スマイルプリキュア!~魔弾剣士と5人の戦士~ 作:tubaki7
やっちまった、と溜息。我ながら単純だと思うと同時にまた溜息。ただちょっと注意するはずのつもりがこれなのだから世話はない。
「そんなに溜息つくほど後悔してるんなら早く謝ればいいのに」
それができたらこうも悩んでない、そういう視線を妹に返せばそれを受け「はいはい」とそっけなくあしらわれる。エプロンを付け、夕食の支度にかかるさくらに今回の事を打ち明けてみれば「それはご愁傷様」とこれまたあっけなく切られてしまった。相方に言っても触らぬ神に祟りなしといった感じで取り繕うとはしない。八方ふさがりだと頭を抱えて再びソファにだれる。
「そもそもお兄はやよいさんのことになると短気すぎ。もうちょっとクールになったら?いつも言ってるじゃないの。熱くなった時こそ、冷静さが最大の友って」
「それはあのジジイの教えだっての。それに、俺だってこうなりたくてなったわけじゃ・・・・」
今更何を、と呟いて鍋の中を確認し蓋をする。コトコトと煮込まれている音を聞きながら工程は順調だと満足そうに頷く。冷蔵庫からキャベツを取り出し、まな板の上に乗せ、得意げに包丁を握って鮮やかな手さばきで切っていく。リズミカルな音を聞けば、それだけでさくらの家事スキルの高さがうかがえるほどに板についてきた。最近では妹、というよりお母さんという言葉が似合うようになってきてしまっているがそこはまあ、気にしない方向で行こう。
それよりも。
「俺ってこんなだったっけ・・・・?」
はて、いつからこうだったかと少し過去へとさかのぼってみることにして、つばきは目を閉じた。
◇
「ってことがあったの」
「なるほどね・・・・」
夕食を食べながら家族二人の団欒。テーブルに置かれたサバの味噌煮に箸を付け、身をほぐして口へと含む。目の前の母は「う~ん」と考え、結論に至ったのか苦笑した。
「つばき君、やよいのことが心配なのよ。ホラ、やよいって少しドジっ子だから」
「お母さん、それフォローになってないよ・・・・」
せめてもっとマシな言葉はなかったのかと言いたくなるが、まあこの際それはスルーしよう。
「心配、か・・・・」
小学生の時。自分はあまり人当りがいいとは言いがたかった。というのも、父が死んだあとはかなりふさぎ込んでいた節があったためである。身近な人の、しかも家族で父親の突然の死ともなれば幼いながらもその出来事の大きさやショックは計り知れないものだったと今でも思い出せる。
あまり思い出したくはないが。
その頃から――――いや、正確にはもっと前からではあったが。クラスでそういう子が一人でもいれば、まず恰好の的となる。もちろん、虐めだ。今考えてみれば些細なことだったが、当時の自分からしてみればかなりのダメージだったような気がする。言葉の暴力というのは実際の暴力とは違い目に見えない分かなりのダメージを精神に与える。それが時には人の命を奪う事にもつながると理解したのは、それから数年先ではあるが、それはどうでもいい。重要なのは、ここなのだ。
やよいが虐めを受けていたという事実。父が幼くして死に、友人もさほどいたわけではないやよい。当然、孤立し行き場をなくす。まだ善悪の区別がつききらない子供にとっては珍しいものを見るめで見られ、やがてそれが虐めへと変異していった。最初は内緒話、次は陰口。そして極めつけは言葉による精神攻撃。正直な話、何度も母に言おうか悩んだ。でも、それをしなかったのは母の、あんなに優しい笑顔の絶えなかった母が泣いた顔を見ていたためである。自分の前ではいつも笑っていて、寝静まったころ、母は父の写真を見ながら静かに泣いていたのを覚えている。
困らせてはいけない。我慢しなくちゃ。辛いのは、自分だけじゃない。そう思う内、いつの間にか自分の中でそれを押し殺すようになっていった。
その頃だった。自分が、❝ヒーロー❞と出逢ったのは。
クラスでたまたま一緒だった男の子。どこにでもいそうな普通の男の子。でも、その時のやよいには彼がとてもかっこよく、そして輝いて見えた。
――――おい。大丈夫か?
