スマイルプリキュア!~魔弾剣士と5人の戦士~ 作:tubaki7
今宵は日曜日。春麗らかな穏やかな日曜日。こういう日はただひたすらゴロゴロ過ごしてダメ人間の限りを尽くす、至福の時。今日はさくらも友人と出かけていていないし自由にしたい放題――――だったのだが。
「どうしてこうなった・・・・」
「だって私引っ越しきたばかりだもん」
壮大な溜息に返すのは昨晩突然電話してきたみゆきだ。「緑川さんの家へ連れてって!」と昨晩要件と日時を伝えるなり一方的に電話を切った為、仕方なく行くことに。何が楽しくてこんなことしなければならないんだと愚痴を垂れてはいるものの、つばきとしては久しぶりの緑川家。もう数年近くは足を踏み入れていないので少しのドキドキもあるが、やはりメンドクサイというのが勝っている。学校に行けばイヤでも顔を合わせるし、避けていても向こうから絡んでくるので正直一日でも目にしない方が貴重である。
が、こうなってしまってから嘆いても仕方ないのでこれぐらいにしてみゆきを後ろに引き連れて歩く。と言っても、ご近所なのでそう離れてはいない距離にあるので散歩と思えばどうと言うことはないし本人がいなければ諦めて帰るだろう。そう、思っていた。
「あれ、つばき。…に、星空さんも。珍しい組み合わせだね?」
「空気読めやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ひっ!?」
◇
「どうしてこうな・・・・あれ、なんかデジャビュ」
「いや~悪いね、手伝わせて」
「大丈夫大丈夫。ね、つばき君?」
「いつかゼッテー泣かす」
大量の買い物袋を一方的に男子だからという理由で全て押し付け、みゆきはというと僅かに残ったエコバッグのみを肩にかけて歩く。これが女の子の買い物に付き合わされる彼氏の気持ちと言うやつかと理解すると、絶対に女子とは買い物にだかけまいと頑なに誓うつばき。
「ごめんつばき。もうちょっとだから」
「あ、緑川さん。私話があって・・・・」
「話?」
「うん。あのね、実は私とあかねちゃんとやよいちゃんと――――あ、つばき君もなんだけどね。プリ…」
と、みゆきの話が半分も消化されないうちに玄関のドアが横に開き、中からゾロゾロと子供たちが出てきた。なおを見れば「お姉ちゃん」と言い、つばきを見た一番大きな男の子が「シショー!」と言う。ちなみに彼女の妹弟を順に紹介すると、けいた、はる、ひな、ゆうた、こうたといった順になっている。つばきの事をシショーと呼んだのはけいただ。
「シショー、押忍!」
「いや、おまえの師匠は俺じゃなくてさくらの方――――」
「シショー!」
「・・・・はい、シショーですよぉ」
かんねんしたように肩を落とすつばき。「シショーってなに?」とみゆきがなおに耳打ちすると、
「けいたはね。つばきのお爺ちゃんがやってた剣道場の生徒なの。今はお母さんのよしのさんが引き継いでてね。つばき、こう見えてかなり強いんだよ?」
自慢げに言うなお。まるで自分のことのように話すその顔はどこか嬉しそうだ。それとは真逆に遊ぼう遊ぼうとせがまれるつばきは子供たちに手を引っ張られてうんざりしたような顔になっている。
「そうだ、星空さんもよかったウチでご飯食べていきなよ。つばきも、どうせ今日さくらちゃんお出かけしてるでしょ?」
「なんと、お前さては超能力者か何かか」
「おねーちゃん、ちょーのーりょくしゃ?」
「んなわけないでしょ。さっき買い物してる時にバッタリ会ったの。てか、そのノリやめて。ウチの弟妹たちにうつってるでしょ」
「今度は病原菌扱いかよ・・・・」
