魔法少女まどか☆マギカ[新説]~ヴァルプルギスナハト~ 作:マンボウ次郎
懐深くに斬り込めば、那月の間合い。
槍が相手なら、至近距離の接近戦が有利だ。相手の間合いの内側で、斬撃と灼熱のコンビネーションを見舞ってやる。
大きく振り下ろした那月の刃を、ユリの槍が正面で受け止める。那月は苦笑いを浮かべて
「私の全力を簡単に受け止めてくれちゃって、やっぱアンタ凄いよ」
ギリギリと剣を押し当てる。ギチギチと押し込む。が、その刃は槍の穂先で止まりユリには届かない。
「でもね……」
剣が炎を噴いた。炎の魔力をまとうフランベルジュは、斬るというよりも焼け焦がす魔力でその力を発揮する。
紅蓮の炎が、那月とユリを包み込んだ。
「どう? キテレツ少女さん。私は自分の炎で焼かれることはないけど、アンタはそうはいかないでしょ」
真っ赤に燃える炎がふたりを飲み込んだ。那月は炎の魔力を宿しているので、自分の炎に熱気は感じない。が、那月の周りは灼熱の塊と化した。空を焼き、天をも焦がす業火の魔法。
「さっさと降参しないと、本当に焼け焦げちゃうわよ!」
と言いながらも、那月は相手を殺すつもりはない。半ば脅しの炎で自分の力を見せつけるつもりだった。しかしユリは表情を変えないまま平然と、冷ややかな笑みを浮かべている。
「この……っ、冗談じゃ済まされないわよ!」
そんな余裕ぶった顔を見せられては、もう脅しでは済ませない。こうなったら本気の魔力で少しくらいヤケドを負わせて、痛い目に遭わせてやる。
那月のソウルジェムが激しく輝いた。フランベルジュが放つ炎の光が白い閃光となり、ふたりを飲み込む。
と、
パーン! という衝撃と共に、吹き飛ばされたのは那月だった。痛烈な勢いで弾き飛ばされて、そのまま地面に激突する。那月は路面に激しく叩きつけられ、身体中の骨という骨がバラバラになった感じがした。辛うじて意識は保ったが、激痛で身体が動かない。
そこへ空中からユリが追撃を向ける。細い槍の穂先を、那月の身体に目がけて繰り出した。この閃突はかわせない。回避が間に合わない。那月は咄嗟に左手に残った魔力で槍の軌道を変えようとした。観念動力(テレキネシス)で、槍の穂先をズラす……間に合え!
ガキーン!
槍の穂先は那月の親指と人差し指の間をすり抜け、右頬にひと筋のかすり傷を付けて路面を突いた。頬からタラリと赤い血が流れる。串刺しになることは免れたが、頬をかすめた十字槍の感触に那月は戦慄した。
「これであなたは一度死んだ。ふふ……次は外さないわよ」
薄墨色(はいいろ)の瞳が、冷酷に言った。三日月のように美しく、鋭利な眼が那月を見下ろしていた。長い銀髪からポタリと雨の雫が垂れる。この細くてしなやかな身体の、どこからこんな攻撃を繰り出しているのか。
いつの間にか雨は止み、どんよりとした雲の下で、ネズミは巨象に踏み潰されていた。
しかし、
「アンタも危ないところだったね」
那月は倒れたまま、口を歪めて見上げた。ユリの肩口がハラリとめくれている。といっても、服の端がほんの少しだけ斬れた程度。断面には薄い焦げ目が残り、ユリの白い肌が露出していた。が、身体に傷は見えない。
「お見事ね。私に傷を付けた魔法少女は、あなたが初めてよ」
そう言われて、那月は心の中で苦笑した。
傷を付けたって? 服が数センチ斬れただけじゃないか……。鍔迫り合いから弾かれて、勢い余ったフランベルジュの切っ先が偶然かすっただけだ。強がりで「アンタも危ないところだったね」と言ってはみたが、そのセリフにリボンを付けた皮肉で返してくるなんて、バカにするにもほどがある。
ていうかコイツ、槍の穂先はワザと外したんじゃ……
ユリの追撃の軌道は、那月の観念動力(テレキネシス)で逸れたようには見えなかった。直線的に那月の横をかすめたかに感じた。
もしかして、コイツのほうが紙一重の脅しだったんじゃ……
ユリは十字槍を引き抜くと
「今日は引き分けでいいわ。お互い傷ひとつでの痛み分けってことでどう?」
引き分け? 痛み分け? 冗談じゃない。やっとのことで服の端に傷を付けた私と、『ワザと』外して『かすり傷にした』コイツとじゃ、力の差は歴然じゃないか。これは素直に降参するしか……
「ハッ! 余裕かましてると、次は丸焦げにしてやるわよ」
降参なんてするわけないっ!
