スマイルプリキュア!~魔弾剣士と5人の戦士~   作:tubaki7

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Episode15

 

昼休み。七色が丘中学校では給食はない。その為個人が弁当を持参するか、食堂の売店で買うかのどちらかになっており、つばきは売店でのパン争奪戦を制しご満悦の顔で現在むさぼっている。一口かじればバンズに挟まれたジューシーな肉と野菜のハーモニーが絶品なハンバーガーとウーロン茶である。

 

 

「え~!?やよいちゃんのお弁当って、キャンディ!?」

 

 

何をバカなことをと慌てて振り向くと、そこにはやよいの持参した弁当箱にでかでかと存在感を放つキャンディがいた。

 

 

「おまえ、いくら腹が減ってるからってなにもそこまでしなくても・・・・!」

 

「違うから!」

 

 

矢継ぎ早に否定するやよい。よく見て見ればキャンディをイメージしたもので、顔は白米で瞳は海苔を切ったものを貼り付け耳は丸くした卵焼き、リボンはウィンナーを切り取り、頬は桜でんぷん。そして顔にある装飾などは人参をハートの形に切り取ったものだ。周囲にはからあげ、ブロッコリー、プチトマトなどなんとも手作り感あふれるものとなっている。

 

だが、驚くべきところはこの弁当、かなり完成度が高い。一瞬見間違えた(本物はしっかりとみゆきの鞄の中から顔を出している)ように、彼女の手先の器用さがうかがえる。

 

 

「これ、もしかして手作り!?」

 

「うん、ちょっと作ってみたくって」

 

「やよいって昔っからこういうとこ器用だもんな。・・・・他はダメダメなのに」

 

「一言余計だよぅ・・・・」

 

「上げて落とす。これぞつばきクオリティ。…にしてもホントスゲーな」

 

 

つばきとみゆきがやよいの弁当にくぎ付けになる中、遅れてきたあかねがひょっこり現れから揚げを一つ頬張った。

 

 

「あ゛~、キャンディを勝手に食べちゃダメクル!」

 

「あかん、むっちゃおいしい」

 

「クル…」

 

 

その会話はどうなんだ、と心中でツッコミを入れてふと視線をあげる。するとなにやら不機嫌そうな顔でこちらに歩いてくる女子生徒が二人。ヤな予感しかしないと感じつつ、キャンディを半ば強引に鞄へ押し込む。突然のつばきの行動に怪訝な表情をする二人だったが、それがすぐにどういう意味かを察して何事もなかったかのように会話を再開させる。

 

 

「ちょっとあなた達、移動してくれない?」

 

「ここはあたし達の場所なの」

 

(ああ、やっぱそういう類か・・・・)

 

 

心底めんどくさそうな顔をするつばき。

 

 

「私たち、いつもここで食べてるの」

 

 

苛立ったように語調を尖らせる。何様のつもりだとネクタイピンを見て学年が一つ上だということを確認する。中学三年にもなって食事の場所が先を越されていたからといってこの荒れよう・・・・。

 

 

(ちっちぇーな)

 

「早い者勝ちとちゃうんですか?」

 

 

それにあかねが反論。それに学年が下なんだから譲るのが当たり前だと言い張る相手。二対一の構図がすかり出来上がってしまっている為さすがのあかねもいつもの勢いがなく、さらに体育会系というノリが幸いし口どもってしまう。どうしたらいいかわからず両者をかたづを呑んで見守るみゆきとやよい。言い争いはさらにヒートアップし、これはマズいかと思った時、違う声がさらに乱入してきたことに視線が集まる。

 

 

「先輩…たとえ先輩でも、後から来て場所を横取りするのは、おかしいと思います」

 

 

きっぱりと言い放つのは緑川なお。つばきの知っている限りでは一番こういうのが大嫌いな女の子だ。

 

 

「横取りだなんて・・・・!」

 

「中庭はみんなの場所です。先輩たちの言うことは、少し筋が通ってないとおもいます」

 

「少しってか、かなり通ってない気もするけどな」

 

 

そして火に油を注がごとくつばきが呟いた。

 

 

「あら、貴方よく見たら噂の・・・・」

 

「確か、アレよね。暴力事件起こしたって言う…」

 

 

女子生徒が言った言葉にみゆきは首を傾げる。

 

 

(暴力事件?つばき君が・・・・?)

