魔法少女まどか☆マギカ[新説]~ヴァルプルギスナハト~ 作:マンボウ次郎
回り続ける愚者の象徴、舞台装置の魔女。
この世の全てを戯曲へ変えてしまうまで、無軌道に世界中を回り続ける。
普段は逆さ位置にある人形が上部へ来た時、暴風の如き速度で飛行し、瞬く間に地表の文明をひっくり返してしまう。
歯車のシンボルを持ち、通称「ワルプルギスの夜」と呼ばれる史上最強の魔女。
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「ユリさま、あんなヤツの助けなんて本当に必要なんですの? ワタクシには足手まといにしか見えませんけど」
深手を負ったユリに向けて、癒しの魔法を当てる少女。白いセーラーブレザーに赤い大きなリボンを付けた制服姿で、長い金髪を後ろで束ねている。
ここは見滝原市にあるユリの家。大きなタワーマンションの最上階にある一室で、ひとり住まいのユリが暮らす部屋。といっても、ベッドとイスがひとつあるだけで生活感がまるでない寝室。他の部屋も、最低限の家具しか置かれていない、とても女子高校生の家とは思えない殺風景なものだった。
「そうね、あの子は猪のように突っ込むだけの未熟な魔法少女。でもあの魔力は、あなたの上を行くわよ」
ユリの身体に刻まれた深い傷跡が、その威力を物語っていた。ユリもユリとて、ただ黙って斬られたわけではない。左肩にあるソウルジェムを傷付けられないよう那月の剣の軌道を読み、致命傷を避けるために魔力で防護膜も張っていた。
にも関わらず、あの一撃でこれだけの傷を負ってしまった。それは剣の威力もさることながら、那月の魔力コントロールが長けている証拠でもあった。あと数センチ、傷が深ければ――
「あの場で倒れて、醜態を晒していたかもしれないわね」
「ユリさまがそんな目に遭うなんてあり得ませんわ」
ユリに服を差し出し、イスにちょこんと座る少女。傷口の癒えたユリは下着姿のままベッドから立ち上がると
「それにしてもあの子、本能は猪だけど理性はちゃんとしていたみたいね。あの剣の一撃は、単純に斬撃のみだった」
「どういうことですの?」
「あの子は炎の魔力を持っているのよ。あの斬撃に炎の魔力を使われていたら、私は灰になっていたかもしれないわ」
「ふん、きっと逆上してそんな余裕がなかっただけですわ」
「……そうかしら」
ユリは白いシャツに袖を通しながら、那月の一撃を思い出した。
あの時、那月はたしかに逆上していた。キュゥべえの言葉に我を失い、魂に絶望を抱き、なりふり構わず斬りかかってきた。けれど、ユリのソウルジェムには刃を当てなかった。切り口も、切っ先を当てるだけで殺すつもりは感じられなかった。逆上して炎の魔力を使うことを忘れていたとしても……
「心のどこかでブレーキを踏んでいたのかもしれないわね」
「どちらにしても、ユリさまを守るのはワタクシの役目ですわ。そんなイノシシ女は必要ありませんの」
「ふふ……頼りにしてるわよ、ミコ」
ユリはシャツのボタンを留めてからチェック柄のスカートをはき、黒いソックスに足を通す。見滝原一女の制服だ。あまり派手ではないが、シャツには小さな校章が縫い付けられ、スカートはディテールが細かいデザインの清楚な服装。
それを眺めている「ミコ」と呼ばれた少女は、少しだけ白い歯を見せた。それから自信たっぷりは顔を浮かべると
「たとえワルプルギスの夜が現れたとしても、ワタクシの『防護魔法』とユリさまの『魔女殺しの槍』に敵うはずありませんから」
「そうね。ミコがいなければ、私はワルプルギスの夜には絶対に勝てない」
