなかった。

 

彼等は全員、一様にしてダークゴブリンという存在を知ったのだ。

 

我が身を以て。

 

「そうか。……だがこうして、再び奴等に借りを返す機に恵まれたのだ。今度こそ失態は犯さん!」

 

「――今度こそやってやりやしょう、ダンナッ!」

 

 銅等級冒険者に重戦士も呼応し、一層闘志を高めた。

 

「……さて…それはそうと――」

 

 話に一段落着けた銅等級冒険者は、周囲に視線を送る。

 

誰かを探しているのだろうか。

 

辺りをキョロキョロと見回していた。

 

「――彼等の姿が見えんな……」

 

「――若しかして()()()()を探しているんですか?」

 

 同期戦士が尋ねる。

 

銅等級冒険者が探している人物――。

 

金鉱山で新人でありながら、獅子奮然の活躍を見せた二人の冒険者――。

 

「アイツらなら、まだ来てないぜ!」

 

 槍使いが、辺境での出来事を説明する。

 

灰の剣士とゴブリンスレイヤー――。

 

彼等は近隣の小鬼退治を優先し、それが済み次第この地へと向かうという事を。

 

「まぁ、あの二人の事だ。しくじる事はないと思いますがね」

 

 同期戦士の見立てでは、遅くても今日中に到着すると憶測をたてている。

 

「……あくまで民草を優先し、小事に拘りを見せるか…」

 

 銅等級冒険者は瞼を閉じ、件の二人に想いを馳せた。

 

――英雄の器やも知れぬ。

 

小鬼退治――。

 

新人冒険者の役目――。

 

そう割り切り、切り捨て、敬遠する事は何とも易い。

 

熟練冒険者は、より強大な困難に立ち向かうべきだ。

 

それが世の常であり定説でもある。

 

確かにそれは正しく、また一つの事実。

 

デーモン、アンデッド、ドラゴン、等々――。

 

小鬼以上の脅威は、溢れかえる程に存在している。

 

それ等を討伐し安寧を齎すのも冒険者――。

 

しかしだ――。

 

その様な冒険者は、大抵名も無き村や集落から誕生しているのが実情なのだ。

 

そして国を生活を支えているのは他ならぬ、名も無き民達である。

 

一度降格処分を受け、初心に帰りやり直した現在(いま)なら分かる。

 

小鬼による身近な脅威――。

 

力無き民にとって、これ程恐ろしい存在は他にないだろう。

 

彼等は村を襲い、略奪し、蹂躙し、何もかも破壊し尽くす。

 

(銅等級冒険者)は上流階級の出だが、初心に帰る事で村人や民に支えられている事を改めて痛感させられたのだ。

 

そして彼の二人は、無力な人々の為に知勇を注いでくれている。

 

此処に集っている大半の冒険者(指名入りではない)は、成功報酬や名声を得る為に参加を表明したのだろう。

 

無論それ自体を非難する気は毛頭ない。

 

だが、その様な欲を断ち切り、敢えて実入りの少ない近隣の小鬼退治を優先した。

 

口で言う程容易く行えるものではない。

 

そう物思いに耽っていた処、神殿入り口より声が投げ掛けられた。

 

 

 

『――勇猛なる冒険者諸君!よくぞ大司教様のお声に賛同して頂き参られた!!大司教様が、貴君等の勇姿を待ちわびておられる、どうぞ礼拝堂へと参られよ!』

 

 

 

 法の神殿に仕える聖職者――神官戦士長が謝辞を述べ、冒険者達を神殿内へと招き入れる。

 

集っていた冒険者群は挙って彼の後に続き、階段を上がり神殿内へと向かった。

 

『おや、君達は来ないのかね?』

 

 大勢の冒険者が神殿内へと向かうが、重戦士達はその場を動こうとはしなかった。

 

それを見ていた部下の神官戦士の一人が声を掛ける。

 

「すんません。アイツらが来る迄、もう少し此処で待たせて貰っていいですかい?」

「身勝手な真似をして申し訳ない」

 

 重戦士と女騎士は、灰の剣士一行が到着するまで此処で待つ旨を伝えた。

 

「まだ時間は有るのだろう?なら私達も此処で待たせて頂こう。…案ずるな、時間までには間に合わせる」

 

 銅等級冒険者も彼等に賛同し、到着を待つ事にした。

 

「……大司教様の手前、余り時間は割けませんぞ」

「かたじけない」

 

 剣の乙女直々に指名した一党だ。

 

彼等の意向を汲み取り、部下の神官戦士も仕方なく承諾の意を示す。

 