どんな時でもこういうノリと扱われ方は変わらないんだなと軽く感心するみゆき。なおの「で、どうする?」の問いかけに少し遠慮がちに頷いて中へと入って行った。玄関で靴を脱ぐのだが、ここで彼女の家族の育ちの良さが窺える場面が。誰一人として、靴を脱ぎっぱなしにしないどころかみゆきやつばきの靴まで揃えて置いていく。それに驚きつつもなんだか微笑ましくなりながらつばきは居間へ、みゆきはなおと共に台所へと向かう。
必要な材料とそうでないものを分け、調理器具や調味料をそろえる。手際よく動くなおを後ろから見ていて感嘆の声をもらした。
「すごい…」
「お父さんとお母さん、町内会の集まりで出かけてて。それにこういうの結構好きだから。下の子たちのお弁当とか作ってたらいつの間にかね」
やよいといい、こう女子力の高い女の子が多いのはちょっと同じ女の子として負けた気分になるのはなんでだろうと軽く落ち込んでいると、スカートをちょんちょんと引っ張られる感覚に振り向く。「おねーちゃん、遊ぼ?」と言うのはひなとゆうただ。手をひかれ、連れていかれた先ではすでに汗を額に光らせているつばきの姿が。
・・・・いったいどんなハードな遊びをやってたんだ。
「おお来たか生贄よ」
「生け・・・・」
「次鬼ごっこやろ!」
なんとも子供らしい。少しウキウキするみゆきだが、隣をみるつばきの顔は険しいものへと変わっていることに気付く。
「ど、どうしたの?そんなコワイ顔して」
「いいかみゆき。この家の遊びはすべてにい置いてスタイリッシュかつワイルドなんだ。鬼ごっこだといってナメてかかるととんでもないことになるぞ?」
なにを言ってるんだこいつは。そんなニュアンスの視線を向けるとつばきは今度は引き攣った顔で指さす。そこには、おもちゃにされあれやこれやと投げられる哀れなゲキリュウケンの姿が。
「おまえもああなりたくなけりゃ全力で逃げろ。いいか?もう一度言っとく。この家の遊びは全てにおいてスタイリッシュかつワイルドだ」
「そんなことよりアレなんとかしようよ!?なに流暢に雰囲気出してやってるの!?」
《つばき、おいつばき!この子供たちをなんんとかしてくれ!》
「鬼ごっこ・・・・また恐ろしい企画を持ち出しやがって・・・・!」
「だから何言ってんの!?というか、なにその数々の修羅場を潜ってきたみたいな顔は!」
「逃げるぞ!」
「逃げるぞって、え、ゲキリュウケンは!?」
「ゲキリュウケン・・・・おまえの犠牲は無駄にしない・・・・!」
まるでどこぞの漫画の見せ場みたいなセリフと雰囲気を醸し出しながらみゆきの手を引いて立ち上がるつばき。そのことに先ほどのツッコミのテンションとはうって変って急に恥ずかしくなって顔を少し赤らめ俯く。父親以外に握った初めての男の手。少しごつごつしてて、大きいその手は、自分の手をすっぽりと隠すまではいかないまでも、大きく見えた。
「さらばだ相棒!」
《おのれつばきィィィィィィィ!!!》
いい雰囲気が、台無しである。
◇
それからキャンディがおもちゃにされたり、ゲキリュウケンを取り戻したりと色々あり昼食。冷めやらぬテンションはその瞬間まで続き、今は目の前の土手下の芝生の敷かれた遊び場で子供たちが仲良くサッカーをしているのを寝そべりながら見ている。ようやく訪れた穏やかな時間につばきは面一杯躰を伸ばす。並びはなお、みゆき、つばきの順だ。
「ごめんね二人とも。なんか色々と」
「そんなことないよ、こちらこそお昼ご飯ご馳走様」
「・・・・しっかしいつ見てもすげーよ。あんな沢山の兄弟いて、よくあれだけパワフルに動けたもんだ。さすがだな」