「あら? ユリさまもようやくワタクシの実力にお気づきになったようですわね」
イスの背もたれを大きく揺らして、得意げになってふんぞり返るミコ。普段から他人を褒めることがないユリに「ミコがいなければ」なんて言われたからには、有頂天もいいところだった。
頭の後ろで腕を組み、イスの前足を浮かせたところで
「ふぎゃっ!?」
バランスを崩して倒れてしまった。それも、受け身を取ろうと変な体勢で床に激突したものだから、見事に顔から着地して鼻を強打。ベチャッという痛々しい音を立てていたが
「たはは……これはお見苦しいところを……」
起き上がったミコの顔には怪我ひとつ、というよりも、強打した鼻からは血の一滴も垂れていなかった。ただ、微かに赤い『かげろう』のようなものを揺らめかせるだけだった。しかしそれもほんの一瞬で、傷もなければ痛がる素振りも見せずに恥ずかし笑いを浮かべる。
そんなひとり芝居を見ていたユリは
「それだけ治癒と防御に長けた魔法少女は、あなた以外にはいないでしょうね」
と言った。鼻の骨が折れるのではないかと思えるほどに強打した傷が、あっという間に癒えていた。それも、傷が癒える瞬間すら見えないほどの早さで。
「私には治癒能力がほとんどない。ミコがいなければ、私の身体は生身の人間と変わらない」
「その分、ユリさまは攻撃に特化していますわ」
ミコはひっくり返ったイスを戻していた。顔面を打ち付けた床には、血の跡すら付いていない。鼻を強打した瞬間に治癒が始まり、出血が起こる前に完治しているようだった。
それは、魔法少女ミコが持つ驚異の再生能力だった。
「いずれにしても」
ミコは乱れたスカートをパッと整え、鞄を手に持つと
「ワタクシは、死ぬまでユリさまをお守り差し上げます。あなたの盾として」
深々とお辞儀をしてから「それでは、また明日」と言って部屋を出ていった。玄関の扉が閉まり、カチャッとオートロックの掛かる音がした。
左苗ミコ(さなえ みこ)十三歳。市立見滝原中学の二年生。
ミコは一年前、魔女の結界に迷い込んだ。その魔女は『糸繰り(いとくり)の魔女』で、呪いによってミコをマリオネットのように操った。それを知らずに助けようとした魔法少女のユリを、ミコは後ろから刺した。魔女が作り出したレイピアで、背中から心臓を串刺しにした。
心臓を突き刺されたユリは治癒が追いつかないまま、それでも辛うじて魔女を倒す。倒しはしたが、肉体の生命維持にどんどん魔力を削がれ、ソウルジェムに大量の穢れを溜め込んでしまった。
そこへ『魔法の使者』を名乗るキュゥべえが現れ、ミコに「願いと引き換えに魔法少女になる」ことを持ちかける。
魔女の呪いでユリを刺したミコは、恩人の命を救うために「この人の傷を癒して欲しい」という願いで契約を交わした。
だからミコの能力は『癒しの力』
それも、普通の魔法少女の比ではない強力な癒し魔法を身に付けた。
しかしミコは、武器を持つことはなかった。あの時、魔女の呪いで操られていたとはいえ、ユリを刺したことが大きなトラウマとなっていたからだった。武器を持たずに癒しの魔法と、それを応用した『防護魔法』を使う。ミコの『防護魔法』は、どんな強力な攻撃も完璧に防ぐ防御盾だった。
そうして魔法少女になったミコは、命の恩人であるユリを「必ず守り通す」と誓った。
――ワタクシは、死ぬまでユリさまをお守り差し上げます。あなたの盾として
ユリの為なら、どんな敵が相手でも『盾』となり守ってみせる。
愚直なまでにユリに添い遂げると言い出したミコに負けて
「あなたの根気には負けたわ。あなたがそうしたいと望むのなら、そうしなさい」
と、こうして毎日ミコが来ることを許した。