差し出された不器用な手。あの時と変わらぬ不器用さは今も健在だ。
それから、二人でよく一緒にいるようになった。と言っても、自分から一方的に一緒にいるようにしただけだった気もするが。ああ、そうだ。結構強引に一緒にいたかもしれないといまになって思い出す。
こうして思い出してみれば、これが二人の始まりだった。誰も知らない、自分と彼だけの始まりの時。そして――――彼の、拭えない傷の始まり。
・・・・やめておこう。首を振って意識を現実へと戻す。今は食事の時間だと手を動かす。
「さっきからニヤニヤしたり辛そうな顔したり・・・・もしかして、つばき君かな?」
言い当てられ、口に含んだものを吐きそうになりグッと堪えて飲み込む。咀嚼は充分だったのでなんとか飲み込めたやよいはすぐさま抗議にでる。
「ち、違うよ!私はただ、校内清掃のポスターをどうしようかなって考えてただけで・・・・」
「嘘。やよいがそういう顔するときは絶対つばき君が関わってるもの。それに、最近は頻度も増してきてるしね」
茹蛸――――今の自分を表現する言葉があるとすればこの言葉がぴったりだと思う。恥ずかしさのあまり、口をパクパクとさせながらやよいは言葉を探すがイタズラげに笑む母の姿を見て、ああ無理だ、と理解する。どう言い返したところで、この人には全てお見通しなんだろうなと諦め俯く。それをみて「やぱりね」と呟いたあたり想定済みだったらしい。
「で、話は戻るけど。そのみゆきちゃん?とつばき君に仲直りしてほしいんでしょ?」
「うん。でもどうしたらいいか・・・・」
「そうね・・・・こればっかりは本人たちの問題だから、どうしようもないかな」
苦笑する母。結果、どうにもしようがないということだけがよくわかったやよいであった。
◇
「それはマズいことをしたね」
「そうなんだよ~・・・・」
夕食後の団欒とした時間。みゆきもみゆきで今朝の事を家族へと相談していた。
「でも、そんなに怒ったってことはその鳴神君という子は本当に大事に思ってるんだね。普通の子じゃこうはならない」
――――なんでだろう。胸がチクリと痛んだ。
「そうなんだよ。つばき君て、何時もは何にも無関心でぶっきらぼうで、それで意地悪するのに何故か黄瀬さんのことになると過剰反応するんだよねぇ・・・・」
「でもみゆきにも非はあるのよね?」
「それを言われると、なにも言えない・・・・」
果たしてどうしたらいいものか。答えのでないまま堂々巡りをしていると、何か思いついたように名前を呼んだ。
「なにお父さん?」
「男っていうのは、不器用な生き物なんだ。伝えたいことがあるのに、それができない。だからつい、気持ちとは正反対のことをやってしまうこともあるし、すぐ熱くなりもする。でもねみゆき。そういう時っていうのは、大体後になって後悔してるもんさ」
「そうかな?私、酷いことしちゃったのに・・・・」
「確かにみゆきは彼に対して失礼なことをしたかもしれない。でも、決してみゆきを傷つけようとはしなかった。違うかい?」
よく言葉を思い返してみる。言われてみれば、責任をとれるのか、ということしか言われていない。普通あそこまで怒っていたら罵倒の一つや二つ、あってもおかしくはない。なのに、つばきの口からそれが出ることはなかった。ただ、巻き込みたくない、傷つけたくない、その想いででた言葉だった。
父の質問にみゆきは「うん」と頷く。
「たった一人の女の子のためにそこまで怒れるんだ。それほど心が素直な子なんだよ、きっとね。みゆきがそこまで言うんだから、そうなんだろう」
「そういえば、みゆきの口から男の子の名前がこんなに頻繁に出たことってなかったわね。これってもしかして・・・・」
何かを感づいた両親が顔を見合わせる。だが当の本人は全くわかっていない様子で首を傾げるしかない。
まあ、とにかく。
「なんだかよくわからないオチだったけど、明日つばき君に謝ってみる!」
決心は、ついたかな。
ピース登場まで長い長い。いつまで引っ張るんだこれは
以上、今回はつばき、やよい、みゆきの三人でした
あかね「おい、ウチの出番は――――」
ない
あかね「」