スマイルプリキュア!~魔弾剣士と5人の戦士~   作:tubaki7

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Episode12

「ごめんなさい!」

「ごめん!」

 

「え、私が悪いよ!」

「いや、俺が悪いって!」

 

 

朝から仲がいいな、とその光景を見てあかねはやれやれと苦笑した。朝顔を合わせるなり互いにキレイに90°頭を下げて謝罪の言葉。そして次に罪の取り合いとはこれまた和気藹々としたものを見たと思う。この二人のシンクロぶりはなんだか見ていて飽きない。

 

 約一名、若干不満顔な者がいるがそれは触れない方がいいだろう。

 

とはいえ触れなければならないのが今日と言う日だ。物理的にということではない。話題的にだ。

 

 

「そういえば今日はポスターの先行展示の日やったけど絵はできたんか?」

 

「うん。まあ、なんとか・・・・」

 

 

自信なさげに言うのはいつものことだが、今日はそれに緊張と恐怖感が混じっているのがわかる。スカートを握る手が僅かに震えていることから彼女が今どんな心境でここにいるのかが窺える。

 

 

「そかったね、つばき君。仲直りできて」

 

「色々と考えて軽く頭痛がするけどな・・・・」

 

 

〔慣れないことはするものじゃないな〕とゲキリュウケン。それに小さく周囲に聞こえない程度に「うっさい」と返す。それよりもと気分を変えるようにしてみゆきが展示されている掲示板へ行こうと提案し下駄箱から廊下を右へと曲り、職員室へと続く廊下の途中。緑のコルク材の壁の掲示板にいくつもの絵が貼られている。個性的なものばかりで描いた人物の特徴がよく出ている。と、群がる野次馬を掻き分けて目的の絵を探す。すると、3段あるうちの2段目、右から5枚目の絵でちょうど真ん中だ。見つけたみゆきは「おお~!」と目を輝かせる。

 

 

「すっごい!コレ本当に黄瀬さんが描いたの!?」

 

「う、うん・・・・」

 

「黄瀬は昔から絵を描くのが得意でな。俺もよく描いてもらったよ・・・・夏休みの宿題のポスター」

 

「ええ話だと思ったウチの感動を返せ。今すぐ返せ」

 

「ちなみに一年の時の動物愛護のも黄瀬の作だ」

 

「ドヤ顔しとるけどやっとることはサイテーやからな」

 

 

そんなあかねとつばきの漫才を見ながら笑うみゆきをみてああ、いつもの光景だとホッと息をつくやよい。だが、この後その空気も壊れさることとなる。

 

 

「おや・・・・なんだいこの絵は」

 

 

そう言って現れたのは美術部期待の星と言われている二年の蔵星だ。眼鏡に少し白髪が混じったような髪にスラリと伸びる背丈。そして男とは思えないほどキレイな指先。如何にも絵描きと言わんばかりのその風貌を知らない者は学年内ではいないほどの有名人だ。

 

主に、あまりよくない意味で。そんな彼がやよいの絵を見て呟いたのだからこれからロクなことにならないだろうなと予想しながら蔵星の言葉を待つ。

 

 

「まるで子供が描いた絵じゃないか。これを描いたのは・・・・黄瀬やよい?ああ、君か」

 

 

絵の前に立っているやよいを見てそう言う。明らかに人を見下したような目の蔵星はニヤリと口元を歪める。

 

 

「いくら校内清掃ポスターだからと言ってこんなくだらない絵を飾ってもらっては困るよ。絵というのは人の心を映すもの。それがなんだいこれは?まるで小学生レベルの低クオリティにもほどがあるよ。こんなものが選考に加わるなんて愚の骨頂だね」

 

 

よくもまあ難しい言葉を並べたもんだとつばきは内心で評価する。要は自分の絵と張り合おうなんて愚かな奴もいたもんだ、ということが言いたいらしい。こういう輩は漫画の中とかだけに存在するもんだと思っていたが本当にいるところを見るとある意味天然記念物とか絶滅危惧種とか、そういう部類に入るのではなかろうか。

 

まあ、それでも気に食わないのでとりあえず殴っておくか。そう出ようとした時、自分よりも早く動いた人物がいた。

 