彼等の意向を伝える為、部下の神官戦士は神殿内へと姿を消した。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼

 

 

 

(推奨BGM ライザのアトリエ ―― 紅葉と鳥のうた)

 

 天空に君臨するは太陽――。

 

昼を支配する神秘の天体も、地平の彼方へと傾きを向ける。

 

地平へ傾ければ傾ける程に、青き空は朱を染め、やがては黒き夜色を孕むだろう。

 

昼を過ぎ、時刻は夕暮れの初め頃――。

 

一台の乗用馬車が巨大な主門を潜り、水に彩られた都市へと辿り着いた。

 

「水の都へと到着したか」

「ふむ、中々の馬車と馬を揃えたものだ」

「予想以上に早く到達出来たな」

 

 ゴブリンスレイヤー、ジークバルド、灰の剣士が車体の中で呟いた。

 

辺境の街から水の都までの距離は長く、通常の馬車を以てしてもかなりの時間を要する。

 

正直な処、目的地に着く頃には日は暮れている事も視野に入れていた。

 

だが結果的に夕暮れ初めに辿り着く事ができ、この分なら大した遅れとはならないだろう。

 

「この()たちに感謝しないとね、後、魔法の蹄にも――」

 

 御者を務めるゴブリンスイーパーが、外から応える。

 

二頭の優秀な馬に加え、スタミナ軽減を齎す魔法の蹄を装備させてある。

 

この組み合わせが有用に働き、ほぼ休み無しでこの地へと走り続ける事が出来たのが、最大の要因である事は言うまでもない。

 

馬車に資金を費やした甲斐があったというものだ。

 

「うわぁ~おっ!これが水の都かぁ~っ!」

 

 木窓を開け、街の様子に感激していたのはライザ――。

 

白亜の石畳が敷き詰められ、商業馬車が行き交い、多くの露店に商店、そして往来する大勢の住民達――。

 

大通りの傍らには運河が縦横無尽に走り、其処には渡し舟が行く。

 

壮麗で美麗な都市そのものといえよう。

 

彼女の故郷は決して人口は多くはない。

 

離島である為、外界から必然的に遮断された土地なのだ。

 

時々、商船が行商と取引の為に訪れる位で、農家の村娘である彼女は現場に立ち会った事すら無かったのである。

 

本人にとって、これ程の賑わいは新鮮そのものと言えた。

 

実は此処が王都なのでは?

 

そう思える程に、彼女は車体から身を乗り出し既に上半身は外に露出していた。

 

「――こら危ない!怪我するわよ!」

 

 慌てて女性陣の一人が彼女を引っ込める。

 

勢いで彼女のホットパンツが脱げ、臀部が露わとなってしまった。

 

そんな痴態を垣間見ていた、住民達は可笑し気に笑いながら変わりない日常は過ぎてゆく。

 

停車場に馬車を停め、皆は降車する。

 

「う~ん、ちょっと体が硬くなっちゃったかなぁ…」

 

 ライザは軽い柔軟体操で硬直した身体を解し、他の面々もそれに倣った。

 

だが本当の意味で消耗しているのは、休み無しで御者を務め続けた彼女――ゴブリンスイーパーだろう。

 

「それでは宜しくお願いしますね」

『お任せ下さい!』

 

 彼女は馬車の管理を依頼し、受諾した飼育員が馬車を奥へと移動させる。

 

――流石に少し消耗したかしら?

 

数時間同じ姿勢で座りっ放しだったのだ。

 

全身に倦怠感が駆け巡る。

 

「――無理をせず、代わる事もできたのだぞ?」

 

 そんな彼女を見かね、灰の剣士が声を掛けた。

 

「あら?わたしを心配してくれるの?」

 

 彼女は軽口で返す。

 

「知らぬ間柄でもなし、乗せて貰いっ放しだったからな、この位の返礼はすべきだろう?」

 

 彼女と一党を組んだ事は一度もなく、親密な関係でもないのは事実だ。

 

だが完全な無関係でもなく、彼本人もスイーパーの活躍と奮闘ぶりは認めていたのだ。

 

「……。一応善意で忠告しておくわね。誰彼構わずそんな言葉を掛けるもではないわ…特に若い女の子にはね。だから、()()()()のよ」

 

「…ん?真意が分からぬ?」

 

 本心で言えば、彼の心遣いは嬉しいものだった。

 

矢張り心の何処かで願っていたのだろう、彼との繋がりを――。

 

神殿を発ち、冒険者として復帰した始め――。

 