ユリはブレザーを羽織ると、長い髪を片手でなびかせた。美しい銀色の髪が、音もなく揺れる。部屋の窓に掛かるカーテンの隙間から、見滝原の夜空にひとつの流れ星が見えた。
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「ここが北夜見中学? 田舎くさい学校だこと」
連休明けの放課後、北夜見中学校の正門前にミコはいた。白いセーラーブレザーに赤い大きなリボン、白のチェックが入ったスカート。ミコが着ているのは、見滝原中学校の制服。
数年前に大きな改装が行なわれた見滝原中学は、豪華な設備と煌びやかな校舎が特徴だった。それに比べて昔ながらの校舎が建つ北夜見中学は、ミコにしてみれば前時代的な学校に思えた。
「ま、見滝原は都市開発が進む近未来都市。こんな片田舎と比べたら可哀そうですわね」
見慣れない制服を着た少女が校門前で仁王立ちしている姿に、下校を始める北夜見中学の生徒たちは怪しげな視線を送っていた。
「ふん、生徒の制服も地味だこと」
そんな地味な制服を着て校門を過ぎようとしていた女子生徒に
「ちょっとあなた。少しお聞きしたいのですけれど」
と、臆面もなく声を掛けた。
「えっと……何かご用でしょうか」
眼鏡をかけた、いかにも大人しそうな少女が困ったように返事をする。
「御上那月という子がいるでしょう? 呼んできていただけませんかしら」
「みかみ……なつきさんですか。ごめんなさい、分からないです」
「あなた、自分の学校の生徒なのに分からないの?」
「はあ、すみません」
女子生徒は、なぜ自分が謝るのかと少し不満そうな顔をして去っていった。
「まったく、早くしないと間に合わなくなってしまうのに。仕方ありませんわね」
ミコはブツブツとひとり言を口にすると
「百メートルくらいなら、校舎の中まで届くでしょう」
と言って、両手を腰に当てて目を瞑った。
その頃、那月は教室の中で帰り支度をしている最中だった。いや、帰り支度をしながら柚葉とのお喋りに夢中だった。
「だからさ、那月も一緒に遊びに行こうよ。弥生ちゃんも誘ってさ」
「柚葉と弥生ちゃんと三人で?」
「そうそう。見滝原は大きな街だからさ、遊んだり買い物する所もいっぱいあるんだよ」
「見滝原ねぇ……」
柚葉が言い出したのは、休日を使って隣の見滝原市に出掛けようという話だった。
「ちょっと遠くない?」
「大丈夫だって。電車で行けば二駅、バスでも三十分くらいで着く距離だよ」
学生たちの遊ぶ場所が少ない北夜見市。中学生の行動範囲といえば、フォイヤル・フォレストでケーキを食べたり、小さなショッピング施設で買い物をする程度。しかし近年になって都市開発が進む見滝原市は、ここ北夜見市に比べて大きなショッピングモールや娯楽施設が多いらしい。
那月は見滝原に行ったことがない。話を聞く限りでは、煌めく街並みが立ち並ぶ見滝原に興味は津々なのだが
「見滝原といえば、蒼ユリのテリトリーなんだよねぇ」
「え、誰の何だって?」
「いやいや、こっちのこと。それより今日は私、早く帰らないといけないから……」
――――――――!
その時、どこからか那月を呼ぶ声がした。
この頭の中に響く声は……?
「――那月、御上那月!」
精神感応(テレパシー)だ!
一体、誰が?
「あなたにお話がありますの。正門前でお待ちしておりますので、すぐにいらして頂けます?」
ハキハキと丁寧な言葉遣いで語りかけてくる……この声は、キュゥべえじゃない。この街で私にテレパシーを入れてくるのは、キュゥべえか蒼ユリくらいしかいないはずなのに。聞いたことのないこの声は、他の魔法少女?