 

 

にわかに信じがたいとみゆきはつばきを見る。たしかに彼は荒っぽいしどちらかと言うと意地悪な男の子という分類にみゆきは認識している。だがそれ以上に他人に対して思いやりを持ち誰かを傷つけるようなことはしないはずだと理解している。だが、先日のやよいとの一件といいどうも自分のしらないことがまだありそうだとみゆきは思った。

 

 

「貴方たち、よく一緒にいられるわね?もしかして同類・・・」

 

「違う。つばきは、そんなことぜっっったいにしない。何も知らないのに、噂だけで判断するのって浅はかですね?」

 

 

まさに一触即発。今にも取っ組み合いが始まりそうな雰囲気になる。みゆきとやよいは身を寄せ合いオロオロとし、キャンディはあまりにもの迫力に鞄の中で縮こまっている。あかねは「なにしてくれてんねん!」とつばきに小声で叱咤し、つばきは「これ俺が悪いのか!?」とリアクション。そんな彼をやれやれとゲキリュウケンが呆れている。

 

 

「ハハハ、そうだね」

 

 

またもや新な乱入者。二人が振り返ればそこには現七色が丘中学校の生徒会長にして彼氏にしたい男子生徒ナンバーワンの入江直樹が立っていた。整った顔立ちに成績優秀文武両道。まさに絵に描いたような優等生だ。

 

 

「確かにきみの言う通りだ。人を見かけや噂だけで判断してはいけない。それに、中庭はみんなの場所だもんね」

 

 

そう言って微笑みを浮かべる。空気が一瞬にして変わったことに絡んできた女子生徒二人を見ればわずかに頬を染めているのがわかる。そしてつばきは心の内げこう呟いた。

 

 ああ、もっと面倒なのが来た、と。

 

僻み(ひがみ)にしか聞こえないようだが、これが事実なのだから仕方がない。入江の鶴の一声もとい、鶴の一笑みでガラリと態度を変えた二人は此方に謝罪して去って行った。

 

 

「・・・・って、俺にはなんにもないんかい!」

 

「お、ええツッコミや」

 

「緑川さんありがとう!」

 

「あたしは当たり前のことを言っただけだよ。それに、友達があんな風に言われて黙ってるなんてできないからね」

 

「あらやだイケメン」

 

「前言撤回」

 

「冗談だっての。それよりこれからいつものか?」

 

 

つばきがなおの持っていた荷物を指さして言う。明らかにこれから昼食という荷物でないことから彼女がサッカーの自主練習をすることを予想する。

 

 

「うん。それじゃ!」

 

 

颯爽と現れ、颯爽と去っていく。どこぞのヒーローみたいだ。横を見れば、何やら目をキラキラさせているつばき命名、起爆剤系女子星空みゆきが何やら閃いたようにニコニコしている。正直、またかと思うもこれも半ばバカにできないと本気で思う。

 

 

「…もしかして」

 

「そう!そのもしかしてだよ。さっそく放課後に練習覗いてみよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、放課後。部活動への強制入部制度がないこの学校では終業と同時に下校することになるが、部活動に加入している生徒たちはこれからスポーツや文化活動に精を出す頃。一際人だかりのできる部活動の練習風景がある。

 