ギルドの同業者からは、何かと陰口を囁かれていた。

 

―― あいつらゴブリンに()られたんだと ――

 

―― 中古かよ!しかも小鬼の体液付きとはな! ――

 

―― ぶっちゃけ俺はゴメンだね、あんなんとベッドを過ごすのはよ! ――

 

―― 俺が女だったら自害するけどなぁ ――

 

―― 黒曜にもなって、小鬼如きに情けないわね! ――

 

蔑み、憐み、嘲り、差別、侮蔑――。

 

他人事、蚊帳の外――。

 

安全地帯から無遠慮で無責任極まりない、言葉の濁り水。

 

活動を再開する前から、早くも心を折りに掛かる同胞達――。

 

小鬼ではなく、討つべきはコイツ等ではないのか!

 

そう思える程に、冒険者達の視線は憐憫と侮蔑に満ちていたのである。

 

それでも諦める事なく活動を継続し、今ではその様な陰口は鳴りを潜めていた。

 

その頃には彼女達一党は、ゴブリンスイーパーと渾名を付けられ始めた頃だった。

 

「知ってるわよ。貴方が救出した村娘が、挙って縁談を申し込みに来てるそうじゃない?」

 

「確かに……事実だ」

 

 ゴブリンスレイヤーだけでなく、灰の剣士も小鬼退治へと積極的に参加しているのは既に周知されている。

 

それ等の依頼の中で、救出した若い村娘や女の旅人は大勢含まれるのは、致し方の無い事だろう。

 

そして娘の何割かは、彼等に恋慕の情を抱き縁談を申込みに度々ギルドまで押しかけるという珍事も発生していた。

 

既に白磁等級の頃から、その様な事例が幾つも発生していたのだ。

 

無論、彼等はその申し込みを全て断っている。

 

しかも彼女等の大半が、灰の剣士に対して縁談を申し込んでいた。

 

その原因が、スイーパーにした気遣いの言葉である。

 

灰の剣士は人質を救出した折、必要であれば彼女等にそんな言葉を掛けていたからだ。

 

彼自身、決して下心や女を弄ぶ気など微塵もなく、心折れた娘たちを少しでも奮起させる為の純粋な善意からくるものであった。

 

しかし受け取った側からすれば、別の解釈で捕らえてしまったのだろう。

 

そういう恋慕や寄る辺として、彼に縋るのも無理からぬ道理とも言える。

 

丁度、不死人が篝火に惹かれる様に――。

 

「貴方に下心が無いのは皆分かってるわ。だけど、その善意が却って苦しめてしまう事も覚えておいて」

 

「……。難しいな、人の心というものは……」

 

「――そういう意味では、(ゴブリンスレイヤー)の方が正解なのかも知れないわね」

 

 ゴブリンスレイヤーの場合、村娘を救出しても殆ど声を掛ける事も無く、直ぐに立ち去るか別の小鬼退治に向かい関係性を綺麗に取り払ってしまう。

 

寧ろ、その方が後腐れも無く余計に引きずる事も無いのだろう。

 

尤も彼は、関心事は全て小鬼を殺す事に向けられている事も要因の一つではあるのだが。

 

しかし――灰の剣士には、少々複雑な事情が存在する。

 

彼は知ってしまったのだ。

 

この都市で何度も視た、ある悪夢――。

 

 

 

一人のか弱き少女が、ゴブリンに嬲られ苦痛に喘ぐ夢を――。

 

原因は不明だが、その少女と一体化し感覚を共有してしまう。

 

だが此方の語り掛けは通用せず、自由に身体を動かす事もできない。

 

ただ泣きじゃくる少女と苦しみを共有する事が、彼に出来る全てだった。

 

そして最後は目を焼かれ、夢から覚めるのだ。

 

故に彼は知った――。

 

ゴブリンに囚われた、女の苦しみを――。

 

だがそれを、彼女等に話すつもりはない。

 

話した処で理解される事はないだろう。

 

彼はその事を、墓にまで持って行くつもりである。

 

 

 

故に、彼女に対しても以前の様な態度で接する事が出来なくなっていたのだ。

 

灰の剣士自身も、下心で女性に近付いた事など一度もない。

 

不死人以前の彼なら定かではないが、少なくと四方世界に転移した冒険者である今なら断言できた。

 

それが原因で女を悲しみに暮れさせた事も度々あったが、不思議と恨みの声などはゼロに等しかった。

 

故に組合(ギルド)もそれを汲み、灰の剣士を昇進させてきたのである。

 

「ほほぅ…、貴公にその様な痴話が有ったとはなぁ…。どれ、酒の肴にでも聞かせて貰おうか?」

「えぇ~何々?君ってそんなにモテるんだぁ?」

 

「~~!!き、貴公等ぁ……!」

 

 いつの間に聞き耳を立てていたのだろう?

