スマイルプリキュア!~魔弾剣士と5人の戦士~ 作:tubaki7
どうしたもんか、そう呟きながら腕を組んでうーんと呻りつつ思考を巡らせる。
プリキュア、メルヘンランド、ロイヤルクイーン、やることの密度は高いし難易度もかなりのものだ。いったいどこまで自分の人生はハードモードに行けば気が済むのかと軽く居もしない神様に嘆いてみるも答えは出ることなんて当然ない。深いため息をつくとゲキリュウケンが話しかけてきた。
[ため息をつくと幸せが逃げていくという人間のことわざにあるらしいが]
「もうとっくに逃げる幸せもねーよ。つか、お前公共の場で話しかけんなって言ったろ」
[仕方がないだろう。つばきの魔力値が低すぎて念話が使えんのだからな]
ぐうの音も出ない。魔力、つまりつばきが元々持っているゲキリュウケンやマダンキー以外の精神エネルギーのことを意味しそれを総称して魔力と言う。この魔力、プリキュアにもあるらしいのだがマダンキーを使わないプリキュアにはあまり関係のない話ともいえる。
話を戻そう。つまり、つばきの場合、魔弾騎士のくせに魔力がビックリするくらいに低いということらしい。ゲキリュウケンの調べでは普通は5あるものが2しかないらしい。つまり、ミジンコクラスの魔力しかないと言うことだが、それなのに自分を扱えたあげくリュウケンドーにまで変身できるのが不思議で仕方ないとのことだ。
「おはようつばき君!」
通学路の向こう側にピンクのロール頭が揺れるのが見える。なんともあさからハイテンションな娘だと思いながら挨拶を返そうとしたつばきだが、後頭部に突如衝撃が走ったことに悶える。地味に痛い。
「おようさん、今日も・・・・って、いつの間に星空さんと仲良うなったんや?」
「昨日迷子になりかけてたから助けただけだ。それから日野、頼むからお前一発殴らせてくれ。一発でいいんだ」
「あんたそれ乙女にするお願いとちゃうやろ」
「仲良いね二人とも」
「「よくない」」
いや仲いいって。そう心の中でつぶやきながら苦笑を返すみゆきだった。
◇
プリキュアは全てで5人。それがゲキリュウケンが持ちうる全ての情報だった。現在は星空みゆきことキュアハッピーで一人。あと残すこと4人ということらしいがはたしてこの学校内でその人材確保ができるのかが激しく疑問だ。そもそもそう都合よくこの学校に残りの4人が存在しているなんてそんな都合のいい展開があるわけがないとつばきは中庭の池、その畔にある小屋のような場所でパンを貪りながら思考する。こう見えて、考えることはちゃんと考えるタイプだ。
ゲキリュウケンの話はこうだ。プリキュアにはそれ相応の魔力の持ち主が覚醒できる。が、魔力を持っているからと言って皆が皆プリキュアになれるわけではない。“資質の他にプリキュアになるにふさわしいモノをもった人間のみ”が覚醒できるらしいのだがそれがなんなのかはわからないとのこと。結局のところ今わかっている情報はこの学校内で魔力の高い人間が4人いること。しかし、それが誰なのかはわからない。つまり特定まではできない。・・・・・できなこと尽くしか。思考を切る。
「どん詰まりか。これで他のメンバー探せなんて無理だろ」
「何の話?」
「プリキュア集めの話」
「へぇ・・・・」
「・・・・んだよその目は」
「いや、つばき君もそんな真面目に考えることできるんだって思って」
「おまえの中での俺っていったい・・・・」
「イジワルさん」
「ぎゃふん」
弁当の入った袋を持って現れた星空みゆきにため息をつく。いちどこの少女とはとことん話し合った方がいいかもしれないと本気で考えだすつばき。
「と、冗談はそれくらいにしてさ。私二人目は日野さんがいいかな~なんてお――――」
「却下だ」