「ふふ……楽しみにしてるわ。でもその前に……」
ユリは魔法少女を解いて、なんとも上品な制服姿を見せると
「あなた中学生でしょ? 年長者には敬語を使うべきね」
と、相変わらず高飛車に言い放った。
ユリが着るブレザーの胸には、若葉のようなデザインに『一(いち)』の文字が入った校章。あれは、北夜見市に住む那月でも知っている見滝原の超有名学校、見滝原第一女子高等学校、通称『見滝原一女』の制服。
ぐっ、コイツ高校生か……。
見滝原一女といえば、県下ナンバーワンの名門女子高で淑女貴女の集まるお嬢様学校。トップクラスの成績者でも入学は超難関と言われ、将来は医者か弁護士か官僚かという、この国を担う才女を輩出している。
そしてこのキテレツ少女、よく見たら憎たらしいほどの美人ときたもんだ。才色兼備を地でいくチートキャラじゃないか。さらに魔法少女界でもナンバーワンだなんて、世の中の秩序をぶち壊すバランスブレイカー。
何もかもが那月の上を行く、この高慢で高飛車なキテレツ少女……いや、年上の高校生っていうなら少女とは呼びたくない。間違っても「先輩」などと媚びた呼び方は避けるとして……百歩譲って「蒼さん」か「ユリさん」?
「うっさいわね! いいから早く自分の街に帰りなさいよ! それから私の狩りにちょっかい出すのやめてくれる!? アンタの手出しは余計なお節介よ!」
敬語も敬称もない「アンタ」で上等。
年上だから何だってんだ。ここは私の街だ。この街の魔女は私が狩るんだ。どこかにいる『歯車のようなシンボル』を持つ魔女を殺すために、私は魔法少女になったんだ。
思いっきりタメ口で「アンタ」呼ばわりしたが、ユリは怒る様相もなく流れるような視線を那月に向けた。
「バカは長生きできないわよ? ま、あなたのそういうところは嫌いじゃないけれど」
私はアンタが大っ嫌いです! 二度と来るな、この公式チートめ!