 

「くだらなくなんかない!この絵は、黄瀬さんが一生懸命描いた絵なの。バカにするなんて、許せない!」

 

 

見開いてみゆきを見る。普段はニコニコと笑顔のイメージがすっかり定着していただけに、彼女の本気で怒った顔を見るのは新鮮だ。

 

 

「・・・・なあ、青木副生徒会長?」

 

 

掲示板に絵を貼り付けるためにいたれいかをちらりと見てニヤリと怪しげに笑らいながらつばきは言葉を発した。それに返事をしたれいかもどうやらこれには腹をたてたようでその顔をみてさらにつばきは笑う。

 

――――いいねぇ、ワルくない。

 

 

「この展示会、優劣を決めるものでっけか?」

 

「いえ。形式上、たしかにそう見えてしまいますが、これはあくまでも校内清掃強化月間のイメージポスターを決めるものであり、絵の優劣は全く持って関係ありません」

 

「つまり、絵が上手ければ上手いほど選ばれる確率が高くなるなんてことは…」

 

「ありません」

 

「ってことはだ。おまえが描いた絵が絶対的に選ばれるなんて保障はどこにもないってことだな蔵星?」

 

「・・・・なにが言いたい」

 

「お高くとまってっと足元すくわれるぜ?美術部エースさんよ。それと、誰に喧嘩売ってんのか少し考えてからバカにするんだったな・・・・」

 

 

おそらく、それを一言で言うなら見えなかった、だ。あかねとしては運動神経には自信がある。それも反射神経といった目や感覚のことに関してはバレー部でも養われている為普通の人よりは早く動くものを捉えるということに関しては秀でている。そんな彼女でも、鳴神つばきの腕はまるで見えなかった。一瞬の内、れいかが持っていたボールペンを取り、蔵星の喉に突き立てている。触れるかふれないかぐらいの微妙な距離に突き立てる辺りさすがだなとれいかは思った。

 

とはいえ、こういう場面は生徒会副会長として見過ごすわけにはいかない。二人の間に割って入り、つばきからボールペンを取り上げる。

 

 

「鳴神君、ボールペンは字を書くものです。人を脅すためのものではありません。それから蔵星君。あなたも、言葉には気を付けてください。特に、彼の前では冗談抜きで私でも止められるかどうかは保障しかねます」

 

 

どういう意味かは理解できますよねと目で訴える。一瞬舌打ちをし、バツが悪そうにしてその場を去る。ここで捨て台詞を吐かないあたりは少しだけ褒めてやろうとあかねは評価する。そこで聞こえてきたヒソヒソ声に耳を傾ければ、何とも酷い内容だった。

 

 

「思い出した、あの鳴神つばきって男子生徒、確か小学生の時問題起こしてかなり騒ぎになったとか」

 

「ああ、あれでしょ?剣道の大会で相手の子を意識不明に追い込んだとか」

 

「それ知ってる。他にも、数人病院送りにしたって噂だぜ」

 

「マジかよ!?なんでそんな奴がウチの学校にいんだよ…」

 

 

まあ、所詮噂は噂やなと知らん顔するあかね。だがそれを心底気にしている子が目の前にいるのを見て溜息をつく。「気にしたらアカン」、そう言おうと手を置こうとしたが、それよりも早くやよいが動いた。自分の絵を素早くはがし、つばきの手を取って走り去る。みゆきがそれを止めようとするも、それをれいかが引き止めた。何でと抗議の声をあげようとするも彼女はただ首を横に振り、追うなと意思表示すると言葉をつづけた。

 

 

「こればかりは、私達の入る余地はありません。最近転校してきた星空さんであればなおさらです」

 

「でも…!」

 

「やめとき。あの二人にしかわからへんもんがあるんや。つばきにはやよいの、やよいにはつばきの事がわかるんや。他人のウチらが入る隙間なんてどこにもないんよ」

 

 

れいか同様みゆきを宥めるあかね。後ろ髪引かれる思いに駆られつつも、みゆきは二人の去った後を見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっちゃった~・・・・」

 

「あれ、なんかデジャブ」

 

 