 

ジークバルドとライザが、興味深そうに耳を傾けている。

 

更にゴブリンスレイヤー以外の全員が、ニヤけた表情で視線を向けていたのであった。

 

「――いつまで無駄口を叩いている、神殿とやらに向かうぞ!」

 

 見るに見かねたのかゴブリンスレイヤーが強引に話を打ち切り、早々に神殿へと足を向けた。

 

「し、承知!――彼の言う通りだ!我々も早急に続こうではないか!」

 

 助け舟とでも言った処か。

 

彼の強引な話題打ち切りに、ホッとする灰の剣士はソソクサと後に続く。

 

「ふむ…まぁ後の楽しみに取っておくか」

「ちぇッ、面白そうだったのにぃ……」

 

「「「ザンネンざんねん……」」」

 

 灰の剣士に続き、他のメンバーらも後を追う。

 

――ホンッと、お人好しなんだから!

 

一区切り間を置き、ゴブリンスイーパーは彼等の背中を見やる。

 

――その内、付き纏ってやろうかしら。

 

彼女もまだ17歳。

 

行き着く先は、まだ見えていない。

 

冒険者稼業に復帰したとはいえ、この少女もまた手探りで終着点を探しているのだろう。

 

――この戦いの向こうに答え(For Answer)はあるの?

 

小さくなりつつある彼等の背中を追うように、彼女も漸く歩を進める。

 

その脚の、意思の向かう先は法の神殿――それとも……?

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

(推奨BGM ゴブリンスレイヤー ―― オルクボルグの日々)

 

『あんまり遅いんで、見に来てみたら――』

 

 神殿入り口から姿を現したのは、銀等級戦士率いる4人の一党だった。

 

「――せ、先輩ッ!?」

 

 その声に反応したのは、若き冒険者である同期戦士――。

 

過去、銀等級戦士に師事した事もある間柄だ。

 

当時未熟だった同期戦士は、彼の一党に命を救われ、それが縁で徒党を組みながら多くを学び取った。

 

「誰かを待っているみたいだが、もう夕暮れだ。早く神殿に入った方が良い」

 

 そう言い、銀等級戦士は階段を降りる。

 

同期戦士達が、この依頼を請けた事は知っていた。

 

それ故、幾ら待てども一向に姿を見せなかった為、こうして自ら様子を窺いに来た次第だ。

 

「すいません、まだ肝心な連中が来てないんです」

 

 同期戦士はバツが悪そうに頭を下げる。

 

灰の剣士を筆頭とする数人の冒険者が、まだ到着しておらず、こうして待機していた。

 

日は更に傾き、空は完全な朱へと染まっている。

 

「何だ、知り合いか…って、銀等級じゃねぇか!」

 

 槍使いは彼の認識票に視線を送り、銀等級である事に驚きを隠せない。

 

「序列第3位、在野最上級……」

 

 女騎士も彼の等級に、緊張感を露にする。

 

「そう畏まらなくていい。俺程度の冒険者など王都に行けばゴロゴロ居るからな」

 

 銀等級戦士は固くなる彼等に微笑みかけ、場を和ませんと務めた。

 

思っていた以上に気さくな人柄に、皆の緊張も幾分和らぐ。

 

「お前も、もう青玉等級か。一端の仲間入りだな!」

「――そんなっ!先輩に比べたらまだまだですよ!」

 

 同期戦士の認識票は、青玉等級を示している。

 

即ち中堅冒険者として認識されているのだ。

 

敬愛する銀等級戦士に認められ、彼は紅潮しながら頭をポリポリと搔き、そんな光景を少女野伏は微笑ましく見つめていた。

 

「おや?見ない顔が居られますが、あの二人はどうされましたかな?」

 

 同期戦士の一党に所属する獣人魔術師は見慣れない二人を見やり、見知った銅等級斧戦士と男魔法斥候が居ない事について訊ねる。

 

「…………」

 

「……あの…先輩?」

 

 獣人魔術師の質疑に、彼は影を落とした表情となる。

 

そして顔を顰め歯を喰いしばり、剣の柄を握る手には力が籠っているのが分かった。

 

「頭目、話しにくいのであれば私が――」

「――いや、俺から話す!」

 

 彼の心情を察した、戦女神に仕える女司祭は代わりに事実を打ち明けようとしたが途中で遮られ、彼本人が重い口を開く。

 