「大したことじゃないよ。一番上のお姉ちゃんだもん。それに、弟たちと一緒にいると楽しいし」
躰を起こして胡坐をかくように座る。見つめる視線の先には、楽しそうにはしゃぐ兄弟たちの姿が。
「あたし、家族が大好きなんだ。友達やクラスのみんなもだけど・・・・でも、やっぱり家族といると心が落ち着くっていうか」
そう話すなおの顔はどこまでも穏やかで。そんな彼女の横顔をみたみゆきはというと。
「勇気があって、かっこよくて、優しくって・・・・うんっ!やっぱり決まり!あのね、一緒にやってほしいことがあるの!」
立ち上がったみゆき。そこへあかねとやよいも合流し―――――なぜかサッカーをする羽目に。
「どうして・・・・って、これもなんかデジャビュ」
〔最初のも合わせて今日で3回目だな。面倒事に巻きこまれやすい体質だと言っていたが、どうやら本当みたいだな〕
「言わないでくれ、哀しくなる」
「よーし!俺たち家族の固い絆をみせてやる!」
「んな、ウチらかて、チームワークで負けへんでぇ!」
やる気のないつばきなど余所に盛り上がる一同。ボールをコートの中央の円に置き、なおとあかねがにらみ合う。静かな緊張感の中、なおが投げたコインが地面に着いた瞬間に二人が動き試合開始となる。
しかし、コインが落ちても試合が始まることはなかった。
突如としてうな垂れ始めたなお達。口々にマイナスの事ばかり言うその光景に4人は空を見上げた。さっきまでの晴れ晴れとした青空じゃない。心の中の黒い負の部分を無理くり引き出されるような居心地の悪いこの感覚。
「良い子はいねーがァ!」
「この前の赤鬼さん!」
「それを言うなら、泣く子はいねーがァ!?や」
関西人の性か、ツッコミをするあかね。それに反応したアカオーニが巨体をズシン、ズシンと揺らしながら此方に歩いてくる。手にした金棒を振りかざし、空を切るかのごとく振り下ろしてくる。
「ゲキリュウケン!」
つばきが腰だめに構え、ゲキリュウケンを実体化させて金棒を受け止めてから流し、横一閃に振りぬく。アカオーニはその巨体からは想像もできないようなステップで後方へと一旦さがる。
「みんな、プリキュアに変身して戦うクル!」
「やっぱり夢じゃなかったんだ…」
「怖いなら帰るか?」
つばきの言葉にやよいは首を振る。
「もう逃げないって決めたんだもん。私もやる!」
「みんながいる、だから大丈夫。行くよ!」
プリキュアとリュウケンドーに変身する。
「パー!?この前はチョキだったのに今度はパー!?負けたオニ!」
なにやら驚愕しているアカオーニ。見ると、ピースのじゃんけんがパーになっていることに気付く。
「今日のピカリンじゃんけんは、パーでした」
「すごいおもしろい!」
「キャンディはチョキだから勝ったクル!」
もう色々とツッコミが追いつかないと諦めるサニー。だが、これだけは拾わないわけにはいなかかった。
「それどのへんがチョキやねん!」
「もう怒ったオニ!出でよ、アカンべー!」
赤鼻を掲げ、サッカーゴールを媒体としてアカンべーを生み出すアカオーニ。
アカンべーは鳥のような形をしており、広げた大きな羽をはばたかせて空中へと上がる。くるりと方向変換し開いた頭部からは、数発のボールが打ち出されている。その弾道が行き着く先は――――なお達。それにいち早く回り込んだハッピーはスマイルパクトに気合いを入れ、ハッピーシャワーを照射。なんとかアカンべーの攻撃を阻止することに成功するが、それで身動きが取れなくなり煙を貫いて現れたアカンべーのネットに捕まりグルグルに丸められてしまう。それを追いかけ救出しようとするサニーとピースだが、攻撃しようと拳を振りかぶったところでハッピーを向けられ、攻撃に躊躇いができてしまう。そこを蹴り飛ばされ地面をバウンドし、土煙を上げて落下した。橋の上で満足そうにその様をみて笑うアカオーニ。
