「王様だーれだ!」
みんなが声を揃えてそう叫ぶ
「俺だ、俺だ、俺ダァ!」
ムードメーカーの奴が勢いよくマークのついた割り箸を掲げながら返事をする
「命令は、そだな……何にしよっかな……」
「面白いの頼むぞ!」
「俺の番号言うなよ」
「早くしてー」
考えてる男子に対して皆好き勝手言う
「決まったぞ!命令は9番が5番に顎クイして決め台詞を言う!」
「おっ、いいじゃん!」
「面白そう!」
「けど、肝心なのはやる人だね」
王様の宣言の後みんなが口々に何かを言っていたのはわかった、が全然頭に入ってこなかった、なぜなら自分が5番だからだ
よりによってクラスで一番身長の高い俺をされる側に指名するとは彼は変な感じに持ってると思う
「じゃあ、9番だーれだ?」
「はい!」
呼びかけに応じたのは、よりにもよって自分が好意を寄せてる相手だった
いつもはあまりこう言うゲームに参加しないが彼女が参加しているのを見て何かあったら良いなという少ない希望にかけて参加したのが仇になった様だ
(逆なら大喜びなのに)
「おっ!女子がやる側か!」
「これで相手が女子なら百合じゃん!」
「本当だなー!」
「私は相手が誰だろうと男役かぁ」
彼女が考える様に言う
「もし相手が男子なら変えるか?」
王様役の子が気遣い聞いてる
(変えると言って!)
「ううん、変えない、だって好きでもない奴にされる位なら私からした方が良いから」
キッパリと断った彼女
俺の中でバリンッと何かが激しい音と共に割れた気がした
「そうか?じゃあ進めるぞ〜」
「そだね、じゃあ、私の相手の5番はだーれだ?」
「俺」
言いつつ手を挙げる、その瞬間周りがしーんと静かになり一拍置いた後笑いが弾けた
「旭が女役ー!」
「ピンポイントの引きがスゲー!」
中には笑いすぎて苦しそうな奴もいる
「どうしよう、私東峰立ってたら顎クイできない」
笑いの中で彼女が真顔でそう言った
「なら、座らせれば良いんじゃ無い?」
「おおっ、ナイスアイデア」
「んじゃ、普通に椅子でいいよな?」
「いいと思う」
言いつつ椅子に座らせられる
「これならできる」
「そだね、もうセリフは考えた?」
「考えた、私本気でやるから」
「本気って?」
「ガチで東峰を落とす気って事」
良い笑顔で宣言している彼女
(もうとっくに落ちてるのに…)
「よし、東峰は覚悟できた?」
微笑を浮かべ聞いてくる
「えっ、覚悟ってなんの……」
「まぁ、できてなくてもするけどね」
そう言った後椅子に座った俺に近付いてきた
目の前に立ち、顎に手を添えられる
そして、彼女はぐっと近づき俺の足の間に立つだけでなく、慄いてに深く座っているおかげで少し空いた椅子に膝をつかれぐっと股を押される
顔は上を向かせられどこか挑発的な笑みを浮かべた彼女と目を合わせられる
(何言われるんだろ…)
なんだか雰囲気がいつもと違って緊張する
周りも彼女の動きじっと静かに見ている
上を向かせられたまま彼女の顔が近づいて来て俺の耳に触れるような近さで低く囁かれる
「旭なら逆がよかった」
囁かれた言葉と彼女の吐息が耳にかかって腰のあたりがゾクゾクとする
逆であって欲しかったものは自分も思っていたから無くても分かる
それと同時にそれが何を意味しているのかも
囁いた後彼女はじれったいような速さで耳元から離れまた至近距離で視線を合わせた
「旭は?」
口角を片方だけあげて妖しい笑みで問われる
「お、俺もです………」
恥ずかしくて顔に熱が集まる顔は上を向かせられたままだが手で顔を覆う
「まさかの公開告白!」
「見てるこっちも恥ずかしい!」
「おめでとう!」
