スマイルプリキュア!~魔弾剣士と5人の戦士~ 作:tubaki7
ありえない。突如起きた驚愕の出来事にウルフルンは驚きを隠す余裕もなく眼前にいる少女を凝視する。先ほどまで絶望に沈み、バッドエナジーを発していた人間が、今、目の前でその絶望から抜け出し此方に向かって怒声を飛ばしてきた。あの二人のように、最初からこの空間で活動しているのであればまだわかる。前例もあったし、うなづける。理解できる。だが此奴はどうだ?最初はバッドエナジーを放出し項垂れていた筈だ。だが今現実にこうしてアカンべーに対しボールをぶつけるという行為をしている。
ありえない。もう何度目かの驚愕をようやく脳内で整理した後、ウルフルンはリュウケンドーを見る。まさか奴の言葉で絶望から抜け出たとでも言うのか。そんな馬鹿な話があってたまるかと今一度あかねを見て、リュウケンドーに対し言葉を発する。
「貴様ァ、いったい彼奴になにをしたァ!?」
『何を?違うな。日野は自分の意思で絶望から戻ってきた。それも、友達を助けたい、なんて単純な理由でな。お前が心底嫌ってるものが、お前が作り出した絶望を打ち破ったんだ』
たったそれだけ。それだけで、そんなことでひっくり返すなど聞いたことも見たこともない。
これが、人間の持つ?希望?だとでも言うのか。だとしたら、コイツは――――
「星空さんとそいつはな。ウチの我儘に最後まで付き合うてくれたんや。自分の時間削って、つばきなんか痣も作りながら相手してくれた・・・・それで、ようやく立てたんや。念願の、あとたった数分かもしれんけど、それでもめっちゃ嬉しかった。二人のおかげで、ここまでやっと来れたんや。そんな二人を――――友達を!傷つける奴は、絶対に許さへんで!」
何かが、弾けた。日野あかねという少女の中でなにかが変わった。それを感じると同時にオレンジ色の光と共に出てくる六角形の物。それを握れば手の中で光り輝き熱を帯びる。オレンジ色に輝くそれはまるで・・・・
『魔弾キー・・・・?』
「太陽燦々、熱血パワー。キュアサニー!」
◇
「な、なんじゃこりゃ~!?」
言われるがまま、なすがままにした初めての変身は予想に反してかなり違ていた。普通、変身といえばつばきのようなヒーローものをイメージするだろう。かっこいい鎧や武器、そして勇ましく敵と戦う。それが自分の持つヒーローというものへの印象だ。だがこれはどうだ。どちらかと言われればみゆきの方と言える。オレンジの動きやすい服に髪型は団子になり、毛色も明るくなっている。それに何だか不思議と躰の奥底から力が湧いてくるような感覚がある。これが変身、これが――――プリキュアってことなんだろうか。
だが、それにしても。
「なんやのさっきの。口が勝手に動いて、太陽燦々てなに!?てか、このひらっひらとか髪型とかどういう仕組みなん!?」
敵前だというのにこのパニックぶり。あたりまえだがこのリアクションがなんともわかるハッピーからしてみればなんとなく懐かしさも感じられるわけで「ああ、やっぱそうなるよね~」なんてしみじみ呟く。突然服や髪型まで一瞬の内に変わったのだ。無理もあるまい。しかし、今は戦闘中でしかもピンチ。そろそろ戻ってきてもらわなければとリュウケンドーはパニックに陥っているサニーの背中を軽く叩く。それにより正気にもどったサニーが此方を見て再度驚く。
『いい加減慣れろ。戦闘中だ』
「あ、せやった…。あの狼、一回ぶん殴らんと気が済まへん!」
その意気だ、と笑うと色がオレンジに変わった魔弾キーを見つめる。エンブレムが表すのは―――炎。
『・・・・行くぞ、キュアサニー』
「おっしゃ!」
パン!と拳を打ち合わせ、駆けだすサニー。それを見てからリュウケンドーは新たに現れた魔弾キーをゲキリュウケンに装填する。
『ファイヤーキー、発動!』
〔チェンジ。ファイヤーリュウケンドー〕