ですよね~とはみゆき。当たり前だとはつばきだ。そしてやっぱりわかってないと息をつき、
「いいか?俺達は敵さんにとっちゃ邪魔以外の何物でもないんだ。仮に日野をプリキュアに誘ったとして、覚醒できないまま戦闘になったらどうする?彼奴を護りながら戦えるか?無理だね。俺は無理だと断言できる。昨日今日変身して初陣だった俺達がコンビネーションのコの字もできてない内から他人を護りながら戦うなんてリスクが高すぎる。もっと慎重にだな――――」
「日野さん、プリキュアやろ~!」
「フリーダムすぎんだろおまえ!?」
「ごめん。無理や」
「そしてあっさり断られた~…」
「でしょうね」
◇
「大 爆 笑 !」
「笑わないでよ・・・・虚しくなる」
みゆきが断られた理由。それは「部活があり、さらに大会が近いから暇がない」ということだった。コレを笑い話としないでなんとするとばかりに笑い転げるつばき、その姿にムッときたみゆきは「えい!」と力んで対してこもっていない力で背中を叩く。が、それが天罰への引き金となったらしくバランスを崩して土手を転げ落ちる。夕暮れの、しかも下校途中という時間帯にも関わらず人がいなかったことに心底安心するみゆき。もしあと少し変えるのが遅かったらちょっとしたサスペンスドラマみたいなことになっていたかもしれないと思うとゾッとする。
「生きてる~?」
「おまえ、キャラ変わってないか?」
「そんな気がする…」
痛さはない。芝生がいいクッションになってくれたらしいが実際受け身を取っていたためそこまで衝撃はないがそれでも危なかったと本気で思う。
「・・・・なにやってるんやあんたは?」
「おう日野。今日のパンt――――へぶう」
言う前に顔面にバレーボールの強烈な一撃。これは当然の報いだと鞄の中のキャンディとうんうんと頷く。
「星空さんもようこんな奴と一緒におるな」
「え~っと。それには深いワケがありまして」
「・・・・ハッ、まさかそういう理由――――」
「少なくともお前が想像してるようなことではないから安心しろ。つか、お前こんなとこで何やってたんだ?」
恰好からして下校途中というわけではない。制服ではなく体操着、そして両肘と膝についているのはバレーボールをやっている人なら誰もが持っているサポーターだ。それを見る限りは・・・・
「一人で練習か?」
「ん・・・・まあそんなとこやね」
あははとばつが悪そうに笑うあかね。その横顔はどこか哀しそうに見えたみゆきは反射的に言葉を言う。
「私達も手伝えないかな?」
「・・・・はい?」
「だから、私達もなにか手伝えないかなって」
突拍子もない発言につばきは心底嫌そうな顔をするも、死角からきたみゆきのひじ打ちにより悶える。この女、扱い方を心がけてきたのはまあ認めるとしても本当に転校してきた当初の純粋でキラキラしたモノはどこへかなぐり捨ててきたのか、そう考えるとちょっと悲しくもある。
だが、今はそんなことはどうでもいい。
「手伝うって、何を手伝うんだよ?」
そう。この猪突猛進娘はなにも考えていないのが明白。人の役に立ちたいとか、力になりたいという考えは立派だし否定はしない。だが計画性が微塵もない善意ほど悪意に近いものはない。つばきはそういう考え方だが、みゆきはそんなことさえもどうでもいいらしい。とにかく、目の前で困っている人がいたらかたっぱしから助けてまわる。無謀だ。
だからこそ、ストッパーが必要になる。
「・・・・しゃーない。まずは相手だな。男の俺でいいなら練習相手になるぜ?」
「ええんか!?」
「乗りかかった船だし、まあ、暇だしな」
「つばき君て、案外優しい?」
「案外は余計だっての。ホラ、やるぞ」
そう言って鞄を置く。オレンジに染まる夕焼けが、世界を染め上げた。