ユリは長い銀髪をひるがえして那月に背を向けると
「それと……」
――ちゃんとグリーフシードで浄化しなさい。あなたのソウルジェム、少し濁ってるわよ。
と言いながら、カツカツと靴の踵を鳴らして去っていった。いかにもお嬢様らしい、優雅でしとやかな歩き方。足が長い。身体が細い。でも胸は、あんまりなかったように見えた。
「ふっふっふ……ひとつ引き分けた」
那月は仰向けに倒れたままニヤリと笑った。戦いの緊張感が解けたのか、いつもの那月に戻っていた。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡
「あの子、何を願って魔法少女になったのかしらね」
制服姿の蒼ユリが、雨上がりの北夜見市を歩いていた。その後ろを、キュゥべえがヒョコヒョコとついてくる。
「他人の願いを教えるのはルール違反だよ。君も知っているだろう?」
「あら、そうだったかしら。ただあの子、魔力の種類が普通の魔法少女と違う。炎を生み出し、物体までも操るあの力。あれはまるで……」
「魔法少女よりも魔女に近い、と言いたいんだろう?」
ユリは最初から、那月の異質な魔力に気付いていた。もちろんキュゥべえもそれは分かっている。
「ベクトルの違う魔力を同時に解放できる子は、那月の他にはいないだろうね」
魔法少女の魔法は、基本的にひとりにひとつ。ひとつの魔法を応用していくつかのバリエーションを持つことはあっても、普通は多重能力なんてあり得ない。が、那月は『炎(フランベルジュ)』と『観念動力(テレキネシス)』ふたつの魔力を同時に操っていた。そんなことができる魔法少女は見たことがなかった。
ユリは少しだけ思案してから
「もしかしてあの子、『やがて呪いとなる願い』で魔法少女になったのかしら」
と呟いた。
『希望』というベールの中に『呪いの種』を包んで、魔法少女になったのではないか、と言った。
魔法の使者であるキュゥべえは、どんな願いもひとつだけ叶えてくれる。金も地位も名誉も、幸も不幸も何もかも。その結果、過去を変えてしまうことになろうとも、悲惨な未来を描くことになろうとも、キュゥべえの知ったことではない。どんな不条理な願いでも、どんな非生産的な願いでも、必ず叶えてくれる。
その少女が魔法少女になること。そして魔女と戦う使命を背負うこと。このふたつさえ成れば、たとえこの世界が滅びても構わない。
那月が何を願ったのかを、キュゥべえは答えなかった。ユリが言ったとおり「やがて呪いとなる願い」だったのかどうかを、否とも応とも答えなかった。
だがユリは、キュゥべえの答えなど最初から期待していなかった。どうせ言わないだろうと。ただ、否とも応とも答えなかったのは、当たらずとも遠からずといったところだと確信した。確信したうえで
「そんな願いを叶えるなんて、あなたロクな死に方しないわよ」
目を細めてキュゥべえを見下ろした。さげすむような眼で、不敵な笑みを浮かべてキュゥべえを見下ろした。
「君は何を言っているんだい? 僕らの存在は『個』ではなく、ひとつの意識を共有する『端末』でしかない。だから僕には『死』という概念は当てはまらないんだよ」
声に抑揚なく、機械のように答えてくる。この『端末』は、否なら否、応なら応と言う。何も答えないのは図星だからでしょ?
分かり易いヤツね……
ユリは声には出さず、口の中でふふっと笑った。そして
「あの子はきっと、とんでもない魔女になるわね」
と言いながら、陽の沈む方へと歩いて行った。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆彡
あれから那月はすぐに起きあがり、柚葉の家に向かった。もちろん、魔法少女の姿は解いて。
蒼ユリとの対決は魔女の結界が解けた後、現実世界でやっちゃったんだよね。ついカッとなって、街中で魔力を使って道路を破壊しちゃって、人に見られてなきゃいいけど。
「誰もいなかったから大丈夫だと思うけど……」
ハリウッドの特撮映画も真っ青な魔法バトルが、こんな閑静な住宅街で繰り広げられたなんて知られたら、新聞やニュースを賑わす程度じゃ済まないだろう。叩きつけられてできた道路のヘコみは放置してきたけどね。だって私の魔法じゃ直せないもん。
「あれはきっと雷が落ちたんだよ。ピカって光って、ドドーーンて落ちたの」
雷は道路に落ちるっけ?