 

 

ダークゴブリン調査に赴いた冒険での出来事だ――。

 

銅等級斧戦士は、ロンドールを名乗る漆黒の騎士に殺され入れ替わっていた事――。

 

そして男魔法斥候は、その漆黒の騎士の手に掛かった事――。

 

命からがら法の神殿へと逃げ延び、新たに二人の冒険者が参入した事――。

 

 

 

「……そんな事が、あったんですね……」

 

 銀等級戦士の話を聞き終え、同期戦士も表情に影が差す。

 

彼だけではない。

 

彼の一党全員は顔に陰りを帯びる。

 

「彼等にも世話になったからな……あの酒場が今生の別れになろうとは……」

 

 森人僧侶は目を深く閉じ、沈みゆく太陽に向かい二人の冥福を祈る。

 

「あの二人も相当の実力者だった。たった一度きりの冒険だったが、俺は生涯忘れる事はないだろう」

 

 そこへバケツに似た兜の騎士が、二人について言及する。

 

「――申し遅れた、俺はアストラのソラール。水の都に籍を置く冒険者で、此方は斥候を担っている者だ。どうかお見知り置きを」

 

 そして自身と彼の相棒である、赤毛の少女斥候について紹介した。

 

「初めまして、宜しくね」

 

 赤毛の斥候も挨拶の声を躱すが、その声音には活力が失せている様に見えた。

 

地平線に沈み行く太陽――。

 

落日のそれは、居なくなった二人を嘆いているかの様に、もの悲しく空を彩っている様にさえ思えた。

 

ソラールも二人の死を悼み、夕日に向かい静かに冥福を祈る。

 

だが、いつもの太陽賛美ではなく、ただ天を仰ぎ目を閉じ祈りを捧げるのみだった。

 

「偉大な太陽よ、あの高潔な二人を天へと導いてくれ……」

 

 二人が天に帰らんことを――。

 

そう願いながら――。

 

そしてその場に居る全員が、各々のやり方で死者に対し追悼の意を捧げる。

 

 

 

……

 

 

 

「アンタ、辺境のギルドでチラッと見掛けたな」

 

 槍使いの青年――。

 

バケツの様な兜に太陽を彩る鎧を纏った騎士には見覚えがあった。

 

「おぉ…貴公はいつぞやの――」

 

 それはソラール側も同様で、彼等とはギルドで些かの面識があった。

 

「けっこう、うわさに、なって、るわ」

 

「ウワハハハ…俺は困窮した民に、ほんの少し力を貸しただけだ」

 

 水の都に籍を置く太陽の騎士・アストラのソラール。

 

辺境ではそれ程ではなかったが、水の都では彼はそこそこ名が売れていた。

 

彼自身、未だ中堅冒険者だが、その実績と実力は熟練冒険者に比肩し得るとも言われている。

 

槍使いと魔女は遠征に赴く事も多々あり、彼の噂は至る所で流布されていたのであった。

 

「水の都に『凄腕の騎士』在りってな!」

 

 槍使いは彼の渾名を上げる。

 

そして――。

 

 

 

『――太陽の戦士ソラール…またの名を、アストラのソラール――だったか?』

 

 

 

「「「「「!!」」」」」

 

 声のした方角に、皆は一斉に振り向いた。

 

「――おぉ!待ってたぜ!」

「良かったぁ、みんな無事だったんだ!」

 

 声の主を確認し、同期戦士と少女野伏は安堵の声を上げた。

 

「灰の剣士…只今を以て此処に到着を宣言する」

 

 複数のメンバーを引き連れ、灰の剣士とその仲間達は今此処で合流を果たした。

 

「……」

「……」

「……」

 

 灰の剣士、ジークバルド、ソラール。

 

互いが互いに視線を交差させ、無言の沈黙が続く。

 

「……な…何だ?」

「か…顔見知りか?」

「さっきから押し黙ったままだぜ、あの三人……」

 

 無言で佇む三人に、周囲は困惑の声を上げ訝しむ。

 

「ア~オホン、こうして皆が無事揃ったのだ。取り敢えず中に入らんかね?大司教様も御待ちの筈だ」

 

 流れを変える必要がる。

 

そう判断したのは銅等級冒険者。

 

声を掛け、神殿内に向かう事を皆に促した。

 

だが――。

 

「些か時間を頂戴したい」

「先に向かっててくれぬか?」

「この機を逃す訳にいかぬ故」

 

 三者三様の言の葉で、皆を先に行かせる旨を返す。

 