「ちょっと! 聞いていますの? 時間がありませんから、急いで頂けます?」
なんだ、この『丁寧だけど妙に腹が立つ』言葉遣い。あの高慢ちき(蒼ユリ)よりもさらにムカつく喋り方。
「うっさいわね、アンタ誰よ!」
正門の方向へギッと睨むように、那月もテレパシーで言葉を返す。
「あら、ちゃんとお返事できますのね。イノシシ女と聞いていたので、テレパシーもロクに使えないのかと思いましたわ」
「イ、イノシシ女!?」
那月は思わず声を出した。
「な、何? どうしたの?」
喜怒哀楽の『怒』を前面に押し出す那月を見て、柚葉が驚いたように聞いてくる。
テレパシーを感じ取れない柚葉にとっては、教室内の誰もいない方向に睨みをきかせる那月は、いけない電波をキャッチしているアブナい少女に見えていいるのかもしれない。
なんとか誤魔化さないと……
「あ、ああ~~~何でもない、何でもない。今年の干支は何だったかなぁ……と思って」
これは厳しいっっ! 無理がある!
「イノシシ、だね」
と、柚葉が答えた。同時に
「イノシシ女!」
と、脳内にも聞こえた。
声とテレパシーで「イノシシ」をダブらすなっ!
那月は再び正門の方角へギリっと睨みを入れて
「はいはいはいはい! いま行くからそこで待ってなさい!」
と、これはちゃんとテレパシーで送る。これ以上、声とテレパシーを同時に相手したら頭がこんがらがってしまう。
「ということで、ゴメン柚葉。今日は私、大事な用事があるから先に帰るね」
「何が『ということ』なのか、さっぱりわからないんだけど」
だあああぁ! 噛み合わないっ!!
「イノシシで思い出しちゃったの、夕飯の材料を買いに行かないと。今日はお父さん、早く帰るって言ってたから」
「今夜は猪鍋(ししなべ)?」
「そうそう、猪鍋。じゃあ柚葉、また明日ね!」
那月は鞄を抱えて急いで教室を出る。頭の中に出てくるのは、干支のイノシシを丸のまま鍋で煮込むイメージ。猪鍋って、そんなワイルドな感じだったっけ?
とにかく、声とテレパシーを同時に受け答えるのは無理だと分かった。
詰まるところ、声もテレパシーも頭の中で言葉に置き換えているわけで、意思伝達の意味合いとしては同じようなもの。例えるなら、日本語と英語を完璧に話せる人が、日本語の会話に英語で即答するみたいなものだろうか。つい釣られて日本語で答えちゃうことだってあるんじゃない?
そんなどうでもいいことを考えながら、階段を下りて昇降口へ。革靴を履き、正門に近づいたところで
「あなたが御上那月ですの?」
両手を腰に当てたまま、仁王立ちする少女が目に留まる。見たこともない制服を着て、長い金髪をポニーテールに結ぶ少女。背丈は低いが、制服を着ているところを見ると中学生だろうか。
「お初にお目にかかりますわ。ワタクシ、左苗ミコと申します」
ミコと名乗る少女は礼儀正しく、自分の名前を名乗ってきた。言葉は礼儀正しいが、声には棘がある。顎を少し上に向けて、いかにも相手を見下した目線(背が低いので見下せてないけど)と偉そうな態度。さっきのテレパシーといい、明らかに「お友達になりにきた」わけではないのが明白だった。
「さっきの声はアンタのね。人のことを散々『イノシシ、イノシシ』って……一体何の用よ」
「猪のように突っ込むだけしか能がない、と聞いていたもので仕方ありませんわ」
ぐっ、何だコイツは……ケンカを売りに来たのか?