『空飛ぶなんてアリかよ!』
〔リュウケンドー、雷電武装だ。サンダーイーグルなら、奴と戦える!〕
『サンダーモードだな。よし!』
キーホルダーからサンダーキーをゲキリュウケンに装填し、サンダーモードへとチェンジする。そして新たにサンダーイーグル召喚の為のキーを装填し、呼び出したのは黄色の鷲。雄々しく咆哮を上げ、リュウケンドーの頭上を舞う。
『よっしゃ、行くぜ!』
サンダーイーグルが変形し、翼となってリュウケンドーと合体する。それを見たピースが「おぉ!!!」と興奮しながら見上げる。
「なんかかっこよくてずるいオニ!やれ、アカンべー!」
アカンべーが飛翔しサンダーウィングリュウケンドーを追う。高速で空を飛び回る二人は互いに牽制しあいながらも攻撃のチャンスを窺うが、空を飛べるという条件をクリアしただけでリュウケンドーにはアカンべーを攻撃することができない。ハッピーをまずは解放しなければと動くも、それをさせまいとアカンべーが逃げるのでそれもままならない。
歯がゆさがリュウケンドーの焦りを煽る。
「こんな奴ホッといておけばいいものをオニ」
「ほっとけるかい!ウチらの絆は・・・・まだ、出逢ってから日が浅いけど…これからもっと固くなるんや!」
「サニー…」
「絆・・・・」
呟いて、なおが起き上がる。
「何が絆オニ!仲間、家族。そんなものはいつかぜーんぶバラバラになるオニ。だったら今、全部バラバラにしてやるオニ。やれ、アカンべー!」
アカオーニの命令でリュウケンドーを置きかけていたアカンべーが突如方向をかえ、ピースとサニー向けてボールを放つ。だがそれは当てることを目的としていないことがすぐにわかったリュウケンドーはすぐさま方向変換。駆けるアカンべーよりも先に回り込み、アカンべーを真っ向から止める。
「リュウケンドー!」
「つばき君!」
「へ、つばきって、まさか!?ていうか、その声はあかねにやよいちゃんも!?」
『だぁ、もう正体バレてるし・・・・!』
「つばき!」
『ああそうだよ、つばきだよ・・・・っ、』
雄叫びと共に雷ほ放電しながらリュウケンドーはアカンべーを放り投げる。なんとか守ることには成功したが、今ので少し力を使いすぎたのか膝を着くと同時にサンダーモードもサンダーイーグルも消えてしまう。どうやらこの形態はエネルギーの消費が激しいようだ。
少し息を荒くするリュウケンドー。疲労も見える。そんな彼に再び向かってくるアカンべーに向け、なおは力の限りボールを蹴った。ボールは見事命中し、アカンべーを止めることに成功すると両手を広げ立ちふさがった。
『バカ、なにやってんだお前!?早く逃げろ!』
「逃げない!それに――――家族はバラバラになんかならない!永遠に無くならない!」
家族――――そのワードと共にフラッシュバックする忌々しい記憶。だがリュウケンドーは首を振ってそれを追い出し、立ち上がってなおの前に出る。
『さがれ…』
「つばき…そこをどいて。私にとってはあなたも家族みたいなものなんだ。もうこれ以上は――――」
『だったら、尚更きけねーな。家族だってんなら、俺にも守らせろよ』
ゲキリュウケンを構えるリュウケンドーを見て、一瞬目を閉じる。その背中に安堵を覚え、すくっていた僅かな恐怖心を払い、目を見開く。
「あんたたちがどこの誰かは知らないけど、家族の絆を断ち切ろうって言うんなら・・・・あたしが戦う!」
次の瞬間、光が弾けた。