スマイルプリキュア!~魔弾剣士と5人の戦士~   作:tubaki7

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Episode14

 

憧れた背中があった。

 

 

憧れた勇気があった。

 

 

幾つものすれ違いを経て、ようやく私は彼の隣に、ほんの少しだけ近づくことができた。でもそれは凄く恐くて、彼が見ている景色は自分が今まで見てきたどんなホラー映画よりも恐怖で満ちていた。

 

 でも、そんな恐怖でさえ、今は平気。不思議と湧いてくる力と勇気が震えを止め前を見据える強さをくれる。これはほんの小さな一歩でも、それでも自分にとっては大きな一歩。

 

だから――――

 

 

「ピカピカピカりん、じゃんけんポン!キュアピース!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を疑う。でもそれは紛れもなく現実であり覆すことのできない確かなもので、今見えている少女の姿はまさに探していた3人目のプリキュアだ。出来れば無縁でいてほしかった、そうであってほしいと願った幼馴染の少女の、もう自分の知る泣き虫で弱虫の黄瀬やよいではなくなっていた。今見えているのは3人目のプリキュア、キュアピース。黄色い衣装に身を包み、かわいらしく名乗りを上げたその姿はとても伝説の戦士とは形容しがたいものがあるが、それでもプリキュアであることに変わりはない。

 

唖然としているのもここまでだ、と思考を切り替えて隣に立つ。

 

 

 

『・・・・本当にいいのか?』

 

「うん。決めたから。私も、頑張るって」

 

『・・・・そうか。なら、充分だな』

 

 

そう思う反面、少し寂しそうにリュウケンドーは笑った。

 

 

「人数が増えようと、今更関係ないオニ!やれ、アカンべー!」

 

 

アカオーニの指示でアカンべーが箒を振り回す。巻き起こった突風に耐えながら、二人は駆けだす。

 

 

『あの箒は俺が何とかする。その隙に攻撃を!』

 

「うん!」

 

 

手の中にある黄色のエンブレムのマダンキーをゲキリュウケンに差し込む。

 

 

〔チェンジ、サンダーリュウケンドー〕

 

『雷電武装!』

 

 

駆けながら、ゲキリュウケンをアカンべーの攻撃に合わせて突き出す。振り下ろされた箒はゲキリュウケンから放たれた黄色の竜のエネルギー体によって弾かれ、電撃の特性も相まって腕を関電させ数歩下がる。天高く舞い上がった竜は雄叫びを上げてリュウケンドーめがけて降りてくる。それを受け入れるようにして手を広げ、竜は鎧へと同化しサンダーリュウケンドーへと姿を変える。

 

 

「恰好が変わったオニ!?ずるいオニ!」

 

『ずるいとか悪役の使う言葉じゃねーだろ!キュアピース!』

 

「たああああああああああああああッ!!!!!」

 

 

助走で勢いのついたまま跳躍し、空中で回転してキックを放つ。ピースの強烈な蹴りが直撃したアカンべーはノーガードのままそれを喰らい躰をくの字に曲げて吹っ飛び地面に倒れる。

 

 

〔キュアピースにはパワー特性はない、だが、その特性である雷を利用すれば、瞬間的な加速やパワーであれば、プリキュアの中でもピカイチだ〕

 

「そんなぁ!?」

 

 

愕然とするアカオーニ。開いた口が塞がらないとはまさにこのことだろう。先ほどまで有利に進んでいた戦闘が一瞬にしてひっくり返ったのだから。しかも、あの泣き虫だった人間一人のせいで。これほど予想外すぎる展開はアカオーニでなくても予想はできないだろう。

 

吹っ飛んだアカンべーをみてキャンディが歓声をあげる。

 

 

「二人の力でアカンべーを浄化するクル!」

 

「ヒーローには合体技がつきものだもんね。リュウケンドー!」

 

『だから俺はヒーローじゃ・・・・って、今はまぁいいか』

 

 

ツッコミも野暮だろうとホルダーからファイナルキーをゲキリュウケンに装填する。その間、ピースもスマイルパクトにエネルギーを籠め、両者に準備は整った。

 

 

「プリキュア・ピースサンダー!」

 

 

雷をピースが放つ。そしてその光はゲキリュウケンへと集約されていった。

 

 

『プリキュア、魔弾龍、剣士。三つの力が、今一つに。三位一体・雷電斬り!』

 