「初対面なのに随分な言い草じゃない。誰がイノシシみたいだって言ってんのよ」
「ワタクシの主(あるじ)様ですわ。そんなことより、単刀直入に申し上げます。ワタクシはあなたの力が信用できませんの。主様はあなたの力が必要だと仰っていますけど、本当に主様の助けになるのかが疑問ですの」
「ぜんっぜん単刀直入じゃないわよ! 主様? 助け? 何のことだかサッパリ分からないんだけど!?」
那月は上半身を乗り出して突っかかった。偉そうな口の利き方と意味不明な挑発で、イライラのボルテージが高まっていく。
「イノシシのようにいきり立ってますのね。やはり聞いたとおりの単細胞、猪突猛進を絵に描いたようですわ」
鍋を抱えて鼻息を荒げたイノシシが、今にも突進しそうだった。ついでにネギとコンロも背負ってれば猪鍋の完成。
不敵に笑うミコと、ケダモノのように目をひん剥いた那月が対峙する横を
「何やってんの?」
と言って柚葉が通りかかる。
だあああぁ! このままでは猪鍋パーティーが始まってしまう。収拾がつかなくなる前に
「行くわよ!」
那月はズカズカと歩き出した。
テレパシーを使ってくるってことは、コイツも魔法少女だ。柚葉の前でおかしな会話を繰り広げるわけにはいかない。きっとコイツは……
「ちょっとお待ちなさい、御上那月。同じ魔法少女として、今日はあなたの実力を測りに来たんですのよ」
ほら来た! 何の遠慮もなしに「魔法少女」とか言ってくる。
足早に遠ざかっていく那月を追いかけて、ミコが大声で叫んだ。さらに
「ソウルジェムの反応を見たところ、魔力の強さはそれなりにありそうですわね」
また来た! 今度は「ソウルジェム」だとか「魔力」だとか言ってくる。そんな専門用語をデカい声で言いふらすんじゃない!
那月に追いついたミコは、横から那月の顔を覗くようにして
「でも、それだけじゃ不十分ですわ。実際に魔女と戦って、あなたの魔法の力を見極めないとワタクシは納得できませんの」
もうヤメて! 「魔女」とか「魔法」とか大っぴらに言わないで! 下校中の生徒たちがいるんだよ?
「あーーーーーわかったわよ! 何だか知らないけど、それ以上喋らないで!」
那月はクルリと振り向いて、ミコの言葉を遮った。目の前には、ニヤリとする金髪少女の顔。
「あら、何がわかったんですの?」
「だ~か~ら~……アンタの話に付き合ってあげるから、ま……魔法……(ゴニョゴニョ)の話はもうやめなさい」
すぐ横を通り過ぎる生徒に聞こえないよう「魔法少女」をゴニョゴニョと濁した。
「最初からそうして素直にしていれば、余計なことを言わずにいて差し上げたものを」
コイツまさか、私をその気にさせるためにワザとあんなことを?
ミコは「ふふふ」っと笑いながら
「騒いで追い立てれば、イノシシは必ず向かってきますわ。まんまと誘いに乗って頂けましたわね」
思惑どおりの展開に満足したのか、したり顔をしていた。
「ぐっ……! 姑息な」
まるでコイツの手の上で転がされてるみたいで悔しいけど……乗ってしまったものは仕方ない。ちゃっちゃと終わらせて帰ろう。夕飯の支度をしなきゃいけないのは本当だし。
「で、私は何をすればいいの?」
「これからあなたに、魔女を退治して頂きます」
「魔女? そんなのどこにいるのよ。ここ何日かは、それらしき気配なんて感じないけど?」
那月はクルクルと辺りを見回してそう言った。実際、無楯の魔女を退治してからは、近くに魔力の波動を感じることがなかった。
「はぁ……やっぱりあなたはイノシシですわね。ここからは少し離れていますけれど、なかなか強そうな魔女の気配がありましてよ?」
ミコの目線は那月の後ろの方、そのずっと先を見つめるように、琥珀色の瞳を向けた。
「ま、ワタクシの魔力探知はあなたの比ではありませんから。刃を剥くだけしか能がないあなたに感じ取れないのは、無理もないですわ」
と、嫌味たっぷりな言葉を吐いたミコだったが、次に口を開くと表情が変わった。
「なかなか強そうな魔女の気配、とは控え目に言ってですの。直線距離にして、ここからおよそ三キロメートル。これだけ離れてもチクチクと刺すような魔力の波動が伝わってくるなんて……」
ミコは右指にある指輪型のソウルジェムを「ヒュン」という音とともに卵型のジェムに変えた。黄色い宝珠が、薄く薄く発光している。
「これは魔女ではなく、もしかしたら『魔女喰い』かもしれませんわね」
続く