「分かった先に行く。あまり時間を取らせるなよ、灰よ」

 

 ゴブリンスレイヤーが逸早く反応し、戸惑う他の面々を引き連れ階段を昇った。

 

何名かは抗議の声を上げたが、無言で見つめ合う三人は動く気配が無い。

 

呆れをそこそこに、他の面々もゴブリンスレイヤーに続き神殿内へと歩を進めた。

 

入り口広場には、三人の冒険者だけが残される。

 

最初の火が陰り、生命が衰え、死と呪いが蔓延した滅びゆく時代。

 

ロードランを始めロスリックへと続いた、あの神々の時代。

 

過酷な戦いを駆け抜けた三人の英雄が、今此処に集い揃い踏みした。

 

ロードランを駆け抜け太陽を目指した騎士――アストラのソラール。

 

罪の都を目指し、盟友との約束を見事果たした陽気な騎士――カタリナのジークバルド。

 

そして時代を跨ぎ、火継ぎの時代を終わらせた火のない灰――灰の剣士。

 

火の導き――若しくはソウルが彼等を再び引き合わせたのだろうか。

 

それとも、この再開すら神々の思惑通りなのか。

 

それを証明する手立てはない。

 

だが、彼等は此処に在る。

 

この四方世界に集ったのだ。

 

 

 

……

 

(推奨BGM ダークソウル ―― 火継ぎの祭祀場)

 

「私の事などは……もう覚えてもいないか」

 

 最初に口を開いたのは灰の剣士。

 

その言葉は無論、ソラールに向けられていた。

 

しかし、ソラールはゆっくりと首を振る。

 

「覚えているとも、今でも鮮明に……。最後に貴公を見たのは、あの『最初の火の炉』…だったな」

 

 最初の火の炉で霊体として共闘し、大王グウィンを見事討ち果たし、最初の火を継いだ。

 

言葉を交わす事は終ぞ叶わなかったが、灰の最期を見届けソラール自身も禍根を残す事無く、火を継げた。

 

「約一年と少し振りかな?」

 

 ソラールは灰の剣士に言葉を返す。

 

「――一年っ!?一年だとっ!?」

 

 俄かに灰の剣士は口調を強める。

 

「どういう事だッ!?もしや貴方は、ロードランの時代から四方世界に直接――」

 

「――落ち着かれよ、灰剣士殿。御仁も困惑しているではないか」

 

 取り乱した灰の剣士をジークバルドが鎮める。

 

「ふむ…その口振りからすると、貴公は俺とは違う結末を迎えたと観た」

 

「……。…その通りだソラール」

 

 些か感情的になってしまったが、落ち着きを取り戻した灰の剣士は自身の道のりを簡潔に短縮し、ソラールとジークバルドに語る。

 

ソラールとは違い、灰の剣士はロードランで使命を果たした後、更にドラングレイグ、ロスリックへと使命の旅を強いられた。

 

更にロスリックに至っては何度も周回(ループ)させられ、最後には自ら『最初の火』を消し火継ぎの時代を終わらせ、自身も亡者と成り果てた。

 

「――なんと、それは私も初耳だ!」

 

 これにはジークバルドも驚愕の声を上げた。

 

「貴公…そんな遥かな時を跨いでいたのか……!」

 

 ソラールも唸り、兜の奥で顔を顰めていた。

 

灰の剣士――。

 

あの時代、時間や周期など然程意味を成さなかったが、それでも膨大な時を過ごした事は間違いない。

 

時代を跨いでいる間、当の本人は意識を覚醒させてはいなかったが、活動している間だけでも数百年分は軽く凌駕するだろう。

 

それ程の膨大な時間を過ごしてきたのである。

 

不死人として。

 

「それだけの時間を過ごしながら、よく俺の事を覚えていてくれたな、旅人よ!」

 

 灰の剣士の事をソラールは『旅人』と呼んだ。

 

それは無理もない。

 

ロードラン時代の彼は『火のない灰』とも呼ばれておらず、その様な特殊な不死人は誕生していなかったのだ。

 

「――これのお陰だ」

 

 灰の剣士は懐から一枚のメダル取り出し、ソラールへと見せる。

 

「…持っていてくれてたのだな、貴公」

 

 手の平にある()()を見つめ、ソラールは目を細めた。

 

それは太陽のメダルだった。

 

このメダル自体は四方世界にて入手したものだが、ロスリック時代でも彼は所有していた。

(現在はソウルの業が仕えない為、インベントリを認識する事が出来ない)

 