 広いグランドに敷かれた白い線。綺麗に真中で区切られ、両サイドに鉄骨でくくったネットを貼り付けたゴールを配置し、白黒の球を足を用いて転がし指定の場所に入れ、点数を競う、世界でもっともポピュラーなスポーツとして親しまれているアレが行われている。七色が丘中学サッカー部、女子の方の練習風景だ。普通はこういうものは男子に目が行きがちだが、生憎とこの学校のサッカー部はなぜか女子サッカー部しか存在しない。以前はあったそうだが部員の加入がなかった為廃部になたらしい。

 

では、なぜ人だかりができているのだろうか。理由は至って簡単だ。現在、一人の女子がエースナンバーのゼッケンをつけてコート内を縦横無尽に駆け回っている。華麗な足さばきは素人目にはボールがくっついているんじゃないかと錯覚してしまうくらいに凄い。ひとたび彼女にボールがまわればそれはすなわち、得点を意味するというほどに。さすがは一年の内からそうそうにレギュラーを勝ち取っただけはある。

 

緑川なお。二年二組の姉御とも言われている頼りがいのある女の子だ。

 

ゴールが決まれば一際大きな歓声があがる。主に、女子から。

 

 

「私、4人目のプリキュアは緑川さんがいいと思う!」

 

「…わかったよ、もう降参だ。好きにしろ」

 

 

顧問の教師がホイッスルを吹いて練習は終了となる。それを機になおに突撃しようと試みるが・・・・

 

 

「相変わらずすんごい人気やなぁ、これじゃ近づけへん」

 

 

練習しているだけでもアレだ。終わったともなればファンが詰めかけるのは当然と言えよう。が、みゆきは果敢にもその輪の中へと飛び込んでいく。――――プリキュアというNGワードを叫びながら。

 

 

「アホ!」

 

つばきにひっぱたかれてうずくまるみゆき。目じりに涙を浮かべて「なにすんのぉ」と恨めしそうに見上げてくる。

 

 

「大勢の前でンな重要かこと漏らすな。それに、もうアイツならいないぞ」

 

「え!?――――そ、そんなぁ・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっぷっぷ~」

 

 

納得がいかないみゆきはベッドに身を投げて不満そうに口癖をもらす。どうしてもなおにプリキュアになってほしいという衝動が収まらずに部屋のあちこちをうろうろしてみる。

 

 ふと、昼での出来事が頭をよぎった。

 

 

「暴力事件、か・・・・」

 

 

やよいといい、なおといい、自分の知らないつばきを知っている二人に少しモヤモヤとしたものを抱くみゆき。ほかの生徒たちがそれぞれ口にしている彼への評価は正直良くない。クラスメイトではあまりないものの、それでも疑念の視線を向ける者は少なくない。むしろ、あかねややよいと言ったつばきに積極的に関わっていく生徒の方が珍しい。みゆきはまだ転校してきて日が浅い。知らなくて当たり前だが、これはいくらなんでも酷いと思う。

 

 でも、それをどうこうできるほどの何かしらがあるわけではない。言い知れぬモヤモヤがまた大きくなりみゆきはベッドの上をゴロゴロと転がる。

 

 

「みゆきはつばきの事を考えるといつもこうクル」

 

「そう?」

 

「そうクル。悩んだり、笑ったり、とにかくちょっと違うクル」

 

 

キャンディの指摘で「う~ん」と考えてみる。

 

 

「そういえば私、男の子とあまり喋ったことなかったかも」

 

「クル?」

 

「昔ね、私が今よりももっと小っちゃかった頃のことなの。その日は幼稚園もお休みで――――って、そうだ、お休み!」

 

 

何か閃いたように立ち上がる。いきなり立ち上がったことにキャンディは転がり落ちてしまう。

 

 

「明日は土曜日!お出かけしよう!」

 

「お出かけクル!?」

 

「うん。緑川さんに会いに行くの!そうと決まれば連絡連絡~」

 

 

上機嫌で部屋を出ていくみゆき。明日晴れることを願って、彼女は電話の受話器を握った。

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