スマイルプリキュア!~魔弾剣士と5人の戦士~ 作:tubaki7
「というわけで絵のモデルになってほしいの!」
「よろこんで!」
「モデル、やるクル!」
「うん、ちょっと冷静になろうか」
確かに屋上とは言った。しかしこんな展開になるとは誰が予想できただろうか。おかしい。色々といちゃいけない、というよりは人前には絶対にでちゃいけない人外の生物が一匹しれっと紛れ込んでいる。それどころかいつの間にか当たり前になっているこの状況がコワい。
一旦整理しよう。
「まず絵のモデルになるってのはわかった。問題はそこからだ。俺たちは普通に昼飯を食ってた。そして今は放課後。人気のないこの時間帯に屋上で絵を描くってのもわかった。だが何故キャンディが自然といる。お前人外だろ、見かけ狸だろ。ぬぐるみの振りしとけっつの」
「キャンディは狸じゃないクル!」
「そうだよつばき君。いじわるしちゃダメだよ?」
「黙れ脳内万年花畑。これはそういう問題じゃない」
あかねでさえツッコミが追いつかないから放棄し始めたというのにこれで自分まで放り投げたら収集が付かなくなるどころの騒ぎでは無くなる。えっと、たしかゲシュタルト崩壊・・・・だったか。疎い頭でそんなことを考えながらもつばきはキャンディをつかみ上げて自分の目の前にまで持ってくる。
「あんな、この世界での普通ではお前は本来ぬいぐるみ的なものとして見られるんだ。動くのは電池の入った、触れば機械的な無骨な冷たさがあるおもちゃだけ。でもお前は生きて、こうして俺たちの質疑応答にも対応できる。まあできる度合いはあるがな。ということは、だ。異世界から、しかも妖精がいて、しかも対会話していてなおかつこの状況を誰かに見られたらどうする?テレビカメラで全国中継されてプリキュア探しどころじゃ――――あ」
「あんた今思いっきり言うてもうてるやん」
「・・・・とにかくだ。むやみに人前に出てくるな。それから黄瀬。もう忘れろなんて言わねー。でもこのことは――――」
「うん、秘密、だよね。わかってる」
本当に大丈夫なんだろうか。不安しかないが、もうこれ以上はどうしようもないと溜息をつく。なんだかどっとでてきた疲れを少しでも取り除くべくポケットからアイマスクを取り出して踵を返す。どこに行くのかと問われればベンチで昼寝と返す。時刻は午後2時。昼寝、というには微妙な時間帯ではあるがそれにツッコミをいれることなくつばき同様あいよ、と手を上げて返す。終わったら起こしてくれという頼みを聞き入れたあかねはポージングに悩むやよいに向き直った。
◇
鬼、という名詞を出されてどんな姿を連想するだろうか。たいていの人は躰は大柄で肌は赤く、口は牙が生えて吊り上がり、それはそれは恐ろしい顔をしている。虎柄の黄色と黒の縞々のパンツをはき、金棒をもっていてそれをブンブンと振り回し暴れる、そんなところだろうか。そんなテンプレのような鬼、まさか本当にいるはずがないと思うのが普通だが、それは地球の、人間たちのみに当てはまる普通であり、ここバッドエンド王国ではその普通が異常となり、そして異常が普通になっている。ここはそんな異常な者達が暮らす世界、メルヘンランドが希望であふれているのであればここはさしずめ絶望であふれた世界といったところだろう。名は体を表すとはうまいことばを作った人間もいたもんだ、と鬼―――アカオーニは思う。
ウルフルンが連敗を記している。その報告は自分の耳にも届いている。いや、いつも見てるのだから戦果がどうだったかくらいは自分でもわかっていた。ああ、此奴今日もヘタこいたなと。だが自分はそんなヘマはしない。サクッといってサクッと邪魔者共を消し去ってサクッとバッドエナジーを取ってくる。豪快に、荒々しく、だが決めるところはちゃんと決める。そうでなくては男らしいとはいえない。だからあの狼はまったくもってダメダメだと評価づけて金棒を軽々と担ぎ上げて歩を進める。目指すは人間の世界。邪魔者のいる、あの不愉快極まりない世界だ。
「さて、今回は俺様があの出来損ないに代わってバッドエナジーを取りに行くかオニ!」
鬼が、人間の世界へと降り立った。
◇
かれこれ一時間。指定された道具とポーズをとってからそれだけの時間が経過していた。最初は乗り気だったキャンディとみゆきだがやがてその勢いはみるみる内に削がれていきいまでは退屈だとさえ思う。時々疲れたからと言って体勢えお変えようとするとやよいから想像もつかない程の激が飛んでくるのでそれもままならない。後ろの方で寝ているつばきを心底羨ましいと思いつつみゆきはその苦痛にただ涙をこらえて耐えるしかないでいた。
そんな中、ふとあかねが口を開く。
「そういえば、つばきってやよいのこといつから黄瀬って苗字で呼ぶようになったん?なんか前は名前やった気すんねんけど」
「・・・・小学校3年の時まではずっと名前だったんだ。でもある日を境にちょっと疎遠になっちゃって、それ以来かな。中学校に上がってからはあかねちゃんも知ってる通り。あの時はたまに昔からの癖なのかたまに名前で呼んでくれてたりしたんだけど、いつの間にか苗字で呼ばれるのが固定されちゃって」
そうか、だから幼馴染って聞いてもそうは見えなかったのか。動けない、喋れないという二段縛りに見舞われつつみゆきは心の中で合点がいったように頷く。この二人に感じてた不思議な違和感はそういう事だったのかと呟き、ふとつばきを見た。
(そういえば、黄瀬さんの事話題に出すとすぐ反応してたっけ)
これまでの会話のなかでいくつかの情景を思い浮かべながらそうだったかなと思考する。まあこんなこと考えたからと言ってどうにかなるわけでもないが。と、思考を切ろうとしたときに何かが閃いたみゆきは突然「そうだ!」と大声を上げる。びっくりしたあかねはついていた頬杖を崩し、やよいはバキン、と鉛筆の芯を折る。つばきに至ってはベンチから落ちて何事かと辺りをきょろきょろ見回す始末。それをやった当の本人はそんなことなど眼中にないと言わんばかりにやよいの手をとり、こういう。
「ねえ、私たちと一緒にプリキュアやらない?」