これを目にする度、彼は太陽の戦士であるソラールの記憶を何度も呼び覚ましていたのである。

 

たとえ時代が移り変わろうとも、太陽を信奉した高潔な友を忘却する事は無かったのだ。

 

「改めて礼を言わせて欲しい。ありがとう、ソラール。貴方のお陰で何度私は救われたか!」

 

「それは此方とて同義!貴公が残したあのメッセージ、今でも鮮明に俺の心を焦がしている!」

 

 礼を言うのは此方の方だ。

 

そう言わんばかりにソラールも呼応する。

 

あの時『廃都イザリス』の地下深くで絶望に打ちしがれ、挙句の果てに『太陽虫』などに縋り精神を破綻してしまった。

 

その後正気を失った彼は、当時の灰の剣士と剣を交え敗れ去った過去を持つ。

 

だが彼は死んではおらず亡者に成り果てる事も無かった。

 

太陽という寄る辺を失った彼は絶望に心折れかけていたが、灰の剣士が残したメッセージで心救われた(人間性を取り戻した)のであった。

 

 

 

   ―― 太陽は貴方の中に在り、また貴方自身なのだ! ――

 

 

 

その言葉を糧に再び立ち上がり、彼は見事ロードランで火を継いだ。

 

”本当に救われたのは自分の方”だと、灰の剣士に感謝の意を示す。

 

「私は事実を書いただけだ。あの時代、貴方こそ正に太陽そのものだった」

 

「ふ…、俺には過ぎた言葉だ」

 

 互いが互いに視線が行き交い、僅かに笑みを零す。

 

ロードランを越え、ロスリックを跨ぎ、二人の関係に一つの節目が付いたと言っていいだろう。

 

微笑む二人に釣られ、ジークバルドも穏やかな表情で見守っていた。

 

「太陽の誓約を結びし者、ソラール殿だったか?私はカタリナの騎士、ジークバルド。以後お見知り置きを――」

 

 一段落着いたのを見計らい、ジークバルドも自身を名乗った。

 

「――改めて名乗ろう、俺はアストラのソラール。……矢張りジークマイヤー殿ではなかったのだな」

 

 (ジークバルド)から滲み出るソウルの波長――。

 

姿こそ同じであれ、眼前の騎士は彼の見知った者ではなかった。

 

「ジークマイヤー。それはロードラン時代を駆け抜けた、遠き我が祖先の名――。ともすれば貴公は矢張り、ロードラン時代の者か」

 

 祖先ジークマイヤーの名を聞き、ソラールがロードラン時代の人間である事を知った。

 

「左様。俺はロードランにて使命を果たし、気が付けばこの四方世界に在ったのだよ」

 

 ソラール自身も『最初の火の炉』で大王グウィンを打ち破り、見事自らを薪とし使命を果たした。

 

灰の剣士とは世界線が違えど、彼もまた歴とした『薪の王』なのだ。

 

「ハハハ、光栄だ!この世界で偉大な英雄と出会えようとはな、生きてはみるものだ!」

「なんの!それは俺とて同じこと!ジークマイヤー殿の子孫と出会えた運命、真に我が太陽に感謝せねばな!」

 

 ジークバルドの言葉に嘗ての英雄の面影を重ね、ソラールは夕刻を刻む太陽を賛美する。

 

「――太陽に光あれ!…だったか?太陽神の信徒が口にする祈りの言葉だそうだ」

 

 太陽賛美するソラールに、灰の剣士が『太陽神』について言及した。

 

西方辺境の地母神神殿で、見習い神官の少女から聞かされた話を思い出していたのであった。

 

「うむ、この国でも太陽が信仰されている様だな。俺も最近になって知ったのだ」

 

 諸々の理由で、王都にて活動する機会に恵まれたソラール。

 

彼はそこで、太陽神という存在を知った。

 

常に在り続ける大いなる存在にして、天空に輝く至高の天体――。

 

生命を照らし、激しく燃え盛り、悪疫を滅ぼし、夜の帳にて眠る――。

 

古来より在り続けた、不変なる存在――。

 

故に、人々は太陽に恥じぬ生き様を歩み、また太陽たれ――。

 

極めて単純かつ明朗で、真を得た教義――。

 

太陽は世界を照らす。

 

若しかしたら、全世界の生命は太陽の信徒なのかも知れない。

 

自覚の有無に関わらず、それだけ多くの信徒が存在するのだ。

 

 

 

余り皆を待たせてはいけない。

 

時間を置く訳にもいかず、三人はゆっくりと神殿の階段に脚を掛けた。

 

 