うな垂れるやよいを見て先日の自分を思い出す。やっぱり10年近くも幼馴染やってて近くにいると似てくるのかなぁなんて思いながら隣の階段に腰掛ける。

 

 

「しっかしなんであんなことしたんだよ。授業遅れるぞ」

 

「いつも寝てるじゃない。…つばき君は気にしないの?あの子たちが言ってたこと」

 

 

本当は違うのに、というが、実際は少し事実も含まれているので何も言えなかったから黙っていたとは言えないので、とりあえずは気にしていないからと返しておく。それでも納得がいっていないのかまだうな垂れているやよいをみて溜息をついた。

 

 

「私は、悔しい。だってつばき君は私の――――」

 

「よせよ。俺はそんな憧れの視線で見られるようなガラじゃないし、ましてやヒーローなんてそんなキラキラしたもんでもないしな」

 

「ううん、そんなことない。初めて逢ったあの時から、つばき君は私のヒーローだもん」

 

「・・・・恥ずかしいセリフ禁止」

 

「ええ!?」

 

 

そんな会話をして、二人しておかしくなって笑う。その感覚に久しぶりだな、と感じて少し懐かしさに浸っていると、一陣の風が吹いた。結構強かったらしくやよいは絵を持っている手を離してしまい、スカートを押さえる。当然、絵は風に煽られ宙を漂いながらヒラヒラと飛んで行ってしまう。

 

 

「あ、ポスターが…!」

 

 

ヒラヒラ漂うポスターを追うやよい。地面に落ちたところでホッと息をついたのもつかの間で今度はそれを拾い上げた人物を見てつばきが息をのんだ。

 

 

「なんだこれ・・・・校内清掃?にしてもヘッタクソな絵オニ!」

 

 

身長は、ざっと見て2メートルほどの大柄な躰。皮膚が火傷でもしたかのように赤々としており、東部からは二本の角が生えている。口も図体と同じで大きく、ギラリと鋭利な歯が見えていた。黄色と黒の縞模様のパンツと担いだ金棒は、まさにおとぎ話に出てくる赤鬼そのものだ。

 

 

「それを返して!」

 

「あ?そう言われて返す鬼はいないオニ」

 

 

鬼はいないだろう、現実には。そんなツッコミを入れつつつばきは駆けだしてやよいを飛び越え、現れた赤鬼――――アカオーニに対し顔面に跳び蹴りをかます。当然、つばきのことなど眼中になかったアカオーニはそれを諸に喰らいよろけて後退る。

 

 

「黄瀬、逃げろ!此奴は人間じゃない!」

 

「え、ど、どういうこと!?」

 

「あいたたた・・・・いきなりなにするオニ!もう怒ったオニ!」

 

 

そこからの流れはあのウルフルンと全く同じだった。取り出した白紙の絵本に黒い絵の具を塗りたぐり、あの空間を発生させた。一つ違うとすれば、周囲の雰囲気だろうか。ウルフルンのは夜を連想させるものに対し、こちらはどこか鬼ヶ島にでも来たような印象を思わせる。

 

 

「しまった、黄瀬!」

 

 

膝を着き、うな垂れながら黒いオーラを発するやよい。遅かったと舌打ちをするつばきはアカオーニを睨み付けた。

 

 

「ゲキリュウケン!」

 

 

腰のゲキリュウケンを実体化させ、構える。やよいの前で変身するのは些かためらわれるが、この状態では覚えてないだろうと判断し、魔弾キーを取だす。

 

 

「リュウケンキー、発動!」

 

〔チェンジ、リュウケンドー〕

 

「ゲキリュウ変身!」

 

 

ゲキリュウケンから放たれた青い竜が咆哮を上げ、つばきの躰へと吸い込まれていく。高ぶった魔力が鎧へと姿を変え、つばきの変身は完了する。

 

 

『リュウケンドー、来迅!』

 

〔キュアハッピーとキュアサニーがまだ来ない。持ちこたえるぞ!〕

 

『言われるまでもねぇ。此奴は・・・・俺が倒す!』

 

 

絶望に沈む少女を背に、剣士は構えた。




次こそは、次こそはピースを・・・・!
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