「ま、まあいいや。それよりも早く柚葉のところに行かないと。参ったなぁ……何て説明しよう」
あの時、女の子を押し付けて「いいから待ってろ」なんて突き放しちゃったからなぁ。きっと怒ってるだろうなぁ。泣き落としも、色仕掛けも、効かないだろうなぁ……あ、色仕掛けは封印したんだった。あれは失敗だった。
ガクっとうなだれるズブ濡れ少女が、長い塀の横を駆け抜ける。そうして那月が足を止めたのは、近代的な住居が立ち並ぶ北夜見市の一角にある広い敷地の邸宅前だった。そこには大きな木目の表札に仰々しい文字で
『宝条』
と掲げられていた。この塀の中には、新興住宅地の中でもひと際目立つ古いお屋敷が建つ。威圧的な表門の向こうに見える家屋には、瓦屋根に無数の襖。荘厳な庭園の奥には蔵まで完備。
この武家屋敷のような重苦しい家に住んでいるのが、口が悪くてズルい女、勉強嫌いで強引炸裂ガールの宝条柚葉さん、十四歳。
「う~ん、似合わない」
何をどう間違えたら、こんなお武家様の屋敷みたいな家にあんな現代っ子が生まれてしまうんだろう。ご先祖様もビックリしてるんじゃないかな。柚葉の家には今まで何回かお邪魔したことがあるけど、まるで戦国時代にタイムスリップしたような気になるんだよね。
恐る恐る、インターホンを押します。重厚な表門に、これまた似合わない近代的なインターホン。これがなかったら「御免!」って叫ばなきゃいけないのでしょうか。
「……はい」
すぐにしおらしい女性の声が答えてきた。大人の色気があふれる、遠慮深くて奥ゆかしい声。
「柚葉さんのお友達の、御上那月です」
「あら、那月ちゃん。待ってね、いま開けるから」
という優しい声からしばらくして、着物姿の女性が出迎える。柚葉のお母さんだ。
「いらっしゃい。柚葉は部屋にいるから上がって」
もう、とびっきりの美人。豊かな髪を持ち上げ、帯をキリっと締めて、口元のホクロがセクシーポイント。今どき着物を着ている人は珍しいけど、柚葉のお母さんはいつもこの恰好だった。
似合うなぁ、思わず見蕩れてしまう。
そのうしろ姿を眺めながら表門をくぐり、玄関の式台まで案内されたところで那月は自分がビショビショだったのを思い出した。
さすがにこのままお邪魔するのは……
「あの……すみません。雨に濡れてグッショリなんで、何か拭くものをお借りできますか?」
「あら、本当。今日はどうしたのかしらね、柚葉もさっきの子もみんなズブ濡れで」
お母さんはにこやかに笑いながら、懐から綺麗なハンカチを取り出すと
「すぐにタオルを持ってくるから、先にお顔だけ拭いておいてね」
と言って那月にそれを手渡し、奥へと入って行った。
「あれ、これって……」
この花柄のハンカチは、柚葉と一緒に選んだ誕生日プレゼント。
「さっそく渡して、使ってもらってるんだ」
自分が買ったものじゃないけど、何だか嬉しかった。気持ちを込めたプレゼントは届くんだなぁと思った。だったらこのハンカチは、私が汚しちゃいけないね。
那月は、艶やかな牡丹の花が咲くハンカチがちょっとだけ羨ましかった。お母さんのハンカチが羨ましかった。
フカフカの大きなタオルを借りて、玄関で靴を脱いでから式台に座る。そのままズブ濡れの頭を拭っているところに、後ろからドスドスと重たい足音が近づいてきた。タオルに顔を埋めたままの那月には見えなかったが、大きなお屋敷を踏みしだくようなこの荒れた足音は、
「なつきーーー!」
あ、柚葉さん。やっぱり怒ってらっしゃる?
タオルをかぶったままの那月の腕を、柚葉が無言で引っ張る。家の中へと強引に引っ張る。
これは怒ってる。いつも明るくて口達者な柚葉が黙ってるのは、だいたい怒ってる時。普段なら「あたしの服を貸してあげるから着替えなよ、サイズは合わないと思うけどw」とか、「ペタンコな下着は持ってないの、ゴメンねw」とか、ふざけてくるのに。
那月は後ろ向きに引っ張られるまま廊下を進み、階段をのぼり、二階の部屋へ。
あ~あ、濡れた靴下で歩いたから廊下も階段もビチョビチョ。
二階の奥には、柚葉のお部屋。甘い匂い、黄色と水色のカラフルな壁紙、ラブリーなぬいぐるみがお出迎えしてくれる、女子中学生の秘密の花園。
そして部屋の中には……
「じゃ~~~~ん!」
「誰!? このカワイイ子!」
肩が少し出たキュートなトレーナーに、フリフリのミニスカート、あまり長くない髪をサイドテールに結んで……って
「この子、さっきの女の子!?」
柚葉とぶつかった小学生の女の子が、トンデモ可愛いアイドルっ子みたいに大変身していた。この子が着ているのは……?