 

目で追えない程の速さで一瞬にして距離を詰め、完全に起き上がる前にゲキリュウケンを振り下ろす。落雷にも似たその斬撃はアカンべーを一刀両断し、浄化する。

 

 

『闇に抱かれて眠れ・・・・』

 

「・・・・っ~、悔しいオニ!次こそは絶対にコッペパンにしてやるオニ!」

 

 

アカオーニが消える。

 

 

「それを言うならコテンパンやろ」

 

 

サニーのツッコミが入ると同時にバッドエンド空間もなくなり元の世界へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局こうなるか・・・・」

 

 

目の前ではしゃぐやよいを見ながら深く溜息をつく。なんだかもう全て此奴(みゆき)のシナリオ通りなんじゃないかと思うほどドンピシャで当てていることに内心驚くとともに怪しいものを見るような目で見る。

 

 

「そんなに見つめられると照れちゃうよ~…」

 

「・・・・んなわけない、か」

 

「ちょっと、どうしてそんなにバカにしたように言うのさ?」

 

「お前が紛らわしいことするからだ。大体なんでこうもホイホイ見つかるんだよ、もう3人目だぞ?しかも同じクラス。これは見えない大きな何かしらが働いているとしか思えん」

 

 

大げさな、と呟くのはあかねだ。

 

 

「まあでもええんとちゃうか。そのおかげでこうして今回は助かったわけやし」

 

「そう何度も続いてたまるか」

 

「でも、私はよかったよ?だってこれで心置きなくみんなと一緒にいられるし」

 

 

またお気楽な、とつばきは頭を抱える。そんなつばきに同情するようにあかねが苦笑いを浮かべ、またしても深いため息をつく。

 

 

「今日はやよいちゃんもプリキュアになれたし、おまけにつばき君とも仲良くなれてウルトラハッピーだよ!」

 

「おい俺はおまけか」

 

「ヤダなぁ、言葉のあやだよ」

 

 

こいつ絶対後で泣かせてやるなどと腹黒いことを考えていると先頭を歩くやよいが不意に立ち止まって此方を振り返った。満面の笑みを浮かべるこの子を、久しぶりに見た気がするとつばきはほんの一瞬その笑顔に魅入る。

 

 

「みゆきちゃん、あかねちゃん、キャンディ。これからよろしくね!」

 

 

それから、と目線が此方に向いたのに気づいてまた溜息。これはもうしょうがないと諦めて薄く笑う。

 

 

「敵前逃亡なんてすんなよ?」

 

「しないもん。なんてったって私、スーパーヒーローだから!」

 

 

そこはヒロインじゃないのか?と言いたかったが本人がかなり盛り上がってるのでそこはあえて言わずに飲み込む。すっかり浮かれ気味で本当に大丈夫かと思うも、さっきの言葉から確かな意思を見たつばきは小さく息をつくだけで済ませる。

 

 

そして、

 

 

 

「そんなにはしゃいでると、周りからヘンな目で見られるぞ?」

 

「は、そうだった・・・・」

 

「・・・・ったく、変わんねーなそういうとこ」

 

「うう・・・・意識したら急に恥ずかしくなってきた…」

 

「・・・・ホラ、行くぞ。❝やよい❞」

 

 

やよい――――名前が呼ばれたことで目を見開く。

 

 

「つばき君、今、なんて・・・・?」

 

「ん?やよいって呼んだだけだけど」

 

 

無意識のうちにでた言葉。訊かれてようやくつばきも理解したようでちょっと気恥ずかしくなったのか少し顔を赤くしてそっぽを向いて歩き出す。その様子にニヤニヤしながらみるあかねとみゆき。キャンディは楽しそうだと鞄の中ではしゃぎ、ゲキリュウケンはやれやれと半ばあきれ気味に溜息。

 

 

(…でも、なんだろ?この感じ・・・・ちょっとだけ、チクチクする・・・・)

 

 

笑顔でいながらも、仲良く並んで歩く二人をみてみゆきは少しだけ胸を押さえる。それに気づいたあかねがどうかしたのかと訊くと「なんでもない」とまたすぐに笑顔に戻り「私も混ぜて!」と二人の間に入っていく。首を傾げながらもあかねもそれに続く。

 

楽しそうなはしゃぎ声が、夕暮れの帰り道に響いた。

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