『火炎武装!』
リュウケンドーが炎に包まれ、燃え上がる。しかし本当に燃えているのではなく、溢れだした魔力が炎となって鎧にまとわりつき、それにより炎に包まれているように見えるだけだ。リュウケンドーはそれを形に制御し、鎧に炎の力を加えてモノにする。名の通り、火炎を武装としたのだ。
『ファイヤーリュウケンドー、来迅!』
「二人の力でアカンべーを浄化するクル!」
『タイミングを合わせろよ、サニー!』
「え、ちょ、タイミングて!?」
『こういう展開は合体技って決まってんだよ。ホラ、やるぞ!?』
此方のこともお構いなしに問答無用で事を進めてるリュウケンドー。何がくるのかと構えるアカンべーとウルフルンだが、すでに何が起ころうとしているのかは場の空気を読んで悟っていた。これは、もう勝機はない、と。故にウルフルンは今自分ができる最善の選択と行動にでることとする。そう、逃走だ。いくら幹部といえど命は大事。こういう時は撤退して次の作戦でも考えるとしよう。世の中切り替えが大事だ、と無理やり部下を置いて自分だけ逃げるという行為を正当化し、その場からテレポートで消えるウルフルン。それに気が付いたアカンべーだったが時すでに遅し。相手はもう発動体勢に入っていた。
「プリキュア・サニーファイヤー!」
イメージは単純。炎の球をバレーボールのアタックの要領で打ち出す。そしてそれをゲキリュウケンを掲げたリュウケンドーが受け止め、魔弾キーを装填する。
『プリキュア・魔弾龍・魔弾剣士。三つの力が今一つに!三位一体火炎斬り!』
炎を纏ったゲキリュウケンを手に跳び、そして振り下ろす。アカンべーが炎で焼かれ、浄化されていくのを背にしながらゲキリュウケンの刃が纏っていた炎も消える。
『闇に抱かれて眠れ・・・・』
断末魔を残し消えるアカンべー。浄化された赤鼻からは媒体となったいたデコルが落ちてきてそれをキャッチするキュアサニー。深く溜息をついて、ハッピーが一言。
「これで、一件落着・・・・かな」
◇
その後、試合は再開。元に戻った人たちはやはり前後の記憶がなく、全員が白昼夢を見ていたというなんとも呆気ないことで済まされあやふやとなり何事もなかったかのように試合は続行。結局負けてはしまったものの、あかねの表情にはやりきったあとの達成感と、どこか嬉しそうな色が見て取れた。
夕暮れの帰り道で、土手の上を歩く。他愛のない話で盛り上がる中、ふとあかねが何か思いつめた顔で立ち止まる。俯き、何かを考えるかのような姿にみゆきと二人して顔を見合わせ首をかしげる。やはり、さっきの戦闘のことが彼女に要らぬ恐怖心を植え付けてしまっただろうか。だとしたらそれはすまなことをしてしまったと謝ろうと口を開くみゆき。しかし、それはいらぬ心配だったと直後判明する。
「あの!この前の事・・・・プリキュアのことなんやけど、ウチ、やっぱりやってもええかな・・・・?」
遠慮がちに言うあかね。体操着の裾をぎゅっとつまんで照れながらも言うその姿に普段とは違ったギャップを見て少しドキッとするつばきを余所に、みゆきはじけたような笑顔が彼女の問いに答えを出す。
「もちろん!これからよろしくね、あかねちゃん!」
「あかねちゃん?」
「あ、ごめんなさい。嫌だった…?」
「んなわけないやん。むしろ大歓迎や!これからもよろしゅうな、みゆき!」
「ちょ、おまえな。プリキュアを続けるってことがどういう意味か――――」
「わかってる。でも、決めたことやかさかい。ちゃんと最後まで付き合うて」
溜息。これにはもう何を言っても無駄だと判断したつばきはどうしようもないと息をついたあと、踵を返す。
「…なにしてんだ。行くぞ、みゆき、❝あかね❞」
「…素直じゃないね」
「せやろ?」
こうして、三人にとって長い一日が幕を閉じた。
次回はメインヒロイン(仮)の黄瀬やよいのターン