「あたしの小さい頃の服があったからさ、着替えさせてあげたの。ね、弥生ちゃん」
恥ずかしそうに頬を赤らめている女の子の名前は、柚葉によると立花弥生(たちばな やよい)、小学五年生の十歳。
土砂降りの中で見た時とはあまりに違う、もう別人のように違う、まさに秘密の花園に咲く一凛の花。女の子の周りにハートマークがキラキラ舞って見える。これはもう……
「か……か……カワイイ♡」
那月ちゃんドストライク! かわゆいロリ萌えっ子がど真ん中にズバっと決まってストラックアウト。こんな妹が欲しかった!
「さすがにあのまま帰すわけにはいかなからね。この子の服は洗濯中。すぐに乾くと思うから、そしたら那月が家まで送ってあげてよ」
「ももも、モチロンですとも! こんなキャワイイ子をひとり夜道で帰すなんて、私にはできませんっ!」
「帰り道でイタズラしちゃダメだぞ~」
「お代官様、お見通しでしたか」
「ふっふっふ……越後屋、お主も悪よのぉ」
そんな時代錯誤なやりとりを(この家には似合うけど)弥生は黙って眺めていた。
ちゃんと『魔女の口づけ』は消えたみたいだね。
「よかったね」
那月は思わず心の声を漏らした。この子は魔女の口づけを受けたことや、自分が何をしていたかの記憶はないはずだが、
「……うん」
と静かに頷いた。あまり嬉しそうでないのは、やっぱり憶えていないからだろうか。それでも、弥生を救うことができた那月は、初めて自分を誇らしく思えた。
そんなふたりを横から見ていた柚葉は、何が「よかった」のかは聞いてこなかった。あれから那月が何をしていたのか、なぜ弥生を預けたのかも聞いてこなかった。
怒ってなかったんだね。
柚葉にしてみたら、ぶつかってズブ濡れにしてしまった子に着替えをあげて、私も戻ってきたからそれでオッケー、万事解決なのかな。それとも、聞かれても答えられないことを察しているのか。
もし聞かれたら「この子の親を探してました」っていう無理やりな答えは用意していたんだけど。そんな嘘をつかないで済んだのは、柚葉の優しさなのかもしれない。
「那月も着替えていきなよ。そのままじゃ風邪ひいちゃうからね」
そういえば私、未だにズブ濡れでした。
「あたしの服を貸してあげるからさ。サイズは合わないと思うけどw」
あうっ! そのセリフは……
「あと、那月に合うペタンコな下着は持ってないの、ゴメンねw」
「ペタンコ言うなーーー!」
ムキーーーっ! と目を吊り上げて柚葉を押し倒そうとした那月だったが
「……クシュン!」
濡れっぱなしの制服で身体が冷えたらしい。くしゃみをひとつして、鼻をズズっと鳴らした。
「ほ~らね」
と言った柚葉の手が、那月の右頬に何かをくっつけてくる。これは……絆創膏?
「どこで何をしてたのか知らないけどさ、そんな傷を付けちゃったらカワイイ顔が台無しだよ」
頬の傷、気付いてたんだ。濡れた髪で隠れてたのに、柚葉は何でもお見通しなんだね。
「うん、ありがと」
こんなにあったかい日常、壊したくない。この街を、柚葉や弥生ちゃんや他の人たちを魔女から守るのは私の役目だ。
そしていつの日か『歯車のシンボル』を持つ魔女を見つける。『歯車の魔女』を殺す。
それが、私が魔法少女の契約を交わした『たったひとつの願い』だから。
那月の指輪に光るソウルジェムに、ほんの少しだけ黒い揺らめきが舞った。
続く