 

「王都の太陽神神殿で、古文献を見せて貰ったのだが、我が故国『アストラ』が記されていた」

 

 階段を昇りながら、ソラールは王都での出来事を語る。

 

四方世界でも太陽が盛んに信仰されている事に、彼の意識は高揚していた。

 

そして神殿の聖職者に頼み込み、古い文献を閲覧させてもらい、その文献には僅かだがアストラの事について記述が残っていた。

 

火の時代にて誕生した、太陽信仰――。

 

この世界での太陽神とも幾許かの関連性を匂わせていたのだ。

 

「俺にとって太陽神とは、『大王グウィン』或いは『太陽の長子』なのだが、この世界にも実に多くの神々が祀られ信仰の対象となっているのだよ」

 

 完全に気を良くしているのだろう。

 

ソラールの口調は早くなり、かなり饒舌となっていた。

 

至高神や地母神を代表とする神々――。

 

しかしこの世界では他にも多くの神が信仰され、神殿や寺院が存在する。

 

歩み続け、前に進み続ける事を是とする、正道神――。

 

酒と美食を愛する宴会や調理の神、酒造神――。

 

鍛冶や金属錬成を司る、鍛冶神――。

 

そして混沌に属する、覚知神を始めとする神々――。

 

国や地域、所属によって信仰対象は千差万別で実に多様であった。

 

「そうかそうか!酒と調理を司る神も存在するなら崇めん訳にはいくまいな、ウワッハハハ!」

 

 酒造神の存在を耳にしたジークバルド、彼も上機嫌となり高らかに笑いあげた。

 

――多くの神々か、かなり居たな。あの世界で……。

 

灰の剣士は、過去に想いを馳せる。

 

孤電の術士の秘術により、魔術師の世界へと召喚された時だ。

 

実は神々の思惑が原因だったのだが、彼はそこで多くの神々と邂逅した。

 

グウィンを代表とする、ロードランの神々――。

 

幻想や真実を始めとする、四方世界の神々――。

 

それ等に属する、外なる神々――。

 

そして――。

 

「二人に訊ねたいのだが……」

 

 階段をほぼ登り切り、入り口付近で灰の剣士は立ち止まる。

 

「どうしたのだ貴公?」

「灰剣士殿?」

 

 その様子に、ソラールジークバルドは疑問符を浮かべ、彼に視線を向けた。

 

「――()()()()()を知っているか?」

 

 あの魔術師の世界で、遭遇した一柱の神――。

 

姿形は唯の鳥だが、得体の知れない力を秘めた極めて強大な存在――。

 

現在『太陽の光の神』を名乗っている大王グウィンに干渉できる程の力を有し、尚且つ宇宙そのものを焼き尽くし、或いは四方世界に『二度目の火』と呼ばれる最初の火を模倣した、神――。

 

今より遥かに強力な魔術師達が束になろうとも微動だにする事がない程で、此処とは違う独立した世界《盤》を管理する神――。

 

目を閉じながらゆっくりと息を吐き、彼は口を開く。

 

 

 

 

 

   ―― 黒い鳥の神 ――

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

手斧

 

 ハンドアクス。

 

 大沼の呪術師たちの得物として知られ間合いは短いが、適度な重量と攻撃力を持つ。

 見た目よりも強力で、扱いやすい武器。

 

 片手サイズの小型の斧で、どちらかと言うと武器ではなく生活道具品としての意味合いが強い。

 しかし肉厚で重厚な刃は、敵に致命を負わせ武器として十分機能する。

 

 値段は、金貨 1枚~2枚。

 

 男は必死に抗った。

 たとえ己が命尽きようとも、愛する妻子を守り抜き生き永らえさせるのだ。

 

 しかし奴等は嘲笑う。

 男が最後に目にしたのは、衣服を剝かれ嬲られる妻と娘の姿。

 

 そして汚らわしいゴブリン。

 

 

 

 

 

 




 ゴブスレTRPGサプリを手に入れ、これまでになかった神々の詳細も記載されていました。
その中で太陽神なるものが存在し、四方世界でも太陽が信仰されているようです。
私の作品では、ソラールの故国アストラとちょっぴり関係性を持たせています。

その他にも興味深い神々や、面白い資料が沢山載っていました。
良いですね。
想像力が膨らみます。

ただ合流して交流を深め、出撃準備を整えるだけのシナリオなのに滅茶苦茶長くなりそうです。
下手したら3~4話分ぐらい。

区切りを付け次第、随時投稿していきます。

如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

デハマタ。( ゚∀゚)/
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