「勇気あるなー!」
「カップル成立!」
「お祝いだー!」
ギャーギャーと騒がしくなり、口々に祝福される
「はぁー…緊張したぁ……」
彼女がいきなり顔を手で覆ってヘナヘナとしゃがみこんだ
彼女の動作が急すぎて近くにいた俺は驚いてしまう
「え、あんた緊張してたの?」
彼女と仲のいい友達が呆れた様に笑っている
「緊張したよ!内心ビックビクだったよ!」
「その割には大胆すぎだ、女優かと思ったし」
「私も思っちゃったよ」
「私もー!」
女子が彼女を立たせてあげながら褒めている
「女優だなんて大袈裟な」
「大袈裟じゃないよ!」
「そうだよ!」
「そだな!見てて、なんだか引き込まれた」
「すごかったぞー」
「頑張ったな」
女子だけで無く男子も褒めている
その様子をぼやっと眺めていたら背後から肩を叩かれた
そして耳を貸せとジェスチャーされる
「?」
疑問に思いながらも耳を傾ける
「褒めるのはお前だろ?せっかくの彼氏なんだから」
言われた言葉に赤くなった
「でも、褒めるのはみんなが言ってるから他の言葉の方が良いかもな」
「ほ、他のって……」
「それは自分で考えろ」
言われて確かにと思い考える
そして、大切な事を思い出した
「あっ!付き合って言ってない!」
つい勢いでガタッと椅子から立ちながら叫んでしまった
「そう言えばそうだね、付き合って?」
その直後彼女がそう返す
ガタンッ
早すぎる返しに後ずさったせいで椅子が倒れた
「カウンター早いし重い……」
誰かが呟く
本当にそうだ
「えっ、あー、その………よろしくお願いします……」
90度以上腰をおり、深く頭を下げる
「こちらこそ」
そう返してもらう
「カップルせいりーつ!」
誰かがそう叫んだのを皮切りにまた一段と騒がしくなった
〜放課後の部活〜
「なぁ、今日の昼休み旭の教室騒がしかったけど、何かあったのか?」
着替えてる時、大地にいきなりそう言われ心臓が口から飛び出るかと思った
「あー!それ俺も聞きたい」
スガまでもが聞いてくる
「誰かの誕生日だったのか?なんかおめでとうとかって聞こえたけど」
「すっごいお祝いムードだったべ」
「あっ、えっと……それは…………」
モゴモゴと口ごもる
「旭がこの反応するってことは旭に何かあったんだな」
何かを感じたのか野次馬精神の塊で聞いてくる
「旭が祝われる何か………なんか当てた?」
「違う」
「焦らさずに教えろよ〜」
周りの部員は会話にこそ入ってこないが注意して会話を聞こうとしてるのは明白な様子だった
「なんだ?恥ずかしい事なのか?」
「え、あ、うん、まぁ…」
恥ずかしさで赤くなる
「ますます気になるなぁ、教えろよ〜」
スガが不満を表すように口を尖らせている
こうなったら、言ってしまえ!
「じ、実は前から好きだった子に告白されて、付き合うことになりましたー!」
勢い余ってかなりの声量で叫んでしまう
やってしまった、マネージャーや鵜飼監督含めて全員顔を驚きに染めて自分を見て動きを停止させていた
「ま、まさかのだな….」
「予想してたのと違ったべ」
大地とスガはボソボソと言った後
「おめでとう!」
「おめでとうなー!」
そう言いながら2人とも結構な勢いで背中を叩いた後部室から出て行った
「俺からもおめでとうです!」
田中にも背中を叩かれる
「俺からもです!」
連続で西谷にも叩かれる
その調子で1年生以外全員に叩かれた
その日は背中がヒリヒリしたけど、彼女と付き合ってると思うと全く気にならなかった
こんな感じの恋してみたいですよね
私自身は出身が女子校なんで、まあ、あり得なかったんですけどね
本当にキャラが羨ましい